(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1反応経路は、有機物を含有する試料液を導入する試料液導入路と、過マンガン酸カリウムを導入する過マンガン酸カリウム導入路と、有機物を含まない水を導入する水導入路と、試料液導入路と過マンガン酸カリウム導入路と水導入路とが合流する合流経路とを有し、
過マンガン酸カリウム導入路と水導入路とは一方が一の切替弁によって第3反応路に連通するように接続されており、
第3反応経路の下流側に、他の切替弁を介して軽廃液排出路と重廃液排出路とが接続されており、
一の切替弁および他の切替弁は所定のタイミングで作動するように構成された請求項1〜4のいずれか1つに記載の化学発光式COD測定装置。
化学発光可能物質としてピロガロール、レゾルシノール、ヒドロキノン、カテコール、没食子酸、サリチル酸およびアスコルビン酸のうちから選択された単一の化学発光可能物質を用いる請求項7に記載の化学発光式COD測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の化学発光式COD測定装置は、有機物を含有する試料液および酸化剤としての過マンガン酸カリウムを流通させて有機物と過マンガン酸カリウムとを反応させる第1反応経路と、
第1反応経路を通過した未反応の過マンガン酸カリウムおよび化学発光可能物質を流通させて未反応の過マンガン酸カリウムを化学発光可能物質と反応させる第2反応経路と、
第2反応経路を通過した未反応の化学発光可能物質および過マンガン酸カリウムを流通させて未反応の化学発光可能物質を反応させる第3反応経路と、
第3反応経路において生成した化学発光可能物質と過マンガン酸カリウムとの反応生成物による化学発光の強度を検出する光検出部と、
光検出部にて検出した発光強度からCOD値を求める演算部とを備える。
【0016】
本発明の化学発光式COD測定装置は、次のように構成されてもよい。
(1) 第1反応経路が、第1反応経路を流通する有機物を含有する試料液および過マンガン酸カリウムを加熱する加熱部を有してもよい。
このようにすれば、第1反応経路における反応性を高めることができる。
【0017】
(2)第1反応経路が、加熱部の下流側に、加熱部を通過した未反応の過マンガン酸カリウムを冷却する冷却部を有してもよい。
このようにすれば、加熱部において発生した液中の気泡を減少させることができ、それにより光検出部による検出精度を高めることができる。
【0018】
(3)第3反応経路が、渦巻き経路部を有してもよい。
このようにすれば、第3反応経路を渦巻き状に長くすることができる。そのため、第2反応経路を通過した未反応の化学発光可能物質と過マンガン酸カリウムとを十分に反応させることができ、光検出部による検出精度を高めることができる。
【0019】
(4)第1反応経路は、有機物を含有する試料液を導入する試料液導入路と、過マンガン酸カリウムを導入する過マンガン酸カリウム導入路と、有機物を含まない水を導入する水導入路と、試料液導入路と過マンガン酸カリウム導入路と水導入路とが合流する合流経路とを有し、
過マンガン酸カリウム導入路と水導入路とは一方が一の切替弁によって第3反応路に連通するように接続されており、
第3反応経路の下流側に、他の切替弁を介して軽廃液排出路と重廃液排出路とが接続されており、
一の切替弁および他の切替弁は所定のタイミングで作動するように構成されてもよい。
【0020】
このようにすれば、例えば、一の切替弁が過マンガン酸カリウム導入路側に切り替わり、かつ他の切替弁が重廃液排出路側に切り替わっていた場合は、重金属であるマンガンを含む廃液を重廃液排出路を通して回収できる。一方、一の切替弁が水導入路側に切り替わり、かつ他の切替弁が軽廃液排出路側に切り替わっていた場合は、マンガンを含まない廃液を軽廃液排出路を通して回収できる。すなわち、マンガンを含む廃液と含まない廃液を分けて回収できるため、廃棄処理が不要なマンガンを含まない廃液をそのまま下水や自然界に流すことができると共に、廃棄処理が必要なマンガンを含む廃液の量を低減できる。
【0021】
(5)第2反応経路が、化学発光可能物質を導入する化学発光可能物質導入路を有し、化学発光可能物質導入路が、化学発光可能物質としてピロガロール、レゾルシノール、ヒドロキノン、カテコール、没食子酸、サリチル酸およびアスコルビン酸のうちから選択された単一の化学発光可能物質を導入するように構成されてもよい。
これらの化学発光可能物質の中でも、シグナルの安定性の観点からピロガロールが好ましい。
【0022】
また、本発明の化学発光式COD測定方法は、試料液中の有機物と過マンガン酸カリウムとを反応させる第1反応工程と、
第1工程での未反応の過マンガン酸カリウムを化学発光可能物質と反応させる第2反応工程と、
第2工程での未反応の化学発光可能物質を過マンガン酸カリウムと反応させる第3反応工程と、
第3工程において生成した化学発光可能物質と過マンガン酸カリウムとの反応による化学発光の強度を検出する光検出工程と、
光検出工程にて検出した発光強度からCOD値を求める演算工程とを含む。
【0023】
なお、本発明者らは、この化学発光式COD測定方法が、第1〜第3反応工程を経て得られた反応生成物による化学発光の強度を測定することから「3段法」と呼び、第1反応工程後に得られた反応生成物による化学発光の強度を測定する従来の化学発光法を「1段法」と呼んでいる。
【0024】
本発明の化学発光式COD測定方法(3段法)は、次のように構成されてもよい。
(6)化学発光可能物質としてピロガロール、レゾルシノール、ヒドロキノン、カテコール、没食子酸、サリチル酸およびアスコルビン酸のうちから選択された単一の化学発光可能物質を用いてもよい。
【0025】
(7)第1反応工程が、酸性条件下で行われてもよい。
このようにすれば、過マンガン酸カリウムの酸化力および公定法との相関性がより高くなる。
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の化学発光式COD測定装置および測定方法の実施形態を詳説する。
【0027】
(実施形態1)
図1は本発明の化学発光式COD測定装置の実施形態1を示す構成図であり、
図2は実施形態1の化学発光式COD測定装置における第3反応経路および光検出部を示す要部断面図である。
【0028】
〔化学発光式COD測定装置〕
この化学発光式COD測定装置(以下、単に「COD測定装置」という場合がある)10は、第1反応経路Aと、第2反応経路Bと、第3反応経路Cと、光検出部Dと、演算部Eとを備え、後述する化学発光式COD測定方法(3段法)を行う装置である。
【0029】
COD測定装置10において、第1反応経路Aは、有機物を含有する試料液および酸化剤としての過マンガン酸カリウムを流通させて有機物と過マンガン酸カリウムとを反応させる機能を有する。
第2反応経路Bは、第1反応経路Aを通過した未反応の過マンガン酸カリウムおよび化学発光可能物質を流通させて未反応の過マンガン酸カリウムを化学発光可能物質と反応させる機能を有する。
【0030】
第3反応経路Cは、第2反応経路Bを通過した未反応の化学発光可能物質および過マンガン酸カリウムを流通させて未反応の化学発光可能物質を反応させる機能を有する。
光検出部Dは、第3反応経路Cにおいて生成した化学発光可能物質と過マンガン酸カリウムとの反応生成物による化学発光の強度を検出する機能を有する。
演算部Eは、光検出部Dにて検出した発光強度からCOD値を求める機能を有する。
【0031】
<第1反応経路>
第1反応経路Aは、有機物を含む試料液Sを収容する第1容器11と、硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmを収容する第2容器12と、有機物を含まない水を収容する第3容器13と、加熱部14と、冷却部15と、第1容器11内の有機物を含む試料液Sを導入する試料液導入路16と、硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmを導入する第1過マンガン酸カリウム導入路17と、有機物を含まない水を導入する水導入路18と、試料液導入路16と第1過マンガン酸カリウム導入路17と水導入路18とが合流する合流経路19とを有する。
【0032】
また、第1反応経路Aにおいて、試料液導入路16と水導入路18とは切替弁V1に接続され、切替弁V1は中継経路20に接続され、中継経路20は接続管21を介して第1過マンガン酸カリウム導入路17と合流経路19とに接続されている。
また、中継経路20には第1ポンプP1が設けられ、第1過マンガン酸カリウム導入路17には第2ポンプP2が設けられている。なお、実施形態1で使用されるポンプはEyera社のMP-2000またはMP-1000であるが、これらに限定されることはない。
【0033】
合流経路19の上流側と下流側には加熱部14と冷却部15が配置されており、合流経路19における加熱部14および冷却部15を通過する部位にはコイル管19a、19bが設けられている。
加熱部14は、例えば、コイル管19aを流通する混合液M
1を加熱する熱媒体としての水を収容する容器14aと、容器14aを介して内部の水を所定温度に加熱するヒータ14bとを備えて構成される。
【0034】
冷却部15は、例えば、加熱部14を通過して加熱された混合液M
1を冷却する熱媒体としての水を収容する容器15aを備え、容器15aの下部に形成された導入口から水(例えば水道水)を供給し、容器15aの上部に形成された排出口から水を排出するように構成される。なお、導入口と排出口に循環経路を接続してポンプにて水を循環させるようにしてもよい。
【0035】
合流経路19を流通する混合液M
1は加熱部14にて加熱されると気泡が発生する場合があるため、冷却部15にて混合液M
1を冷却することにより気泡を減少させるが、気泡をほぼ完全に消滅させるために合流経路19における冷却部15よりも下流側に気泡抜き部25が設けられている。この気泡抜き部25としては、例えば、液体は透過させず気体のみを透過させる多孔質樹脂パイプ(例えば、ポリテトラフルオロカーボン製)が用いられる。
【0036】
なお、このCOD測定装置10において、有機物を含む試料液Sを収容する第1容器11は省略することができる。この場合、試料液を採取する河川、湖沼等までCOD測定装置10を運搬し、試料液導入路16の採取口を河川、湖沼等に浸すことにより、試料採取地点のCOD値の経時変化を測定することができる。
【0037】
<第2反応経路>
第2反応経路Bは、化学発光可能物質Pyを収容する第4容器21と、第4容器21を第3反応経路Cに接続する化学発光可能物質導入路22と、化学発光可能物質導入路22の上流側および下流側に設けられた第3ポンプP3およびコイル管23とを備える。そして、化学発光可能物質導入路22における第3ポンプP3とコイル管23との間には、接続管24を介して第1反応経路Aの合流経路19の下流端が接続されている。なお、実施形態1では化学発光可能物質Pyとしてピロガロールが用いられている。例えば、200μMのピロガロール水溶液を用いることができる。
【0038】
<第3反応経路>
第3反応経路Cは、二重管31を介して化学発光可能物質導入路22の下流端と接続されており、その途中部には渦巻き経路部32が設けられている。また、第3反応経路Cは、二重管31を介して第2過マンガン酸カリウム導入路41の下流端とも接続されている。実施形態1の場合、二重管31の内管31aが過マンガン酸カリウム導入路41と接続され、二重管31の外管31bが化学発光物質導入路22と接続されている。二重管31の内管31aを流れる硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmと二重管31の外管31bを流れる混合液M
2とは、渦巻き経路部32において初めて混合する。なお、内管31aに混合液M
2が流れ、外管31bに硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmが流れるようにしてもよい。
【0039】
図2に示すように、渦巻き経路部32は、上面に渦巻き溝32a
1が形成された本体部32aと、本体部32aの上面を覆う透明カバー32bとを備える。透明カバー32bとしては、例えば、強化ガラスを用いることができる。
【0040】
本体部32aは、第3反応経路Cの上流部33と接続された中心孔32a
2と、中心孔32a
2を中心として半径方向に拡大する渦巻き溝32a
1の最外端に形成された排出孔32a
3とを有し、この排出孔32a
3は第3反応経路Cの下流部34と接続されている。なお、第3反応経路Cの下流部34は、廃液回収容器51と接続されている。
【0041】
<光検出部>
図2に示すように、光検出部Dは、第3反応経路Cの渦巻き経路部32を保持する下ケース61aと上ケース61bからなる遮光ケース61と、渦巻き経路部32と上ケース61bの下端との間に設けられたクッション部材62と、遮光ケース61内に設けられた受光部63と、受光部63を遮光ケース61の天井から吊り下げかつ受光部63で受けた光を増幅し、電圧変換する電気回路を収納する電気回路部64とを備え、受光部63および電気回路を収納する電気回路部64とで光ダイオード検出器が構成されている。
【0042】
受光部63は、渦巻き溝32a
1内を通過する混合液M
3が化学発光したときの発光強度をできるだけ高精度に検出できるよう、渦巻き経路部32の渦巻き溝32a
1の中心孔32a
2の直上に配置されると共に、渦巻き経路部32からの高さやサイズが考慮される。なお、受光部63としては、特に限定されるものではないが、実施形態1ではフォトダイオードが用いられている。
【0043】
<演算部>
演算部Eは、光検出部Dからの出力信号が入力されることにより、光検出部Dの出力信号を所定の計算式に基づいてCOD値に変換して表示および記録する機能を有する。演算部Eは、電気回路部64の動作に必要な電気が供給され、電気回路部64からの電圧信号を受けてその信号を増幅し、ゼロ点を調整し、平均時間を変化させて信号のノイズを減少させるよう構成されており、出力電圧供給と入力電圧の増幅・平滑回路が組み込まれており、記録計に出力信号を出力する。
【0044】
〔化学発光式COD測定方法〕
本発明の化学発光式COD測定方法(以下、単に「COD測定方法」という場合がある)は、試料液中の有機物と過マンガン酸カリウムとを反応させる第1反応工程と、
第1工程での未反応の過マンガン酸カリウムを化学発光可能物質と反応させる第2反応工程と、
第2工程での未反応の化学発光可能物質を過マンガン酸カリウムと反応させる第3反応工程と、
第3工程において生成した化学発光可能物質と過マンガン酸カリウムとの反応生成物による化学発光の強度を検出する光検出工程と、
光検出工程にて検出した発光強度からCOD値を求める演算工程とを含む。
以下、上述のCOD測定装置10を用いたCOD測定方法を説明する。
【0045】
<第1反応工程>
第1反応工程では、COD測定装置10における第1反応経路Aの第1および第2ポンプP1、P2が駆動し、第1容器11内の有機物を含む試料液Sが合流経路19へ流入すると共に、第2容器12内の硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmが合流経路19へ流入する。
このとき、実施形態1では、硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmの流量は試料液Sの流量の0.1〜1倍程度とすることができる。実施形態1では、試料液Sの流量は3ml/min、硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmの流量は1.5ml/minに設定されている。なお、硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmは、公定法に準じて調製されたものが使用される。
【0046】
そして、試料液Sと過マンガン酸カリウム溶液Kmとの混合液M
1は加熱部14内のコイル管19aを流れる間に所定温度で加熱され、試料液S中の有機物と過マンガン酸カリウムとの反応が促進される。このときの加熱温度としては室温〜100℃、加熱時間(混合液M1が加熱部14を通過する時間)としては1〜1800秒とすることができる。実施形態1では、加熱温度は60℃、加熱時間は2〜3秒に設定されている。
【0047】
その後、混合液M
1は、冷却部15内のコイル管19bを流れる間に冷却され、次の気泡抜き部25を通過することにより、混合液M
1中の気泡がほぼ完全に消滅する。そして、その混合液M
1が第2反応経路Bに流入する。なお、第1反応経路Aから第2反応経路Bに流入する混合液M
1中には未反応の過マンガン酸カリウムが含まれている。
【0048】
第1反応経路Aにおいて、試料液S中の有機物のほぼ全量乃至全量は過マンガン酸カリウムと反応し、Mn種に由来した化学発光が生じる。このときの発光強度に基づいてCOD測定を行うのが上述の1段法である。
【0049】
<第2反応工程>
第2反応工程では、COD測定装置10における第2反応経路Bの第3ポンプP3が駆動することにより、第4容器21内の化学発光可能物質Pyとしてのピロガロールが化学発光可能物質導入路22内に導入されて第1反応経路Aからの未反応の過マンガン酸カリウムを含む混合液M
1と混合する。このとき、実施形態1では、ピロガロールPyの流量は試料液Sの流量の0.1〜1倍程度とすることができる。実施形態1では、ピロガロールPyの流量は1.5ml/minに設定されている。
【0050】
第2反応経路Bにおける混合液M
2がコイル管23内を流れる間に、混合液M
2中の未反応の過マンガン酸カリウムのほぼ全量乃至全量がピロガロールと反応し、Mn種に由来した化学発光が生じる。このときの反応式は次の通りである。
5C
6H
6O
3+24MnO
4-+72H
+→30C0
2+24Mn
2++51H
2O
そして、第2反応経路Bから第3反応経路Bに混合液M
2が流入するが、この混合液M
2中には未反応のピロガロールが含まれている。
【0051】
なお、このときの発光強度に基づくCOD測定を本発明者らは「2段法」と呼んでいるが、2段法では試料液中の有機物が多いほど(COD値が大きくなるほど)発光強度が弱くなるため本発明では採用されない。
【0052】
<第3反応工程>
第3反応工程では、COD測定装置10における第4ポンプP4が駆動することにより、第2容器12内の硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmが第2過マンガン酸カリウム導入路41を介して第3反応経路Cの二重管31の内管31aに流入する。また、第2反応経路Bから第3反応経路Bの二重管31の外管31bに未反応のピロガロールを含む混合液M
2が流入する。そして、硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmと混合液M
2が渦巻き経路部32にて合流して混合し、この混合液M
3中の未反応のピロガロールが過マンガン酸カリウムと反応し、Mn種に由来した化学発光が生じる。このとき、実施形態1では、第3反応経路Bに流入させる硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmの流量は試料液Sの流量の0.1〜2倍程度とすることができる。実施形態1では、第3反応経路Bに流入させる硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmの流量は6ml/minに設定されている。
【0053】
<光検出工程>
光検出工程では、渦巻き経路部32の渦巻き溝32a
1を混合液M
3が流れる間に生じる化学発光の光が透明カバー32bを透過して光検出部Dの受光部63(フォトダイオード)に入射することにより、受光部63にてその発光強度が検出される。すなわち、発光強度に応じた出力信号が受光部63から演算部Eへ向けて出力される。この際、受光部63にて得られた光の量は電流値として電気回路部64へ出力され、電気回路部64において電流値が電圧値に変換され、外部のノイズの影響を受けない程度に増幅され、外部において二次増幅することができる。なお、渦巻き経路部32を通過した混合液M
3は廃液回収容器51にて回収される。
【0054】
<演算工程>
演算工程では、受光部63からの出力信号に基づいて演算部Eにて演算してCOD値が求められ、その結果が表示および記録される。
【0055】
<その他>
このCOD測定装置10によれば、実施形態1の場合、加熱部14の水温が所定温度に達する安定時間に10分程度要するため、その安定時間を経過した後に測定を開始し、測定開始から短時間(約1〜2分後)に試料液SのCOD値を得ることができる。
【0056】
また、このCOD測定装置10によれば、第1〜第4ポンプP1〜P4を駆動している間は試料液SのCOD測定が連続的に可能であることから、試料液導入路16から直接河川水、湖沼水、海水等を取り込んでCOD値の連続的な経時変化を測定することができる。あるいは、第1〜第4ポンプを断続的に駆動することにより河川水、湖沼水、海水等の断続的なCOD測定を行うこともできる。この場合、第1〜第4ポンプを手動またはタイマー等による機械的な方法によってON・OFFすればよく、これによりマンガンを含む廃液(重廃液)の量を抑制することができる。なお、演算部においてはポンプ駆動時のみに光検出によるピーク波形が記録される。
【0057】
試料液SについてのCOD測定後、水導入路18と中継経路20とを連通させるよう切替弁V1を切り替えることにより、第1反応経路Aの合流経路19および第3反応経路Aの全体を有機物を含まない水にて洗浄することができるが、洗浄せずに次の試料液を通してもよい。なお、試料液のCOD測定前に、有機物を含まない水を用いて前記3段法を行うことによりブランクとしてのCOD値を得ることもできる。
【0058】
〔公定法と3段法との相関性〕
図3は種々の有機物に対する公定法と3段法との相関性を示すグラフである。横軸のCODが公定法で測定した値であり、縦軸の相対強度がその時の化学発光強度である。
試料液中に含まれる有機物がイタコン酸、フェノール、没食子酸、ピロガロールまたはシュウ酸であるときの公定法によるCOD値と3段法(本発明のCOD測定方法)によるCOD値を調べた結果、
図3に示すように、公定法に対して3段法は高い相関性を有することがわかった。なお、
図3中、xは公定法で測定したCOD値、yは三段法で測定した化学発光強度、Rは積率相関係数である。計算の結果、R≒0.99であった。
【0059】
〔3段法に対する塩分の影響〕
図4は3段法に対する塩分の影響を示すグラフである。
塩分無しの試料液のCOD値と塩分濃度が異なる複数種類の試料液のCOD値を3段法によって測定することにより、3段法に対する塩分の影響を調べた。このとき、各試料液は有機物としてシュウ酸が含まれたものを使用した。その結果、
図4に示すように、NaCl濃度が2%以下であれば塩化物イオンの影響は受けないことが確認された。
【0060】
〔KMnO
4濃度の最適化〕
図5は3段法における過マンガン酸カリウム濃度と発光強度との関係を示すグラフである。
有機物としてのピロガロールを含む試料液に硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液を加えて化学発光させ、そのときのKMnO
4濃度と発光強度との関係を調べた。その結果、
図5に示すように、KMnO
4濃度が0.25mMのとき発光強度が最大となることがわかった。なお、このときの流速(流量)はP1:P2:P3:P4=2:1:1:4である。
【0061】
〔H
2SO
4濃度の最適化〕
図6は3段法における硫酸濃度と発光強度との関係を示すグラフである。
有機物としてのピロガロールを含む試料液に硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液を加えて化学発光させ、そのときのH
2SO
4濃度と発光強度との関係を調べた。
図6に示す結果から、高濃度の方が発光は強くなるが、硫酸濃度はできるだけ低い方が装置や環境に良いので、3段法におけるH
2SO
4濃度は600mMが最適であるとした。
【0062】
図7は試料として種々の濃度のピロガロールを用い、3段法における最適条件で測定した時の化学発光強度を示すグラフである。0〜90μmol/L(0〜12.6mgO/L)のピロガロールに対して直線関係にあることがわかる。
【0063】
(実施形態2)
図8は本発明の化学発光式COD測定装置の実施形態2であって3段法でのCOD測定状態を示す構成図である。なお、
図8において、
図1中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
【0064】
実施形態2のCOD測定装置110も、実施形態1と同様に、第1反応経路Aと、第2反応経路Bと、第3反応経路Cと、光検出部Dと、演算部Eとを備え、化学発光式COD測定方法(3段法)を行う装置であって、1段法に切り替えることも可能な装置である。
【0065】
図8に示すように、第1反応経路Aにおいて、有機物を含む試料液Sを収容する第1容器11は第1試料液導入路16および第1ポンプP1を介して合流経路19と接続され、硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmを収容する第2容器12は第1過マンガン酸カリウム導入路17および第2ポンプP2を介して合流経路19と接続されている。なお、
図8および
図9では、合流経路19における加熱部14の下流側に設けられた冷却部および気泡抜き部が図示省略されている。
【0066】
第1反応経路Aの合流経路19の下流端は第2反応経路Bの第3ポンプP3を有する化学発光可能物質導入路22に接続されており、第1反応経路Aの合流経路19と第2反応経路Bの化学発光可能物質導入路22とが合流した合流経路123には第5ポンプP5が設けられている。そして、この第2反応経路Bの合流経路123の下流端は第3反応経路Cの二重管31の外管に接続し、第3反応経路Cの第4ポンプP4を有する第2過マンガン酸カリウム導入路41の下流端は二重管31の内管に接続している(
図2参照)。なお、第2反応経路Bの合流経路123の下流端は第3反応経路Cの二重管31の内管に接続し、第3反応経路Cの第4ポンプP4を有する第2過マンガン酸カリウム導入路41の下流端は二重管31の外管に接続してもよい。
【0067】
また、第2反応経路Bの合流経路123において、化学発光可能物質導入路22との接続箇所と第5ポンプP5との間にはオーバーフロー経路124が接続されると共に、オーバーフロー経路124は第1廃液回収容器125と接続されている。また、第2反応経路Bの合流経路123において、オーバーフロー経路124との接続箇所と第5ポンプP5との間には第1切替弁V11を介して第2試料液導入路120が接続されると共に、第2試料液導入路120は第1容器11と接続されている。
【0068】
第3反応経路Cの第2過マンガン酸カリウム導入路41において、第1過マンガン酸カリウム導入路17との接続箇所と第4ポンプP4との間には第2切替弁V12を介して水導入路18が接続されると共に、水導入路18は第3容器13と接続されている。また、第3反応経路Cの下流部34は、第3切替弁V13を介して重廃液排出路135および軽廃液排出路136と接続され、重廃液排出路135は第2廃液回収容器151と接続されている。
【0069】
また、このCOD測定装置110は、所定のタイミングで第1〜第3切替弁V11〜V13の切り替えを制御する図示しないタイマーを備えている。このタイマーは、1段法にて断続的にCOD測定を行う際に使用されるが、これについて詳しくは後述する。なお、実施形態2における光検出部Dおよび演算部Eは実施形態1と同様である。
【0070】
図8に示すように、このCOD測定装置110の運転時における3段法によるCOD測定状態では、第1反応経路Aの合流経路19と第2反応経路Bの合流経路123とが連通するように第1切替弁V11が切り替わり、第2容器12と第2過マンガン酸カリウム導入路41とが連通するように第2切替弁V12が切り替わり、第3反応経路Cの下流部34と第2廃液回収容器151とが連通するように第3切替弁V13が切り替わっており、この状態のときに第1〜第5ポンプP1〜P5が駆動する。
【0071】
このとき、例えば、第1ポンプP1による試料液Sの流量は3.2mL/min、第2ポンプP2による硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmの流量は1.6mL/min、第3ポンプP3による化学発光可能物質Pyの流量は1.6mL/min、第4ポンプP4による硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmの流量は6mL/min、第5ポンプによる経路123の流量は6mL/minに設定される。さらにこのとき、第1〜第3ポンプP1〜P3に過大な負荷がかからないように、第2反応経路Bにおける混合液M
2の一部がオーバーフロー経路124を介して第1廃液回収容器125に流出する。実施形態2のCOD測定装置110によっても、実施形態1と同様の3段法によるCOD測定を行うことができ、測定後のマンガンを含む重廃液は第2廃液回収容器151にて回収される。
【0072】
なお、
図8に示した3段法によるCOD測定状態において、第2切替弁V12を切り替えて硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmの第2過マンガン酸カリウム導入路41への流通を遮断して有機物を含まない水Waを流すことにより(
図10における切替弁V12参照)、ブランク値を調べることができる。
【0073】
COD測定すべき河川水、湖沼水、海水等に含まれる有機物の種類が時間経過と共に大きく変化しない場合、1段法によるCOD測定も有効である。この場合、実施形態2のCOD測定装置110を用いて次のように1段法によるCOD測定を行うことができる。
【0074】
図9は実施形態2の化学発光式COD測定装置を用いた1段法によるCOD測定状態を示す構成図であり、
図10は
図9で示した1段法によるCOD測定を断続的に行う状態を示す構成図である。なお、
図9と
図10において、
図1中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
【0075】
このCOD測定装置110は、第1〜第3切替弁V11、V12、V13を切り替えることにより、1段法によるCOD測定が可能となる。この場合、第1〜第3ポンプP1〜p3は停止し、第4および第5ポンプP4、P5のみが駆動する。
1段法によるCOD測定では、
図9に示すように、第1切替弁V11が切り替わって試料液Sを第2反応経路Bの合流経路123に流す。これにより、二重管31の外管31bに試料液Sが流入し、かつ二重管31の内管31aに硫酸酸性の過マンガン酸カリウム溶液Kmが流入し、これらが渦巻き経路部32で混合して化学発光し、このときの光の強度からCOD値を算出する。なお、渦巻き経路部32を通過した混合液M
3は第2廃液回収容器151にて回収される。
【0076】
このような1段法によるCOD測定を断続的に行う場合、
図10に示すように、第2切替弁V12を切り替えて第2過マンガン酸カリウム導入路41に有機物を含まない水Waを流すことにより、渦巻き経路部32において混合する混合液M
4には重金属であるマンガンが含まれない。そのため、第3切替弁V13を切り替えてマンガンを含まない混合液M
4を軽廃液排出路136へ導入して下水または自然界へ排出することができる。このような第2および第3切替弁V12、V13の切り替えをタイマーによって所定時間毎に切り替えることにより、COD測定すべき現場における河川水、湖沼水、海水等のCOD値の経時変化を継続的に測定することができると共に、処理すべきマンガンを含む廃液の量を低減することができる。
【0077】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。例えば、実施形態1および2において、加熱部、冷却部および気泡抜き部は無くてもよい。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。