特許第6208033号(P6208033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6208033-トリガー式液体噴出器 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208033
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】トリガー式液体噴出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20170925BHJP
   B05B 11/00 20060101ALI20170925BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20170925BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B65D83/00 K
   B05B11/00 102H
   B65D47/34 200
   F04B9/14 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-17844(P2014-17844)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-145248(P2015-145248A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−059060(JP,U)
【文献】 特開2005−296807(JP,A)
【文献】 特開2009−131799(JP,A)
【文献】 米国特許第4819835(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B05B 11/00
B65D 47/34
F04B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の内容液を吸引、加圧、圧送するポンプを備える本体部と、該本体部に揺動可能に支持されて牽曳を繰り返すことで該ポンプを駆動させる操作レバーと、該本体部の前方端部に設けられ、加圧された内容液を外界に向けて噴出させるノズルとを備えるトリガー式液体噴出器であって、
前記ポンプは、前記操作レバーに前端部が連結されたピストンと、前記本体部に装着されて該ピストンを収容する筒状のシリンダー部材とを備え、
前記ピストンは、前記シリンダー部材の内周面に対して液密に摺動するシール部を有し、
前記ピストンは、前記本体部に設けられた円筒状の内筒壁の外周面に摺動可能に当接、或いはわずかに隙間をあけて配置されている外側筒を有し、該外側筒の外周面に、前記シール部が設けられており、
前記シリンダー部材は、内周面から内側に突出し、前記シール部よりも前方で前記ピストンの前記外側筒の外周面に摺動可能に当接、或いはわずかに隙間をあけるガイド部を有することを特徴とするトリガー式液体噴出器。
【請求項2】
前記本体部は、前記シリンダー部材を外周面側から嵌合保持する筒状の保持部と、該保持部の内側で、前記シリンダー部材の後端部を内周面側から嵌合保持する嵌合リブとを有する、請求項1に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項3】
前記ピストンの外周面及び前記ガイド部の内周面の少なくとも一方に、摺動リブを設けてなる、請求項1又は2に記載のトリガー式液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出器に関するものであり、特には、操作レバーを牽曳操作する際のピストンとシリンダー間での液漏れを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
黴取り剤や洗剤、衣料用糊剤、住居用ワックス、整髪剤、芳香剤等の液体を入れた容器においては操作レバーを牽曳することによって容器内の液体を直線状、霧状あるいは泡状にして噴出させるトリガー式の液体噴出器が多用されており、これにより液体の効率的な供給を可能にしている。
【0003】
この種のトリガー式液体噴出器としては、特許文献1に記載されるような、バネ部材にて弾性支持された操作レバーを繰り返し牽曳して容器内の液体を吸引、加圧、圧送する、ピストンおよびシリンダーよりなるポンプと、このポンプによって加圧、圧送された液体を通過させる経路を有するボディと、このボディの経路の末端に配置され該経路を通って圧送された液体を外界へ向けて噴射するノズルとを備えるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−173092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の液体噴出器では、牽曳操作時に操作レバーに対して横方向もしくは斜め方向の力が加わった場合、ピストンがシリンダーに対して傾く虞があり、当該ピストンとシリンダー間のシール部に隙間が生じて、その隙間から液漏れが発生する懸念があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、ピストンとシリンダー間のシール性を向上して、操作レバーを牽曳操作する際の液漏れを抑制することが可能なトリガー式液体噴出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るトリガー式液体噴出器は、容器内の内容液を吸引、加圧、圧送するポンプを備える本体部と、該本体部に揺動可能に支持されて牽曳を繰り返すことで該ポンプを駆動させる操作レバーと、該本体部の前方端部に設けられ、加圧された内容液を外界に向けて噴出させるノズルとを備えるトリガー式液体噴出器であって、
前記ポンプは、前記操作レバーに前端部が連結されたピストンと、前記本体部に装着されて該ピストンを収容する筒状のシリンダー部材とを備え、
前記ピストンは、前記シリンダー部材の内周面に対して液密に摺動するシール部を有し、
前記ピストンは、前記本体部に設けられた円筒状の内筒壁の外周面に摺動可能に当接、或いはわずかに隙間をあけて配置されている外側筒を有し、該外側筒の外周面に、前記シール部が設けられており、
前記シリンダー部材は、内周面から内側に突出し、前記シール部よりも前方で前記ピストンの前記外側筒の外周面に摺動可能に当接、或いはわずかに隙間をあけるガイド部を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るトリガー式液体噴出器にあっては、前記本体部は、前記シリンダー部材を外周面側から嵌合保持する筒状の保持部と、該保持部の内側で、前記シリンダー部材の後端部を内周面側から嵌合保持する嵌合リブとを有することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るトリガー式液体噴出器にあっては、前記ピストンの外周面及び前記ガイド部の内周面の少なくとも一方に、摺動リブを設けてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ピストンとシリンダー間のシール性を向上して、操作レバーを牽曳操作する際の液漏れを抑制することが可能なトリガー式液体噴出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るトリガー式液体噴出器を断面で示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。なお、本願明細書、特許請求の範囲、要約書、及び図面では、後述するシュラウドの上壁が位置する側を上方(図1における上側)とし、装着キャップが設けられる側を下方(図1における下側)とする。また、ノズルが設けられる側を前方(図1における左側)とし、その反対側を後方(図1における右側)とする。また、上下方向及び前後方向に対して直交する方向(図1における紙面に垂直な方向)を側方(左右方向(横方向))とする。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態であるトリガー式液体噴出器1を断面図で示したものである。トリガー式液体噴出器1は、容器Cの口部に取り付けられる装着キャップ2と、装着キャップ2を回転自在且つ抜け出し不能に保持するとともに、容器C内の内容液を吸引、加圧、圧送するポンプPを備える本体部3と、本体部3に連結するとともに容器Cの底部に向けて延び、ポンプPを駆動させることで容器C内の内容液を吸い上げるパイプ4と、本体部3の前方端部に設けられ、内容液を外界に向けて噴出させるノズル5と、本体部3に揺動可能に支持されて牽曳を繰り返すことでポンプPを駆動させる操作レバー6と、操作レバー6に復元力を付与するバネ部材7と、本体部3を覆い隠すシュラウド8と、を備えている。
【0014】
装着キャップ2は、円筒状となる側壁2aの内面に、容器Cの口部に設けたねじ部に適合するねじ部2bを有している。また、側壁2aの上方には、中央部に上部開口2cを有する天壁2dが設けられていて、天壁2dにおける上部開口2cの縁部には、径方向内側に向かって下向きに傾斜する天壁テーパ部2eが設けられている。
【0015】
本実施形態において本体部3は、複数の部材から構成されていて、装着キャップ2は、その一つをなすボディ10に取り付けられる。ボディ10の下方には、上部開口2cに挿通される円筒状の連結筒部11が設けられていて、連結筒部11の外周面には、径方向外側に延在するフランジ12が設けられている。ボディ10に取り付けられた装着キャップ2は、フランジ12によって抜け止めされるとともに連結筒部11に対して回転自在に保持されるため、装着キャップ2のみを回転させることで、ボディ10を容器Cに取り付けることができる。また、フランジ12の下方には、容器Cとフランジ12とで挟持されるパッキンが設けられている。
【0016】
また、連結筒部11の上方には、連結筒部11に対して後方に偏心するとともに連結筒部11よりも小径となる縦筒13が設けられていて、縦筒13の上方には、前方に向けて延在するとともにその内側に送給経路14aを有する横筒14が設けられている。ここで縦筒13の内部と横筒14の送給経路14aとは、連通孔14bを介して連通している。
【0017】
そして、図1に示すように、横筒14の下方には、縦筒13から前方に向けて突出する円筒状の保持部15が設けられていて、保持部15の径方向内側には、円筒状をなす内筒壁16が設けられている。また、保持部15には、その内外を連通させる通気孔17が形成され、また、保持部15と内筒壁16との相互間には、縦筒13を貫く連通孔18が形成されている。
【0018】
また、縦筒13内には、上記の送給経路14aに連通する縦型経路20aを形成する円筒状のインテイク20が設けられている。インテイク20の下方には、径方向外側に延在するフランジ21が設けられていて、フランジ21には、保持部15の通気孔17に連通する通気孔22が形成されている。また、インテイク20の下端には、縦型経路20aに連通するようパイプ4が嵌合保持されている。
【0019】
更に、インテイク20の内側には、ポンプPによって吸引された内容液の逆流を防止する弁23が設けられ、弁23の上方には、連通孔18に連通する連通孔24が形成され、更に連通孔24の上方には弁25、及び連通孔14bにつながる連通孔26が設けられている。弁25は、弁部25aと、弁部25aを弾性支持するバネ体25bと、このバネ体25b及び弁部25aを一体的に保持する基部25cから構成されており、ポンプPにより内容液を吸引する際には、送給経路14aを閉状態に維持しているが、内容液を加圧、圧送するときはバネ体25bの弾性変位により弁部25aを押し上げて該送給経路14aと縦型経路20aとを連通状態にする。
【0020】
ポンプPは、保持部15に嵌合保持される円筒状のシリンダー部材30と、シリンダー部材30の内側に収容され、シリンダー部材30の内側を封止してシリンダー室Rを形成するピストン32とを備える。ピストン32は、有底円筒状の内側筒33と、内側筒33の外面から突出する環状壁34を介して内側筒33の外側に位置する外側筒35とを有し、外側筒35の後端部外周面には、シリンダー部材30の内周面に対して摺動可能に液密に当接する環状のシール部36が設けられている。外側筒35は、内筒壁16の外周面を摺動可能に当接、或いはわずかに隙間をあけて配置されている。また、内側筒33の前方側端部には、上述の操作レバー6に係合する係合孔33aが設けられている。
【0021】
シリンダー部材30は、内周面から内側に突出し、シール部36よりも前方でピストン32の外側筒35の外周面に摺動可能に当接、或いはわずかに隙間をあけるガイド部37を有する。図1に示すように、本実施形態においてガイド部37は、シリンダー部材30の前端部内周面から突出し、湾曲しながら前方に延びる環状の突起であり、ピストン32の外側筒35の外周面に対して摺動可能に当接している。このガイド部37により、ピストン32はシリンダー部材30に対して傾くことを抑制される。なお、ガイド部37の形状はこれに限定されず、例えば、図1においてガイド部37とシリンダー部材30の端部との間には環状の隙間37aが形成されているが、この隙間37aを埋めた形状とすることも可能である。
【0022】
また、シリンダー部材30には、シリンダー部材30の内外を連通させるとともに、保持部15とシリンダー部材30との間に形成される隙間を介して保持部15の通気孔17に連通する外気導入孔31が形成されている。図1に示すように、外気導入孔31は、操作レバー6が牽曳されていない状態においてシール部36によって塞がれている。さらに、本実施形態においてシリンダー部材30は、縦筒13から前方に突出する嵌合リブ19によって、その後端部を内周面側から嵌合保持されている。
【0023】
上記の構成からなる本実施形態のトリガー式液体噴出器1にあっては、操作レバー6を牽曳してピストン32をシリンダー部材30に対して後退させると、シリンダー室R内の液体が加圧され、加圧された液体は連通孔18、24を通過し、縦型経路20a、弁25、送給経路14aを経てノズル5から外界に噴射される。その後、操作レバー6を解放すると、該操作レバー6はバネ部材7の復元力によって前方に揺動し、これに追従してピストン32もシリンダー部材30に対して前進してシリンダー室R内が負圧となる。これにより、容器C内の液体がパイプ4から吸い上げられるとともに弁23を押し上げて、シリンダー室R内に流入する。このような操作レバー6の牽曳と解放を繰返すことにより、容器C内の液体をノズル5から連続的に噴射することができる。
【0024】
そして、本実施形態のトリガー式液体噴出器1によれば、このような操作レバー6の牽曳操作時に、操作レバー6に対して横方向(左右方向)もしくは斜め方向の力が加わった場合でも、ピストン32の外周面に対して摺動可能に当接するシリンダー部材30のガイド部37が、ピストン32の前後方向以外の移動を制限しているため、従来のようにピストン32がシリンダー部材30に対して傾くことがない。その結果、シリンダー部材30の内周面とシール部36との間に隙間が生じることがなくなり、ピストン32とシリンダー部材30の間のシール性が向上して、シリンダー室R内の液体が外部に漏出するのを防止することができる。
【0025】
また、本実施形態のトリガー式液体噴出器1にあっては、シリンダー部材30の後端部を内周面側から嵌合保持する嵌合リブ19を設けたことにより、シリンダー部材30を本体部3に対してより確実に固定し、シリンダー部材30と本体部3間のシール性を高めるとともに、ピストン32のシリンダー部材30に対する傾きをより確実に抑制してシール性を向上させ、液漏れを防止することができる。
【0026】
また、本実施形態のトリガー式液体噴出器1にあっては、ピストン32の外側筒35の内周面を、内筒壁16の外周面に対して摺動可能としたことにより、より確実にピストン32のシリンダー部材30に対する傾きを抑制して、液漏れを防止することができる。
【0027】
また、本発明のトリガー式液体噴出器1にあっては、ピストン32の外周面及びガイド部37の内周面の少なくとも一方に、摺動リブを設けることが可能である。摺動リブとしては、例えば、ピストン32の軸線方向に延びる細長い形状のリブを、ピストン32の外周面に、周方向に間隔をあけて複数本設けたものとすることができる。このような摺動リブを設けることで、ガイド部37の内周面とピストン32の外周面とが全周にわたって当接した状態で摺動する場合に比べて、より軽い力で操作レバー6を牽曳することができる。
【0028】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、ガイド部37の形状は環状である必要はなく、周方向に間欠する複数のリブ状突起とすることも可能である。また、シリンダー部材30の後端部を嵌合保持する嵌合リブ19の形状は、環状としてもよいし、周方向に間欠する複数のリブ状突起とすることも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 トリガー式液体噴出器
2 装着キャップ
2a 側壁
2b ねじ部
2c 上部開口
2d 天壁
2e 天壁テーパ部
3 本体部
4 パイプ
5 ノズル
6 操作レバー
7 バネ部材
8 シュラウド
10 ボディ
11 連結筒部
12 フランジ
13 縦筒
14 横筒
14a 送給経路
15 保持部
16 内筒壁
17 通気孔
18 連通孔
19 嵌合リブ
20 インテイク
20a 縦型経路
21 フランジ
22 通気孔
23 弁
24 連通孔
25 弁
25a 弁部
25b バネ体
25c 基部
26 連通孔
30 シリンダー部材
31 外気導入孔
32 ピストン
33 内側筒
33a 係合孔
34 環状壁
35 外側筒
36 シール部
37 ガイド部
C 容器
P ポンプ
R シリンダー室
図1