特許第6208038号(P6208038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208038
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】シートベルト装置とベルト案内部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/12 20060101AFI20170925BHJP
   B60R 22/24 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B60R22/12
   B60R22/24
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-31693(P2014-31693)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-155283(P2015-155283A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2016年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 展弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 篤樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 誠
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄一
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−223841(JP,A)
【文献】 特開2013−23160(JP,A)
【文献】 特開昭62−34840(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3040109(JP,U)
【文献】 特開平7−309201(JP,A)
【文献】 特開2005−58726(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第2530208(FR,A1)
【文献】 米国特許第3957282(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/12
B60R 22/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートのシートベルト装置であって、
一端部が巻取装置に引出し可能に巻き取られ、他端部がアンカに固定されるベルト体は、長尺で幅広の帯状体と、この帯状体の幅方向両端部の長手方向に沿って配設されたファスナとを備え、
前記ベルト体の引出し経路上には、前記ベルト体を引出し及び巻取り案内する挿通孔を有するベルト案内部材が配設され、
前記ベルト案内部材の挿通孔のベルト巻取側に位置する部分には、前記ファスナを開閉するスライダが装着されるスライダ支持体が配設され、
前記ベルト体の引出し時には、前記スライダによって前記ファスナが開かれて前記ベルト案内部材の挿通孔に挿通されて引き出し案内され、
前記ベルト体の巻取り時には、前記ベルト案内部材の挿通孔に挿通されて巻き取り案内された後、前記スライダによって前記ファスナが閉じられることで幅狭のチューブ状をなし、
前記スライダ支持体は、前記ベルト案内部材とは別個に形成され、
前記ベルト案内部材は、車体側部材に対し取付軸を中心として揺動可能に配設されていることを特徴とするシートベルト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシートベルト装置であって、
前記スライダ支持体は、前記ベルト案内部材と共通の前記取付軸によって、前記車体側部材に取り付けられていることを特徴とするシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は乗物用シートのシートベルト装置とベルト案内部材に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートに着座している着座者を保護するためのシートベルト装置において、ベルト幅を広げて衝撃を緩和するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示されたシートベルト装置においては、着座者の肩部後方位置に配設されるガイド部材によってシートベルトが巻取装置に向けて案内される。
ガイド部材は、そのシートベルトを案内するガイド面が当該シートベルトの幅方向両側を湾曲させて折り返すことのできる断面C字形状の湾曲案内部が対向して配置された形態として構成されており、該湾曲案内部の幅方向の配置間隔はシートベルトを収納装置に収納する方向に向けて漸次幅狭とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−240432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたシートベルト装置においては、シートベルトの巻き取り時には、ガイド部材の断面C字形状の湾曲案内部に案内されてシートベルトが幅狭となる。また、シートベルトの巻き取り時には、シートベルトがガイド部材を通過して引き出されることでシートベルト自身の復元力によって幅広となる。
このため、ガイド部材に案内されてシートベルトが幅狭となった後、ガイド部材と収納装置(巻取装置)との間の距離が長く設定されていると、ガイド部材と収納装置との間において、シートベルト自体の復元力によって幅広となることが想定される。この場合、シートベルトが幅広状態で巻取られようとし、巻き取り不良が発生する恐れがある。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、ベルト体を引き出して使用するときには、ベルト体のベルト幅を広げ、ベルト体を巻き取るときには、ベルト体を幅狭の状態で良好に巻き取ることができるシートベルト装置とベルト案内部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の第1の発明に係るシートベルト装置は、乗物用シートのシートベルト装置であって、
一端部が巻取装置に引出し可能に巻き取られ、他端部がアンカに固定されるベルト体は、長尺で幅広の帯状体と、この帯状体の幅方向両縁部の長手方向に沿って配設されたファスナとを備え、
前記ベルト体の引出し経路上には、前記ベルト体を引出し及び巻取り案内する挿通孔を有するベルト案内部材が配設され、
前記ベルト案内部材の挿通孔よりもベルト巻取側に位置する部分には、前記ファスナを開閉するスライダが装着されるスライダ支持体が配設され、
前記ベルト体の引出し時には、前記スライダによって前記ファスナが開かれた後、前記ベルト案内部材の挿通孔に挿通されて引き出し案内され、
前記ベルト体の巻取り時には、前記ベルト案内部材の挿通孔に挿通されて巻き取り案内された後、前記スライダによって前記ファスナが閉じられることで幅狭のチューブ状をなすことを特徴とする。
【0007】
第1の発明によると、ベルト体を引き出して使用する場合、巻取装置側のベルト体がスライダを通過する際、スライダによってファスナが開かれる。その後、ベルト体は、ベルト案内部材の挿通孔を経て引き出される。すると、ベルト体は、自身の復元力によって幅広に展開される。
このため、乗物用シートに着座している着座者は、幅広に展開されたベルト体によって保護される。
ベルト体を巻き取って格納する場合、幅広に展開されたベルト体がベルト案内部材の挿通孔を経てスライダを通過する際、スライダによってファスナが閉じられ、幅狭のチューブ状をなす。このため、ベルト体を巻き取り不良なく良好に巻き取ることができる。
【0008】
第2の発明に係るシートベルト装置は、第1の発明のシートベルト装置であって、
スライダ支持体は、ベルト案内部材とは別個に形成され、
前記ベルト案内部材は、車体側部材に対し取付軸を中心として揺動可能に配設されていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明によると、例えば、着座者によるベルト体の引出方向が、斜めとなって引き出された場合、ベルト体の引出方向に追従してベルト案内部材が取付軸を中心としてベルト体の引出方向に沿って回動する。
一方、スライダ支持体は、ベルト案内部材とは別個に形成されてベルト案内部材の挿通孔のベルト巻取側に位置する部分に配設される。
このため、ベルト案内部材が取付軸を中心としてベルト体の引出方向に沿って回動したとしても、スライダ支持体と共にスライダが、ベルト巻取側にあるベルト体のファスナ(閉じ状態にある)の方向に対し、常時、正常な状態で指向する。
この結果、ファスナを開くときのスライダのスライド抵抗が増大されることを抑制することができる。これによって、スライダのスライド性が良好に保たれ、ファスナが円滑に開かれる。
【0010】
第3の発明に係るシートベルト装置は、第2の発明のシートベルト装置であって、
スライダ支持体は、ベルト案内部材と共通の取付軸によって、車体側部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明によると、スライダ支持体が、ベルト案内部材と共通の取付軸によって車体側部材に取り付けられることで、スライダ支持体専用の取付部材が不要となり、この分だけ部品点数や組付工数を削減することができる。
【0012】
第4の発明に係るシートベルト装置のベルト案内部材は、シートベルト装置のベルト体を引出し及び巻取り案内する挿通孔を有するベルト案内部材であって、
前記挿通孔のベルト巻取側に位置する部分に対し、ファスナを開閉するスライダが装着されるスライダ支持体が配設されていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明によると、第1の発明のシートベルト装置に対しベルト案内部材を好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施例1に係るシートベルト装置と乗物用シートとの配設状態を簡略して示す斜視図である。
図2】ベルト案内部材と、スライダと、ベルト体との関係を示す正面図である。
図3図2のIII−III線に沿うベルト案内部材と、スライダと、ベルト体との関係を示す側断面図である。
図4】ファスナが開かれベルト体が幅広に展開された状態を示す横断面図である。
図5】ファスナが閉じられベルト体が幅狭のチューブ状をなした状態を示す横断面図である。
図6】ベルト案内部材と、スライダと、ベルト体との関係を示す背面図である。
図7】ベルト体が斜めに引き出されたときにベルト体に追従してベルト案内部材が回動した状態を示す正面側から示す説明図である。
図8】ベルト体が斜めに引き出されたときにベルト体に追従してベルト案内部材が回動した状態を示す背面側から示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0016】
この発明の実施例1を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、シートクッション2とシートバック3とを備えた乗物用シート1に着座する着座者を保護するためのシートベルト装置は、巻取装置10と、アンカ20と、ベルト案内部材(スルーアンカ、スリップジョイント等と呼ばれることもある)11と、タングプレート30と、バックル40と、ベルト体50と、を備えている。
【0017】
巻取装置10及びアンカ20は、乗物用シート1の車外側の側方に位置する車体のピラー部の下部近傍にそれぞれ配設されている。なお、巻取装置10は乗物用シート1のシートバック3内に配設され、アンカ20はシートクッション2のサイドフレーム部の車外側に配設されることもある。
また、バックル40は、シートクッション2のクッションフレームのサイドフレーム部の車内側に配設されている。
【0018】
ベルト案内部材11は、ベルト体50の引出し経路上に装着されるものであり、車体側部材(例えば、車体のピラー部の上部近傍、又はシートバック3の肩部上面近傍)に配設される。
この実施例1において、図1図3に示すように、ベルト案内部材11は、その上部に形成された取付部12の取付孔13に段付きボルト等よりなる取付軸19が挿通され、この取付軸19が車体側部材としての車体のピラー部の上部近傍にねじ込まれることで、取付軸19を中心として揺動可能(回動可能)に装着されている。
ベルト案内部材11の下部には、ベルト体50が挿通案内される横長四角形状の挿通孔14が形成されている。
【0019】
図1図2に示すように、ベルト体50は、その一端部が巻取装置10に引出し可能に巻き取られる。
ベルト体50は、ベルト案内部材12の挿通孔14を通し、その他端部がアンカ20に固定されている。
また、タングプレート30は、その挿通孔31においてベルト体50に移動可能に挿通されている。
【0020】
図4図5に示すように、ベルト体50は、長尺で幅広の帯状体51と、この幅広の帯状体51の幅方向両縁部の長手方向に沿って配設されたファスナ60とを備えている。
この実施例1において、シートベルト装置の使用状態において、ベルト体50の着座者の胸部及びその近傍を支承する部分に対し、ファスナ60の一対のテープ61がミシン縫い等によって縫い合わされて配設され、その他の部分においては、幅広の帯状体51の幅方向両縁部がミシン縫い等によって縫い合わされてチューブ状をなしている。なお、一対のテープ61には相互に噛み合うエレメント62がそれぞれ配設されている。
【0021】
図1図3に示すように、ベルト案内部材11の挿通孔14よりもベルト巻取側に位置する部分には、ファスナ60の両エレメント62を噛み合わせたり、あるいは解放してファスナ60を開閉するスライダ63が装着されるスライダ支持体70が配設されている。
【0022】
この実施例1において、スライダ支持体70は、ベルト案内部材11とは別個に形成されて、車体側部材としてのピラー部の上部近傍に取り付けられている。
また、スライダ支持体70は、ベルト案内部材11と共通の取付軸19によって、車体側部材に取り付けられ、ベルト案内部材11とは相対的に回動可能である。
すなわち、図2図3に示すように、スライダ支持体70は、取付軸19が挿通される取付孔を有するボス部71と、このボス部71から下向きに延出された支持部72とを一体に有している。
さらに、支持部72の先端部(下端部)には、スライダ63が、その胴体部64から突出された柱部65において一体状に装着されている。
そして、ベルト体50の引出し時には、スライダ63によってファスナ60が開かれた後、ベルト案内部材11の挿通孔14に挿通されて引き出し案内される。
また、ベルト体50の巻取り時には、ベルト案内部材11の挿通孔14に挿通されて巻き取り案内された後、スライダ63によってファスナ60が閉じられることで幅狭のチューブ状をなし、巻取装置10に巻き取られるようになっている。
【0023】
この実施例1に係るシートベルト装置は上述したように構成される。
したがって、ベルト体50を引き出して使用する場合、巻取装置10側に位置するベルト体50がファスナ60のスライダ63を通過する際、スライダ63によってファスナ60が開かれた後、ベルト案内部材11の挿通孔14を経て引き出される。すると、ベルト体50は、自身の復元力によって幅広に展開される。
このため、乗物用シートに着座している着座者は、幅広に展開されたベルト体50によって保護される。
【0024】
ベルト体50を巻き取って格納する場合、幅広に展開されたベルト体50がベルト案内部材11の挿通孔14を経てファスナ60のスライダ63を通過する際、スライダ63によってファスナ60が閉じられ、幅狭のチューブ状をなす。このため、ベルト体50を巻取装置10によって巻き取り不良なく良好に巻き取ることができる。
また、ベルト体50は、幅狭のチューブ状をなすため、幅広のベルト体50の幅寸法に対応して巻取装置10を大型化する必要もない。
【0025】
また、この実施例1において、例えば、図7図8に示すように、着座者によるベルト体50の引出方向が、斜めとなって引き出された場合、ベルト体50の引出方向に追従してベルト案内部材11が取付軸19を中心としてベルト体50の引出方向に沿って回動する。
【0026】
一方、スライダ支持体70は、ベルト案内部材11とは別個に形成されてベルト案内部材11の挿通孔14よりもベルト巻取側に位置する部分に配設される。
このため、ベルト案内部材11が取付軸19を中心としてベルト体50の引出方向に沿って回動したとしても、スライダ支持体70と共にスライダ63が、ベルト巻取側のベルト体50のファスナ60(閉じ状態にある)の方向に常時、正常な状態で指向する。
この結果、スライダ63のスライド抵抗が増大されることを抑制することができ、スライダ63のスライド性が良好に保たれ、ファスナ63が円滑に開かれる。
【0027】
また、この実施例1において、スライダ支持体70は、ベルト案内部材11と共通の取付軸19によって車体側部材に取り付けられる。このため、スライダ支持体70専用の取付部材が不要となり、この分だけ部品点数や組付工数を削減することができる。
【0028】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1において、スライダ支持体70は、ベルト案内部材11と共通の取付軸19によって、車体側部材に取り付けられる場合を例示したが、スライダ支持体70は、ベルト案内部材11とは別の取付部材によって車体側部材に取り付けられてもよい。
また、スライダ支持体70は、ベルト案内部材11に対し相対回動可能に取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 乗物用シート
3 シートバック
10 巻取装置
11 ベルト案内部材
14 挿通孔
19 取付軸
20 アンカ
30 タングプレート
40 バックル
50 ベルト体
60 ファスナ
63 スライダ
70 スライダ支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8