(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208042
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】鉄道車両用緩衝器
(51)【国際特許分類】
B61G 11/12 20060101AFI20170925BHJP
B61G 9/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B61G11/12
B61G9/06
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-33860(P2014-33860)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-157582(P2015-157582A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】沖本 翼
(72)【発明者】
【氏名】藤後 宏之
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−166726(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0039044(US,A1)
【文献】
特開平09−042361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61G 9/00 − 11/18
B61G 7/10 − 7/12
B60G 1/00 − 99/00
B62D 33/067
F16F 9/00 − 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行時に生じるような比較的小さな衝撃を吸収するゴム緩衝部と、衝突時に生じるような前記衝撃よりも比較的大きな衝撃を吸収する粘性流体緩衝部とからなり、前記ゴム緩衝部が所定径の一対の第1、2のゴム緩衝器から、前記粘性流体緩衝部が粘性流体が充填されているシリンダと該シリンダに摺動自在に設けられているピストン体とから構成され、
前記一対の第1、2のゴム緩衝器は、複数枚の円盤状の鋼板と板状のゴム材とが交互に積層された組立体からなり、所定の車体取付板の両側に配置され、
前記車体取付板は中心に透孔が形成された平板状を呈し、該透孔には2つ割構造の一対の凹面軸受と、該凹面軸受に軸受けされていて所定の貫通孔が明けられた球状体とからなる摺動・揺動機構が設けられ、
所定の作用棒が前記第1のゴム緩衝器と、前記球状体の貫通孔と、前記第2のゴム緩衝器とをこの順で挿通しており、該作用棒の一方の端部は前記粘性流体緩衝部に剛的に接続され、他方の端部には所定の押プレートが設けられ、前記第1のゴム緩衝器は前記粘性流体緩衝部と前記車体取付板とによって、前記第2のゴム緩衝器は前記車体取付板と前記押プレートとによって、それぞれ締め付けられて初圧が負荷されており、
前記作用棒が前記球状体の貫通孔を軸方向に摺動して一方向に移動すると、前記一対の第1、2のゴム緩衝器の一方のゴム緩衝器が、そして他方向に移動すると他方のゴム緩衝器が圧縮されて緩衝するようになっており、前記球状体が前記凹面軸受に対して回動することによって前記作用棒が所定方向に回動あるいは揺動すると、前記一対の第1、2のゴム緩衝器の所定部位が圧縮されて緩衝するようになっていることを特徴とする鉄道車両用緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝器において、前記作用棒の一端が前記粘性流体緩衝部を構成しているシリンダに剛的に接続されている鉄道車両用緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の連結器に組み合わされて連結装置を構成するための緩衝器に関するもので、特に限定するものではないが、鉄道車両、モノレール、無軌道の列車等の連結器に組み合わせて好適な鉄道車両用緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、一般に複数台の車両が連結器で連結されて運行されているが、連結時には車両間に衝撃が生じる。また、複数台の車両が編成されて走行するときは、編成された複数台の車両は1個の剛体ではなく、多少の遊びのある連結器で接続された一種の伸縮体と見なすことができ、車両間には発停時、加減速時等において衝撃が生じる。このような衝撃は車両に悪影響を与えるばかりでなく、乗り心地を悪くする。そこで、このような衝撃を吸収するために連結器には緩衝器が組み合わされている。
【0003】
以下、鉄道車両の連結器に組み合わされる緩衝器について説明する。緩衝器は、連結器から作用する引っ張り方向と押し方向の両方の衝撃を吸収するようになっており、比較的シンプルなシングル形緩衝器の他に、小さな衝撃でも滑らかに吸収できるダブル形緩衝器が知られている。このような緩衝器が組み合わされている連結装置は、センタリング装置、胴受装置、ゴム緩衝器、粘性流体緩衝器あるいは塑性変形緩衝器等から構成されている。これらの装置から構成されている連結装置は、特許文献を示すまでもなく従来周知であるが、その一例として特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−20695号公報
【0005】
特許文献1に示されている連結装置は、
図3の模式的側面図に示されているように、
図3において左端が他の連結器50’に接続されるようになっている連結器50、連結器50にその左端が接続されている揺動機構52、揺動機構52にその左端が同様に接続され、走行時のような通常の衝撃を吸収するゴム緩衝器55等からなっている。衝突時のような大きな衝撃時に塑性変形して緩衝する塑性変形緩衝器51は、連結器50に組み込まれている。揺動機構52は水平ピン53と縦ピン54とから構成されている。ゴム緩衝器55は、緩衝器枠56と、一対の第1、2のゴムパット組立体61、62とからなり、これらのゴムパット組立体61、62は、緩衝器枠56を軸方向に仕切っている仕切部材58と第1、2の伴板56、59との間にそれぞれ配置されている。これらの伴板57、59は、図示されていない車両に取り付けられている伴板守に係止されている。上記した各装置あるいは部材は、図示されているように、個々に構成され、そして機械的な接続部材により適宜軸方向に接続されている。
【0006】
なお、車両を連結するときには連結器50とゴム緩衝器55は一直線に保持されているのが望ましいのでセンタリング装置が、また連結器50が重力により垂れ下がるのを防ぐために胴受装置が、それぞれ設けられるが、
図3には示されていない。センタリング装置、胴受装置等は、例えば特開2008−254542号公報に示されているように構成され、そして上記した連結器装置に格別に組み込まれるようになっている。
【0007】
上記連結器50に、
図3において右方向の小さな衝撃が作用すると、この衝撃力は塑性変形緩衝器51および揺動機構52を介して緩衝器枠56に伝わる。緩衝器枠56を仕切っている仕切部材58も右方向に押される。第2の伴板59は伴板守により車体に固定されているので、第2のゴムパット組立体62が圧縮される。これにより、右方向の衝撃が吸収される。左方に作用するときは、今度は仕切部材58が左方へ動くので、仕切部材58と第1の伴板57との間に設けられている第1のゴムパット組立体61が圧縮されて緩衝される。衝突時のような大きな衝撃が作用すると、今度は塑性変形緩衝器51が変形し、あるいは破損し衝撃が緩衝される。また、縦ピン54により、連結器50とゴム緩衝器55との間の水平方向の変位は許容され、垂直方向の変位に対しては水平ピン53により許容される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、特許文献1により提案されている連結装置も第1、2のゴムパット組立体61、62を有するので、走行時のような小さな圧縮および引っ張り方向の緩衝は吸収される。また、塑性変形緩衝器51も備えているので、衝突事故のような大きな衝撃にも対応できる。さらには、連結器50とゴム緩衝器55は水平ピン53と縦ピン54とからなる揺動機構52により接続されているので、連結器50とゴム緩衝器55との間の上下および水平方向の変位にも対応できる、等の利点が得られる。
【0009】
しかしながら、改良すべき問題点も見出される。例えば、連結器50(塑性変形緩衝器51)、揺動機構52,ゴム緩衝器55等は個々に構成されているので、これらを接続する機械的な部品を必要とし、重量は比較的大きくなっている。また、
図3には示されていないが、胴受装置、センタリング装置も必要とするので、重量はさらに嵩んでいる。重量が嵩んでいるのでコスト高にもなっている。また、連結器50、揺動機構52,ゴム緩衝器55等が接続部品により軸方向に配置されているので、軸方向に長く配置面積あるいは配置空間を広く必要としている。
【0010】
本発明は、上記したような問題点を解決した鉄道車両用緩衝器を提供することを目的としている。具体的には、圧縮方向、引っ張り方向等の通常の比較的小さな衝撃力を緩衝すると共に、衝突事故時のような比較的大きな衝撃力も緩衝し、さらには胴受け機能およびセンタリング機能を有するにも拘わらず、コンパクトで軽量な鉄道車両用緩衝器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、走行時に生じるような相対的に小さいな衝撃を吸収するゴム緩衝部と、衝突時に生じるような前記衝撃よりも相対的に大きな衝撃を吸収する粘性流体緩衝部とから構成する。前記ゴム緩衝部は、車体取付板の両側に配置される一対の第1、2のゴム緩衝器から構成し、前記粘性流体緩衝部は粘性流体が充填されるシリンダとピストン体とから構成する。そして、前記粘性流体緩衝部に、前記第1、2のゴム緩衝器を圧縮するように作用する作用棒を剛的に取り付ける。前記作用棒は、前記車体取付板に摺動・揺動機構を介して取り付ける。すなわち、車体取付枠に対して軸方向および回動方向あるいは揺動方向に自在に取り付ける。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、走行時に生じるような比較的小さな衝撃を吸収するゴム緩衝部と、衝突時に生じるような前記衝撃よりも比較的大きな衝撃を吸収する粘性流体緩衝部とからなり、前記ゴム緩衝部が所定径の一対の第1、2のゴム緩衝器から、前記粘性流体緩衝部が粘性流体が充填されているシリンダと該シリンダに摺動自在に設けられているピストン体とから構成され、前記一対の第1、2のゴム緩衝器は、
複数枚の円盤状の鋼板と板状のゴム材とが交互に積層された組立体からなり、所定の車体取付板の両側に配置され、
前記車体取付板は中心に透孔が形成された平板状を呈し、該透孔には2つ割構造の一対の凹面軸受と、該凹面軸受に軸受けされていて所定の貫通孔が明けられた球状体とからなる摺動・揺動機構が設けられ、所定の作用棒が前記第1のゴム緩衝器と、前記球状体の貫通孔と、前記第2のゴム緩衝器とをこの順で貫通しており、該作用棒の一方の端部は前記粘性流体緩衝部に剛的に接続され、他方の端部には所定の押プレートが設けられ、前記第1のゴム緩衝器は前記粘性流体緩衝部と前記車体取付板とによって、前記第2のゴム緩衝器は前記車体取付板と前記押プレートとによって、それぞれ締め付けられて初圧が負荷されており、前記作用棒が
前記球状体の貫通孔を軸方向に摺動して一方向に移動すると、前記一対の第1、2のゴム緩衝器の一方のゴム緩衝器が、そして他方向に移動すると他方のゴム緩衝器が圧縮されて緩衝する
ようになっており、前記球状体が前記凹面軸受に対して回動することによって前記作用棒が所定方向に回動あるいは揺動すると、前記一対の第1、2のゴム緩衝器の所定部位が圧縮されて緩衝するように構成される。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の緩衝器において、前記作用棒の一端が前記粘性流体緩衝部を構成しているシリンダに剛的に接続される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によると、ゴム緩衝部を構成している一対の第1、2のゴム緩衝器は
複数枚の円盤状の鋼板と板状のゴム材とが交互に積層された組立体からなり、車体取付板の両側に初圧を付与して配置され、その作用棒は粘性流体緩衝部に剛的に接続されているので、全体がコンパクト、軽量になっている。コンパクト、軽量であるにも拘わらず、ゴム緩衝部を備えているので、走行時に生じるような比較的小さな衝撃を吸収すると伴に、粘性流体緩衝部により衝突時に生じるような相対的に大きな衝撃も吸収できる。
そして車体取付板は中心に透孔が形成された平板状を呈し、該透孔には2つ割構造の一対の凹面軸受と、該凹面軸受に軸受けされていて所定の貫通孔が明けられた球状体とからなる摺動・揺動機構が設けられている。このような球状体に対して、所定の作用棒が第1のゴム緩衝器と、球状体の貫通孔と、第2のゴム緩衝器とをこの順で貫通している。従って作用棒は車体取付板に対して回動方向あるいは揺動方向に自在であるので、作用棒は上下、左右のようなあらゆる方向に傾くことができ、傾くと車体取付板の両側に配置されている所定径の第1、2のゴム緩衝器の所定部位が圧縮される。これにより、あらゆる方向の衝撃力が緩衝される。
【0014】
また、粘性流体緩衝部に、換言すると作用棒に下方への力が作用すると、所定径の第1、2のゴム緩衝器1,2の所定部位が圧縮されるが、この圧縮力の反作用により粘性流体緩衝は支えられる。すなわち、胴受けされる。本発明によると、第1、2のゴム緩衝器は車体取付板の両側面側に配置され重力的に左右にバランスし、粘性流体緩衝部はシリンダとピストン体とからコンパクトで軽量に構成されているので、粘性流体緩衝部を支持する力は大きくはなく、従来のような胴受装置がなくても胴受けされるという、効果が得られる。
【0015】
さらには、本発明によると、粘性流体緩衝部に作用する左右方向の力も第1、2のゴム緩衝器の所定部位が圧縮されて緩衝するので、第1、2のゴム緩衝器の復元力により粘性流体緩衝部は、無負荷状態では車体取付板に対して直角方向の中心方向を向く効果すなわちセンタリング効果も得られる。
【0016】
請求項2に記載の発明によると、作用棒の一端が粘性流体緩衝部を構成しているシリンダに剛的に接続されているので、粘性流体緩衝部を構成しているピストン体に接続されている場合に比較して、粘性流体緩衝部の重量は車体取付板の方へ寄る。すなわち、より小さな胴受力で胴受けされるという、効果がさらに得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る緩衝器を一部断面にして示す正面図である。
【
図2】本発明の他の実施の形態を示す図で、その(ア)は粘性流体緩衝部の他の実施の形態を一部断面にして示す正面図、その(イ)は摺動・揺動機構の他の実施の形態に係る球状体と作用棒とを示す斜視図、その(ウ)は摺動・揺動機構が組み込まれた車体取付板を示す平面図、その(エ)は図(ウ)においてエ−エ方向に見た断面図、その(オ)は摺動・揺動機構が他の方法で組み込まれた車体取付板を示す平面図、その(カ)は図(オ)においてカ−カ方向に見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る緩衝器Sは、
図1に示されているように、概略的には通常の走行時に生じるような相対的に小さな衝撃を緩衝するゴム緩衝部Gと、それよりも大きな例えば衝突時に生じるような相対的に大きな衝撃を吸収する粘性流体緩衝部Fとからなっいる。ゴム緩衝部Gは第1、2のゴム緩衝器1、2から、そして粘性流体緩衝部Fはシリンダ30とピストン体35とから構成されている。
【0019】
車体取付板20の両側に配置される一対の第1、2のゴム緩衝器1、2は、ゴム製の中空体から構成することもできるが、望ましくは所定径の複数枚の円盤状の鋼板と、同様な形状の板状のゴム材とが交互に積層された組立体から構成されている。そして、その中心部には、作用棒10が貫通されている。
【0020】
粘性流体緩衝部Fは、粘性流体が充填されるシリンダ30と、このシリンダ30内に往復動的に設けられているピストン体35とからなっている。ピストン体35は通常のピストンよりも軸方向に長くなっている。すなわち、シリンダ30の内周壁と接する距離が長くなっている。換言すると、シリンダ30の内壁がピストン体35を支持する距離も長くなっている。これにより、ピストン体35はシリンダ30内に水平に保持されている。そして、図示の形態によると、このシリンダ30の底部31から作用棒10が一体的に軸方向すなわち
図1において右方向に延びている。したがって、シリンダ30が
図1において左右方向に動く、あるいは移動するときは作用棒10も一体的に動くことになる。ピストン体35の左端は、図には示されていないが連結器が接続される連結部36となっている。この連結部36から第1、2のゴム緩衝器1、2に主として圧縮および引っ張り方向の衝撃的な力が加わることになる。シリンダ30のヘッド室32にはジメチルシリコノイル、フェニルメチルシリコンオイル、フルオルカーボン等の粘性流体が充填されている。なお、粘性流体が圧縮されるとき、粘性流体を流す「絞り」あるいは「オリフィス」は
図1には示されていない。
【0021】
シリンダ30の底部31から軸方向に延びている作用棒10の右端部近傍の外周面には、締付けナット11が螺合する雄ネジ12が形成されている。この締め付けナット11とシリンダ30の底部31との間に、詳しく後述するように、第1のゴム緩衝器1、車体取付板20、第2のゴム緩衝器2および第2の押プレート33が位置する。
【0022】
車体取付板20は、緩衝器Sを車体に取り付けるための部材で、平板状を呈し、その両側面は第1、2のゴム緩衝器1,2をそれぞれ受ける受プレートの作用も奏している。この車体取付板20に、球面滑り軸受すなわち摺動・揺動機構25が設けられ、この機構25により作用棒10は車体取付板20を貫通する軸方向および揺動方向に自在となっている。摺動・揺動機構25は、車体取付板20に開けられている透孔21内に挿入されている2つ割り構造の凹面軸受26、26と、これらの凹面軸受26、26に軸受けされている球状体27とから構成されている。2つ割り構造の凹面軸受26、26は、その内側に球状体27を挟み、そして合わせると、その外周面が透孔21の内周面に圧入あるいは嵌まる大きさで、半径中心側が所定量切り落とされた形の半凹面状となっている。凹面軸受26、26の軸方向の長さは、車体取付板20の板厚よりも短く、その両側には所定の隙間s、sあるいは「遊び」がある。隙間s、sがあるので、作用棒10は透孔21に接触することなく、点Pを中心として所定量回動あるいは揺動できる。このようにして、球状体27は凹面軸受26、26に回動自在に軸受されている。この球状体20には貫通孔が明けられ、この貫通孔に作用棒10が摺動自在に挿通されている。したがって、作用棒10は球状体20に軸方向に軸受されて移動自在であり、球状体20は凹面軸受26、26に回動あるいは揺動自在に軸受されて、点Pを中心としてあらゆる方向に回動自在である。車体取付板20の所定箇所には、車体取り付け用のボルト挿通孔22、22、…が複数個開けられている。
【0023】
次に、作用について説明する。2つ割り構造の凹面軸受26、26間に球状体27を挟み込む、あるいは包み込む。そして、球状体27を包み込んだ凹面軸受26、26を車体取付板20の透孔21の所定位置に圧入しておく。シリンダ30の底部31から延びている作用棒10に第1のゴム緩衝器1を挿入する。そして、作用棒10を
図1において左方から車体取付板20に挿通する。すなわち、作用棒10を球状体27に挿通する。次いで、第2のゴム緩衝器2、第2の押プレート33の順に挿通して締付けナット11により締め付ける。締め付けるとき、第1、2のゴム緩衝器1、2に所定の初圧を与える。これにより、緩衝器Sが構成される。車体取付板20を複数本のボルトにより車体に取り付け、ピストン体35の連結部36に連結器を接続する。
【0024】
今、連結器側から矢印Aで示す方向に、走行時に生じるような比較的小さな押し方向の力が作用すると、粘性流体緩衝部Fは小さな衝撃に対しては一種の剛体とみることができ、また車体取付板20は固定されているので、作用棒10はシリンダ30により
図1において右方へ押され、移動する。第1の押プレートの作用も奏するシリンダ30の底部31と車体取付板20との間で第1のゴム緩衝器1が圧縮され、これにより比較的小さな衝撃的な力が緩衝される。逆に、引っ張り方向に衝撃力が作用すると、今度は第2の押プレート33と車体取付板20との間で第2のゴム緩衝器2が圧縮され、これにより衝撃的な引っ張り力が緩衝される。衝突時に生じるような大きな衝撃がピストン体35に加わるときは、粘性流体緩衝部Fのピストン体35が粘性流体を圧縮して緩衝する。
【0025】
連結器の方から軸方向以外の力、例えば上方から下方へ力が作用すると、作用棒10は点Pを中心として上下方向に揺動できるので、作用棒10は傾き、車体取付板20とシリンダ30との間は下方が狭くなり、車体取付板20と第2の押プレート33との間は、上方が狭くなる。すなわち、第1のゴム緩衝器1は下方部分が、第2ゴム緩衝器2は上方部分が圧縮される。第1、2のゴム緩衝器1、2の径は所定径になっているので、下方への衝撃力も充分に緩衝される。下方から上方へ作用するときは、第1、2のゴム緩衝器1、2の反対側が圧縮され同様に緩衝される。作用棒10は点Pを中心としてあらゆる方向に回動あるいは揺動できるので、水平方向の衝撃力に対しても同様に緩衝される。
【0026】
本実施の形態に係る緩衝器は、上記のように、ピストン体35換言すると粘性流体緩衝部Fに下方への力が作用すると、第1、2のゴム緩衝器1,2の所定部位が圧縮されるが、この圧縮力の反作用により粘性流体緩衝部Fは支えられる。すなわち、胴受けされる。特に、本実施の形態によると、第1、2のゴム緩衝器1,2は車体取付板20に対して重力的に左右にバランスし、粘性流体緩衝部Fはコンパクトで軽量になっているので、胴受け力すなわち粘性流体緩衝部Fを支持する力は大きくはなく、従来のような胴受装置がなくても胴受けされる。また、本実施の形態によると、上記のようにピストン体35あるいは粘性流体緩衝部Fに作用する左右方向の力も第1、2のゴム緩衝器1、2の所定部位が圧縮されて緩衝するので、第1、2のゴム緩衝器1、2の復元力により粘性流体緩衝部Fに接続されている連結器は、無負荷状態では車体取付板20に対して直角方向の中心方向を向く。すなわち、センタリングされる。以上のように、本実施の形態によると、所定径の第1、2のゴム緩衝器1、2は、車体取付板の両側に所定圧を負荷した状態で設けられているので、胴受け作用もセンタリング作用も得られる。
【0027】
本発明は上記実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、
図1に示されている実施の形態では粘性流体緩衝部Fはシングルタイプであるが、ピストンのヘッド側とロッド側の両室に粘性流体を充填してダブル型とすることもできる。このように実施するときは、ピストンのヘッド部は軸方向に短くなるので、ピストンロッドはシリンダの蓋で受けるように実施することもできる。また、粘性流体緩衝部Fを構成しているシリンダ30とピストン体35は、相対的であるので、ピストン体35から作用棒10を延在させることもできる。その例が
図2の(ア)に示されている。このように実施するときは、ピストン体35には第1の押プレート31’を取り付け、この押プレート31から作用棒10を延在させることになる。また、シリンダ30側に連結部36’を設ける。
【0028】
作用棒10の雄ネジ12にねじ込まれている締付けナット11は、粘性流体緩衝部Fの重量をバランスする作用も奏しているので、締付けナット11の重量を設計値よりも大きくしてバランスウエイトの作用を持たせることもできる。さらには、バランスウエイト用のナットを別に設けることもできる。このバランスウエイト用のナットは、ゆるみ防止用の2重ナットの作用も奏することになる。
【0029】
摺動・揺動機構25の他の実施の形態が
図2の(イ)〜(カ)に示されている。
図1に示されている実施の形態の構成要素と同じ要素には同じ参照数字を付け、同じような要素には同じ参照数字にダッシュ「’」、「”」を付けて重複説明はしないが、本実施の形態に係る摺動・揺動機構25’も、
図2の(イ)に示されているように、球状体27を有する。この球状体27に作用棒10が軸方向に摺動自在に挿通され、球状体27の外表面が車体取付板20’に軸受けされている。
図2の(ウ)、(エ)に示されている実施の形態によると、車体取付板20’は上下の板20’u、20’dに2分割され、それぞれの分割面の厚み方向の中心部に球状体27を受ける半分の凹曲面の軸受が形成されている。車体取付板20’の周縁の一部が切り落とされフランジ20f、20fが形成され、これらのフランジ20f、20fをボルト・ナット20b、20b、…で締め付けることにより、上下の板20’u、20’dが一体化されると共に、球状体27が分割面間に回転自在に保持されている。本実施の形態でも、作用棒10は車体取付板20’に対して摺動および揺動自在であり、
図1に示されている実施の形態と同様に作用する。
【0030】
図2の(オ)、(カ)には、車体取付板20”を面に平行に分割し、それぞれの分割面側に球状体27を受ける凹曲面が形成されている例が示されている。分割された取付板20”u、20”dをボルト20b、20b、…で締め付けることにより、分割された取付板20”u、20”dが一体化される。同時に球状体27が分割面間に回転自在に保持される。本実施の形態も、
図1に示されている実施の形態と同様に作用する。
【符号の説明】
【0031】
S 緩衝器 G ゴム緩衝部
F 粘性流体緩衝部 1 第1のゴム緩衝器
2 第2のゴム緩衝器 10 作用棒
20 車体取付板 25 摺動・揺動機構
30 シリンダ 31 底部(第1の押プレート)
35 ピストン体 36 連結部