(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子制御式の圧力逃がし弁は圧力センサーの検出値に応じて開閉が制御されるため、圧力センサーの検出値に異常が生じると、コモンレールの燃料圧力が目標値と大きく異なる圧力異常が生じる。そのため、圧力センサーの検出値に異常が生じたとしても、コモンレールにおける圧力異常の有無を高い精度で判定可能な技術が望まれている。なお、こうした要望は、コモンレールに機械式の圧力逃がし弁が取り付けられた場合も共通する。
【0006】
本開示の技術は、コモンレールにおける圧力異常の有無を高い精度で判定することが可能なコモンレールの圧力異常判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するコモンレールの圧力異常判定装置は、燃料を圧送するサプライポンプと、前記サプライポンプの圧送量を制御する制御弁と、前記サプライポンプが圧送した燃料を蓄えるコモンレールと、前記コモンレール内の燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記コモンレールにおける燃料の圧力である燃料圧力を検出する圧力センサーと、を備えて前記圧力センサーの検出値が目標値となるように前記制御弁の開度をフィードバック制御する燃料噴射システムに適用され、前記コモンレールにおける圧力異常の有無を判定するコモンレールの圧力異常判定装置であって、前記サプライポンプの駆動量、前記制御弁の開度、前記サプライポンプが圧送する燃料の温度、及び、前記燃料噴射弁が噴射する燃料の目標噴射量をパラメーターとする多変量解析から構築された前記燃料圧力を表すモデルと、前記パラメーターの取得値とを用い、前記燃料圧力を推定する推定部と、前記推定部による推定値と前記目標値との乖離が許容範囲外であることを条件の1つとして前記コモンレールに対する異常判定を行う判定部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、燃料の温度はサプライポンプが吐出する燃料の動粘度に関わる要素であることから、サプライポンプの駆動量、制御弁の開度、及び燃料の温度は、サプライポンプの吐出量、すなわちコモンレールにおける燃料の増加量に関わる要素である。一方、目標噴射量はコモンレールにおける燃料の減少量に関わる要素である。
【0009】
そのため、サプライポンプの駆動量、燃料の温度、制御弁の開度、及び、目標噴射量をパラメーターとして含むモデルを用いて演算される燃料圧力の推定値は、圧力センサーの検出値に依存せず、また、実際の燃料圧力に対する精度が高い。こうした推定値と目標値との乖離に基づいてコモンレールにおける圧力異常の有無が判定されることで判定結果に対する精度が高まる。
【0010】
上記コモンレールの圧力異常判定装置において、前記判定部は、前記乖離が前記許容範囲外である状態が所定時間継続していることを前記条件に含むことが好ましい。
上記構成のように、乖離が許容範囲外である状態が所定時間継続していることをさらなる条件とすることで、上記乖離に基づく異常判定に対する信頼度が高まる。
【0011】
上記コモンレールの圧力異常判定装置において、前記判定部は、前記フィードバック制御において算出される積分項の値が許容範囲外であることを前記条件に含むとよい。
積分項は、燃料圧力の目標値と検出値との偏差の積算値に対して積分ゲインを乗算した値である。上記構成によれば、積分項の値が許容範囲外にある場合は、圧力センサーの検出値に異常が生じ、目標値に対して検出値が大きい状態あるいは小さい状態が継続していると考えられる。そのため、推定値と目標値との乖離だけでなく、積分項の値を加味したうえで圧力異常の有無が判定されることにより、異常判定に対する信頼度がより高まる。
【0012】
上記コモンレールの圧力異常判定装置において、前記判定部は、前記積分項の値が前記許容範囲外である状態が所定時間継続していることを前記条件に含むことが好ましい。
上記構成によれば、積分項の値が所定時間内に改善されない場合に異常判定がなされる。その結果、積分項の値に基づく異常判定に対する信頼度がさらに高まる。
【0013】
上記コモンレールの圧力異常判定装置において、前記判定部は、バッテリーの出力電圧、エンジン回転数、及び、エンジンを冷却する冷却水温度の少なくとも1つに基づいて、前記燃料圧力が安定しているか否かを判定し、前記燃料圧力が安定していることを前記条件に含むことが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、コモンレール内の燃料圧力が安定しているときにコモンレールにおける圧力異常の有無が判定される。その結果、コモンレールの異常判定に対する信頼度がより一層高まる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図5を参照して、本開示におけるコモンレールの圧力異常判定装置の一実施形態についてその判定方法とともに説明する。
図1に示されるように、コモンレール式の燃料噴射システム20は、ディーゼルエンジン10(以下、単にエンジン10という。)の各気筒11に対し、コモンレール21内の燃料を噴射する燃料噴射弁22を有する。コモンレール21には、サプライポンプ23から燃料が圧送される。
【0017】
サプライポンプ23は、エンジン10の駆動力が伝達される駆動軸を有する機械式のポンプである。サプライポンプ23は、燃料タンク24内の燃料を加圧し、その加圧した燃料をコモンレール21に圧送する。サプライポンプ23は、サプライポンプ23の吸入量、あるいは、サプライポンプ23からの吐出量を制限することでサプライポンプ23からコモンレール21への燃料の圧送量を制御する制御弁25を備える。
【0018】
コモンレール21には、減圧弁26が取り付けられている。減圧弁26は、開状態にあるときにコモンレール21内の燃料の一部を燃料タンク24へと還流することでコモンレール21内を減圧する。燃料噴射弁22の開閉、サプライポンプ23の制御弁25の開度、減圧弁26の開閉、これらはECU30によって制御される。
【0019】
ECU30は、中央処理装置(CPU)、不揮発性メモリー(ROM)、及び揮発性メモリー(RAM)を有するマイクロコンピューターを中心に構成されている。
ECU30は、各種センサーから入力される検出信号に基づいて各種情報を所定の制御周期で取得する。ECU30は、圧力センサー31からの検出信号によりコモンレール21内の燃料の圧力である燃料圧力の検出値である圧力検出値Pfを取得する。ECU30は、燃料温度センサー32からの検出信号により燃料タンク24からサプライポンプ23へ流れる燃料の温度である燃料温度Tfを取得する。ECU30は、開度センサー33からの検出信号により制御弁25の開度Aを取得する。ECU30は、回転数センサー34からの検出信号によりエンジン回転数Neを取得する。ECU30は、冷却水センサー35からの検出信号によりエンジン10を冷却する冷却水の温度である冷却水温度Twを取得する。ECU30は、アクセルセンサー36からの検出信号によりアクセル開度ACCを取得する。ECU30は、電圧センサー37からの検出信号によりバッテリーの出力電圧Eを取得する。
【0020】
ECU30の噴射制御部40は、各燃料噴射弁22の駆動を制御する。噴射制御部40は、例えばエンジン回転数Ne及びアクセル開度ACCに基づいて目標噴射量Qfを演算する。そして、噴射制御部40は、エンジン回転数Neに基づいて選択される燃料噴射弁22から目標噴射量Qfだけの燃料が噴射されるように圧力検出値Pfに基づき燃料噴射弁22を駆動する。
【0021】
ECU30の開度制御部41は、圧力検出値Pfに基づくフィードバック制御により制御弁25の開度Aを制御することで、コモンレール21内の燃料の圧力を予め定めた一定値である目標値tPfに制御する。開度制御部41は、目標値tPfと圧力検出値Pfとの偏差に基づく目標開度tAへと制御弁25の開度Aを制御する。
【0022】
ECU30の減圧弁制御部42は、減圧弁26の開閉を制御し、圧力検出値Pfが最大許容値Pfmaxよりも高いときに減圧弁26を開状態に制御する。
ECU30の推定部43は、燃料圧力の推定値である圧力推定値Pesを演算する。推定部43は、サプライポンプ23が機械式のポンプであることから、エンジン回転数Neをサプライポンプ23の駆動量として扱う。推定部43は、エンジン回転数Ne、燃料温度Tf、目標噴射量Qf、制御弁25の開度A、これらをパラメーターとするモデルに各値を代入することにより、圧力推定値Pesを演算する。モデルは、エンジン10に対して行った各種実験の結果から得られた燃料圧力と各種パラメーターとに基づいて多変量解析を行い、その解析結果から構築されたモデルである。
【0023】
エンジン回転数Ne及び制御弁25の開度Aは、サプライポンプ23からコモンレール21への燃料の圧送量に関するパラメーターである。燃料温度Tfは、サプライポンプ23に流入する燃料の動粘度に関わる要素であり、これもまたコモンレール21に対する燃料の圧送量に関するパラメーターである。目標噴射量Qfは、コモンレール21における燃料の減少量に関するパラメーターである。すなわち、上記の各種パラメーターは、コモンレール21における燃料の増減量に関わる要素である。
【0024】
ECU30の第1判定部44は、圧力推定値Pesと目標値tPfとの乖離に基づいてコモンレール21における圧力異常の有無を判定し、その判定結果を示す値を第1フラグF1に設定する第1判定処理を実行する。
【0025】
第1判定部44は、目標値tPfが予め定めた一定値であることから、圧力推定値Pesと目標値tPfとの乖離を示す第1判定値として圧力推定値Pesをそのまま用いる。第1判定部44は、圧力推定値Pesが下限許容値PesLよりも大きく且つ上限許容値PesHよりも小さい許容範囲内であるか否かを判断する。下限許容値PesL及び上限許容値PesHは、エンジン10に対して予め行った各種実験の結果に基づいて設定される値であり、第1判定値に基づきコモンレール21における圧力異常の有無を判定するための値である。
【0026】
圧力推定値Pesが許容範囲内である場合、第1判定部44は、コモンレール21に圧力異常が生じていないものとして、第1計時部である第1カウンター45のカウント値C1をリセットするとともに第1フラグF1の値を「0」に設定する。圧力推定値Pesが許容範囲外である場合、第1判定部44は、第1カウンター45のカウント値C1をインクリメントする。第1判定部44は、以後の制御周期において得られる圧力推定値Pesが許容範囲外であるうちはカウント値C1をインクリメントし続ける。第1判定部44は、カウント値C1が上限値C1maxを超えると、コモンレール21に圧力異常が生じていると判定して、第1フラグF1の値を「1」に設定する。なお、第1計時部は、圧力推定値Pesが許容範囲外である状態を計時できればよく、カウンターに限られない。
【0027】
ECU30の第2判定部46は、開度制御部41にて演算される積分項の値を第2判定値Iとして取得する。そして、第2判定部46は、第2判定値Iに基づいてコモンレール21における圧力異常の有無を判定し、その判定結果を示す値を第2フラグF2に設定する第2判定処理を実行する。
【0028】
第2判定部46は、第2判定値Iが下限許容値ILよりも大きく且つ上限許容値IHよりも小さい許容範囲内であるか否かを判断する。下限許容値IL及び上限許容値IHは、エンジン10に対して予め行った各種実験の結果に基づいて設定される値であり、第2判定値Iに基づきコモンレール21における圧力異常の有無を判定するための値である。
【0029】
第2判定値Iが許容範囲内である場合、第2判定部46は、コモンレール21に圧力異常が生じていないものとして、第2計時部である第2カウンター47のカウント値C2をリセットするとともに第2フラグF2の値を「0」に設定する。第2判定値Iが許容範囲外である場合、第2判定部46は、第2カウンター47のカウント値C2をインクリメントする。第2判定部46は、以後の制御周期において得られる第2判定値Iが許容範囲外であるうちはカウント値C2をインクリメントし続ける。そして、第2判定部46は、カウント値C2が上限値C2maxを超えると、コモンレール21に圧力異常が生じていると判定して、第2フラグF2の値を「1」に設定する。なお、第2計時部は、第2判定値Iが許容範囲外である状態を計時できればよく、カウンターに限られない。
【0030】
ECU30の第3判定部48は、コモンレール21における圧力異常の有無を判定するうえで、ECU30の動作及びコモンレール21内の燃料圧力が安定しているか否か判定し、その判定結果を示す値を第3フラグF3に設定する第3判定処理を実行する。第3判定部48は、バッテリーの出力電圧E、エンジン回転数Ne、冷却水温度Twに基づいて第3判定処理を実行する。
【0031】
第3判定部48は、出力電圧Eが所定の必要電圧Enよりも高いか否かを判断する。出力電圧Eが必要電圧Enよりも低い場合は、例えば、ECU30の対する電力供給が不十分であり、ECU30の動作が不安定であることが想定される。また例えば、運転者がキーオン操作をしているにも関わらずエンジン10が始動しないことでサプライポンプ23の吐出量が不安定であり、これにともないコモンレール21内の燃料圧力、すなわち燃料噴射量が不安定であることが想定される。出力電圧Eは、ECU30の動作が安定しているか否か、及び、エンジン10の状態に基づいてコモンレール21内の燃料圧力が安定しているか否かを判断するための値である。
【0032】
第3判定部48は、エンジン回転数Neが所定の必要回転数Nenよりも大きいか否かを判断する。サプライポンプ23の吐出量が安定するうえでは、サプライポンプ23がある程度の駆動量で駆動されることが必要である。エンジン回転数Neは、コモンレール21内の燃料圧力が安定しているか否かをサプライポンプ23の駆動量に基づいて判断するための値である。
【0033】
第3判定部48は、冷却水温度Twが下限温度TwLよりも高いか否かを判断する。冷却水温度Twが下限温度TwLよりも低い場合、エンジン10は冷間始動直後にある。このとき、エンジン10は、エンジンオイルの粘度に起因する抵抗が高い状態で駆動されている。こうした状況においては、エンジン回転数Neが不安定であるため、サプライポンプ23の吐出量も不安定になりやすい。すなわち、冷却水温度Twは、サプライポンプ23の駆動環境に基づいてコモンレール21内の燃料圧力が安定しているか否かを判断するための値である。
【0034】
第3判定部48は、上述した出力電圧E、エンジン回転数Ne、冷却水温度Tw、これらに関する要件のいずれか1つでも満たされないとき、ECU30の動作あるいはコモンレール21内の燃料圧力が不安定であるものとして第3フラグF3の値に「0」を設定する。第3判定部48は、上述した出力電圧E、エンジン回転数Ne、冷却水温度Tw、これらに関する要件の全てが満たされるとき、ECU30の動作及びコモンレール21内の圧力が安定しているものとして第3フラグF3の値に「1」を設定する。
【0035】
ECU30の異常判定部49は、第1〜第3フラグF1〜F3の値に基づいてコモンレール21における圧力異常の有無を判定する異常判定処理を行う。異常判定部49は、第1〜第3フラグF1〜F3の値の少なくとも1つが「0」である場合、コモンレール21内の燃料圧力が正常であるという正常判定を行う。異常判定部49は、第1〜第3フラグF1〜F3の値の全てが「1」である場合、コモンレール21内の燃料圧力が異常であるという異常判定を行う。
【0036】
ECU30のランプ駆動部50は、異常判定処理において異常判定がなされると、例えば警報ランプ51を点灯させることなどにより、コモンレール21の圧力異常を運転者に通知する。なお、警報ランプ51の点灯は、圧力異常にともなうメンテナンスを行った作業者によって解除される。
【0037】
推定部43,第1判定部44、第2判定部46、第3判定部48、異常判定部49、及びランプ駆動部50は、コモンレールの圧力異常判定装置を構成する。
ECU30は、異常判定処理において異常判定がなされると保護動作を行う。保護動作は、エンジン10やコモンレール21を保護する動作である。保護動作においてECU30は、開度制御部41を通じて制御弁25の開度を制御することにより、サプライポンプ23からコモンレール21への燃料の圧送量を制限する。これにより、コモンレール21内が減圧されるため、コモンレール21に対する機械的な負荷が軽減されるとともにエンジン10の出力が制限される。
【0038】
図2を参照して、第1判定部44が実行する第1判定処理の処理手順について説明する。第1判定処理は、エンジン10が始動すると所定の制御周期毎に繰り返し行われる。エンジン10の始動時、第1カウンター45のカウント値C1の値はリセットされ、第1フラグF1の値は「0」に設定される。
【0039】
図2に示されるように、ECU30は、最初のステップS11において、エンジン回転数Ne、燃料温度Tf、目標噴射量Qf、制御弁25の開度A、及び圧力検出値Pfを含む各種情報を取得する。次のステップS12においてECU30は、ステップS11にて取得した各値をモデルに代入することにより圧力推定値Pesを演算する。
【0040】
次に、ECU30は、圧力推定値Pesが許容範囲内であるか否かを判断する(ステップS13)。圧力推定値Pesが許容範囲内である場合(ステップS13:YES)、ECU30は、カウント値C1をリセットしたのち(ステップS14)、第1フラグF1の値に「0」に設定し(ステップS15)、一連の処理を一旦終了する。
【0041】
一方、圧力推定値Pesが許容範囲外である場合(ステップS13:NO)、ECU30は、カウント値C1をインクリメントしたのち(ステップS16)、カウント値C1が上限値C1maxよりも大きいか否かを判断する(ステップS17)。
【0042】
カウント値C1が上限値C1max以下である場合(ステップS17:NO)、ECU30は、ステップS15の処理に移行する。カウント値C1が上限値C1maxよりも大きい場合(ステップS17:YES)、ECU30は、第1フラグF1の値を「1」に設定し(ステップS18)、一連の処理を一旦終了する。
【0043】
図3を参照して、第2判定部46が実行する第2判定処理について説明する。第2判定処理は、エンジン10が始動すると所定の制御周期毎に繰り返し行われる。エンジン10の始動時、第2カウンター47はカウント値C2の値がリセットされ、第2フラグF2の値は「0」に設定される。
【0044】
図3に示されるように、ECU30は、最初のステップS21において、開度制御部41にて演算される積分項の値を第2判定値Iとして取得する。次のステップS22においてECU30は、第2判定値Iが許容範囲に含まれているか否かを判断する。
【0045】
第2判定値Iが許容範囲内である場合(ステップS22:YES)、ECU30は、第2カウンター47のカウント値C2をリセットしたのち(ステップS23)、第2フラグF2の値を「0」に設定し(ステップS24)、一連の処理を一旦終了する。
【0046】
一方、第2判定値Iが許容範囲外である場合(ステップS22:NO)、ECU30は、第2カウンター47のカウント値C2をインクリメントし(ステップS25)、カウント値C2が上限値C2maxよりも大きいか否かを判断する(ステップS26)。
【0047】
カウント値C2が上限値C2max以下である場合(ステップS26:NO)、ECU30は、ステップS24の処理に移行する。カウント値C2が上限値C2maxよりも大きい場合(ステップS26:YES)、ECU30は、第2フラグF2の値を「1」に設定し(ステップS27)、一連の処理を一旦終了する。
【0048】
図4を参照して、第3判定部48が実行する第3判定処理について説明する。第3判定処理は、エンジン10が始動すると所定の制御周期毎に繰り返し行われる。エンジン10の始動時、第3フラグF3の値は「0」に設定される。
【0049】
図4に示されるように、ECU30は、最初のステップS31において、バッテリーの出力電圧E、エンジン回転数Ne、及び冷却水温度Twを含む各種情報を取得する。次のステップS32においてECU30は、ステップS31にて取得した各値に基づいて、ECU30の動作及びコモンレール21内の燃料圧力が安定しているか否かを判定する。
【0050】
ECU30の動作及びコモンレール21内の燃料圧力の双方が安定している場合(ステップS32:YES)、ECU30は、第3フラグF3の値を「1」に設定して(ステップS33)一連の処理を一旦終了する。ECU30の動作及びサプライポンプ23の吐出量の少なくとも一方が不安定である場合(ステップS32:NO)、ECU30は、第3フラグF3の値を「0」に設定して(ステップS34)一連の処理を一旦終了する。
【0051】
図5を参照して、異常判定部49が実行する異常判定処理について説明する。異常判定処理は、エンジン10の始動で開始され、コモンレール21の異常判定で終了する。
図5に示されるように、ECU30は、最初のステップS41において、第1フラグF1の値が「1」であるか否かを判断する。第1フラグF1の値が「1」であった場合(ステップS41:YES)、ECU30は、次のステップS42において第2フラグF2の値が「1」であるか否かを判断する。第2フラグF2の値が「1」であった場合(ステップS42:YES)、ECU30は、次のステップS43において第3フラグF3の値が「1」であるか否かを判断する。そして、第3フラグF3の値が「1」であった場合(ステップS43:YES)、ECU30は、コモンレール21に対して異常判定を行い(ステップS44)異常検出処理を終了する。ECU30は、コモンレール21に対して異常判定がなされると、警報ランプ51を点灯させるとともに保護動作を行う。
【0052】
一方、第1フラグF1の値が「0」であった場合(ステップS41:NO)、第2フラグF2の値が「0」であった場合(ステップS42:NO)、第3フラグF3の値が「0」であった場合(ステップS43:NO)、ECU30は、コモンレール21に対して正常判定を行い(ステップS45)、再びステップS41の処理に移行する。すなわち、ECU30は、コモンレール21における圧力異常の有無を常時監視する。
【0053】
次に、上述したコモンレールの圧力異常判定装置の作用について説明する。
上述した圧力異常判定装置においては、各種実験の結果に基づく多変量解析の解析結果から構築されたモデルに各種パラメーターが代入されることで圧力推定値Pesが演算される。そして、圧力推定値Pesに基づく第1判定値、本実施の形態では圧力推定値Pesそのものに基づいて、コモンレール21における圧力異常の有無が判定される。
【0054】
上記各種パラメーターは、コモンレール21に対する燃料の圧送量に関わるパラメーター、あるいは、コモンレール21における燃料の減少量に関わるパラメーターである。このようにモデルには、コモンレール21における燃料の増減量に関わる要素がパラメーターに設定されている。そのため圧力推定値Pesは、圧力検出値Pfに依存せず、また、実際の燃料圧力に対する精度が高い。こうした圧力推定値Pesに基づいてコモンレール21における圧力異常の有無が判定されることで判定結果に対する精度が高まる。
【0055】
そのうえ、圧力推定値Pesに基づいて異常判定がなされる条件には、圧力推定値Pesが許容範囲外である状態が所定時間継続することが含まれる。すなわち、上記所定時間のうちに圧力推定値Pesが改善されない場合に圧力推定値Pesに基づく異常判定がなされる。これにより、圧力推定値Pesに基づく異常判定に対する信頼度が高まる。
【0056】
圧力異常判定装置は、第2判定値I、すなわち制御弁25のフィードバック制御の演算過程で得られる積分項の値に基づいて、コモンレール21における圧力異常の有無を判定する。積分項は、目標値tPfと圧力検出値Pfとの偏差の積算値に対して積分ゲインを乗算したものである。そのため、圧力センサー31に異常が生じると、目標値tPfと圧力検出値Pfとの間にはマイナスあるいはプラスの偏差が生じ続け、その偏差が時間の経過にともなって蓄積されることで積分項の絶対値は大きくなる。こうした特性を有する積分項の値である第2判定値Iに基づいてコモンレール21における圧力異常の有無が判定されることにより、コモンレール21の異常判定に対する信頼度が高まる。
【0057】
そのうえ、第2判定値Iに基づいて異常判定がなされる条件には、第2判定値Iが許容範囲外である状態が所定時間継続することが含まれる。すなわち、上記所定時間のうちに第2判定値Iの値が改善されない場合に第2判定値Iに基づく異常判定がなされる。これにより、第2判定値Iに基づく異常判定に対する信頼度が高まる。
【0058】
圧力異常判定装置は、第3判定処理において、ECU30の動作、サプライポンプ23の吐出量、これらが安定しているか否かを判断している。そして圧力異常判定装置は、第1判定処理及び第2判定処理において異常判定がなされ、且つ、ECU30の動作及びサプライポンプ23の吐出量が安定していると判定された場合に、コモンレール21に対する異常判定を確定する。すなわち、ECU30の動作が安定しており各種演算結果に対する信頼度が高いこと、また、サプライポンプ23の吐出量が安定しておりコモンレール21内の燃料圧力が安定していること、これらの条件が満たされているときにコモンレール21に対する異常判定を確定する。その結果、圧力推定値Pesの精度が高まることから、コモンレール21の異常判定に対する信頼度がより一層高まる。
【0059】
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)コモンレール21の燃料の増減量に関わる要素をパラメーターに含むモデルを構築し、このモデルに基づいて圧力推定値Pesが演算される。その結果、圧力推定値Pesに基づく判定結果に対する精度が高まる。
【0060】
(2)異常判定の条件には、圧力推定値Pesが許容範囲外である状態が継続することが含まれる。その結果、圧力推定値Pesに基づく異常判定に対する信頼度が高まる。
(3)異常判定の条件には、目標値tPfと圧力検出値Pfとの偏差に基づく積分項の値である第2判定値Iが許容範囲外であることが含まれる。その結果、コモンレール21の異常判定に対する信頼度がさらに高まる。
【0061】
(4)異常判定の条件には、第2判定値Iが許容範囲外である状態が継続することが含まれる。その結果、第2判定値Iに基づく異常判定に対する信頼度が高まる。
(5)異常判定の条件には、ECU30の動作及びサプライポンプ23の吐出量の安定が含まれる。その結果、コモンレール21の異常判定に対する信頼度が高まる。
【0062】
(6)第1判定値と第2判定値Iとによって圧力検出値Pfが常時監視される。そのため、圧力センサー31の圧力検出値Pfが徐々にずれた場合であっても、第1判定値と第2判定値Iとに基づいて圧力センサー31の異常を検出することが可能である。
【0063】
(7)コモンレール21における圧力異常の有無を判定する他の方法としては、電源系統や圧力の検出が完全に独立した複数の圧力センサーをコモンレール21に取り付ける。そして、これら複数の圧力センサーの検出値に基づいて検出値の確からしさを確認したうえで圧力センサーの検出値に基づいて圧力異常の有無を判定する方法がある。しかしながら、こうした方法を具体化すると、例えば配線やソフトウェアの構成等に起因してシステム全体の構成が複雑になってしまう。この点、上記圧力異常判定装置は、圧力センサー31とは別の圧力センサーをコモンレール21に設ける必要がないばかりか、判定に必要とされるパラメーターも例えば燃料噴射といった他の制御に用いられるパラメーターであるため、装置全体の構成が簡素化される。
【0064】
(8)上記構成によれば、コモンレール21に対して異常判定がなされると、コモンレール21に対する燃料の圧送量を制限する保護動作が行われる。これにより、電子制御式及び機械式を含めた圧力逃がし弁によらずに燃料圧力の過度な上昇が抑えられる。
【0065】
(9)また、機械式の圧力逃がし弁が不要となることで圧力逃がし弁に接続される配管等も必要なくなるため、燃料噴射システムの簡素化及びコストの低減が図られる。
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・第3判定部48は、バッテリーの出力電圧E、エンジン回転数Ne、及び冷却水温度Twの少なくとも1つに基づいて、第3フラグF3の値を設定してもよい。
【0066】
・第3判定部48は、コモンレール21内の燃料圧力に関わる要素に基づいて第3フラグF3の値を設定すればよい。そのため、第3判定部48は、バッテリーの出力電圧E、エンジン回転数Ne、及び冷却水温度Tw以外の情報に基づいて第3フラグF3を設定してもよい。この情報としては、例えば、サプライポンプ23が複数の制御モードを有するときにはその制御モード、減圧弁26の開閉状態、その他エンジン10の運転状態に関わる各種検出値、これらが挙げられる。
【0067】
・第3判定部48が割愛されてもよい。こうした構成においては、第1判定処理及び第2判定処理の双方において異常判定がなされた場合に、コモンレール21に対する異常判定が確定する。
【0068】
・第2判定部46は、第2判定値Iが許容範囲外であることを以て第2フラグF2の値を「1」に設定してもよい。
・第2判定部46が割愛されてもよい。こうした構成においては、第1判定処理及び第3判定処理の判定結果に基づいて、コモンレール21に対する異常判定が確定する。
【0069】
・第2判定部46及び第3判定部48が割愛されてもよい。こうした構成においては、第1判定処理の判定結果に基づいてコモンレール21に対する異常判定が確定する。
・第1判定部44は、圧力推定値Pesが許容範囲外であることを以て第1フラグF1の値を「1」に設定してもよい。
【0070】
・モデルにおいて、サプライポンプ23の駆動量を示すパラメーターは、エンジン回転数Neに代えて、例えば、サプライポンプ23の駆動軸の回転数そのものであってもよいし、サプライポンプ23が電動式である場合には消費電力であってもよい。
【0071】
・モデルにおいて、上述したパラメーター以外のパラメーターとしては、例えば、減圧弁26の開閉状態を示す値、エンジンオイルの温度、コモンレール21における燃料の温度等が挙げられる。減圧弁26の開閉状態を示す値については、減圧弁26が開閉式の弁である場合には開状態であるか否かに基づく値、減圧弁26が開度調整可能な弁である場合には開度に基づく値、これらがパラメーターとして設定される。コモンレール21における燃料の温度がパラメーターとして設定される場合には、コモンレール21における燃料について動粘度などの情報が得られることで圧力推定値Pesの精度も高まる。
【0072】
・ECU30は、圧力推定値Pesをコモンレール21に対する異常判定のみならず他の用途に用いてもよい。例えば、ECU30は、保護動作において、コモンレール21内の圧力を圧力推定値Pesとして燃料噴射弁22を駆動してもよい。また例えば、ECU30は、保護動作において、圧力推定値Pesに基づいて減圧弁26の開閉を行ってもよいし、圧力推定値Pesに基づいて制御弁25のフィードバック制御を行ってもよい。
【0073】
・目標値tPfは、一定の値に限らず、例えばエンジン回転数Ne及び目標噴射量Qfに基づいて演算される値であってもよい。この場合、第1判定部44は、圧力推定値Pesと目標値tPfとの乖離を演算し、その演算した乖離と当該乖離について設定される許容範囲とに基づいて判定する。