特許第6208059号(P6208059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208059
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】コンテナクレーンの安全装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/46 20060101AFI20170925BHJP
   B66C 19/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B66C13/46 E
   B66C19/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-58368(P2014-58368)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-182828(P2015-182828A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 大介
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−338815(JP,A)
【文献】 特開2006−312521(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0243594(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00−15/06
B66C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナクレーンの安全装置であって、
コンテナクレーンの本体構造物に設置され、空間の物理的な形状データを出力する走査型レーザセンサと、
前記走査型レーザセンサで検出したデータを処理し、トレーラシャーシの運転室部分とコンテナを認識するデータ処理装置と、
前記データ処理装置で処理した認識データに基づいて、前記運転室部分所定距離以上の吊り上げを判定した場合、前記コンテナクレーンの巻上動作の停止指令を前記コンテナクレーンに与える制御装置を具備することを特徴とするコンテナクレーンの安全装置。
【請求項2】
コンテナクレーンの安全装置であって、
トロリー上に設置され、空間の物理的な形状データを出力する走査型レーザセンサと、
前記走査型レーザセンサで検出したデータを処理し、トレーラシャーシの運転室部分とコンテナを認識するデータ処理装置と、
前記データ処理装置で処理した認識データに基づいて、前記運転室部分所定距離以上の吊り上げを判定した場合、前記コンテナクレーンの巻上動作の停止指令を前記コンテナクレーンに与える制御装置を具備することを特徴とするコンテナクレーンの安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナを取り扱う港湾クレーンにおいて、トレーラシャーシからコンテナを吊り上げる時に働くコンテナクレーンの安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾において、荷となるコンテナを運搬する為に、ガントリークレーンやトランスファークレーンと呼ばれる港湾クレーンによって、コンテナの吊り上げ/吊り下げ作業が行われる。
【0003】
ガントリークレーンでコンテナをコンテナ船に運搬する際や、トランスファークレーンでコンテナを蔵置ヤードに運搬する際には、トレーラシャーシで運ばれてきたコンテナを吊り上げる。
【0004】
トロリー5に乗車したオペレータは、コンテナをコンテナ船や蔵置ヤードに運搬する際、所定のトレーラシャーシ上のコンテナを掴み、吊り上げる作業を行う。コンテナを掴むには、スプレッダ下面四隅に突き出ているツイストロックピンをコンテナ上面四隅の穴に入れ、ツイストロック操作によって、ロックピンを90度回転させてロック状態にし、コンテナの吊り上げ時にコンテナがスプレッダから外れないようにしている。この時、ロックピンの動作を検出するリミットスイッチおよびロックLSが動作し、全てのロックLSの信号はONとなっている。
【0005】
また、トレーラシャーシ上のコンテナは、シャーシ上に突き出たロックピンがコンテナ下面四隅のコンテナホールに挿入された状態で載せられている。トレーラ走行中にコンテナが外れないように、ロックピンは、スプレッダのロック機構のようにロックされている。
【0006】
コンテナを吊り上げる時には、まずトレーラ運転手によってシャーシ上のロックピン開放操作を行う。次にトロリー5に乗車したオペレータがスプレッダをシャーシ上コンテナに着床させた状態でツイストロック操作を行うことでコンテナを掴み、コントローラ操作によって巻上運転を行う。
【0007】
従来の技術においては、トレーラシャーシ上からコンテナを掴み上げる場合、スプレッダのツイストロックがロックLS信号によってロックされていることを検出され、PLC(プログラマブル・コントローラ)等の制御装置でロック検出を含めた巻上条件が成立を判定して巻上を可能としている。
【0008】
しかし、シャーシ側のロックが開放されたかどうかはクレーン側ではわからないため、オペレータがシャーシ上からコンテナを掴み上げる時には、まず低速巻上操作によってコンテナがシャーシ上から完全に浮かび上がる(離れる)ことを目視で確認してから高速で巻上げるというような運用を決めて事故防止をしている。低速巻上操作によってコンテナがシャーシ上から完全に離れるのを確認することを、地切り(または地切り確認)と言う。
【0009】
地切り中の低速巻上運転は、PLC等の制御装置によって速度制限をかけている場合がある。
【0010】
また、ターミナルによっては、地切りが確実に行われるようにシャーシとシャーシ上のコンテナが見えるような位置にカメラを設置し、オペレータに地切りの確認を促すようなシステムを導入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−175544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の方法では、地切り運転によって、確実にコンテナがシャーシ上から離れたかどうかの確認は、最終的にはオペレータに委ねられるため、オペレータが地切りの確認を怠ってしまうようなヒューマンエラーまでは完全に防止することはできない。
【0013】
そのため、トレーラ運転手がロックピンの開放操作を忘れたり、開放操作したが機構の動作不良等により開放不十分な状態だったりした場合に、クレーンがコンテナを吊り上げる時にトレーラごと吊り上げられ、過大な荷重がクレーン機体およびロープに加わることとなる。あるいは、吊り上げの途中でロックが外れた場合には、コンテナが落下してトレーラの破損やトレーラ運転手の人身事故が発生する恐れがある。
【0014】
そこで、本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、オペレータの地切り確認漏れ等で、トレーラシャーシごと巻き上げられそうになっても、ある一定距離だけ持ち上がった段階ですぐに巻上動作が停止するコンテナクレーンの安全装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、コンテナクレーンの安全装置であって、コンテナクレーンの本体構造物に設置され、空間の物理的な形状データを出力する走査型レーザセンサと、前記走査型レーザセンサで検出したデータを処理し、トレーラシャーシの運転室部分とコンテナを認識するデータ処理装置と、前記データ処理装置で処理した認識データに基づいて、前記運転室部分所定距離以上の吊り上げを判定した場合、前記コンテナクレーンの巻上動作の停止指令を前記コンテナクレーンに与える制御装置を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、オペレータの地切り確認漏れ等で、トレーラシャーシごと巻き上げられそうになっても、ある一定距離だけ持ち上がった段階ですぐに巻上動作が停止するため、トレーラの落下によるトレーラの破損やトレーラ運転手の人身事故のような事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るコンテナクレーンの安全装置の概略構成を示す図である。
図2】ガントリークレーンの外観と走査型レーザセンサの一設置例を示す図である。
図3】トランスファークレーンの外観と走査型レーザセンサの一設置例を示す図である。
図4】走査型レーザセンサによるトレーラシャーシおよびコンテナの検出を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態に係るコンテナクレーンの安全装置は、コンテナクレーン本体の構造物に設置した走査型レーザセンサによってトレーラシャーシとシャーシ上のコンテナを検出し、コンテナ吊り上げ時にトレーラシャーシも一緒に吊り上げたか否かを判定して、吊り上げ操作を制御するものである。
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0020】
図1は、実施形態に係るコンテナクレーンの安全装置の概略構成を示す図である。本実施形態に係るコンテナクレーンの安全装置は、ガントリークレーンやトランスファークレーンと呼ばれるコンテナを取扱う港湾クレーンにおいて適用されるもので、主として、走査型レーザセンサ1と、検出データ処理装置12と、制御装置13から構成されている。
【0021】
走査型レーザセンサ1は、トレーラシャーシ7やコンテナ8の長手方向高さ等の状態を検出できる位置に設置される。
【0022】
走査型レーザセンサ1は、空間の物理的な形状データを出力することができる走査型の光波距離計である。例えば、1軸走査型の走査型レーザセンサ1では、走査平面上を輪切りしたような形状データを出力する。走査型レーザセンサ1を更に回転させて、2軸走査にすることにより3次元の空間データを得ることもできる。取得したデータ処理の詳細は後述する。
【0023】
図2は、ガントリークレーンの外観と走査型レーザセンサの一設置例を示す図である。図2に示すように、ガントリークレーンにおいて走査型レーザセンサ1を設置する場合には、ガントリークレーンのビーム2やガーダ3、脚部4上、または、トロリー5上で、トレーラシャーシレーン6のトレーラシャーシ7やコンテナ8の長手方向高さ等の状態を検出できる位置に設置する。
【0024】
図3は、トランスファークレーンの外観と走査型レーザセンサの一設置例を示す図である。図3に示すように、トランスファークレーンにおいて走査型レーザセンサ1を設置する場合には、トランスファークレーンのガーダ3、脚部4上、または、トロリー5上で、トレーラシャーシレーン6のトレーラシャーシ7やコンテナ8の長手方向高さ等の状態を検出できる位置に設置する。
【0025】
検出データ処理装置12は、走査型レーザセンサ1で検出したデータを処理するものである。検出データ処理装置12は、検出したデータに基づいてトレーラシャーシ7の運転室部分10やコンテナ8を認識する。認識したデータは、制御装置13に送られる。検出データ処理装置12は、例えば、クレーン本体あるいはトロリー5に設置するのが好適である。
【0026】
制御装置13は、検出データ処理装置12において処理した認識データに基づいて、運転室10の吊り上げを判定してクレーンに指令を与えるものである。運転室10の吊り上げが判定された場合には、クレーンの巻上停止指令を生成し、クレーンのドライブ装置14に出力する。
【0027】
検出データ処理装置12と制御装置13は、まとめて一つの装置とすることもできる。
【0028】
次に、走査型レーザセンサ1によるトレーラシャーシ7およびコンテナ8の検出を説明する。図4は、走査型レーザセンサによるトレーラシャーシ7およびコンテナ8の検出を説明する図である。図4に示すように、トレーラシャーシレーン6にコンテナ8を積載したトレーラシャーシ7が進入してきたら走査型レーザセンサ1でトレーラシャーシ7とコンテナ8の高さ分布データ9を検出する。検出した高さ分布データ9を検出データ処理装置12によってデータ処理し、トレーラの運転室10部分と積載されたコンテナ8部分に分けて認識する。
【0029】
スプレッダ11がトレーラシャーシ7に積載されたコンテナ8に着床され、スプレッダ11のツイストロックがロックされ、コンテナ8を巻き上げる時に、積載されたコンテナ8部分だけでなく、トレーラ運転室10部分の高さも一緒に所定距離以上高く上がったら、制御装置13によってトレーラシャーシ7もコンテナ8と一緒に吊り上げられていると判定し、クレーンの巻上動作の停止指令をドライブ装置14に出力する。
【0030】
巻上停止後はそれ以上吊り上げることが無いように、制御装置13に巻上運転を禁止する条件を設け、巻下運転だけを可能とする。巻下運転の際、巻下速度や巻下加速度に制限を設けることで、急激な動作を制限することを可能とする。
【0031】
本発明の実施形態によれば、オペレータの地切り確認漏れ等で、トレーラシャーシごと巻き上げられそうになっても、ある一定距離だけ持ち上がった段階ですぐに巻上動作が停止するため、トレーラの落下によるトレーラの破損やトレーラ運転手の人身事故のような事故を防止することができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1・・・走査型レーザセンサ
2・・・ビーム
3・・・ガーダ
4・・・脚部
5・・・トロリー
6・・・トレーラシャーシレーン
7・・・トレーラシャーシ
8・・・コンテナ
9・・・高さ分布データ
10・・・運転室
11・・・スプレッダ
12・・・検出データ処理装置
13・・・制御装置
14・・・ドライブ装置
図1
図2
図3
図4