特許第6208070号(P6208070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208070
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/48 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   B60N2/48
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-91097(P2014-91097)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-209084(P2015-209084A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219668
【氏名又は名称】東海化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】那須 寛之
(72)【発明者】
【氏名】上村 光輝
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−333832(JP,A)
【文献】 特開2013−224112(JP,A)
【文献】 特開2005−239074(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/111097(WO,A1)
【文献】 特開2006−069286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
A47C 7/00 − 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッドを有するヘッドレストを備えており、パッドのうち、着座者の頭部を受け止める部位には、インサート材が備えられている乗物用シートであって、
インサート材は、パッドより硬度の高い硬質ウレタンから形成されており、
硬質ウレタンの硬度は、
着座者の頭部がヘッドレストに対して隙を有した状態で乗物に後突が発生したとき、着座者に作用する慣性力によって、着座者の頭部がヘッドレストの内部へ沈み込むことを防止できつつ、
その後、着座者の頭部がヘッドレストに対して隙を詰めた状態になると、引き続き着座者に作用する慣性力によって、着座者の頭部がヘッドレストの内部に沈み込むことを許容できるものとなっており、
硬質ウレタンは、その後、着座者の頭部がヘッドレストに対して隙を詰めた状態になると、引き続き着座者に作用する慣性力によって、着座者の頭部がヘッドレストの内部に沈み込むとき、硬質ウレタン自身が変形した状態または破断した状態となっており、
硬質ウレタンには、この変形または破断の起点を成す起点部が形成されており、
起点部は、ヘッドレストの幅方向の略中央に上下方向に沿って形成されたスリットから構成されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
硬質ウレタンは、パッドの表面に埋め込まれる格好で備えられていることを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関し、詳しくは、パッドを有するヘッドレストを備えており、パッドのうち、着座者の頭部を受け止める部位には、インサート材が備えられている乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用シートである自動車等の車両用シートのシートバックには、着座者の頭部を受け止め可能にヘッドレストが組み付けられている。このようなヘッドレストは、クッション性を有するパッドを備えており、パッドのうち、着座者の頭部を受け止める部位には、インサート材が備えられているものがある。ここで、下記特許文献1には、図5に示すように、インサート材146が低反発弾性材から構成されているヘッドレスト104が開示されている。これにより、自動車に後突が発生したときのヘッドレスト104の前面部の沈み込み及び着座者の頭部(いずれも図示しない)の跳ね返りを抑制できるため、着座者の保護性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−69286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、自動車に後突が発生すると、この後突の衝撃によって、着座者は前方に移動していく。このとき、着座者の頭部がヘッドレスト104に対して隙を有した状態となっているため、この移動によって着座者に生じる加速度は、着座者に作用する慣性力によって、着座者の胴部より頭部の方が遅れた状態で作用する(図6参照)。これにより、着座者の頭部が前屈した状態(着座者の顎が引いた状態であり、以下、「前屈状態」と記す)となっていく。その後、この前屈状態の頭部がヘッドレスト104に対して隙を詰めた状態になり、引き続き着座者に作用する慣性力によって、この前屈状態のまま、この頭部がヘッドレストの内部に沈み込んでいく。このように沈み込んでいくと、後突から所定時間後(図6において、例えば、時間T)において、これら頭部と胴部とに作用する加速度の差(図6において、A1)が大きいままとなっているため、この加速度の差から算出されるNIC値も大きいままとなり、結果として、鞭打ち障害の低減に対応できていなかった。
【0005】
また、引き続き着座者に作用する慣性力によって、この前屈状態のまま、さらに、この頭部がヘッドレストの内部に沈み込んでいくと、この沈み込みに応じて低反発弾性材の硬度も上がるため、この沈み込みが不十分となってしまうことがあった。そのため、この前屈状態が維持されてしまうこととなり、結果として、鞭打ち障害の低減に対応できていなかった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、着座者に生じる鞭打ち障害を低減できる乗物用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、パッドを有するヘッドレストを備えており、パッドのうち、着座者の頭部を受け止める部位には、インサート材が備えられている乗物用シートである。インサート材は、パッドより硬度の高い硬質ウレタンから形成されている。硬質ウレタンの硬度は、着座者の頭部がヘッドレストに対して隙を有した状態で乗物に後突が発生したとき、着座者に作用する慣性力によって、着座者の頭部がヘッドレストの内部へ沈み込むことを防止できるものとなっている。また、硬質ウレタンの硬度は、その後、着座者の頭部がヘッドレストに対して隙を詰めた状態になると、引き続き着座者に作用する慣性力によって、着座者の頭部がヘッドレストの内部に沈み込むことを許容できるものとなっており、硬質ウレタンは、その後、着座者の頭部がヘッドレストに対して隙を詰めた状態になると、引き続き着座者に作用する慣性力によって、着座者の頭部がヘッドレストの内部に沈み込むとき、硬質ウレタン自身が変形した状態または破断した状態となっており、硬質ウレタンには、この変形または破断の起点を成す起点部が形成されており、起点部は、ヘッドレストの幅方向の略中央に上下方向に沿って形成されたスリットから構成されている
【0008】
請求項1の発明によれば、乗物に後突が発生すると、この後突の衝撃によって、着座者は前方に移動していく。このとき、従来技術と同様に、着座者の頭部がヘッドレストに対して隙を有した状態となっているため、着座者に作用する慣性力によって、この移動によって生じる加速度は、着座者の胴部より頭部の方が遅れた状態で作用する。これにより、着座者の頭部が前屈状態となっていく。その後、この前屈状態の頭部がヘッドレストに対して隙を詰めた状態になり、引き続き着座者に作用する慣性力によって、この前屈状態のまま、この頭部がヘッドレスト4の内部に沈み込んでいこうとする。しかし、この頭部をヘッドレストの硬質ウレタンが支えるため、これ以上の頭部の前屈が規制されることとなる。これにより、後突から所定時間後において、これら頭部と胴部とに作用する加速度の差を従来のそれより小さくできるため、この加速度の差から算出されるNIC値も小さくできる。したがって、着座者に生じる鞭打ち障害を低減できる。また、引き続き着座者に作用する慣性力によって、この前屈状態のまま、さらに、この頭部がヘッドレストの内部に沈み込んでいくと、この沈み込みの荷重によって、硬質ウレタンが破断する。これにより、この頭部をヘッドレストの内部に沈み込ませることができるため、この頭部の前屈状態を緩和できる。したがって、着座者に生じる鞭打ち障害を低減できる。また、請求項1の発明によれば、硬質ウレタンが破断できないといった事態を招く恐れがないため、確実に、前屈状態の着座者の頭部を緩和できる。したがって、着座者に生じる鞭打ち障害を確実に低減できる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗物用シートであって、硬質ウレタンは、パッドの表面に埋め込まれる格好で備えられている
【0010】
請求項2の発明によれば、ヘッドレストの表面に凹凸が形成されることがない。したがって、ヘッドレストが着座者の頭部を受け止めても、この受け止めた頭部に異物感を生じさせることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係る車両用シートの全体斜視図である。
図2図1のヘッドレストの拡大図である。
図3図2のIII−III線の縦断面図である。
図4図1の車両用シートに後突が生じたときのNIC値と時間との関係を示す図である。
図5】従来技術に係る車両用シートのヘッドレストの縦断面図である。
図6図5の車両用シートに後突が生じたときのNIC値と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜4を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、『乗物用シート』の例として、『車両用シート1』を説明することとする。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、自動車(図示しない)の内部に配置した状態の車両用シート1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0015】
まず、図1を参照して、車両用シート1の構成を説明する。この車両用シート1は、例えば、自動車等のシートであり、シートクッション2と、ヘッドレスト4を有するシートバック3とから構成されている。ここで、このシートバック3とヘッドレスト4とについて詳述する。なお、シートクッション2は、公知のものでよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0016】
はじめに、シートバック3について詳述する。このシートバック3のバックフレーム(図示しない)のアッパフレーム(図示しない)には、左右に対を成すようにホルダ(図示しない)が溶接によって組み付けられている。この左右のホルダには、後述するヘッドレスト4の左右のステー42、42を挿し込み可能な樹脂製のサポート20、20が組み付けられている。
【0017】
次に、図2〜3を参照して、ヘッドレスト4について詳述する。このヘッドレスト4は、この車両用シート1に着座員の頭部を受け止め可能なクッション体であり、主として、その輪郭を成すパッド(ウレタン)を有するヘッドレスト本体40と、このヘッドレスト本体40をシートバック3の上部に組み付けるための左右に対を成すステー42、42とから構成されている。
【0018】
このヘッドレスト本体40の前面側(着座者の頭部を受け止める部位)には、略矩形状の凹み40aが形成されている。この凹み40aには、パッドより硬度の高い硬質ウレタン46が組み付けられている。これにより、この硬質ウレタン46が着座者の頭部を受け止めることとなる。この硬質ウレタン46には、その表面に上下方向に沿ってスリット46aが形成されている。このスリット46aが、特許請求の範囲に記載の「起点部」に相当する。
【0019】
そして、このヘッドレスト本体40は、硬質ウレタン46と共に、その外面がヘッドレストカバー44によって覆われている。また、この左右のステー42、42をシートバック3の左右の肩口に組み付けられているサポート20、20に挿し込み、この挿し込んだステー42の一方とサポート20の一方とを公知のロック機構(図示しない)によってロックさせると、シートバック3に対するヘッドレスト4の組み付けが完了する。
【0020】
なお、このロック機構は、シートバック3に対するヘッドレスト4の高さ位置を調節可能に、ステー42の複数の高さ位置における任意の高さ位置でサポート20に対してロック可能となっている。また、この左右のステー42、42の先端は、テーパ状に形成されている。これにより、この左右のステー42、42をシートバック3のサポート20、20に挿し込むとき、この左右のステー42、42の先端がシートバック3のサポート20、20の内部に案内されるため、この挿し込みの作業性を高めることができる。
【0021】
ヘッドレスト4は、このように構成されている。このように構成されているヘッドレスト4は、予め、成形されたヘッドレスト本体40に硬質ウレタン46を組み付け、この硬質ウレタン46を組み付けたヘッドレスト本体40にヘッドレストカバー44をカバーリングする格好で製造されている。
【0022】
次に、図4を参照して、上述したヘッドレスト4を備えた車両用シート1の作用を説明する。自動車に後突が発生すると、この後突の衝撃によって、着座者は前方に移動していく。このとき、従来技術と同様に、着座者の頭部がヘッドレスト4に対して隙を有した状態となっているため、着座者に作用する慣性力によって、この移動によって生じる加速度は、着座者の胴部より頭部の方が遅れた状態で作用する(図4参照)。
【0023】
これにより、着座者の頭部が前屈状態となっていく。その後、この前屈状態の頭部がヘッドレスト4に対して隙を詰めた状態になり、引き続き着座者に作用する慣性力によって、この前屈状態のまま、この頭部がヘッドレスト4の内部に沈み込んでいこうとする。しかし、この頭部をヘッドレスト4の硬質ウレタン46が支えるため、これ以上の頭部の前屈が規制されることとなる。
【0024】
これにより、従来技術とは異なり、後突から所定時間後(図4において、例えば、時間T)において、これら頭部と胴部とに作用する加速度の差(図4において、A2)を従来のそれ(図6において、A1)より小さくできるため、この加速度の差から算出されるNIC値も小さくできる。
【0025】
また、引き続き着座者に作用する慣性力によって、この前屈状態のまま、さらに、この頭部がヘッドレスト4の内部に沈み込んでいくと、この沈み込みの荷重によって、スリット46aを起点に硬質ウレタン46が破断する。これにより、従来技術とは異なり、この頭部(前屈状態の頭部)をヘッドレスト4の内部に沈み込ませることができるため、この沈み込みに応じて、この頭部の前屈状態を緩和できる。
【0026】
本発明の実施例に係る車両用シート1は、上述したように構成されている。この構成によれば、ヘッドレスト本体40の前面側(着座者の頭部を受け止める部位)の凹み40aには、パッドより硬度の高い硬質ウレタン46が組み付けられている。これにより、従来技術とは異なり、後突から所定時間後において、着座者の頭部と胴部とに作用する加速度の差を従来のそれより小さくできるため、この加速度の差から算出されるNIC値も小さくできる。したがって、着座者に生じる鞭打ち障害を低減できる。また、従来技術とは異なり、頭部をヘッドレスト4の内部に沈み込ませることができるため、この頭部の前屈状態を緩和できる。したがって、着座者に生じる鞭打ち障害を低減できる。
【0027】
また、この構成によれば、この硬質ウレタン46には、その表面に上下方向に沿ってスリット46aが形成されている。そのため、硬質ウレタン46が破断できないといった事態を招く恐れがないため、確実に、前屈状態の着座者の頭部を緩和できる。したがって、着座者に生じる鞭打ち障害を確実に低減できる。
【0028】
また、この構成によれば、ヘッドレスト本体40の前面側には、略矩形状の凹み40aが形成されている。この凹み40aには、パッドより硬度の高い硬質ウレタン46が組み付けられている。すなわち、硬質ウレタン46は、ヘッドレスト本体40の表面に埋め込まれる格好となっている。そのため、ヘッドレスト4の表面に凹凸が形成されることがない。したがって、ヘッドレスト4が着座者の頭部を受け止めても、この受け止めた頭部に異物感を生じさせることがない。
【0029】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
【0030】
各実施例では、『乗物用シート』の例として、『車両用シート1』を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、『乗物用シート』は、各種の乗物のシート、例えば、『船舶のシート』、『飛行機のシート』、『鉄道車両のシート』等であっても構わない。
【0031】
また、実施例では、ヘッドレスト4は、予め、成形されたヘッドレスト本体40に硬質ウレタン46を組み付け、この硬質ウレタン46を組み付けたヘッドレスト本体40にヘッドレストカバー44をカバーリングする格好で製造されている形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、ヘッドレスト4を発泡成形によって製造しても構わない。その場合、予め、ヘッドレストカバー44の所定の部位に硬質ウレタン46を貼り付けておく必要がある。
【0032】
また、実施例では、硬質ウレタン46を破断させて着座者の頭部をヘッドレスト4の内部に沈み込ませる形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、硬質ウレタン46を変形させて着座者の頭部をヘッドレスト4の内部に沈み込ませる形態でも構わない。
【符号の説明】
【0033】
1 車両用シート(乗物用シート)
4 ヘッドレスト
40 ヘッドレスト本体(パッド)
46 硬質ウレタン

図1
図2
図3
図4
図5
図6