特許第6208074号(P6208074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208074
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】加飾体
(51)【国際特許分類】
   B44F 1/04 20060101AFI20170925BHJP
   B44C 3/02 20060101ALI20170925BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20170925BHJP
   G03H 1/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B44F1/04
   B44C3/02 A
   B32B7/02 103
   G03H1/02
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-92700(P2014-92700)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-208950(P2015-208950A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】山田 英二
(72)【発明者】
【氏名】市川 貴茂
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−123161(JP,A)
【文献】 特開2010−120236(JP,A)
【文献】 特開2000−121392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/00 − 5/00
B42D 15/02,15/10
B44B 1/00 − 11/04
B44C 1/00 − 7/08
B44D 2/00 − 7/00
B44F 1/00 − 99/00
B32B 1/00 − 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
当該基材の表面側に設けられると共に、面方向に分断された第1反射層、及び当該第1反射層の表面側に設けられると共に、前記第1反射層の分断箇所と異なる分断箇所において面方向に分断された第2反射層を有し、光を反射する反射層と、
当該反射層の表面側に設けられ、光の干渉縞が記録されるホログラム層と、
を備えた加飾体。
【請求項2】
前記ホログラム層は、前記第2反射層の表面側に設けられた第1ホログラム層と、当該第1ホログラム層の表面側に設けられた第2ホログラム層とを備えている請求項1に記載の加飾体。
【請求項3】
前記ホログラム層の表面側に設けられ、面方向に配置された複数の加飾部位により加飾される加飾層を備えている請求項1又は請求項2に記載の加飾体。
【請求項4】
前記加飾層の前記加飾部位同士は離間され、前記加飾層は面に垂直方向において加飾部位の位置を変えて複数層設けられている請求項3に記載の加飾体。
【請求項5】
前記反射層に設けられ、当該反射層の内部応力を緩和する応力緩和層を備えた請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の加飾体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾体に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、加飾体として使用されるホログラムフィルムが開示されている。このホログラムフィルムは、基材上にホログラム形成層、蒸着層、保護層を順次積層して形成されている。
【0003】
ところで、上記ホログラムフィルムでは、製品形状に合わせて成形(賦形)されると、蒸着層に割れが発生し、この割れがホログラム形成層に伝搬され、ホログラム形成層にも割れが発生する点について、配慮がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−3853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、反射層の割れによるホログラム層の割れを効果的に抑制又は防止することができる加飾体を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明に係る加飾体は、基材と、基材の表面側に設けられると共に、面方向に分断された第1反射層と、第1反射層の表面側に設けられると共に、第1反射層の分断箇所と異なる分断箇所において面方向に分断された第2反射層を有し、光を反射する反射層と、反射層の表面側に設けられ、光の干渉縞が記録されるホログラム層と、を備えている。
【0007】
請求項1に係る加飾体では、基材の表面側に光を反射する反射層が設けられ、この反射層の表面側に光の干渉縞が記録されるホログラム層が設けられる。
【0008】
ここで、反射層が第1反射層及び第2反射層により多層化されている。第1反射層は面方向に分断される。第2反射層は第1反射層の分断箇所と異なる分断箇所において面方向に分断される。このため、例えば基材が変形された場合に、第1反射層の分断箇所を起点として割れを生じさせ、この割れの第2反射層への伝搬が第2反射層により抑制される。
【0009】
請求項2に記載された発明に係る加飾体では、請求項1に係る加飾体において、ホログラム層は、第2反射層の表面側に設けられた第1ホログラム層と、第1ホログラム層の表面側に設けられた第2ホログラム層とを備えている。
【0010】
請求項2に係る加飾体によれば、ホログラム層が第1ホログラム層及び第2ホログラム層を備えて多層化されている。このため、例えば第1ホログラム層まで割れが伝搬されたとしても、第2ホログラム層で割れの伝搬が抑制される。更に、請求項2に係る加飾体によれば、第2ホログラム層によるホログラム効果に加えて、第1ホログラム層によるホログラム効果が第2ホログラム層を介して得られる。このため、ホログラム層の多層化された方向において、奥行き感のある加飾を施すことができる。
【0011】
請求項3に記載された発明に係る加飾体は、請求項1又は請求項2に係る加飾体において、ホログラム層の表面側に設けられ、面方向に配置された複数の加飾部位により加飾される加飾層を備えている。
【0012】
請求項3に係る加飾体によれば、ホログラム層の表面側に加飾層が設けられているので、加飾層によりホログラム層の表面側が加飾され、反射層の分断箇所が目立ち難くなる。
【0013】
請求項4に記載された発明に係る加飾体では、請求項3に係る加飾体において、加飾層の加飾部位同士は離間され、加飾層は面に垂直方向において加飾部位の位置を変えて複数層設けられている。
【0014】
請求項4に係る加飾体によれば、複数層の加飾層が設けられているので、反射層の分断箇所がより一層目立ち難くなる。
【0015】
請求項5に記載された発明に係る加飾体は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に係る加飾体において、反射層に設けられ、反射層の内部応力を緩和する応力緩和層を備えている。
【0016】
請求項5に係る加飾体では、反射層に応力緩和層が設けられ、反射層の内部応力が応力緩和層により緩和される。このため、例えば基材が変形された場合に、反射層に生じる内部応力が緩和されるので、反射層の割れが効果的に抑制又は防止される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る加飾体は、反射層の割れによるホログラム層の割れを効果的に抑制又は防止することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施の形態に係る加飾体の断面図である。
図2図1に示される加飾体の要部の拡大断面図である。
図3】第1実施の形態に係る加飾体の製造方法を説明するフローチャートである。
図4】第1実施の形態に係る加飾体の反射層の製造方法を説明する概略工程図である。
図5図4に示される反射層の製造方法で使用される蒸着マスクの要部拡大平面図であり、(A)は第1反射層の形成に使用される蒸着マスクの要部拡大平面図、(B)は第2反射層の形成に使用される蒸着マスクの要部拡大平面図である。
図6】本発明の第2実施の形態に係る加飾体の断面図である。
図7図6に示される加飾体の概略斜視図である。
図8】本発明の第3実施の形態に係る加飾体の断面図である。
図9】本発明の第4実施の形態に係る加飾体の断面図である。
図10】本発明の第5実施の形態に係る加飾体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施の形態]
以下、図1図5を用いて、本発明の第1実施の形態に係る加飾体を説明する。なお、説明の便宜上、図中に示された矢印X方向及び矢印Y方向は、加飾体の表面と同一平面における互いに直交した方向を示している。また、矢印Z方向は、加飾体の表面に対して直交する方向(加飾体の厚さ方向)を示している。但し、加飾体の取付方向、貼付方向等の適用方向が限定されるものではない。
【0020】
(加飾体の構成)
図1及び図2に示される本実施の形態に係る加飾体10は、例えば平面視で矩形状、長尺状等のフィルムとして構成されている。例えば自動車等の車両では、インストルメントパネル、ドア等の内装の装飾フィルムとして、加飾体10が使用されている。また、加飾体10は車両に使用されるものに限定されるものではない。例えば、加飾体10は、パーソナルコンピュータ、携帯端末、携帯電話機等の電子機器や、テレビジョン、冷蔵庫、洗濯機等の電気機器の装飾フィルムとして、或いは紙幣、クレジットカード等のセキュリティフィルムとして使用されている。
【0021】
加飾体10は、基材12と、基材12の表面(矢印Z方向側の表面。以下、同様。)側に設けられた反射層14と、反射層14の表面側に設けられたホログラム層20と、ホログラム層20の表面側に設けられた加飾層22とを備えている。基材12には、例えば透光性(又は非透光性)を有するフィルム状の基材が使用されている。詳しく説明すると、基材12としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアセタール、フッ素、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリアミド等の合成樹脂材料により形成されている。基材12の厚さは、例えば数十μm〜数百μmに設定されている。
【0022】
反射層14はホログラム層20側から入射された光を反射する。反射層14は、本実施の形態では、基材12の表面側に設けられた第1反射層16と、第1反射層16の表面側に設けられた第2反射層18とを備えて2層構造とされている。第1反射層16は矢印X方向及び矢印Y方向へ面方向に分断されている。ここで、分断とは、面方向へ連続的に形成されるべき第1反射層16が面方向で細分化されるという意味で使用されている。第1反射層16の分断された分断部位16A間には分断箇所16Bが設けられている。分断箇所16Bは分断部位16Aの側壁間に形成されており、分断部位16A同士は、接触していても、離間されていてもよい。本実施の形態では、第1反射層16の分断間隔(分断箇所16Bのピッチ)は一定とされているが、ランダムであってもよい。
【0023】
第1反射層16は、光の反射特性に優れた金属材料、合金材料又は金属酸化物材料により形成されている。金属材料としては、例えばアルミニウム、亜鉛、錫等の金属材料が使用可能である。特に、加工性、光反射性、装飾性等の観点から、第1反射層16はアルミニウム材料により形成されている。合金材料としては、上記金属材料の合金が使用可能である。また、金属酸化物材料としては、アルミニウム、シリコン、マグネシウム、カルシウム、カリウム、セリウム、錫、ナトリウム、硼素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、タンタル等の金属酸化物材料が使用可能である。なお、第1反射層16は、例えばアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、セリウム等の金属弗化物材料により形成してもよい。第1反射層16の膜厚は、例えば数十μm〜数百μmに設定されている。
【0024】
一方、第2反射層18は、第1反射層16の分断箇所16Bと異なる分断箇所18Bにおいて(分断箇所16Bに対して面方向に位置をずらした分断箇所18Bを備えて)、矢印X方向及び矢印Y方向へ面方向に分断されている。つまり、第2反射層18の分断された分断部位18A間に分断箇所18Bが設けられており、この分断箇所18Bの位置が、第1反射層16の分断箇所16Bの位置に対して面方向で異なり、かつ厚さ方向(矢印Z方向)で一致されていない。分断箇所18Bは、分断箇所16Bと同様に、分断部位18Aの側壁間に形成されており、分断部位18A同士は、接触していても、離間されていてもよい。本実施の形態では、第2反射層18の分断間隔(分断箇所18Bのピッチ)は、第1反射層16と同様に、一定であっても、ランダムであってもよい。また、第2反射層18の分断間隔は、第1反射層16の分断間隔と異なっていてもよい。
【0025】
本実施の形態では、第2反射層18は、第1反射層16と同一材料及び同一膜厚により形成されている。なお、第2反射層18は、第1反射層16と異なる材料により形成されても、又第1反射層16と異なる膜厚により形成されてもよい。
【0026】
ホログラム層20には光の干渉縞(ホログラム画像)が記録される。ホログラム層20は例えば樹脂材料により形成されている。詳しく説明すると、樹脂材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂材料、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ウレタン(メタ)アクリレート等の熱硬化性樹脂材料等が使用可能である。ホログラム層20の膜厚は、例えば数十μm〜数百μmに設定されている。本実施の形態では、成形加工性に優れ、形状保持性に優れ、製作費用が安価にできる等の観点から、ホログラム層20はポリ塩化ビニル樹脂材料により形成されている。また、ホログラム層20は、例えば熱圧着等のラミネート法により、或いは接着剤を介在させて反射層14に形成されている。
【0027】
加飾層22は、絵柄、模様柄、文字、記号等の任意の面形状や色彩を有し、面方向に配置された複数の加飾部位22Aと、加飾部位22A間の分離スペース22Bとを備えている。つまり、加飾部位22A同士は離間されている。本実施の形態では、加飾部位22Aは印刷法により印刷されたインク層により形成されている。分離スペース22Bは加飾部位22Aが印刷されていない箇所である。例えば、加飾層22を木目調柄や金属調柄とした加飾体10が自動車のインストルメントパネルに貼付けられると、このインストルメントパネルが木目調柄や金属調柄に装飾される。ホログラム層20からのホログラム効果により、木目調柄や金属調柄の加飾性がより一層向上される。
【0028】
(加飾体の製造方法)
図3図5を用いて、本実施の形態に係る加飾体10の製造方法を簡単に説明する。図3に示されるように、最初に、加飾体10の基材12が準備される(S1)。
【0029】
次に、基材12の表面側に第1反射層16が形成される(S2)。第1反射層16は、ここでは、蒸着法を用いて成膜されたアルミニウム材料により形成される。すなわち、図4に示されるように、溶融炉30上にこの溶融炉30と対向配置された図示を省略した取付部材に、表面を下向きにした基材12が取付けられる。溶融炉30ではアルミニウム材料が溶融された溶液32が貯溜されており、溶液32からアルミニウム粒子32Aが基材12の表面へ向かって蒸発される。基材12の表面と溶融炉30との間に蒸着マスク34が配置されている。図5(A)に示されるように、第1反射層16の形成では、矢印X方向に対して45度及び135度をなして格子状に区切られた網目模様34Aを有する蒸着マスク34が使用される。この蒸着マスク34を通過したアルミニウム粒子32Aが基材12の表面上に付着されることにより、面方向に分断され、分断部位16A間に分断箇所16Bを有する第1反射層16が形成される(図1及び図2参照)。詳しく説明すると、蒸着マスク34の網目模様34Aによってアルミニウム粒子32Aの蒸着が部分的に遮れるので、網目模様34Aと対応する箇所に分断箇所16Bが形成される。ここでは、平面視において、第1反射層16の分断箇所16Bは格子状とされている。
【0030】
次に、第1反射層16の表面側に第2反射層18が形成される(S3)。第2反射層18は、第1反射層16と同様に、蒸着法を用いて成膜されたアルミニウム材料により形成される。ここで、図5(B)に示されるように、第2反射層18の形成では、矢印X方向及び矢印Y方向と一致して格子状に区切られた網目模様34Bを有する蒸着マスク34が使用される。この蒸着マスク34は第1反射層16の形成に使用された蒸着マスク34と同一であって、同一の蒸着マスク34が同一面内において45度回転されて使用されている。これにより、第1反射層16の分断箇所16Bと第2反射層18の分断箇所18Bとが平面視で交差する箇所を除いて、第1反射層16の分断箇所16Bと異なる格子状の分断箇所18Bを有し、この分断箇所18Bが分断部位18A間に設けられた第2反射層18が形成される。第2反射層18が形成されると、第1反射層16及び第2反射層18を有する反射層14が形成される。
【0031】
なお、本実施の形態では、蒸着マスク34を同一面内において45度回転させているが、この回転角度に限定はされない。例えば、蒸着マスク34は、矢印X方向に対して30度、60度、120度又は150度回転させて使用してもよい。また、例示した回転角度以外の角度で蒸着マスク34が回転されてもよい。更に、蒸着マスク34の網目模様34A及び網目模様34Bは、平面視で矩形状に限定されるものではなく、平行四辺形状、三角形状、円形状、ストライプ状等であってもよい。また、第1反射層16の形成で使用される蒸着マスク34の網目模様34Aと第2反射層18の形成で使用される蒸着マスク34の網目模様34Bとが異なっていてもよい。
【0032】
次に、反射層14の表面側にホログラム層20が形成される(S4)。ホログラム層20では、その形成前、又は形成後に図示を省略したホログラム作成用の凹凸プレススタンパーによりホログラムのレリーフとなる光の干渉縞が記録される。
【0033】
次に、ホログラム層20の表面側に加飾層22が形成される(S5)。加飾層22は、印刷法を用いて加飾部位22Aを印刷することにより形成される。加飾部位22A間には分離スペース22Bが形成される。この加飾層22が形成されると、本実施の形態に係る加飾体10が完成する。なお、必要に応じて、加飾層22の表面側に光透過性を有する保護層が形成されてもよい。
【0034】
(本実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係る加飾体10では、図1及び図2に示されるように、基材12の表面側に光を反射する反射層14が設けられ、この反射層14の表面側に光の干渉縞が記録されるホログラム層20が設けられる。
【0035】
ここで、反射層14が第1反射層16及び第2反射層18により多層化されている。第1反射層16は面方向に分断される。第2反射層18は第1反射層16の分断箇所16Bと異なる分断箇所18Bにおいて面方向に分断される。このため、例えば、加飾体10が製品形状に合わせて絞り成形され、基材12が変形された場合に、図2に符号Aを付して破線で囲んで示される箇所、すなわち第1反射層16の分断箇所16Bを起点として割れを生じさせることができる。そして、第1反射層16の分断箇所16Bと第2反射層18の分断箇所18Bとの面方向における位置が異なり、かつホログラム層20に比して第2反射層18の割れに対する強度が高い。従って、第1反射層16の割れの第2反射層18への伝搬が第2反射層18により抑制される。第1反射層16に割れが生じても第2反射層18に割れが生じていない場合には、反射層14の全体としては割れに至っていない。
【0036】
従って、本実施の形態に係る加飾体10によれば、反射層14の割れによるホログラム層20の割れを効果的に抑制又は防止することができる。しかも、本実施の形態に係る加飾体10によれば、加飾体10が設けられる製品形状に合わせて深絞り成形が可能となり、複雑な形状に成形することができるので、製品の意匠性を向上させることができる。
【0037】
また、本実施の形態に係る加飾体10では、ホログラム層20の表面側に加飾層22が設けられているので、加飾層22によりホログラム層20の表面が加飾され、第1反射層16の分断箇所16B、第2反射層18の分断箇所18Bが目立ち難くなる。
【0038】
更に、本実施の形態に係る加飾体10では、第1反射層16の分断箇所16B並びに第2反射層18の分断箇所18Bが、図4に示されるように、蒸着の際に蒸着マスク34を介在させると共に、同一の蒸着マスク34を同一面内で回転させるだけで形成されている。このため、特に特別な装置、器具を用いることなく、第1反射層16及び第2反射層18が分断されるので、加飾体10を簡易に形成することができる。
【0039】
[第2実施の形態]
次に、図6及び図7を用いて、本発明の第2実施の形態に係る加飾体を説明する。なお、本実施の形態並びにそれ以降の実施の形態の説明において、前述の第1実施の形態に係る加飾体10の構成要素と同一構成要素には同一符号を付して、その説明は重複するので省略する。
【0040】
(加飾体の構成)
図6及び図7に示される第2実施の形態に係る加飾体40は、反射層14の表面上にホログラム層28を備えている。ホログラム層28は、第1実施の形態に係る加飾体10のホログラム層20を第1ホログラム層20として、この第1ホログラム層20の表面側に更に第2ホログラム層24を備えている。つまり、ホログラム層28は、第1ホログラム層20及び第2ホログラム層24により多層化されている。
【0041】
図7に示されるように、第1ホログラム層20には例えば三角形模様のホログラム画像20Iが記録されている。また、第2ホログラム層24にも例えば同様の模様のホログラム画像24Iが記録されている。
【0042】
第2ホログラム層24の表面側には加飾層22が設けられている。ここでは、例えば加飾層22の加飾部位22Aは細長い帯状とされ、加飾部位22Aは木目調柄として形成されている。加飾部位22A間には分離スペース22Bが設けられている。分離スペース22Bでは、第1ホログラム層20のホログラム画像20I及び第2ホログラム層24のホログラム画像24Iが平面視可能とされている。なお、ホログラム画像20I及びホログラム画像24Iは例示の形状に限定されるものではない。また、加飾部位22Aは例示の柄に限定されるものではない。
【0043】
(本実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係る加飾体40では、前述の第1実施の形態に係る加飾体10により得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
また、本実施の形態に係る加飾体40では、図6及び図7に示されるように、ホログラム層28が第1ホログラム層20及び第2ホログラム層24により多層化されている。このため、例えば第1ホログラム層20まで割れが伝搬されたとしても、第2ホログラム層24で割れの伝搬が抑制される。
【0045】
更に、本実施の形態に係る加飾体40では、ホログラム層28が多層化されているので、第2ホログラム層24によるホログラム効果に加えて、第1ホログラム層20によるホログラム効果が第2ホログラム層24を介して得られる。例えば、上記例示の第1ホログラム層20のホログラム画像20Iが、加飾層22の分離スペース22Bにおいて、第2ホログラム層24のホログラム画像24Iと重なり、かつホログラム画像24Iよりも深い位置に見える。このため、ホログラム層28の多層化された方向において、奥行き感のある加飾を施すことができる。
【0046】
[第3実施の形態]
次に、図8を用いて、本発明の第3実施の形態に係る加飾体を説明する。
【0047】
(加飾体の構成)
図8に示される第3実施の形態に係る加飾体50は、第2実施の形態に係る加飾体40と同様に、第1ホログラム層20及び第2ホログラム層24を有するホログラム層28を備えている。つまり、ホログラム層28は、第1ホログラム層20及び第2ホログラム層24により多層化されている。
【0048】
第1実施の形態に係る加飾体10の加飾層22を第1加飾層22として、この第1加飾層22が第1ホログラム層20の表面側に設けられている。第1加飾層22では、加飾部位22Aを第1加飾部位22Aとし、この第1加飾部位22Aが分離スペース22Bを介して面方向に複数配置されている。第2ホログラム層24の表面側には、第1加飾層22と同様の第2加飾層26が設けられている。第2加飾層26は、矢印Z方向(面に垂直方向)において、第1加飾部位22Aに対して位置を変えて、面方向に配置された複数の第2加飾部位26Aを備えている。第2加飾部位26A間には分離スペース26Bが設けられている。第2加飾層26は、第1加飾層22の加飾と相互に混合って加飾されると共に、第1加飾層22の分離スペース22Bを覆う構成とされている。
【0049】
(本実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係る加飾体50では、前述の第2実施の形態に係る加飾体40により得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る加飾体50では、図8に示されるように、第1ホログラム層20は第1加飾層22を備え、第2ホログラム層24は第2加飾層26を備えている。第1加飾層22では面方向に配置された複数の第1加飾部位22Aを設けて加飾がなされ、第2加飾層26でも面方向に配置された複数の第2加飾部位26Aを設けて加飾がなされる。ここで、第2加飾部位26Aは第1加飾部位22Aと面方向で異なる位置に設けられている。このため、ホログラム層28は第1加飾層22と第2加飾層26とを重合わせた加飾となって第1反射層16及び第2反射層18を覆うので、第1反射層16の分断箇所16B及び第2反射層18の分断箇所18Bが目立ち難くなる。また、分断箇所16B、18Bだけでなく、例えば第1反射層16に割れが生じた際には、この割れが目立ち難くなる。
【0051】
なお、前述の第2実施の形態に係る加飾体40、本実施の形態に係る加飾体50では、ホログラム層28が第1ホログラム層20及び第2ホログラム層24の2層構造とされているが、ホログラム層28は3層以上とされてもよい。勿論、各層のホログラム層の表面には加飾層が設けられており、上層の加飾部位は下層の加飾部位に対して異なる位置に設けられる。
【0052】
[第4実施の形態]
次に、図9を用いて、本発明の第4実施の形態に係る加飾体を説明する。
【0053】
(加飾体の構成)
図9に示される第4実施の形態に係る加飾体60は、第2実施の形態に係る加飾体40において、加飾層22を第1加飾層22として、この第1加飾層22上に更に第2加飾層26を備えている。第2加飾層26は、第3実施の形態に係る加飾体50の第2加飾層26と同様に、第1加飾部位22Aに対して位置を変えて、面方向に配置された複数の第2加飾部位26Aを備えている。第2加飾部位26A間には分離スペース26Bが設けられている。
【0054】
(本実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係る加飾体60では、前述の第3実施の形態に係る加飾体50により得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
[第5実施の形態]
次に、図10を用いて、本発明の第5実施の形態に係る加飾体を説明する。
【0056】
(加飾体の構成)
図10に示される第5実施の形態に係る加飾体70では、図1及び図2に示される第1実施の形態に係る加飾体10の第2反射層18の表面側に第3反射層52が設けられると共に、第3反射層52の表面側に更に第4反射層54が設けられている。第3反射層52は、第2反射層18の分断箇所18Bと異なる分断箇所52Bにおいて、矢印X方向及び矢印Y方向へ面方向に分断されている。つまり、第3反射層52の分断された分断部位52A間に分断箇所52Bが設けられており、この分断箇所52Bの位置が、第2反射層18の分断箇所18Bの位置に対して面方向に異なり、かつ厚さ方向(矢印Z方向)で一致されていない。同様に、第4反射層54は、第3反射層52の分断箇所52Bと異なる分断箇所54Bにおいて、矢印X方向及び矢印Y方向へ面方向に分断されている。つまり、第4反射層54の分断された分断部位54A間に分断箇所54Bが設けられており、この分断箇所54Bの位置が、第3反射層52の分断箇所52Bの位置に対して面方向に異なり、かつ厚さ方向(矢印Z方向)で一致されていない。本実施の形態では、第1反射層16、第2反射層18、第3反射層52及び第4反射層54の合計4層構造により反射層14が構成されている。
【0057】
更に、本実施の形態に係る加飾体70では、反射層14に応力緩和層56が設けられている。応力緩和層56は、本実施の形態において、第2反射層18と第3反射層52との間に介在されており、反射層14の内部応力を緩和する。応力緩和層56は、反射層14の各層の材料に比べて剛性が低い柔軟性を有する材料により形成されており、例えば基材12と同様の合成樹脂材料により形成されている。応力緩和層56の膜厚は、例えば数十μm〜数百μmに設定されている。なお、応力緩和層56は、第1反射層16と第2反射層18との間、第3反射層52と第4反射層54との間に設けられてもよい。また、応力緩和層56は2層以上設けられてもよい。例えば、応力緩和層56は、第2反射層18と第3反射層52との間及び第3反射層52と第4反射層54との間に設けられてもよい。
【0058】
(本実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係る加飾体70では、前述の第1実施の形態に係る加飾体10により得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
また、本実施の形態に係る加飾体70では、反射層14に応力緩和層56が設けられ、反射層14の内部応力が応力緩和層56により緩和される。このため、例えば基材12が変形された場合に、反射層14に生じる内部応力が緩和されるので、反射層14の割れが効果的に抑制又は防止される。
【0060】
[上記実施の形態の補足説明]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲において例えば以下の通り変形可能である。例えば、上記第1実施の形態に係る加飾体では、反射層が2層構造とされ、上記第5実施の形態に係る加飾体では、反射層が4層構造とされている。本発明は、反射層を3層構造又は5層以上の多層構造としてもよい。
【0061】
また、上記第5実施の形態に係る加飾体では、ホログラム層が単層構造とされている。本発明は、第2実施の形態に係る加飾体と第5実施の形態に係る加飾体とを組合せて、例えば4層構造の反射層と2層構造のホログラム層とを備えた加飾体とされてもよい。勿論、反射層の層数、ホログラム層の層数、加飾層の層数がこの例示に限定されるものではない。
【0062】
更に、上記実施の形態では、フィルム状の基材を使用した例が説明されている。本発明は、クレジットカード等の紙製、樹脂製或いはプラスチック製のカード、電子機器や電気機器の外装樹脂パネル部品等を基材として、直接、反射層及びホログラム層を形成して加飾体を構成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10、40、50、60、70 加飾体
12 基材
14 反射層
16 第1反射層
16A、18A、52A、54A 分断部位
16B、18B、52B、54B 分断箇所
18 第2反射層
20 ホログラム層又は第1ホログラム層
24 第2ホログラム層
28 ホログラム層
34 蒸着マスク
52 第3反射層
54 第4反射層
56 応力緩和層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10