特許第6208108号(P6208108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208108雌型管継手部材、及び雌型管継手部材と対応する雄型管継手部材とからなる管継手
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208108
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】雌型管継手部材、及び雌型管継手部材と対応する雄型管継手部材とからなる管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/23 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   F16L37/23
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-215103(P2014-215103)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-80134(P2016-80134A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政樹
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−215399(JP,A)
【文献】 特開2004−100911(JP,A)
【文献】 特開2000−249281(JP,A)
【文献】 特開2000−193172(JP,A)
【文献】 実開昭61−164884(JP,U)
【文献】 実開昭59−039391(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する雄型管継手部材に取外し可能に連結される雌型管継手部材であって、
該雄型管継手部材を受け入れる筒状の周壁部、該周壁部の外周面から外方に突出した係止突起、及び該周壁部に半径方向で貫通するように設けられた施錠子保持孔を有する継手本体と、
該施錠子保持孔内に設定され、該周壁部の内周面から内側に突出して該周壁部に受け入れた雄型管継手部材を係止する施錠位置と、該施錠位置よりも外側の位置となり雄型管継手部材との係止を解除する施錠解除位置との間で変位可能とされた施錠子と、
該周壁部の該外周面を覆うように配置され、該施錠子と半径方向外側から係合して該施錠子を該施錠位置に保持する施錠子保持位置と、該施錠子保持位置から該周壁部の軸線の方向で変位して該施錠子が該施錠解除位置となるのを許容する施錠子解放位置との間で変位可能とされたスリーブであって、該施錠子保持位置から該施錠子解放位置に変位するときに該係止突起を受け入れる軸線方向部、及び該施錠子保持位置にあるときに当該スリーブが該周壁部の周方向の一方の側に回動するのを許容するように該係止突起を受け入れる周方向部、を含む係止突起受入部を有するスリーブと、
該スリーブを、該施錠子解放位置から該施錠子保持位置に向かって該軸線の方向に付勢する付勢部材と、を備え、
該係止突起受入部の該軸線方向部が、該スリーブが該施錠子保持位置と該施錠子解放位置との間を変位するときに該係止突起に対して摺動可能とされた軸線方向面を有し、該周方向部が、該軸線方向面に連接して該周方向の該一方の側とは反対の他方の側に延び、該係止突起が当該周方向部に受け入れられたときに、該スリーブの該施錠子解放位置へ向かう該軸線の方向での変位を阻止する周方向面を有しており、該軸線方向面が該周方向面に向かう方向で該周方向の該他方の側に傾斜するようにされた、雌型管継手部材。
【請求項2】
該付勢部材が該周方向の該一方の側に向かって該周方向にも付勢するようにされた、請求項1に記載の雌型管継手部材。
【請求項3】
該スリーブの内周面と該周壁部の外周面との間に配置され、該スリーブと共に該軸線の方向で変位可能とされるとともに、該スリーブに対して該周方向で回転自在とされた施錠子係合リングをさらに備え、該スリーブは、該施錠子保持位置にあるときに、該施錠子係合リングを介して該施錠子を半径方向外側から係合するようにされている、請求項1又は2に記載の雌型管継手部材。
【請求項4】
該付勢部材が、該スリーブに固定された第1固定端部と該周壁部に固定された第2固定端部とを有するコイルスプリングからなり、
該コイルスプリングと該施錠子係合リングとが、該施錠子係合リングが該コイルスプリングの該第1固定端部に隣接して該コイルスプリングと該軸線の方向で整合した状態で、該周壁部の該外周面と該スリーブの該内周面との間に配置されている、請求項3に記載の雌型管継手部材。
【請求項5】
該係止突起が、球状体を該周壁部の外周面に部分的に埋め込んで形成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の雌型管継手部材。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の雌型管継手部材と、該雌型管継手部材に取外し可能に連結される雄型管継手部材と、を備える管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対応する雄型管継手部材との連結が不意に解除されないようにするためのロック機構を有する雌型管継手部材、及び該雌型管継手部材とそれに対応する雄型管継手部材とからなる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対応する雄型管継手部材に取外し可能に連結されるようにされた雌型管継手部材において、流体通路を構成する筒状の継手本体と、この継手本体の周壁部を半径方向に貫通するように形成された施錠子保持孔内で雄型管継手部材の係止溝と係止する施錠位置と雄型管継手部材との係止が解除される施錠解除位置との間で半径方向に移動可能とされた施錠子と、継手本体の外周面を覆うように配置され、施錠子に半径方向外側から係合して施錠子を施錠位置に保持する施錠子保持位置と施錠子が施錠子解除位置に移動するのを許容する施錠子解放位置との間で軸線方向で変位可能とされたスリーブと、このスリーブを施錠子解放位置から施錠子保持位置に向かって付勢するスプリングとを備えるものがある。この雌型管継手部材は、スリーブが施錠子解放位置にある状態で、雄型管継手部材をその係止溝が施錠子と半径方向で整合する位置まで継手本体内に挿入すると、スリーブがスプリングの付勢力によって施錠子保持位置に向かって動かされ、それによって施錠子が施錠位置に移動して雄型管継手部材の係止溝と係合して、雄型管継手部材が雌型管継手部材と連結された状態となるようになっている。また、雄型管継手部材が連結されている状態において、スリーブをスプリングの付勢力に抗して施錠子保持位置から施錠子解放位置に変位させることで、雄型管継手部材との連結が解除されるようになっている。この種の管継手においては、スリーブを単に軸線方向で変位させるだけで連結が解除されるため、誤ってスリーブが操作されて不意に雌型管継手部材と雄型管継手部材との連結が解除されることが起こり得た。
【0003】
このような不意の連結解除を防止するために、例えば特許文献1に示すように、スリーブの軸線方向での変位を制限するためのロック機構を備えた雌型管継手部材が開発されている。このロック機構を備える雌型管継手部材は、上述の雌型管継手部材の構造に加えて、継手本体の外周面にその外方に突出するように設けられた係止突起と、スリーブに形成された突起受入溝と、をさらに備えている。突起受入溝は、スリーブが軸線方向で施錠子保持位置と施錠子解放位置との間で変位するときに係止突起を受け入れるように軸線方向に延びる軸線方向部と、スリーブが施錠子保持位置にある状態で回動したときに係止突起を受け入れるように周方向に延びる周方向部とからなり、係止突起が周方向に延びる周方向部の面に係合することによりスリーブが施錠子保持位置から施錠子解放位置に向かって軸線方向で変位するのを防止するようになっている。すなわち、雄型管継手部材を連結した際に、施錠子保持位置にあるスリーブを周方向に回動させて係止突起が突起受入溝の周方向部に受け入れられた状態とすることで、スリーブに軸線方向の力が誤って加えられたとしても連結が解除されないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−193172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなロック機構を備えた雌型管継手部材において、対応する雄型管継手部材を連結位置にまで挿入すると、スリーブはスプリングの付勢力によって施錠子保持位置にまで軸線の方向で変位するようになっているが、その際、スリーブの突起受入溝が係止突起に対して軸線の方向で相対的に移動することになる。スリーブは周方向にも回転可能となっているため、係止突起が突起受入溝の軸線方向部の面に接触して係止突起と突起受入溝とが摺動する場合もある。係止突起と突起受入溝との間の摩擦抵抗がスプリングの付勢力に対して十分に小さいときにはスリーブは施錠子保持位置にまで自動的に変位するが、例えば係止突起や突起受入溝に埃や油などの異物が付着するなどして係止突起と突起受入溝とが固着したような場合には、抵抗が大きくなり、スプリングの付勢力ではスリーブが施錠子保持位置にまで変位せず、雄型管継手部材を適切に連結した状態にならない虞がある。より付勢力の強いスプリングを用いればそのような状態になる可能性を低減することは可能ではあるが、付勢力を大きくしようとするとスプリングが大型化し、その結果、管継手部材自体も大型化してしまうことになる。また、スリーブを施錠子保持位置から施錠子解除位置に変位させる際に必要な力が大きくなり、連結を解除する際の操作性を低下させてしまうことにもなる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑み、突起受入部を有するスリーブを係止突起に対して移動させるときの抵抗力を低減し、スリーブがより確実に施錠子保持位置にまで変位するようにした雌型管継手部材、及び該雌型管継手部材とこれに取外し可能に連結される雄型管継手部材とを備える管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
対応する雄型管継手部材に取外し可能に連結される雌型管継手部材であって、
該雄型管継手部材を受け入れる筒状の周壁部、該周壁部の外周面から外方に突出した係止突起、及び該周壁部に半径方向で貫通するように設けられた施錠子保持孔を有する継手本体と、
該施錠子保持孔内に設定され、該周壁部の内周面から内側に突出して該周壁部に受け入れた雄型管継手部材を係止する施錠位置と、該施錠位置よりも外側の位置となり雄型管継手部材との係止を解除する施錠解除位置との間で変位可能とされた施錠子と、
該周壁部の該外周面を覆うように配置され、該施錠子と半径方向外側から係合して該施錠子を該施錠位置に保持する施錠子保持位置と、該施錠子保持位置から該周壁部の軸線の方向で変位して該施錠子が該施錠解除位置となるのを許容する施錠子解放位置との間で変位可能とされたスリーブであって、該施錠子保持位置から該施錠子解放位置に変位するときに該係止突起を受け入れる軸線方向部、及び該施錠子保持位置にあるときに当該スリーブが該周壁部の周方向の一方の側に回動するのを許容するように該係止突起を受け入れる周方向部、を含む係止突起受入部を有するスリーブと、
該スリーブを、該施錠子解放位置から該施錠子保持位置に向かって該軸線の方向に付勢する付勢部材と、を備え、
該係止突起受入部の該軸線方向部が、該スリーブが該施錠子保持位置と該施錠子解放位置との間を変位するときに該係止突起に対して摺動可能とされた軸線方向面を有し、該周方向部が、該軸線方向面に連接して該周方向の該一方の側とは反対の他方の側に延び、該係止突起が当該周方向部に受け入れられたときに、該スリーブの該施錠子解放位置へ向かう該軸線の方向での変位を阻止する周方向面を有しており、該軸線方向面が、該周方向面に向かう方向で該周方向の該他方の側に傾斜するようにされた、雌型管継手部材を提供する。
【0008】
当該雌型管継手部材においては、スリーブに設けられている係止突起受入部の軸線方向面が傾斜していて、スリーブが施錠子解放位置から施錠子保持位置に向かって軸線の方向に変位すると軸線方向面が係止突起から離れていくようになっている。これにより、軸線方向面と係止突起とが埃や脂などで固着してしまったときにも、固着した部分を引き離すように力が加わるので、付勢部材の付勢力によるスリーブの施錠子保持位置への移動がより確実に行われるようにすることが可能となる。
【0009】
好ましくは、該付勢部材が該周方向の該一方の側に向かって該周方向にも付勢するようにすることができる。
【0010】
このような構成とすることで、対応する雄型管継手部材を連結した際に、スリーブが施錠子解放位置にまで軸線の方向で変位することを阻止するように、スリーブがスプリングの周方向への付勢力によって自動的に周方向に回動されて係止突起が係止突起受入部の周方向部に受け入れられた状態とすることが可能となる。また、スリーブが施錠子解放位置にあるときには係止突起受入部の軸線方向面が係止突起に周方向で押しつけられた状態となるが、上述のように軸線方向面は傾斜しているので、付勢部材の周方向への付勢力の一部がスリーブを施錠子保持位置に向けて軸線の方向で押圧する分力として作用する。これにより、従来のロック機構を備える管継手部材のように軸線方向面が軸線の方向と平行になっているものに比べて、それと同じ付勢部材を使用してもスリーブに対する軸線の方向への付勢力をより大きくすることができ、従って、より確実にスリーブを施錠子保持位置にまで変位させることが可能となる。
【0011】
好ましくは、該スリーブの内周面と該周壁部の外周面との間に配置され、該スリーブと共に該軸線の方向で変位可能とされるとともに、該スリーブに対して該周方向で回転自在とされた施錠子係合リングをさらに備え、該スリーブは、該施錠子保持位置にあるときに、該施錠子係合リングを介して該施錠子を半径方向外側から係合するようにすることができる。
【0012】
雄型管継手部材が連結された状態では、雄型管継手部材が施錠子によって係止された状態となっているため、雌型管継手部材に対して雄型管継手部材を軸線の方向の周りで回転させると施錠子が回転することになる。このとき、施錠子とスリーブとが直接接触していると、施錠子の回転がスリーブに伝わってスリーブが周方向に回動してしまい、施錠子解除位置に軸線の方向で移動可能な状態となってしまう可能性がある。しかし、上述のように施錠子係合リングを設けてスリーブが施錠子と直接的には接触しないようにすることで、雄型管継手部材の回転に伴ってスリーブが回転してしまうことを防止することが可能となる。
【0013】
好ましくは、
該付勢部材が、該スリーブに固定された第1固定端部と該周壁部に固定された第2固定端部とを有するコイルスプリングからなり、
該コイルスプリングと該施錠子係合リングとが、該施錠子係合リングが該コイルスプリングの該第1固定端部に隣接して該コイルスプリングと該軸線の方向で整合した状態で、該周壁部の該外周面と該スリーブの該内周面との間に配置されているようにすることができる。
【0014】
また、好ましくは、該係止突起が、球状体を該周壁部の外周面に部分的に埋め込んで形成されているようにすることができる。
【0015】
本発明はまた、上記の何れかの雌型管継手部材と、該雌型管継手部材に取外し可能に連結される雄型管継手部材と、を備える管継手を提供する。
【0016】
以下、本発明に係る雌型管継手部材、及び雌型管継手部材と雄型管継手部材とからなる管継手の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る管継手を示す図であって、雌型管継手部材と雄型管継手部材とが連結されていない非連結状態における管継手を示す図である。
図2図1の管継手の、雌型管継手部材と雄型管継手部材とが連結された連結状態における図である。
図3図1のIII―IIIに沿う面での雌型管継手部材の部分断面図である。
図4図1の部分断面図である。
図5図2の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る管継手1は、図1及び図2に示すように、雌型管継手部材2と、この雌型管継手部材2と取外し可能に連結する雄型管継手部材4とからなっている。
【0019】
雌型管継手部材2は、図3に示すように、雄型管継手部材4を受け入れる周壁部10を有する継手本体12と、継手本体12の周壁部10の外周面10aを覆うように配置され、周壁部10に対して周壁部10の軸線Mの方向と周方向とに変位可能とされたスリーブ16と、周壁部10内に配置されたスライド弁構造体18と、を備える。継手本体12の周壁部10は、雄型管継手部材4を受け入れる前端部20から雄ネジが形成された後端部22にまで軸線Mの方向で貫通する流体通路24を構成している。また、半径方向で貫通するように形成された施錠子保持孔26を有し、この施錠子保持孔26内には施錠子28が設定されている。施錠子28は、施錠子保持孔26内において、周壁部10の内周面10bから内側に突出し、周壁部10内に受け入れられた雄型管継手部材4を係止する施錠位置(図5)と、施錠位置よりも外側の位置となり、雄型管継手部材4との係止を解除する施錠解除位置(図4)との間で変位可能となっている。スリーブ16の内周面16aと周壁部10の外周面10aとの間には、コイルスプリング32と、コイルスプリング32の前方位置において該コイルスプリング32に隣接するようにしてコイルスプリング32と軸線Mの方向で整合した状態で配置された施錠子係合リング34とが収納されている。
【0020】
コイルスプリング32は、図4及び図5に示すように、半径方向外側に延びるように折り曲げられた前端部(第1固定端部)32aと、軸線Mの後方に延びるように折り曲げられた後端部(第2固定端部)32bとを備え、前端部32aはスリーブ16のスプリング固定穴40に挿入されて固定され、後端部32bは周壁部10のスプリング固定穴42に挿入されて固定されている。当該コイルスプリング32は、その前端部32aと後端部32bとの間で、軸線Mの方向で圧縮されるとともに周方向で捩られた状態で設定されており、スリーブ16を継手本体12に対して軸線Mの方向で前方に付勢するとともに、前方から見て時計回りとなる方向(矢印Rで示す方向)に周方向でも付勢するようになっている。
【0021】
施錠子係合リング34は、コイルスプリング32の前端部32aとスリーブ16の内周面肩部16bとの間に配置されているため、スリーブ16が軸線Mの方向へ移動すると、スリーブ16とともに軸線Mの方向に移動する。一方で周方向ではスリーブ16に対して回転自在となっているため、スリーブ16が周方向で回動しても基本的には一緒に回動しない。
【0022】
図3に示すように、継手本体12の周壁部10にはロックボール嵌合穴46が形成されており、このロックボール嵌合穴46に球状体のロックボール48が埋め込まれて固定されている。ロックボール48はその一部が周壁部10の外周面10aから外方に突出しており、この突出した部分よって係止突起50を形成している。スリーブ16には、この係止突起50を受け入れる係止突起受入部52が形成されており、係止突起50はこの係止突起受入部52内に受け入れられるようになっている。係止突起受入部52は、スリーブ16がコイルスプリング32の軸線Mの方向での付勢力に抗して後方に移動されたとき(図1)に係止突起50を受け入れる軸線方向部52aと、スリーブ16がコイルスプリング32の周方向での付勢力により矢印Rの側に回動されたとき(図2)に係止突起50を受け入れる周方向部52bとを有する。軸線方向部52aは、スリーブ16が図1に示す位置から図2に示す位置に変位するときに係止突起50に対して摺動可能とされた軸線方向面52cを有している。また、周方向部52bは、軸線方向面52cに連接して周方向で矢印Rの側とは反対の側に向かって延びる周方向面52dを有している。
【0023】
スライド弁構造体18は、周壁部10の内周面10bに固定保持された筒状の基部54と、この基部54の内周面54aに対して軸線Mの方向で摺動可能に配置されたスライド弁体56と、スライド弁体56を基部54に対して軸線Mの方向の前方側に付勢するコイルスプリング58と、スライド弁体56の前端部56aに固定保持された施錠子保持カラー60とを備えている。基部54の外周面54bにはOリング62が配置されており、このOリング62によって基部54の外周面54bと周壁部10の内周面10bとの間が密封係合されている。図1図3、及び図4に示す非連結状態においては、スライド弁体56はコイルスプリング58の付勢力により前方に変位し、スライド弁体56の後端部56bに取付けられたOリング64が基部54の後端部に形成された傾斜シール面54cに密封係合した状態となる。これにより、継手本体12の前端部20と後端部22との間において流体通路24が閉止された状態となる。また、図2及び図5に示す連結状態においては、スライド弁体56の前端部56aに取付けられた面シールリング66に雄型管継手部材4の前端面4aが当接してスライド弁体56が後方に押され、スライド弁体56の後端部56bのOリング64と基部54の傾斜シール面54cとの間の密封係合が解除された状態となる。従って、流体通路24は前端部20と後端部22との間においてスライド弁体56の連通穴56cを介して連通した状態となる。さらに、スライド弁体56の外周面56d上には断面X形状の摺動シールリング68が配置されている。この摺動シールリング68は、スライド弁体56が前後に移動したときに、スライド弁体56の外周面56dと基部54の内周面54aとの間を摺動しながら密封係合して、流体通路24内の流体が当該管継手1の外部に漏れないようにしている。
【0024】
図1図3、及び図4に示す非連結状態においては、スリーブ16は、施錠子係合リング34と共に後方に変位しており、施錠子28が外方に移動して施錠解除位置となるのを許容する施錠子解放位置となっている。このとき、スライド弁体56はコイルスプリング58の付勢力により前方に変位され、これにより施錠子保持カラー60が施錠子28を外側に移動させて施錠子28を半径方向内側から支持して施錠解除位置に保持している。施錠解除位置にある施錠子28はその一部が周壁部10の外周面10aから外方に突出しており、この施錠子28の外方に突出した部分に施錠子係合リング34の前方係合面34aが当接して、施錠子係合リング34及びスリーブ16をそれ以上前方に変位させないように保持した状態となっている。このとき、係止突起50は、スリーブ16の係止突起受入部52の軸線方向部52aの中に受け入れられている(図1)。上述のようにコイルスプリング32はスリーブ16を周方向で矢印Rの側にも付勢しているため、軸線方向部52aの傾斜した軸線方向面52cは係止突起50に押しつけられた状態となっている。
【0025】
非連結状態にある雌型管継手部材2の流体通路24内に雄型管継手部材4を周壁部10の前端部20から挿入していくと、雄型管継手部材4の前端面4aがスライド弁体56の前端の面シールリング66に当接してスライド弁体56と密封係合した状態で、スライド弁体56を徐々に後方に押し込んでいく。施錠子保持カラー60もスライド弁体56と共に後方に移動していき、やがて施錠子28を支持しなくなる位置にまで移動する。さらに雄型管継手部材4を挿入して雄型管継手部材4の係止溝4bが施錠子28の内側に位置するようになると、施錠子28は施錠子係合リング34に押されて内側に移動し、施錠子28の一部が周壁部10の内周面10bから内方に突出して雄型管継手部材4の係止溝4b内に入り雄型管継手部材4を係止した状態となる。このとき、施錠子28は周壁部10の外周面10aからは突出していない状態となるので、施錠子係合リング34と施錠子28との間の軸線Mの方向での係合が解除される。スリーブ16は、コイルスプリング32の軸線Mの方向への付勢力によって施錠子係合リング34とともに前方に移動し、図5に示すように施錠子係合リング34を介して施錠子28と半径方向外側から間接的に係合して施錠子28を施錠位置に保持する施錠子保持位置となる。この連結状態においては、施錠子28は直接的には施錠子係合リング34の内周係合面34bによって外側から支持されている。スリーブ16がこの施錠子保持位置にあるときには、施錠子28は雄型管継手部材4の係止溝4bに嵌まった状態から外方に移動することができないので、雄型管継手部材4は雌型管継手部材2から取り外すことができない状態となる。なお、周壁部10における施錠子保持孔26の前方側にはストップリング70が取付けられており、施錠子係合リング34とスリーブ16との前方への移動は、施錠子係合リング34がこのストップリング70に当接する位置で止められる。
【0026】
上述のように、コイルスプリング32はスリーブ16を周方向にも付勢しているので、当該管継手1が図1に示す非連結状態にあるときには、軸線方向部52aの傾斜した軸線方向面52cが係止突起50に押しつけられた状態となっている。従って、雌型管継手部材2に雄型管継手部材4が挿入されて、スリーブ16がコイルスプリング32の付勢力によって施錠子解放位置から施錠子保持位置に向かって前方に移動する際には、スリーブ16は軸線方向面52cを係止突起50に対して摺動させながら移動することになる。そのため、スリーブ16が施錠子保持位置にまで移動するためには、コイルスプリング32の特に軸線Mの方向での付勢力が軸線方向面52cと係止突起50との間の摺動摩擦抵抗に打ち勝つのに十分な大きさである必要がある。当該雌型管継手部材2における軸線方向面52cは、上述のように、周方向面52dに向かうに方向でコイルスプリング32の付勢方向(矢印R)に対して反対の側に傾斜するようになっており、スリーブ16が施錠子解放位置から施錠子保持位置に向かって軸線Mの方向に変位すると軸線方向面52cが係止突起50から離れていくようになっているので、スリーブ16が軸線Mの方向で変位する際の係止突起50と軸線方向面52cとの間の摺動摩擦抵抗が小さくなる。また、傾斜した軸線方向面52cによって係止突起50と係合するようになっているので、コイルスプリング32の周方向への付勢力の一部がスリーブ16を施錠子保持位置に向けて軸線Mの方向で前方に押圧する分力として作用する。そのため、軸線方向面が軸線の方向と平行になっている従来のものに比べて、同じ大きさのコイルスプリング32を使用してもスリーブ16に対する軸線Mの方向への付勢力をより大きくすることができ、より確実にスリーブ16を施錠子保持位置にまで変位させることが可能となる。
【0027】
スリーブ16は施錠子保持位置にまで軸線Mの方向で移動したときには、図2に示すようにコイルスプリング32の周方向への付勢力により周方向に自動的に回動し、係止突起50を係止突起受入部52の周方向部52bに受け入れた状態となる。この状態では、スリーブ16を軸線Mの方向で後方に向かって移動させようとしても、係止突起受入部52の周方向面52dが係止突起50に当接するため、スリーブ16を施錠子解放位置にまでは変位させることができなくなる。従って、雄型管継手部材4との連結を解除するためには、まずスリーブ16をコイルスプリング32の周方向での付勢方向(矢印R)とは反対側に周方向に回動させてから、軸線Mの方向で後方に変位させる必要がある。このような構成とすることで、スリーブ16に軸線Mの方向の力が誤って加えられたとしても雌型管継手部材2と雄型管継手部材4との連結が解除されないようになっている。なお、連結状態において雄型管継手部材4を雌型管継手部材2に対して軸線Mの方向の周りで回転させるとそれに伴って施錠子28も回転することになるが、上述のようにスリーブ16は該スリーブ16に対して回転自在となっている施錠子保持カラー60を介して間接的に施錠子28と係合するようになっているので、施錠子28の回転力がスリーブ16には直接的には伝わらないようになっている。すなわち、雄型管継手部材4の回転により、スリーブ16が回動して係止突起50が係止突起受入部52の周方向部52bから出てスリーブ16が軸線Mの方向で施錠子解除位置にまで移動できる状態となることを防止するようになっている。
【0028】
なお、上記実施形態においては、コイルスプリング32がスリーブ16を周方向にも付勢するようになっているが、必ずしもそのようにする必要はなく、スリーブ16に対して軸線Mの方向のみの付勢力を加えるようにしてもよい。その場合には、係止突起受入部52の軸線方向面52cは係止突起50に押しつけられないので摺動摩擦抵抗は小さくなる。また、スリーブ16に設けられている係止突起受入部52の軸線方向面52cが傾斜していて、スリーブ16が施錠子解放位置から施錠子保持位置に向かって変位すると軸線方向面52cが係止突起50から離れていくようになる。そのため、軸線方向面52cと係止突起50とが埃や脂などで固着してしまったとしても、固着した部分を引き離すように力が加わるのでその固着が取れやすくなり、コイルスプリングの付勢力によるスリーブ16の施錠子保持位置までの移動がより確実に行われるようになる。
【符号の説明】
【0029】
管継手1;雌型管継手部材2;雄型管継手部材4;前端面4a;係止溝4b;周壁部10;外周面10a;内周面10b;継手本体12;スリーブ16;内周面16a;内周面肩部16b;スライド弁構造体18;前端部20;後端部22;流体通路24;施錠子保持孔26;施錠子28;コイルスプリング32;前端部(第1固定端部)32a;後端部(第2固定端部)32b;施錠子係合リング34;前方係合面34a;内周係合面34b;スプリング固定穴40;スプリング固定穴42;ロックボール嵌合穴46;ロックボール48;係止突起50;係止突起受入部52;軸線方向部52a;周方向部52b;軸線方向面52c;周方向面52d;基部54;内周面54a;外周面54b;傾斜シール面54c;スライド弁体56;前端部56a;後端部56b;連通穴56c;外周面56d;コイルスプリング58;施錠子保持カラー60;Oリング62;Oリング64;面シールリング66;摺動シールリング68;ストップリング70;軸線M;矢印R
図1
図2
図3
図4
図5