(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<システム構成>
まず、本実施の形態に係る溶接ロボットシステム1について説明する。
図1は、本実施の形態に係る溶接ロボットシステム1の概略構成の一例を示す図である。
図1に示すように、溶接ロボットシステム1は、電極により被溶接部材(ワーク)に対して溶接を行う溶接ロボット(マニピュレータ)10と、溶接ロボット10を制御する制御装置(コントローラ)20とを備えている。また、溶接ロボットシステム1は、溶接作業のために、溶接ロボット10と、溶接トーチ11に保持された電極に電力を供給する溶接電源30と、溶接ロボット10の動作を定義する教示プログラムの作成や溶接作業に関する設定等に用いられる教示装置(ティーチングペンダント)40とを備えている。この制御装置20は、ネットワークを介して、溶接ロボット10、溶接電源30、教示装置40に接続される。また、制御装置20と教示装置40との間のネットワークによる通信は、有線による通信でも無線による通信でも良いものとする。
【0013】
溶接ロボット10は、複数の関節を有する腕(アーム)を備え、教示プログラムに基づく溶接に関する各種作業を行う。溶接ロボット10の腕の先端には、ワークWに対する溶接作業を行うための溶接トーチ11が設けられる。
【0014】
制御装置20は、予め教示された教示プログラムを読み込んで、溶接ロボット10の動作を制御する。教示プログラムは、例えば、教示装置40や別に設けられた教示プログラムの作成装置(不図示)により作成される。そして、制御装置20は、作成されたこの教示プログラムをデータ通信により受信する。また、教示プログラムは、例えば、メモリカード等のリムーバブルな記憶媒体を介して制御装置20に渡されても良い。
【0015】
溶接電源30は、制御装置20による制御により溶接トーチ11に保持された電極に電力を供給する。溶接電源30が電力を供給することにより、溶接ロボット10に設けられた溶接トーチ11の電極にてアークが発生する。
【0016】
教示装置40は、各種ボタンを有し、作業者が溶接の条件や溶接経路等を入力して教示プログラムを作成したり、溶接作業に関する設定をしたりするために使用される。また、教示装置40は、作業者の操作をもとに、制御装置20に対して溶接ロボット10への指令を出力する。ここで、教示プログラムに基づいて実際に溶接ロボット10による溶接作業を実行する前には、溶接ロボット10の溶接作業時の動作を事前に確認するための確認作業が行われる。この確認作業では、溶接ロボット10は予め教示された教示プログラムをもとに動作し、溶接ロボット10が溶接作業の教示点に沿って移動するか、溶接トーチ11により溶接作業が正常に実行されるか等の項目が作業者により確認される。そして、作業者は、溶接ロボット10の溶接作業が適切に行われるように、必要に応じて溶接条件を変更して教示プログラムの修正を行う。
【0017】
ここで、変更される溶接条件としては、例えば、溶接電流、アーク電圧、溶接速度、ウィービング振幅、ウィービング周期、ウィービング停止時間、溶接線のシフト量等が挙げられる。溶接電流とは、溶接作業中の電極とワークWとの間の電流であり、アーク電圧とは、溶接作業中の電極とワークWとの間の電圧であり、溶接速度とは、溶接ロボット10の走行速度である。また、ウィービング振幅とは、溶接トーチ11をウィービングさせる時の振幅であり、ウィービング周期とは、単位時間当たりに行われるウィービングの回数、ウィービング停止時間とは、ウィービング両端での電極の停止時間である。さらに、溶接線のシフト量とは、多層盛り溶接時に使用し、溶接区間の教示点を移動させる量である。
【0018】
<教示装置の構成>
次に、教示装置40の構成について詳細に説明する。
図2は、教示装置40の正面側の外観の一例を示す斜視図であり、
図3は、教示装置40の背面側の外観の一例を示す斜視図である。また、
図4は、教示装置40の正面側の外観の一例を示す図であり、
図5は、教示装置40の背面側の外観の一例を示す図である。ここで、
図2〜
図5におけるX軸に沿った上下方向を、教示装置40の長手方向における上下方向とし、
図2〜
図5におけるY軸に沿った左右方向を、教示装置40の幅方向における左右方向とする。また、本実施の形態では、第1の面の一例として、教示装置40(自装置)の正面が用いられ、第2の面の一例として、教示装置40の背面が用いられる。
【0019】
図2〜
図5に示すように、教示装置40はT字型で、
図4及び
図5において紙面に向かって奥行き方向に厚みを有する筐体を有している。そして、教示装置40の正面と背面との間に形成される側面部分において、作業者が教示装置40を把持するための把持部41が設けられている。教示装置40の側面部分は作業者により把持可能な厚さとし、作業者は、把持部41に左手を添えて教示装置40を把持する。また、教示装置40の重心の位置を教示装置40の中央、または、
図4の紙面に向かって教示装置40の中央から左寄りにすることにより、作業者が左手で把持した際に安定して操作が行われる。さらに、教示装置40の正面の左下の側面部分には、制御装置20と接続するためのケーブルが挿入されるコネクタ42が設けられている。コネクタ42に挿入されたケーブルにより制御装置20との接続が行われ、コネクタ42からケーブルを外すことにより教示装置40単体での持ち運びが行われる。
【0020】
[教示装置の正面側の構成]
図2及び
図4に示すように、教示装置40の正面において、T字型の幅が広い部分には、溶接ロボット10の動作や教示操作に関する情報などが表示される表示部43が設けられている。表示部43は、タッチパネル式のディスプレイであっても良い。また、教示装置40の正面の右上方には、非常停止ボタン44が設けられている。非常停止ボタン44は、溶接ロボット10を緊急に停止させるためのボタンであり、作業者が非常停止ボタン44を押すと、溶接ロボット10を非常停止させる指令が行われる。そして、制御装置20の制御により、溶接ロボット10のモータの駆動が止まり、溶接ロボット10の動作が停止する。また、
図4の紙面に向かって表示部43の左方には、停止キー45が設けられている。停止キー45は、溶接ロボット10を一時停止させるためのボタンである。作業者が停止キー45を押すと、制御装置20は、溶接ロボット10のモータの駆動力を保ったまま減速させて停止させる。
【0021】
また、T字型の幅が狭い部分、即ち、
図4の紙面に向かって表示部43の下方には、溶接ロボット10の動作の設定等を行うための各種ボタンが配置されたボタン配置部46が設けられている。ボタン配置部46の各種ボタンの種類は問わないが、作業者が素早く操作可能なように、ボタンを押す際の押し込み量を少なくし、一方で誤操作防止のために、押した感触を得られ押し込みに力を要するシート状のスイッチが好ましい。
【0022】
ボタン配置部46に配置されたボタンとしては、例えば、画面切替キー47、変更キー48a、変更キー48b、変更キー48c、変更キー48d(以下では、それぞれを区別しないときは変更キー48と表記する)、前進キー50、後進キー51が存在する。
【0023】
画面切替キー47は、表示部43に表示される画面を切り替えるためのボタンであり、例えば、溶接条件を変更するための画面を表示部43に表示させるために用いられる。
変更キー48は、確認作業において溶接条件を変更するためのボタンである。
作業者は、確認作業において、溶接ロボット10の溶接作業が開始してアークが発生したのを確認すると、画面切替キー47を押下して、溶接条件を変更するための画面を表示部43に表示させる。そして、作業者は、溶接ロボット10の動作を観察しながら、溶接条件を変更する必要があると考えた場合に、変更キー48を押下して溶接条件を変更する。
【0024】
ここで、変更キー48は、十字状に配置された複数のボタンであり、上下左右の4つの方向を示すボタンで構成される。変更キー48aは「上」、変更キー48bは「下」、変更キー48cは「左」、変更キー48dは「右」を示す。溶接条件の変更では、例えば、作業者は、上を示す変更キー48aや下を示す変更キー48bを押下して、溶接条件を表す複数の項目の中から、設定値を変更する項目を選択する。さらに、作業者は、選択した項目に関する設定値を増減させるために、左を示す変更キー48cや右を示す変更キー48dを押下して、溶接条件の値を変更する。
【0025】
以下では、画面切替キー47及び変更キー48をまとめて、溶接条件操作部49と称する。溶接条件操作部49は、溶接条件などの溶接ロボット10による動作の設定を変更するために用いられる。そして、溶接条件操作部49は、教示装置40の正面に向かって中央から左寄りに設けられている。また、溶接条件操作部49は、作業者が教示装置40の把持部41に添えている左手の親指が届く範囲内にあり、作業者の親指が違和感なく自由に移動可能な領域に存在する。本実施の形態では、設定変更操作部の一例として、溶接条件操作部49が用いられる。また、第1のボタンの一例として、画面切替キー47が用いられる。さらに、第2のボタンの一例として、変更キー48a、変更キー48bが用いられる。そして、第3のボタンの一例として、変更キー48c、変更キー48dが用いられる。
【0026】
また、前進キー50は、教示プログラムを前進させて、教示プログラムに基づいて溶接ロボット10の動作を実行するためのボタンである。
後進キー51は、教示プログラムを後進させて溶接ロボット10を動作させるためのボタンである。
【0027】
[教示装置の背面側の構成]
図3及び
図5に示すように、教示装置40の正面とは反対側の背面において、T字型の幅が狭い部分は凹状に形成されている。そして、その凹部には、イネーブルスイッチ52a、イネーブルスイッチ52b(以下、それぞれを区別しないときはイネーブルスイッチ52と表記する)、ロボット操作部53、支持部54が設けられている。
【0028】
イネーブルスイッチ52は、溶接ロボット10の通電状態を切り替えるためのボタンである。作業者は、確認作業において、手動で溶接ロボット10を動作させるためには、イネーブルスイッチ52a、またはイネーブルスイッチ52bのどちらかを押し続けて、溶接ロボット10に通電させることが求められる。ここで、イネーブルスイッチ52は、教示装置40の中央から端部側(端部寄り)に配置されている。イネーブルスイッチ52aは、教示装置40の背面において中央から右寄り、即ち、正面に向かって溶接条件操作部49と同じ側(溶接条件操作部49が配置された側)に配置され、イネーブルスイッチ52bは、教示装置40の背面で左寄りに配置される。付言すると、イネーブルスイッチ52aは、作業者が左手で教示装置40を把持した際に操作可能な位置に配置される。
【0029】
イネーブルスイッチ52の形状は特に問わないが、直方体状で、作業者の指が触れる面が平らであることが好ましい。このような形状であれば、作業者は複数の指でイネーブルスイッチ52aを押さえ易くなる。また、イネーブルスイッチ52は、Y軸方向に対して傾斜した斜面に設けられている。付言すると、イネーブルスイッチ52は、背面を下にして教示装置40を平面上に置いた場合に平面と接触する接触面上に配置されておらず、接触面に沿った水平方向(Y軸方向)に対して傾斜した斜面に設けられている。
【0030】
このようにイネーブルスイッチ52を斜面に設けることにより、例えば、イネーブルスイッチ52aをY軸方向に沿った平面に設ける構成と比較して、作業者が教示装置40を左手で把持しながらイネーブルスイッチ52aを押し続けることが容易になる。また、イネーブルスイッチ52をY軸方向に沿った平面に設ける構成では、作業者が背面を下にして教示装置40を平面上に置いた場合に、誤ってイネーブルスイッチ52が押下されることが考えられる。そのため、イネーブルスイッチ52を斜面に設けることにより、教示装置40を置いた場合の誤作動が抑止される。
【0031】
また、イネーブルスイッチ52の押下には段階が設けられており、1段階目の押下では上述したように溶接ロボット10に通電が行われる。そして、作業者がイネーブルスイッチ52をより強く押して2段階目まで押すと、溶接ロボット10を一時停止させる指令が行われる。
【0032】
ロボット操作部53は、教示プログラムを前進させて、教示プログラムに基づいて溶接ロボット10の動作を実行するためのボタンであり、前進キー50と同様の機能を有する。ここで、作業者は、確認作業において手動で溶接ロボット10を動作させる際、イネーブルスイッチ52を押すのと同時に、教示プログラムを前進させるためのボタン(即ち、前進キー50またはロボット操作部53)を押し続けることが求められる。作業者は、左手で教示装置40を把持している場合、前進キー50を押下するためにはさらに右手を使うことになる。一方、ロボット操作部53については左手で押下可能である。そのため、作業者は、左手でイネーブルスイッチ52aを押すとともにロボット操作部53を押して、溶接ロボット10を動作させる。
【0033】
ここで、ロボット操作部53は、イネーブルスイッチ52aの上方に設けられ、教示装置40の背面において中央から右寄り、即ち、正面に向かって溶接条件操作部49と同じ側(溶接条件操作部49が配置された側)に配置される。そして、作業者は、把持部41に左手を添えて教示装置40を把持して、イネーブルスイッチ52aを左手の中指、薬指、小指の少なくともいずれかの指で押した場合に、ロボット操作部53は、左手の人差し指で操作可能な範囲内に配置される。また、同様に、作業者は、把持部41に左手を添えて教示装置40を把持して、イネーブルスイッチ52aを左手の中指、薬指、小指の少なくともいずれかの指で押した場合に、溶接条件操作部49は、左手の親指で操作可能な範囲内に配置される。即ち、作業者は、左手で教示装置40を把持し、人差し指でロボット操作部53を押し、中指、薬指、小指の少なくともいずれかの指でイネーブルスイッチ52aを押した状態で、親指で溶接条件操作部49を押下可能である。
【0034】
また、ロボット操作部53は、イネーブルスイッチ52と同様に、Y軸方向に対して傾斜した斜面に設けられている。付言すると、ロボット操作部53は、背面を下にして教示装置40を平面上に置いた場合に平面と接触する接触面上に配置されておらず、接触面に沿った水平方向に対して傾斜した斜面に設けられている。ロボット操作部53を斜面に設けることにより、例えば、ロボット操作部53をY軸方向に沿った平面に設ける構成と比較して、作業者が教示装置40を左手で把持しながらロボット操作部53を押し続けることが容易になる。また、ロボット操作部53を斜面に設けることにより、イネーブルスイッチ52と同様に、教示装置40を置いた場合の誤作動が抑止される。
【0035】
ここで、ロボット操作部53は、Y軸方向に対して5度〜30度の角度の範囲で傾斜した面に設けられることが好ましい。傾斜角度が5度を下回ると、人差し指とイネーブルスイッチ52aを押下する指(中指、薬指、小指等)とで指を曲げる角度の差が大きくなり、長時間作業者が押し続けた場合の人差し指の疲労が増すこととなる。また、傾斜角度が30度を上回ると、人差し指を曲げる角度が大きくなり、長時間作業者が押し続けた場合の人差し指の疲労が増すこととなる。さらに、実験により、ロボット操作部53のY軸方向に対するより良好な傾斜角度は15度であることが確認されている。
【0036】
また、作業者がロボット操作部53を押す際に深く押し込めるようにしたり、ロボット操作部53として押圧が小さくてもON可能となるボタンを用いたりすることにより、作業者の人差し指への負担が低減され、作業者がロボット操作部53を押下し続けることが容易になる。本実施の形態では、ロボット動作操作部の一例として、ロボット操作部53が用いられる。
【0037】
支持部54は、板形状で、ロボット操作部53とイネーブルスイッチ52aとの間に設けられている。作業者は、支持部54に人差し指を引っ掛けて、ロボット操作部53を押下する。付言すると、ロボット操作部53は、教示装置40の凹部に形成されているためロボット操作部53の上方、右方が壁に囲まれており、さらに支持部54があることで、ロボット操作部53は人差し指が入る形で仕切られている。そして、作業者は、支持部54に人差し指を引っかけることにより、例えば、支持部54がない場合に比較して、ロボット操作部53を押下し易くなり人差し指の疲労が低減される。また、支持部54を設けることにより、作業者は、目視で確認せずに、ロボット操作部53の場所を人差し指の感覚で押下することが容易になる。また、支持部54は、作業者が教示装置40を把持している際にロボット操作部53を押下しない場合に、人差し指の置き場としても用いられる。
【0038】
<作業者が教示装置を把持した状態の説明>
次に、作業者が教示装置40を把持した状態について説明する。
図6は、作業者が手で把持した状態の教示装置40の正面側の外観の一例を示す図である。
図7は、作業者が手で把持した状態の教示装置40の背面側の外観の一例を示す図である。
【0039】
図6及び
図7に示すように、作業者は、確認作業において、把持部41に左手を添えて教示装置40を把持する。そして、作業者は、教示装置40の背面に設けられたイネーブルスイッチ52及びロボット操作部53を押下する。作業者がイネーブルスイッチ52及びロボット操作部53を押下することにより、予め教示された教示プログラムが制御装置20にて実行され、溶接ロボット10が動作する。また、作業者は、溶接ロボット10の動作を確認している際に、溶接条件を変更する場合には、イネーブルスイッチ52及びロボット操作部53を押下しながら、教示装置40の正面に設けられた溶接条件操作部49を押下する。
【0040】
ここで、作業者は、確認作業中に発生するアークから顔などを保護するために、溶接用保護面を手で保持する場合がある。そのため、本実施の形態に係る教示装置40では、作業者が片手で操作し易いように各ボタンの配置が決められている。即ち、作業者は、教示装置40を左手で把持し、中指、薬指、小指の少なくともいずれかの指でイネーブルスイッチ52aを押し、さらに左手の人差し指でロボット操作部53を押して、溶接ロボット10の動作を進行させる。また、作業者は、左手でイネーブルスイッチ52a及びロボット操作部53を押した状態で、左手の親指で溶接条件操作部49を押して、溶接条件の変更を行う。
【0041】
具体的には、溶接条件を変更する際、作業者は、イネーブルスイッチ52a及びロボット操作部53を押下した状態で、左手の親指で溶接条件操作部49の画面切替キー47を押下する。画面切替キー47を押下することにより、溶接条件を変更させるための画面が表示される。さらに、作業者は、イネーブルスイッチ52a及びロボット操作部53を押下した状態で、左手の親指で変更キー48を押下することにより、溶接ロボット10が動作したままで、溶接条件の値を増減させる。
【0042】
また、教示装置40の側面部分は、例えば5cm以下であることが好ましい。教示装置40の側面の厚さが5cmを超えると、作業者の指がイネーブルスイッチ52a、ロボット操作部53、溶接条件操作部49のいずれかに届きづらくなり、これらを同時に押下しづらくなる。さらに、側面部分が0.5cmを下回ると、教示装置40の把持が困難となる。そのため、教示装置40の側面の厚さは、把持容易性の観点から、0.5cm〜5cmの範囲で規定することがより好ましい。また、教示装置40の重量は、例えば1.2kg以下であることが好ましい。教示装置40の重量が1.2kgを超えると、長時間、作業者が片手で教示装置40を把持しづらくなる。尚、軽量であればあるほど好ましいため、教示装置40の重量について下限は規定しない。
【0043】
さらに、イネーブルスイッチ52a及びロボット操作部53は近接して配置されており、両ボタンの間隔は、例えば5cm以下であることが好ましい。両ボタンが5cmを超えて離れた位置に設けられると、作業者は、ロボット操作部53を人差し指で押下した場合に、中指、薬指、小指のいずれの指でもイネーブルスイッチ52aを押下しづらくなる。
【0044】
<表示部に表示される画面の説明>
次に、確認作業において教示装置40の表示部43に表示される画面について説明する。
図8は、溶接条件の設定値を変更するための画面の一例を示す図である。
図9は、溶接条件の増減量を設定するための画面の一例を示す図である。
【0045】
まず、
図8に示す画面は、例えば、確認作業が開始し、アークが発生するのを作業者が確認し、親指で画面切替キー47を押すことにより表示される。この画面には、値を変更する対象の溶接条件の項目が一覧で表示される。
図8に示す例では、溶接条件の項目として、溶接電流、アーク電圧、溶接速度、ウィービング振幅、ウィービング周期、ウィービング停止時間が表示されている。
【0046】
各溶接条件の現在の設定値はそれぞれ、溶接電流は350アンペア(電流の単位:A)、アーク電圧は100%、溶接速度は35cm/min、ウィービング振幅は3mm、ウィービング周期は100回/min、ウィービング停止時間は0.1sec(秒)である。アーク電圧については、溶接電流を設定するとその溶接電流に応じた値が自動的に決定される一元調整方式が採用されており、溶接電流に応じた最適な電圧を100%として、値が設定される。
【0047】
ここで、作業者は、変更キー48aまたは変更キー48bを押して、値を変更する溶接条件を選択する。
図8に示す画面では、枠61で囲まれた溶接電流が現在選択されており、作業者が変更キー48bを1回押すと、枠61が1つ下に移動してアーク電圧が選択される。また、アーク電圧が選択された状態で、作業者が変更キー48aを1回押すと、枠61が1つ上に移動して溶接電流が選択される。そして、例えば、溶接電流が選択されている状態で、作業者は、変更キー48cまたは変更キー48dを押して、溶接電流の設定値の変更を行う。例えば、作業者は、変更キー48cを押すと、溶接電流の設定値が増加し、変更キー48dを押すと、溶接電流の設定値が減少する。作業者が設定値の変更を行うと、変更された設定値により溶接ロボット10が動作し、確認作業が続けられる。
【0048】
また、
図9に示す画面には、各溶接条件の増減量が表示される。増減量とは、作業者が変更キー48cまたは変更キー48dを1回押した際に、増加または減少する量である。この増減量は、溶接条件ごとに決められており、作業者により、例えば確認作業の事前に予め設定される。
図9に示す例では、各溶接条件の増減値はそれぞれ、溶接電流は5A、アーク電圧は1%、溶接速度は1.0cm/min、ウィービング振幅は1mm、ウィービング周期は1回/min、ウィービング停止時間は0.1sec(秒)として設定されている。
【0049】
<溶接条件を変更する手順の説明>
次に、確認作業において溶接条件を変更する手順について説明する。
図10は、確認作業において溶接条件を変更する手順の一例を示したフローチャートである。確認作業にあたり、作業者は、右手で溶接用保護面を保持し、左手で教示装置40を把持して教示装置40の操作を行うものとする。
【0050】
まず、作業者は、教示装置40のボタン配置部46に配置されたボタンを押下して、教示装置40にて予め教示した教示プログラムを呼び出す(ステップ101)。そして、作業者は、教示装置40を左手で把持しながら、左手の中指、薬指、小指の少なくともいずれかの指でイネーブルスイッチ52aを押しながら、左手の人差し指でロボット操作部53を押下する(ステップ102)。そして、作業者がイネーブルスイッチ52a及びロボット操作部53を押したままの状態を維持することにより、教示装置40は、ステップ101で呼び出した教示プログラムを前進させて順に実行させる。ここで、教示装置40は、実行させるプログラムの内容を制御装置20に送信し、制御装置20は、受信したプログラムに基づいて溶接ロボット10を動作させる。
【0051】
次に、作業者は、溶接ロボット10の溶接開始位置で、電極からアークが発生したのを確認した後、イネーブルスイッチ52a及びロボット操作部53を押したままの状態で、左手の親指で画面切替キー47を押下する(ステップ103)。作業者が画面切替キー47を押すことにより、
図8に示す画面が表示部43に表示される。そして、作業者は、教示プログラムに基づく溶接ロボット10の動作を観察しながら、必要に応じて溶接条件の値を変更する。
【0052】
溶接条件を変更する際、まず、作業者は、変更キー48aや変更キー48bを押下して、値を変更する溶接条件を選択する(ステップ104)。作業者は、溶接条件を選択すると、変更キー48cや変更キー48dを押下して、選択した溶接条件の値を変更する(ステップ105)。そして、本処理フローは終了する。
【0053】
このように、作業者は、確認作業において、溶接ロボット10の動作を観察しながら必要に応じて各溶接条件の値を変更する。そして、溶接作業が適切に行われるように溶接条件の調整が行われた教示プログラムを用いて、実際の溶接作業が実行されることとなる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態に係る教示装置40では、イネーブルスイッチ52a及びロボット操作部53が背面に配置され、溶接条件操作部49が正面に配置されており、作業者が片手で同時に押下可能なようにこれらのボタンが配置されている。また、作業者が溶接用保護面を保持する場合であっても、左手で教示装置40を把持し、右手で溶接用保護面を保持すれば良いため、例えば、両手で教示装置40を操作する構成と比較して、安全上の問題が解消される。
【0055】
また、教示装置40では、イネーブルスイッチ52及びロボット操作部53が傾斜した斜面に設けられている。また、教示装置40の側面は作業者に把持し易い厚さで、教示装置40の重量は作業者が長時間把持し易い重量とされている。そのため、作業者が教示装置40を長時間操作した場合の疲労が低減される。
【0056】
また、本実施の形態において、教示装置40の背面に、教示プログラムを前進させるボタンとしてロボット操作部53を設けることとしたが、例えば、教示プログラムを後進させるボタンを新たに設けるなど、溶接ロボット10の動作を実行するボタンを背面に複数設けることとしても良い。さらに、例えば、左手で教示装置40を把持した際の親指が届く範囲内に、教示プログラムの前進または後進を切り替えるためのボタンを設けることとしても良い。この場合、この切り替えボタンにて、ロボット操作部53で前進または後進のどちらを受け付けるかを切り替えることが可能になり、ロボット操作部53にて教示プログラムの前進及び後進の両方を受け付けることとなる。
【0057】
また、本実施の形態では、溶接条件操作部49は、画面切替キー47及び変更キー48であることとしたが、このような構成に限られるものではない。例えば、画面切替キー47及び変更キー48以外のボタンで、作業者が教示装置40の把持部41に添えている左手の親指が届く範囲内にあり、溶接ロボット10による動作の設定を変更するためのボタンであれば、溶接条件操作部49に含めることとしても良い。
【0058】
さらに、本実施の形態において、変更キー48を十字状に配置された複数のボタンとしたが、このような構成に限られるものではない。十字状に配置された複数のボタンとすると、作業者は、溶接条件の選択では変更キー48a、48bを押下し、値の増減では変更キー48c、48dを押下すれば良く、押下するボタンの数が少ないため親指での操作が容易になる。一方、例えば、設定値を数字で入力するために、「0」〜「9」のそれぞれの数字を表す10個のボタンを親指で押下可能な範囲に設けて、変更キー48としても良い。
【0059】
そして、本実施の形態において、教示装置40では、作業者が左手で把持するように把持部41や各ボタンが配置されることとしたが、このような構成に限られるものではない。例えば、教示装置40は、作業者が右手で把持するように構成されることとしても良い。この場合、例えば、把持部41は、教示装置40の正面の右の側面部分に設けられる。また、溶接条件操作部49は、教示装置40の正面に向かって中央から右寄りに配置される。さらに、イネーブルスイッチ52a及びロボット操作部53は、教示装置40の背面において中央から左寄り、即ち、正面に向かって溶接条件操作部49と同じ側に配置される。
【0060】
また、本実施の形態において、教示装置40の正面に溶接条件操作部49が配置され、教示装置40の背面にイネーブルスイッチ52及びロボット操作部53が配置されることとしたが、このような構成に限られるものではない。教示装置40は、作業者が教示装置40を片手で把持して溶接条件操作部49、イネーブルスイッチ52及びロボット操作部53を操作可能な構成であれば良い。即ち、教示装置40は、作業者が片手で教示装置40を把持してイネーブルスイッチ52を押した際に、その手の少なくともいずれかの指で操作可能な範囲内に溶接条件操作部49及びロボット操作部53が配置される構成であれば良い。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態には限定されない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々に変更したり代替態様を採用したりすることが可能なことは、当業者に明らかである。