特許第6208144号(P6208144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208144
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20170925BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20170925BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20170925BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01M4/13
   H01M4/131
   H01M4/134
   H01M10/0566
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-544314(P2014-544314)
(86)(22)【出願日】2013年10月30日
(86)【国際出願番号】JP2013006417
(87)【国際公開番号】WO2014068969
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-240102(P2012-240102)
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】河北 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 毅
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−134279(JP,A)
【文献】 特開2009−211817(JP,A)
【文献】 特開2004−014134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質合剤層が形成された正極と、
負極活物質合剤層が形成された負極と
非水電解液と、
セパレータとを備え、
前記正極活物質合剤層及び前記負極活物質合剤層の少なくとも一方の表面には、希土類元素化合物を含有する無機粒子層が形成されている非水電解質二次電池において、
前記希土類元素化合物を構成する希土類元素は、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウムから選ばれる少なくとも一種である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記無機粒子層の厚みが1μm以上25μm以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記無機粒子層中の前記希土類元素化合物の含有量が、前記無機粒子層を構成する元素であって非金属元素ではない元素の総量に対して、希土類元素換算で1質量%以上100質量%以下である、請求項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記無機粒子層中の前記希土類元素化合物の含有量が、1質量%以上85質量%以下である、請求項2又は3に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記無機粒子層中の前記希土類元素化合物の含有量が、8質量%以上85質量%以下である、請求項2〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記希土類元素が、ネオジム、エルビウムから選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記希土類元素化合物が、水酸化物、オキシ水酸化物、酸化物、リン酸化合物、炭酸化合物から選ばれた少なくとも一種である、請求項1〜のいずれかに記載の非水電解質二
次電池。
【請求項8】
前記無機粒子層は、チタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステンから選ばれる少なくとも一種の元素の化合物を含有する、請求項1〜のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記無機粒子層は、チタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウムから選ばれる少なくとも一種の元素の化合物を含有する、請求項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項10】
前記負極は、Siを含む負極活物質を含有する、請求項1〜のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の携帯電話機、携帯型パーソナルコンピューター、携帯型音楽プレイヤー等の携帯型電子機器の駆動電源として、更には、ハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)や電気自動車(EV)用の電源として、高エネルギー密度を有し、高容量であるリチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が広く利用されている。
【0003】
この非水電解質二次電池は、使用時や充電時に自身が発熱するほか、使用機器も発熱するため、高温になることがある。特に非水電解質二次電池が組電池として用いられた場合には、熱が均一に分散せず、局所的に高温となることがある。そのため、高温にさらされても各種電池特性が劣化しない非水電解質二次電池が要望されている。
【0004】
非水電解質二次電池の高温時の各種電池特性を改良するために、種々の手段が講じられている。例えば、下記特許文献1には、高温充電保存特性を向上させる目的で、正極極板及び負極極板の少なくとも一方の表面にアルミナ、二酸化ケイ素、ジルコニア又は水不溶性もしくは水難溶性のリチウム塩を含む保護層を設けた非水電解質二次電池の発明が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、高電位において正極活物質と非水電解液との間の反応を抑制する目的で、正極活物質粒子の表面の一部に周期律表3属の元素の化合物を存在させた正極活物質及び非水電解質二次電池の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4253853号公報
【特許文献2】国際公開WO2005/008812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、市場の非水電解質二次電池に対する要求は厳しく、依然として従来の非水電解質二次電池よりも高温でのサイクル特性の改善が要望されている。
【0008】
本発明の一つの局面によれば、正極極板及び負極極板の少なくとも一方の表面に希土類元素を含む無機粒子層を形成することにより、高温環境下での充放電サイクル特性が良好な非水電解質二次電池を提供することができる。希土類元素化合物を構成する希土類元素は、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウムから選ばれる少なくとも一種である。
【0009】
なお、上記特許文献1には、正極極板あるいは負極極板に設けた保護層としての無機粒子層に希土類元素化合物を含有させること、及び、その際の高温サイクル特性について何も示唆されていない。また、上記特許文献2には、正極極板の表面に希土類元素の化合物を層状に設けること、及び、その際の高温サイクル特性について何も示唆されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの局面においては、正極活物質合剤層が形成された正極と、負極活物質合剤層が形成された負極と、非水電解液と、セパレータとを備え、正極活物質合剤層及び負極活物質合剤層の少なくとも一方の表面には、希土類元素化合物を含有する無機粒子層が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一つの局面の非水電解質二次電池によれば、高温環境でのサイクル特性が向上した非水電解質二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は実験例1で用いたラミネート形非水電解質二次電池の平面図である。
図2図2図1のII−II線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するために例示するものであって、本発明をこの実施形態に限定することを意図するものではなく、本発明は請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。最初に、実験例1で使用する、ラミネート電池としての非水電解質二次電池の具体的製造方法について説明する。
【0014】
〔第1実験例〕
[実験例1]
(正極極板の作製)
正極活物質としてのリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)は、リチウム源としての炭酸リチウム(Li2CO3)と、コバルト源としての炭酸コバルト(CoCO3)とを、Li:Coがモル比で1:1となるようにして乳鉢で混合した後、空気雰囲気下、950℃、10時間の条件で熱処理したものを、粉砕して平均粒子径17μmの粉末とすることによって得た。
【0015】
次いで、分散媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、上記のようにして調製した正極活物質粉末と、正極導電材としての平均粒径30nmのカーボンブラック(アセチレンブラック)粉末と、正極バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、正極活物質と正極導電材と正極バインダーとの質量比が95:2.5:2.5となるように加えた後、混練し、正極活物質合剤スラリーを調製した。
【0016】
上記の正極活物質極合剤スラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚み15μm、長さ340mm、幅50mm)の両面に、塗布部の長さが表面側で280mm、裏面側で205mm、塗布部の幅が共に50mm、となるように塗布し、NMPを乾燥除去した後、圧延することにより、正極集電体の両面に正極活物質合剤層を形成した。なお、両面に正極活物質合剤層が形成されている部分において、正極集電体上の正極活物質合剤層の量は48mg/cm2、厚みは148μmであった。正極活物質合剤層の形成後、正極集電体の端部にある正極活物質合剤層の未塗布部分には、正極集電タブとしてアルミニウム板を接続した。
【0017】
次いで、バインダーとしてのアクリル酸エチル−アクリロニトリルコポリマーを水に分散させた後、酸化アルミニウム(AKP3000(商品名))に酸化エルビウムを500:11の質量比(この比率は無機粒子層に含まれる希土類化合物の比率が、希土類元素換算で非金属元素を除く全ての元素に対して3.6質量%となる)で混合したものを更に分散させた。
【0018】
得られた分散液に正極活物質合剤層が形成された正極極板を浸漬し、乾燥することで、正極活物質合剤層の表面に酸化アルミニウムと希土類化合物としての酸化エルビウムとが混合された無機粒子層(片面当たりの厚みが4μm)を形成したものを、正極極板とした。
【0019】
(負極極板の作製)
(1)ケイ素負極活物質の調製
先ず、熱還元法により多結晶ケイ素塊を作製した。具体的には、金属反応炉(還元炉)内に設置されたケイ素芯を通電加熱して800℃まで上昇させておき、これに、精製された高純度モノシラン(SiH4)ガスの蒸気と精製された水素との混合ガスを流すことでケイ素芯の表面に多結晶ケイ素を析出させて、太い棒状に生成された多結晶ケイ素塊を作製した。
【0020】
次に、この多結晶ケイ素塊を粉砕分級することで、負極活物質としての純度99%の多結晶ケイ素粒子を得た。この多結晶ケイ素粒子の結晶子サイズは32nmであり、メディアン径は10μmであった。上記結晶子サイズは、粉末X線回折におけるケイ素の(111)ピークの半値幅を用いて、scherrerの式により算出した。上記メディアン径は、レーザー回折法による粒度分布測定において、累積体積が50%となった径と規定した。
【0021】
(2)負極活物質合剤スラリーの調製
負極バインダーとしては、下記式(1)で示される分子構造を有するポリイミド樹脂を用いた。このポリイミド樹脂は熱可塑性を有しており、ガラス転移温度は300℃である。(以下、このポリイミド樹脂を「熱可塑性ポリイミド樹脂」という)
【化1】
【0022】
負極活物質合剤スラリーの調製にあたっては、上記熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が、NMPに溶解した状態のワニス(以下、「熱可塑性ポリイミド樹脂前駆体ワニス」という)として用いた。ポリアミド酸は、400℃の熱処理によるイミド化(脱水・縮合)反応によってポリイミド樹脂を生成する。
【0023】
各実験例に係るポリアミド酸は、下記化学式(2)、(3)及び(4)に示される、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジエチルエステルと、下記化学式(5)に示されるm−フェニレンジアミンとを原料として、等モルで重合させることで得られる。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【0024】
上記3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジエチルエステルは、下記化学式(6)に示す3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物にNMPの存在下、2当量のエタノールを反応させることにより作製できる。
【化6】
【0025】
熱可塑性ポリイミド樹脂前駆体ワニスは、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジエチルエステル(上記化学式(2)〜(4))とm−フェニレンジアミン(上記化学式(5))とを等モルの比率で溶媒であるNMPに溶解させることで調製した。3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジエチルエステル及びm−フェニレンジアミンは、NMP溶媒中で重合してポリアミド酸となる。溶解濃度は、イミド化後のポリイミド樹脂換算で47質量%となる濃度とした。
【0026】
分散媒としてのNMPに、上記負極活物質89.5質量部と、負極導電材としての平均粒径3.5μmの黒鉛粉末3.7質量部と、上記熱可塑性ポリイミド樹脂前駆体ワニス14.5質量部(これは、イミド化後の熱可塑性ポリイミド樹脂換算で6.8質量部に相当する)とを加えて混練することで、負極活物質合剤スラリーを調製した。
【0027】
(3)負極活物質合剤層の形成
負極集電体としては、厚さ18μmの銅合金箔(C7025合金箔。組成は、Cu:96.2質量%、Ni:3質量%、Si:0.65質量%、Mg:0.15質量%)の両面を、表面粗さRa(JIS B 0601−1994)が0.25μm、平均山間隔S(JIS B 0601−1994)が1.0μmとなるように電解銅粗化したものを用いた。
【0028】
この負極集電体の両面に、空気雰囲気下で、上記負極活物質合剤スラリーを25℃で塗布し、120℃で乾燥させた後、25℃で圧延した。次いで、負極活物質合剤スラリーが塗布・圧延された負極集電体を、長さ320mm、幅52mmの長方形に切り抜いた後、アルゴン雰囲気下、400℃、10時間の条件で熱処理することで、負極集電体の表面に塗布された負極活物質合剤スラリー中のポリイミド酸をイミド化(脱水・縮合)させて、負極集電体の表面に負極活物質合剤層を形成した。上記負極集電体上の負極活物質合剤層の量は5.6mg/cm2で、負極の厚みは56μmであった。その後、負極集電体の端部に負極集電タブとしてのニッケル板を接続することで、負極極板を作製した。
【0029】
(電極体の作製)
上記正極極板を1枚、上記負極極板を1枚、ポリエチレン製微多孔膜(厚さ20μm、長さ420mm、幅54.5mmであって、突き刺し強度340g、空孔率39%)からなるセパレータを2枚用いて、正極極板と負極極板とをセパレータを介して互いに対向させた。次に、直径18mmの巻き芯を用いて、渦巻き状に巻回した。この際、正極タブ及び負極タブは、共に、各電極内における最外周部に位置するように配置した。その後、巻き芯を引き抜いて巻回電極体を作製し、更にこの巻回電極体を押し潰して偏平形の巻回電極体を作製した。
【0030】
(非水電解液の調製)
非水電解液としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を、20:80(1気圧、25℃での体積比)となるよう混合した非水溶媒に、電解質塩としてのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lとなるように溶解させた後、この溶液に対して二酸化炭素ガスを0.4質量%の濃度となるように溶解させて非水電解液を調製した。
【0031】
(電池の作製)
上記偏平形の巻回電極体及び上記非水電解液を、25℃、1気圧のCO2雰囲気下でアルミニウムからなる金属層の一方の面にナイロン層、他方の面にポリプロピレン層が配されたアルミニウムラミネート製の外装体に挿入した後、外装体を封止することで、実験例1に係る非水電解質二次電池を作製した。実験例1に係る非水電解質二次電池を電池電圧が4.35V(リチウム基準で正極電位が4.5V)となるまで充電した場合の設計容量は、850mAhである。
【0032】
[非水電解質二次電池の構成]
ここで実験例1で作製したラミネート形の非水電解質二次電池10の構成について、図1及び図2を用いて説明する。非水電解質二次電池10は、外周囲を覆うラミネート外装体11と、偏平状の巻回電極体12と、非水電解液とを備えている。巻回電極体12は、表面に無機粒子層(図示省略)が形成された正極板13と、負極板14と、がセパレータ15を介して互いに絶縁された状態で偏平状に巻回された構成を有している。巻回電極体12の正極板13には正極集電タブ16が接続され、同じく負極板14には接続された負極集電タブ17が接続されている。巻回電極体12は、外周囲を覆うラミネート外装体11の内部に非水電解液とともに封入されており、ラミネート外装体11の外周縁端部はヒートシール部18により密封されている。
【0033】
なお、実験例1で作製した非水電解質二次電池10では、巻回電極体12のサイド側の一方に非水電解液を注入し易くするために形成されたラミネート外装体11の延在部19が残された状態とされている。この延在部19は充放電時に発生したガス成分や非水電解液中に形成した成分の分析等に利用するためのものであり、製品としての非水電解質二次電池とするには、図1におけるA−A線に沿った位置でヒートシールすればよい。
【0034】
実験例2〜4においては、正極極板の作製において無機粒子層を形成する際に、実験例1で用いた希土類元素化合物(酸化エルビウム)とは異なる希土類元素化合物を用いて、非水電解質二次電池を作製した。
【0035】
[実験例2]
希土類元素化合物として酸化エルビウムに代えて酸化イットリウムを用い、希土類元素化合物の含有量を、酸化アルミニウム(AKP3000)と酸化イットリウムの質量比が500:7(この比率は無機粒子層に含まれる酸化イットリウムの比率が、希土類元素換算で非金属元素を除く全ての元素の総量に対して2.1質量%となる)となるようにしたこと以外は、上記実験例1と同様にして電池を作製した。
【0036】
[実験例3]
希土類元素化合物として酸化エルビウムに代えて酸化ランタンを用い、希土類元素化合物の含有量を、酸化アルミニウム(AKP3000)と酸化ランタンの質量比が500:9(この比率は無機粒子層に含まれる酸化ランタンの比率が、希土類元素換算で非金属元素を除く全ての元素の総量に対して2.9質量%となる)となるようにしたこと以外は、上記実験例1と同様にして電池を作製した。
【0037】
[実験例4]
希土類元素化合物として酸化エルビウムに代えて酸化ネオジムを用い、希土類元素化合物の含有量を、酸化アルミニウム(AKP3000)と酸化ネオジムの質量比が500:10(この比率は無機粒子層に含まれる酸化ネオジムの比率が、希土類元素換算で非金属元素を除く全ての元素の総量に対して3.2質量%となる)となるようにしたこと以外は、上記実験例1と同様にして電池を作製した。
【0038】
[実験例5]
無機粒子層を形成する際に、希土類元素化合物を用いず、無機粒子として酸化アルミニウム(AKP3000)のみを用いて無機粒子層を形成したこと以外は、上記実験例1と同様にして電池を作製した。
【0039】
[高温充放電サイクル試験]
上記のようにして得られた実験例1〜5の各非水電解質二次電池について、下記(A)の条件にて25℃で初期充放電(1サイクル目の充放電)を行った後、下記(B)の条件にて45℃で充放電(2サイクル目以降の充放電)を繰り返し行った。
(A) 1サイクル目の充放電
温度:25℃
充電条件:43mAの電流で1時間定電流充電を行った後、1It(=850mA)の定電流で電池電圧が4.35Vとなるまで充電を行い、電池電圧が4.35Vに達した後は4.35Vの定電圧で電流値が1/20It(=43mA)となるまで充電を行った。
放電条件:1It(=850mA)の定電流で電池電圧が2.75Vとなるまで放電を行った。
(B) 2〜40サイクル目の充放電
温度:45℃
充電条件:1It(=850mA)の電流で電池電圧が4.35Vとなるまで定電流充電を行い、電池電圧が4.35Vに達した後は4.35Vの定電圧で電流値が1/20It(=43mA)となるまで定電圧充電を行った。
放電条件:1It(=850mA)の定電流で電池電圧が2.75Vとなるまで放電を行った。
【0040】
その際、1サイクル目の放電容量と40サイクル目の放電容量を計測しておき、以下の計算式に基づいて容量維持率を算出した。結果を表1に纏めて示した。
容量維持率(%)
= (40サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示した結果から、正極活物質合剤層の表面に形成された無機粒子層に希土類元素化合物を含有する実験例1〜4の電池は、正極活物質合剤層の表面に形成された無機粒子層に希土類元素化合物を含まない実験例5の電池に対して、高温環境におけるサイクル特性が向上していることが確認できる。
【0043】
上記高温サイクル特性の向上効果は、正極側で電解液が分解されて生成した分解物が負極に移動したり、負極側で電解液が分解されて生成した分解物が正極に移動したりする際に、無機粒子層に希土類元素化合物が存在することによって、分解物が効果的にトラップ(吸着)されることによって奏されているものと推測される。
【0044】
したがって、希土類元素化合物含有無機粒子層は、電解液分解物の移動が抑制可能な位置に存在していれば、上記効果は奏されるものと考えられる。そのため、上記実験例1〜4では、希土類元素化合物含有無機粒子層を正極側のみに形成した非水電解質二次電池を用いたが、希土類元素化合物含有無機粒子層を負極活物質合剤層の表面のみに形成しても良く、正極側及び負極側の双方に形成してもよい。
【0045】
また、希土類元素化合物含有無機粒子層によって電解液分解物の移動が抑制されることに基づいて上記効果が奏されると推測されることから、正極活物質の種類、負極活物質の種類、非水電解液の組成、希土類元素化合物の種類に拠らず、本発明は実施可能である。
【0046】
〔第2実験例〕
[実験例6]
(正極極板の作製)
無機粒子層を形成する際に、酸化アルミニウムを用いず、無機粒子として酸化エルビウムのみを用いて無機粒子層を形成したこと以外は、上記実験例1と同様にして正極極板を作製した。
【0047】
(負極極板の作製)
増粘剤としてのCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を水に溶解した水溶液中に、負極活物質としての人造黒鉛と、結着剤としてのSBR(スチレン−ブタジエンゴム)とを、負極活物質と結着剤と増粘剤の質量比が98:1:1の比率になるようにして加えて混練することで、負極活物質合剤スラリーを作製した。この負極活物質合剤スラリーを、銅箔からなる負極集電体の両面にできるだけ均一に塗布し、乾燥させた後、圧延ローラにより圧延し、負極集電体の表面に負極活物質合剤層を形成した。上記負極集電体上の負極活物質合剤層の量は23mg/cm2で、負極の厚みは154μmであった。その後、負極集電体の端部に負極集電タブとしてのニッケル板を接続することで、負極極板を作製した。
【0048】
(非水電解液の調製)
非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、3:7の体積比となるように混合した非水溶媒に、電解質としてのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1.2mol/Lの濃度となるように溶解した。さらに、ビニレンカーボネート(VC)を非水電解液全量に対して2.0質量%添加し、溶解させて非水電解液を調整した。
【0049】
(電池の作製)
上記正極極板、上記負極極板、上記非水電解液を用いたこと以外は、上記実験例1と同様にして電池を作製した。実験例6で作製した非水電解質二次電池の構成は、上記実験例1の構成と同様であった。なお、この電池を電池電圧が4.4V(リチウム基準で正極電位が4.5V)となるまで充電した場合の設計容量は、850mAhである。
【0050】
[実験例7]
希土類元素化合物の含有量を、酸化アルミニウム(AKP3000)と酸化エルビウムの質量比が25:75(この比率は無機粒子層に含まれる酸化エルビウムの比率が、希土類元素換算で非金属元素を除く全ての元素の総量に対して83.2質量%となる)となるようにしたこと以外は、上記実験例6と同様にして電池を作製した。
【0051】
[実験例8]
希土類元素化合物の含有量を、酸化アルミニウム(AKP3000)と酸化エルビウムの質量比が50:50(この比率は無機粒子層に含まれる酸化エルビウムの比率が、希土類元素換算で非金属元素を除く全ての元素の総量に対して62.3質量%となる)となるようにしたこと以外は、上記実験例6と同様にして電池を作製した。
【0052】
[実験例9]
希土類元素化合物の含有量を、酸化アルミニウム(AKP3000)と酸化エルビウムの質量比が75:25(この比率は無機粒子層に含まれる酸化エルビウムの比率が、希土類元素換算で非金属元素を除く全ての元素の総量に対して35.5質量%となる)となるようにしたこと以外は、上記実験例6と同様にして電池を作製した。
【0053】
[実験例10]
希土類元素化合物の含有量を、酸化アルミニウム(AKP3000)と酸化エルビウムの質量比が95:5(この比率は無機粒子層に含まれる酸化エルビウムの比率が、希土類元素換算で非金属元素を除く全ての元素の総量に対して8.0質量%となる)となるようにしたこと以外は、上記実験例6と同様にして電池を作製した。
【0054】
[実験例11]
希土類元素化合物の含有量を、酸化アルミニウム(AKP3000)と酸化エルビウムの質量比が99:1(この比率は無機粒子層に含まれる酸化エルビウムの比率が、希土類元素換算で非金属元素を除く全ての元素の総量に対して1.6質量%となる)となるようにしたこと以外は、上記実験例6と同様にして電池を作製した。
【0055】
[実験例12]
無機粒子層を形成する際に、希土類元素化合物を用いず、無機粒子として酸化アルミニウム(AKP3000)のみを用いて無機粒子層を形成したこと以外は、上記実験例6と同様にして電池を作製した。
【0056】
[高温充放電サイクル試験]
上記のようにして得られた実験例6〜12の各非水電解質二次電池について、下記(C)の条件にて25℃で初期充放電(1サイクル目の充放電)を行った後、下記(D)の条件にて45℃で充放電(2サイクル目以降の充放電)を繰り返し行った。
(C) 1サイクル目の充放電
温度:25℃
充電条件:43mAの電流で1時間定電流充電を行った後、1It(=850mA)の定電流で電池電圧が4.4Vとなるまで充電を行い、電池電圧が4.4Vに達した後は4.4Vの定電圧で電流値が1/20It(=43mA)となるまで充電を行った。
放電条件:1It(=850mA)の定電流で電池電圧が2.75Vとなるまで放電を行った。
(D) 2〜500サイクル目の充放電
温度:45℃
充電条件:1It(=850mA)の電流で電池電圧が4.4Vとなるまで定電流充電を行い、電池電圧が4.4Vに達した後は4.4Vの定電圧で電流値が1/20It(=43mA)となるまで定電圧充電を行った。
放電条件:1It(=850mA)の定電流で電池電圧が2.75Vとなるまで放電を行った。
【0057】
その際、1サイクル目の放電容量と500サイクル目の放電容量を計測しておき、以下の計算式に基づいて容量維持率を算出した。結果を表2に纏めて示した。
容量維持率(%)
= (500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示した結果から、負極活物質として炭素材料を用いた場合でも、負極活物質としてSiを用いた上記第1実験例と同様に、正極活物質合剤層の表面に形成された無機粒子層に希土類元素化合物を含有する実験例6〜11の電池は、正極活物質合剤層の表面に形成された無機粒子層に希土類元素化合物を含まない実験例12の電池に対して、高温環境におけるサイクル特性が向上していることが確認できる。
【0060】
上記高温サイクル特性の向上効果は、負極活物質としてSiを用いた場合と同様に、正極側で電解液が分解されて生成した分解物が負極に移動したり、負極側で電解液が分解されて生成した分解物が正極に移動したりする際に、無機粒子層に希土類元素化合物が存在することによって、分解物が効果的にトラップ(吸着)されることによって奏されているものと推測される。
【0061】
また、表2に示した結果から、正極活物質合剤層の表面に、無機粒子として酸化アルミニウムと酸化エルビウムとが所定の比率で含有された無機粒子層を用いた実験例7〜10の電池は、無機粒子として酸化エルビウムのみが含有された実験例6の電池や、無機粒子として酸化アルミニウムのみが含有された実験例12の電池や、無機粒子として酸化アルミニウムと酸化エルビウムの両方が含有されているが、上記実験例7〜10の電池に比べて酸化エルビウムの含有量が少ない実験例11の電池に対して、高温環境におけるサイクル特性が特異的に向上していることが確認できる。即ち、実験例7〜10の電池における容量維持率は、実験例6と実験例12の各電池における容量維持率の範囲内に存在するのではなく、範囲を超えて存在していることがわかる(例えば、実験例6の電池では70%であり、実験例12の電池では62質量%なので、これら実験例6の酸化エルビウムと、実験例12の酸化アルミニウムとが含有された無機粒子層を用いた実験例7〜10の電池では、容量維持率が62%〜70%の間にあると想定されるが、実際には74%以上であって、想定範囲を上回る改善が見られることがわかる。)。
【0062】
上記の結果より、無機粒子層に含有させる希土類元素化合物の含有量としては、無機粒子層を構成する全ての元素から非金属元素を除いた残りの全ての元素の総量に対して、希土類元素換算で1質量%以上100質量%以下にするのが好ましいことがわかる。これは、無機粒子層に含有させる希土類元素化合物の含有量は、少な過ぎると上記効果が充分に得られ難くなるためである。また、容量維持率とコストの観点からは、1質量%以上85質量%以下にするのがより好ましく、8質量%以上85質量%以下にするのが特に好ましいことがわかる。
【0063】
以上のような実験結果となったのは、以下に示す理由によるものと考えられる。上述の効果(無機粒子層に希土類元素化合物が存在することによって、正極側や負極側で生成した電解液の分解物が効果的にトラップされる)を考慮すると、実験例6の電池ように無機粒子層を希土類化合物のみにした方が、より効果が発揮されて容量維持率の低下をより抑制できると考えられる。しかしながら、本実験例では、無機粒子層の質量が同じになるように調製しており、酸化アルミニウムに比べて酸化エルビウムは1molあたりの重量が重いために、酸化エルビウムのみが含まれた無機粒子層は、酸化アルミニウムが含まれた無機粒子層に比べて厚さが薄くなってしまう。この結果、上記効果が十分に得られず、容量維持率の低下抑制の効果が実験例7〜10の電池に比べてかえって小さくなったためと推察される。
【0064】
さらに、表1及び表2に示した結果から、負極活物質としてSiを用い、酸化エルビウムが希土類元素換算で3.6質量%含有された無機粒子層を用いた実験例1の電池の容量維持率は、酸化アルミニウムのみが含有された無機粒子層を用いた実験例5の電池の容量維持率61%に対して、85%にまで向上している。一方で、負極活物質として炭素材料を用いた場合には、酸化エルビウムが希土類元素換算でそれぞれ1.6質量%、8.0質量%含有された無機粒子層を用いた実験例10、11の電池の容量維持率は、酸化アルミニウムのみが含有された無機粒子層を用いた実験例12の電池の容量維持率62%に比べて向上しているものの、それぞれ68%、74%に向上する程度にとどまっている。
【0065】
上記の結果より、ほぼ同量の希土類元素化合物を含有する無機粒子層を用いた場合には、負極活物質としては、炭素材料を含む負極活物質を用いた場合よりもSi含有負極活物質を用いた場合の方が、サイクル特性向上の効果が大きいことがわかる。従って、負極活物質としては、Siを含む負極活物質を用いることがより好ましい。
【0066】
以上のような実験結果となったのは、Si含有負極活物質を用いた場合、充放電に伴う膨張収縮によって活物質の一部に割れが生じやすく、新表面が生成しやすい。そして、この新表面において電解液との新たな反応が生じ、負極側で電解液の分解による分解物の生成が促進され、負極から正極に移動する分解物が多くなることに起因するものと推測される。このようなSi含有負極活物質を用いることによる影響は、負極活物質におけるSiの量が多くなるほど大きくなるが、炭素材料に対するSi及びSiを含む化合物の含有量がSi換算で0.5質量%以上でも影響はあると考えられる。中でも、2質量%以上、特に5質量%以上含まれているとその影響は大きくなり、この場合に希土類元素化合物を含む無機粒子層を正極もしくは負極に付与すると、高温でのサイクル時の劣化をさらに抑制できる。
【0067】
希土類元素化合物を構成する希土類元素としては、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウムが例示される。中でも、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウムが好ましく、ネオジム又はエルビウムが特に好ましい。これらの希土類元素は、1種類でも、2種類以上の混合物であってもよい。また、希土類元素の混合物であるミッシュメタルの化合物も使用できる。
【0068】
これらの希土類元素化合物としては、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸化合物、燐酸化合物、硝酸化合物、硫酸化合物、酢酸化合物、シュウ酸化合物、フッ化物を、単独でまたは2種以上の混合物として用いることができる。中でも、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、燐酸化合物、フッ化物は、電解液の分解物のトラップの効果が高いため特に好ましく用いられる。
【0069】
無機粒子層には希土類元素化合物に加えて、他の無機粒子を含有させることが好ましい。無機粒子としては公知のもの用いることができ、例えばチタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステン等を単独もしくは複数用いた酸化物やリン酸化合物、またその表面が水酸化物等で処理されているものが挙げられる。中でも、チタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウムが特に好ましい。これは、チタンやアルミニウム、ケイ素、マグネシウムの方が、ジルコニウム、モリブデン、タングステン等に比べて、少量で希土類化合物の無機粒子を極板の面方向全体に広げられるだけでなく、厚み方向にも広げられるためである。
【0070】
無機粒子層の厚さとしては、1μm以上25μm以下であることが好ましい。これは、厚すぎると充放電反応に寄与しない物質の占める体積が過剰となり電池の容量が高くできない恐れがあるためであり、薄すぎると電解液の分解物のトラップの効果が十分に得られない恐れがあるためである。
【0071】
正極活物質としては、上述のとおり、非水電解質二次電池の正極活物質として公知のものを用いることができ、例えば、リチウムコバルト複合酸化物、Ni−Co−Mnのリチウム複合酸化物、Ni−Mn−Alのリチウム複合酸化物、Ni−Co−Alの複合酸化物、Ni−Mnのリチウム複合酸化物、鉄、マンガンなどを含むオリビン型の遷移金属酸化物(LiMPO4で表され、MはFe、Mn、Co、Niから選択される)等の、リチウム含有遷移金属複合酸化物が挙げられる。これらは、正極活物質として単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記リチウム含有遷移金属複合酸化物には、Al、Mg、Ti、Zr等の物質が固溶されていたり、粒界に含まれていてもよい。
【0072】
また、上記Ni−Co−Mnのリチウム複合酸化物としては、NiとCoとMnとのモル比が、1:1:1であったり、5:3:2、5:2:3、6:2:2、7:1:2、7:2:1、8:1:1である等、公知の組成のものを用いることができるが、特に、正極容量を増大させることができるようにするため、NiやCoの割合がMnより多いものを用いることが好ましい。
【0073】
同種の正極活物質のみを用いる場合や、異種の正極活物質を用いる場合において、正極活物質としては、同一の粒径のものを用いても良く、また、異なる粒径のものを用いてもよい。
【0074】
正極活物質合剤層には、希土類、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、チタン、タングステン、ニオブ、及びタンタルから成る群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物が含まれていることが好ましく、特に、正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物の粒子表面に、希土類、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、チタン、タングステン、ニオブ、及びタンタルから成る群から選ばれた少なくとも1種の元素を含む化合物が付着していることが望ましい。
【0075】
また、非水電解質の溶媒としては、従来から用いられてきた溶媒を使用することができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートや、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステルを含む化合物や、プロパンスルトン等のスルホン基を含む化合物や、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテルを含む化合物や、ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル等のニトリルを含む化合物や、ジメチルホルムアミド等のアミドを含む化合物等を用いることができる。
【0076】
特に、これらの化合物の水素の一部がフッ素により置換されている溶媒が好ましく用いられる。また、これらを単独又は複数組み合わせて使用することができ、特に環状カーボネートと鎖状カーボネートとを組み合わせた溶媒や、更にこれらに少量のニトリルを含む化合物やエーテルを含む化合物が組み合わされた溶媒が好ましい。
【0077】
非水電解液の溶質としては、従来から用いられてきた溶質を用いることができ、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiPF6-x(Cn2n-1x[ただし、1<x<6、n=1又は2]等の他に、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩が例示される。このオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩としては、LiBOB〔リチウム−ビスオキサレートボレート〕の他、中心原子にC242-が配位したアニオンを有するリチウム塩、例えば、Li[M(C24xy](式中、Mは遷移金属,周期律表のIIIb族,IVb族,Vb族から選択される元素、Rはハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基から選択される基、xは正の整数、yは0又は正の整数である。)で表わされるものを用いることができる。具体的には、Li[B(C24)F2]、Li[P(C24)F4]、Li[P(C2422]等がある。ただし、高温環境下においても負極の表面に安定な被膜を形成するためには、LiBOBを用いることが最も好ましい。
【0078】
なお、上記溶質は、単独で用いるのみならず、2種以上を混合して用いてもよい。また、溶質の濃度は特に限定されないが、電解液1リットル当り0.8〜1.7モルであることが望ましい。
【0079】
セパレータとしては、従来から用いられてきたセパレータを用いることができる。具体的には、ポリエチレンからなるセパレータのみならず、ポリエチレン層の表面にポリプロピレンからなる層が形成されたものや、ポリエチレンのセパレータの表面にアラミド系の樹脂等の樹脂が塗布されたものを用いてもよい。
【0080】
上記各実験例においては負極活物質としてケイ素及び炭素材料を用いた例を示したが、負極活物質としては従来から用いられてきたものを用いることができ、例えば、リチウムを吸蔵放出可能な炭素材料、あるいはリチウムと合金を形成可能な金属またはその金属を含む合金化合物が挙げられる。
【0081】
負極活物質としての炭素材料の例としては、天然黒鉛や難黒鉛化性炭素、人造黒鉛等のグラファイト類、コークス類等を用いることができ、合金化合物としては、リチウムと合金可能な金属を少なくとも1種類含むものが挙げられる。特に、リチウムと合金形成可能な元素としてはケイ素やスズであることが好ましく、これらが酸素と結合した、酸化ケイ素や酸化スズ等を用いることもできる。また、上記炭素材料とケイ素やスズの化合物とを混合したものを用いることができる。
【0082】
上記の他、エネルギー密度は低下するものの、負極活物質材料としてはチタン酸リチウム等の金属リチウムに対する充放電の電位が、炭素材料等より高いものも用いることができる。また、ケイ素や、ケイ素合金の他に、ケイ素酸化物〔SiOx(0<x<2、特に0<x<1が好ましい)〕を用いてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 非水電解質二次電池
11 ラミネート外装体
12 巻回電極体
13 正極板
14 負極板
15 セパレータ
16 正極集電タブ
17 負極集電タブ
18 ヒートシール部
19 延在部
図1
図2