(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐腐食性導電シートは、耐腐食性被膜を有する金属層、耐腐食性の金属層、耐腐食性被膜を有する繊維層、耐腐食性の繊維層、耐腐食性被膜を有する樹脂層、耐腐食性の樹脂層、樹脂に導電体を混合したものに耐腐食性被膜を施した層、又は耐腐食性の樹脂に導電体を混合した層のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の道路構造体。
前記耐腐食性導電シートに用いられる金属は、アルミニウム、ステンレス、鉄、亜鉛、銅及びチタン、並びにこれらの金属を主成分とする合金からなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする、請求項2に記載の道路構造体。
前記耐腐食性導電シートに用いられるアルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金は、電気比抵抗値が6.0μΩ・cm以上であることを特徴とする、請求項3に記載の道路構造体。
前記耐腐食性被膜は、ガラス系被膜、フッ素系被膜、アクリル系被膜、スチレン系被膜、ポリカーボネート系被膜、ポリエステル系被膜、ポリウレタン系被膜、エポキシ系被膜、テフロン被膜、すずメッキ、亜鉛メッキ、亜鉛合金クラッド、酸化皮膜、リン酸処理被膜、リン酸塩処理被膜、クロム酸処理被膜、クロム酸塩処理被膜、フッ酸処理被膜、フッ酸塩処理皮膜、ナトリウム塩処理被膜、又は、陽極酸化法、ゾルゲル法、アルコキシド法、CVD法若しくはPVD法により形成されるニオブ、チタン、タンタル、けい素若しくはジルコニウム金属の不動態酸化物被膜からなる群から選択されるいずれか、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の道路構造体。
前記第1の接着層は、合成ゴム、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル系ラジカル硬化性液状樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル重合体、ウレタン樹脂、及び瀝青材料からなる群から選択されるいずれか、又はこれらの物質の混合物であることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の道路構造体。
前記第2の接着層は、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエチレンテレタレート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、スチレンブタジエンブロック共重合体(SBS)系樹脂、クロロプレン(CR)系樹脂、スチレンイソプレンブロック共重合体(SIS)系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、及び瀝青材料からなる群から選択されるいずれか、又はこれらの物質の混合物であることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の道路構造体。
電磁誘導による加熱によってアスファルト層を剥離させるように構成された道路構造体に用いられるものであり、該道路構造体の基盤層の上に積層される第1の接着層と、アスファルト層の下に積層される第2の接着層との間に配置され、電磁誘導によって発熱する導電体層を有することを特徴とする、耐腐食性導電シート。
前記導電体層は、金属層、繊維層、樹脂層、又は、樹脂に導電体を混合した層のいずれかであることを特徴とする、請求項10又は請求項11に記載の耐腐食性導電シート。
前記導電体層に用いられる金属は、アルミニウム、ステンレス、鉄、亜鉛、銅及びチタン、並びにこれらの金属を主成分とする合金からなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする、請求項12に記載の耐腐食性導電シート。
前記導電体層に用いられるアルミニウム又はアルミニウム合金は、電気比抵抗値が6.0μΩ・cm以上であることを特徴とする、請求項13に記載の耐腐食性導電シート。
前記耐腐食性被膜は、ガラス系被膜、フッ素系被膜、アクリル系被膜、スチレン系被膜、ポリカーボネート系被膜、ポリエステル系被膜、ポリウレタン系被膜、エポキシ系被膜、テフロン被膜、すずメッキ、亜鉛メッキ、亜鉛合金クラッド、酸化皮膜、リン酸処理被膜、リン酸塩処理被膜、クロム酸処理被膜、クロム酸塩処理被膜、フッ酸処理被膜、フッ酸塩処理皮膜、ナトリウム塩処理被膜、又は、陽極酸化法、ゾルゲル法、アルコキシド法、CVD法若しくはPVD法により形成されるニオブ、チタン、タンタル、けい素若しくはジルコニウム金属の不動態酸化物被膜からなる群から選択されるいずれか、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項11に記載の耐腐食性導電シート。
前記道路構造体の前記アスファルト層側から前記耐腐食性導電シートを電磁誘導により加熱することによって、前記道路構造体の第2の接着層を軟化させる工程をさらに含み、
前記分離する工程は、軟化した前記第1の接着層及び前記第2の接着層のいずれかの位置において、当該位置より上に配置された層と当該位置より下に配置された層とを分離する工程を含むことを特徴とする、
請求項16に記載の方法。
前記第1の接着層は、合成ゴム、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル系ラジカル硬化性液状樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル重合体、ウレタン樹脂、及び瀝青材料からなる群から選択されるいずれか、又はこれらの物質の混合物であることを特徴とする、請求項16又は請求項17に記載の方法。
前記第2の接着層は、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエチレンテレタレート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、スチレンブタジエンブロック共重合体(SBS)系樹脂、クロロプレン(CR)系樹脂、スチレンイソプレンブロック共重合体(SIS)系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、及び瀝青材料からなる群から選択されるいずれか、又はこれらの物質の混合物であることを特徴とする、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[道路構造体1の構成]
図1は、本発明の一実施形態による道路構造体を示す。
図1に示される道路構造体1は、典型的にはコンクリート床版とすることができる基盤層10の上方にアスファルト層18が積層されている。基盤層10の上には、第1の接着層12が積層され、第1の接着層12の上には、耐腐食性導電シート14が積層され、耐腐食性導電シート14の上には第2の接着層16が積層され、第2の接着層16の上にはアスファルト層18が積層される。第1の接着層12は、基盤層10と耐腐食性導電シート14とを接着し、第2の接着層16は、耐腐食性導電シート14とアスファルト層18とを接着している。この道路構造体1は、一般的なアスファルト舗装道路、コンクリート橋りょう、カルバート、コンクリート建築屋上防水工のコンクリート構造物などに用いることができる。
【0018】
道路構造体1の基盤層10は、現場打ちコンクリートスラブ又はプレキャストコンクリート版などとすることができる。道路構造体1のアスファルト層18は、一般的なアスファルト材料を用いることができるが、導電性ではなく、かつ、磁界を遮断しない材料であることが必要である。アスファルト層18の厚みは、2〜3cm以上約20cm以下であり、8cm以下であることがより好ましい。
【0019】
耐腐食性導電シート14は、外部からの電磁誘導により発生する渦電流によって発熱し、敷設後に長期間にわたってアスファルト層18と基盤層10との間に埋設されていても状態(例えば、形状、性能など)が変化しない材料で構成されており、例えば、全体が金属の層、少なくとも一部に金属を含有する層、繊維層、又は樹脂層とすることができる。耐腐食性導電シート14を発熱させることよって、第1の接着層12又は第1の接着層12及び第2の接着層16を軟化させることができる。層14を耐腐食性導電シートとすることによって、道路構造体1が敷設された後、長期間が経過した場合でも、電磁誘導によって耐腐食性導電シート14を加熱することができ、基盤層10を傷つけることも大きな騒音や振動を発生させることもなく、アスファルト層18を剥離することができる。なお、耐腐食性導電シート14は、アスファルト層18の剥離後には原則として廃棄されることになるため、安価な材料で構成されることがより好ましい。
【0020】
耐腐食性導電シート14の厚さは、電磁誘導によって、第1の接着層12又は第2の接着層16を軟化させることができる程度の熱が発生するのに必要な電流が流れることができる厚さである。また、厚さは、耐腐食性導電シート14の上にアスファルト層18を施工する際に作用する通常の外力に対して、耐腐食性導電シート14が破断しない強度を有する厚さである。厚さは重量に比例するため、耐腐食性導電シート14の厚さは、運搬、敷設などの施工の際に支障のない厚さ及び重量の観点から、任意に選択することができる。
【0021】
耐腐食性導電シート14は、導電体層142の両面を耐腐食性被膜144、146で被覆するか、又は層14を構成する材料自体を耐腐食性の材料で形成することが好ましい。耐腐食性導電シート14は、例えば、耐腐食性被膜を有する金属層、耐腐食性の金属層、耐腐食性被膜を有する繊維層、耐腐食性の繊維層、耐腐食性被膜を有する樹脂層、耐腐食性の樹脂層、樹脂に導電体を混合したものに耐腐食性被膜を施した層、又は耐腐食性の樹脂に導電体を混合した層のいずれかとすることができる。
【0022】
耐腐食性導電シート14は、例えば平板若しくは穴あきのシート状、若しくは網状の導電体層142を、耐腐食性被膜144、146で被覆したもの、耐腐食性の導電材料を、例えば平板若しくは穴あきのシート状、若しくは網状に形成したものを用いることもできる。
図1においては、平板シート状の導電体層142の両面に耐腐食性の被膜144、146を積層した耐腐食性導電シート14が例示されている。導電体層142を、例えば導電体層142の幅方向に直線状に並んだ穴の列を長さ方向に適当な間隔で設けた穴あきのものとすれば、軽量化を図ることができる。導電体層142は、ミシン目による切れ目が入ったものとすることもできる。このような穴あきの耐腐食性導電シート14やミシン目の入った耐腐食性導電シート14を用いることによって、後述されるように耐腐食性導電シート14を含む積層体を基盤層10から剥離する際に、耐腐食性導電シート14がこの穴の箇所で切断され、より容易に剥離工程を行うことができる。
【0023】
耐腐食性導電シート14を、全体が金属で形成された層又は少なくとも一部に金属を含有する層とする場合には、金属として、アルミニウム、ステンレス、鉄、亜鉛、銅及びチタン、並びにこれらの金属を主成分とする合金を用いることができる。
【0024】
耐腐食性導電シート14に用いられる金属は、アルミニウム合金を含むことがより好ましく、アルミニウム合金箔であることがさらに好ましく、耐腐食性の被膜が両面に形成されたアルミニウム合金箔であることがさらに好ましい。
【0025】
耐腐食性導電シート14に用いられる金属がアルミニウム合金箔で形成されている場合、又は少なくとも一部にアルミニウム合金箔を含有する場合には、アルミニウム合金箔の電気比抵抗値(室温15℃)が6.0μΩcm以上であることが好ましく、6〜10μΩcmであることがより好ましく、6.5〜10μΩcmであることがさらに好ましい。電気比抵抗値が6.0μΩ・cm未満の場合には、必要な抵抗値を得るために耐腐食性導電シートの厚みを薄くしなければならず、耐腐食性導電シート14の強度が低下し、破断するおそれがある。電気比抵抗値の上限は特に限定されないが、一般に10μΩcm程度である。電気比抵抗値が10μΩcmを超えると、耐食性が著しく低下したり、加工が困難になったりするおそれがある。なお、耐腐食性導電シート14に用いる金属としてステンレス箔を採用する場合は、その電気比抵抗値(室温15℃)は50〜90μΩcmであることが好ましく、60〜85μΩcmであることがより好ましい。
【0026】
耐腐食性導電シート14の導電体層142としてアルミニウム合金箔142を用いる場合、アルミニウム合金箔は、公知の方法に従って製造することができ、例えば、所定の組成を有する溶湯を調製したのち、100℃/秒以上の冷却速度で10mm以下の厚さに鋳造したアルミニウム合金に冷間圧延を施すことにより得ることができる。別の方法として、所定の組成を有する溶湯を調製し、これを鋳造して得られたアルミニウム合金の鋳塊を、450〜660℃、好ましくは450〜550℃で均質化処理した後、熱間圧延及び冷間圧延を施すことにより得てもよい。冷間圧延の途中に、150〜450℃で焼鈍をしても良い。得られたアルミニウム合金箔は、必要に応じて、200〜600℃で最終焼鈍を行ってもよい。焼鈍時間は適宜設定することができるが、300℃以上に保持する時間を10分以内にすることが好ましい。より好ましい300℃以上での保持時間は、1分以内である。
【0027】
アルミニウム合金箔142は、施工上の要請からできるだけ軽量であることが望ましく、剛性については下部の基盤層への追従性が求められることなどから変形性能が高いことが必要であるため、その厚みは、50〜200μmとすることが好ましいが、これに限定されるものではない。厚みが50μm未満の場合には、耐腐食性導電シート14としての強度が低下するおそれがあり、200μmを超える場合には、施工性や加工が困難になるおそれがある。
【0028】
また、アルミニウム合金箔142の平均結晶粒径は、限定されるものではないが、1〜30μmとすることが好ましく、5〜20μmとすることがより好ましく、5〜10μmとすることがさらに好ましい。平均結晶粒径が30μmを超えると加工が困難になるおそれがある。平均結晶粒径は小さい方が好ましいが、通常は1μm程度である。このようなアルミニウム合金箔142は、100℃/秒以上の冷却速度で10mm以下の厚さに鋳造したアルミニウム合金を用いることにより得ることができる。なお、本発明でいう結晶粒径とは、冷間圧延方向に対して垂直方向の結晶粒の最大幅をいう。
【0029】
アルミニウム合金箔142の素材であるアルミニウム合金は、0.5≦Mn≦3.0質量%のMnと、0.0001≦Cr<0.20質量%のCrと、0.2≦Mg≦1.8質量%のMgと、0.0001≦Ti≦0.6質量%のTiと、0<Cu≦0.005質量%のCuと、0<Si≦0.1質量%のSiと、0<Fe≦0.2質量%のFeとを含有することが望ましい。これらの合金元素を除いたアルミニウム合金の残部は、Al(アルミニウム)と不可避不純物とからなることがさらに好ましい。なお、不可避不純物元素の各々の含有量は、100質量ppm以下であることが望ましい。
以下に、各合金元素、電気比抵抗値の順に詳述する。
【0030】
アルミニウム合金に0.5≦Mn≦3.0質量%含有されるMnは、電気比抵抗寄与率が大きく、耐腐食性を損なわない元素である。また、Crと共存することにより、電気比抵抗をさらに増大させる効果をもつ。Mnの含有率が0.5質量%未満の場合には必要な電気比抵抗値が得られないおそれがあり、3.0質量%を超えると強度が大きくなりすぎて加工が困難になるおそれがある。Mnの含有率は、1.0≦Mn≦2.5質量%であることが好ましく、1.6≦Mn≦2.2質量%であることがより好ましく、1.8<Mn≦2.2質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
アルミニウム合金に0.0001≦Cr<0.20質量%含有されるCrは、電気比抵抗寄与率が大きく、耐腐食性を損なわない元素である。また、Mnと共存することにより、電気比抵抗をさらに増大させる効果をもつ。Crの含有率が0.0001質量%未満の場合には、必要な電気比抵抗値が得られないおそれがあり、0.20質量%以上となるとAl−Cr−Mn系の硬く粗大な金属間化合物が晶出するため、ピンホール等の欠陥が発生するおそれがある。Crの含有率は、0.0001≦Cr≦0.18質量%であることがより好ましい。
【0032】
アルミニウム合金に0.2≦Mg≦1.8質量%含有されるMgは、特に機械的強度を向上させ、電気比抵抗寄与率も大きい元素である。Mgの含有率が0.2質量%未満の場合には、施工に必要な強度が得られないおそれがあり、1.8質量%を超えると、強度が大きくなりすぎて加工が困難になるおそれがある。
【0033】
アルミニウム合金に0.0001≦Ti≦0.6質量%含有されるTiは、電気比抵抗寄与率が大きく、耐腐食性を損なわず、アルミニウム合金の結晶粒を微細化してその成形性を向上させる元素である。Tiの含有率が0.0001質量%未満の場合には、必要な電気比抵抗値が得られないおそれがあるとともに、アルミニウム合金箔の平均結晶粒径が大きくなり加工が困難になるおそれがある。また、含有率が0.6質量%を超えると強度が大きくなりすぎて、加工が困難になるおそれがある。Tiの含有率は、0.002≦Ti≦0.25質量%であることがより好ましい。
【0034】
アルミニウム合金に0<Cu≦0.005質量%含有されるCuは、耐腐食性を低下させる元素である。Cuの含有率が0.005質量%を超える場合には、アルミニウム合金箔に腐食孔が形成されるおそれがある。ここで、Cu含有率の下限は特に限定されないが、一般に0.0005質量%程度である。Cuの含有率は、0<Cu≦0.003質量%であることがより好ましい。
【0035】
アルミニウム合金に0<Si≦0.1質量%含有されるSiは、他の元素の析出を促進するために電気比抵抗を減少させる元素である。また、特に弱酸に対する耐腐食性を低下させる元素である。Siの含有率が0.1質量%を超える場合には、アルミニウム合金箔に腐食孔が形成されるおそれがある。Si含有率の下限は特に限定されないが、一般に0.0005質量%程度である。Siの含有率は、0<Si≦0.04質量%であることがより好ましい。
【0036】
アルミニウム合金に0<Fe≦0.2質量%含有されるFeは、特に機械的強度を向上させるが、耐腐食性を低下させる元素である。Feの含有率が0.2質量%を超える場合には、アルミニウム合金箔に腐食孔が形成されるおそれがある。Fe含有率の下限は特に限定されないが、一般に0.0005質量%程度である。Feの含有率は0<Fe≦0.08質量%であることがより好ましい。
【0037】
アルミニウム合金の主たる組成であるAlは、伝熱性に優れ、軽量、安価であり、加工が容易である。ここで、一般にアルミニウムの製錬、精製、溶製過程でFe、Si、Cu、Ti、V、Ga等の元素が不純物元素として混入するが、種々の品質(品位)のアルミニウムを組み合わせ配合することによってそれらの元素の含有量を調整できる。この発明に係る耐腐食性導電シート14に用いられるアルミニウム合金は、不純物元素を調整した後に、有意元素としてある種の元素を添加配合することにより製造される。
【0038】
このアルミニウム合金からなるアルミニウム合金箔142は、電気比抵抗値(室温15℃)が6.0μΩcm以上であり、好ましくは6.0〜10μΩcm、より好ましくは6.5〜10μΩcmとなる範囲で上記の各元素を含有することができる。電気比抵抗値が6.0μΩcm未満であると、必要な抵抗値を得るためにアルミニウム合金箔の厚みを薄くしなければならず、耐腐食性導電シート14の強度が低下するおそれがある。アルミニウム合金の電気比抵抗値の上限は特に限定されないが、一般に10μΩcm程度である。電気比抵抗値が10μΩcmを超えると、耐食性が著しく低下したり、加工が困難になったりするおそれがあるからである。
【0039】
耐腐食性導電シート14に必要に応じて用いられる耐腐食性の被膜144、146の材料は、特に限定されるものではなく、導電体層142を腐食から防護することができるものであればよい。耐腐食性の被膜144、146として、例えば、ガラス系被膜、フッ素系被膜、アクリル系被膜、スチレン系被膜、ポリカーボネート系被膜、ポリエステル系被膜、ポリウレタン系被膜、エポキシ系被膜、テフロン(登録商標)被膜、すずメッキ、亜鉛メッキ、亜鉛合金クラッド、酸化被膜、リン酸処理被膜、リン酸塩処理被膜、クロム酸処理被膜、クロム酸塩処理被膜、フッ酸処理被膜、フッ酸塩処理皮膜、ナトリウム塩処理被膜、又は、陽極酸化法、ゾルゲル法、アルコキシド法、CVD法若しくはPVD法により形成されるニオブ、チタン、タンタル、けい素若しくはジルコニウム金属の不動態酸化物被膜からなる群から選択されるいずれか、又はこれらの組み合わせを用いることができる。耐腐食性の被膜144、146は、ガラス系被膜又はエポキシ系被膜であることがより好ましい。被膜144、14cは、第1の接着層12及び第2の接着層16と接着性がよく、耐滑り性、耐せん断強度、耐はがれ性などが高いものであることが好ましい。
【0040】
第1の接着層12は、
図1に示されるように基盤層10と耐腐食性導電シート14との間に配置され、耐腐食性導電シート14の敷設時には基盤層10と耐腐食性導電シート14とを強固に接着し、アスファルト層18の剥離時には、耐腐食性導電シート14の発熱によって軟化させることができる熱可塑性材料である。第1の接着層12は、剥離時には、電磁誘導によって発熱する耐腐食性導電シート14の熱により軟化して、基盤層10と耐腐食性導電シート14との接着力が低下し、第1の接着層12においてこれより下の層とこれより上の層とを分離することができる。
【0041】
第1の接着層12は、アスファルトの性状試験において一般的に用いられている軟化点試験方法で求められる軟化点T1が約50℃〜約80℃であることが好ましく、後述される第2の接着層16の軟化点T2より10〜15℃以上低いことがより好ましい。ここで、軟化点とは、アスファルトなどの熱可塑性材料の固体物質が温度の上昇によって連続的に塑性変形して軟化し、軟化の程度が所定の状態となったときの温度を示す指標である。例えばアスファルトの軟化点は、環球上の型枠に溶融した液体アスファルトを注いで冷却固化させたアスファルトの上に鋼球を載せ、一定の温度勾配で昇温し、アスファルトが規定の距離まで垂れ下がるときの温度をいう。第2の接着層16より軟化点が低い材料を第1の接着層12の材料として用い、電磁誘導による耐腐食性導電シート14の発熱温度を、第1の接着層12は軟化するが第2の接着層16は軟化しない温度に制御すれば、第1の接着層12においてその上の層とその下の層とを分離することが容易になる。
【0042】
第1の接着層12及び第2の接着層16の軟化点の差と、道路構造体1を2つの層に分離させる位置との関係については、以下のように考えることができる。第1の接着層12及び第2の接着層16に用いられる材料の温度(Tem)と粘度(η)との関係は、接着層に用いられる材料の温度(Tem)−粘度(η)特性図上で右下がりのほぼ直線に近似された曲線として表される。この温度−粘度特性図は、一般に温度の対数(log(Tem))を横軸とし、粘度の対数の対数(log(logη))を縦軸とする「log(logη)−log(Tem)」図として表現される。或いはこの温度−粘度特性図は、温度(Tem)を横軸とし、粘度の対数(logη)を縦軸とする特性図、すなわち「logη−Tem」図として表されることもある。この特性図上においては、第2の接着層16を表す直線は、軟化点が低い第1の接着層12を表す直線の上方に、間隔を隔ててプロットされることになる。第1の接着層12と第2の接着層16とが、耐腐食性導電シート14の熱によって同時に暖められ、第1の接着層12が軟化する温度に達したときには、第2の接着層16は、上記の間隔を隔てた点の粘度、すなわちまだ軟化が始まらない粘度である。ここで、縦軸は、上述のとおり対数の対数として表されるため、第1の接着層12の軟化点と第2の接着層16の軟化点との差が10℃〜15℃に対応する粘度の差は大きい。したがって、第1の接着層12と第2の接着層16とを、それぞれ軟化点の差が10〜15℃以上の材料とすることによって、電磁誘導により誘導電流を発生させて道路構造体1を構成する耐腐食性導電シート14を加熱した場合には、第2の接着層16ではなく、粘度がより低い第1の接着層12において、その上の層とその下の層とを分離させることがより容易になる。
【0043】
第1の接着層12は、長期間にわたってアスファルト層18と基盤層10との間に埋設された状況が続いた場合であっても、状態(耐腐食性、基盤層10及び耐腐食性導電シート12との付着性など)が変化しない材料であることが望ましい。
【0044】
第1の接着層12として利用可能な材料は、例えば、合成ゴム、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル系ラジカル硬化性液状樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル重合体、ウレタン樹脂、及び瀝青材料からなる群から選択されるいずれか、又はこれらの物質の混合物とすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
第1の接着層12の厚さは、基盤層10と耐腐食性導電シート14との間を確実に接着させることができる厚さであればよい。また、基盤層12に不陸がある場合には、耐腐食性導電シート14を敷設する際にその不陸を吸収して、耐腐食性導電シート14と基盤層10とを確実に密着させることができる厚さであればよい。ただし、厚さは、施工性及び経済性の観点から、できる限り薄い方が好ましい。
【0046】
第2の接着層16は、
図1に示されるように耐腐食性導電シート14とアスファルト層18との間に配置され、アスファルト層18の敷設時には耐腐食性導電シート14とアスファルト層18とを強固に接着し、アスファルト層18の剥離時には、耐腐食性導電シート14の発熱によって軟化させることができる熱可塑性材料である。第2の接着層16は、アスファルト層18の剥離時には、電磁誘導によって発熱する耐腐食性導電シート14の熱により軟化して、耐腐食性導電シート14とアスファルト層18との接着力が低下し、第2の接着層16においてこれより下の層とこれより上の層とを分離することができる。
【0047】
第2の接着層16は、軟化点T2が約60℃〜約90℃であることが好ましく、第1の接着層12の説明でも述べたとおり、第1の接着層12の軟化点T1より10℃〜15℃以上高いことがより好ましい。第1の接着層12より軟化点が高い材料を第2の接着層16の材料として用い、電磁誘導による耐腐食性導電シート14の発熱温度を、第1の接着層12は軟化するが第2の接着層16は軟化しない温度に制御すれば、第1の接着層12においてその上の層とその下の層とを分離することが容易になる。
【0048】
第2の接着層16は、長期間にわたってアスファルト層18と基盤層10との間に埋設された状況が続いた場合であっても、状態(耐腐食性、耐腐食性導電シート14及びアスファルト層18との付着性など)が変化しない材料であることが望ましい。第2の接着層16の厚さは、耐腐食性導電シート14とアスファルト層18との間を確実に接着させることができる厚さであればよいが、施工性及び経済性の観点から、できる限り薄い方が好ましい。
【0049】
第2の接着層16として利用可能な材料は、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポ リ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエチレンテレタレート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、スチレンブタジエンブロック共重合体(SBS)系樹脂、クロロプレン(CR)系樹脂、スチレンイソプレンブロック共重合体(SIS)系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、及び瀝青材料からなる群から選択されるいずれか、又はこれらの物質の混合物とすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
[耐腐食性導電シート]
図1に示される耐腐食性導電シート14は、例えば予め帯状シートに加工した耐腐食性導電シート14の形態で施工現場に搬入することができる。
図2(a)は、一例として、耐腐食性導電シート14を巻回したロール22を示す。こうした耐腐食性導電シート14を用いることによって、道路構造体1は、基盤層10の上に第1の接着層12を敷設し、その上に例えばロール22から耐腐食性導電シート14を引き出して敷き、第1の接着層12を介して基盤層10と耐腐食性導電シート14とを接着させ、耐腐食性導電シート14の上に第2の接着層16を敷設し、その上にアスファルト層18を敷き、第2の接着層16を介して耐腐食性導電シート14とアスファルト層18とを接着させることにより、容易に道路構造体1を敷設することができる。
【0051】
耐腐食性導電シート14は、
図2(a)では帯状シートをロール22に巻回した形態を例示しているが、これに限定されるものではない。例えば、耐腐食性導電シート14を複数枚の矩形シートとして準備しておき、これらの矩形シートを、第2の接着層12の上に敷き並べるようにしてもよい。
【0052】
[道路構造体1aの構成]
図1(b)は、本発明の第2の実施形態による道路構造体を示す。
図1(b)に示される道路構造体1aは、基盤層10と第1の接着層12との間に防水層26が配置されている点で、本発明の第1の実施形態と異なる。
【0053】
防水層26は、
図1(b)に示されるように、基盤層10と第1の接着層12との間に配置され、道路構造体1a内に入り込んだ水分が基盤層10に到達しないようにする機能を有する。防水層26は、長期間にわたってアスファルト層18と基盤層10との間に埋設されていても、防水性能が変化しない材料を用いることが好ましい。また、防水層26は、基盤層10及び第1の接着層12との接着性のよい材料を用いることが好ましい。防水層26として、塗膜系防水層、シート系防水層、モルタル+シート系防水層などを用いることができる。
【0054】
塗膜系防水層として、限定されるものではないが、例えば、合成ゴム系防水層、高靭性FRC材料と樹脂系材料との組み合わせ、アクリル樹脂とアスファルト系接着層との組み合わせ、エポキシ樹脂とアスファルト系接着層との組み合わせ、アクリル酸とメタアクリル酸との混合重合樹脂、アクリル系ラジカル硬化性液状樹脂とアスファルト系防水剤との組み合わせ、ポリウレタン樹脂とウレタン系接着剤とエチレン酢酸ビニル重合体との組み合わせ、ウレタン系防水層とウレタン系反応性ホットメルト接着剤との組み合わせなどを用いることができる。
【0055】
シート系防水層として、限定されるものではないが、例えば、流し貼り型シート、加熱密着シート、常温施工自着型シート、常温施工圧着型シート、アスファルトの間に繊維シートを挟んだ防水層などを用いることができる。
【0056】
モルタル+シート系防水層として、限定されるものではないが、例えば、セメント系モルタル及びエマルジョンによって基盤層を補修後にアスファルト系防水シートを施した防水層、樹脂モルタルの間に繊維シートを挟んだ補強層とシート系防水とアスゴム系接着剤との組み合わせによる防水層、水硬性セメント及び合成樹脂エマルジョンからなる延伸型材料に不織布を挟んだ防水層などを用いることができる。
【0057】
[剥離装置]
道路構造体1、1aにおいてアスファルト層18を剥離するための剥離装置は、道路構造体1、1aに含まれる耐腐食性導電シート14を電磁誘導により加熱することができる電磁誘導コイルと、電磁誘導コイルに高周波電力を供給することができる高周波電力発生装置及び電源と、加熱されて軟化した接着層に楔形状の先端部を挿入して基盤層10とアスファルト層18とを分離することができる剥離部材とを基本的な構成要素とする。剥離装置は、低騒音及び低振動の装置であることが好ましく、無騒音及び無振動の装置であることがより好ましい。剥離装置は、アスファルト層を剥離するのに必要な程度まで接着層が軟化するように導電シートを加熱することができ、一定の速度で電磁誘導コイルを移動させることが可能な自走式の装置、例えば自走車両が電磁誘導コイルを牽引する方式の装置であることが好ましく、電磁誘導コイルからの磁束が外部に漏れないように磁束遮へい機構を備えることがより好ましい。また、剥離装置は、路面の状況に応じて電磁誘導コイルをアスファルト層上面の任意の位置に配置することができるように、自在に位置制御可能な電磁誘導コイル移動機構を備えることが好ましい。
【0058】
図3は、本発明の実施形態に係る道路構造体1又は1aにおいてアスファルト層18を剥離する装置を示す。この装置は、基本的な構成の一例を示すものであり、この構成に限定されるものではない。
図3に示されるように、基盤層10の上に、第1の接着層12、耐腐食性導電シート14及び第2の接着層16と、アスファルト層18とが、この順で積層されている。アスファルト層18の上には装置積載牽引トラック50が載っている。この装置積載牽引トラック50の前進方向20がアスファルト層18の剥離方向である。なお、
図3においては、分かり易くするために、第1の接着層12、耐腐食性導電シート14及び第2の接着層16の厚みは、実際より厚く図示されている。また、以下においては、道路構造体1においてアスファルト層18を剥離する装置及び方法を説明するが、道路構造体1aにおいても同じ装置を用いることが可能である。
【0059】
図3に示されるように、装置積載牽引トラック50の後方のアスファルト層18上面には、電磁誘導コイルユニット42が載っている。
図4には、本発明に係る剥離方法に用いるのに適したコイルユニットの一例を示す。コイルユニット42は、
図4(b)の平面図に示されるように、矢印26で示される方向を進行方向(剥離方向)とすると、例えばFRP製のフレーム部材44内の後方に3つの電磁誘導コイル46が等間隔で、進行方向を横切る方向である横方向に並べられる。また、前方には2つの電磁誘導コイル46が、後方の電磁誘導コイル46の配置に対して略コイル半分の距離をずらして、横方向に並べられる。電磁誘導コイルを進行方向に対してこのように並べることによって、耐腐食性導電シート14に均一に電磁誘導による電流を流すことができるため、耐腐食性導電シート14をより均一に加熱することができる。なお、コイルユニット42における電磁誘導コイル46の配置は、
図4に示される配置に限定されるものではなく、アスファルト層18を含む道路構造体1の状態や、耐腐食性導電シート14の形態に合わせて、設計することが好ましい。
【0060】
図4(a)は、
図4(b)において進行方向20前方に並ぶ2つの電磁誘導コイル46の中心部分を横切る横断面図である
図4(a)に示されるように、電磁誘導コイル46は、フレーム部材44に固定され、電磁誘導コイル46の上面には、フェライト48が電磁誘導コイル46の中心に対して放射状に置かれている。フレーム部材44の鉛直方向の中間層には、フェライト48とほぼ同じ厚さの板材47が略水平に設けられている。フレーム部材44の天井部44Bは、取外し可能なカバーとすることが好ましい。これにより、電磁誘導コイル46が高温状態のとき、フレーム部材44の外部への放熱を促すことができる。また、天井部44Bを取外せば、電磁誘導コイル46のメンテナンスを容易に行うことができる。フレーム部材44の四隅付近には、車輪49が設けられている。また、コイルユニット42は、横方向に複数連結可能となっている。
【0061】
電磁誘導コイル46による加熱効率を高めるために、電磁誘導コイル46の下面をできるだけアスファルト層18の上面に近接するようにし、耐腐食性導電シート14の上面から電磁誘導コイル46下面までの距離を短くすることが好ましい。
【0062】
図3に示されるように、装置積載牽引トラック50の荷台には、電気ケーブル58から電磁誘導コイル46に高周波電力を供給する高周波電力発生装置56と、高周波電力発生装置56の電源となる発電機57が搭載されている。装置積載牽引トラック50の荷台後部には、下方に突出する支柱59が固定されており、支柱59とコイルユニット42とが、装置積載牽引トラック50と一体化された又は一体的に接続された治具又は牽引ワイヤー56によって、繋がれている。
【0063】
コイルユニット42後方の基盤層10上には、剥離部材となるリッパー70がアーム72の先端に取付けられた小旋回型のバックホー74が載っている。
【0064】
[剥離方法]
次に、
図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る道路構造体1におけるアスファルト層18の剥離方法の施工手順について説明する。なお、剥離作業開始時は、バックホー74及びリッパー70を基盤層10上に配置する部分において、リッパー70の取りつき部分として予め基盤層10を露出させておくことが好ましい。
【0065】
特に耐腐食性導電シート14が平板シート状の金属の場合には、施工のしやすさの観点から、剥離作業開始前に、道路構造体1のアスファルト舗装体18に、進行方向20と概ね平行な複数の切目をカッティングブレード(図示せず)などによって入れておくことが好ましい。例えば、2本の切目を入れた場合には、アスファルト舗装体18は、進行方向20の方向に延びる3つのレーンに分割することができる。また、道路構造体1のアスファルト舗装体18に、進行方向20を横切る方向に、複数の切目をカッティングブレードなどによって入れておいてもよい。このように切目を入れておくことによって、アスファルト層18を基盤層10の上から剥離して取り出すことがより容易になる。
【0066】
次に、アスファルト舗装体18上の、例えば3つのレーンのうち最も端のレーンにおける剥離位置に、コイルユニット42を載せる。なお、アスファルト舗装体18を複数のレーンに分割した場合に、レーンの各々に1台ずつコイルユニット42を載せて、全レーンにおいて同時にアスファルト層18を剥離するようにしてもよい。コイルユニット42の電磁誘導コイル46に高周波電力発生装置56から電気ケーブル58を介して高周波電力を供給すると、コイルユニット42下方に位置する道路構造体1の耐腐食性導電シート14に電磁誘導による渦電流が発生し、耐腐食性導電シート14は、自らの電気抵抗によって発熱する。耐腐食性導電シート14が発熱すると、耐腐食性導電シート14と接する第1の接着層12が軟化する。
【0067】
次いで、加熱開始と共に、装置積載牽引トラック50を前進させてコイルユニット42を牽引し、剥離方向20へ徐々に移動する。コイルユニット42の移動速度は、コイルユニット42の加熱能力や剥離作業の施工スピードに応じて適宜設定することができる。前方の2つの電磁誘導コイル46が後方の電磁誘導コイル46の配置に対して、略コイル半分の距離をずらして横方向に並べられているので、渦電流を耐腐食性導電シート14全体に隙間なく流すことができる。
【0068】
次に、軟化した第1の接着層12にリッパー70を挿入することによって、基盤層10からアスファルト舗装体18を剥離することができる。理想的には、リッパー70の先端は、基盤層10と第1の接着層12との間に挿入されることが好ましい。第1の接着層12の軟化点が第2の接着層16の軟化点より低い材料を用いて道路構造体1が構成されている場合には、道路構造体1を構成する各層の中で第1の接着層12が最も軟化し、第1の接着層12より上方の層はいずれも堅固に固着一体化した状態で剥離が行われるため、必然的に第1の接着層12の部分で剥離が生じ、耐腐食性導電シート14、第2の接着層16及びアスファルト層18が一体的に基盤層10から分離される。しかし、実際の道路構造体においては、第1の接着層12、耐腐食性導電シート14及び第2の接着層16の厚みは、合わせて数mm〜数十mm程度である一方、一般的に用いられるリッパー70の先端の厚みは数十mm(例えば約30mm)である。したがって、リッパー70の先端は、第1の接着層12、耐腐食性導電シート14及び第2の接着層16のいずれかの特定の層に挿入されるのではなく、これらの層全体を引っかけて持ち上げる際に最も粘着力の低くなった層から剥離が生じる。
【0069】
耐腐食性導電シート14として、複数の穴又はミシン目等などの引張破断に対する弱点が、導電体層142の剥ぎ取り方向と直交する方向、例えば帯状シートの場合にはシートの幅方向に直線状に並んだ弱点の列を、長さ方向に適当な間隔で設けた弱点付きのシートが用いられた場合には、耐腐食性導電シート14を含む層をリッパー70で剥離して持ち上げた時に、剥離された部分と剥離されていない部分とをこの弱点の箇所で分断することできるため、より容易に剥離工程を行うことができる。
【0070】
リッパー70によって基盤層10から剥離された、第1の接着層12からアスファルト層18までの層24(又は、少なくともアスファルト層18を含む複数の層24)の剥離後の処理に関しては、特に限定されるものではない。例えば、アスファルト層18を含む剥離済み層24を、進行方向に20に対して適切な長さに切断した後、又はあらかじめ設けられた切目の部分で切断された後に、リッパー70によって持ち上げ、バックホー74のアーム72を旋回させて道路構造体1の横に置いていくことができる。横に置かれた剥離済み層24は、後の工程で搬出されることになる。あるいは、アスファルト層18を含む剥離層24をそのまま基盤層10の上に残しながら、剥離装置を進行方向20に連続的に進め、基盤層10の上に残った剥離層24を後で除去するようにしてもよい。この方法の場合は、露出した基盤層10を剥離層24の破砕片で保護することができる。
【0071】
[敷設方法]
次に、本発明に係る道路構造体1の敷設方法を説明する。道路構造体1の構成は
図1(a)に示されている。
まず、コンクリートの現場打ちによって、又はあらかじめ構築されたコンクリート版などを敷設位置に配置することによって、基盤層10を敷設する。次に、基盤層10の上に、第1の接着層12を敷設する。第1の接着層12は、例えば、適切な溶融温度まで加熱された材料を基盤層10の上に吹き付けたり塗布したりすることによって、敷設される。第1の接着層12は、基盤層10の表面に塗布されるプライマを兼ねることもあるが、必要に応じて、第1の接着層12を敷設する前に、基盤層10の表面にプライマを別途塗布することもある。
【0072】
図1(b)に示される道路構造体1aは、第1の接着層12を敷設する前に、基盤層10の上に防水層26が敷設される場合を示す。防水層26は、用いられる防水層26の材料に応じて、例えば塗布、吹き付け、流し貼り、加熱溶着、常温粘着などといった一般的な工法によって、基盤層10の上に敷設される。防水層26が敷設されると、その上に、上述のとおり第1の接着層12が敷設される。
【0073】
道路構造体1及び1aのいずれも場合においても、第1の接着層12の上に、耐腐食性導電シート14が敷設される。耐腐食性導電シート14は、
図2(a)に示されるように、予め帯状シートの形態に加工した耐腐食性導電シートとすることができる。例えば耐腐食性導電体シート14がロール22として準備される場合には、第1の接着層12の上方にロール22を設置し、ロール22から耐腐食性導電シート14を引き出し、引き出したシート14を第1の接着層12の上の予定位置に配置するとともに、敷設予定区間に応じて適当な長さで切断していくことによって、耐腐食性導電シート14を敷設することができる。あるいは、耐腐食性導電シート14が、所定のサイズ、例えば50cm〜180cm程度四方の大きさに分割された矩形シートとして準備される場合には、複数の矩形シート14を第1の接着層12の上に並べて配置することによって、耐腐食性導電シート14を敷設することができる。
【0074】
耐腐食性導電シート14を敷設する場合には、
図2(b)に示されるように、耐腐食性導電シート14は、隣接するシート間に間隙を生じないように、端部同士を重ね合わせて敷設することが好ましい。あるいは、耐腐食性導電シート14は、隣接するシートの端面同士を確実に突き合わせて敷設してもよい。端部同士を重ね合わせて敷設する場合には、具体的には、まず、耐腐食性導電シート14aを
図2(b)の上方に示される位置、すなわち、矢印26で示される敷設方向に敷設する。次いで、耐腐食性導電シート14bを、その進行方向右側の端部が耐腐食性導電シート14aの左側の端部の上に重なり、かつ、その先端部分が、耐腐食性導電シート14aの先端部分より進行方向後方に位置するように、配置する。その後、同様に、耐腐食性導電シート14c〜14fを敷設する。
【0075】
次いで、耐腐食性導電シート14gを、同様に敷設する。耐腐食性導電シート14gは、その進行方向右側の端部が耐腐食性導電シート14aの右側の端部と一致し、その後端部が耐腐食性導電シート14aの先端部の上に重なるように配置される。次に、耐腐食性導電シート14hは、その右側の端部が耐腐食性導電シート14gの左側端部に重なり、後端部が耐腐食性導電シート14bの先端部に重なるように配置される。その後、同様に、耐腐食性導電シート14i〜14lを敷設する。このように、耐腐食性導電シート14を、端部同士が重なるように敷設することによって、防水効果をより高めることができる。防水層26が敷設される場合には、耐腐食性導電シート14は、端部同士を重ねるのではなく、突き合せて敷設することがより効率的である。
【0076】
耐腐食性導電シート14を傾斜道路に敷設する場合には、
図2(c)に示されるように、傾斜面上方に敷設された耐腐食性導電シート14の傾斜面下方の端部の下に、傾斜面下方に敷設された耐腐食性導電シート14の傾斜面上方の端部が入り込む形で、耐腐食性導電シート14m〜14rを敷設することが好ましい。このように、傾斜面下方に配置された耐腐食性導電シート14の上端部を、傾斜面上方に配置された耐腐食性導電シート14の下端部の下に配置しながら、耐腐食性導電シート14を敷設することによって、傾斜面上方から下方に流れる水に対する防水効果をより高めることができる。
【0077】
続いて、このように敷設された耐腐食性導電シート14の上に、第2の接着層16が敷設される。第2の接着層16は、例えば、適切な溶融温度まで加熱された材料を耐腐食性導電シート14の上に吹き付けたり塗布したりすることによって、敷設される。最後に、第2の接着層16の上に、アスファルト層18が敷設される。アスファルト層18は、加熱されて軟化したアスファルト混合物を、例えばアスファルトフィニッシャなどによって、第2の接着層16の上に敷きならし、転圧機械などによって転圧することによって敷設される。
【実施例】
【0078】
(1)耐腐食性導電シートの加熱によるアスファルト層の状態確認試験
本発明による耐腐食性導電シートを用いた試験体を加熱して、アスファルト層の状態を確認する試験を行った。
図5は、試験に用いた試験体の構成を示す。
図5に示されるように、試験体においては、基盤層となるコンクリート(300mm×300mm×60mm)の上面に、プライマー(スチレンブタジエン共重合体+石油樹脂+トルエン)0.2リットル/m
2を塗布し、さらにその上面に加熱アスファルト(アスファルト+石油系炭化水素+石油樹脂+スチレンブタジェン共重合体)1.2kg/m
2を塗布した。加熱アスファルトの上面に導電体層を、その上面にアスファルト系防水シートを、それぞれ敷設した。導電体層として、耐腐食性導電シート(
図5においてはIHアルミと表記)、アルミシート(
図5においてはアルミと表記)、FRPシート、ステンレスシートの4種類を用いた。アスファルト系防水シートの上方から直径28.5cmの電磁誘導コイルを使用して試験体を加熱して、アスファルト層の状態を調べた。
【0079】
試験の結果は以下のとおりであった。
(a)耐腐食性導電シートを用いた試験体においては、電磁誘導加熱によって耐腐食性導電シートが60℃以上になると、加熱アスファルトが溶けだした。アスファルト防水シートは、溶ける状態までは達しなかったが、柔らかくなることを確認した。
(b)アルミシートを用いた試験体においては、電磁誘導加熱によってアルミシートが60℃以上になると、加熱アスファルトが溶けだした。アスファルト防水シートは、溶ける状態までは達しなかったが、柔らかくなることを確認した。
(c)FRPシートを用いた試験体においては、電磁誘導によってFRPシートが加熱されることがなく、加熱アスファルト及びアスファルト防水シートも溶けることはなかった。
(d)ステンレスシートを用いた試験体においては、電磁誘導加熱によってステンレスシートが60℃以上になると、加熱アスファルトが溶けだした。アスファルト防水シートは、溶ける状態にまでは達しなかったが、柔らかくなることを確認した。
【0080】
(2)耐腐食性導電シートの端部を重ね合わせたときの加熱試験
A4用紙サイズ(210mm×297mm)の導電体層2枚を用意し、これらの導電体層の端部同士を100mm重ね合わせて試験体を作成し、直径28.6cmの電磁誘導コイルを用いて加熱試験を実施した。導電体層として、耐腐食性導電シート、アルミシート、FRPシート、ステンレスシートの4種類を用いた。これらのシートの詳細は、上記(1)における試験で用いたものと同様である。
【0081】
試験の結果は以下のとおりであった。
(a)耐腐食性導電シートを用いた試験体においては、シート全体を均等に加熱することができた。
(b)アルミシートを用いた試験体においては、シート全体を均等に加熱することができず、重ね合わせた端部が集中的に加熱され、発火した。
(c)FRPシートを用いた試験体においては、シートが加熱されることはなかった。
(d)ステンレスシートを用いた試験体においては、シート全体を均等に加熱することができた。
【0082】
(3)耐腐食性導電シートの耐腐食性試験及び電気比抵抗値の測定
本発明による耐腐食性導電シートについて、耐腐食性試験を行い、腐食の発生状態を確認した。同時に、電気比抵抗値の測定、及び電磁誘導加熱性の試験も行った。表1には、実施例1〜実施例6及び比較例1〜比較例2について、試験体の構成、体腐食性試験に用いた薬品種類を示す。
【0083】
試験体として、以下のものを用いた。
[実施例1及び実施例2]
厚み80μm、成分Mn=1.76、Mg=0.85、Fe=0.06、Ti=0.02、その他各0.01以下(重量%)Al=残部のアルミニウム箔(表1ではIH箔と表示)の両面に、エポキシ系樹脂を固形分基準で片面当たり3g/m
2コーティングした積層材を用いた。
[実施例3及び実施例4]
厚み80μm、成分Mn=1.76、Mg=0.85、Fe=0.06、Ti=0.02、その他各0.01以下(重量%)Al=残部のアルミニウム箔(表1ではIH箔と表示)の両面にシリカ系ガラスを固形分基準で片面当たり3g/m
2コーティングした積層材を用いた。
[実施例5及び実施例6]
厚み80μmのステンレス箔をそのまま用いた。
[比較例1及び比較例2]
厚み80μm、合金番号1N30のアルミニウム箔(表1では一般箔と表示)をそのまま用いた。
【0084】
耐腐食性試験は、各試験体(100mm×100mm)をCa(OH)
2 0.17WL%水溶液(飽和水酸化カルシウム溶液)(表1では薬品種類Aと表示)、又は、NaCl3wt%水溶液(3%食塩水)(表1では薬品種類Bと表示)に浸漬し、15日後に表面状態を目視で観察した。表1において、○印は、試験体には変色も腐食もなかったことを示し、×印は、試験体が腐食し、貫通孔が発生したことを示す。
【0085】
電気比抵抗値(μΩcm)は、各試験体について、直流四端子法により室温(15℃)で測定した。また、IH性試験は、各試験体に用いた金属箔(厚みは80μm)を市販のIH加熱調理器(出力1400W)を用いて、室温から10秒以内で90℃に達するかどうかを調査することによって行った。また、赤外線カメラにて均一に加熱されているかどうかを確認した。表1において、○印は、試験体の温度が10秒以内に90℃に到達するとともに、試験体がほぼ均一に加熱されていたことを示し、×印は、試験体の温度が上がらなかったことを示す。
【0086】
【表1】