特許第6208217号(P6208217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208217
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】信号システム及び移動体の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/00 20060101AFI20170925BHJP
   B61L 7/06 20060101ALI20170925BHJP
   B61L 11/00 20060101ALI20170925BHJP
   B61L 23/18 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B61L27/00 K
   B61L7/06
   B61L11/00 Z
   B61L23/18
【請求項の数】8
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-507909(P2015-507909)
(86)(22)【出願日】2013年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2013059730
(87)【国際公開番号】WO2014155728
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年9月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 裕
【審査官】 岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−232106(JP,A)
【文献】 特開2002−331936(JP,A)
【文献】 特開2012−131324(JP,A)
【文献】 特開2000−168556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 27/00
B61L 7/06
B61L 11/00
B61L 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を移動する複数の移動体にそれぞれ設けられ、第1車上装置と第2車上装置を含む複数の車上装置と、ここで、前記複数の移動体は、前記第1車上装置を有する第1移動体と、前記第2車上装置を有する第2移動体とを備え、
前記軌道に沿った複数の駅にそれぞれ設けられ、第1駅の第1駅インターフェース装置を含む複数の駅インターフェース装置と、
前記軌道上に設けられた複数の分岐と、ここで、前記複数の分岐のうちの2以上の第1分岐は、前記第1駅インターフェース装置に属し、前記第1駅インターフェース装置により制御され、
を具備し、
前記第1車上装置からの移動体照会指示に応答して前記第1移動体の進路上にいる前記第2移動体の第2車上装置が、前記第2移動体の位置に関する移動体進行許可限界位置情報を含む他移動体関連情報を前記第1移動体の第1車上装置へ送信し、
前記第1車上装置からの分岐照会指示に応答して前記第1駅インターフェース装置が、前記進路上の前記2以上の第1分岐の状態を示す状態情報を含む駅関連情報を前記第1車上装置へ送信し、前記駅関連情報は、分岐進行許可限界位置情報を含み、
前記第1車上装置が、前記他移動体関連情報と前記駅関連情報とに基づいて、前記進路を確保するように、前記第1分岐の保持の指示、又は、転換及び保持の指示を前記第1駅インターフェース装置へ出力し、
前記第1車上装置からの前記保持の指示あるいは前記転換と保持の指示に応答して、前記第1駅インターフェース装置が、前記進路上の前記2以上の第1分岐がその状態を保持、又は、転換及び保持するように制御し、
前記第1車上装置は、前記第2移動体から前記移動体進行許可限界位置情報に基づいて定まる距離までの前記第1移動体の進行を許可し、
前記第1車上装置は、前記2以上の第1分岐から前記分岐進行許可限界位置情報に基づいて定まる距離までの前記第1移動体の進行を許可し、
前記第1車上装置が、前記他移動体関連情報に基づいて、前記確保された進路上の前記第1移動体の進行を決定する
信号システム。
【請求項2】
請求項1に記載の信号システムにおいて、
前記第1車上装置は、
前記駅関連情報と前記他移動体関連情報とに基づいて、前記進路が確保されているか否かを確認し、前記進路が確保されていない場合、前記第1駅インターフェース装置に前記保持の指示あるいは前記転換と保持の指示を出力する
信号システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の信号システムにおいて、
前記他移動体関連情報は、前記第2移動体の後方における前記第1移動体が進行を許可される範囲を示す進行許可限界位置情報を含み、
前記第1車上装置は、前記進行許可限界位置情報に基づいて、前記進行を許可される範囲で前記第1移動体の進行を決定する
信号システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の信号システムにおいて、
前記複数の車上装置と前記複数の駅インターフェース装置とを双方向通信可能に接続する無線LANを更に具備し、
前記第1車上装置は、前記他移動体関連情報と前記駅関連情報とを、前記無線LAN経由で取得する
信号システム。
【請求項5】
信号システムを用いた移動体の制御方法であって、
前記信号システムは、
軌道上を移動する複数の移動体にそれぞれ設けられた複数の車上装置と、
前記軌道に沿った複数の駅にそれぞれ設けられた複数の駅インターフェース装置と、
前記軌道上に設けられた複数の分岐と、ここで、前記複数の分岐のうちの2以上の第1分岐は、前記第1駅インターフェース装置に属し、前記第1駅インターフェース装置により制御され、
を具備し、
前記移動体の制御方法は、
第1車上放置からの移動体照会指示に応答して、前記複数の移動体のうちの第1移動体の進路上にいる第2移動体の第2車上装置から、前記第2移動体の位置に関する移動体進行許可限界位置情報を含む他移動体関連情報を前記第1移動体の前記第1車上装置へ送信するステップと、
第1車上放置からの分岐照会指示に応答して、前記複数の駅インターフェース装置のうち、第1駅インターフェース装置から、前記進路上の前記複数の分岐のうちの前記2以上の第1分岐の状態データを含む駅関連情報を前記第1車上装置へ送信するステップと、前記駅関連情報は、分岐進行許可限界位置情報を含み、
前記他移動体関連情報と前記駅関連情報とに基づいて、前記進路を確保するように、前記第1分岐の保持の指示、又は、転換及び保持の指示を前記第1車上装置から前記第1駅インターフェースへ出力するステップと、
前記第1分岐の保持の指示、又は、転換及び保持の指示に応答して、前記進路上の前記2以上の第1分岐がその状態を保持し、又は、転換及び保持するように前記第1駅インターフェース装置が制御するステップと、
前記第1車上装置は、前記第2移動体から前記移動体進行許可限界位置情報に基づいて定まる距離までの前記第1移動体の進行を許可するステップと、
前記第1車上装置は、前記2以上の第1分岐から前記分岐進行許可限界位置情報に基づいて定まる距離までの前記第1移動体の進行を許可するステップと、
前記第1車上装置が、前記他移動体関連情報に基づいて、前記確保された進路上の前記第1移動体の進行を決定するステップと
を具備する
移動体の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の移動体の制御方法において、
前記保持の指示、又は、転換及び保持の指示を出力するステップは、
前記第1車上装置が、前記駅関連情報と前記他移動体関連情報とに基づいて、前記進路が確保されているか否かを確認し、前記進路が確保されていない場合、前記第1駅インターフェース装置に前記保持の指示、又は、転換及び保持の指示を出力するステップを含む
移動体の制御方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の移動体の制御方法において、
前記他移動体関連情報は、前記第2移動体の後方における前記第1移動体が進行を許可される範囲を示す進行許可限界位置情報を含み、
前記進行を決定するステップは、
前記第1車上装置が、前記進行許可限界位置情報に基づいて、前記進行を許可される範囲で前記移動体の進行を決定するステップを備える
移動体の制御方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の移動体の制御方法において、
前記第1車上装置が、前記他移動体関連情報と前記駅関連情報とを無線LAN経由で取得するステップを更に具備する
移動体の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号システム及び移動体の制御方法に関し、特に軌道上を移動する移動体の信号システム及び移動体の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新交通システムや鉄道のような軌道上を移動する移動体(列車)が知られている。そのような移動体の運行を管理する信号システムが知られている。従来の信号システムは、中央監視制御型である。中央監視制御型の信号システムでは、中央指令所に主要な保安機能(防護機能)用の装置を集約し、線区全体の列車の走行状態を把握し、管理して、機能安全を実現している。その保安機能用の装置(防護装置)は、連動装置、ATP(Automatic Train Protection)地上装置、駅制御装置を含んでいる。
【0003】
図1は、従来の信号システムの構成を示すブロック図である。この信号システムは、中央指令所、列車(群)、駅、及び線路の各領域に分けられる。中央指令所は、線区全体の列車の運行状態を把握し、管理して、機能安全を実現する。中央指令所は、運行管理装置230と、ATP地上装置232と、駅制御装置234と、連動装置236とを含んでいる。各装置は、専用LAN(Local Area Network)238により双方向通信可能に相互に接続されている。運行管理装置230は、運行全体の管理を司る。連動装置236は列車の進路の防護を司る。ATP地上装置232は、列車間の衝突防護を司る。駅制御装置234は、駅における列車扉やホームドアの開閉の制御の機能安全を司る。
【0004】
列車(群)は、車上装置210を備えている。車上装置210は、中央指令所の制御に基づいて列車の運行を制御する。車上装置210は、専用LAN238によりATP地上装置232と双方向通信可能に接続されている。駅は、RemoteI/O220を備えている。RemoteI/O220は、中央指令所の制御に基づいてホームドア240の開閉制御や線路の転轍機250の転換制御を行う。RemoteI/O220は、専用LANにより駅制御装置234と連動装置236に双方向通信可能に接続されている。
【0005】
この従来の信号システムの動作(列車の運行)は例えば以下のようになる。
運行管理装置230は、内蔵しているダイヤに基づいて、任意の列車に出発時刻が近付くと、ATP地上装置232からの在線状態205を参照して、線区の在線状況を確認する。そして、運行管理装置230は、その列車が出発できる状態であると判断した場合、その列車に対して、出発指令(又は進路要求)206を発信する。
【0006】
連動装置236は、出発指令(又は進路要求)206を受け取ると、ATP地上装置232から定周期で受け取る線区の在線状態205を参照して、当該列車が走行する対象となる区間の転轍機250(分岐)を進路方向に合致するように、RemoteI/O220に指示する。RemoteI/O220は、当該列車が走行する対象となる区間の転轍機250(分岐)を進路方向に転換する。連動装置236は、その転換後の転轍機250(分岐)を施錠する。その結果、当該列車の進路が排他的に確立される(進路制御201)。他列車はその進路を走行することはない。連動装置236は、このような進路の状態を進路状態207として定周期でATP地上装置232へ出力している。
【0007】
ATP地上装置232は、線路上に配置した検知器や列車から受け取る最新の列車位置204を利用して常時列車位置を監視している。そして、それに基づく線区の在線状態205を連動装置236へ定周期に出力している。また、ATP地上装置232は、連動装置236から定周期で受け取る進路状態207を参照し、進路が確立された列車に対して、先行列車との間に安全な空間を保つことを考慮しながら、進行許可202を出力する。列車は進行許可202を受け取ると進行許可限界点までの速度プロファイルを生成し、当該プロファイルを参照しながら速度制御を行い、移動し始める。
【0008】
駅制御装置234は、列車が駅に到着後、列車状態208(完全に挙動を停止し、ブレーキが動作している状態)をATP地上装置232経由で受け取る。それと同時に、ホームドア240の扉状態をRemoteI/O220経由で確認する。駅制御装置234は、列車及びホームドア240が扉を開けることが可能であることを確認後、扉開指令203をATP地上装置232経由で列車(車上装置210)へ通知する。同時に、扉開指令203をRemoteI/O220経由でホームドア240に通知する。
【0009】
このように、従来の信号システムでは、例えば、列車の進路を確立するための進路制御は連動装置236で行われ、列車の進行許可を出すための列車間防護はATP地上装置232で行われている。言い換えると、従来の信号システムでは、進路制御と列車間防護とを別系統で行っている。
【0010】
この方式は、実績ある方式であるが、以下に示す様な課題が内在する。例えば、上述したように、各々の防護機能が独立した処理系統を持っている。そのため、この信号システムは冗長な構成となっている。従って、信号システムの安全性に着目してシステム構成を考えると、上記したような構成から脱却できず、コスト低減に限界がある。
【0011】
また、信号システムを導入する場合において、線区規模や列車運用の内容に如何に関わらず、線区全体の全ての列車の運行の管理を行う運行管理装置230、連動装置236、ATP地上装置232、駅制御装置234が必要となる。これらは、信号システムを構成する上で最小限の構成であり、導入コスト低減に限界がある。
【0012】
特に、運行管理装置230、ATP地上装置232、制御装置234、及び連動装置236は、線区全体の全ての列車の運行の管理を行っているのでその仕事量が非常に多い。そのため、それに伴い各装置が極めて大きく且つ高額となる。装置などのスペースが削減でき、導入コストも削減可能で、機器の取り扱いが容易な技術が望まれている。
【0013】
更に、従来の信号システムでは、列車の着発制御、進路確立、進行許可制御を機能独立した三つの装置を連携させて、列車に対して移動指令を与えている。そのため、シーケンスに必要な情報伝送の経路が増えて移動の指令が列車に出力されるまでのプロセスに時間を要する。そのため、列車が駅から出発するまでに時間を要することになり、輸送力に影響を与える一因となる。列車が駅から出発するまでにかかる時間を短縮可能な技術が求められている。
【0014】
関連する技術として特開2012−96704号公報に無線列車制御システム及び無線列車制御方法が開示されている。この無線列車制御システムは、中央装置と、各停車場に設置され、前記中央装置と通信可能に接続される駅制御装置と、各列車内に設置され、前記停車場内及び前記停車場近傍を無線通信範囲として前記駅制御装置と無線通信可能に接続される車上装置と、によって構成される。この無線列車制御システムにおいて、前記車上装置は、前記駅制御装置に位置情報を送信する送信手段、を具備する。前記駅制御装置は、前記車上装置から位置情報を受信し、列車が在線していることを示す在線情報を区分化区間ごとに記憶するとともに、前記中央装置に前記在線情報を送信し、前記中央装置からの指示情報を受信し、前記指示情報に基づいて停車場内の装置を制御する常用運行手段、を具備する。前記中央装置は、前記駅制御装置から受信する前記在線情報に基づいて各列車の走行許可範囲を決定し、前記駅制御装置に前記指示情報を送信する常用運行手段、を具備する。更に、前記駅制御装置は、前記中央装置と正常に通信できない場合、列車が停車場間に進出したことを示す進出情報を消去不可とする進出情報記憶手段、を具備する。前記中央装置は、代用運行から常用運行に復帰する際、前記駅制御装置から全ての前記進出情報を受信し、全ての列車に対して、現在在線する区分化区間が確定した後に復帰する復帰手段、を具備する。
【0015】
また、特開2012−131324号公報に運転保安方法及び運転保安システムが開示されている。この運転保安方法は、1)各閉そく区間について占有の有無を管理する管理装置と、2)転轍機を制御する転轍機制御装置と、3)列車に搭載され、各閉そく区間及び前記転轍機の位置情報に基づき走行予定経路の構成に係る連動制御を行う車上装置と、を具備する運転保安システムによる運転保安方法である。前記車上装置が、走行予定経路を構成する閉そく区間の占有確保を要求する確保要求信号を前記管理装置に送信する確保要求ステップと、前記管理装置が、前記確保要求信号に基づいて、前記走行予定経路を構成する閉そく区間の全てが所定の占有可能条件を満たすか否かの判定を行い、満たす場合に当該全ての閉そく区間を占有有りとし、確保信号を前記車上装置に送信する占有確保ステップと、前記車上装置が、前記確保信号を受信した場合に、前記走行予定経路上の転轍機の転轍機制御装置に転換指示信号を送信する第1の転換指示ステップと、前記転換指示信号を受信した転轍機制御装置が、転換鎖錠を行って転換完了信号を前記車上装置に送信する転換ステップと、前記車上装置が、前記転換完了信号を受信した場合に、前記走行予定経路への進入を許可する進入許可ステップと、前記車上装置が、走行済みの閉そく区間の占有解除を要求する解除要求信号を前記管理装置に送信する解除要求ステップと、前記管理装置が、前記解除要求信号に基づいて、対象の閉そく区間の占有を解除する占有解除ステップと、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2012−96704号公報
【特許文献2】特開2012−131324号公報
【発明の概要】
【0017】
従って、本発明の目的は、装置などのスペースが削減可能な信号システム及び移動体の制御方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、導入コストを削減可能な信号システム及び移動体の制御方法を提供することにある。本発明の更に他の目的は、機器の取り扱いが容易な信号システム及び移動体の制御方法を提供することにある。本発明の更に他の目的は、列車が駅から出発するまでにかかる時間を短縮可能な信号システム及び移動体の制御方法を提供することにある。
【0018】
本発明の信号システムは、複数の車上装置と、複数の駅インターフェース装置と、複数の分岐とを具備している。複数の車上装置は、軌道上を移動する複数の移動体に設けられている。複数の駅インターフェース装置は、軌道の複数の駅に設けられている。複数の分岐は、軌道上に設けられ、複数の駅インターフェース装置に制御される。複数の移動体のうちの第1移動体の進路上にいる第2移動体の第2車上装置が、第2移動体に関する情報を示す他移動体関連情報を第1移動体の第1車上装置へ送信する。複数の駅インターフェース装置のうち、進路上の分岐を制御する第1駅インターフェース装置が、進路上の分岐に関する情報を示す駅関連情報を第1車上装置へ送信する。第1車上装置が、他移動体関連情報と駅関連情報とに基づいて、進路を確保するように、進路上の分岐の保持、又は、転換及び保持の指示を第1駅インターフェースへ出力する。第1駅インターフェースが、進路上の分岐を保持、又は、転換及び保持して、進路を確保する。第1車上装置が、他移動体関連情報に基づいて、確保された進路について、移動体の進行を決定する。
【0019】
上記の信号システムにおいて、第1車上装置は、第2車上装置に他移動体関連情報を問い合わせて、他移動体関連情報を取得してもよい。第1駅インターフェース装置に駅関連情報を問い合わせて、駅関連情報を取得してもよい。
【0020】
上記の信号システムにおいて、第1車上装置は、駅関連情報と他移動体関連情報とに基づいて、進路が確保されているか否かを確認し、進路が確保されていない場合、第1駅インターフェース装置に指示を出力してもよい。
【0021】
上記の信号システムにおいて、他移動体関連情報は、第2移動体の後方における移動体が進行を許可される範囲を示す進行許可限界位置情報を含んでいてもよい、第1車上装置は、進行許可限界位置情報に基づいて、進行を許可される範囲で第1移動体の進行を決定してもよい。
【0022】
上記の信号システムにおいて、複数の車上装置と複数の駅インターフェース装置とを双方向通信可能に接続する無線LANを更に具備してもよい。第1車上装置は、他移動体関連情報と駅関連情報とをは、無線LAN経由で取得してもよい。
【0023】
本発明は、信号システムを用いた移動体の制御方法である。その信号システムは、軌道上を移動する複数の移動体に設けられた複数の車上装置と、軌道の複数の駅に設けられた複数の駅インターフェース装置と、軌道上に設けられ、複数の駅インターフェース装置に制御される複数の分岐とを具備している。移動体の制御方法は、複数の移動体のうちの第1移動体の進路上にいる第2移動体の第2車上装置が、第2移動体に関する情報を示す他移動体関連情報を第1移動体の第1車上装置へ送信するステップと、複数の駅インターフェース装置のうち、進路上の分岐を制御する第1駅インターフェース装置が、進路上の分岐に関する情報を示す駅関連情報を第1車上装置へ送信するステップと、第1車上装置が、他移動体関連情報と駅関連情報とに基づいて、進路を確保するように、進路上の分岐の保持、又は、転換及び保持の指示を第1駅インターフェースへ出力するステップと、第1駅インターフェースが、進路上の分岐を保持、又は、転換及び保持して、進路を確保するステップと、第1車上装置が、他移動体関連情報に基づいて、確保された進路について、移動体の進行を決定するステップとを具備している。
【0024】
上記の移動体の制御方法において、進路を確保するステップは、第1車上装置が、第2車上装置に他移動体関連情報を問い合わせて、他移動体関連情報を取得ステップと、第1車上装置が、第1駅インターフェース装置に駅関連情報を問い合わせて、駅関連情報を取得するステップとを含んでいても良い。
【0025】
上記の移動体の制御方法において、指示を出力するステップは、車上装置が、駅関連情報と他移動体関連情報とに基づいて、進路が確保されているか否かを確認し、進路が確保されていない場合、第1駅インターフェース装置に指示を出力するステップを含んでいても良い。
【0026】
上記の移動体の制御方法において、他移動体関連情報は、他の移動体の後方における移動体が進行を許可される範囲を示す進行許可限界位置情報を含んでいても良い。進行を許可するステップは、第1車上装置が、進行許可限界位置情報に基づいて、進行を許可される範囲で移動体の進行を決定するステップを備えていても良い。
【0027】
上記の車移動体の制御方法において、第1車上装置が、他移動体関連情報と駅関連情報とを無線LAN経由で取得するステップを更に具備していても良い。
【0028】
本発明により、装置などのスペースが削減できる。また、本発明により、導入コストも削減可能となる。更に、本発明により、機器の取り扱いが容易となる。更に、本発明により、列車が駅から出発するまでにかかる時間を短縮可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の前記及びその他の目的、長所及び特徴は、添付の図面を考慮して次の実施の形態(実施例)の記載によって、より詳細に分かるであろう。
図1図1は、従来の信号システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施の形態に係る信号システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施の形態に係る信号システムの構成例を示すブロック図である。
図4A図4Aは、第1の実施の形態に係る信号システムの車上装置の制御装置の構成例を示すブロック図である。
図4B図4Bは、第1の実施の形態に係る信号システムの駅I/F装置の制御装置の構成例を示すブロック図である。
図5A図5Aは、第1の実施の形態に係る信号システムの車上装置の記憶装置の構成を示すブロック図である。
図5B図5Bは、第1の実施の形態に係る信号システムの駅I/F装置の記憶装置の構成を示すブロック図である。
図5C図5Cは、第1の実施の形態に係る信号システムの運行管理装置の記憶装置の構成を示すブロック図である。
図6図6は、第1の実施の形態に係る信号システムを適用する路線の構成例を示す模式図である。
図7図7は、中間駅部での列車の駅間移動における列車間防護の場面を説明する模式図である。
図8図8は、列車の車上装置が他の装置と情報を授受する動作を示すフロー図である。
図9A図9Aは、中間駅部での列車の駅間移動における列車間防護の動作を示すフロー図である。
図9B図9Bは、列車の車上装置が駅I/F装置の分岐解除を行う動作を示すフロー図である。
図10図10は、第2の実施の形態に係る信号システムの制御装置の進路確保部の構成例を示すブロック図である。
図11図11は、第2の実施の形態に係る信号システムを適用する路線の状態を示す模式図である。
図12図12は、支障区間発生時での列車の駅間移動における列車間防護の場面を説明する模式図である。
図13図13は、支障の発生時の運行での列車の駅間移動における列車間防護の動作を示すフロー図である。
図14図14は、第3の実施の形態に係る信号システムを適用する路線の状態を示す模式図である。
図15図15は、終端駅部での列車の駅間移動における列車間防護の場面を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態に係る信号システムについて、添付図面を参照して説明する。
この信号システムは、従来の信号システムでは防護装置(連動装置、ATP地上装置、駅制御装置)が司っていた防護機能を、移動体(列車)の車上装置内に形を変えて設けている。その結果、その車上装置は、自律で進路確保を判定し、進行を決定する(自律で進路を確立し、自律で通行を許可する)など、自律で列車間防護を行うことができる。それにより、中央指令所における装置の負担の軽減、装置のスペースの削減、装置を導入するコストの削減、及び機器の取り扱いの容易化を実現する。以下、各実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
(第1の実施の形態)
1.構成
本発明の第1の実施の形態に係る信号システムの構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係る信号システムの構成を示すブロック図である。信号システム1は、中央指令所4、列車(群)2、駅3、及び線路50の各領域に分けられる。
【0032】
中央指令所4は、線区全体の列車2の運行状態を把握している。中央指令所4は、運行管理装置30を備えている。運行管理装置30は、汎用LAN60を介して、列車2(車上装置10)と駅3(駅インターフェース装置20)とに双方向通信可能に接続されている。運行管理装置30は、列車2に関する情報(例示:列車位置101)を列車2から受け取り、ホームドアや列車ドアや転轍機に関する情報(例示:扉状態106、転轍機転換位置104)を駅3から受け取り、表示装置(図示されず)に表示している。また、運行管理装置30は、列車2の運行モード105や列車ダイヤを設定して、列車2や駅3へ伝達する。運行モード105は、通常の運行を行う場合を示す通常モードや、軌道上に支障が発生した場合を示す支障モードに例示される。中央指令所4には、図1に示す運行管理装置230、ATP地上装置232、駅制御装置234、及び連動装置236のような機能を有する装置は配置されていない。
【0033】
列車2は、複数存在している。各列車2は、付近の列車2の運行状態を把握し、自身の運行を管理して、機能安全を実現する。列車2は、車上装置10を備えている。車上装置10は、汎用LAN60を介して、駅3(駅I/F装置20)に双方向通信可能に接続されている。車上装置10は、駅3を介して、転轍機の転換位置を示す転轍機転換位置104を確認し、必要に応じて転轍機を転換する転換制御102を行うことにより、列車2の進路の防護を司る。更に、車上装置10は、前後の列車2との間で通信を行うことにより、列車間の衝突防護を司る。更に、車上装置10は、駅3における列車ドアやホームドアの開閉する扉開閉制御103を行うことにより、列車ドアやホームドアの機能安全を司る。このように、車上装置10は、従来の信号システムにおける防護装置(連動装置、ATP地上装置、駅制御装置)が司っていた防護機能を形を変えて備えている。そのため、中央指令所4の装置のうち、連動装置、ATP地上装置、駅制御装置を削減することが可能となる。
【0034】
駅3は、複数存在している。各駅3は、ホームドア40の開閉や線路50の転轍機51の転換を行う。駅3は、駅I/F装置(駅インターフェース装置)20を備えている。駅I/F装置20は、車上装置10の制御に基づいて、ホームドア40の開閉を制御する。更に、駅I/F装置20は、車上装置10の制御に基づいて、その駅3の近傍における上り側及び下り側の線路50に複数存在する転轍機51の転換を制御する。更に、駅I/F装置20は、各列車2からの転轍機51への転換要求を管理する。要求が競合する場合、後の転換は受け付けない。
【0035】
図3は、本実施の形態に係る信号システムの構成例を示すブロック図である。中央指令所4の運行管理装置30は、指令所制御装置31と指令所記憶装置32と指令所通信装置33とを備えている。指令所制御装置31は、コンピュータに例示される情報処理装置であり、図示されていないCPU(Central Processing Unit)と記憶部と入力部と出力部とインターフェースとを備えている。指令所制御装置31は、運行管理装置30用の情報処理を実行する。指令所記憶装置32は、ハードディスクドライブやRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)に例示される記憶装置であり、指令所制御装置31で使用されるデータやソフトウェア、指令所制御装置31から出力されるデータやソフトウェアを格納する。指令所通信装置33は、汎用LAN60を介してデータ通信を行う無線LAN送受信装置である。指令所制御装置31から出力されるデータやソフトウェアを車上装置10や駅I/F装置20へ送信し、車上装置10や駅I/F装置20から送信されるデータやソフトウェアを受信して、指令所制御装置31へ出力する。
【0036】
汎用LAN60は、複数の基地局61を備えている。複数の基地局61は、中央指令所4や、各駅3や、線路50に沿った複数の箇所に配置されている。基地局61は、運行管理装置30、複数の車上装置10、及び複数の駅I/F装置20の間で、互いに情報の送受信が可能なように、無線通信を媒介する。なお、本実施の形態では、通信手段として無線LANを用いた例を示しているが、互いに情報の送受信が可能であれば他の通信手段を用いてもよい。
【0037】
列車2の車上装置10は、制御装置11と記憶装置12と通信装置13とを備えている。制御装置11は、コンピュータに例示される情報処理装置であり、図示されていないCPUと記憶部と入力部と出力部とインターフェースとを備えている。制御装置11は、車上装置10用の情報処理を実行する。記憶装置12は、ハードディスクドライブやRAMやROMに例示される記憶装置であり、制御装置11で使用されるデータやソフトウェア、制御装置11から出力されるデータやソフトウェアを格納する。通信装置13は、汎用LAN60を介してデータ通信を行う無線LAN送受信装置である。制御装置11から出力されるデータやソフトウェアを運行管理装置30や他の列車2の車上装置10や駅I/F装置20へ送信し、運行管理装置30や他の列車2の車上装置10や駅I/F装置20から送信されるデータやソフトウェアを受信して、制御装置11へ出力する。
【0038】
列車2は、更に回転数センサ18と受信器19とを備えている。回転数センサ18は、車輪の回転数及びその時間変化を検出し、制御装置11へ出力する。制御装置11は、回転数及びその時間変化に基づいて、列車2の位置及び速度を算出する。ただし、位置の算出は車輪の回転数を積算して行うため、スリップやタイヤ摩耗などの影響で、長距離になるほど誤差が出る可能性がある。そのため、線路50内に所定の間隔で地上子52(トランスポンダ)を設置し、地上子52の情報を受信するごとに位置を修正して、誤差の累積を防止している。
【0039】
駅3の駅I/F装置20は、駅制御装置21と駅記憶装置22と駅通信装置23とを備えている。駅制御装置21は、コンピュータに例示される情報処理装置であり、図示されていないCPUと記憶部と入力部と出力部とインターフェースとを備えている。駅I/F装置20は、駅I/F装置20用の情報処理を実行する。駅記憶装置22は、ハードディスクドライブやRAMやROMに例示される記憶装置であり、駅制御装置21で使用されるデータやソフトウェア、駅制御装置21から出力されるデータやソフトウェアを格納する。駅通信装置23は、汎用LAN60を介してデータ通信を行う無線LAN送受信装置である。駅制御装置21から出力されるデータやソフトウェアを運行管理装置30や車上装置10や他の駅3の駅I/F装置20へ送信し、運行管理装置30や車上装置10や他の駅3の駅I/F装置20から送信されるデータやソフトウェアを受信して、駅制御装置21へ出力する。
【0040】
駅3は、更にホームドア40を備えている。駅制御装置21は、ホームドア40の状態を検出すると共に、ホームドア40の開閉を制御する。駅制御装置21は、更に、駅3の近傍に配置された線路50の複数の転轍機51(複数の分岐)に接続されている。転轍機51は、線路53の分岐である。駅制御装置21は、複数の転轍機51の各々の状態を検出すると共に、複数の転轍機51の各々の転換を制御する。
【0041】
次に、車上装置10の制御装置11について更に説明する。
図4Aは、本実施の形態に係る信号システムの制御装置11の構成例を示すブロック図である。制御装置11において、CPUは、例えば記憶媒体からインターフェースを介してハードディスクドライブにインストールされたコンピュータプログラムをRAM(Random Access Memory)に展開する。そして、展開されたコンピュータプログラムを実行して、必要に応じて記憶部や入力部や出力部やインターフェースや記憶装置12や通信装置13のようなハードウエアを制御しながら、当該コンピュータプログラムの情報処理を実現する。記憶部や記憶装置12は、コンピュータプログラムを記録し、CPUが利用する情報や生成する情報を記録する。入力部は、ユーザや他の装置に操作されることにより生成される情報をCPUや記憶部に出力する。出力部は、CPUにより生成された情報や記憶部の情報をユーザや他の装置に認識可能に出力する。
【0042】
制御装置11は、付近の列車2の運行状態を把握し、自身の運行を管理して、機能安全を実現する制御を行う。制御装置11は、進路確保判定部70と、進行決定部80と、列車移動制御部90と、扉制御部120とを備えている。これら進路確保判定部70、進行決定部80、列車移動制御部90、及び扉制御部120は、コンピュータプログラムにより又はコンピュータプログラムとハードウエアとの協調により実現される。
【0043】
進路確保判定部70は、自身(列車2)の進路の防護を司る制御を行う。すなわち、駅関連情報(後述)と、他列車関連情報(後述)とに基づいて、進路の確保を判定する。具体的には、進路確保判定部70は、駅3を介して、転轍機51の転換位置を示す転轍機転換位置を確認し、必要に応じて転轍機51を転換する転換制御を行う。進路確保判定部70は、運行モード確認部71と、他列車状態確認部72と、駅状態確認部73と、進路確立部74とを備えている。運行モード確認部71は、運行モードを確認する。他列車状態確認部72は、他列車関連情報を取得して、他の列車2の状態を確認する。駅状態確認部73は、駅関連情報を取得して、駅の状態(例示:転轍機51の転轍機転換位置(分岐の状態))を確認する。進路確立部74は、必要に応じて転轍機51の転轍機転換位置を変換し、自身(列車2)の進路を確立(確保)する。
【0044】
進行決定部80は、列車2の間の衝突防護を司る制御を行う。すなわち、他移動体関連情報に基づいて、確保された進路について、移動体の進行を決定する。具体的には、進行決定部80は、付近の列車2との間で通信を行い、自身(列車2)が通行を許可される範囲を把握して、当該範囲での自身(列車2)の通行を許可する(自身(列車2)の進行を決定する)。進行決定部80は、進行許可限界位置確認部81を備えている。進行許可限界位置確認部81は、自身(列車2)の進行許可限界位置を確認する。ただし、進行許可限界位置は、対象となる列車2に対して進行(移動)が許可される限界の位置を示している(例示:基準点からの距離、先行する列車との距離)。
【0045】
列車移動制御部90は、列車2のダイヤや位置や通行許可制限位置に基づいて、列車2を移動(走行)させるための制御を行う。列車移動制御部90は、走行部91と速度プロファイル作成部94とダイヤ確認部95とを備えている。走行部91は、自身(列車2)を走行させる。ダイヤ確認部95は、自身(列車2)のダイヤを確認し、出発時刻に出発指令を発行する。速度プロファイル作成部94は、通行許可制限位置と対象となる列車2との距離とに基づいて、自身(列車2)が停車している当駅から、次の停車駅である次駅へ移動するときの、速度の上限値を示す制限速度プロファイルを作成する。
【0046】
扉制御部120は、駅3において、列車2のドアやホームドア40の開閉を制御することにより、列車2のドアやホームドアの機能安全を司る制御を行う。
【0047】
次に、駅I/F装置20の駅制御装置21について更に説明する。
図4Bは、本実施の形態に係る信号システムの駅制御装置21の構成例を示すブロック図である。駅制御装置21において、CPUは、例えば記憶媒体からインターフェースを介してハードディスクドライブにインストールされたコンピュータプログラムをRAMに展開する。そして、展開されたコンピュータプログラムを実行して、必要に応じて記憶部や入力部や出力部やインターフェースや駅記憶装置22や駅通信装置23のようなハードウエアを制御しながら、当該コンピュータプログラムの情報処理を実現する。記憶部や記憶装置12は、コンピュータプログラムを記録し、CPUが利用する情報や生成する情報を記録する。入力部は、ユーザや他の装置に操作されることにより生成される情報をCPUや記憶部に出力する。出力部は、CPUにより生成された情報や記憶部の情報をユーザや他の装置に認識可能に出力する。
【0048】
駅制御装置21は、ホームドア40の開閉や線路50の転轍機51の転換の制御を行う。駅制御装置21は、転轍機操作部25を備えている。転轍機操作部25は、コンピュータプログラムにより又はコンピュータプログラムとハードウエアとの協調により実現される。
【0049】
転轍機操作部25は、列車2からの駅関連情報問い合わせに対して、転轍機51の転換位置を示す転轍機転換位置情報を出力する。また、列車からの転轍機転換指令に基づいて、転轍機51の転換の可否を判断する。他の列車2の転轍機転換指令により転轍機51がロックされている場合、転轍機51の転換を拒否する。転轍機51のロックがされていない場合、転轍機51の転換を実行し、その転轍機転換指令を転轍機転換位置情報の一部として保持する(駅記憶装置22に記憶する)。転轍機転換指令が保持されている間は、当該転轍機51は転換を維持(ロック)される。その場合、転轍機操作部25は、発信元の列車2からの転轍機解除指令に基づいて、転轍機転換指令を消去する。それにより、転轍機51のロックが解除される。駅I/F装置20の駅制御装置21は、更に、例えばユーザの入力や他の駅3の駅I/F装置20からの連絡に基づいて、自身(駅3)と隣接する他の駅3との間に支障があるか否かを把握している。
【0050】
次に、記憶装置12、駅記憶装置22、及び指令所記憶装置32に記憶されている主な情報について説明する。
【0051】
図5Aは、本実施の形態に係る信号システムの車上装置10の記憶装置12の構成を示すブロック図である。記憶装置12は、少なくとも運行モード情報130とダイヤ情報131と駅関連情報132と列車関連情報133と基本情報134とを含んでいる。
【0052】
運行モード情報130は、その列車2がどのようなモードで運行するかを示す情報を含んでいる。運行モード情報130は、通常の運行を行う場合を示す通常モードや、軌道上に支障が発生した場合を示す支障モードに例示される(図2の運行モード105と同じである)。運行モード情報130は、運行管理装置30から供給され、路線上の全ての列車2において同じである。
【0053】
ダイヤ情報131は、自身(列車2)の列車ダイヤを示す情報を含んでいる。ダイヤ情報131は、運行管理装置30から供給され、列車2ごとに異なる。ただし、ダイヤ情報131は、自身(列車2)及びその周辺の列車2のダイヤだけ含んでいても良い。あるいは、ダイヤ情報は、運行間隔の情報であっても良い。
【0054】
駅関連情報132は、自身(列車2)が停止中の場合、自身(列車2)が停止している駅3(以下、駅3Aとも記す)である当駅に関連する情報と、次に停車予定である駅3(以下、駅3Bとも記す)である次駅に関連する情報と、前回停車した駅3(以下、駅3Cとも記す)である前駅に関する情報とを含んでいる。自身(列車2)が移動中の場合、自身(列車2)が出発した駅3である前駅に関連する情報と、次の駅3である次駅に関連する情報とを含んでいる。駅関連情報132は、適宜(例示:定期的に)更新され、列車2ごとに異なっている。駅関連情報132は、転轍機転換位置情報と、駅間区間状態情報とを含んでいる。転轍機転換位置情報は、対象となる駅3A、3B、3C(前駅、当駅、次駅)に属している複数の転轍機51の各々の転換位置を示しており、各転轍機51の転轍機指令情報(後述)を含んでいる。更に、転轍機51の施錠の有無を含んでいても良い。駅間区間状態情報は、対象となる駅3A、3B、3Cの駅間(例示:駅3Aと駅3Bとの間、駅3Aと駅3Cとの間)に支障があるか否かや、当該駅間に他の列車が在線していない(駅間在線クリア)か否かを示している。
【0055】
列車関連情報133は、自身(列車2、以下列車2Aとも記す)及びその周辺の他の列車2(以下、列車2Bとも記す)の移動(走行)及びそれに関連する情報を含んでいる。列車関連情報133は、適宜(例示:定期的に)更新され、列車2ごとに異なっている。列車関連情報133は、列車位置情報と、進行許可限界位置情報と、到着予定番線情報と、走行方向情報と、走行経路情報と、走行路線情報とを含んでいる。列車位置情報は、対象となる列車2(自身である列車2A及びその周辺の列車2B)の位置(例示:基準点からの距離)を示している。基準点は、始発駅の停止位置や、線路上に設けられる地上子の位置に例示される。進行許可限界位置情報は、対象となる列車2に対して進行(移動)が許可される限界の位置を示している(例示:基準点からの距離、先行する列車との距離)。到着予定番線情報は、対象となる列車2の次駅の到着予定番線を示している。走行方向情報は、対象となる列車2の走行方向(例示:上り方向、下り方向、分岐方向)を示している。走行経路情報は、対象となる列車2の走行経路を示している。走行路線情報は、対象となる列車2の走行路線(上り線、下り線)を示している。なお、到着予定番線情報と走行方向情報と走行経路情報と走行路線情報とは、列車2の走行の予定を示す走行予定情報ともいうことができる。列車関連情報133は、更に、運行モード情報と、進路要求時刻情報とを含んでいてもよい。運行モード情報は、対象となる列車2の運行モードを示している。進路要求時刻情報は、対象となる列車2が駅I/F装置20に対して進路要求(転轍機51の転換要求)を行った時刻を示している。
【0056】
基本情報134は、列車2や線路50などの基本構造に関する情報を含んでいる。路線上の列車2は、共通の基本情報134を保持している。ただし、車両特性は車両ごとに異なる場合があるので、自身の車両に関する車両特性として車両特性情報を各列車2が保持する。基本情報134は、線形構造情報と、駅停止位置情報と、支障時(分岐用)限界位置情報と、車両特性情報とを含んでいる。線形構造情報は、線路50の構造を示し、曲線状線路の位置や形状や距離、直線状の線路の位置や距離、線路の勾配、駅の位置、分岐の位置、複線の有無や、車両基地の位置などに例示される。駅停止位置情報は、各駅における停止位置を示している。分岐用限界位置情報は、線路50のうち分岐する線路での進行限界位置を示している。車両特性情報は、車両の構造特性や運動特性を示している。
【0057】
図5Bは、本実施の形態に係る信号システムの駅I/F装置20の構成を示すブロック図である。駅記憶装置22は、少なくとも駅中駅関連情報142を含んでいる。
【0058】
駅中駅関連情報142は、自身(駅3)に関連する情報を含んでいる。駅中駅関連情報142は、駅3ごとに異なっている。駅中駅関連情報142は、転轍機転換位置情報と、駅間区間状態情報とを含んでいる。転轍機転換位置情報は、自身(駅3)に属する複数の転轍機51の各々の転換位置を示しており、各転轍機51の転轍機指令情報を含んでいる。転轍機指令情報は、自身(駅3)に属する複数の転轍機51の各々に対する列車2からの転轍機転換指令を示している。転轍機転換指令は転轍機51の転換を指示する指令であり、発信元の列車2の情報と関連付けられて記憶される。転轍機転換指令が保持されている間は、当該転轍機51は転換を維持(ロック)する。発信元の列車2からの転轍機解除指令で転轍機転換指令が消去されると、転轍機51のロックが解除される。駅間区間状態情報は、自身(駅3)と隣接する他の駅3との間に支障があるか否かを示している。転轍機指令情報及び駅間区間状態情報は、車上装置10及び運行管理装置30へ送信され、駅関連情報132及び指令所指令所駅関連情報152として記憶される。
【0059】
図5Cは、本実施の形態に係る信号システムの運行管理装置30の指令所記憶装置32の構成を示すブロック図である。指令所記憶装置32は、少なくとも指令所運行モード情報150と指令所ダイヤ情報151と指令所駅関連情報152と指令所列車関連情報153と指令所基本情報154とを含んでいる。
【0060】
指令所運行モード情報150は、運行モード情報130と同じである。
【0061】
指令所ダイヤ情報151は、その路線の列車ダイヤを示す情報を含み、全ての列車2のダイヤを含んでいる。ダイヤ情報は、運行間隔の情報であっても良い。
【0062】
指令所駅関連情報152は、全ての駅3に関連する情報を含んでいる。指令所駅関連情報152は、全ての駅3から取得した駅中駅関連情報142の転轍機転換位置情報と駅間区間状態情報とを含んでいる。指令所駅関連情報152は、全ての駅3の駅I/F装置20から適宜取得する。
【0063】
指令所列車関連情報153は、全ての列車2の移動(走行)及びそれに関連する情報を含んでいる。指令所列車関連情報153は、全ての列車2から取得した列車関連情報133の列車位置情報と進行許可限界位置情報と到着予定番線情報と走行方向情報と走行経路情報と走行路線情報とを含んでいる。指令所列車関連情報153は、全ての列車2の車上装置10から適宜取得する。
【0064】
指令所基本情報154は、列車2や線路50などの基本構造に関する情報を含んでいる。指令所基本情報154は、基本情報134と同じである。
【0065】
2.動作
次に、本実施の形態に係る信号システムの動作について説明する。ここでは、信号システムの動作として、通常の運行(通常モード)での列車2の駅間移動における列車間防護について説明する。
【0066】
具体的な動作の説明の前に、信号システムを適用する路線の構成例について説明する。
図6は、本実施の形態に係る信号システムを適用する路線の構成例を示す模式図である。この路線は、線路50と駅3とを備えている。線路50は、線路53Dと、線路53Uと、渡り線53Mとを備えている。線路53Dは、軌道末端161間に設けられた下り線の線路である。線路53Uは、軌道末端161間に設けられた上り線の線路である。渡り線53Mは、駅3の近傍に設けられ線路53Dと線路53Uとをつなぐ線路である。駅3は、線路53Dと線路53Uとの間に、互いに間隔をおいて、複数個設けられている。この路線において、軌道末端161を含む駅3の領域を終端駅部160ともいい、終端駅部160以外の駅の領域を中間駅部170ともいう。信号システムでは、この路線の中間駅部170において、通常の運行のとき、上り線53U及び下り線53Dにおける列車2の進行方向が固定されていると見なす。以下では、このような路線での信号システムの動作について説明する。
【0067】
次に、図6の路線の構成例における列車間防護の場面について説明する。
図7は、中間駅部での列車の駅間移動における列車間防護の場面を説明する模式図である。この図では、中間駅部170において、駅間を移動する列車2Aに着目している。列車2Aは、下り線の線路53D上を移動するものとする。列車2Aが現在いる駅3を当駅3A、次に停車する駅3を次駅3B、列車2Aの前にいる列車2を列車2Bとする。当駅3Aで設備する転轍機51を、駅3Aに近い側から順に、線路53D側で転轍機51A1、51A2とし、線路53U側で転轍機51A3、51A4とする。次駅3Bで設備する転轍機51を、駅3Bに近い側から順に、線路53D側で転轍機51B1、51B2とし、線路53U側で転轍機51B3、51B4とする。
【0068】
上述のように、通常の運行のとき、中間駅部170では上り線53U及び下り線53Dにおける列車2の進行方向が固定されている。すなわち、各駅3の駅I/F装置20は、各駅3間の進路を一定方向に保持し、転轍機51の転轍機転換位置も一定方向に保持する。その進行方向は、運行モードとして表現される。この場合、通常モードである。運行管理装置30は、その運行モードを各駅I/F装置20経由で各列車2へ通知する。運行モードは、支障等の所定の事情の発生がなければ、原則として変更されることはない。すなわち、通常モードでは、中間駅部170において、列車2は単線(線路53D又は線路53U)内を移動し、渡り線53Mを用いて反対側の線路53に渡らないことが前提となる。言い換えると、上り線(線路53U)と下り線(線路53D)とは互いに独立している。したがって、中間駅部170では、通常モードの場合、列車2の列車間防護としては単線の中で先行する列車2との間隔防護だけを考えれば良い。ただし、列車2は駅間移動前に転轍機51の開通方向と駅間区間状態は確認する。
【0069】
なお、終端駅部160など別の線路に渡らなければならない場合(例示:折り返し時やモード切り替え時)、進路制御も必要となる。すなわち、前後の列車2の間だけでなく、他の情報伝達経路も必要となる。そのような場合については、後述の第2の実施の形態において説明される。
【0070】
次に、列車2の車上装置10が他の装置と情報(データ)を授受する方法について説明する。
図8は、列車の車上装置が他の装置と情報を授受する動作を示すフロー図である。列車2の車上装置10は、必要に応じて又は定期的に他の装置(他の複数の車上装置10、複数の駅I/F装置20、運行管理装置30)と情報(データ)を授受している。ここでは、図7の場合における列車2Aの車上装置10に着目している。
【0071】
運行管理装置30は、列車2Aの例えば出発時に、運行モード(通常モード)やダイヤを列車2Aの車上装置10へ送信する(ステップS1)。ただし、それらの情報は、駅I/F装置20経由で列車2Aの車上装置10へ送信してもよい(ステップS1−01/S1−02)。列車2Aの車上装置10は、それらの情報を記憶装置12に記憶する(ステップS2)。
【0072】
列車2Aの車上装置10(他列車状態確認部72)は、他の列車2Bの車上装置10へ列車関連情報を問い合わせる(ステップS3)。列車2Bの車上装置10は、それに応答して、列車2Bの列車関連情報を列車2Aの車上装置10へ送信する(ステップS4)。列車2Aの車上装置10(他列車状態確認部72)は、その情報を記憶装置12に記憶する(ステップS5)。列車関連情報は、進行許可限界位置情報、到着予定番線情報、走行方向情報、走行経路情報、走行路線情報、運行モード情報(、進路要求時刻情報、列車位置情報)を含んでいる。問い合わせ先の他の列車2は、この場合、列車間防護に関連する前方の列車2Bとなる。ただし、渡り線53Mからの進入が予測される動作モードでは、前方だけでなく、反対路線を含めた近傍(所定の距離以内)にいる列車2に問い合わせる。
【0073】
列車2Aの車上装置10(駅状態確認部73)は、駅3A及び駅3Bの駅I/F装置20へ駅関連情報を問い合わせる(ステップS6−1/S6−2)。駅3Aの駅I/F装置20は、それに応答して、転轍機51A1〜51A4へ転轍機転換位置を問い合わせる(ステップS7)。転轍機51A1〜51A4は、駅3Aの駅I/F装置20へ転轍機転換位置を返答する(ステップS9)。同様に、駅3Bの駅I/F装置20は、それに応答して、転轍機51B1〜51B4へ転轍機転換位置を問い合わせる(ステップS8)。転轍機51B1〜51B4は、駅3Bの駅I/F装置20へ転轍機転換位置を返答する(ステップS10)。駅3A及び駅3Bの駅I/F装置20は、駅3A及び駅3Bの駅関連情報を列車2Aの車上装置10へ送信する(ステップS11/S12)。列車2Aの車上装置10(駅状態確認部73)は、その情報を記憶装置12に記憶する(ステップS13)。駅関連情報は、転轍機転換位置情報、駅間区間状態情報を含んでいる。問い合わせ先の駅3は、この場合、列車間防護に関連する当駅3A及び次駅3Bとなる。なお、駅I/F装置20で転轍機転換位置情報を常に把握している場合には、ステップS7〜S10は省略できる。
【0074】
このように、列車2Aは、必要に応じて又は定期的に必要な情報を他の装置(他の複数の車上装置10、複数の駅I/F装置20、運行管理装置30)に問い合わせ、取得している。
【0075】
次に、中間駅部での列車の駅間移動における列車間防護について具体的に説明する。
図9Aは、中間駅部での列車の駅間移動における列車間防護の動作を示すフロー図である。列車2の車上装置10は、上述された他の装置との情報の授受に基づいて、自身で進路確保や進行許可を行う。ここでは、図7の場合における列車2Aの車上装置10に着目している。
【0076】
列車2Aの車上装置10(ダイヤ確認部95)は、記憶装置12のダイヤを読み、出発時刻を確認する(ステップS21)。そして、出発時刻が到来した場合、出発指令を発行する(ステップS22)。
【0077】
次に、列車2Aの車上装置10(運行モード確認部71)は、記憶装置12の運行モードを読み、運行モードが通常モードであることを確認する(ステップS23)。それにより、線路50上に支障が発生していないこと、及び、下り線の線路53D上の列車2Aの進路が線路53D上を次駅3Bへ向かう進路であることが確認できる。
【0078】
続いて、列車2Aの車上装置10(他列車状態確認部72)は、他の列車2(列車2B)の状態を確認する(ステップS24)。このステップは、例えば図8のステップS3〜S5のように実行することができる。それにより、列車2Bの列車関連情報P1(進行許可限界位置情報、到着予定番線情報、走行方向情報、走行経路情報、走行路線情報、運行モード情報)を取得する。運行モード情報により、列車2Bも通常モードであるか否かが確認できる。到着予定番線情報、走行方向情報、走行経路情報、走行路線情報により、列車2Bの次の移動先(駅3)が確認できる。進行許可限界位置情報により、自身(列車2A)の進行できる距離181(位置180)が確認できる。この列車関連情報P1は、中央指令所4を介することなく取得できる。
【0079】
次に、列車2Aの車上装置10(駅状態確認部73)は、駅3(駅3A、駅3B)の状態を確認する(ステップS25)。このステップは、例えば図8のステップS6−1/S6−2〜S13のように実行することができる。それにより、駅関連情報P2、P3(転轍機転換位置情報、駅間区間状態情報)を取得する。駅間区間状態情報により、駅間区間に支障があるか否かや、駅間在線クリアか否かが確認できる。転轍機転換位置情報により、列車2Aの進路にある転轍機51A1、51A2、51B2、51B1の転轍機転換位置が確保されているか否か確認できる。これらの駅関連情報P2、P3は、中央指令所4を介することなく取得できる。
【0080】
続いて、列車2Aの車上装置10(進路確立部74)は、駅関連情報P2、P3の転轍機転換位置情報に基づいて、駅間在線クリアを確認すると共に、列車2Aの進路が確保されているか否かを判断する(ステップS26)。すなわち、転轍機51A1、51A2、51B2、51B1の転轍機転換位置が、列車2Aによる当駅3Aから次駅3Bへの移動に問題ないか判断する。具体的には、列車2Aからの転轍機転換指令で、転轍機51が確保されロック(施錠)されているかを判断する。進路が確保されていない場合(ステップS26:No)、進路確立部74は、転換が必要な転轍機51(51A1、51A2、51B2、51B1)の属する駅3(駅3A、駅3B)の駅I/F装置20へ転轍機転換指令を出力する(ステップS27−1/S27−2)。
【0081】
駅I/F装置20(転轍機操作部25)は、転轍機転換指令を列車2Aに関連付けて駅記憶装置22に記憶する(ステップS28/S29)。そして、その転轍機転換指令に応答して、対象となる転轍機51(51A1、51A2、51B2、51B1)へ転轍機転換信号を出力する(ステップS30/S31)。対象となる転轍機51(51A1、51A2、51B2、51B1)は、転轍機転換信号に応答して、転轍機51を転換し(ステップS32/S33)、転換確認信号を駅I/F装置20へ出力する(ステップS34/S35)。駅I/F装置20(転轍機操作部25)は、転換確認信号に応答して、転轍機転換位置を列車2Aの車上装置10へ出力する(ステップS36/S37)。このとき、転轍機51は、転轍機転換指令が駅記憶装置22に記憶されていることで、駅I/F装置20(転轍機操作部25)にロック(施錠)されている。例えば、駅I/F装置20(転轍機操作部25)からの転轍機転換信号がハイレベルとなり、当該信号が継続的に出力される。施錠は列車2Aが通過して、列車2Aの車上装置10から転轍機解除指令を駅I/F装置20が受信して、駅I/F装置20が転轍機転換信号を消去するまでである。ただし、列車2Aの後続の列車からの転轍機転換指令を受けるまで、転轍機転換信号を消去しても、転轍機51の転換位置をそのまま動かさずに維持しても良い。
【0082】
車上装置10の進路確立部74は、転轍機転換位置に応答して、列車2Aの進路が確保されたか否かを判断する(ステップS26)。進路確立部74は、進路が確保されている場合(ステップS26:Yes)、プロセスはステップS38へ進む。これにより、列車2Aは、進路確保が完了する。
【0083】
なお、進路が確保されているか否か(転轍機51A1、51A2、51B2、51B1の転轍機転換位置が列車2Aによる次駅3Bへの移動に問題ないか否か)に関わらず、一度目は必ずステップS26:Noとして、ステップS27からS36を実行しても良い。すなわち、一度は必ず、進路上の転轍機51(の駅I/F装置20)へ転換及び保持(施錠)の指令(転轍機転換指令)を出力するとしても良い。それにより、より確実に進路を確保することができる。
【0084】
次に、列車2Aの車上装置10(進行許可限界位置確認部81)は、進行許可限界位置を確認する。すなわち、列車2Aの進行できる距離181(位置180)を確認する(ステップS38)。そして、その進行許可限界位置までの範囲において、自身(列車2A)の進行許可を発行する。進行の許可は、列車2Aと列車2Bとの間の範囲(例示:進行許可限界位置までの距離)で許可範囲が設定される。そのため、従来の閉塞区間などを設ける必要が無く、設備を簡略化することができる。
【0085】
続いて、列車2Aの車上装置10(速度プロファイル作成部94)は、進行許可限界位置に基づいて、速度プロファイル作成部94は、通行許可制限位置と対象となる列車2との距離とに基づいて、当駅3Aから次駅3Bへ移動するときの、速度の上限値を示す制限速度プロファイルを作成する(ステップS39)。その後、列車2Aの車上装置10(走行部91)は、制限速度プロファイルを参照しながら、記憶装置12の基本情報134(線形構造、車両特性など)に基づいて、列車2Aがダイヤ通りに次駅3Bまで移動するように、列車2Aの走行を開始する(ステップS40)。
【0086】
以上のようにして、中間駅部での列車の駅間移動における列車間防護が行われる。
【0087】
ここで、分岐(転轍機51)の施錠の解除について説明する。
図9Bは、列車の車上装置が駅I/F装置の分岐解除を行う動作を示すフロー図である。列車2Aは、自身が確保した進路を移動して、転轍機51を通過して行く。列車2Aの車上装置10(列車移動制御部90)は、自身の位置を確認する(S221)。そして、列車2Aが転轍機51を通過したか否かを判断する(ステップS222)。通過した場合(ステップS222:Yes)、車上装置10(列車移動制御部90)は、転轍機解除指令を発行し(ステップS223)、駅I/F装置20へ出力する(ステップS224−1/S224−2)。転轍機解除指令を受信した駅I/F装置20(転轍機操作部25)は、転轍機51へ転轍機解除信号を出力する、又は、転轍機転換指令信号をロウレベルにする(ステップS225/S226)。その結果、転轍機51のロック(施錠)が解除される(ステップS227/S228)。転轍機51はロック(施錠)の解除信号を駅I/F装置20へ出力する(ステップS229/S230)。駅I/F装置20(転轍機操作部25)は、記憶していた転轍機転換指令を消去し(ステップS231/S232)、消去確認情報を列車2Aの車上装置10へ出力する(ステップS233/S234)。
【0088】
本実施の形態では、列車2の車上装置10が、他の列車2から列車関連情報を受信し、駅3の駅I/F装置20から駅関連情報を受信し、必要に応じて追加的に駅I/F装置20と通信を行うことにより、通常モードでの列車防護を行うことができる。すなわち、車上装置10では、主に、進路確保判定部70が進路を確保(進路防護)し、進行決定部80が通行を許可(衝突防護)することができる。その結果、車上装置10に、列車間防護の機能を持たせることで、図1のようなATP地上装置232や駅制御装置234や連動装置236を中央指令所に設ける必要が無くなる。それにより、ATP地上装置232や駅制御装置234や連動装置236のような装置のスペースが削減できる。また、導入コストも削減可能となる。更に、機器の保守性が向上する。更に、車上装置主体で列車間防護するため、中央指令所の指令員は従来行われていた監視と制御の運用から監視主体の運用に変わるため、指令員の作業負荷、要求スキルの低減につながる。
【0089】
また、本実施の形態における分岐制御は、上記列車間防護でいえば、主に、ステップS23〜ステップS39と見なすことができる。その場合、本実施の形態における分岐制御では、車上装置10と駅I/F装置20の連携により着発制御、進路確立から進行許可迄の一連のシーケンスを実現することができる。これにより列車2が駅3から移動し始める迄の時間を短縮することができる。このように、車上装置10と駅I/F装置20で、分岐制御の機能を実現可能とすることができる。それにより、中央指令所の機器室スペース削減と、コスト削減に繋がる。更に、車上装置10と駅I/F装置20でシーケンス範囲が狭まるので、転轍機転換までのプロセス時間短縮に繋がる。すなわち、列車2が駅3から出発するまでの時間を短縮出来るので、輸送力強化に繋がる。
【0090】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る信号システムについて説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態で説明された構成を有する信号システムにおいて、支障の運行(支障モード)での列車2の駅間移動における列車間防護について説明する。以下では、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0091】
1.構成
車上装置10の制御装置11について説明する。
図10は、本実施の形態に係る信号システムの制御装置11の進路確保判定部70の構成例を示すブロック図である。進路確保判定部70は、図4Aの構成に加えて、更に、ルート決定部75と、待機位置移動部76とを備えている。ルート決定部75は、駅間の途中区間に支障が発生している場合、支障箇所を避けるルートを決定する。待機位置移動部76は、支障箇所を避けるルートを移動するとき、他の列車2とルートの一部が競合する場合、所定の待機位置まで自身(列車2)を移動させる。
【0092】
2.動作
次に、本実施の形態に係る信号システムの動作について説明する。ここでは、信号システムの動作として、支障の発生時の運行(支障モード)での列車2の駅間移動における列車間防護について説明する。
【0093】
具体的な動作の説明の前に、信号システムを適用する路線の状態について説明する。
図11は、本実施の形態に係る信号システムを適用する路線の状態を示す模式図である。この図は、図6における中間駅部170を示している。その中間駅部170では、駅3Aと駅3Bとの間の途中区間に支障が発生していることを示している。言い換えると、下り線の線路53D上に支障区間190が発生したことを示している。この場合、駅3Aの下り線の列車2Aは、駅3Bに移動するために、支障区間190を避ける経路Route_Aを取る必要がある。ここで、経路Route_Aは、下り線の線路53Dから渡り線53Mを通って上り線の線路53Uに入り、線路53Uを移動した後、他の渡り線53Mを通って線路53Dに戻るという経路である。一方、駅3Bの上り線の列車2Bは、上り線の線路53Uをそのまま進む経路Route_Bを移動しようとする。その場合、駅3Aの列車2Aは、駅3Bの列車2Bと、経路の一部が競合する。以下では、このような路線の状態での信号システムの動作について説明する。
【0094】
次に、図11の路線の状態(支障の発生時)における列車間防護の場面について説明する。
図12は、支障区間発生時での列車の駅間移動における列車間防護の場面を説明する模式図である。この図では、図7の場合と同様に、中間駅部170において、駅間を移動する列車2Aに着目している。駅3(3A、3B)や線路53(53U、53D)や転轍機51(51A1〜51A4、51B1〜51B4)については、図7の場合と同じである。駅3Aの列車2Aは、下り線の線路53D上をそのまま移動せず、支障区間190を避けるため、Route_Aを移動するものとする。駅3Bの列車2Bは、上り線の線路53Uをそのまま経路Route_Bで移動するものとする。
【0095】
上述のように、中間駅部170において、駅間の途中区間(支障区間190)に支障が発生しているとき、まず、運行管理装置30は、当駅3A及び次駅3Bに対して運行モードの変更を指示する。当駅3A、次駅3Bの駅I/F装置20は駅間在線がクリアされていることを確認した上で、駅3A、3Bに停車している列車2A、2Bに対して変更された運行モードを通知する。列車2A、2Bは、各々進路が経路Route_A及び経路Route_Bであることを認識する。列車2Aと列車2Bとは進路が対向しており、転轍機51A4と転轍機51B4との間の分岐間区間は要求進路が競合してしまう。したがって、列車2Aと列車2Bとは互いに進路を供給し合いながら競合を回避しなければならない。列車2Aは、出発前に次駅3Bに停車している列車2Bの状態及び経路Route_A上の転轍機51の転轍機位置状態を確認し、列車2Bが経路Route_B上の進路を獲得している場合、列車2Aは列車2Bに衝突しない地点(列車2Aの進行許可限界位置180A)まで進む。列車2Aは列車2Bが進行許可限界位置180Aを越えて当駅3A付近に近付いたタイミングを見計らい、経路Route_Aに沿って転轍機51の転轍機位置を転換する。逆に列車2Bに先行して列車2Aが経路Route_Aの進路を獲得している場合、列車2Bは、列車2Bの進行許可限界位置180Bを列車2Aが通過し終わるまで、当該位置手前で待つ。列車2A、2B共に進路獲得後も互いの状態と、獲得した進路上の転轍機転換位置を対向する列車2側の進行許可限界位置を通過し終わるまで監視を続ける。
【0096】
次に、支障の発生時の運行(支障モード;図11の路線の状態)での列車2の駅間移動における列車間防護について具体的に説明する。
図13は、支障の発生時の運行での列車の駅間移動における列車間防護の動作を示すフロー図である。列車2の車上装置10は、上述された他の装置(他の複数の車上装置10、複数の駅I/F装置20、運行管理装置30)との情報の授受に基づいて、自身で進路確保や進行許可を行う。ここでは、図12の場合における列車2Aの車上装置10に着目している。
【0097】
駅3A(又は駅3B)の駅I/F装置20は、ユーザの入力又はセンサの検知などにより駅3Aと駅3Bとの間に支障が発生した(支障区間190)と認識し、駅関連情報(駅間区間状態情報)として中央指令所4の運行管理装置30へ送信する(ステップS50)。
【0098】
運行管理装置30は、運転モードを通常モードから支障モード(支障区間190)に変更する。そして、変更された運転モード(支障モード:支障区間190)を全ての駅3の駅I/F装置20(駅3A/駅3Bを含む)へ伝達する(ステップS51−1/S51−2)。
【0099】
駅3Aの駅I/F装置20は、駅間在線クリアを確認して(ステップS52)、駅3Aに停車している列車2Aに、運転モードが支障モード(支障区間190)へ変更されたことを通知する(ステップS54)。同様に、駅3Bの駅I/F装置20は、駅間在線クリアを確認して(ステップS53)、駅3Bに停車している列車2Bに、運転モードが支障モード(支障区間190)へ変更されたことを通知する(ステップS55)。
【0100】
列車2Aの車上装置10(運行モード確認部71)は、受信された運行モードが支障モード(支障区間190)であることを確認すると共に、記憶装置12の運行モードに記憶する(ステップS56)。それにより、列車2Aの次の動作が、通常モードの動作(線路53D上を次駅3Bへ向かう進路)ではないことを認識する。同様に、列車2Bの車上装置10(運行モード確認部71)は、受信された運行モードが支障モード(支障区間190)であることを確認すると共に、記憶装置12の運行モードに記憶する(ステップS57)。それにより、列車2Bの動作が、通常モードの動作(線路53U上を次駅3Aへ向かう進路)ではないことを認識する。
【0101】
次に、列車2Aの車上装置10(ルート決定部75)は、支障区間190を避けて駅3Bへ到達するための最短の進路として経路Route_Aを算出する(ステップS58)。そして、駅3A及び駅3Bの駅I/F装置20へ、経路Route_Aに基づく進路確保の要求(転轍機転換指令)を出力し、その進路確保の要求時刻(進路要求時刻)を記憶する。同様に、列車2Bの車上装置10(ルート決定部75)は、支障区間190を避けて駅3Aへ到達するための最短の進路として経路Route_Bを算出する(ステップS59)。そして、駅3A及び駅3Bの駅I/F装置20へ、経路Route_Bに基づく進路確保の要求(転轍機転換指令)を出力し、その進路確保の要求時刻(進路要求時刻)を記憶する。このとき、駅3A及び駅3Bの駅I/F装置20は、進路要求時刻の早い方の転轍機転換指令を受け付け、図9AのステップS26〜ステップS37のようにして、転轍機51を転換し、転轍機51を施錠する。ただし、進路確保の要求時刻(進路要求時刻)は、列車2Aや列車2Bが送信した進路確保の要求を駅I/F装置20が受け取った時刻としてもよい。その場合、駅I/F装置20が進路要求の受付の有無に関わらず、必ず、進路確保の要求の受付時刻を列車2Aや列車2Bへ返信するものとする。
【0102】
続いて、列車2Aの車上装置10(他列車状態確認部72)は、他の列車2(列車2B)の状態を確認する(ステップS60)。このステップは、例えば図8のステップS3〜ステップS5のように実行することができる。それにより、列車2Bの列車関連情報P11(進行許可限界位置、到着予定番線、走行方向、走行経路、走行路線、運行モード、進路要求時刻)を取得する。運行モードにより、列車2Bも支障モードであるか否かが確認できる。到着予定番線、走行方向、走行経路、走行路線により、列車2Bの次の移動先(駅3A)が確認できる。進行許可限界位置により、列車2Aの進行できる位置180Aが確認できる。進路要求時刻により、列車2Bが駅3B及び駅3Aの駅I/F装置20に進路確保を要求した時刻が確認できる。
同様に、列車2Bの車上装置10(他列車状態確認部72)は、他の列車2(列車2A)の状態を確認する(ステップS61)。このステップは、例えば図8のステップS3〜ステップS5のように実行することができる。それにより、列車2Aの場合と同様にして、列車2Aの列車関連情報(進行許可限界位置、到着予定番線、走行方向、走行経路、走行路線、運行モード、進路要求時刻)を取得する。
【0103】
次に、列車2Aの車上装置10(駅状態確認部73)は、駅3(駅3A、駅3B)の状態を確認する(ステップS62)。このステップは、例えば図8のステップS6−1/S6−2〜ステップS12のように実行することができる。それにより、駅関連情報P12、P13(転轍機転換位置、駅間区間状態)を取得する。駅間区間状態により、駅間区間に支障があるか否かが確認できる。転轍機転換位置により、列車2Aの進路である経路Route_Aにある転轍機51A1、51A2、51A4、51B4、51B3、51B1の転轍機転換位置が確保されているか否か確認できる。
同様に、列車2Bの車上装置10(駅状態確認部73)は、駅3(駅3A、駅3B)の状態を確認する(ステップS63)。このステップは、例えば図8のステップS6−1/S6−2〜ステップS13のように実行することができる。それにより、列車2Aの場合と同様にして、駅関連情報(転轍機転換位置、駅間区間状態)を取得する。
【0104】
続いて、列車2Aの車上装置10(進路確立部74)は、駅関連情報P12、P13の転轍機転換位置に基づいて、列車2Aの進路が確保されているか否かを判断する(ステップS64)。すなわち、転轍機51A1、51A2、51A4、51B4、51B3、51B1の転轍機転換位置が、列車2Aによる当駅3Aから次駅3Bへの移動に問題ないか判断する。具体的には、列車2Aからの転轍機転換指令で、転轍機51が確保されロック(施錠)されているかを判断する。このとき、自身(列車2A)の進路要求時刻が、列車2Bの進路要求時刻よりも早いか否かも確認する。
【0105】
自身(列車2A)の進路要求時刻が列車2Bの進路要求時刻よりも遅く、列車2Aの進路が確保されていない場合(ステップS64:No)、列車2Aの車上装置10(待機位置移動部76)は、支障時の(分岐用の)進行許可限界位置180Aへ移動する。そして、列車2Bの移動が終了するまで待機する(ステップS66)。例えば、列車2Aの進路要求時刻が列車2Bの進路要求時刻よりも遅い場合、転轍機51は駅I/F装置20により既に施錠されているので、列車2Aは進路を確保できない。なお、施錠は、列車2Bが転轍機51を通過し、その列車2Bが転轍機解除指令を駅I/F装置20へ出力するまでである。駅I/F装置20は列車2Bからの転轍機解除指令の受信号に施錠を解除する。このように、進行許可限界位置180Aまで移動して待機することにより、安全を確保しつつ、列車2Aにおける駅3Bへの移動時間を短縮することができる。そして、待機位置移動部76は、列車2Bが進行許可限界位置180Aの前を通過し、列車2Aが線路53Uに進入しても問題が無くなったことを、列車2Bの列車関連情報で確認する(ステップS67)。
【0106】
なお、ステップS66において、列車2Aは、列車2Bが分岐を通過する時刻以前に、列車2Aが進行許可限界位置を通過しないよう速度パターンを生成してもよい。その場合、列車2Aは、進行許可限界位置180Aにおいて停止して待たず、その手前の進路上をゆっくり移動して行く。このような運転とすることで、待機のために車両を停止し、その後に再び車両のモータを駆動させる場合に比べ、車両の走行にかかる電力の効率がよくなる。
【0107】
その後、列車2Aの車上装置10(進路確立部74)は、転換が必要な転轍機51(51A1、51A2、51A4、51B4、51B3、51B1)の属する駅3(駅3A、駅3B)の駅I/F装置20へ転轍機転換指令を出力する(ステップS68−1/S68−2)。駅I/F装置20(転轍機操作部25)は、転轍機転換指令を列車2Aに関連付けて駅記憶装置22に記憶する(ステップS69/S70)。そして、その転轍機転換指令に応答して、対象となる転轍機51(51A1、51A2、51A4、51B4、51B3、51B1)へ転轍機転換信号を出力する(ステップS71/S72)。対象となる転轍機51(51A1、51A2、51A4、51B4、51B3、51B1)は、転轍機転換信号に応答して、転轍機51を転換し(ステップS73/S74)、転換確認信号を駅I/F装置20へ出力する(ステップS75/S76)。駅I/F装置20(転轍機操作部25)は、転換確認信号に応答して、転轍機転換位置を列車2Aの車上装置10へ出力する(ステップS77/S78)。このとき、転轍機51は、転轍機転換指令が駅記憶装置22に記憶されていることで、駅I/F装置20(転轍機操作部25)にロック(施錠)されている。なお、施錠は、列車2Aが転轍機51を通過し、その列車2Aが転轍機解除指令を駅I/F装置20へ出力するまでである。駅I/F装置20は列車2Aからの転轍機解除指令の受信号に施錠を解除する。進路確立部74は、転轍機転換位置に応答して、列車2Aの進路が確保されたか否かを判断する(ステップS64)。進路が確保されている場合(自身(列車2A)の進路要求時刻が列車2Bの進路要求時刻よりも早い場合も含む)(ステップS64:Yes)、プロセスはステップS79へ進む。これにより、列車2Aは、進路確保が完了する。
【0108】
なお、ステップS64において、自身(列車2A)の進路要求時刻が列車2Bの進路要求時刻よりも早い場合、進路が確保されているか否かに関わらず、一度目は必ずステップS68−1/68−2〜ステップS78のようなプロセスを実行してもよい(図示されず)。すなわち、一度は必ず、進路上の転轍機51(の駅I/F装置20)へ転換及び保持(施錠)の指令(転轍機転換指令)を出力するものとしてもよい。それにより、より確実に進路を確保することができる。
【0109】
同様に、列車2Bの車上装置10(進路確立部74)は、駅関連情報の転轍機転換位置に基づいて、列車2Bの進路が確保されているか否かを判断する(ステップS65)。以降のプロセスは、列車2Aの場合と同様(ステップS66〜ステップS78)である。ただし、列車2Bの場合、待機する場合には、支障時の(分岐用の)進行許可限界位置180Bで待機することになる。
【0110】
次に、列車2Aの車上装置10(進行許可限界位置確認部81)は、進行許可限界位置を確認する(ステップS79)。この段階では、進路要求時刻に関わらず、列車2Aは、列車2Bとの関係では進行許可限界位置は存在しない。しかし、駅3Bの下り線の線路53D状に他の列車2が存在した場合、この他の列車2に伴う進行許可限界位置が存在する。
【0111】
続いて、列車2Aの車上装置10(速度プロファイル作成部94)は、進行許可限界位置と対象となる列車2との距離とに基づいて、支障モードにおいて、列車2Aが現在位置から次駅3Bまで移動する際に従う制限速度プロファイルを作成する(図示されず)。その後、列車2Aの車上装置10(走行部91)は、制限速度プロファイルを参照しながら、基本情報134に基づいて、次駅3Bへ向けて列車2Aの走行を開始する(ステップS81)。
【0112】
同様に、列車2Bの車上装置10(進行許可限界位置確認部81)は、進行許可限界位置を確認する(ステップS80)。続いて、列車2Bの車上装置10(速度プロファイル作成部94)は、進行許可限界位置と対象となる列車2との距離とに基づいて、制限速度プロファイルを作成する(図示されず)。その後、列車2Bの車上装置10(走行部91)は、制限速度プロファイルを参照しながら、基本情報134に基づいて、次駅3Aへ向けて列車2Bの走行を開始する(ステップS82)。
【0113】
以上のようにして、支障の発生時の運行での列車の駅間移動における列車間防護が行われる。
【0114】
本実施の形態では、列車2の車上装置10が、他の列車2から列車関連情報を受信し、駅3の駅I/F装置20から駅関連情報を受信し、必要に応じて追加的に他の列車2や駅I/F装置20と通信を行うことにより、支障モードでの列車防護を行うことができる。すなわち、この場合にも、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0115】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る信号システムについて説明する。本実施の形態では、第2の実施の形態で説明された構成を有する信号システムにおいて、終端駅部における通常モードでの列車2の駅間移動における列車間防護について説明する。以下では、第2の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0116】
1.構成
構成については、第2の実施の形態に係る信号システムと同様である。
【0117】
2.動作
次に、本実施の形態に係る信号システムの動作について説明する。ここでは、信号システムの動作として、通常モードでの終端駅部での列車2の駅間移動における列車間防護について説明する。
【0118】
具体的な動作の説明の前に、信号システムを適用する路線の状態について説明する。
図14は、本実施の形態に係る信号システムを適用する路線の状態を示す模式図である。この図は、図6における終端駅部160を示している。その終端駅部160では、駅3Aが終点(始点)の駅3であり、駅3Aの先において、線路53D及び線路53Uに軌道末端161が設けられている。この場合、駅3Aの下り線の線路53D上の列車2Aは、折り返し運転をするべく、上り線の線路53U上に移動するために、経路Route_Cを取る必要がある。ここで、経路Route_Cは、下り線の線路53Dから渡り線53Mを通って上り線の線路53Uに入り、線路53Uを移動して軌道末端161に至るという経路である。一方、上り線の線路53Uの軌道末端161には、列車2Bが存在し、上り線の線路53Uをそのまま進む経路Route_Dを移動しようとする。その場合、駅3Aの下り線にいる列車2Aは、上り線にいる列車2Bと、経路の一部が競合する。以下では、このような路線の状態での信号システムの動作について説明する。
【0119】
次に、図14の路線の状態(通常モード(終端駅部)における列車間防護の場面について説明する。
図15は、終端駅部での列車の駅間移動における列車間防護の場面を説明する模式図である。この図では、終端駅部160において、駅3Aから軌道末端161へ向かう列車2Aに着目している。駅3Aの列車2Aは、下り線の線路53Dから上り線の線路53Uへ渡るRoute_Cを移動するものとする。軌道末端161の列車2Bは、上り線の線路53Uをそのまま経路Route_Dで駅3Aへ移動するものとする。当駅3Aで設備する転轍機51を、駅3Aに近い側から順に、線路53D側で転轍機51A1、51A2とし、線路53U側で転轍機51A3、51A4とする。列車2B、駅3Aから列車2Aに列車関連情報P21、駅関連情報P22が送信される。
【0120】
この場合の列車2A及び列車2Bの動作は、列車2Bが先に移動しなければならないこと(列車2Bに優先権あり)、及び、列車2Aが再び線路53Dへ渡らないこと(経路Route_C)以外は、第2の実施の形態と同様である。すなわち、第2の実施の形態において、図13の制御でいえば、ステップS64が必ずNoとなり、ステップS65が必ずYesとなる場合と考えることができる。そのことは、駅3Aが終端駅部160の駅3であること、及び運行モードが通常であることから判断される。
【0121】
このようにして、終端駅部160において、列車2は折り返し運転を行うことができる。
【0122】
この場合にも、第1、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0123】
本発明のプログラム、データ構造は、コンピュータ読取可能な記憶媒体に記録され、その記憶媒体から情報処理装置に読み込まれても良い。
【0124】
本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。
【0125】
本発明はいくつかの実施の形態と併せて上述されたが、これらの実施の形態は本発明を説明するために単に提供されたものであることは当業者にとって明らかであり、意義を限定するように添付のクレームを解釈するために頼ってはならない。
【0126】
上記の実施の形態や実施例の一部または全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限定されない。
【0127】
本発明の信号システムは、複数の車上装置と、複数の駅インターフェース装置と、複数の分岐とを具備している。複数の車上装置は、軌道上を移動する複数の移動体に設けられている。複数の駅インターフェース装置は、軌道の複数の駅に設けられている。複数の分岐は、軌道上に設けられ、複数の駅インターフェース装置に制御される。複数の移動体のうちの第1移動体の進路上にいる第2移動体の第2車上装置が、第2移動体に関する情報を示す他移動体関連情報を第1移動体の第1車上装置へ送信する。複数の駅インターフェース装置のうち、進路上の分岐を制御する第1駅インターフェース装置が、進路上の分岐に関する情報を示す駅関連情報を第1車上装置へ送信する。第1車上装置が、他移動体関連情報と駅関連情報とに基づいて、進路を確保するように、進路上の分岐の保持、又は、転換及び保持の指示を第1駅インターフェースへ出力する。第1駅インターフェースが、進路上の分岐を保持、又は、転換及び保持して、進路を確保する。第1車上装置が、他移動体関連情報に基づいて、確保された進路について、移動体の進行を決定する。
このような構成を有する本発明の信号システムでは、車上装置及び駅インターフェースが連携することで、分岐を的確に制御して、着発制御、進路確立から進行許可までの一連のシーケンスを実現することができる。これにより、列車2が駅3から移動し始めるまでの時間を短縮することができ、輸送力強化に繋がる。また、中央指令所を介さずに、車上装置と駅I/F装置で分岐制御の機能を実現できるので、処理が効率化されて、中央指令所の装置(ATP地上装置、駅制御装置、連動装置)を不要とすることができる。それにより、装置などのスペースが削減でき、設備コストを削減でき、機器の取り扱いが容易となる。
【0128】
上記の信号システムにおいて、第1車上装置は、第2車上装置に他移動体関連情報を問い合わせて、他移動体関連情報を取得してもよい。第1駅インターフェース装置に駅関連情報を問い合わせて、駅関連情報を取得してもよい。
このような構成を有する本発明の信号システムでは、車上装置が自ら他移動体関連情報を問い合わせて取得し、駅関連情報を問い合わせて取得することができる。すなわち、進路を確保(進路防護)するに際して必要な情報の問い合わせ及び取得をも、中央指令所を介さずに行うことができる。
【0129】
上記の信号システムにおいて、第1車上装置は、駅関連情報と他移動体関連情報とに基づいて、進路が確保されているか否かを確認し、進路が確保されていない場合、第1駅インターフェース装置に指示を出力してもよい。
このような構成を有する本発明の信号システムでは、中央指令所を介することなく、車上装置の指示により、確実に進路を確保(進路防護)することができる。
【0130】
上記の信号システムにおいて、他移動体関連情報は、第2移動体の後方における移動体が進行を許可される範囲を示す進行許可限界位置情報を含んでいてもよい、
第1車上装置は、進行許可限界位置情報に基づいて、進行を許可される範囲で第1移動体の進行を決定してもよい。
このような構成を有する本発明の信号システムでは、移動体の車上装置が他の移動体の後方における通行許可範囲内で移動体の進行を決定するので、他の移動体に衝突することはない。また、移動体と他の移動体との間の範囲(例示:距離)で許可範囲が設定されるので、従来の閉塞区間などを設ける必要が無く、設備を簡略化することができる。
【0131】
上記の信号システムにおいて、複数の車上装置と複数の駅インターフェース装置とを双方向通信可能に接続する無線LANを更に具備してもよい。第1車上装置は、他移動体関連情報と駅関連情報とをは、無線LAN経由で取得してもよい。
このような構成を有する本発明の信号システムは、他移動体関連情報や駅関連情報のような情報を無線LANによる通信で高速に送受信することができる。
【0132】
本発明は、信号システムを用いた移動体の制御方法である。その信号システムは、軌道上を移動する複数の移動体に設けられた複数の車上装置と、軌道の複数の駅に設けられた複数の駅インターフェース装置と、軌道上に設けられ、複数の駅インターフェース装置に制御される複数の分岐とを具備している。移動体の制御方法は、複数の移動体のうちの第1移動体の進路上にいる第2移動体の第2車上装置が、第2移動体に関する情報を示す他移動体関連情報を第1移動体の第1車上装置へ送信するステップと、複数の駅インターフェース装置のうち、進路上の分岐を制御する第1駅インターフェース装置が、進路上の分岐に関する情報を示す駅関連情報を第1車上装置へ送信するステップと、第1車上装置が、他移動体関連情報と駅関連情報とに基づいて、進路を確保するように、進路上の分岐の保持、又は、転換及び保持の指示を第1駅インターフェースへ出力するステップと、第1駅インターフェースが、進路上の分岐を保持、又は、転換及び保持して、進路を確保するステップと、第1車上装置が、他移動体関連情報に基づいて、確保された進路について、移動体の進行を決定するステップとを具備している。
このような構成を有する本発明の移動体の制御方法では、車上装置及び駅インターフェースが連携することで、分岐を的確に制御して、着発制御、進路確立から進行許可までの一連のシーケンスを実現することができる。これにより、列車2が駅3から移動し始めるまでの時間を短縮することができ、輸送力強化に繋がる。また、中央指令所を介さずに、車上装置と駅I/F装置で分岐制御の機能を実現できるので、処理が効率化されて、中央指令所の装置(ATP地上装置、駅制御装置、連動装置)を不要とすることができる。それにより、装置などのスペースが削減でき、設備コストを削減でき、機器の取り扱いが容易となる。
【0133】
上記の移動体の制御方法において、進路を確保するステップは、第1車上装置が、第2車上装置に他移動体関連情報を問い合わせて、他移動体関連情報を取得ステップと、第1車上装置が、第1駅インターフェース装置に駅関連情報を問い合わせて、駅関連情報を取得するステップとを含んでいても良い。
このような構成を有する本発明の移動体の制御方法では、車上装置が自ら他移動体関連情報を問い合わせて取得し、駅関連情報を問い合わせて取得することができる。すなわち、進路を確保(進路防護)するに際して必要な情報の問い合わせ及び取得をも、中央指令所を介さずに行うことができる。
【0134】
上記の移動体の制御方法において、指示を出力するステップは、車上装置が、駅関連情報と他移動体関連情報とに基づいて、進路が確保されているか否かを確認し、進路が確保されていない場合、第1駅インターフェース装置に指示を出力するステップを含んでいても良い。
このような構成を有する本発明の移動体の制御方法では、中央指令所を介することなく、車上装置の指示により、確実に進路を確保(進路防護)することができる。
【0135】
上記の移動体の制御方法において、他移動体関連情報は、他の移動体の後方における移動体が進行を許可される範囲を示す進行許可限界位置情報を含んでいても良い。進行を決定するステップは、第1車上装置が、進行許可限界位置情報に基づいて、進行を許可される範囲で移動体の進行を決定するステップを備えていても良い。
このような構成を有する本発明の移動体の制御方法では、移動体の車上装置が他の移動体の後方における通行許可範囲内で移動体の進行を決定するので、他の移動体に衝突することはない。また、移動体と他の移動体との間の範囲(例示:距離)で許可範囲が設定されるので、従来の閉塞区間などを設ける必要が無く、設備を簡略化することができる。
【0136】
上記の車移動体の制御方法において、第1車上装置が、他移動体関連情報と駅関連情報とを無線LAN経由で取得するステップを更に具備していても良い。
このような構成を有する本発明の移動体の制御方法は、他移動体関連情報や駅関連情報のような情報を無線LANによる通信で高速に送受信することができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15