特許第6208219号(P6208219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208219真空ポンプ装置のウォーミングアップ方法およびウォーミングアップ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208219
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】真空ポンプ装置のウォーミングアップ方法およびウォーミングアップ装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/16 20060101AFI20170925BHJP
   F04C 25/02 20060101ALI20170925BHJP
   F04D 19/04 20060101ALI20170925BHJP
   F04D 27/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F04B37/16 A
   F04B37/16 D
   F04C25/02 B
   F04D19/04 H
   F04D27/00 N
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-509479(P2015-509479)
(86)(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公表番号】特表2015-516044(P2015-516044A)
(43)【公表日】2015年6月4日
(86)【国際出願番号】GB2013051033
(87)【国際公開番号】WO2013164571
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2016年3月17日
(31)【優先権主張番号】1207721.0
(32)【優先日】2012年5月2日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】タッターソール ジャック レイモンド
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−324644(JP,A)
【文献】 特開2005−120955(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/001230(WO,A1)
【文献】 米国特許第04699570(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/16
F04C 25/02
F04D 19/04
F04D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブースタポンプと、プロセスチャンバを真空引きするための、ブースタポンプの下流側のバッキングポンプとを有する真空ポンプ装置をウォーミングアップする方法において、
ブースタポンプがアイドルモードにあるときのブースタポンプのアイドル速度より速い第1速度にブースタポンプを設定する工程と、
真空ポンプ装置がアイドルモードから付勢されるときから、ブースタポンプが第1所定閾値に等しいかまたはこれを超える温度に到達するときまでの少なくとも一定時間、ブースタポンプの出口でのバッキング圧力を0.1ミリバールから10ミリバールの範囲内に制御する工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記バッキング圧力を制御する工程は、入口がブースタポンプの出口に連結されたバッキングポンプの速度を調節することからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バッキングポンプは、真空ポンプ装置がアイドルモードから付勢されたときに、第2速度に設定されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記バッキングポンプの第2速度は、ブースタポンプのバッキング圧力が0.1ミリバールから10ミリバールの範囲内に入るようにするため、所定レベルに低下されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第2速度は、多数の時間間隔に亘って増分的に所定レベルまで低下されることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記バッキング圧力を制御する工程は、ブースタポンプの出口でパージガスを注入することからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記パージガスの流量は、ブースタポンプのバッキング圧力が0.1ミリバールから10ミリバールの範囲内に調節されるように制御されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記真空ポンプ装置は、ブースタポンプの温度が第1所定閾値に等しいかまたはこれを超え、かつバッキングポンプの温度が第2所定閾値に等しいかまたはこれを超えるときに、通常作動モードにあるプロセスチャンバを真空引きする準備をするように設定され、この場合、第1所定閾値と第2所定閾値とは同じでもよいし、同じでなくてもよいことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
プロセスチャンバと、
該プロセスチャンバの出口に流体的に連結された入口を備えたブースタポンプと、
該ブースタポンプの出口に流体的に連結された入口を備えたバッキングポンプであって、ブースタポンプと協働してプロセスチャンバの真空引きを行うバッキングポンプと、
ブースタポンプおよびバッキングポンプに電気的に接続されたコントローラとを有し、該コントローラは、ブースタポンプおよびバッキングポンプがアイドルモードから付勢されるときから、ブースタポンプが第1所定閾値に等しいかまたはこれを超える温度に到達するときまでの少なくとも一定時間、ブースタポンプの出口でのバッキング圧力を0.1ミリバールから10ミリバールの範囲内に制御するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
前記コントローラは、バッキングポンプの速度を調節することによりブースタポンプのバッキング圧力を制御することを特徴とする請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記コントローラは、真空ポンプ装置がアイドルモードから付勢されたとき、バッキングポンプを所定速度に設定することを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記コントローラは、バッキングポンプの所定速度を所定レベルに低下させ、ブースタポンプのバッキング圧力を0.1ミリバールから10ミリバールの範囲内に下降させることを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記コントローラは、前記所定速度を、多数の時間間隔に亘って増分的に所定レベルまで低下させることを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記ブースタポンプの出口に流体的に連結されたパージガス源を更に有することを特徴とする請求項9記載の装置。
【請求項15】
前記コントローラは、ブースタポンプの出口で注入されるパージガスの流量を制御して、ブースタポンプのバッキング圧力を0.1ミリバールから10ミリバールの範囲内に制御することを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記ブースタポンプおよびバッキングポンプは、ブースタポンプの温度が第1所定閾値に等しいかまたはこれを超え、かつバッキングポンプの温度が第2所定閾値に等しいかまたはこれを超えるときに、通常作動モードにあるプロセスチャンバを真空引きする準備をするように設定され、この場合、第1所定閾値と第2所定閾値とは同じでもよいし、同じでなくてもよいことを特徴とする請求項9記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ装置がアイドルモードに移行した後に真空ポンプ装置をウォーミングアップする方法および/またはウォーミングアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造に使用されるシステムは、数ある中で一般に、プロセスツールと、ブースタポンプおよびバッキングポンプを備えた真空ポンプ装置と、除害装置(abatement device)を有している。一般に、プロセスツールはプロセスチャンバを有し、該プロセスチャンバ内では、半導体ウェーハが所定構造に加工される。真空ポンプ装置はプロセスツールに連結され、種々の半導体加工技術を遂行できるように、プロセスチャンバを真空引きしてプロセスチャンバ内に真空環境を創出する。真空ポンプ装置によりプロセスチャンバから真空引きされたガスは、大気環境に放出される前に、ガス流の有害成分または毒性成分を破壊しまたは分解する除害装置に導かれなくてはならない。
【0003】
半導体の製造工程で真空ポンプおよび除害装置により使用される電力、燃料および水等の公共資源(utilities)を管理しかつ低減させることが要望されている。真空ポンプおよび除害装置により消費される動力は、半導体ウェーハの製造におけるシステム全体により消費される全動力の大きな割合を占める。半導体ウェーハの製造コストを低減させるため、半導体工業では、真空ポンプの公共資源の消費効率を改善する多くの努力がなされている。半導体製造業者には、しばしば、新しい環境規制により、コスト節約に加え製造工程のエネルギ効率を改善するように圧力が加えられている。
【0004】
効率を改善する1つの従来方法は、真空ポンプ装置および除害装置がこれらの通常能力で作動することをプロセスツールが必要としない場合には、真空ポンプ装置および除害装置をアイドルモードにすることである。本明細書での用語「アイドルモード」は、種々の産業でしばしば習慣的に使用される他の用語、例えばスリーブモード、グリーンモード、休眠モード、省/低パワーモードおよびアクティブユーティリティ制御モード等と互換的に使用される。例えば半導体ウェーハがプロセスチャンバ内に搬送される場合またはプロセスチャンバから取出される場合には、真空ポンプ装置および除害装置は、これらが通常作動モードで作動するよりも少ない資源を消費するアイドルモードにしなければならない。真空ポンプ装置および除害装置が通常能力で作動することをプロセスツールが必要とする場合には、真空ポンプ装置および除害装置はアイドルモードから通常作動モードに戻ることができる。
【0005】
従来方法の1つの欠点は、通常、真空ポンプ装置および除害装置をアイドルモードから通常作動モードに戻すのに長時間を要することである。真空ポンプ装置がアイドルモードにあるとき、真空ポンプ装置は低温に冷えてしまう。したがって、真空ポンプ装置は、通常条件で作動される前に、或る温度にウォーミングアップされる必要がある。ウォーミングアップ時間が長いほど、プロセスツールが、真空ポンプ装置の準備が整うまで待機してアイドル状態に留まる時間が長くなる。このため、生産性が損なわれ、生産量が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、真空ポンプ装置をアイドルモードから迅速にウォーミングアップして、加工システムをアイドルモードから通常作動モードに移行させるのに要する時間を短縮する方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、真空ポンプ装置がアイドルモードに移行した後に、真空ポンプ装置をウォーミングアップする方法および装置に関する。本発明の或る実施形態では、ブースタポンプと、プロセスチャンバを真空引きするための、ブースタポンプの下流側のバッキングポンプとを有する真空ポンプ装置をウォーミングアップする方法は、ブースタポンプがアイドルモードにあるときのブースタポンプのアイドル速度より速い第1速度にブースタポンプを設定する工程と、真空ポンプ装置がアイドルモードから付勢されるときから、ブースタポンプが第1所定閾値に等しいかまたはこれを超える温度に到達するときまでの少なくとも一定時間、ブースタポンプの出口でのバッキング圧力を0.1ミリバールから10ミリバールの範囲内に制御する工程とを有している。
【0008】
本発明の或る実施形態では、装置は、プロセスチャンバと、該プロセスチャンバの出口に流体的に連結された入口を備えたブースタポンプと、該ブースタポンプの出口に流体的に連結された入口を備えたバッキングポンプであって、ブースタポンプと協働してプロセスチャンバの真空引きを行うバッキングポンプと、ブースタポンプおよびバッキングポンプに電気的に接続されたコントローラとを有し、該コントローラは、ブースタポンプおよびバッキングポンプがアイドルモードから付勢されるときから、ブースタポンプが第1所定閾値に等しいかまたはこれを超える温度に到達するときまでの少なくとも一定時間、ブースタポンプの出口でのバッキング圧力を0.1ミリバールから10ミリバールの範囲内に制御するように構成されている。
【0009】
本発明の構造および作動方法は、添付図面に関連して特定実施形態についての以下の説明を読むことにより、本発明の付加目的および長所とともに最も良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の或る実施形態にしたがって、数ある中でプロセスチャンバ、ブースタポンプおよびバッキングポンプが直列に連結されているシステムを示す概略図である。
図2A】本発明の或る実施形態にしたがって真空ポンプ装置をウォーミングアップする一方法を示すフローチャートである。
図2B】本発明の或る実施形態にしたがって真空ポンプ装置をウォーミングアップする一方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の或る実施形態にしたがって真空ポンプ装置をウォーミングアップする一方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の方法および/または装置が、真空ポンプ装置をウォーミングアップするのに要する時間を短縮することを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、真空ポンプ装置がアイドルモードに移行した後に、真空ポンプ装置をウォーミングアップする方法および/または装置に関する。簡単化した構成の真空ポンプ装置は、ブースタポンプと、この下流側のバッキングポンプとを有している。ブースタポンプの入口はプロセスチャンバの出口に連結されている。プロセスチャンバは、半導体プロセスツールの一部、または適正に機能すべく内部真空環境を必要とする他の設備で構成できる。ブースタポンプの出口はバッキングポンプの入口に連結されており、バッキングポンプの出口は一般に除害装置と流体連通するか、或る場合には大気環境と直接連通する。真空ポンプ装置がウォーミングアップされると、ブースタポンプの速度が上昇され、かつブースタポンプがアイドルモードにあったときのブースタポンプのアイドル速度より高いレベルに維持される。通常作動モードまたは或る場合には従来の方法で用いられるアイドルモードで、ブースタポンプのバッキング圧力(ブースタポンプの出口圧力)も上昇され、バッキング圧力と比べて比較的高い圧力に維持される。この結果、ウォーミングアップ期間中にブースタポンプを通るガスを圧縮するのに要する動力は増大され、したがってブースタポンプの温度はより急速に上昇されてしまう。一般にブースタポンプは、完全にウォーミングアップするのにバッキングポンプより長時間を要するので、本発明の方法および/または装置は、真空ポンプ装置全体をアイドルモードからウォーミングアップするのに要する時間を短縮できる。これにより、プロセスツールの生産量が増大される。
【0012】
図1はシステム10の概略図であり、数ある中で、プロセスチャンバ12および真空ポンプ装置20は、本発明の或る実施形態にしたがって直列に連結されている。真空ポンプ装置20は、プロセスチャンバ12からガスを吸引してプロセスチャンバ12内に真空環境を創出し、蒸着、エッチング、イオン注入、エピタキシー等の或る加工を行う。ガスは、図1に参照番号14a、14bで示す1つ以上のガス源からプロセスチャンバ12内に導入される。ガス源14a、14bは、それぞれ制御弁16a、16bを介してプロセスチャンバ12に連結されている。プロセスチャンバ12内に種々のガスを導入するタイミングは、制御弁16a、16bを選択的に回転してオンまたはオフすることにより制御できる。ガス源14a、14bからプロセスチャンバ12内に導入されるガスの流量は、制御弁12a、12bの流体コンダクタンスを調節することにより制御できる。
【0013】
真空ポンプ装置20は、直列に連結されたブースタポンプ22およびバッキングポンプ24を有している。ブースタポンプ22の入口はプロセスチャンバ12の出口に連結されており、ブースタポンプ22の出口はバッキングポンプ24の入口に連結されている。バッキングポンプ24の出口は除害装置(図示せず)に連結され、該除害装置では、バッキングポンプ24から排出された排ガスが環境に与える有害な作用を低減させるべく、排ガスが処理される。真空ポンプ装置20には、ブースタポンプ22およびバッキングポンプ24の温度、動力消費、ポンプ速度等の種々の測定データを収集するセンサ(図示せず)を設けることができる。また、ガス圧力を測定するセンサを、ブースタポンプ22および/またはバッキングポンプ24の入口および/または出口に設けることができる。コントローラ30は、センサにより収集されたデータに応答してブースタポンプ22およびバッキングポンプ24の種々のパラメータを制御するように構成されている。例えば、コントローラ30は、プロセスチャンバ12内で行うべき即時プロセスが全く予期されていないことを表示する信号を受けたとき、ブースタポンプ22およびバッキングポンプ24を、低公共資源消費状態(例えばアイドルモード)に移行させることができる。このような信号は、プロセスチャンバ12または該プロセスチャンバ12に組込まれたプロセスツールにより直接コントローラ30に伝送される。或いは、信号は、半導体製造工場の中央制御ユニットによりコントローラ30に伝送される。
【0014】
ウェイクアップ信号を受けると、コントローラ30は、真空ポンプ装置20への電力供給を増大させかつブースタポンプ22およびバッキングポンプ24の速度をそれぞれのアイドル速度からより高いレベルに上昇させる。コントローラ30は、少なくとも真空ポンプ装置20がアイドルモードから起動され、ブースタポンプ22が所定の閾値に等しいかこれを超える温度に到達するときまでの時間、ブースタポンプ22の出口のバッキング圧力を制御し、上昇させかつ少なくとも一定時間0.1ミリバールから10ミリバールの範囲内に維持する。これは、ブースタポンプ22を通常状態で作動させるのに必要である。本明細書で開示する圧力範囲は、従来の一般的なウォーミングアップ工程におけるブースタポンプのバッキング圧力より高い。
【0015】
ブースタポンプ22の圧縮動力(W)は、数学的に、その排出体積(V)と、この排出体積を横切る圧力差(dP)との積に等しい。ブースタポンプ22の排出体積が一定であると仮定すると、バッキング圧力を上昇させることによる圧力差の上昇は、ブースタポンプ22を通るガスを圧縮するのに、より大きい動力が必要になり、この結果、より多量の熱を発生する。これによりブースタポンプ22の温度は、ブースタポンプ22がアイドルモードにあるときの温度から、通常のポンプ作動に適した所定閾値まで非常に急速に到達される。
【0016】
本発明の或る実施形態では、ブースタポンプ22のバッキング圧力は、バッキングポンプ24の速度を調節することにより制御される。バッキングポンプ24の速度が低いほど、ブースタポンプ22のバッキング圧力は高くなる。図2Aには、ブースタポンプ22のバッキング圧力を制御する例示工程が示されている。この工程はステップ200からスタートする。ステップ202では、真空ポンプ装置20をアイドルモードから目覚めさせる信号(ウェイクアップ信号)を真空ポンプ装置20が受けたか否かが判定される。真空ポンプ装置20がこのような信号を受けていないと判定された場合には、真空ポンプ装置20はアイドルモードに留められる。真空ポンプ装置20がこのような信号を受けていると判定された場合には、ステップ204に進み、ブースタポンプ22の速度がそのアイドル速度より高い第1速度に設定される。ステップ206では、バッキングポンプ24の速度がアイドル速度より高い第2速度に設定される。図2Aでは、ステップ204および206は2つの別々の作動として示されているが、本発明の或る実施形態では、ブースタポンプ22およびバッキングポンプ24の速度は同時に設定できることに留意されたい。
【0017】
ステップ208では、ブースタポンプ22のバッキング圧力が0.1ミリバ−ルから10ミリバールの所定範囲内にあるか否かが判定される。バッキング圧力が所定範囲内にない場合にはステップ210に進み、バッキングポンプ24の速度を低下させ、ブースタポンプ22のバッキング圧力を迅速に所定圧力内に降下させる。本発明の或る実施形態では、バッキングポンプ24の速度を一度低下させ、ブースタポンプ22のバッキング圧力が所定範囲内に移行するまで行程を待機させる。本発明の他の実施形態では、ブースタポンプ22のバッキング圧力が所定範囲内に移行するまで、バッキングポンプ24の速度を多数の時間間隔に亘って増分的に低下させる。本発明の更に別の実施形態では、ステップ206で、ブースタポンプ22のバッキング圧力が急速に上昇するようにバッキングポンプ24の第2速度を充分に低く設定し、同時にステップ210を省略する。これらの全ての実施形態は本発明の範囲内にある。
【0018】
ブースタポンプ22のバッキング圧力が所定範囲内にあると判定された場合には、工程はステップ212へと進む。ステップ212では、ブースタポンプ22およびバッキングポンプ24の温度がそれぞれの閾温度に等しいかまたはこれを超えるか否かが判定される。ブースタポンプ22およびバッキングポンプ24の温度がそれぞれの閾温度に等しいかまたはこれを超える場合には、真空ポンプ装置20は、通常作動モードにあるプロセスチャンバ12を真空引きする準備をするように設定される。それまで真空ポンプ装置20はウォーミングアップ工程に留まり、温度が適正レベルに上昇するのを待機する。ブースタポンプ22およびバッキングポンプ24の所定の閾温度の値は同じであっても、異なっていてもよい。その後、ステップ214でこの工程は終了する。
【0019】
本発明の或る実施形態では、ブースタポンプ22のバッキング圧力は、バッキング圧力を直接測定することなく、ポンプ速度を調節しかつブースタポンプ22の温度を閾温度と比較することにより制御される。図2Bは、ブースタポンプ22のバッキング圧力を直接測定することなく制御する例示工程を示すフローチャートである。図2Bの工程は図2Aの工程と同様であるが、ブースタポンプ22のバッキング圧力を測定しない点で異なっている。ステップ248では、ブースタポンプ22の温度が測定されかつこの閾温度と比較される。測定された温度が閾温度より低い場合には、ステップ250でバッキングポンプ24の速度が増大される。ブースタポンプ22の測定温度が閾温度に等しくなるかこれを超えるまで、ステップ248およびステップ250が周期的に反復される。その後、工程はステップ252へと進み、バッキングポンプ24の温度がバッキングポンプ24の閾値に等しいかまたはこれを超えるか否かが判定される。バッキングポンプ24の温度がバッキングポンプ24の閾値に等しいかまたはこれを超える場合には、真空ポンプ装置20は、通常作動モードにあるプロセスチャンバ12を真空引きする準備をするように設定される。真空ポンプ装置20は、これまでウォーミングアップ工程に留まっており、温度が適正レベルに上昇するのを待機する。その後、この工程はステップ254で終了する。
【0020】
本発明の他の或る実施形態では、ブースタポンプ22のバッキング圧力は、ブースタポンプ22の出口、またはブースタポンプ22とバッキングポンプ24との間の導管の位置でパージガスを注入することにより上昇される。図1に示すように、パージガス源32および制御弁34を任意に設けることができる。制御弁34は、パージガス源32と、ブースタポンプ22とバッキングポンプ24との間の導管との間に配置できる。コントローラ30は、制御弁34のコンダクタンスを調節して、パージガス源32から、ブースタポンプ22の出口または下流側の近くへのパージガスの流量を制御できるように構成される。これにより、ブースタポンプ22の出口でのバッキング圧力を変化できる。パージガスとしては、安定していて、真空ポンプ装置20を通って流れるプロセスガスとは反応しないガスを選択するのが有利である。パージガスの例としては、窒素、ヘリウムおよび他の不活性ガスがある。
【0021】
図3は、本発明の或る実施形態にしたがって真空ポンプ装置20をアイドルモードからウォーミングアップする工程を示す。図3に示す工程は図2の工程と同様であるが、図2の工程では、バッキングポンプ24の速度を調節することによりブースタポンプ22のバッキング圧力が制御されかつ維持されるが、図3に示す工程ではステップ300に示すようにブースタポンプ22のバッキング圧力が、ブースタポンプ22の出口でパージガスを注入することにより制御されかつ維持される点で異なっている。ステップ302では、ブースタポンプ22のバッキング圧力が所定範囲内にあるか否かが判定される。ブースタポンプ22のバッキング圧力が所定範囲内にない場合には、コントローラ30は制御弁34のコンダクタンスを増大させて、ブースタポンプ22のバッキング圧力が所定範囲内に移行するまでパージガスの流量を増大させる。図2の工程と同様に、ステップ300で、パージガスの流量を、多数の時間間隔に亘って増分的にまたは急激に所定レベルまで直ちに調節できる。ブースタポンプ22のバッキング圧力が所定範囲内にあると判定された場合には、工程はステップ304へと進む。
【0022】
ステップ304では、ブースタポンプ22の温度が所定の閾温度に等しいかまたはこれを超えているかが判定される。ブースタポンプ22の温度が所定の閾温度に等しいかまたはこれを超えていない場合には、工程は所定の閾温度に等しくなるかまたはこれを超えるまで待機し、次にステップ306に進んでパージガスの流れを遮断する。ステップ308では、バッキングポンプ24の温度が所定の閾温度に等しいかこれを超えているかが判定される。バッキングポンプ24の温度が所定の閾温度に等しいかこれを超えていない場合には、工程は、バッキングポンプ24の温度が所定の閾温度に等しいかこれを超えるまで待機し、次にステップ310で工程を終了する。図2の工程と同様に、ブースタポンプの温度とバッキングポンプの温度とは同じでもよいし、同じでなくてもよい。
【0023】
図4は、本発明の方法および/または装置が、真空ポンプ装置がアイドルモードに移行された後に真空ポンプ装置をウォーミングアップするのに要する時間を短縮できることを示すグラフである。図面の左側は、従来の方法または装置により真空ポンプ装置をウォーミングアップする時間ラインを示し、図面の右側は、本発明の方法または装置により真空ポンプ装置をウォーミングアップする時間ラインを示す。両時間ラインを比較すると、本発明の方法および装置は、ウォーミングアップ工程でブースタポンプのバッキング圧力が高いことにより、ブースタポンプおよびバッキングポンプを、従来の方法および装置よりも非常に迅速に所望温度にウォーミングアップできることを示している。ウォーミングアップ時間が短いということは、真空ポンプ装置がアイドルモードからウェイクアップ指令を受けた後、プロセスツールを非常に迅速に作動させることができることを意味する。これは、プロセスツールの生産量を向上させることを意味する。
【0024】
以上、1つ以上の特定例として具現した本発明を示しかつ説明したが、本発明は示された詳細に限定されることを意図するものではない。なぜならば、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲の記載と均等物の範囲内で種々の変更および構造的変化を加えることができるからである。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲と一致する態様で、特許請求の範囲は広く解釈すべきである。
【符号の説明】
【0025】
10 システム
12 システムチャンバ
14a、14b ガス源
16a、16b 制御弁
20 真空ポンプ装置
22 ブースタポンプ
24 バッキングポンプ
30 コントローラ
32 パージガス源
34 制御弁
図1
図2A
図2B
図3
図4