(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208224
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】向上した粘着力特性を有するキャスト貯蔵牧草用フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
B32B27/32 E
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-515083(P2015-515083)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公表番号】特表2015-525151(P2015-525151A)
(43)【公表日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】US2013042586
(87)【国際公開番号】WO2013181085
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年3月22日
(31)【優先権主張番号】12382213.2
(32)【優先日】2012年5月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マンリケ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,アンドレアス
【審査官】
安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−038342(JP,A)
【文献】
特開2013−095074(JP,A)
【文献】
特表平06−500963(JP,A)
【文献】
特表2011−500390(JP,A)
【文献】
特表2012−522660(JP,A)
【文献】
特表2007−533833(JP,A)
【文献】
特表2001−504875(JP,A)
【文献】
特表2004−525001(JP,A)
【文献】
特表2007−511642(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0248480(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00〜B32B43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の3つの層:
a)0.87〜0.90g/cm3の範囲の密度、および、ASTM D1238により190℃および2.16キログラムで測定した場合に1g/10分を超えるメルトインデックスを有する均質に分岐した線状低密度ポリエチレンを含む第1のスキン層、
b)0.915〜0.930g/cm3の密度、および、ASTM D1238により190℃および2.16キログラムで測定した場合に1g/10分を超えるメルトインデックスを有する線状低密度ポリエチレンを含むコア層、および
c)5〜18%のエチレン含有量、および、ASTM D1238により230℃および2.16キログラムで測定した場合に4〜8g/10分のMFRを有するプロピレン系プラストマーまたはエラストマー(PBPE)の剥離層を少なくとも25重量%含む第2のスキン層、
を含むキャストフィルムであって、
前記第1および第2のスキン層はそれぞれ、前記キャストフィルムの10〜20重量%含まれる、キャストフィルム。
【請求項2】
前記第2のスキン層が、100重量%のプロピレン系プラストマーまたはエラストマー(PBPE)を含む、請求項1に記載のキャストフィルム。
【請求項3】
前記第2のスキン層がさらに、ランダムコポリマーポリプロピレンおよびポリエチレン(LDPE、LLDPE、m−LLDPE、HDPE)からなる群から選択される別の樹脂を75重量%まで含む、請求項1に記載のキャストフィルム。
【請求項4】
前記第1のスキン層における前記均質に分岐した線状低密度ポリエチレンが、7〜8の範囲のI10/I2の比を有する、請求項1に記載のキャストフィルム。
【請求項5】
前記第1のスキン層における前記均質に分岐した低密度ポリエチレンが、2〜3の範囲の分子量分布(Mw/Mn)比を有する、請求項1に記載のキャストフィルム。
【請求項6】
前記コア層における前記線状低密度ポリエチレンが、7〜9の範囲の分子量分布(Mw/Mn)比を有する、請求項1に記載のキャストフィルム。
【請求項7】
前記コア層における前記線状低密度ポリエチレンが、7〜8の範囲のI10/I2比を有する、請求項1に記載のキャストフィルム。
【請求項8】
前記プロピレン系プラストマーまたはエラストマーが、3.5未満の分子量分布(Mw/Mn)比を有する、請求項1に記載のキャストフィルム。
【請求項9】
前記フィルムが、15〜30ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載のキャストフィルム。
【請求項10】
未伸長フィルムに比べて、少なくとも50%まで伸長される場合に増大した粘着力を有することを特徴とする、請求項1に記載のキャストフィルム。
【請求項11】
前記伸長されたフィルムが、ASTM D4649に従って決定される場合に、少なくとも150gの粘着力を有する、請求項10に記載のキャストフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
【0002】
本願は、2013年5月28日に出願された欧州特許出願第12382213号からの優先権を主張する。
[技術分野]
【0003】
本発明は、フィルムに関し、より詳細には貯蔵牧草用用途に使用するのに特に良く適したキャスト粘着力フィルムに関する。
【背景技術】
【0004】
伸長性/粘着力フィルムは、バンドリング包装された食品および他の品物を含む幅広い用途がある。特に興味深い用途の1つは、梱包用途、例えば草、トウモロコシ、甜菜パルプ、麦芽、わら、家庭ごみ、および他のベールを包装することである。
【0005】
貯蔵牧草の製造のためには、通常、ベーラーをまず使用してコンパクトな丸型または長方形ベール(約500〜1,300kg)に圧縮する。続いてベールは、通常、網またはフィルムの多数の層を用いて直ちにラップされる。巻出し操作中に、フィルムまたは網のロールを減速することによって、ネットまたはフィルムは、緊張した状態でベールの周りに引っ張られる。ネットまたはフィルムがベールの周りに配置されたら、形成されたベールを、梱包チャンバから放出する。網またはフィルムは、製品が、ベール中で圧縮された状態であり、ベールはその形状を保持することを確実にする。
【0006】
フィルムは、ベールを気密性および耐水性にするのに役立つので、網より好ましい場合がある。ベールをラップするための標準的な農業用伸長性ラップフィルムは、パレット貨物をラップするために使用される産業用伸長性ラップフィルムに匹敵し、その差は、農業用伸長性ラップフィルムが、通常着色され、紫外線安定化されることである。しかし、現在のフィルムから製造されるベールは、圧縮状態を保持せず、ばらばらになるか、またはベール自体の形状を失う傾向があるので、ベールを適切な位置に保持するために網または他の手段と組み合わせて使用されることが多い。
【0007】
これまで既知の伸長性ラップフィルムは、多くの利点を有しているだけでなく、多くの明らかな欠点も有している。最も大きな欠点は、既存の伸長性ラップフィルムが、ベールの周りに適用される場合に、フィルムロールの不十分な減速があると包装された製品の膨張圧力の結果として長くなり、結果としてあまり圧縮されていないベールが得られることである。結果として、これが空気の吸収を導き、ベール中の酸素濃度を増大させる。フィルムロールが実際に十分減速できたら、フィルムは、十分緊張した状態でベールの周りにあるが、横方向のフィルムに収縮(ネッキング)が現れ、結果としてベールが完全に覆われなくなる。
【0008】
フィルムは伸長条件において大きな張力下にあり得るので、その元々の伸長されていない状態に回復する傾向がある。フィルムが十分な粘着力を有していなければ、この張力により、フィルムはラップされたパレットからほどかれることがあり、それによってベールの一体性が損なわれる。そのため、ベールからフィルムがほどかれるのを防止するために改善された粘着力特性を有するフィルムが所望される。
【0009】
こうしたコクーンタイプのラッピングの単一層間において規定される粘着力特性の第2の理由は、全体のパッケージの周りに気密性および水密性のスリーブを創出する必要があることである。この場合、単一フィルム層間の良好な接着は、これらの相間接触領域にわたって外側からの空気および/または水のクリープを排除できる。
【0010】
特定のフィルムの粘着力特性を付与するまたは粘着力特性を改善するために、多数の技術、例えば(コ)ポリマーにおける粘着付与添加剤の添加またはアクリレートの使用などが利用されている。一般的な粘着付与添加剤としては、ポリブテン、テルペン樹脂、アルカリ金属およびグリセロールステアレートおよびオレエートおよび水素添加樹脂およびエステルが挙げられる。
【0011】
粘着付与剤の使用は欠点を有する。粘着付与がオレフィン粘着力フィルムの粘着力を向上させることが当該技術分野において既知である一方で、フィルムを伸長すると、普通は粘着力特性が低下する。粘着付与剤はまた、フィルムの製造中にブレンドするのが困難な場合があり、フィルムの光学特性に負の影響を与え、添加剤の表面移動が強められる。こうした移動により、ラップされた品物が損傷し、ロールの破裂および/またははまり込みが生じ得る。
【0012】
多層フィルムは、単一層から容易に得ることができないいくつかの特性を付与するという利点を提供する。参考として組み込まれる特許文献1および特許文献2を参照のこと。多層フィルムを用いれば、伸長性/粘着力ラップは、一方の面では粘着力特性を有することができ、例えば他方の面ではスリップ特性を有することができる。他の層は、バリア特性のために、またはフィルムに強靭性を提供するために使用されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,518,654号
【特許文献2】米国特許第5,114,763号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
伸長性、引張、引裂耐性、突き刺し耐性、光学および熱安定性特性の所望の組み合わせを有する多層キャストフィルムを有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、こうしたフィルムに関する。1つの実施形態において、本発明は、少なくとも以下の3つの層を含むキャストフィルムに関する:1)0.87〜0.90g/cm3の範囲の密度および1g/10分を超えるメルトインデックスを有する均質に分岐した線状低密度ポリエチレンを含む第1のスキン層、2)0.915〜0.930g/cm3の密度および1g/10分を超えるメルトインデックスを有する線状低密度ポリエチレンを含むコア層、および3)10〜18%のエチレン含有量および4〜8g/10分のMFRを有するプロピレン系プラストマーまたはエラストマー(PBPE)の剥離層を少なくとも25重量%含む第2のスキン層。前記第1および第2のスキン層はそれぞれ、キャストフィルムの10〜20重量%で含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本願の実施例(本発明および比較例の両方)に関するダート落下衝撃を示す棒グラフである。
【0017】
【
図2】本願の実施例(本発明および比較例の両方)に関するMDおよびCDのエレメンドルフ引裂値を示す棒グラフである。
【0018】
【
図3】本願の実施例(本発明および比較例の両方)に関してサウンドレベル値を示す棒グラフである。
【0019】
【
図4】本願の実施例(本発明および比較例の両方)に関して100%の伸びにて粘着力レベルを示す棒グラフである。
【0020】
【
図5】本願の実施例(本発明および比較例の両方)に関して突き刺し伸びおよび突き刺し力値を示す棒グラフである。
【0021】
【
図6】本願の実施例(本発明および比較例の両方)に関して100%伸びでの突き刺し伸びおよび突き刺し力値を示す棒グラフである。
【0022】
【
図7】本願の実施例(本発明および比較例の両方)に関して酸素透過率および100%伸びでの酸素透過率を示す棒グラフである。
【0023】
【
図8】本願の実施例(本発明および比較例の両方)に関して平均粘着力を示す棒グラフである。
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「ポリマー」は、同じ種類または異なる種類であるかを問わず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー性化合物を指す。故に一般的な用語ポリマーは、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために通常は使用される用語「ホモポリマー」、ならびに2種以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。
【0026】
「ポリエチレン」は、エチレンモノマーから誘導されたユニットを50重量%を超えて含むポリマーを意味する。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーを含む(2つ以上のコモノマーから誘導されるユニットを意味する)。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、非常に低密度のポリエチレン(VLDPE)、シングルサイト触媒線状低密度ポリエチレン(線状および実質的に線状の両方の低密度樹脂(m−LLDPE)を含む)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。これらのポリエチレン材料は、一般に当該技術分野において既知である。しかし、以下の説明は、これらの異なるポリエチレン樹脂の一部の間の相違を理解するのに役立ち得る。
【0027】
用語「LDPE」はまた、「高圧エチレンポリマー」または「高度に分岐したポリエチレン」と称される場合があり、ポリマーが、フリーラジカル開始剤、例えば過酸化物(例えば参考として本明細書に組み込まれる米国特許第4,599,392号を参照のこと)の使用により、オートクレーブまたは管状反応器中で14,500psi(100MPa)を超える圧力にて部分的にまたは全体的に単独重合または共重合されることを意味すると定義される。LDPE樹脂は、通常0.916〜0.940g/cm
3の範囲の密度を有する。
【0028】
用語「LLDPE」は、従来のチーグラーナッタ触媒系ならびにシングルサイト触媒、例えばメタロセン(「m−LLDPE」と称されこともある)を用いて製造された両方の樹脂を含む。LLDPEは、LDPE未満の長鎖分岐を含有し、実質的に線状のエチレンポリマー(これはさらに米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号および米国特許第5,733,155号に定義される)、均質に分岐した線状エチレンポリマー組成物、例えば米国特許第3,645,992号のもの)、不均質に分岐したエチレンポリマー、例えば米国特許第4,076,698号に開示されるプロセスに従って調製されるもの、および/またはこれらのブレンド(例えば米国特許第3,914,342号または米国特許第5,854,045号に開示されるもの)を含む。線状PEは、当該技術分野において既知のいずれかの種類の反応器もしくは反応器構成を用いて、気相、溶液相またはスラリー重合またはこれらのいずれかの組み合わせを介して、最も好ましくは気相およびスラリー相反応器を用いて製造できる。
【0029】
用語「HDPE」は、約0.940g/cm3を超える密度を有するポリエチレンを指し、これはチーグラーナッタ触媒、クロム触媒またはさらにはメタロセン触媒を用いて一般に調製される。
【0030】
「多峰性」は、分子量分布を示すGPCクロマトグラムにおいて少なくとも2つの区別可能なピークを有することによって特徴付けることができる樹脂組成物を意味する。多峰性は、2つのピークを有する樹脂ならびに2つを超えるピークを有する樹脂を含む。
【0031】
以下の分析方法が、本発明において使用される。
【0032】
密度は、ASTM D792に従って決定される。
【0033】
「I
2」とも称される「メルトインデックス」は、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に従って決定される。
【0034】
ピーク融点は、示差走査熱量計(DSC)によって決定される(ここでフィルムは、毎分10℃の速度で−40℃の温度まで冷却する前に3分間230℃で調整される)。フィルムを−40℃で3分間維持した後、フィルムは、毎分10℃の速度にて200℃に加熱される。
【0035】
用語分子量分布または「MWD」は、重量平均分子量と数平均分子量との比(M
w/M
n)として定義される。M
wおよびM
nは、従来のゲル透過クロマトグラフィ(GPC)を用いて当該技術分野において既知の方法に従って決定される。
【0036】
水蒸気透過率(またはWVTR)は、ASTM E96/E96M−05に従って決定される。
【0037】
ダート衝撃は、ASTM D1709方法Aに従って決定される。
【0038】
キャストフィルム
その最も広い意味において、本発明は、少なくとも以下の3つの層を含むキャストフィルムである。
a)0.87〜0.90g/cm3の範囲の密度および1g/10分を超えるメルトインデックスを有する均質に分岐した線状低密度ポリエチレンを含む第1のスキン層、
b)0.915〜0.930g/cm3の密度および1g/10分を超えるメルトインデックスを有する線状低密度ポリエチレンを含むコア層、および
c)5〜18%のエチレン含有量および4〜8g/10分のMFRを有するプロピレン系プラストマーまたはエラストマー(PBPE)の剥離層を少なくとも25重量%含む第2のスキン層。
【0039】
第1および第2のスキン層はそれぞれ、キャストフィルムの10〜20重量%で含まれる。コア層は、キャストフィルムの60〜80重量%で含まれていてもよい。キャストフィルムは追加の層を含んでいてもよいことも理解される。これらの層は、追加の機能性、例えばバリア特性を提供するように選択されてもよい。
【0040】
本発明のキャストフィルムの第1のスキン層に使用するための均質に分岐した線状低密度ポリエチレンポリマーは、7〜10の範囲、より好ましくは7.5〜8.5の範囲のI
10/I
2比(すなわち、10.16kgの力を用いてASTM D1238(190℃)に従って決定される場合のメルトフローを2.16kgの力を用いて得られたメルトフローで除したものである)を有する。一部の実施形態において、均質に分岐した線状低密度ポリエチレンポリマーは、2〜4の範囲、より好ましくは2〜3の範囲の分子量分布(Mw/Mn)比を有することを特徴とし得る。市販の均質に分岐した線状低密度ポリエチレンポリマーとしては、TAFMER(商標)樹脂(Mitsui Petrochemical Corporationによって供給される)、EXACT(商標)樹脂(Exxonによって供給される)、ならびにAFFINITY(商標)およびENGAGE(商標)樹脂(The Dow Chemical Companyによって供給される)が挙げられる。均質に分岐した線状低密度ポリエチレンは、0.87〜0.90g/cm
3の範囲、好ましくは0.8725〜0.8775g/cm
3の範囲の密度を有するべきである。均質に分岐した線状低密度ポリエチレンは、1g/10分を超える、好ましくは1〜8の範囲、より好ましくは2〜7g/10分の範囲のメルトインデックス(I
2)を有するべきである。
【0041】
本発明のキャストフィルムのコア層は、0.915〜0.930g/cm
3の密度を有する線状低密度ポリエチレンを含む。この材料は、3〜7:1の範囲、好ましくは3〜5:1の範囲のM
w/M
n比を有することによって示されるように、好ましくは不均質に分岐される。コア層に使用されるポリマーのメルトインデックス(I
2)は、1g/分より大きく、好ましくは1〜8の範囲、より好ましくは2〜7g/10分の範囲であるべきである。
【0042】
本発明のキャストフィルムの第2のスキン層は、プロピレン系プラストマーまたはエラストマーまたは「PBPE」を第2のスキン層の少なくとも25重量%で含む。これらの材料は、プロピレンから誘導されるユニットを少なくとも約50重量%、およびプロピレン以外のコモノマー、好ましくはエチレンから誘導されるユニットを少なくとも約5重量%含む少なくとも1つのコポリマーを含む。好適なプロピレン系エラストマーおよび/またはプラストマーは、それぞれその全体が参考として本明細書に組み込まれる国際公開第03/040442号および国際公開第2007/024447号に教示されている。
【0043】
本発明に使用するのに特に興味深いのは、3.5未満のMWDを有する反応器等級PBPEである。用語「反応器等級」は、米国特許第6,010,588号に定義される通りであり、一般にはその分子量分布(MWD)または多分散性が重合後に実質的に変化していないポリオレフィン樹脂を指すことが意図される。好ましいPBPEは、約90ジュール/gm未満、好ましくは約70ジュール/gm未満、より好ましくは約50ジュール/gm未満の融解熱(米国出願60/709688に記載されるDSC方法を用いて決定される場合)を有する。エチレンがコモノマーとして使用される場合、PBPEは、プロピレン系エラストマーまたはプラストマーの約3〜約15重量%のエチレン、または約5〜約14重量%のエチレン、または約7〜12重量%のエチレンを有する。良好なヘーズおよび適切な剥離強度の例は、約9%のエチレン含有量を有するPBPEを用いて観察されている。
【0044】
プロピレンコポリマーの残留ユニットが少なくとも1つのコモノマー、例えばエチレン、C4−20α−オレフィン、C4−20ジエン、スチレン化合物などから誘導されるが、好ましくはコモノマーは、エチレンおよびC4−12α−オレフィン、例えば1−ヘキセンまたは1−オクテンの少なくとも1つである。好ましくはコポリマーの残留ユニットは、エチレンからのみ誘導される。
【0045】
プロピレン系エラストマーまたはプラストマーにおけるエチレン以外のコモノマーの量は、少なくとも部分的に、コモノマーおよびコポリマーの所望の融解熱の関数である。コモノマーがエチレンである場合、通常コモノマー誘導ユニットは、コポリマーの約18重量%過剰では含まれず、好ましくは15重量%未満である。エチレン誘導ユニットの最小量は、通常、コポリマーの重量に基づいて、少なくとも約3重量%、好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約9重量%である。ポリマーがエチレン以外の少なくとも1つの他のコモノマーを含む場合、好ましい組成物は、約8〜18重量%のエチレンを有するプロピレン−エチレンコポリマーの範囲にほぼある融解熱を有する。理論に束縛されることを意図しないが、おおよそ同様の結晶性および結晶モルホロジーを得ることは、粘着力貯蔵牧草用フィルムと同様の機能を達成するために有益であると考えられる。
【0046】
第2のスキン層に使用するためのプロピレン系プラストマーまたはエラストマーは、いずれかのプロセスによって製造でき、チーグラーナッタ、CGC(拘束幾何触媒(Constrained Geometry Catalyst))、メタロセン、および非メタロセン、金属を原子を中心とした(metal centered)、ヘテロアリールリガンド触媒作用によって製造されるコポリマーを含む。これらのコポリマーは、ランダム、ブロックおよびグラフトコポリマーを含むが、好ましくはコポリマーは、ランダム構成を有する。例示的なプロピレンコポリマーとしては、ExxonMobil VISTAMAXXポリマー、およびVERSIFYプロピレン/エチレンエラストマーおよびプラストマー(The Dow Chemical Company製)が挙げられる。
【0047】
本発明に使用するためのプロピレン系エラストマーまたはプラストマーの密度は、通常、ASTM D−792によって測定される場合に立方センチメートルあたり(g/cm3)少なくとも約0.850であり、少なくとも約0.860であることができ、または少なくとも約0.865グラムであることができる。好ましくは密度は、約0.89g/cc未満である。一般に密度が低くなるにつれて、「粘着力」が大きくなる。
【0048】
本発明のプロピレン系エラストマーまたはプラストマーの重量平均分子量(Mw)は広範囲で変動し得るが、通常それは約10,000〜1,000,000、またはさらに50,000〜500,000である(最小または最大Mwにおける限度だけが実際の考慮によって設定されたものであることを理解する)。
【0049】
本発明のプロピレン系エラストマーまたはプラストマーの多分散性は、通常約2〜約5である。一般に狭い多分散性を有する材料を使用するのが好ましい。「狭い多分散性」、「狭い分子量分布」、「狭いMWD」および同様の用語は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が約3.5未満であることを意味し、約3.0未満であることができ、または約2.8未満であることができ、また約2.5未満であることができる。
【0050】
本発明に使用するためのPBPEは、理想的には3〜10g/10分、好ましくは約4〜8g/10分のMFRを有する。プロピレンおよびエチレンおよび/または1つ以上のC
4−C
20α−オレフィンのコポリマー(プロピレンから誘導されたユニットを少なくとも50重量%有するポリマー)のMFRは、ASTM D−1238,条件L(2.16kg,230℃)に従って測定される。
【0051】
第2のスキン層は、層の少なくとも25重量%のPBPEを含有する。一部の実施形態において、層が100%のPBPEを含むことが有利な場合がある。第2のスキン層において使用するためのPBPEとブレンドされてもよい追加の材料としては、ランダムコポリマーポリプロピレンおよびポリエチレン(LDPE、LLDPE、m−LLDPE、HDPEなど)が挙げられる。
【0052】
本発明のキャストフィルムは、従来のキャストフィルム方法によって製造でき、こうした方法には、当該技術分野において一般に既知の短軸および二軸配向が含まれる。一部の実施形態において、本発明のフィルムは、有利なことには、機械方向および/または横断方向において少なくとも50%、好ましくは100%で伸長され得る。
【0053】
第1および第2のスキン層それぞれは、独立に、キャストフィルムの好ましくは10〜20重量%で含まれる。フィルムが15〜30ミクロン厚さの全体厚みを有することが有利な場合がある。
【0054】
キャストフィルムが追加の非スキン層を含んでいてもよいことも想定される。これらの層は、追加の機能、例えばベール取扱い性を与えるように選択されてもよく、スリップおよびブロック防止添加剤またはより高い密度(例えば0.930g/ccを超える)を有する追加のポリオレフィン系樹脂のような材料を含む。
【0055】
一般に当該技術分野において既知であるように、層のそれぞれが添加剤、例えば顔料、無機充填剤、UV安定剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。
【0056】
本発明のキャストフィルムは、高い剥離粘着力レベルによって標識される。ASTM D4649に従って測定できる粘着力は、好ましくは少なくとも150g、より好ましくは少なくとも175gである。
【実施例】
【0057】
本発明の有効性を実証するために、一連の3層キャストフィルムを製造した。各フィルムは、23ミクロンの厚さであり、第1および第2のスキン層はそれぞれフィルムの15重量%(コア層が残りの70%で含まれる)で含まれ、フィルムの構成は表1で記載される通りである。
【0058】
以下の樹脂を使用した。
【0059】
樹脂Aは、0.8725〜0.8775g/cm
3の密度、2.5〜3.5g/10分のメルトインデックス(I
2)を有する均質に分岐した線状低密度ポリエチレンである。
【0060】
樹脂Bは、0.915〜0.919g/cm
3の密度、2〜2.6g/10分のメルトインデックス(I
2)および7.1〜7.9:1のI
10/I
2の比を有する均質に分岐した線状低密度ポリエチレンである。
【0061】
樹脂Cは、0.933〜0.937g/cm
3の密度、2.4〜2.9g/10分のメルトインデックス(I
2)および7.2〜7.7:1のI
10/I
2の比を有する不均質に分岐した線状低密度ポリエチレンである。
【0062】
樹脂Dは、0.889〜0.891g/cm
3の密度、6.4〜9.6g/10分のMFR、および約11.7:1のI
10/I
2の比を有する5%のエチレンから誘導されるPBPEである。
【0063】
樹脂Eは、8g/10分のターゲットMFRを有する4.5%のターゲットエチレンレベルを有するランダムコポリマーポリプロピレン−エチレンである。
【表1】
【0064】
突き刺し伸び、突き刺し力、MDでの100%伸びにおける突き刺し伸びおよびMDでの100%伸びにおける突き刺し伸びを評価するために、Highlight Industriesによって製造されるクオリティ・コントロール・スタンド(Quality Control Stand)機を、以下の方法論に従って使用した。Highlightクオリティ・コントロール・スタンドは、リールから直接巻き出された全体のフィルム幅においていくつかの試験を行うことができる機器である。すべてのこれらの試験は、異なる酷使特性を決定して、カスタマによって使用される最終製品における真の効果に関連させることを意図される。
【0065】
この手順において、市場には標準が存在しないので、本発明者らの方法論に従って突き刺しテストを行うための基本的な要件を記載している。突き刺しテストは、伸長フィルムにわたって円錐形の先端の浸透力を決定することを意図される。それでもなお、異なるダイナモメータにおいて行われた他の突き刺し方法とは比較できない。加えて、機器は、50%〜500%の異なる伸長レベルを設定することが可能である。
【0066】
サンプルは、ASTM D618に従って23±2℃にて調整される。時間は、基準によって特定されないが、一般にそれらは最小48時間調整される。基本的な操作を表2に記載する。
【表2】
【0067】
試験に使用される円錐ディップは
図9に示される通りである。フィルムは、ダート落下衝撃(ASTM D−1709に従って決定される場合)、エレメンドルフ引裂(ASTM D−1922に従って決定される場合)、サウンドレベル(IEC61672:2003に従うデバイスを用いて決定される場合)、伸長性粘着力(ASTM D−4649に従って決定される場合)、突き刺し伸び(上記で記載されるHighlight試験手順に従って決定される場合)、突き刺し力(上記で記載されるHighlight試験手順に従って決定される場合)、MDにおける100%伸びでの突き刺し伸び(上記で記載されるHighlight試験手順に従って決定される場合)、MDにおける100%伸びでの突き刺し伸び(上記で記載されるHighlight試験手順に従って決定される場合)、
【0068】
酸素透過率(ASTM D−1434に従って決定される場合)、MDにおける100%伸びでの酸素透過率(ASTM D−1434に従って決定される場合)、および平均粘着力(ASTM D−4649に従って決定される場合)に関して評価される。こうした評価の結果を
図1から8に示す。