特許第6208237号(P6208237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208237
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20170925BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20170925BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20170925BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20170925BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20170925BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01M10/0587
   H01M10/0566
   H01M4/13
   H01M4/62 Z
   H01M2/34 A
   H01M2/02 A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-525017(P2015-525017)
(86)(22)【出願日】2014年6月10日
(86)【国際出願番号】JP2014003083
(87)【国際公開番号】WO2015001716
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2017年2月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-137934(P2013-137934)
(32)【優先日】2013年7月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-137935(P2013-137935)
(32)【優先日】2013年7月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】戸出 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】能間 俊之
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−118057(JP,A)
【文献】 特開2013−073794(JP,A)
【文献】 特開2008−277207(JP,A)
【文献】 特開2011−138632(JP,A)
【文献】 特開2003−331822(JP,A)
【文献】 特開2011−049066(JP,A)
【文献】 特開2011−216403(JP,A)
【文献】 特開2013−045759(JP,A)
【文献】 特開2007−258050(JP,A)
【文献】 特開2005−209395(JP,A)
【文献】 特開2001−257002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
H01M 10/05 − 10/0587
H01M 10/36 − 10/39
H01M 2/00 − 2/08
H01M 2/20 − 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極芯体上に正極合剤層が形成された正極板と、
負極芯体上に負極合剤層が形成された負極板と、
前記正極板に電気的に接続された正極端子と、
前記負極板に電気的に接続された負極端子と、
前記正極板及び前記負極板がセパレータを挟んで互いに絶縁された状態で偏平状に巻回された偏平状の巻回電極体と、
非水電解液と
外装体とを備え、
前記偏平状の巻回電極体の一方の端部には巻回された正極芯体露出部が形成され、
前記偏平状の巻回電極体の他方の端部には巻回された負極芯体露出部が形成され、
前記巻回された正極芯体露出部は収束されて正極集電体が接続され、
前記巻回された負極芯体露出部は収束されて負極集電体が接続され、
前記正極板と前記正極端子の間の導電経路、及び前記負極板と前記負極端子の間の導電経路の少なくとも一方には圧力感応式の電流遮断機構が設けられており、
前記正極合剤層内には炭酸リチウムが含有されており、
前記正極芯体露出部の少なくとも一方の面には、前記セパレータと対向する位置であって、前記正極合剤層との境界に沿って多孔質の保護層が形成されている、
非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記保護層は、厚さが前記正極合剤層の厚さ以下とされている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記保護層は、前記正極合剤層に隣接して設けられている、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記保護層は、前記正極合剤層から離間した位置に設けられている、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記保護層は、アルミナ粒子及び黒鉛粒子の少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記保護層は、対向配置される前記セパレータに被覆されない領域が生じるように形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記正極合剤層中の炭酸リチウム濃度は前記正極合剤質量に対して0.1質量%以上5質量%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記外装体は角形である、請求項1〜7のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記保護層は、導電性を有し、且つ、前記正極芯体よりも導電性が低い保護層であり、
前記保護層は、炭酸リチウムを含む請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項10】
前記保護層は、アルミナ、シリカ、チタニア及びジルコニアから選択される少なくとも1種、バインダー及び炭素材料を含む請求項9に記載の非水電解質二次電池。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)の駆動用電源などに使用される車載用の非水電解質二次電池は、防爆用の安全弁以外に圧力検知式の電流遮断機構を備えている。圧力検知式の電流遮断機構は、異常時に電池の内部で急速に発生するガスによって作動し、流れ込む電流を遮断することによって電池の破裂ないし発火を防止するために設けられている。
【0003】
非水電解質二次電池においては、電池容量を増大させるための手法の1つとして充電電圧を高くすることが知られている。また、非水電解質二次電池が過充電状態になった際の安全対策として、非水電解液中にtert−アミルベンゼン、ビフェニル(特許文献1参照)、シクロアルキルベンゼン化合物、ベンゼン環に隣接する第4級炭素を有する化合物など(特許文献2参照)の過充電抑制剤を添加することが知られている。しかしながら、電池容量を向上させるために充電電圧を高くすると、過充電抑制剤の種類によっては通常使用範囲として設定した電圧においても、過充電抑制剤が分解してしまい、充放電サイクル後に電池特性の低下や安全性の低下が懸念される。
【0004】
このような課題を解決するため、非水電解質二次電池の正極合剤中に炭酸リチウム(LiCO)を添加することで、過充電耐性を向上させることも知られている(特許文献3参照)。非水電解質二次電池の正極合剤中に炭酸リチウムを添加すると、過充電時など、電池に高電圧が印加された際に正極板から炭酸ガスが発生し、それによって確実に防爆用の安全弁よりも先に圧力検知式の電流遮断機構を作動させることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2002/059999号
【特許文献2】特開2008−186792号公報
【特許文献3】特開平04−328278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非水電解質二次電池においては、正極板と負極板とはセパレータによって互いに絶縁された状態で巻回された巻回電極体を有している。偏平状の巻回電極体においては、正極芯体と正極合剤層との境界部はセパレータによって被覆されているが、セパレータは柔軟であるため、正極板の正極芯体と正極合剤層との境界部はセパレータによって密に被覆されてしまう。
【0007】
このような状態であると、過充電状態となって正極板の表面でガスが発生すると、そのガスは、正極芯体と正極合剤層との境界部を経て偏平状の巻回電極体の外部へ移動し難いため、偏平状の巻回電極体内の正極板の表面に残留してしまう。正極板の表面にガスが存在している箇所は電流が流れないために過充電状態は解消されるが、正極板の表面にガスが存在していない箇所では過充電状態がさらに促進されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の非水電解質二次電池によれば、
正極芯体上に正極合剤層が形成された正極板と、
負極芯体上に負極合剤層が形成された負極板と、
前記正極板に電気的に接続された正極端子と、
前記負極板に電気的に接続された負極端子と、
前記正極板及び前記負極板がセパレータを挟んで互いに絶縁された状態で偏平状に巻回された偏平状の巻回電極体と、
非水電解液と
外装体とを備え、
前記偏平状の巻回電極体の一方の端部には巻回された正極芯体露出部が形成され、
前記偏平状の巻回電極体の他方の端部には巻回された負極芯体露出部が形成され、
前記巻回された正極芯体露出部は収束されて正極集電体が接続され、
前記巻回された負極芯体露出部は収束されて負極集電体が接続され、
前記正極板と前記正極端子の間の導電経路、及び前記負極板と前記負極端子の間の導電経路の少なくとも一方には圧力感応式の電流遮断機構が設けられており、
前記正極合剤層内には炭酸リチウムが含有されており、
前記正極芯体露出部の少なくとも一方の面には、前記セパレータと対向する位置であって、前記正極合剤層との境界に沿って多孔質の保護層が形成されている、
非水電解質二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様の非水電解質二次電池においては、正極合剤層内には炭酸リチウムが含有されており、正極芯体露出部の少なくとも一方の面には、セパレータと対向する位置であって、正極合剤層との境界に沿って多孔質の保護層が形成されている。なお、保護層は、正極芯体露出部の少なくとも一方の面に形成されていればよいが、両面に形成されていてもよい。さらに、正極芯体露出部が正極の幅方向の両側に形成されている場合には、保護層を両側の正極芯体露出部に形成してもよい。
【0010】
この保護層は、正極芯体露出部及び正極合剤層との間に形成される段差によって、セパレータとの間に巻回軸方向に通気路を形成するとともに、ガスを透過する通気性を有している。これにより、過充電時に正極合剤層中の炭酸リチウムが分解することによって発生した炭酸ガスは保護層の内部を通って偏平状の巻回電極体の外部へ流通し易くなる。そのため、本発明の一態様の非水電解質二次電池によれば、炭酸ガスが正極合剤層の表面に滞留し難くなるので、電池の内圧が大幅に上昇する前に迅速にかつ確実に圧力感応式の電流遮断機構を作動させることができるようになり、過充電時の安全性が非常に良好となる。
【0011】
なお、保護層は、正極芯体露出部上に正極芯体露出部と正極合剤層の境界線が延びる方向に沿って形成されていればよい。保護層は正極合剤層に接するように形成されていてもよい。また、保護層は正極合剤層と間隔をおいて正極合剤層から離間した位置に形成されてもよい。
【0012】
なお、保護層の空隙率を、正極合剤層の空隙率よりも大きくすることが好ましい。これにより、炭酸ガスが保護層の内部を通って偏平状の巻回電極体の外部へより流通し易くなる。また、保護層の厚みを正極合剤層の厚みよりも小さくすることが好ましい。保護層は、無機酸化物とバインダーを含むことが好ましい。無機酸化物としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ等が好ましい。バインダーは特に限定されないが、樹脂製のバインダーが好ましく、ポリフッ化ビニリデンを用いることが特に好ましい。また、保護層は、更に、導電部材、例えば炭素材料を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1Aは実施形態の非水電解質二次電池の平面図であり、図1Bは同じく正面図である。
図2図2A図1AのIIA−IIA線に沿った部分断面図であり、図2B図2AのIIB−IIB線に沿った部分断面図であり、図2C図2AのIIC−IIC線に沿った断面図である。
図3図3Aは実施形態の非水電解質二次電池で用いた正極板の平面図であり、図3Bは同じく負極板の平面図である。
図4図4Aは実施形態の偏平状の巻回電極体の巻回終了端側を展開した斜視図であり、図4B図4AのIVB−IVB線に沿った拡大断面図であり、図4Cは巻回終了後に正極集電体を取り付けた後の図4Bに対応する部分の拡大断面図である。
図5】比較例に対応する正極板の平面図である。
図6図6Aは比較例の偏平状の巻回電極体の巻回終了端側を展開した斜視図であり、図6B図6AのVIB−VIB線に沿った拡大断面図であり、図6Cは巻回終了後に正極集電体を取り付けた後の図6Bに対応する部分の拡大断面図である。
図7】強制短絡機構を備えた非水電解質二次電池の断面図である。
図8図8Aは強制短絡機構の作動前の状態を示す図であり、図8Bは強制短絡機構の作動後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す各実施形態は、本発明の技術思想を理解するために例示するものであって、本発明をこの実施形態に特定することを意図するものではない。本発明は、特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0015】
[実施形態]
最初に、実施形態の非水電解質二次電池を図1図4を用いて説明する。この非水電解質二次電池10は、図4に示したように、正極板11と負極板12とがセパレータ13を介して互いに絶縁された状態で巻回された偏平状の巻回電極体14を有している。この偏平状の巻回電極体14の最外面側は、セパレータ13で被覆されているが、負極板12が正極板11よりも外周側となるようになされている。
【0016】
正極板11は、図3Aに示したように、厚さが10〜20μm程度のアルミニウム又はアルミニウム合金箔からなる正極芯体の両面に、幅方向の一方側の端部に沿って正極芯体が帯状に露出した状態となるように、正極合剤層11aが形成されている。この帯状に露出した正極芯体部分が正極芯体露出部15となる。この正極芯体露出部15の少なくとも一方側の表面には、例えば正極合剤層11aに隣接するように、正極芯体露出部15の長さ方向に沿って保護層11bが形成されている。この保護層11bの具体的構成などについては、後述する。
【0017】
負極板12は、図3Bに示したように、厚さが5〜15μm程度の銅又は銅合金箔からなる負極芯体の両面に、幅方向の一方側の端部に沿って負極芯体が帯状に露出した状態となるように、負正極合剤層12aが形成されている。この帯状に露出した負極芯体部分が負極芯体露出部16となる。なお、正極芯体露出部15ないし負極芯体露出部16は、それぞれ正極板11ないし負極板12の幅方向の両側の端部に沿って形成してもよい。
【0018】
これらの正極板11及び負極板12を、正極芯体露出部15と負極芯体露出部16とがそれぞれ対向する電極の合剤層と重ならないようにずらし、セパレータ13を挟んで互いに絶縁した状態で偏平状に巻回することにより、偏平状の巻回電極体14が作製される。偏平状の巻回電極体14は、図2A図2B及び図4Aに示したように、一方の端には複数枚積層された正極芯体露出部15を備え、他方の端には複数枚積層された負極芯体露出部16を備えている。セパレータ13としては、好ましくはポリオレフィン製の微多孔性膜が二枚あるいは長尺状の一枚を折畳んで使用されており、その幅は正極合剤層11a及び保護層11bを被覆できるとともに負極合剤層12aの幅よりも大きいものが使用されている。
【0019】
複数枚積層された正極芯体露出部15は、正極集電体17を介して正極端子18に電気的に接続されている。正極集電体17と正極端子18との間には、電池の内部で発生したガス圧によって作動する電流遮断機構27が設けられている。複数枚積層された負極芯体露出部16は、負極集電体19を介して負極端子20に電気的に接続されている。
【0020】
正極端子18、負極端子20は、図1A図1B及び図2Aに示したように、それぞれ絶縁部材21、22を介して封口体23に固定されている。封口体23には、電流遮断機構27の作動圧よりも高いガス圧が加わったときに開放されるガス排出弁28も設けられている。正極集電体17、正極端子18及び封口体23は、それぞれアルミニウム又はアルミニウム合金製のものが用いられている。負極集電体19及び負極端子20は、それぞれ銅又は銅合金製のものが用いられている。
【0021】
偏平状の巻回電極体14は、封口体23側を除く周囲に樹脂材料から形成された絶縁シート24が介在され、一面が開放された角形外装体25内に挿入されている。角形外装体25は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金製のものが用いられる。封口体23は、角形外装体25の開口部に嵌合され、封口体23と角形外装体25との嵌合部がレーザ溶接されている。角形外装体25内には電解液注液口26から非水電解液が注液され、この電解液注液口26は例えばブラインドリベットにより密閉されている。
【0022】
非水電解質二次電池10は、単独であるいは複数個が直列、並列ないし直並列に接続されて各種用途で使用される。なお、この非水電解質二次電池10を車載用途等において複数個直列ないし並列に接続して使用する際には、別途正極外部端子及び負極外部端子を設けてそれぞれの電池をバスバーで接続するとよい。
【0023】
実施形態の非水電解質二次電池10で用いられている偏平状の巻回電極体14は、電池容量が20Ah以上の高容量及び高出力特性が要求される用途に用いられるものであり、例えば正極板11の巻回数が43回、すなわち、正極板11の総積層枚数は86枚と多くなっている。なお、巻回数が15回以上、すなわち、総積層枚数が30枚以上であれば、電池サイズを必要以上に大型化せずに容易に電池容量を20Ah以上とすることができる。
【0024】
このように正極芯体露出部15ないし負極芯体露出部16の総積層枚数が多いと、正極芯体露出部15に正極集電体17を、負極芯体露出部16に負極集電体19を、それぞれ抵抗溶接により取り付ける際に、多数積層された正極芯体露出部15ないし負極芯体露出部16の全積層部分にわたって貫通するような溶接痕15a、16aを形成するには多大な溶接電流が必要である。
【0025】
そのため、図2A図2Cに示すように、正極板11側では、巻回されて積層された複数枚の正極芯体露出部15は、厚み方向の中央部に収束されてさらに2分割され、偏平状の巻回電極体の厚みの1/4を中心として収束され、その間に正極用中間部材30が配置されている。正極用中間部材30は樹脂材料からなる基体に導電性の正極用導電部材29が複数個、例えば2個保持されている。正極用導電部材29は、例えば円柱状のものが用いられ、それぞれ積層された正極芯体露出部15と対向する側に、プロジェクションとして作用する円錐台状の突起が形成されている。
【0026】
負極板12側では、巻回されて積層された複数枚の負極芯体露出部16は、厚み方向の中央側に収束されてさらに分割され、偏平状の巻回電極体の厚みの1/4を中心として収束され、その間に負極用中間部材32が配置されている。負極用中間部材32は、樹脂材料からなる基体に負極用導電部材31が複数個、ここでは2個が保持されている。負極用導電部材31は、例えば円柱状のものが用いられ、それぞれ積層された負極芯体露出部16と対向する側に、プロジェクションとして作用する円錐台状の突起が形成されている。
【0027】
また、正極用導電部材29の両側に位置する正極芯体露出部15の最外側の両側の表面にはそれぞれ正極集電体17が配置されており、負極用導電部材31の両側に位置する負極芯体露出部16の最外側の両側の表面にはそれぞれ負極集電体19が配置されている。なお、正極用導電部材29は正極芯体と同じ材料であるアルミニウム又はアルミニウム製のものが好ましく、負極用導電部材31は負極芯体と同じ材料である銅又は銅合金製のものが好ましい。正極用導電部材29及び負極用導電部材31の形状は、同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
実施形態の偏平状の巻回電極体14における正極芯体露出部15、正極集電体17、正極用導電部材29を有する正極用中間部材30を用いた抵抗溶接方法、及び、負極芯体露出部16、負極集電体19、負極用導電部材31を有する負極用中間部材32を用いた抵抗溶接方法は、既に周知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0029】
このように正極芯体露出部15ないし負極芯体露出部16を2分割すると、多数積層された正極芯体露出部15ないし負極芯体露出部16の全積層部分にわたって貫通するような溶接痕を形成するために必要な溶接電流は、2分割しない場合と比すると小さくて済むので、抵抗溶接時のスパッタの発生が抑制され、スパッタに起因する偏平状の巻回電極体14の内部短絡などのトラブルの発生が抑制される。図2Aには、正極集電体17に抵抗溶接により形成された2箇所の溶接跡33が示されており、負極集電体19にも2箇所の溶接跡34が示されている。
【0030】
次に、実施形態の非水電解質二次電池10における正極板11、負極板12、保護層11b、偏平状の巻回電極体14及び非水電解液の具体的製造方法ないし組成について説明する。
【0031】
[正極板の作製]
正極活物質としては、LiNi0.35Co0.35Mn0.30で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を用いた。このリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物と、導電剤としての炭素粉末と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(
PVdF)とを、質量比で88:9:3となるように秤量し、さらに、これらの全量に対
して炭酸リチウムが1質量%となるように混合し、分散媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合して正極合剤スラリーを調製した。
【0032】
炭酸リチウムは、正極合剤中に0.1〜5.0質量%含有させることが好ましい。正極合剤における炭酸リチウムの含有量が0.1質量%未満であると、炭酸リチウムからの炭酸ガスの発生が少なく、電流遮断機構を迅速に作動させ難くなる。正極合剤における炭酸リチウムの含有量が5.0質量%を超えると、電極反応に関与しない炭酸リチウムの割合が過度に多くなり、電池容量の低下が大きくなる。
【0033】
次に、アルミナ粉末、導電剤としての黒鉛、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と溶剤としてのN−メチルピロリドン(NMP)を、アルミナ粉末:黒鉛:PVdFの質量比が83:3:14となるように混練し、保護層スラリーを作製した。
【0034】
正極芯体としては厚さ15μmのアルミニウム箔を用い、上記の方法で作製した正極合剤スラリー及び保護層スラリーを、正極芯体の両面にダイコーターによって塗布した。正極合剤スラリー及び保護層スラリーを同時に正極芯体上に塗布するため、ダイヘッド内部の吐出口近傍において正極合剤スラリー及び保護層スラリーを合流させ塗布を行い、正極合剤層11aと、黒鉛を含む多孔質アルミナ層からなる保護層11b(例えば幅7mm)とを形成した。ただし、正極芯体の長手方向に沿う一方の端部(両面ともに同一方向の端部)にはスラリーを塗布せず、その正極芯体を露出させて、正極芯体露出部15を形成した。次いで、乾燥して分散媒としてのNMPを除去し、ロールプレスによって所定厚さとなるように圧縮し、得られた極板を予め定めた所定寸法に切り出した。
【0035】
保護層11bの幅は、偏平状の巻回電極体の形成時に、対向配置されるセパレータ13によって保護層11bの表面の全てが被覆されない範囲とすることが好ましい。また、保護層11bの厚さは、正極合剤層11aの厚さよりも厚くなると電池容量の低下に繋がるので、正極合剤層11aの厚さ以下とすることが好ましい。なお、保護層11bは、多孔質層であるため、ガス等を良好に透過できる通気性保護層である。このようにして作製された正極板11の構成は、図3Aに示したとおりとなる。
【0036】
[負極板の作製]
負極板は次のようにして作製した。黒鉛粉末98質量部、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)1質量部、結着剤としてのスチレン−ブタジエンゴム(SBR)1質量部を水に分散させ負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体の両面にダイ負極芯体の長手方向に沿う一方の端部(両面ともに同一方向の端部)にはスラリーを塗布せず、その芯体を露出させて、負極芯体露出部16を形成した。次いで、乾燥し、ロールプレスによって所定厚さとなるように圧縮し、得られた極板を予め定めた所定寸法に切り出し、実施形態及び比較例に共通して使用する負極板12を作製した。このようにして作製された負極板12の構成は、図3Bに示したとおりである。
【0037】
[非水電解液の調製]
非水電解液としては、溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とを体積比(25℃、1気圧)で3:7の割合で混合した混合溶媒に電解質塩としてLiPFを1mol/Lとなるように添加し、さらに全非水電解質質量に対してビニレンカーボネート(VC)を0.3質量%添加したものを用いた。
【0038】
[偏平状の巻回電極体の作製]
上述ようにして作製された負極板12及び正極板11を、最外面側が負極板12となるようにして、それぞれセパレータ13を介して互いに絶縁された状態で巻回した後、偏平状に成形して偏平状の巻回電極体14を作製した。
【0039】
偏平状の巻回電極体14の形成直後の正極板11における正極芯体露出部15とセパレータ13との配置関係は、図4Bに示したとおりとなり、正極芯体露出部15とセパレータ13との間には十分な空隙が形成されている。また、正極芯体露出部15に正極集電体を取り付けた後には、複数の積層された正極芯体露出部15は圧縮されるため、図4Cに示したとおり、正極芯体露出部15とセパレータ13との間の空隙は狭くなる。しかしながら、正極芯体露出部15における保護層11bの存在により、正極合剤層11aと偏平状の巻回電極体14の外部との間の通気性は良好に確保される。
【0040】
特に保護層11bの幅を対向配置されるセパレータ13によって保護層11bの表面の全てが被覆されない範囲とすると、常時正極合剤層11aと偏平状の巻回電極体14の外部との間の通気性は良好に確保される。そのため、非水電解質二次電池10が過充電状態となって正極合剤層11a中で炭酸リチウムが分解して炭酸ガスが発生した場合、この炭酸ガスは保護層11b内を通って偏平状の巻回電極体14の外部へ抜け易くなる。
【0041】
これにより、本実施形態の非水電解質二次電池10によれば、炭酸ガスが正極合剤層11aの表面に滞留し難くなるので、電池の内圧が大幅に上昇する前に迅速かつ確実に圧力感応式の電流遮断機構27(図2A参照)を作動させることができる。電流遮断機構27が作動すると、充電電流が流れないためにそれ以上の炭酸ガスの発生は停止するので、非水電解質二次電池10の内圧が増加することがなくなり、過充電時の安全性が非常に良好となる。
【0042】
[比較例]
比較例の非水電解質二次電池の具体的構成を図5及び図6を用いて説明する。比較例の非水電解質二次電池の具体的構成は、正極板の構成を除いて実質的に実施形態の非水電解質二次電池10と同様である。そこで、適宜図1及び図2を援用するとともに、実施形態の非水電解質二次電池と同一の構成部分には同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0043】
比較例の非水電解質二次電池は、図5及び図6に示したように、正極板11Aとして、実施形態の正極板11における保護層11bを有していない以外は、実施形態の正極板11と同様の構成を有している。比較例の偏平状の巻回電極体14Aの巻回終了端側の構成は、図6Aに示したとおりである。
【0044】
偏平状の巻回電極体14Aの形成直後の正極板11Aにおける正極芯体露出部15とセパレータ13との配置関係は、図6Bに示したとおりとなり、正極芯体露出部15とセパレータ13との間には十分な空隙が形成されている。しかしながら、正極芯体露出部15に正極集電体を取り付けた後には、複数の積層された正極芯体露出部15は圧縮されているため、正極芯体露出部15とセパレータ13との配置関係は、図6Cに示したとおりとなり、正極芯体露出部15とセパレータ13との間の空隙は非常に狭くなる。
【0045】
したがって、比較例の非水電解質二次電池においては、過充電状態となって正極合剤層11a中で炭酸リチウムが分解して炭酸ガスが発生した場合、この炭酸ガスは正極合剤層11aの表面側に滞留しがちとなる。正極合剤層11aの表面に炭酸ガスが存在している箇所は、電流が流れないために過充電状態は解消されるが、正極合剤層11aの表面に炭酸ガスが存在していない箇所では、電流が流れ続けるため、過充電状態がさらに促進されてしまう。そのため、比較例の非水電解質二次電池によれば、実施形態の非水電解質二次電池10に比べて、安全性が不十分となる。
【0046】
実施形態の非水電解質二次電池10では、保護層11bの形成材料としてアルミナ及び黒鉛の混合物からなる微粒子を用いた例を示したが、他に、アルミナ、二酸化ケイ素及び酸化チタンから選択された少なくとも1種の微粒子や、アルミナ、二酸化ケイ素及び酸化チタンから選択された少なくとも1種と黒鉛との混合物の微粒子をも用いることができる。特にアルミナ微粒子や黒鉛微粒子を用いると、正極芯体ないし正極合剤層との間の付着性が良好となる。保護層11bの形成材料の粒径範囲は、臨界的限度はなく、形成された保護層11bの厚さが正極合剤層11aの厚さよりも小さくなる範囲で任意に選択し得る。
【0047】
実施形態の非水電解質二次電池10では、保護層11bを正極合剤層11aに隣接して設けた例を示したが、正極合剤層11aとの間に隙間が生じるように、正極合剤層11aとは離間した位置に設けてもよい。このような構成とすると、容易に保護層11bの表面が対向配置されるセパレータ13に被覆されない状態とすることができ、炭酸ガスの流通性が良好となるため、上記効果が特に良好に奏されるようになる。
【0048】
実施形態の非水電解質二次電池10では、正極芯体露出部15を正極板11の幅方向の一方側の端部のみに形成し、この方側の端部にのみ保護層11bを形成した例を示したが、正極芯体露出部を正極板11の幅方向の両側に形成し、正極芯体露出部にそれぞれ保護層を形成してもよい。
【0049】
上記実施形態において、保護層として、導電性を有し且つ正極芯体よりも導電性の低い層を形成し、この保護層にも炭酸リチウムを含有させることができる。この場合、保護層は、アルミナ、シリカ、チタニア及びジルコニアから選択される少なくとも1種、バインダー、及び炭素材料を含むことが好ましい。なお、正極合材層及び保護層がそれぞれ炭酸リチウムを含む場合、炭酸リチウムの総量は、正極合剤層中の正極活物質の総質量に対して0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0050】
[第2の発明]
上記実施形態では、正極合剤層に炭酸リチウムを含有させる形態について説明した。第2の発明は、正極合剤層に炭酸リチウムを含有させる代わりに、保護層に炭酸リチウムを含有させるものである。この場合、保護層は導電性を有し、且つ正極芯体よりも導電性が低いものとする。
【0051】
第2の発明の角形非水電解質二次電池は、
正極芯体上に正極合剤層が形成された正極板と、
負極芯体上に負極合剤層が形成された負極板と、
前記正極板に電気的に接続された正極端子と、
前記負極板に電気的に接続された負極端子と、
前記正極板及び前記負極板がセパレータを挟んで互いに絶縁された状態で偏平状に巻回された偏平状の巻回電極体と、
非水電解液と
外装体とを備え、
前記偏平状の巻回電極体の一方の端部には巻回された正極芯体露出部が形成され、
前記偏平状の巻回電極体の他方の端部には巻回された負極芯体露出部が形成され、
前記巻回された正極芯体露出部は収束されて正極集電体が接続され、
前記巻回された負極芯体露出部は収束されて負極集電体が接続され、
前記正極板と前記正極端子の間の導電経路及び前記負極板と前記負極端子の間の導電経路の少なくとも一方には圧力感応式の電流遮断機構が設けられており、
前記正極芯体露出部の少なくとも一方の面には、前記セパレータと対向する位置であって、前記正極合剤層との境界に沿って炭酸リチウムを含有する半導電性保護層が形成されている。
【0052】
この電解質二次電池においては、半導電性保護層内には炭酸リチウムが含有されており、正極芯体露出部の少なくとも一方の面には、セパレータと対向する位置であって、正極合剤層との境界に沿って半導電性保護層が形成されている。なお、本発明における「半導電性」とは、金属程度の導電性までは有していなくてもよいが、半導電性保護層内に含まれている炭酸リチウムを正極電位に維持できる程度の導電性を有していればよいという意味で用いられている。この半導電性保護層は、正極芯体露出部の少なくとも一方の面に形成されていればよいが、両面に形成されていてもよい。さらに、正極芯体露出部が正極の幅方向の両側に形成されている場合には、半導電性保護層を両側の正極芯体露出部に形成してもよい。半導電性保護層は、正極芯体露出部上に正極合剤層と接するように、正極芯体露出部と正極合剤層の境界線が延びる方向に沿って形成されることが好ましい。
【0053】
半導電性保護層は、正極芯体露出部と同電位に維持されるので、過充電状態時などにおいて正極電位が高くなると半導電性保護層に含まれる炭酸リチウムが分解して炭酸ガスを発生する。このような形態であると、正極合剤層に含まれる炭酸リチウムが分解して炭酸ガスが発生する形態よりも偏平状の巻回電極体内に滞留し難く、炭酸ガスが偏平状の巻回電極体の外部へ流通し易くなる。したがって、正、負極間のガスの滞留による反応の不均一化を抑制し、より安全に圧力感応式の電流遮断機構を作動させることができるようになり、過充電時の安全性が非常に良好となる。
【0054】
半導電性保護層は、ガスを透過できるように多孔質であることが好ましい。また、半導電性保護層の空隙率は、正極合剤層の空隙率よいも大きいことが好ましい。これにより、過充電状態時に半導電性保護層中の炭酸リチウムが分解することによって発生した炭酸ガスは偏平状の巻回電極体の外部へより流通し易くなる。
【0055】
なお、半導電性保護層の厚みは、正極合剤層の厚さ以下とされていることが好ましく、正極合剤層の厚さよりも小さくされていることがより好ましい。半導電性保護層は、正極合剤層に隣接して設けられていてもよい。また、半導電性保護層は、正極合剤層から離間した位置に設けられていてもよい。半導電性保護層が、正極合剤層から離間した位置に設けられていると、容易に半導電性保護層の表面が対向配置されるセパレータに被覆されない状態とすることができ、炭酸ガスの流通性が良好となるため、上記効果が特に良好に奏されるようになる。
半導電性保護層は、アルミナ、二酸化ケイ素及び酸化チタンから選択された少なくとも1種と黒鉛との混合物の微粒子を含むことが好ましい。
半導電性保護層は、対向配置されるセパレータに被覆されない領域が生じるように形成されていることが好ましい。半導電性保護層の幅を対向配置されるセパレータによって半導電性保護層の表面の全てが被覆されない範囲とすると、常時正極合剤層と偏平状の巻回電極体の外部との間の通気性は良好に確保される。そのため、非水電解質二次電池が過充電状態となって半導電性保護層内で炭酸リチウムが分解して炭酸ガスが発生した場合、この炭酸ガスは半導電性保護層内を通って偏平状の巻回電極体の外部へ抜け易くなる。
半導電性保護層中の炭酸リチウム量は正極合剤層中の正極活物質の総質量に対して0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0056】
第2の発明に係る非水電解質二次電池は、正極板の作製時に用いる正極合剤スラリー及び半導電性保護層スラリーの構成が異なることを除いて実質的に上記実施形態の非水電解質二次電池10と同様とすることができる。以下に正極合剤スラリー及び半導電性保護層スラリーの製造方法を説明する。
【0057】
[正極合剤スラリー]
炭酸リチウムを添加しないことを除いては、上記実施形態と同様の方法で正極合剤スラリーを作製する。
【0058】
[半導電性保護層スラリー]
アルミナ粉末、導電剤としての黒鉛、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、炭酸リチウムと、溶剤としてのN−メチルピロリドン(NMP)を、アルミナ粉末:黒鉛:炭酸リチウム:PVdFの質量比が82:3:1:14となるように混練し、半導電性保護層スラリーとする。
【0059】
上記の半導電性保護層スラリーの製造方法においては、半導電性保護層の形成材料としてアルミナ及び黒鉛の混合物からなる微粒子を用いた例を示したが、アルミナ、二酸化ケイ素及び酸化チタンから選択された少なくとも1種と黒鉛との混合物の微粒子をも用いることができる。特にアルミナ微粒子及び黒鉛微粒子を用いると、正極芯体ないし正極合剤層との間の付着性が良好となる。半導電性保護層層の形成材料の粒径範囲は、臨界的限度はなく、形成された保護層の厚さが正極合剤層の厚さよりも小さくなる範囲で任意に選択し得る。正極芯体露出部を正極板の幅方向の一方側の端部のみに形成し、この方側の端部にのみ半導電性保護層を形成してもよい。また、正極芯体露出部を正極板の幅方向の両側に形成し、正極芯体露出部にそれぞれ半導電性保護層を形成してもよい。
【0060】
半導電性保護層は、導電性を有し、且つ正極芯体よりも導電性の低い層とすることが好ましい。半導電性保護層は、アルミナ、シリカ、チタニア及びジルコニアから選択される少なくとも1種、バインダー、及び炭素材料を含む事が好ましい。
【0061】
なお、本願に記載の発明の非水電解質二次電池で使用し得る正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能な化合物であれば適宜選択して使用できる。これらの正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLiMO(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1−y(y=0.01〜0.99)、LiMnO、LiCoMnNi(x+y+z=1)や、LiMn又はLiFePOなどを一種単独もしくは複数種を混合して用いることができる。さらには、リチウムコバルト複合酸化物にジルコニウムやマグネシウム、アルミニウムなどの異種金属元素を添加したものも使用し得る。
【0062】
非水電解質の溶媒としては、特に限定されるものではなく、非水電解質二次電池に従来から用いられてきた溶媒を使用することができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトンなどのエステルを含む化合物;、プロパンスルトンなどのスルホン基を含む化合物;1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテルを含む化合物;ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリルなどのニトリルを含む化合物;ジメチルホルムアミドなどのアミドを含む化合物などを用いることができる。特に、これらのHの一部がFにより置換されている溶媒が好ましく用いられる。また、これらを単独又は複数組み合わせて使用することができ、特に環状カーボネートと鎖状カーボネートとを組み合わせた溶媒や、さらにこれらに少量のニトリルを含む化合物やエーテルを含む化合物が組み合わされた溶媒が好ましい。
【0063】
また、非水電解質の非水系溶媒としてイオン性液体を用いることもでき、この場合、カチオン種、アニオン種については特に限定されるものではないが、低粘度、電気化学的安定性、疎水性の観点から、カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、4級アンモニウムカチオンを、アニオンとしては、フッ素含有イミド系アニオンを用いた組合せが特に好ましい。
【0064】
さらに、非水電解質に用いる溶質としても、従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のリチウム塩を用いることができる。そして、このようなリチウム塩としては、P、B、F、O、S、N、Clの中の一種類以上の元素を含むリチウム塩を用いることができ、具体的には、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CSO、LiAsF、LiClO、LiPFなどのリチウム塩及びこれらの混合物を用いることができる。特に、非水電解質二次電池における高率充放電特性や耐久性を高めるためには、LiPFを用いることが好ましい。
【0065】
また、溶質としては、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩を用いることもできる。このオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩としては、LiBOB(リチウム−ビスオキサレートボレート)の他、中心原子にC2−が配位したアニオンを有するリチウム塩、例えば、Li[M(C](式中、Mは遷移金属、周期律表の13族,14族,15族から選択される元素、Rはハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基から選択される基、xは正の整数、yは0又は正の整数である。)で表わされるものを用いることができる。具体的には、Li[B(C)F]、Li[P(C)F]、Li[P(C]などがある。ただし、高温環境下においても負極の表面に安定な被膜を形成するためには、LiBOBを用いることが最も好ましい。
【0066】
なお、上記溶質は、単独で用いるのみならず、2種以上を混合して用いても良い。また、溶質の濃度は特に限定されないが、非水電解液1リットル当り0.8〜1.7モルであることが望ましい。更に、大電電流での放電を必要とする用途では、上記溶質の濃度が非水電解液1リットル当たり1.0〜1.6モルであることが望ましい。
【0067】
本願に記載の発明の一局面の非水電解質二次電池において、その負極に用いる負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵・放出できるものであれば特に限定されず、例えば、炭素材料や、リチウム金属、リチウムと合金化する金属或いは合金材料や、金属酸化物などを用いることができる。なお、材料コストの観点からは、負極活物質に炭素材料を用いることが好ましく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維(MCF)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス、ハードカーボンなどを用いることができる。特に、高率充放電特性を向上させる観点からは、負極活物質として、黒鉛材料を低結晶性炭素で被覆した炭素材料を用いることが好ましい。
【0068】
セパレータとしては、従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のものを用いることができる。具体的には、ポリエチレンからなるセパレータのみならず、ポリエチレンの表面にポリプロピレンからなる層が形成されたものや、ポリエチレンのセパレータの表面にアラミド系の樹脂が塗布されたものを用いても良い。
【0069】
正極とセパレータとの界面ないし負極とセパレータとの界面には、従来から用いられてきた無機物のフィラーを含む層を形成することができる。このフィラーとしても、従来から用いられてきたチタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウムなどを単独もしくは複数用いた酸化物やリン酸化合物、またその表面が水酸化物などで処理されているものを用いることができる。また、このフィラー層の形成は、正極、負極、あるいはセパレータに、フィラー含有スラリーを直接塗布して形成する方法や、フィラーで形成したシートを、正極、負極、あるいはセパレータに貼り付ける方法などを用いることができる。
【0070】
上記実施形態及び第2の発明においては、正極板と正極端子の間の導電経路及び負極板と負極端子の間の導電経路の少なくとも一方に圧力感応式の電流遮断機構が設けられた非水電解質二次電池について説明した。この圧力感応式の電流遮断機構を設ける代わりに圧力感応式の強制短絡機構を設けた非水電解質二次電池とすることも考えられる。
【0071】
強制短絡機構としては、図7に示すように封口板23における負極端子20の近傍に設けられることが好ましい。図8は、図7の強制短絡機構50が設けられた部分の拡大図である。図8Aは強制短絡機構50の作動前の状態を示し、図8Bは強制短絡機構50の作動後の状態を示す。
【0072】
図8Aに示すように、金属製の封口体23が正極板11に電気的に接続された弁部51を有し、この弁部51の外側に負極板12に電気的に接続された板状の導電部材52を配置する。弁部51は金属製であり、封口体23に一体的に形成されていてもよい。また、封口体23とは別体の弁部51を封口体23に接続してもよい。ここで、導電部材52は負極端子20に接続されており、負極集電体19を介して負極板12に電気的に接続されている。なお、導電部材52、負極端子20及び負極集電体19は絶縁部材22により封口体23とは電気的に絶縁されている。
【0073】
電池が過充電状態となり電池内部の圧力が所定値以上となった場合、図8Bに示すように、弁部51が外側(図8B中では上側)に変形し、導電部材52に接触する。弁部51は金属製で正極板11に電気的に接続され、また導電部材52は負極板12に電気的に接続されているため、弁部51と導電部材52が接触することにより正極板11と負極板12が短絡した状態となる。これにより、電極体内に充電電流が流れ込むことを防止できる。また、電極体内のエネルギーを速やかに放出することができる。このようにして、電池が過充電状態になった場合に安全性を確保することができる。
【符号の説明】
【0074】
10…非水電解質二次電池 11、11A…正極板 11a…正極合剤層
11b…保護層 12…負極板 12a…負極合剤層
13…セパレータ 14、14A…偏平状の巻回電極体 15…正極芯体露出部
15a…溶接痕 16…負極芯体露出部 17…正極集電体
18…正極端子 19…負極集電体 20…負極端子
21、22…絶縁部材 23…封口体 24…絶縁シート
25…角形外装体 26…電解液注液口 27…電流遮断機構
28…ガス排出弁 29…正極用導電部材 30…正極用中間部材
31…負極用導電部材 32…負極用中間部材 33、34…溶接跡
50…強制短絡機構 51…弁部 52…導電部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8