(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非水電解質二次電池においては、正極板と負極板とはセパレータによって互いに絶縁された状態で巻回された巻回電極体を有している。偏平状の巻回電極体においては、巻き始め側及び巻き終り側の正極板の端部はセパレータによって被覆されている。セパレータは柔軟であるため、巻き始め側及び巻き終り側の正極板の端部はセパレータによって密に被覆されてしまう。
【0007】
また、非水電解質二次電池が過充電状態となった場合、正極板の表面でガスが発生し、発生したガスは巻回電極体内から外へ移動する。しかしながら、上記のような状態であると、発生したガスは、ガス抜け経路の一部である巻き始め側及び巻き終り側の正極板の端部を経て巻回電極体の外部へ移動し難くなるため、巻回電極体内の正極板の表面に残留してしまう。よって、圧力検知式の電流遮断機構を確実に作動させることができなくなる。この場合、正極板の表面にガスが存在している箇所は電流が流れないために過充電状態は解消されるが、同時にその周辺の正極板の表面にガスが存在していない箇所では、過剰な電流が流れて過充電状態がさらに促進されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の非水電解質二次電池によれば、
正極芯体上に正極合剤層が形成された正極板と、
負極芯体上に負極合剤層が形成された負極板と、
前記正極板及び前記負極板がセパレータを挟んで互いに絶縁された状態で偏平状に巻回された偏平状の巻回電極体と、
非水電解質と、
外装体と、を有し、
前記偏平状の巻回電極体の一方の端部には巻回された正極芯体露出部が形成され、
前記偏平状の巻回電極体の他方の端部には巻回された負極芯体露出部が形成され、
前記巻回された正極芯体露出部は収束されて正極集電体が接続され、
前記巻回された負極芯体露出部は収束されて負極集電体が接続され、
前記正極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一方に電気的に接続された圧力感応式の電流遮断機構が設けられており、
前記正極合剤層内には炭酸リチウムが含有されており、
前記正極板の巻き始め側端部及び巻き終り側端部の少なくとも一方の前記正極合剤層上であって、前記セパレータと対向する位置には、前記正極合剤層の幅方向に沿って、絶縁テープが貼付されている、
非水電解質二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様の非水電解質二次電池においては、正極合剤層内には炭酸リチウムが含有されており、正極板の巻き始め側端部及び巻き終り側端部の少なくとも一方の正極合剤層上であって、セパレータと対向する位置には、正極合剤層の幅方向に沿って、絶縁テープが貼付されている。この絶縁テープの存在により、正極合剤層とセパレータとの間に段差が生じ、この段差に基いて偏平状の巻回電極体の巻回軸方向に通気流路が形成される。これにより、過充電状態時に正極合剤層中の炭酸リチウムが分解することによって発生した炭酸ガスは、段差に基づく通気流路を経て、偏平状の巻回電極体の外部へ流通し易くなる。
【0010】
そのため、本発明の一態様の非水電解質二次電池によれば、炭酸ガスが正極合剤層の表面に滞留し難くなるので、電池内部の温度が上昇して発煙・発火・破裂などの異常状態に至る前に、電池内部の圧力を迅速に上昇させ確実に圧力感応式の電流遮断機構を作動させることができるようになり、過充電時の安全性が非常に良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す各実施形態は、本発明の技術思想を理解するために例示するものであって、本発明をこの実施形態に特定することを意図するものではない。本発明は、特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0013】
[実施形態]
最初に、実施形態の非水電解質二次電池を
図1〜
図4を用いて説明する。この非水電解質二次電池10は、
図4に示したように、正極板11と負極板12とがセパレータ13を介して互いに絶縁された状態で巻回された偏平状の巻回電極体14を有している。この偏平状の巻回電極体14の最外面側は、セパレータ13で被覆されているが、負極板12が正極板11よりも外周側となるようになされている。
【0014】
正極板11は、
図3Aに示したように、厚さが10〜20μm程度のアルミニウム又はアルミニウム合金箔からなる正極芯体の両面に、幅方向の一方側の端部に沿って正極芯体が帯状に露出した状態となるように、正極合剤層11aが形成されている。この帯状に露出した正極芯体部分が正極芯体露出部15となる。この正極板11の巻き終り側端部には、両面の正極合剤層11a上であって、セパレータ13と対向する位置に、正極合剤層11aの幅方向に沿って、絶縁テープ11bが貼付されている。この絶縁テープ11bの具体的構成や作用などについては、後述する。
【0015】
負極板12は、
図3Bに示したように、厚さが5〜15μm程度の銅又は銅合金箔からなる負極芯体の両面に、幅方向の一方側の端部に沿って負極芯体が帯状に露出した状態となるように、負正極合剤層12aが形成されている。この帯状に露出した負極芯体部分が負極芯体露出部16となる。なお、正極芯体露出部15ないし負極芯体露出部16は、それぞれ正極板11ないし負極板12の幅方向の両側の端部に沿って形成してもよい。
【0016】
これらの正極板11及び負極板12を、正極芯体露出部15と負極芯体露出部16とがそれぞれ対向する電極の合剤層と重ならないようにずらし、セパレータ13を挟んで互いに絶縁した状態で偏平状に巻回することにより、偏平状の巻回電極体14が作製される。偏平状の巻回電極体14は、
図2A、
図2B及び
図4Aに示したように、一方の端には複数枚積層された正極芯体露出部15を備え、他方の端には複数枚積層された負極芯体露出部16を備えている。セパレータ13としては、好ましくはポリオレフィン製の微多孔性膜が二枚あるいは長尺状の一枚を折畳んで使用されており、その幅は正極合剤層11aを被覆できるとともに負極合剤層の幅よりも大きいものが使用されている。
【0017】
複数枚積層された正極芯体露出部15は、正極集電体17を介して正極端子18に電気的に接続されている。正極集電体17と正極端子18との間には、電池の内部で発生したガス圧によって作動する電流遮断機構27が設けられている。複数枚積層された負極芯体露出部16は、負極集電体19を介して負極端子20に電気的に接続されている。
【0018】
正極端子18、負極端子20は、
図1A、
図1B及び
図2Aに示したように、それぞれ絶縁部材21、22を介して封口体23に固定されている。封口体23には、電流遮断機構27の作動圧よりも高いガス圧が加わったときに開放されるガス排出弁28も設けられている。正極集電体17、正極端子18及び封口体23は、それぞれアルミニウム又はアルミニウム合金製のものが用いられている。負極集電体19及び負極端子20は、それぞれ銅又は銅合金製のものが用いられている。
【0019】
偏平状の巻回電極体14は、封口体23側を除く周囲に樹脂材料から形成された絶縁シート24が介在され、一面が開放された角形外装体25内に挿入されている。角形外装体25は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金製のものが用いられる。封口体23は、角形外装体25の開口部に嵌合され、封口体23と角形外装体25との嵌合部がレーザ溶接されている。角形外装体25内には電解液注液口26から非水電解液が注液され、この電解液注液口26は例えばブラインドリベットにより密閉されている。
【0020】
非水電解質二次電池10は、単独であるいは複数個が直列、並列ないし直並列に接続されて各種用途で使用される。なお、この非水電解質二次電池10を車載用途等において複数個直列ないし並列に接続して使用する際には、別途正極外部端子及び負極外部端子を設けてそれぞれの電池をバスバーで接続するとよい。
【0021】
実施形態の非水電解質二次電池10で用いられている偏平状の巻回電極体14は、電池容量が20Ah以上の高容量及び高出力特性が要求される用途に用いられるものであり、例えば正極板11の巻回数が43回、すなわち、正極板11の総積層枚数は86枚と多くなっている。なお、巻回数が15回以上、すなわち、総積層枚数が30枚以上であれば、電池サイズを必要以上に大型化せずに容易に電池容量を20Ah以上とすることができる。
【0022】
このように正極芯体露出部15ないし負極芯体露出部16の総積層枚数が多いと、正極芯体露出部15に正極集電体17を、負極芯体露出部16に負極集電体19を、それぞれ抵抗溶接により取り付ける際に、多数積層された正極芯体露出部15ないし負極芯体露出部16の全積層部分にわたって貫通するような溶接痕15a、16aを形成するには多大な溶接電流が必要である。
【0023】
そのため、
図2A〜
図2Cに示すように、正極板11側では、巻回されて積層された複数枚の正極芯体露出部15は、厚み方向の中央部に収束されてさらに2分割され、偏平状の巻回電極体の厚みの1/4を中心として収束され、その間に正極用中間部材30が配置されている。正極用中間部材30は樹脂材料からなる基体に導電性の正極用導電部材29が複数個、例えば2個保持されている。正極用導電部材29は、例えば円柱状のものが用いられ、それぞれ積層された正極芯体露出部15と対向する側に、プロジェクションとして作用する円錐台状の突起が形成されている。
【0024】
負極板12側では、巻回されて積層された複数枚の負極芯体露出部16は、厚み方向の中央側に収束されてさらに分割され、偏平状の巻回電極体の厚みの1/4を中心として収束され、その間に負極用中間部材32が配置されている。負極用中間部材32は、樹脂材料からなる基体に負極用導電部材31が複数個、ここでは2個が保持されている。負極用導電部材31は、例えば円柱状のものが用いられ、それぞれ積層された負極芯体露出部16と対向する側に、プロジェクションとして作用する円錐台状の突起が形成されている。
【0025】
また、正極用導電部材29の両側に位置する正極芯体露出部15の最外側の両側の表面にはそれぞれ正極集電体17が配置されており、負極用導電部材31の両側に位置する負極芯体露出部16の最外側の両側の表面にはそれぞれ負極集電体19が配置されている。なお、正極用導電部材29は正極芯体と同じ材料であるアルミニウム又はアルミニウム製のものが好ましく、負極用導電部材31は負極芯体と同じ材料である銅又は銅合金製のものが好ましい。正極用導電部材29及び負極用導電部材31の形状は、同じであっても異なっていてもよい。
【0026】
実施形態の偏平状の巻回電極体14における正極芯体露出部15、正極集電体17、正極用導電部材29を有する正極用中間部材30を用いた抵抗溶接方法、及び、負極芯体露出部16、負極集電体19、負極用導電部材31を有する負極用中間部材32を用いた抵抗溶接方法は、既に周知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0027】
このように正極芯体露出部15ないし負極芯体露出部16を2分割すると、多数積層された正極芯体露出部15ないし負極芯体露出部16の全積層部分にわたって貫通するような溶接痕を形成するために必要な溶接電流は、2分割しない場合と比すると小さくて済むので、抵抗溶接時のスパッタの発生が抑制され、スパッタに起因する偏平状の巻回電極体14の内部短絡などのトラブルの発生が抑制される。
図2Aには、正極集電体17に抵抗溶接により形成された2箇所の溶接跡33が示されており、負極集電体19にも2箇所の溶接跡34が示されている。
【0028】
次に、実施形態の非水電解質二次電池10における正極板11、負極板12、偏平状の巻回電極体14及び非水電解液の具体的製造方法ないし組成について説明する。
【0029】
[正極板の作製]
正極活物質としては、LiNi
0.35Co
0.35Mn
0.30O
2で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を用いた。このリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物と、導電剤としての炭素粉末と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(
PVdF)と、炭酸リチウムとを、それぞれ質量比で92:0.9:5:1.5となるよ
うに秤量し、分散媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合して正極合剤
スラリーを調製した。
【0030】
炭酸リチウムは、正極合剤に対して、0.1〜5.0質量%含有させることが好ましい。正極合剤における炭酸リチウムの含有量が0.1質量%未満であると、炭酸リチウムからの炭酸ガスの発生が少なく、電流遮断機構を迅速に作動させ難くなる。正極合剤における炭酸リチウムの含有量が5.0質量%を超えると、電極反応に関与しない炭酸リチウムの割合が過度に多くなり、電池容量の低下が大きくなる。
【0031】
正極芯体としては厚さ15μmのアルミニウム箔を用い、上記の方法で作製した正極合剤スラリーを、正極芯体の両面にダイコーターによって塗布した。ただし、正極芯体の長手方向に沿う一方の端部(両面ともに同一方向の端部)にはスラリーを塗布せず、その芯体を露出させて、正極芯体露出部15を形成した。次いで、乾燥して分散媒としてのNMPを除去し、ロールプレスによって所定厚さとなるように圧縮し、得られた極板を予め定めた所定寸法に切り出した。
【0032】
次いで、
図3Aに示したように、正極板11の巻き終り端のセパレータ13と対向する位置の両面に、正極合剤層11aの幅方向に沿って、予め定めた一定幅にポリプロピレン(PP)製絶縁テープ11bを貼付した。この際、それぞれの絶縁テープ11bを、それぞれ正極合剤層11aよりも外方(
図3Aにおいては左側)に延在するように貼付し、延在部分を互いに張り合わせた。絶縁テープ11bの長さは、正極板11の正極合剤層11aの幅と同じとなるようにしたが、正極合剤層11aの幅より短くても長くてもよい。このようにして作製された正極板11の構成は、
図3Aに示したとおりとなる。
【0033】
[負極板の作製]
負極板は次のようにして作製した。黒鉛粉末98質量部、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)1質量部、結着剤としてのスチレン−ブタジエンゴム(SBR)1質量部を水に分散させ負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体の両面にダイコーターによって塗布し、乾燥して負極集電体の両面に負極合剤層を形成した。次いで、乾燥し、圧縮ローラーを用いて所定厚さに圧縮し、得られた極板を予め定めた所定寸法に切り出した。その後、極板の幅方向の一方端に、長さ方向全体にわたって一定幅に負正極合剤層が両面ともに形成されていない負極芯体露出部16が形成されるように、負極合剤層を剥離した。このようにして作製された負極板12の構成は、
図3Bに示したとおりである。
【0034】
[非水電解液の調製]
非水電解液としては、溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とを体積比(25℃、1気圧)で3:7の割合で混合した混合溶媒に電解質塩としてLiPF
6を1mol/Lとなるように添加し、さらに全非水電解質質量に対してビニレンカーボネートVCを0.3質量%添加したものを用いた。
【0035】
[偏平状の巻回電極体の作製]
上述ようにして作製された負極板12及び正極板11を、最外面側が負極板12となるようにして、それぞれセパレータ13を介して互いに絶縁された状態で巻回した後、偏平状に成形して偏平状の巻回電極体14を作製した。偏平状の巻回電極体14の巻回終了端側の構成は
図4Aに示したとおりである。また、偏平状の巻回電極体14は圧縮されているため、偏平状の巻回電極体14の形成時の正極板11における正極合剤層11aと、絶縁テープ11bと、セパレータ13との配置関係は、
図4Bに示したとおりとなる。
【0036】
このように、絶縁テープ11bを設けたことによって、正極板11の巻き終り端に段差が形成される。そのため、偏平状の巻回電極体14の形成時に偏平状の巻回電極体14が圧縮されても、正極合剤層11aとセパレータ13との間及び絶縁テープ11bとセパレータ13との間には、偏平状の巻回電極体14の巻回軸方向(
図4Bにおいては紙面に垂直な方向)に十分な空隙が形成される。これにより、正極合剤層11aと偏平状の巻回電極体14の外部との間の通気性は良好に確保される。そのため、非水電解質二次電池10が過充電状態となって正極合剤層11a中で炭酸リチウムが分解して炭酸ガスが発生した場合、この炭酸ガスは偏平状の巻回電極体14の外部へ抜け易くなる。
【0037】
したがって、実施形態の非水電解質二次電池10においては、炭酸ガスが正極合剤層11aの表面に滞留し難くなるので、電池内部の温度が上昇して発煙・発火・破裂などの異常状態に至る前に、電池内部の圧力を迅速に上昇させ確実に圧力感応式の電流遮断機構27(
図2A参照)を作動させることができるようになる。電流遮断機構27が作動すると、充電電流が流れないためにそれ以上の炭酸ガスの発生は停止するので、非水電解質二次電池10の内圧が増加することがなくなり、過充電時の安全性が非常に良好となる。
【0038】
[比較例]
比較例の非水電解質二次電池の具体的構成を
図5及び
図6を用いて説明する。比較例の非水電解質二次電池の具体的構成は、正極板の構成を除いて実質的に実施形態の非水電解質二次電池10と同様である。そこで、適宜
図1及び
図2を援用するとともに、実施形態の非水電解質二次電池10と同一の構成部分には同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0039】
比較例の非水電解質二次電池は、
図5及び
図6に示したように、正極板11Aとして、実施形態の正極板11における絶縁テープ11bを有していない以外は、実施形態の正極板11と同様の構成を有している。比較例の偏平状の巻回電極体14Aの巻回終了端側の構成は、
図6Aに示したとおりである。
【0040】
偏平状の巻回電極体14Aの形成時の正極板11における正極合剤層11aとセパレータ13との配置関係は、
図6Bに示したとおりである。このように、正極板1の巻き終り側端部に絶縁テープが存在しない場合、セパレータ13は軟質であるため、正極板11とセパレータ13との間の空隙は非常に狭くなる。
【0041】
したがって、比較例の非水電解質二次電池においては、過充電状態となって正極合剤層11a中で炭酸リチウムが分解して炭酸ガスが発生した場合、この炭酸ガスは正極合剤層11aの表面側に滞留しがちとなる。したがって、圧力検知式の電流遮断機構を十分に作動させることができない。そのため、比較例の非水電解質二次電池によれば、実施形態の非水電解質二次電池10に比べて、安全性が不十分となる。
【0042】
実施形態の非水電解質二次電池10では、絶縁テープ11bとしては、PP製のものを用いた例を示したが、ポリエチレン(PE)、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなど、絶縁テープとして普通に使用されているものから適宜に選択して使用し得る。絶縁テープ11bの厚さは、厚いほど段差が大きくなってセパレータ13との間に形成される隙間が大きくなるので通気性が良好となる。しかし、段差が大きくなると偏平状の巻回電極体14の表面に凹凸が目立つようになるので、縁テープ11bの厚さは正極合剤層11aの厚さ以下が好ましい。
【0043】
実施形態の非水電解質二次電池10では、絶縁テープ11bを正極板11の巻き終り側端部にのみ設けた例を示したが、巻き始め側端部にのみ形成してもよく、さらには、巻き終り側端部及び巻き始め側端部の両方に設けてもよい。特に、正極板11の巻き終り側端部及び巻き始め側端部の両方に設けると、偏平状の巻回電極体14の巻回軸方向の通気性がより良好となるので、上記効果がより良好に奏されるようになる。
【0044】
実施形態の非水電解質二次電池10では、絶縁テープ11bを正極合剤層11aの両面貼付した例を示したが、片面のみでもよい。さらに、実施形態の非水電解質二次電池10では、両面の正極合剤層11aに貼付されている絶縁テープ11bとして、それぞれ正極合剤層11aよりも外方に延在して互いに張り合わされている例を示したが、正極合剤層11aの表面のみに貼付されているものとしてもよい。
【0045】
なお、本発明の非水電解質二次電池で使用し得る正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能な化合物であれば適宜選択して使用できる。これらの正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLiMO
2(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
yCo
1−yO
2(y=0.01〜0.99)、LiMnO
2、LiCo
xMn
yNi
zO
2(x+y+z=1)や、LiMn
2O
4又はLiFePO
4などを一種単独もしくは複数種を混合して用いることができる。さらには、リチウムコバルト複合酸化物にジルコニウムやマグネシウム、アルミニウムなどの異種金属元素を添加したものも使用し得る。
【0046】
非水電解質の溶媒としては、特に限定されるものではなく、非水電解質二次電池に従来から用いられてきた溶媒を使用することができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトンなどのエステルを含む化合物;、プロパンスルトンなどのスルホン基を含む化合物;1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテルを含む化合物;ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリルなどのニトリルを含む化合物;ジメチルホルムアミドなどのアミドを含む化合物などを用いることができる。特に、これらのHの一部がFにより置換されている溶媒が好ましく用いられる。また、これらを単独又は複数組み合わせて使用することができ、特に環状カーボネートと鎖状カーボネートとを組み合わせた溶媒や、さらにこれらに少量のニトリルを含む化合物やエーテルを含む化合物が組み合わされた溶媒が好ましい。
【0047】
また、非水電解質の非水系溶媒としてイオン性液体を用いることもでき、この場合、カチオン種、アニオン種については特に限定されるものではないが、低粘度、電気化学的安定性、疎水性の観点から、カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、4級アンモニウムカチオンを、アニオンとしては、フッ素含有イミド系アニオンを用いた組合せが特に好ましい。
【0048】
さらに、非水電解質に用いる溶質としても、従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のリチウム塩を用いることができる。そして、このようなリチウム塩としては、P、B、F、O、S、N、Clの中の一種類以上の元素を含むリチウム塩を用いることができ、具体的には、LiPF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(FSO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiC(C
2F
5SO
2)
3、LiAsF
6、LiClO
4、LiPF
2O
2などのリチウム塩及びこれらの混合物を用いることができる。特に、非水電解質二次電池における高率充放電特性や耐久性を高めるためには、LiPF
6を用いることが好ましい。
【0049】
また、溶質としては、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩を用いることもできる。このオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩としては、LiBOB(リチウム−ビスオキサレートボレート)の他、中心原子にC
2O
42−が配位したアニオンを有するリチウム塩、例えば、Li[M(C
2O
4)
xR
y](式中、Mは遷移金属、周期律表の13族,14族,15族から選択される元素、Rはハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基から選択される基、xは正の整数、yは0又は正の整数である。)で表わされるものを用いることができる。具体的には、Li[B(C
2O
4)F
2]、Li[P(C
2O
4)F
4]、Li[P(C
2O
4)
2F
2]などがある。ただし、高温環境下においても負極の表面に安定な被膜を形成するためには、LiBOBを用いることが最も好ましい。
【0050】
なお、上記溶質は、単独で用いるのみならず、2種以上を混合して用いても良い。また、溶質の濃度は特に限定されないが、非水電解液1リットル当り0.8〜1.7モルであることが望ましい。更に、大電電流での放電を必要とする用途では、上記溶質の濃度が非水電解液1リットル当たり1.0〜1.6モルであることが望ましい。
【0051】
本発明の一局面の非水電解質二次電池において、その負極に用いる負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵・放出できるものであれば特に限定されず、例えば、炭素材料や、リチウム金属、リチウムと合金化する金属或いは合金材料や、金属酸化物などを用いることができる。なお、材料コストの観点からは、負極活物質に炭素材料を用いることが好ましく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維(MCF)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス、ハードカーボンなどを用いることができる。特に、高率充放電特性を向上させる観点からは、負極活物質として、黒鉛材料を低結晶性炭素で被覆した炭素材料を用いることが好ましい。
【0052】
セパレータとしては、従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のものを用いることができる。具体的には、ポリエチレンからなるセパレータのみならず、ポリエチレンの表面にポリプロピレンからなる層が形成されたものや、ポリエチレンのセパレータの表面にアラミド系の樹脂が塗布されたものを用いても良い。
【0053】
正極とセパレータとの界面ないし負極とセパレータとの界面には、従来から用いられてきた無機物のフィラーを含む層を形成することができる。このフィラーとしても、従来から用いられてきたチタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウムなどを単独もしくは複数用いた酸化物やリン酸化合物、またその表面が水酸化物などで処理されているものを用いることができる。また、このフィラー層の形成は、正極、負極、あるいはセパレータに、フィラー含有スラリーを直接塗布して形成する方法や、フィラーで形成したシートを、正極、負極、あるいはセパレータに貼り付ける方法などを用いることができる。
【0054】
上記実施形態においては、正極板と正極端子の間の導電経路及び負極板と負極端子の間の導電経路の少なくとも一方に圧力感応式の電流遮断機構が設けられた非水電解質二次電池について説明した。この圧力感応式の電流遮断機構を設ける代わりに圧力感応式の強制短絡機構を設けた非水電解質二次電池とすることも考えられる。
【0055】
強制短絡機構としては、
図7に示すように封口板23における負極端子20の近傍に設けられることが好ましい。
図8は、
図7の強制短絡機構50が設けられた部分の拡大図である。
図8Aは強制短絡機構50の作動前の状態を示し、
図8Bは強制短絡機構50の作動後の状態を示す。
【0056】
図8Aに示すように、金属製の封口体23が正極板11に電気的に接続された弁部51を有し、この弁部51の外側に負極板12に電気的に接続された板状の導電部材52を配置する。弁部51は金属製であり、封口体23に一体的に形成されていてもよい。また、封口体23とは別体の弁部51を封口体23に接続してもよい。ここで、導電部材52は負極端子20に接続されており、負極集電体19を介して負極板12に電気的に接続されている。なお、導電部材52、負極端子20及び負極集電体19は絶縁部材22により封口体23とは電気的に絶縁されている。
【0057】
電池が過充電状態となり電池内部の圧力が所定値以上となった場合、
図8Bに示すように、弁部51が外側(
図8B中では上側)に変形し、導電部材52に接触する。弁部51は金属製で正極板11に電気的に接続され、また導電部材52は負極板12に電気的に接続されているため、弁部51と導電部材52が接触することにより正極板11と負極板12が短絡した状態となる。これにより、電極体内に充電電流が流れ込むことを防止できる。また、電極体内のエネルギーを速やかに放出することができる。このようにして、電池が過充電状態になった場合に安全性を確保することができる。
【符号の説明】
【0058】
10…非水電解質二次電池 11、11A…正極板 11a…正極合剤層
11b…絶縁テープ 12…負極板 12a…負極合剤層
13…セパレータ 14、14A…偏平状の巻回電極体 15…正極芯体露出部
15a…溶接痕 16…負極芯体露出部 17…正極集電体
18…正極端子 19…負極集電体 20…負極端子
21、22…絶縁部材 23…封口体 24…絶縁シート
25…角形外装体 26…電解液注液口 27…電流遮断機構
28…ガス排出弁 29…正極用導電部材 30…正極用中間部材
31…負極用導電部材 32…負極用中間部材 33、34…溶接跡
50…強制短絡機構 51…弁部 52…導電部材