特許第6208295号(P6208295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6208295
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ウェビング巻取装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/48 20060101AFI20170925BHJP
   B60R 22/46 20060101ALI20170925BHJP
   F16H 1/08 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B60R22/48 102
   B60R22/46 166
   F16H1/08
【請求項の数】2
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-135242(P2016-135242)
(22)【出願日】2016年7月7日
【審査請求日】2016年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】馬越 智也
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 拓宏
(72)【発明者】
【氏名】永田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 隆宏
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−073839(JP,A)
【文献】 特開2003−212089(JP,A)
【文献】 特開2007−168561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R22/34−22/46
F16H 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に装着されるウェビングが巻取られるスプールと、
回転軸を有する回転子と、該回転子の一部を被うモータハウジングと、を有し、前記回転子が前記モータハウジングに対して前記回転軸の軸方向一方側へ付勢されたモータと、
前記回転軸に固定された第1ハスバギヤと、該第1ハスバギヤと噛合うと共に該第1ハスバギヤが前記回転軸と共に一方側へ回転されることで回転されて、前記スプールが回転される第2ハスバギヤと、を有し、前記回転軸が一方側へ回転される際に、前記回転軸の軸方向一方側への軸方向力が前記第1ハスバギヤに作用するように前記第1ハスバギヤの歯のねじれ角度が設定された伝達機構と、
を備えたウェビング巻取装置。
【請求項2】
前記第1ハスバギヤの自重によって前記回転子が前記モータハウジングに対して前記回転軸の軸方向一方側へ付勢されている請求項1記載のウェビング巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェビング巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、モータの駆動力によりスプールを巻取方向に回転させることで、ウェビングをスプールに巻取らせることが可能とされたウェビング巻取装置が開示されている。
【0003】
ところで、モータの駆動力によってスプールを回転させるウェビング巻取装置では、モータの駆動力によってスプールが回転されている際の作動音を低減することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−99257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、モータの駆動力によってスプールが回転されている際の作動音を低減することができるウェビング巻取装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のウェビング巻取装置は、乗員に装着されるウェビングが巻取られるスプールと、回転軸を有する回転子と、該回転子の一部を被うモータハウジングと、を有し、前記回転子が前記モータハウジングに対して前記回転軸の軸方向一方側へ付勢されたモータと、前記回転軸に固定された第1ハスバギヤと、該第1ハスバギヤと噛合うと共に該第1ハスバギヤが前記回転軸と共に一方側へ回転されることで回転されて、前記スプールが回転される第2ハスバギヤと、を有し、前記回転軸が一方側へ回転される際に、前記回転軸の軸方向一方側への軸方向力が前記第1ハスバギヤに作用するように前記第1ハスバギヤの歯のねじれ角度が設定された伝達機構と、を備えている。
【0007】
請求項2記載のウェビング巻取装置は、請求項1記載のウェビング巻取装置において、前記第1ハスバギヤの自重によって前記回転子が前記モータハウジングに対して前記回転軸の軸方向一方側へ付勢されている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のウェビング巻取装置によれば、乗員に装着されるウェビングが、スプールに巻取られている。また、モータの駆動力は伝達機構を介してスプールに伝達される。すなわち、モータの回転軸が一方側へ回転されると、第1ハスバギヤが回転される。また、第1ハスバギヤが回転されると、当該第1ハスバギヤと噛合う第2ハスバギヤが回転されて、スプールが回転される。これにより、ウェビングをスプールに巻取らせることができる。
【0009】
また、請求項1記載の発明では、モータの回転軸が一方側へ回転される際に、回転軸の軸方向一方側への軸方向力が第1ハスバギヤに作用するように、第1ハスバギヤの歯のねじれ角度が設定されている。これにより、モータの回転軸が一方側へ回転されている際に、モータの回転子が回転軸の軸方向他方側へ移動されることが抑制される。その結果、モータの回転子が回転軸の軸方向へ振動することによる異音の発生が抑制されて、モータの駆動力によってスプールが回転されている際の作動音を低減することができる。
【0010】
請求項2記載のウェビング巻取装置によれば、第1ハスバギヤ作用する軸方向力に加えて第1ハスバギヤの自重によって、回転子をモータハウジングに対して回転軸の軸方向一方側へ付勢することができる。これにより、モータの回転子が回転軸の軸方向へ振動することによる異音の発生がより一層抑制されて、モータの駆動力によってスプールが回転されている際の作動音をより一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るウェビング巻取装置を分解して示す分解斜視図である。
図2】第1クラッチをフレームの脚片側から見た側面図であり、ロックバーがラチェットに係合された状態を示している。
図3】第1クラッチをフレームの脚片側から見た図2に対応する側面図であり、ロックバーがラチェットに係合されていない状態を示している。
図4】第2クラッチを分解して示す分解斜視図である。
図5】第2クラッチを分解して示す図4とは反対側から見た分解斜視図である。
図6】第2クラッチを軸方向に沿って切断した断面を示す断面図である。
図7】第2クラッチの部分的な構成を示し、(A)はクラッチスプリングの通常の状態を示す側面図であり、(B)はクラッチスプリングの巻回部の外径寸法が拡大された状態を示す側面図である。
図8】モータを模式的に示す側面図である。
図9】ギヤハウジングにおいてモータが固定されるモータ固定部周辺を拡大して示す拡大平面図である。
図10】フィッティングアシスト時及びプリテンショナ時のモータの回転軸の回転の第1の伝達機構を説明するための説明図である。
図11】巻取アシスト時のモータの回転軸の回転の第2の伝達機構を説明するための説明図である。
図12】変形例に係る被係合孔及びその周辺を模式的に示す平面図である。
図13】他の変形例に係る被係合孔及びその周辺を模式的に図13に対応する示す平面図である。
図14】Aギヤが図8に示された側とは反対側に取付けられたモータを示す図8に対応する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図9を用いて、本実施形態のウェビング巻取装置について説明する。
【0013】
図1には、本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置10の分解斜視図が示されている。この図に示されるように、ウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は略板状の背板14を備えており、この背板14がボルト等の図示しない締結手段によって車体に固定されることで、本ウェビング巻取装置10が車体に固定されるようになっている。背板14の幅方向両端からは一対の脚片16、18が互いに平行に延設されており、これらの脚片16、18間にダイカスト等によって製作されたスプール20が回転可能に配置されている。なお、脚片16と脚片18との間には、接続片32が架渡されている。
【0014】
スプール20は略円筒状に形成されている。このスプール20には、長尺帯状に形成された図示しないウェビングの基端部が固定されており、スプール20をその軸線周り一方(以下、この方向を「巻取方向」という)へ回転させると、ウェビングがその基端側からスプール20の外周部に層状に巻取られる。また、ウェビングをその先端側から引張れば、スプール20の外周部に巻取られたウェビングが引出され、これに伴い、ウェビングを巻取る際の回転方向とは反対にスプール20が回転する(以下、ウェビングを引出す際のスプール20の回転方向を「引出方向」という)。
【0015】
また、スプール20における脚片16側の端部の軸心部には、支軸部29が立設されている。支軸部29は、脚片16に形成された円孔30を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。また、支軸部29の突出方向の基端側には後述するラチェット64が固定されている。これにより、ラチェット64がスプール20と共に回転することが可能となっている。
【0016】
また、後述するハウジングとしてのギヤハウジング52には、モータ38が固定されている。このモータ38は、フレーム12の一対の脚片16、18間におけるスプール20の下方に配置されている。なお、モータ38のモータハウジング240(図8参照)はモータカバー34に被われており、またモータカバー34はギヤハウジング52にスクリュー36を介して固定されている。
【0017】
また、モータ38の回転軸242には、複数の外歯41が外周部に形成された第1ギヤ及び第1ハスバギヤとしてのAギヤ40が固定されている。
【0018】
一方、スプール20における脚片18側の端部には、図示しない支軸部が立設されている。この支軸部は、脚片18に形成された図示しないラチェット孔を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。また、支軸部には、ロック機構の一部を構成するロックプレートが支持されたロックベースが固定されている。そして、車両の緊急時に(車両が急減速した際等に)ロックプレートがロックベースから突出して脚片18に形成されたラチェット孔の内周部に噛合い、スプール20の引出方向の回転が阻止されるようになっている。また、脚片18には、上記ロック機構等を覆うカバー42が固定されている。
【0019】
脚片16には、第1クラッチ44、Bギヤ46、OLギヤ48及びCギヤ50が収容されるギヤハウジング52がスクリュー54を介して固定されている。
【0020】
図2に示されるように、第1クラッチ44は、リング状に形成されたクラッチギヤ56と、クラッチギヤ56に取付けられたロックバー58及びリターンスプリング60と、フリクションスプリング62と、スプール20に固定されたラチェット64と、を含んで構成されている。
【0021】
具体的には、クラッチギヤ56の外周部には、複数の外歯57が形成されており、図1に示されるように、クラッチギヤ56の内周部には、スプール20の支軸部29が挿通される円形の挿通孔56Aが形成されている。また、クラッチギヤ56の径方向の中間部には、脚片16側に向けて突出すると共に当該クラッチギヤ56の周方向に間隔を空けて配置されたロックバー支持軸56B及びリターンスプリング支持軸56Cが立設されている。さらに、クラッチギヤ56の周方向の中間部には、フリクションスプリング62の一部が挿通されるフリクションスプリング挿通孔56Dが形成されている。図1に示されるように、以上説明したクラッチギヤ56は、ギヤハウジング52における脚片16側に形成された収容凹部内に収容されている。また、第1シート66がギヤハウジング52に取付けられることで、クラッチギヤ56の脚片16側への移動が規制されるようになっている。
【0022】
図2に示されるように、ロックバー58は、クラッチギヤ56の軸方向視で略半月状に形成されており、このロックバー58は、クラッチギヤ56に設けられたロックバー支持軸56Bに支持されることで傾動可能とされている。また、ロックバー58の一端部は、ラチェット64に係合するラチェット係合部58Aとされており、ロックバー58の他端部は、リターンスプリング60が当接するリターンスプリング当接部58Bとされている。
【0023】
リターンスプリング60は、環状に巻回されていると共にクラッチギヤ56に設けられたリターンスプリング支持軸56Cに支持される巻回部60Aを備えている。また、リターンスプリング60の一端部は、巻回部60Aから延出していると共にクラッチギヤ56の一部に係止される係止部60Bとされている。さらに、リターンスプリング60の他端部は、巻回部60Aから延出していると共にロックバー58のリターンスプリング当接部58Bに当接する当接部60Cとされている。そして、リターンスプリング60の付勢力が、ロックバー58のリターンスプリング当接部58Bに入力されることで、ロックバー58のラチェット係合部58Aがラチェット64と離間するようになっている。
【0024】
図1に示されるように、フリクションスプリング62は、クラッチギヤ56とギヤハウジング52との間に設けられており、このフリクションスプリング62は、クラッチギヤ56が回転された際にギヤハウジング52と摺接する摺接部62Aと、摺接部62Aからクラッチギヤ56側に向けて延出すると共に当該クラッチギヤ56に形成されたフリクションスプリング挿通孔56D(図2参照)に挿通される押圧部62Bと、を備えている。そして、図2に示されるように、クラッチギヤ56が軸方向一方側(矢印E1方向側)へ回転された際には、フリクションスプリング62の押圧部62Bがロックバー58のラチェット係合部58Aを押圧する。そしてさらに、フリクションスプリング62の押圧部62Bからロックバー58のラチェット係合部58Aに入力される力がリターンスプリング60の付勢力を超えると、ロックバー58が傾動されて、当該ロックバー58のラチェット係合部58Aがラチェット64に係合する。これにより、クラッチギヤ56に入力された回転力がロックバー58を介してラチェット64に入力されて、スプール20がラチェット64と共に巻取方向へ回転されるようになっている。これに対して、図3に示されるように、クラッチギヤ56が軸方向他方側(矢印E2方向側)へ回転された際には、フリクションスプリング62の押圧部62Bからロックバー58のラチェット係合部58Aに入力される力がリターンスプリング60の付勢力を超えないため、ロックバー58のラチェット係合部58Aはラチェット64に係合しない。これにより、クラッチギヤ56に入力された回転力がロックバー58を介してラチェット64に入力されないようなっている。
【0025】
ラチェット64は、ロックバー58のラチェット係合部58Aが係合する複数の被係合外歯64Aが外周部に形成された円板状に形成されている。そして、図1に示されるように、ラチェット64は、スプール20の支軸部29に圧入等により固定されている。
【0026】
第2ギヤ及び第2ハスバギヤとしてのBギヤ46は、Aギヤ40の外歯41が噛合う複数の外歯47Tが外周部に形成された大径部46Tと、当該大径部46Tと同軸上に配置されていると共に当該大径部46Tと一体に形成された小径部46Sと、を備えている。また、小径部46Sの外径は大径部46Tの外径よりも小径に設定されており、また小径部46Sの外周部には、後述するOLギヤ48が噛合う複数の外歯47Sが形成されている。
【0027】
OLギヤ48は、Bギヤ46と噛合う入力ギヤと、入力ギヤの回転力が伝達されることで回転されると共にCギヤ50と噛合う出力ギヤと、を含んで構成されている。なお、入力ギヤと出力ギヤとの間には、図示しないリミッタ機構が設けられることで、後述するプリテンショナ時に、ウェビングに生じる張力が所定値以上となることが抑制されるようになっている。
【0028】
図1に示されるように、Cギヤ50は、OLギヤ48の一部を構成する出力ギヤの外歯及び第1クラッチ44の一部を構成するクラッチギヤ56の外歯57と噛合う複数の外歯51が形成された円板状に形成されている。そして、Cギヤ50がOLギヤ48の出力ギヤによって回転されることで、Cギヤ50がクラッチギヤ56を回転させるようになっている。
【0029】
以上説明したBギヤ46、OLギヤ48及びCギヤ50は、ギヤハウジング52に形成された収容凹部52A内に収容された状態で当該収容凹部52A内に設けられた各々の軸部に回転可能に支持されている。
【0030】
また、ギヤハウジング52には、アイドルギヤ78、スプールギヤ80、リトラクタスプリング82及び第2クラッチ116が支持されるスプリングホルダ84が固定されている。
【0031】
アイドルギヤ78は、後述するスプールギヤ80及び第2クラッチ116と噛合う複数の外歯79が外周部に形成された円板状に形成されている。このアイドルギヤ78は、スプリングホルダ84におけるギヤハウジング52側の部位に形成された収容凹部内に収容された状態で、当該収容凹部内に立設された軸部に回転可能に支持されている。また、第2シート86がスプリングホルダ84に取付けられることで、アイドルギヤ78のギヤハウジング52側への移動が規制されている。
【0032】
スプールギヤ80は、アイドルギヤ78の外歯79と噛合う複数の外歯81が外周部に形成されていると共にアイドルギヤ78よりも大径に設定された円板状に形成されている。また、スプールギヤ80の軸心部には、リトラクタスプリング82側に向けて突出するアダプタ固定部80Aが形成されている。さらに、スプールギヤ80の軸心部におけるスプール20側の部位には、スプール20の支軸部29に係合される図示しない係合孔が形成されている。そして、スプールギヤ80の係合孔がスプール20の支軸部29に係合されることで、スプールギヤ80とスプール20とが一体回転可能に結合されるようになっている。また、スプールギヤ80は、スプリングホルダ84におけるギヤハウジング52側の部位に形成された収容凹部内に収容されている。そして、スプールギヤ80が当該収容凹部内に収容された状態では、スプールギヤ80のアダプタ固定部80Aが当該収容凹部の底壁に形成された挿通孔84Aを通じてリトラクタスプリング82側へ突出するようになっている。
【0033】
リトラクタスプリング82は、渦巻状に形成されており、このリトラクタスプリング82は、スプリングホルダ84においてスプールギヤ80が収容された側とは反対側に形成されたスプリング収容部84B内に収容されている。また、リトラクタスプリング82の内端部は、スプールギヤ80のアダプタ固定部80Aに固定されたアダプタ88に係止されており、リトラクタスプリング82の外端部は、スプリング収容部84B内に形成された図示しない係止部に係止されている。そして、このリトラクタスプリング82の付勢力が、アダプタ88及びスプールギヤ80を介してスプール20に伝達されることで、スプール20が巻取方向に回転付勢されるようになっている。なお、リトラクタスプリング82の付勢力(に基づくウェビングの巻取力)は、乗員が装着したウェビングの弛みを解消する程度に、比較的弱く設定されている。換言すれば、リトラクタスプリング82の付勢力は、ウェビングの装着状態で乗員非圧迫性に対応した強さとなるように設定され、スプール20から引出されたウェビングを当該ウェビングに作用する摩擦力等に抗して最後まで巻取る強さは要求されていない。
【0034】
また、スプリングホルダ84には、スプリングカバー90が取付けられている。これにより、スプリング収容部84B内に収容されたリトラクタスプリング82がスプリングカバー90に覆われるようになっている。
【0035】
ここで、図4及び図5には、第2クラッチ116の構成が分解斜視図にて示されている。また、図6には、第2クラッチ116の構成が断面図にて示されている。これらの図に示されるように、第2クラッチ116は、ベース118と、当該ベース118に取付けられることで当該ベース118と一体回転するロータ板128と、を備えている。また、第2クラッチ116は、クラッチギヤ136と、ベース118とクラッチギヤ136との間に設けられたクラッチスプリング140と、ベース118に回動可能に支持されたレバー148と、を備えている。さらに、第2クラッチ116は、ベース118に支持された一対のクラッチウェイト170,172と、ベース118に取付けられるスペーサ184と、を備えている。
【0036】
ベース118は、円盤状に形成された円盤部120と、円盤部120の軸心部において円盤部120の軸線方向一側へ向けて突設された円柱状の支軸部122と、支軸部122の周囲に同軸的に形成された断面略C字状の側壁部124と、を備えている。また、ベース118は、クラッチスプリング140の一方側の端部が係止される第1スプリング係止溝125Aが形成されていると共に支軸部122の突出方向と同一方向に突設されたブロック状の第1スプリング係止部125を備えている。この第1スプリング係止部125の径方向外側の面は、側壁部124の外周面と同一の曲率半径とされた円筒面状に形成されている。
【0037】
ここで、図7(A)に示されるように、第1スプリング係止部125に形成された第1スプリング係止溝125Aは、ベース118の径方向外側及び軸方向一方側(ロータ板128側)が開放された溝状に形成されている。この第1スプリング係止溝125Aは、互いに間隔を空けて平行に配置された側壁部K1,K2と、第1スプリング係止溝125Aの深さ方法の終端面を形成する底壁部K3と、を有して構成されている。また、側壁部K1,K2は、ベース118の軸方向視で、ベース118の軸線周り他方(矢印F1方向)側に向かうにつれてベース118の径方向内側に傾斜されている。また、第1スプリング係止溝125Aの溝幅W1は、すなわち、側壁部K1と側壁部K2との間のクリアランスは、後述するクラッチスプリング140の第1係止部142の線径よりも若干大きな幅に設定されている。なお、第1スプリング係止溝125Aにおけるベース118の軸方向一方側の開放端は、後述するロータ板128によって閉止されるようになっている。
【0038】
また、図4及び図5に示されるように、ベース118は、円盤部120において支持部122が設けられた側とは反対側に向けて突設された円筒状の支軸部123を備えている。さらに、ベース118は、円盤部120における支軸部123の径方向外側においてクラッチウェイト170,172側に向けて突出する支軸176,178を備えている。この支軸176,178は、ベース118の周方向に沿って等間隔に配置されている。また、ベース118の円盤部120における支持部122、123の径方向外側の部位には、一対の長孔160,162がベース118の周方向に沿って形成されている。この長孔160,162には、後述するレバー148の連結突起156,158が係合されており、この連結突起156,158が、円盤部120の周方向に沿って各長孔160、162内を移動できるようになっている。また、円盤部120には、後述するリターンスプリング164の一端部が当接する係止壁127が立設されている。
【0039】
図6に示されるように、以上説明したベース118は、スプリングホルダ84に形成された収容凹部84C内に配置されると共に当該収容凹部84Cに立設された軸部84Dに回転可能に支持されている。
【0040】
図4及び図5に示されるように、ベース118の支軸部122の軸線方向一端側(図4及び図5では右側)には、円板状に形成されたロータ板128が設けられている。このロータ板128は、ベース118の側壁部124に設けられた爪部に係合されることでベース118に一体回転可能に固定されている。また、ロータ板128の軸心部には、円形の軸支孔129が形成されており、後述する入力ギヤ200がこの軸支孔129に回転可能に支持されている。そして、後述する入力ギヤ200の回転力がサブクラッチスプリング202を介してロータ板128に入力されることで、ロータ板128が回転される、すなわち、第2クラッチ116が回転されるようになっている。
【0041】
ベース118の側壁部124の径方向外側には、クラッチギヤ136がベース118に対して同軸的でかつ相対回転可能に設けられている。クラッチギヤ136の外周部には、複数の外歯138が形成されており、この外歯138は、前述したアイドルギヤ78の外歯79(図1参照)と噛合うようになっている。また、クラッチギヤ136の内径寸法は、ベース118の側壁部124の外径寸法よりも充分に大きく、クラッチギヤ136の内周面と側壁部124の外周面との間には環状の隙間が形成されている。この環状の隙間には、捩りコイルスプリングであるクラッチスプリング140が同軸的に配置されている。
【0042】
クラッチスプリング140は、ベース118の側壁部124の外周面とクラッチギヤ136の内周面との間において環状に巻回された巻回部141を備えている。また、クラッチスプリング140の一方側の端部は、巻回部141の径方向内側へ向けて折曲げられた第1係止部142とされている。また、図7(A)に示されるように、第1係止部142は、前述の第1スプリング係止溝125Aに対応して巻回部141の径方向に対して傾斜されている。クラッチスプリング140の他方側の端部は、巻回部141の径方向内側へ向けて折曲げられた第2係止部146とされている。また、第2係止部146は、後述するレバー148に形成された第2スプリング係止溝153Aに対応して巻回部141の径方向に沿って伸びている。さらに、第1係止部142と第2係止部146とは、巻回部141の周方向に沿って所定の間隔を空けて配置されている。また、自然状態における巻回部141の内径寸法は、ベース118の側壁部124の外径寸法よりも小さな寸法に設定されている。これにより、巻回部141がベース118の側壁部124に組付けられた際に、当該巻回部141は、自らの弾性力によりが縮径する方向に付勢されている。また、これにより、巻回部141がベース118の側壁部124に組付けられた状態では、当該巻回部141は、ベース118の側壁部124の外周面に密着している。さらに、巻回部141がベース118の側壁部124に組付けられた状態では、当該巻回部141とクラッチギヤ136の内周面と間にクリアランスが設けられるようになっている。
【0043】
また、クラッチスプリング140の第1係止部142は、ベース118の第1スプリング係止部125に形成された第1スプリング係止溝125Aに嵌込んで係止されている。さらに、クラッチスプリング140の第2係止部146は、後述するレバー148の第2スプリング係止部153に形成された第2スプリング係止溝153Aに嵌込んで係止されている。
【0044】
レバー148は、円筒状の軸受部150を備えている。軸受部150の筒内には、ベース118の支軸部122が貫通しており、これにより、レバー148は、支軸部122(ベース118)に対して軸線周りに相対回転可能に支持されている。また、軸受部150の外周部には、径方向に沿って突出する一対の連結部152及び連結部154が、互いに周方向に沿って反対側(180度反対側)に設けられている。
【0045】
図5に示されるように、これら一対の連結部152、154には、それぞれベース118の円盤部120側へ向けて突出する円柱状の連結突起156及び連結突起158が突設されている。また、各連結突起156、158は、後述する一対のクラッチウェイト170及びクラッチウェイト172に設けられた係合爪180,182がそれぞれ係合している。
【0046】
また、図7(A)及び(B)に示されるように、レバー148の一方の連結部152には、捩りコイルスプリングであるリターンスプリング164の一端部が当接されており、このリターンスプリング164の他端部は、ベース118の円盤部120に立設された係止壁127に当接している。このリターンスプリング164は、レバー148を常にベース118の軸線周り一方(矢印F1方向)へ付勢しており、レバー148は、通常は一対の連結突起156、158が、本体部120の一対の長孔160、162の各長手方向一端部(図4及び図5では矢印F1方向側の端部)に当接した状態に保持されている。
【0047】
また、図7(A)に示されるように、レバー148の他方の連結部154は、クラッチスプリング140の第2係止部146が係止される第2スプリング係止部153とされている。この第2スプリング係止部153には、クラッチスプリング140の第2係止部146が嵌込む第2スプリング係止溝153Aが形成されている。これにより、図7(A)及び(B)に示されるように、レバー148がリターンスプリング164の弾性力に抗してベース118に対して軸線周り他方(矢印F2方向)へ回動されると、クラッチスプリング140の第2係止部146が、クラッチスプリング140の巻き方向一方(矢印F2方向)へ移動され、クラッチスプリング140の巻回部141の外径寸法が拡大するようになっている。また、第2スプリング係止溝153Aは、前述の第1スプリング係止溝125Aと同様に、側壁部K4,K5と、底壁部K6と、を有して構成されている。また、本実施形態では、レバー148がベース118に支持された状態において、側壁部K4,K5が、ベース118の径方向と略平行となっている。また、第2スプリング係止溝153Aの溝幅W2は、すなわち、側壁部K4と側壁部K5との間のクリアランスは、クラッチスプリング140の第2係止部146の線径に対して充分に広い幅に設定されている。これにより、クラッチスプリング140のベース118及びレバー148に対する組付け性が良好になっている。
【0048】
しかも、このようにクラッチスプリング140の巻回部141の外径寸法が拡大されると、クラッチスプリング140の巻回部141は、クラッチギヤ136の内周面に圧着される。この状態では、クラッチスプリング140の外周部とクラッチギヤ136の内周面との間には所定の摩擦力が生じるため、クラッチスプリング140とクラッチギヤ136とは、この摩擦力によって一体的に連結されるようになっている。
【0049】
一方、図4図6に示されるように、ベース118の軸線方向他側(ロータ板128とは反対側)には、それぞれ略半円形の板状に形成された一対のクラッチウェイト170及びクラッチウェイト172が配置されている。これら一対のクラッチウェイト170、172は、同じ重量に設定されており、互いに円盤部120の周方向に沿って反対側(180度反対側)に設けられている。これら一対のクラッチウェイト170、172の各周方向一端側には、円形の軸受孔174、175が形成されている。これらの軸受孔174、175には、ベース118の円盤部120に突設された円柱状の支軸176又は支軸178が回転自在に嵌合している。これにより、各クラッチウェイト170、172は、それぞれ支軸176、178(軸受孔174、175)周りにベース118の径方向へ回動可能(傾動可能)にベース118に支持されている。
【0050】
また、一方のクラッチウェイト170は、前述したレバー148の連結突起158に係合する略U字状の係合爪180を備えており、他方のクラッチウェイト172は、同様にレバー148の連結突起156に係合する略U字状の係合爪182を備えている。これにより、一対のクラッチウェイト170及びクラッチウェイト172は、レバー148を介して同期(連動)するようになっており、通常は、レバー148に作用するリターンスプリング164の付勢力によって、ベース118の径方向内側に保持されている。
【0051】
さらに、図4図6に示されるように、一対のクラッチウェイト170、172を介してベース118とは反対側には、円盤状のスペーサ184が配置されている。また、このスペーサ184の中心部には、ベース118の支軸部123の外周部に嵌合される筒状のボス部184Aが立設されている。このスペーサ184は、一対のクラッチウェイト170、172のベース118からの脱落を抑制すると共に、一対のクラッチウェイト170及びクラッチウェイト172が、スプリングホルダ84の収容凹部84Cの底壁に干渉することを抑制している。
【0052】
ここで、本実施形態の第2クラッチ116では、ロータ板128がその軸線周り一方(図4及び図5の矢印F1方向)へ回転されると、ロータ板128に一体的に連結されたベース118が、ロータ板128と共にその軸線周り一方へ回転するようになっている。このため、ベース118に支持された一対のクラッチウェイト170及びクラッチウェイト172が、ベース118に追従してベース118の軸線周りに回転する。このとき、一対のクラッチウェイト170及びクラッチウェイト172には遠心力が作用し、クラッチウェイト170には支軸176周りの回転トルクが作用すると共に、クラッチウェイト172には支軸178周りの回転トルクが作用する。
【0053】
したがって、これらの回転トルクの大きさが所定値以上の場合、すなわち、一対のクラッチウェイト170及びクラッチウェイト172の回転速度が所定値以上の場合には、一対のクラッチウェイト170及びクラッチウェイト172は、レバー148に作用するリターンスプリング164の付勢力に抗してベース118の径方向外側へ支軸176又は支軸178周りに回動するようになっている。これにより、クラッチウェイト170の係合爪180に連結突起158が係合しかつクラッチウェイト172の係合爪182に連結突起156が係合したレバー148は、ベース118に対して軸線周り他方(図7(A)及び(B)では矢印F1方向)へ回動される構成である。
【0054】
また、本実施形態では、モータ38の回転軸242の回転力がAギヤ40、Bギヤ46、OLギヤ48、入力ギヤ200、クラッチ及びクラッチスプリングとしてのサブクラッチスプリング202を介してロータ板128に伝達される構成となっている。
【0055】
図6に示されるように、入力ギヤ200は、ロータ板128の軸支孔129に回転可能に支持される軸部208と、当該軸部208と一体に設けられたギヤ部211と、を含んで構成されている。軸部208は、略円筒状に形成されており、この軸部208におけるロータ板128側の端部は、ロータ板128の軸支孔129と係合している。また、軸部208におけるロータ板128とは反対側の部分には、その外周面に沿ってサブクラッチスプリング202が係合されている。そして、後述するサブクラッチスプリング202が軸部208に圧着されることで、入力ギヤ200とサブクラッチスプリング202とが一体に回転するようになっている。また、ギヤ部211は、軸部208の一方側の端部に設けられており、このギヤ部211の外周部には、平歯の外歯212が形成されている。この外歯212は、前述したOLギヤ48の一部を構成する入力ギヤの外歯と噛合うようになっている。
【0056】
図4に示されるように、サブクラッチスプリング202は、入力ギヤ200とロータ板128との間に設けられており、このサブクラッチスプリング202は、針金状の部材に曲げ加工等が施されることによって形成されている。このサブクラッチスプリング202は、入力ギヤ200の軸部208の外周面に沿って環状に巻回された巻回部216を備えている。また、サブクラッチスプリング202におけるロータ板128側の端部は、巻回部216の径方向外側へ向けて折曲げられた係止部218とされている。巻回部216は、係止部218が形成された側とは反対側から見て針金状の部材が軸線周り他方(矢印F1方向)側に螺旋状に巻回されることによって形成されている。また、自然状態における巻回部216の内径寸法は、軸部208の外径寸法よりも小さな寸法或いは同じ寸法に設定されている。これにより、サブクラッチスプリング202が軸部208に組付けられた状態では、巻回部216が軸部208の外周面に当接するようになっている。
【0057】
ロータ板128における軸支孔129の内周縁部には、サブクラッチスプリング202の係止部218が係止される係止溝128Bが形成されている。
【0058】
そして、入力ギヤ200が軸線周り一方(矢印F1方向)側へ回転された際には、入力ギヤ200の軸部208とサブクラッチスプリング202の巻回部216との摩擦力により、巻回部216の外径が縮径しようとする。これにより、巻回部216が軸部208に密着して、入力ギヤ200がサブクラッチスプリング202と共に軸線周り他方(矢印F1方向)側へ回転される。その結果、入力ギヤ200の軸線周り一方(矢印F1方向)側への回転力がサブクラッチスプリング202を介してロータ板128に伝達されて、第2クラッチ116が軸線周り一方(矢印F1方向)側へ回転されるようになっている。
【0059】
また、入力ギヤ200が軸線周り他方(矢印F2方向)側へ回転された際には、入力ギヤ200の軸部208とサブクラッチスプリング202の巻回部216との摩擦力により、巻回部216の外径が拡大しようとする。これにより、軸部208が巻回部216に対して空回りするようになっている。その結果、入力ギヤ200の軸線周り他方(矢印F2方向)側への回転力のロータ板128への伝達が遮断されて、第2クラッチ116が軸線周り他方(矢印F2方向)側へ回転されないようになっている。
【0060】
次に、本実施形態の要部であるモータ38、モータ38の回転軸242に固定されたAギヤ40、Aギヤ40によって回転されるBギヤ46及びギヤハウジング52の細部の構成について説明する。
【0061】
図8に示されるように、本実施形態のモータ38は、直流モータであり、このモータ38は、回転子244及び固定子246を備えている。回転子244は、回転軸242と、回転軸242に固定された回転子コア248と、回転子コア248の巻回された図示しない導電性の巻線と、回転軸242に固定されていると共に回転子コア248に巻回された巻線への通電を切替えるための図示しない整流子と、を含んで構成されている。固定子246は、回転子244が軸心部に配置されることにより当該回転子244の大部分を覆うモータハウジング240と、モータハウジング240の内周面に固定されたマグネット250と、を含んで構成されている。モータハウジング240は、筒状に形成されていると共にその内周面にマグネット250が固定された筒状部252と、筒状部252の一方側の端部および他方側の端部をそれぞれ閉止するように設けられた第1側壁部254及び第2側壁部256と、を備えている。第1側壁部254の軸心部には、回転軸242の一部分を支持する軸受が内部に配置された係合部としての第1ボス部258が立設されている。また、第2側壁部256の軸心部には、回転軸242の他の部分を支持する軸受が内部に配置された第2ボス部260が立設されている。そして、第1ボス部258及び第2ボス部260の外周面258A、260Aは、回転軸242と同軸上に配置された円筒面状に形成されている。また、本実施形態では、モータハウジング240に固定されたマグネット250の磁力によって、回転子244が、モータハウジング240に対して当該モータハウジング240の第1側壁部254側へ向けて(モータ38の回転軸242の軸方向一方側へ向けて)付勢されている。なお、矢印Jは、回転子244がマグネット250の磁力によって付勢されている方向を示している。
【0062】
Aギヤ40は、その外周部に形成された外歯41の捩れ角がθに設定されたハスバギヤである。また、Bギヤ46の大径部46Tは、その外周部に形成された外歯47TがAギヤ40の外歯41の捩れ角θと対応する捩れ角θに設定されたハスバギヤである。そして、本実施形態では、モータ38の回転軸242がAギヤ40と共に矢印A2方向へ回転されることで、モータの回転軸242の軸方向一方側への軸方向力Kが、Aギヤ40に生じるように前述の捩れ角θが設定されている。
【0063】
図9に示されるように、ギヤハウジング52の収容凹部52A内には、Bギヤを回転可能に支持する軸部262が固定された第2ギヤ支持部としてのBギヤ支持部264が設けられている。また、ギヤハウジング52の収容凹部52A内におけるBギヤ支持部264と隣接する部位には、モータ38(図1及び図8参照)が固定されるモータ固定部266が設けられている。モータ固定部266には、その内周部に4つの突起部268が設けられた被係合部としての被係合孔270が形成されている。なお、図9においては、突起部268の突出方向への高さを誇張して表現している。
【0064】
被係合孔270において突起部268が形成されていない部位の内周面270Aの形状は、モータハウジング240の第1ボス部258の外周面258A(図8参照)の外径よりも大きな内径D1とされた円筒面状に形成されている。また、4つの突起部268は、被係合孔270において突起部268が形成されていない部位の内周面270Aの周方向に沿って等間隔に配置されている。また、4つの突起部268の突出方向の先端を通る仮想円272の内径D2は、モータハウジング240の第1ボス部258の外周面258A(図8参照)の外径よりも小さな内径とされている。また、モータ固定部266における被係合孔270の回りには、図示しない固定螺子が挿入される2つの固定螺子挿入孔274が形成されている。
【0065】
そして、図8及び図9に示されるように、モータハウジング240の第1ボス部258が、モータ固定部266に形成された被係合孔270に挿入されることで、4つの突起部268が、第1ボス部258の外周面258Aと被係合孔270において突起部268が形成されていない部位の内周面270Aとの間で変形される。これにより、第1ボス部258が被係合孔270に締め代を有して係合される。そしてさらに、モータ固定部266における被係合孔270の回りに形成された2つの固定螺子挿入孔274に挿入された図示しない固定螺子が、モータハウジング240の第1側壁部254に形成された固定螺子螺入孔276(図1参照)に螺入されることで、モータ38がギヤハウジング52のモータ固定部266に固定される。
【0066】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0067】
図1に示されるように、上記構成のウェビング巻取装置10では、スプール20にウェビングが層状に巻取られた収納状態で、図示しないタングプレートを引張りつつウェビングを引張ると、スプール20を巻取方向に付勢するリトラクタスプリング82の付勢力に抗してスプール20を引出方向へ回転させながらウェビングが引出される。
【0068】
このように、ウェビングが引出された状態で、ウェビングを座席に着座した乗員の身体の前方に掛回しつつタングプレートをバックル装置に差込み、バックル装置にタングプレートを保持させることで、ウェビングが乗員の身体に装着される。
【0069】
ここで、タングプレートがバックル装置に差込まれたことが、図示しないスイッチ等により検出されると、図示しないモータ制御装置が、モータ38の回転軸242を正方向へ回転させる。そして、このモータ38の回転軸242の回転は、図10に示された第1の伝達機構を介してスプール20に伝達される。具体的には、モータ38の回転軸242がAギヤ40を矢印A1方向へ回転させる。また、Aギヤ40が矢印A1方向へ回転されると、当該Aギヤ40によりBギヤ46が矢印B1方向へ回転され、さらにBギヤ46によりOLギヤ48が矢印C1方向へ回転される。そしてさらに、OLギヤ48によりCギヤ50が矢印D1方向へ回転され、またCギヤ50により第1クラッチ44のクラッチギヤ56が矢印E1方向に回転される。ここで、クラッチギヤ56が矢印E1方向に回転される際には、ロックバー58がラチェット64に係合される。その結果、クラッチギヤ56の回転がラチェット64に伝達され、スプール20がラチェット64と共に巻取方向へ回転される。これにより、ウェビングがスプール20に巻取られて、乗員に装着されたウェビングの弛みが取除かれる(所謂「フィッティングアシスト」)。そして、モータ38の回転軸242の回転が停止された状態では、ウェビングがリトラクタスプリング82の付勢力によって比較的弱い力で乗員を拘束するようになっている。
【0070】
一方、車両が走行している状態において、車両が急減速したこと等が図示しない検出装置によって検出されると、図示しないモータ制御装置が、モータ38の回転軸242を正方向へ回転させる。また、この時のモータ38の回転軸242の回転力は、上記フィッティングアシスト時の回転力よりも高くなるように設定されている。そして、モータ38の回転軸242の正方向への回転が、図10に示された第1の伝達機構を介してスプール20に伝達されることで、ウェビングがスプール20に巻取られて、乗員に装着されたウェビングの弛みが取除かれる(所謂「プリテンショナ」)。
【0071】
一方、乗員が車両を停車させてバックル装置からタングプレートを外すと、スプール20はリトラクタスプリング82の付勢力により巻取方向へ回転する。但し、このリトラクタスプリング82の付勢力は比較的弱く設定されているため、スプール20は、このリトラクタスプリング82の付勢力に対応した比較的弱い回転力で巻取方向へ回転する。
【0072】
またこのとき、図示しないモータ制御装置は、モータ38の回転軸242を逆方向へ回転させる。そして、このモータ38の回転軸242の回転は、図11に示された第2の伝達機構を介してスプール20に伝達される。なお、第2の伝達機構の減速比は前述の第1の伝達機構の減速比に比して高く設定されている。
【0073】
モータ38の回転軸242が逆方向へ回転されると、モータ38の回転軸242がAギヤ40を矢印A2方向へ回転させる。また、Aギヤ40が矢印A2方向へ回転されると、当該Aギヤ40によりBギヤ46が矢印B2方向へ回転され、さらにBギヤ46によりOLギヤ48が矢印C2方向へ回転される。そしてさらに、OLギヤ48により入力ギヤ200が矢印F1方向へ回転される。この場合、図4図6に示されるように、入力ギヤ200の回転力は、サブクラッチスプリング202を介して第2クラッチ116のロータ板128に伝達され、ロータ板128がベース部118と共に矢印F1方向へ回転される。
【0074】
また、ベース118の回転は、支軸176及び軸受孔174を介してクラッチウェイト170に伝達されると共に、支軸178及び軸受孔175を介してクラッチウェイト172に伝達され、クラッチウェイト170及びクラッチウェイト172が、ベース118に追従して該ベース118の軸線周りに回転される。これにより、クラッチウェイト170及びクラッチウェイト172には、遠心力が作用する。その結果、クラッチウェイト170及びクラッチウェイト172が、レバー148に作用するリターンスプリング164の付勢力に抗してベース118の径方向外側へ支軸176,178回りに回動する(傾動する)。
【0075】
このため、クラッチウェイト170の係止爪180に連結突起158が係合しかつクラッチウェイト172の係止爪182に連結突起156が係合したレバー148が、ベース118に対して軸線周り他方(図7(A)及び(B)の矢印F2方向)へ回動される。
【0076】
レバー148が、ベース118に対して軸線周り他方へ回動されると、クラッチスプリング140の第2係止部146は、レバー148によってクラッチスプリング140の巻き方向一方(図7(A)及び図7(B)の矢印F2方向)へ移動される。その結果、クラッチスプリング140の巻回部141の外径寸法が拡大し、クラッチスプリング140の巻回部141の外周部が、クラッチギヤ136の内周面に密着される。これにより、クラッチスプリング140の回転がクラッチギヤ136に伝達され、クラッチギヤ136が矢印F1方向へ回転される。このクラッチギヤ136の外歯138には、図11に示されるように、アイドルギヤ78の外歯79が噛合っているため、アイドルギヤ78が矢印G1方向へ回転される。また、アイドルギヤ78によりスプールギヤ80が矢印H1方向へ回転され、スプール20がスプールギヤ80と共に巻取方向へ回転される。このスプール20の回転により、リトラクタスプリング82の付勢力不足が補われ、ウェビングがスプール20に層状に巻取られて収納される(所謂「巻取アシスト」)。
【0077】
しかもこの場合、スプール20は前述のフィッティングアシスト時よりも低速で回転されるので、ウェビングを安全にスプール20に巻取って収納することができる。また、本実施形態では、上記巻取アシストがなされている場合においても、ウェビングをスプール20から容易に引出すことができるようになっている。すなわち、巻取アシストトルクに抗してスプール20を容易に引出方向へ回転させることが可能となっている。
【0078】
ウェビングがスプール20に最後まで巻取られると、モータ制御装置によりモータ38への給電が遮断され、モータ38の回転軸242の回転が停止される。
【0079】
モータ38の回転が停止されると、クラッチウェイト170及びクラッチウェイト172は、レバー148に作用するクラッチスプリング140の弾性力及びリターンスプリング164の弾性力によってベース118の径方向内側へ回動される。このため、クラッチスプリング140は再び自然状態に戻り、巻回部141の外周部がクラッチギヤ136の内周面から離間し、上述したクラッチスプリング140とクラッチギヤ136との連結が直ちに解除される。これにより、第2クラッチ116によるスプール20とモータ38の回転軸242との連結が解除され、スプール20に巻取られたウェビングの再度の引出しが可能となる。
【0080】
なお、巻取アシスト時のモータ38の回転軸242の逆方向への回転は、第1の伝達機構を介して(Aギヤ40、Bギヤ46、OLギヤ48、Cギヤ50及び第1クラッチ44を介して)スプール20に伝達されないようになっている。
【0081】
また、図11に示されるように、フィッティングアシスト時及びプリテンショナ時のモータ38の回転軸242の正方向への回転は、Aギヤ40、Bギヤ46及びOLギヤ48を介して入力ギヤ200に伝達され、入力ギヤ200が矢印F2方向へ回転される。この場合、入力ギヤ200はサブクラッチスプリング202に対して空回りするため、入力ギヤ200の回転力はサブクラッチスプリング202を介してロータ板128に伝達されない。すなわち、本実施形態では、第2クラッチ116が、入力ギヤ200の回転力をアイドルギヤ78及びスプールギヤ80を介してスプール20に伝達させなくてもよい場合において、第2クラッチ116が回転されることを抑制することができる。換言すると、不必要な第2クラッチ116の作動(回転)を抑制することができる。
【0082】
次に、本実施形態に係るウェビング巻取装置10の特有の作用並びに効果について説明する。
【0083】
図8及び図9に示されるように、本実施形態では、モータハウジング240の第1ボス部258が、モータ固定部266に形成された被係合孔270に締め代を有して係合される。これにより、モータ38の回転軸242とBギヤ46の回転軸(軸部262)との間隔のバラつきを抑制することができる。これにより、図11に示されるように、Aギヤ40の外歯41とBギヤ46の大径部46Tの外歯47Tとの噛合いが安定し、モータ38の駆動力によってスプール20が回転されている際の作動音を低減することができる。すなわち、巻取アシストがなされている際の作動音を低減することができる。
【0084】
また、本実施形態では、モータハウジング240の第1ボス部258が、モータ固定部266に形成された被係合孔270に挿入されることで、4つの突起部268が、第1ボス部258の外周面258Aと被係合孔270において突起部268が形成されていない部位の内周面270Aとの間で変形される。このように、本実施形態では、変形可能な上記突起部268を設けることにより、モータハウジング240の第1ボス部258をモータ固定部266の被係合孔270に締め代を有した状態で容易に係合させることができる。
【0085】
なお、本実施形態では、突起部268が第1ボス部258の外周面258Aと被係合孔270において突起部268が形成されていない部位の内周面270Aとの間で変形されることで、モータハウジング240の第1ボス部258がモータ固定部266に形成された被係合孔270に締め代を有して係合される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、モータ固定部266に形成された被係合孔270の内周面270Aの形状をモータハウジング240の第1ボス部258の外周面258Aの形状と対応する形状に形成して、モータハウジング240の第1ボス部258をモータ固定部266の被係合孔270に軽圧入すること等により、モータハウジング240の第1ボス部258がモータ固定部266の被係合孔270に締め代を有して係合されるようにしてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、複数の突起部268が、被係合孔270において突起部268が形成されていない部位の内周面270Aの周方向に沿って等間隔に配置されている例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図12及び図13に示されるように、複数の突起部268を被係合孔270の内周面270Aの一部に集中配置してもよい。
【0087】
図12に示されるように、Bギヤ46を支持する軸部262(図9参照)の軸中心280と被係合孔270において突起部268が形成されていない部位の内周面270Aの中心282とを通る線をLとすると、複数の(3つの)突起部268は、被係合孔270において線Lと交わる部分における軸部262の軸中心280側に集中配置されている。また、図13に示された複数の(3つの)突起部268は、被係合孔270において線Lと交わる部分における軸部262の軸中心280とは反対側に集中配置されている。図12及び図13に示された構成とすることにより、被係合孔270に挿入されたモータハウジング240の第1ボス部258を被係合孔270の内周面270Aにおいて突起部268が形成されていない部分でかつ線Lと交わる部分284に当接させることができる。これにより、Bギヤ46を支持する軸部262の軸中心280とモータ38の回転軸242の軸中心286との間隔をより一層安定させることができる。
【0088】
また、図8に示されるように、本実施形態では、モータ38の回転軸242がAギヤ40と共に矢印A2方向へ回転される際に、すなわち、巻取アシスト時に、モータ38の回転軸242の軸方向一方側への軸方向力Kが、Aギヤ40に生じるようにAギヤ40の外歯41及びBギヤ46の大径部46Tの外歯47Tの捩れ角θが設定されている。このように、回転子244がマグネット250によって付勢されている方向Jと上記軸方向力Kの方向とを同方向に設定することにより、巻取アシスト時に、モータ38の回転子244が回転軸242の軸方向他方側(矢印Jとは反対方向)へ移動されることが抑制される。その結果、モータ38の回転子244が回転軸242の軸方向へ振動することによる異音の発生が抑制されて、巻取アシスト時の作動音を低減することができる。
【0089】
なお、本実施形態では、Aギヤ40をモータ38の回転軸242において第1ボス部258から突出している部分に固定した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図14に示されるように、Aギヤ40をモータ38の回転軸242において第2ボス部260から突出している部分に固定してもよい。この場合、Aギヤ40の外歯41及びBギヤ46の大径部46Tの外歯47Tの捩れ角の方向を図8に示された方向とは反対方向に設定すればよい。
【0090】
また、モータ38の回転軸242の軸方向を車両上下方向に向けて配置した状態で車両に搭載されるウェビング巻取装置10においては、Aギヤ40の自重の方向と回転子244がマグネット250によって付勢されている方向Jとを合わせて配置すると良い。当該構成では、Aギヤ40に作用する軸方向力Kに加えてAギヤ40の自重によって、回転子244をモータハウジング240に対して回転軸242の軸方向一方側へ付勢することができる。これにより、モータ38の回転子244が回転軸242の軸方向へ振動することによる異音の発生がより一層抑制されて、巻取アシスト時の作動音をより一層低減することができる。
【0091】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0092】
10 ウェビング巻取装置
20 スプール
38 モータ
40 Aギヤ(第1ハスバギヤ)
46 Bギヤ(第2ハスバギヤ)
240 モータハウジング
242 回転軸
244 回転子
【要約】      (修正有)
【課題】モータの駆動力によってスプールが回転されている際の作動音を低減する。
【解決手段】ウェビング巻取装置は、乗員に装着されるウェビングが巻取られるスプールと、回転軸242を有する回転子244と、該回転子244の一部を被うモータハウジング240と、を有し、回転子244がモータハウジング240に対して回転軸242の軸方向一方側へ付勢されたモータ38を備えている。また、ウェビング巻取装置は、回転軸242に固定されたAギヤ40と、該Aギヤ40と噛合うと共に該Aギヤ40が回転軸242と共に一方側へ回転されることで回転されて、スプールが回転されるBギヤ46と、を有する第2の伝達機構を備えている。そして、回転軸242が一方側へ回転される際に、回転軸242の軸方向一方側への軸方向力がAギヤ40に作用するようにAギヤ40の各々の外歯41のねじれ角度が設定されている。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14