(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記Aβペプチド免疫原構築物の組合せが等モル比で存在し、前記Aβペプチド免疫原構築物及び前記CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)が安定化免疫刺激複合体の形態である請求項4又は5記載の医薬組成物。
前記Aβペプチド免疫原構築物の組合せが等モル比で存在し、前記Aβペプチド免疫原構築物及び前記CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)が安定化免疫刺激複合体の形態であり、前記医薬上許容可能なデリバリビヒクル及び/又はアジュバントがリン酸アルミニウム(AlPO4)である請求項4又は5記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本開示は、アルツハイマー病の危険性があるか又はアルツハイマー病である患者に防御免疫応答を提供するAβ
1−42ペプチドのN末端に対する特異的抗体の産生を刺激するために共に作用する、病原体タンパク質からの異種ヘルパーT細胞(Th)エピトープとスペーサー残基を介して結合したB細胞(B)エピトープとしてAβペプチド(Aβ
1−10〜Aβ
1−14)のN末端を持つ独自のAβペプチド免疫原構築物を有する、独自のAβペプチド免疫原構築物、これらAβペプチド免疫原構築物及びその混合物を有するペプチド組成物、ワクチン製剤中にこれらペプチド組成物を有する医薬組成物に関する。
【0027】
本開示はアルツハイマー病の処置及び予防のための方法も含む。開示の方法はアルツハイマー病の危険性があるか又はアルツハイマー病である患者に投与するための医薬組成物を利用し、該医薬組成物はワクチン製剤懸濁液を含み、該ワクチン製剤懸濁液は、CpGオリゴマーのような高度に負に帯電するオリゴヌクレオチドとの静電会合による安定な免疫刺激複合体を任意に形成するAβペプチド免疫原構築物を有する。この複合体には、更に、アジュバントとして鉱物塩が追加されてもよい。本開示は、ワクチン製剤、具体的には、アルツハイマー病の危険性があるか又はアルツハイマー病である患者の予防及び処置のためのAβペプチド免疫原構築物を有するワクチン製剤の投与のための、投与計画、投与形式及び剤形を利用する方法も含む。
【0028】
本開示は、アルツハイマー病の危険性があるか又はアルツハイマー病である動物及び患者を保護することができるAβペプチド免疫原構築物及びワクチン製剤の、低コストの製造方法及び品質管理方法も提供する。本発明は、安定化免疫刺激複合体及び該安定化免疫刺激複合体を調製する方法に関する。より具体的には、本発明は、インビボで免疫応答を改善するワクチンデリバリシステムに有用である、Aβペプチド免疫原構築物と、CpGオリゴマーのような高度に負に帯電するオリゴヌクレオチドとを有する安定化合成免疫刺激複合体を提供する。これらの免疫刺激複合体は、放出制御用デポー剤として機能するように設計されたワクチン製剤の調製にも有用である。
【0029】
さらなる面において、本発明は、本発明のAβペプチド免疫原構築物のワクチン製剤を以前に接種した患者の血液から単離されたB細胞によって誘発されるAβ
1−42に対するヒトモノクローナル抗体を提供する。
【0030】
(a)アミロイドベータ(Aβ)ペプチド
「ベータアミロイド」という表題のウィキペディア内の記事は、対象の最新の概説を提供する(http://en.wikipedia.org/wiki/Beta_amyloid)。この記事へのインターネットリンクは、参照として本明細書に提供される。
【0031】
アミロイドベータ(Aβ又はAベータ)は、アミロイド前駆体タンパク質からプロセシングされたアミノ酸36〜43個のペプチドである。Aβは、アルツハイマー病患者の脳内に見られる沈着物の主成分である。Aβは、著しく非病理学的な活性を有する、非常に多機能のペプチドであるという証拠も見出されている。
【0032】
Aβは、機能が未確定の膜貫通型糖タンパク質であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の連続的な切断後に形成される。APPは、α−、β−及びγ−セクレターゼによってプロセシングされ得;Aβタンパク質は、β及びγ−セクレターゼの連続的作用により産生する。AβペプチドのC末端を生成するγ−セクレターゼは、APPの膜貫通領域内で切断し、長さが36〜43アミノ酸残基のアイソフォームを多数産生することができる。最も一般的なアイソフォームは、Aβ
1−40(配列番号2)及びAβ
1−42(配列番号1)であり;より長い形態が典型的には小胞体内で生じる切断によって生成する一方、より短い形態がトランスゴルジネットワーク内での切断によって生成する(Hartmann Tら,1997;Nature Medicine 3:1016-1020)。Aβ
1−40型は2種類の中でより一般的であるが、Aβ
1−42(配列番号1)はより原線維形成性であるため、病態に関連する。
【0033】
APPにおける常染色体優位の突然変異は、遺伝性の早期発症型アルツハイマー病(家族性AD又はFAD)の原因である。この型のADは、全症例のわずか10%を占めるに過ぎず、大部分のADはこのような突然変異を付随しない。しかしながら、家族性アルツハイマー病は、代わりのタンパク分解プロセシングによって生じる可能性がある。全Aβレベル、又はAβ
1−40及びAβ
1−42の両方の相対濃度(前者は脳血管プラーク中で、後者は老人斑中で、より濃縮されている)のいずれかの上昇は、家族性及び孤発性アルツハイマー病の両方の発病に関係している。
【0034】
Aβ
1−42は、そのより疎水性の性質のために、ペプチドの最もアミロイド形成性の型である。しかしながら、中心配列:KLVFFAE(Aβ
16−22)(配列番号31)は、それ自身がアミロイドを形成することが知られており、おそらく原線維のコアを形成する。
【0035】
プラークがアルツハイマー病の病理の原因であるとする「アミロイド仮説」は、大半の研究者に受け入れられている。対立仮説は、プラークよりもむしろアミロイドオリゴマーが疾患の原因であるというものである。オリゴマーを発現するがプラークを発現しない遺伝子改変マウス(APP
E693Q)は疾患を発症する。なお、オリゴマーをプラークに変換するよう更に改変したマウス(APP
E693Q×PS1ΔE9)は、オリゴマーのみのマウスよりも損なわれない。ナノスケールの分子表面を可視化できる原子間力顕微鏡法を用いて、インビトロでAβペプチドの凝集状態(オリゴマー)を測定することができる。
【0036】
アミロイドベータを測定するための多くの異なる方法が存在する。それは免疫組織化学染色を用いて半定量的に測定でき、部位の決定も可能にする。Aβは、主に、脳アミロイド血管症のような血管、又は老人斑中及び血管領域に存在するだろう。
【0037】
Aβを測定する高感度な方法の1つは、定量的酵素イムノアッセイ法(qELISA)によるもので、これはAβを認識する抗体のペアを利用する。
【0038】
画像化化合物、特にピッツバーグ化合物B(6−OH−BTA−1、チオフラビン(thioflavin))及びフロルベタピル(florbetapir)F18(18F−AV−45)は、インビトロ及びインビボでアミロイドベータと選択的に結合することができる。ポジトロン放出断層撮影(PET)イメージングと組み合わせるこの手法は、アルツハイマー病患者におけるプラーク沈着物の領域を画像化するために使用されている。
【0039】
(b)B細胞エピトープ:AβペプチドのN末端
本発明は、AD患者の脳内の可溶性Aβ
1−42及びプラークへの交差反応性を有する、AβペプチドのN末端に特異的な高力価のオリゴクローナル抗体を産生するための新規なペプチド組成物に関する。合理的設計の努力によるペプチド組成物の部位特異性は、担体タンパク質上の不適切な部位に対する抗体の産生を最小化する。
【0040】
表1は、Aβ
1−42のN末端からのペプチドフラグメントを含む、短い直鎖状の多数のペプチドを提供する。Aβ
1−42(配列番号1)及びAβ
1−28(配列番号3)のペプチドは担体タンパク質を必要とせずに免疫応答を誘発するのに十分な長さである。しかしながら、Aβ
1−14、Aβ
1−12、Aβ
1−10(配列番号4〜6)のようなより短いN末端Aβペプチドは、実施例7の表4に示されるように(免疫原性の研究において、群3を群1及び2と比較)、それら自身は非免疫原性である。この結果から、Aβ
1−28ペプチドを免疫原性にする15〜28番目のアミノ酸の自己のヘルパーT細胞エピトープ(Th)の存在が確認される。短いAβフラグメントは、担体タンパク質、例えば、実施例7の表6の群4に示されるようなキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)との化学的カップリングによって免疫を増強できる。このような「Aβペプチド−担体」ワクチンの主な欠陥は、組み合わせによって産生する抗体のほとんど(>90%)が、実施例7の表6の群4及びエピトープ抑制の可能性に示されるように、担体タンパク質であるKLHに対する非機能性の抗体であることである。
【0041】
本発明のペプチド免疫原は、位置1のアミノ酸Asp(D)から開始するAβペプチドのN末端フラグメントの10〜14個のアミノ酸(10〜14アミノ酸長)を含む。これらのAβペプチドフラグメントを有する完全合成のペプチド免疫原は、多重のMHCクラスII結合モチーフを持つ選ばれたヘルパーT細胞エピトープ(Th)(例えば、配列番号33〜47)も含有し、これはAD患者の脳内のAβ
1−42ペプチド及び老人斑に対する高い交差反応性を有するAβ
1−42ペプチド上のN末端標的部位に独占的に集中した免疫応答を誘発する。
【0042】
(c)異種ヘルパーT細胞エピトープ(Thエピトープ)
T細胞エピトープは、それらがMHC分子と結合する抗原提示細胞の表面上に存在する。MHCクラスI分子によって提示されるT細胞エピトープは典型的には8〜11アミノ酸長のペプチドである一方、MHCクラスII分子はより長い13〜17アミノ酸長のペプチドを提示し、非古典的MHC分子は糖脂質のような非ペプチド性のエピトープも提示する。
【0043】
ヘルパーT細胞(Th細胞)は、リンパ球のサブグループで、白血球の一種であり、免疫系、特に獲得免疫系において重要な役割を果たしている。これらは、T細胞サイトカインを放出することによって、他の免疫細胞の活動を助ける。それらは、B細胞抗体のクラススイッチ、細胞傷害性T細胞の活性化及び増殖、並びにマクロファージのような貪食細胞の殺菌活性の最大化に不可欠である。
【0044】
ヘルパーT細胞エピトープ(Thエピトープ)は、抗原提示細胞の表面に存在するT細胞エピトープであって、それらは、MHCクラスII分子と結合し、長さが13〜17個のアミノ酸であり、上述したように、ヘルパーT細胞によって特異的に認識される。
【0045】
主要組織適合抗原複合体(MHC)クラスII分子に結合するペプチドは、免疫応答の開始及び調節に重要である。特異的MHC分子に結合するペプチドを予測することは、有望なワクチン候補を決定するのに重要な役割を果たす。クラスIIMHCにおける結合溝は、9アミノ酸長より長いペプチドが結合できるように両端が開いている。結合するペプチドの異なる長さ及び9アミノ長の結合コアの位置が変化するため、ペプチドのMHCクラスII分子への結合を促進するコンセンサスモチーフを探索するのは困難である。該分子が非特異的(promiscuous)で多数の低親和性ペプチドと結合する場合、難易度は高くなる。
【0046】
過去20年間にわたって、本発明者及び彼女のチームは、合理的設計(5,6)によってB細胞エピトープに対する特異的な高力価抗体を産生する増強された免疫原性を目的として、特異的な標的B細胞エピトープ(例えば、Aβペプチドフラグメント)がこのようなThエピトープにN末端又はC末端のいずれかで結合するペプチド免疫原構築物(米国特許第6,713,301 B1号及びWang CY,2005;米国特許第6,906,169号)の設計用の異種Thエピトープとして使用するために、多くの病原体のタンパク質から、異なる種(例えば、ヒト、ブタ、ウシ等)のMHCクラスII分子に非特異的に(promiscuous)結合するモチーフを有する多くの有望なThエピトープを特定してきた。ワクチンに使用する、合理的に設計された全ての免疫原は、ワクチン製剤で使用される最適なThエピトープを選ぶためのスクリーニング方法(例えば、実施例7、表4、5、6及び7)の一部として、実験的な免疫処置を通じてこのようなThエピトープの有効性を検証するためのものであることを強調する。理想的なThエピトープは、免疫応答の開始及び調節をもたらすヘルパーT細胞の活性を最大にする複数の非特異的(promiscuous)MHCクラスII結合モチーフを有し、且つそれら自身は、通常、免疫応答しない(即ち、Thエピトープ(例えば、実施例7の表6の群1、2及び3;並びに実施例8及び9の表7の群1)に対するであろう免疫原構築物によって抗体を産生しない)ため、主に標的のB細胞エピトープに対する免疫応答に非常に集中させる。
【0047】
Thは、Thエピトープを有するアミノ酸(天然又は非天然アミノ酸)の配列を意味する。対象ペプチドのThドメインは、約9〜約25個のアミノ酸、好ましくは約13〜約17個のアミノ酸である。Thセグメント及びその機能的免疫学的類似体は、約10〜約14個のアミノ酸残基である、Aβ
1−42ペプチドのN末端フラグメント(配列番号4〜6)に対する免疫応答を増強又は刺激するのに十分なThエピトープの連続的な部分を有する。
【0048】
本発明のThエピトープとして、表2(配列番号33〜41)で例示したような外来病原体に由来するものが挙げられるが、これに限定されない。また、Thエピトープとして、理想的な人工Th及び理想的な人工コンビナトリアルTh(配列番号42〜47)が挙げられる。コンビナトリアルThを有するペプチドは、N末端Aβペプチド配列に直列する、単一の固相ペプチド合成で同時に生成する。Th部位は、免疫学的類似体も含む。免疫学的Th類似体として、免疫が増強された類似体、交差反応性の類似体及びそれらのThエピトープの任意のセグメントが挙げられる。機能的免疫学的Th類似体として、また、麻疹ウイルス融合タンパク質MVF1〜5Th(配列番号34、41、42、44及び46)及びB型肝炎表面抗原HBsAg1〜3Th(配列番号43、45、47)に由来するThエピトープの幾つかの型で最もよく示されるThエピトープのTh刺激機能が実質的に改変されていないThエピトープの1〜約5個のアミノ酸残基が保存的置換、付加、欠失及び挿入されたものが挙げられる。
【0049】
本発明のAβペプチド免疫原構築物は約13〜約20個のアミノ酸残基のThエピトープを有し、該Thエピトープは、「スペーサーA」を介して、Aβ
1−42ペプチドのN末端フラグメント及びその交差反応性類似体又は機能的類似体のC末端に共有結合する。本発明のAβペプチド免疫原構築物(例えば、配列番号48〜65)の交差反応性類似体及び機能的類似体は、1〜約5個のアミノ酸残基の保存的置換、付加、欠失又は挿入をさらに有していてよいが、該ペプチド類似体は、Aβ
1−42ペプチドと交差反応する免疫応答を誘発できることとする。保存的置換、付加及び挿入は、本明細書に定義される天然又は非天然アミノ酸で行うことができる。
【0050】
本発明の好ましいペプチド免疫原は、Aβ
1−42ペプチドのN末端フラグメント(配列番号4〜6)又はその交差反応性の免疫学的類似体;スペーサー(例えば、ε−Lys、Gly又はε−Lys−Lys−Lys−Lys);及び表2のものから選ばれるThエピトープ(配列番号34、37、38、40〜47)を含むペプチドである(実施例7の表4の免疫原性試験の結果を参照)。
【0051】
Thエピトープペプチドの機能的免疫学的類似体(例えば、MvF Th(配列番号34、41、42、44及び46);並びにHBsAg Th(配列番号43、45、47)の各種の配列)も有効であり、本発明の一部に含まれる。Aβペプチド免疫原構築物の機能的免疫学的類似体として、元のペプチド、配列番号51及び60と同じ免疫原性を実質的に維持する、変異体、配列番号49〜51、54〜55、57〜65及び/又は相同体、配列番号49〜51、54〜55、57〜65が挙げられる。例えば、機能的類似体である変異体は、アミノ酸位置における保存的置換;全体の電荷の変化;別の部分との共有結合;又はアミノ酸の付加、挿入若しくは欠失;及び/又は、その任意の組み合わせを有することができる。
【0052】
保存的置換とは、1つのアミノ酸残基が、類似の化学的性質を有する別のアミノ酸残基で置換される場合である。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸として、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンが挙げられ;極性の中性アミノ酸として、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンが挙げられ;正電荷の(塩基性)アミノ酸として、アルギニン、リジン及びヒスチジンが挙げられ;負電荷の(酸性)アミノ酸として、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。
【0053】
特定の態様において、機能的類似体は、元のアミノ酸配列の少なくとも50%の同一性を有する。別の態様において、機能的類似体は、元のアミノ酸配列の少なくとも80%の同一性を有する。更に他の態様において、機能的類似体は、元のアミノ酸配列の少なくとも85%の同一性を有する。また別の態様において、機能的類似体は、元のアミノ酸配列の少なくとも90%の同一性を有する。
【0054】
ある態様において、ある特定のペプチドの機能的免疫学的類似体は、元のペプチドと同じアミノ酸配列を含有し、且つペプチドのアミノ末端に3個のリジン(Lys−Lys−Lys)を更に含む。この態様において、元のペプチド配列への3個のリジンの包含は、元のペプチドの全体の電荷を変化させるが、MVF Thペプチド系(表2〜7)で示したように、元のペプチドの機能は改変しない。
【0055】
表2は、Thエピトープペプチドのための機能的類似体の別の変形例を明らかにする。特に、配列番号34及び41のMVF1 Th及びMVF2 Thは、各N末端及びC末端の2個のアミノ酸の欠失(配列番号34及び41)又は包含(配列番号44及び46)によってアミノ酸骨格が相違する、配列番号44及び46のMVF4 Th及びMVF5 Thの機能的類似体である。これら2種の類似体配列間の相違は、これらの配列内に含まれるThエピトープの機能に影響を与えないだろう(例えば、実施例7の表4の群7、8、14対実施例7の表5の群1及び実施例8の表7の群1)。
【0056】
他の変形例において、異種Thエピトープペプチドは組み合わせ配列として存在することもでき、これは、特定のペプチドの相同体の可変残基に基づくペプチド骨格内の特定の位置にあるアミノ酸残基の混合物を含む。コンビナトリアルペプチドのアッセンブリーは、合成プロセス中に、特定の位置の1個の特定のアミノ酸の代わりに、指定の保護されたアミノ酸の混合物を添加することにより、1工程で合成できる。このようなコンビナトリアル異種Thエピトープペプチドのアッセンブリーは、多様な遺伝的背景を持つ動物に対するThエピトープの範囲を広くすることができる。異種Thエピトープペプチドの代表的な組み合わせ配列として、表2に示された配列番号42〜45が挙げられる。本発明のThエピトープペプチドは、遺伝的に多様な集団からの動物及び患者に対する広い反応性及び免疫原性を提供する。
【0057】
一般的に、本発明のAβペプチド免疫原構築物は、下記式によって表される。
(Aβ
1−42ペプチドのN末端フラグメント)−(A)o−(Th)−X
式中、(Aβ
1−42ペプチドのN末端フラグメント)は、配列番号4〜6からなる群から選ばれる約10〜約14個のアミノ酸残基を有するB細胞エピトープであり;
各Aは、独立に、アミノ酸、Lys−、Gly−、Lys−Lys−Lys−、(α,ε−N)Lys、又はε−N−Lys−Lys−Lys−Lys(配列番号32)からなる群から選ばれるアミノ酸又は結合基であり;
各Thは、配列番号34、37、38、40〜47及びその機能的免疫学的類似体からなる群から選ばれるヘルパーT細胞エピトープを構成するアミノ酸配列を有し;
Xは、アミノ酸のα-COOH又はα-CONH
2であり;且つ
oは0〜約4である。
【0058】
本発明のAβペプチド免疫原構築物は、約20〜約50個のアミノ酸残基、好ましくは約25〜約40個のアミノ酸残基を有する。
【0059】
スペーサー(A)によって提供される立体構造の分離により、提示されたAβペプチド免疫原構築物と適切なTh細胞及びB細胞との間のより効率的な相互作用が可能となり、これにより、Aβペプチド免疫原構築物又はその交差反応性の機能的免疫学的類似体の免疫原性が増強される。
【0060】
(d)組成物
(i)ペプチド組成物
本開示の組成物は1つ又はそれ以上のAβペプチド免疫原構築物を含有することができる。2つ以上のThエピトープを有するAβペプチド免疫原構築物の混合物を有するペプチド組成物は、広いMHCクラスIIの範囲のために、幅広い遺伝的集団における免疫活性の相乗的増強を可能にする医薬製剤/ワクチン製剤に調製することができる。このような組成物はAβ
1−42ペプチドフラグメントに対する改善された免疫応答を提供することができる。
【0061】
例えば、組成物は、表3に示されるAβペプチド免疫原構築物(配列番号48〜65)、その相同体、類似体及び/又は組み合わせを含むことができる。より具体的には、ペプチド組成物は、配列番号62、63、64及び65から選ばれる配列を持つAβペプチド免疫原構築物、その相同体、類似体及び又は組み合わせ(例えば、実施例7に示される配列番号62及び63の等モル混合物、又は実施例8、9及び10における配列番号64及び65の別の等モル混合物)を含むことができる。
【0062】
(ii)医薬組成物
本開示は、ADの危険性があるか又はADである患者におけるアルツハイマー型認知症を処置及び/又は予防するための医薬組成物である、Aβペプチド免疫原構築物の混合物を含有する組成物にも関する。
【0063】
組成物は液剤(例えば、溶液又は懸濁液)に調製できる。典型的には、組成物は溶液又は懸濁液のいずれかの注射剤として調製される。注射前に液状ビヒクルを調製することもできる。他の投与モードに適したさらなる製剤として、経口投与及び鼻腔内投与が挙げられる。上記の状態の処置のための本発明の組成物の有効投与量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒト又は動物であるか、投与される他の薬剤、処置が予防的又は治療的であるかを含む多くの異なる因子に応じて変わる。通常、患者はヒトであるが、遺伝子改変哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物にも処置できる。
【0064】
医薬組成物は、有効量のAβペプチド免疫原構築物及び医薬上許容可能な担体を含むように製剤化される。医薬組成物はまた、体重1kg当たりの免疫原約0.5μg〜約1mgを通常含む適切な単位投与形態に製剤化される。複数回投与で送達する場合、医薬組成物は単位投与形態当たりの適切な量に便宜上分割されてもよい。投与量は、ワクチン及び治療分野において周知のように、対象の年齢、体重及び健康状態に依存する。
【0065】
(iii)医薬ワクチン製剤
ある態様において、Aβペプチド免疫原構築物を有する医薬組成物は、ワクチン宿主におけるAβペプチドのN末端に対する免疫応答を誘発するのに用いられる。本発明のAβペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物は、ワクチン宿主又はADの危険性があるか若しくはADである患者に対して、アルツハイマー型認知症の予防及び処置のためのワクチンとして用いることができる。
【0066】
また、組成物は、医薬上許容可能なデリバリシステム中に、担体及び/又は他の添加物を含むことができる。したがって、Aβペプチド免疫原構築物を含む組成物は、アジュバント、医薬上許容可能な担体又はワクチン製剤で通常提供される免疫学的アジュバントを含む他の成分を用いる医薬ワクチン製剤として製剤化することができる。免疫アジュバントは、「特異的ワクチン抗原と組み合わせて使用された場合、それ自身は任意の特異的な抗原効果を持つことはなく、抗原特異的な免疫応答を促進、延長又は増強するように作用する任意の物質」として定義される。油、アルミニウム塩及びビロソームを含む、広範囲に使用される多くの公知のアジュバントが存在する。リン酸アルミニウム(例えば、アジュホス(Adjuphos))及び水酸化アルミニウム(例えば、アルハイドロゲル(Alhydrogel))を含む2つの一般的な塩が、ヒトワクチン中で最も一般的なアジュバントである。鉱物塩を選ぶ方法及び使用する鉱物塩又はその組み合わせの好ましい濃度を決定する方法は、当業者に周知である。
【0067】
本発明においてアジュバントとしても使用できる他の成分として、リポシン、サポニン、スクアレン、L121、エマルシゲン、モノホスホリルリピドA(MPL)、QS21、ISA35、ISA206、ISA50V、ISA51及びISA720、並びに他の有効なアジュバント及び乳化剤が挙げられる。ある特定の態様において、デリバリビヒクル及びアジュバントは、モンタニド(商標)(Montanide
TM)ISA51(油中水型乳剤製造用の、植物油及びオレイン酸マンニド(mannide oleate)から構成される油性ワクチンアジュバント組成物)、ツイーン(登録商標)(TweenR)80(ポリソルベート80又はモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンとしても知られる)、CpGオリゴヌクレオチド及び/又はその任意の組み合わせである。別の態様において、医薬組成物は、アジュバントとしてエマルシゲン(Emulsigen)又はエマルシゲンDを有する水中油中水型(即ち、w/o/w)乳剤である。
【0068】
ワクチンとしての医薬組成物は、速放性製剤又は徐放性製剤として製剤化することができる。また、医薬組成物は、全身又は局在粘膜への導入、封入された免疫原による免疫及び微粒子を用いる同時投与のために製剤化できる。このようなデリバリシステムは当業者によって簡単に見つけ出される。
【0069】
本開示のAβペプチド免疫原構築物を含む各種のワクチン製剤は、ワクチン宿主又はADの危険性があるか若しくはADである患者におけるアルツハイマー型認知症の保護及び処置に有効である。
【0070】
(iv)Aβペプチド免疫刺激複合体
ある態様において、医薬組成物は、(a)CpGオリゴヌクレオチド及び(b)Aβペプチド免疫原構築物を有する免疫刺激複合体を含むことができる。このような免疫刺激複合体は、アジュバントとして及びペプチド免疫原安定化剤として作用するように特に適応される。免疫刺激複合体は粒子状形態であり、これは、免疫応答を生じさせる免疫系細胞にAβペプチド免疫原構築物を効率的に提示することができる。免疫刺激複合体は、非経口投与用の懸濁液として製剤化することができる。免疫刺激複合体は、非経口投与に続いて、ワクチン宿主の免疫系細胞へAβペプチド免疫原構築物を効率的に送達し、予防効果を有する抗Aβ免疫応答を生じさせるために、鉱物塩と、又はその場でゲル化するポリマーと組み合わせた懸濁液として、W/O乳剤の形態に製剤化してもよい。本発明は、カチオン性Aβペプチド免疫原構築物とアニオン性分子又はオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド及びその組み合わせとを有する安定化免疫刺激複合体、並びに、静電会合によるアニオン性分子又はオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドとの複合化によってカチオン性Aβペプチド免疫原構築物を安定化させる方法に関する。安定化免疫刺激複合体は、免疫原のデリバリシステムとして医薬組成物に組み込むことができる。
【0071】
本明細書に記載の「カチオン性ペプチド」であるAβペプチド免疫原構築物は、5.0〜8.0の範囲内のpHで正電荷のペプチドを意味する。ペプチド又はペプチド混合物の正味の電荷は、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)にそれぞれ+1の電荷、アスパラギン酸(D)又はグルタミン酸(E)にそれぞれ−1の電荷、及び配列中の他のアミノ酸に0の電荷を割り当てることによって計算される。無置換の場合、各ペプチドの末端基であるN末端のアミン(+1)及びC末端のカルボン酸塩(−1)からの電荷の寄与は、効果的に互いに相殺する。電荷は各ペプチドについて合計し、正味の平均電荷として示される。適切なペプチド免疫原は正味の平均正電荷が+1である。好ましくは、ペプチド免疫原は、正味の正電荷が+2より大きい範囲である。
【0072】
本明細書に記載の「アニオン性分子」は、5.0〜8.0の範囲内のpHで負電荷の分子を意味する。オリゴマー又はポリマーの正味の負電荷は、オリゴマー中のリン酸ジエステル基又はホスホロチオエート基にそれぞれ−1の電荷を割り当てることによって計算される。適切なアニオン性オリゴヌクレオチドは、CpGモチーフの繰り返し数が1〜10の範囲内で、8〜64個の核酸塩基を有する一本鎖DNA分子である。好ましくは、CpG免疫刺激一本鎖DNA分子は、CpGモチーフの繰り返し数が3〜8の範囲内で18〜48個の核酸塩基を含む。
【0073】
より好ましくは、アニオン性オリゴヌクレオチドは、式:5’ X
1CGX
2 3’(式中、C及びGはメチル化されておらず;X
1はA(アデニン)、G(グアニン)及びT(チミン)からなる群から選ばれ;及びX
2はC(シトシン)又はT(チミン)である)によって表される。或いは、アニオン性オリゴヌクレオチドは、式:5’ (X
3)
2CG(X
4)
2 3’(式中、C及びGはメチル化されておらず;X
3はA、T又はGからなる群から選ばれ;並びにX
4はC又はTである)によって表される。
【0074】
得られる免疫刺激複合体は、典型的には1〜50ミクロンの範囲内のサイズの粒子状形態であり、相互作用する化学種の相対的な電荷の化学量論及び分子量を含む多くの因子の機能である。粒子状の免疫刺激複合体は、アジュバント作用の提供及びインビボで特異的な免疫応答の増加という追加的な利点を有する。また、安定化免疫刺激複合体は、油中水型乳剤、鉱物塩懸濁液及びポリマーゲルを含む各種プロセスによってワクチン製剤を調製するのに適切である。
【0075】
(e)製造方法
本開示は、免疫応答を誘発し、ADの危険性があるか又はADである患者を保護するための、Aβペプチド免疫原構築物、組成物及び医薬組成物、ワクチン製剤の製造方法にも関する。
【0076】
(i)Aβペプチド免疫原構築物の製造方法
本発明のペプチド免疫原は当業者に周知の化学合成法によって製造することができる。例えば、Moore V.「Synthetic Peptides:A User’s Guide」第2章、GA Grant,W.H.編、Freeman&Co.,ニューヨーク,NY, 1992, p.63-67を参照のこと。したがって、ペプチドは、例えば、アプライド・バイオシステム・ペプチド合成機(モデル430A又は431)で、側鎖を保護したアミノ酸を使用するt−Boc又はF−moc化学のいずれかにより保護されたα−NH
2を用いる固相合成の自動メリーフィールド法を使用して合成することができる。Thエピトープのためのコンビナトリアルライブラリーペプチドを有するペプチド構築物の調製は、与えられた可変位置でカップリング用の代替アミノ酸の混合物を提供することによって達成することができる。
【0077】
所望のペプチド免疫原のアッセンブリーの完成後、樹脂を標準の手順に従って処理してペプチドを樹脂から切断し、アミノ酸側鎖上の官能基を脱ブロック化する。遊離ペプチドは、HPLCにより精製され、生化学的、例えばアミノ酸分析又は配列決定によって特性が明らかにされる。ペプチドの精製法及び特性評価法は、当業者に周知である。
【0078】
本発明の免疫原は、分岐状ポリリシルコア樹脂上に直接所望のペプチド構築物を合成することにより、分岐状ポリマーとして調製してもよい(Wangら、Science,1991;254:285-288)。
【0079】
この化学的方法によって製造されるペプチドの品質を制御及び定義することができ、結果として、抗原性、免疫原性及び収率の再現性を保証することができる。固相ペプチド合成によるペプチド又はペプチド免疫原構築物に関するAβの製造の詳細な説明を実施例1に示す。
【0080】
25年にわたる合成ペプチドの免疫学的応用における経験の間に、出願人は、意図する免疫学的活性の保持を可能にする構造的可変性の範囲が、低分子薬物による特定の薬物活性の保持を可能にする又は生物学的に誘導される薬物と共に生成する高分子において認められる所望の活性及び望ましくない毒性の保持を可能にする構造的可変性の範囲よりも、はるかに適応することを見出した。したがって、意図的に設計されたか、又は意図するペプチドと類似のクロマトグラフィー特性及び免疫学的特性を持つ配列が欠失した副生成物の混合物として合成プロセスの誤りによって必然的に生成する、いずれかのペプチド類似体は、しばしば、所望のペプチドの精製調製物と同様に有効である。これらのペプチドを使用する最終製品の再現性及び有効性を保証するような、製造方法及び製品の評価方法の両方を監視するための識別力のあるQC手法が開発される限り、設計された類似体及び意図しない類似体混合物は有効である。
【0081】
ペプチドは、核酸分子、ベクター及び/又は宿主細胞を含む組み換えDNA技術を使用して作製することもできる。このように、Aβペプチド免疫原構築物及びAβペプチド免疫原構築物の免疫学的機能的類似体、並びにその類似体/相同体をコードする核酸分子もまた、本発明の一部として本開示に含まれる。同様に、核酸分子を有するベクター(発現ベクターを含む)だけでなく、ベクターを含む宿主細胞もまた、本発明の一部として本開示に含まれる。
【0082】
各種の例示的な態様は、Aβペプチド免疫原構築物及びAβペプチド免疫原構築物の免疫学的機能的類似体の製造方法も含む。例えば、該方法はAβペプチド免疫原構築物及び/又はその免疫学的機能的類似体をコードする核酸分子を含む発現ベクターを含む宿主細胞を、ペプチド及び/又は類似体が発現するような条件下で培養する工程を含むことができる。より長い合成ペプチド免疫原は、周知の組み換えDNA技術により合成することができる。このような技術は、詳細なプロトコルを含む周知の標準マニュアルにおいて提供される。本発明のペプチドをコードする遺伝子を構築するために、アミノ酸配列を逆翻訳して、アミノ酸配列をコードする核酸配列(好ましくは、遺伝子を発現する生物体に最適なコドンを有する)を得る。次に、典型的にはペプチド及び必要に応じて任意の調節エレメントをコードするオリゴヌクレオチドを合成することによって合成遺伝子を作製する。合成遺伝子を適切なクローニングベクターに挿入し、宿主細胞に遺伝子導入する。次いで、選ばれた発現系及び宿主にふさわしい適切な条件下でペプチドを発現する。ペプチドを精製し、標準的な方法により特性を明らかにする。
【0083】
(ii)免疫刺激複合体の製造方法
各種の例示的な態様は、Aβペプチド免疫原構築物及びCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)分子を有する免疫刺激複合体(ISC)を製造する方法も含む。ある態様において、
図5Aに示すように、安定化免疫刺激複合体はカチオン性ペプチド及びポリアニオン性CpG ODN分子に由来する。
図5Aは、電荷の静電中和により引き起こされる自己組織化システムを示す。アニオン性オリゴマーに対するカチオン性ペプチドのモル電荷比の化学量論が会合の程度を決める。ペプチド免疫原及びCpG ODNの非共有結合性の静電会合は、完全に再現性のあるプロセスである。ペプチド/CpG ODN免疫刺激複合体は、自己凝集し、免疫系の「プロフェッショナル」抗原提示細胞(APC)への提示が促進されるため、さらに複合体の免疫原性が増強される。これらの複合体は、製造中の品質管理のために容易に特徴付けられる。ペプチド/CpG ISCはインビボで十分に許容される。
【0084】
ある態様において、ワクチン製剤(UBI ADワクチン)は、2つのAβペプチド免疫原構築物(配列番号64及び65)を用い、等モル比で調製し、独占的所有権を有する(proprietary)CpG ODNと混合して、実施例8及び9に記載するように、溶液中で免疫刺激複合体の自発的な形成がもたらされる。CpG ODN及びAβペプチド免疫原構築物を有するこの新規な粒子系は、CpG ODNの使用に関連する一般的なB細胞の分裂促進性を有利にし、バランスのとれたTh−1/Th−2型応答を更に促進するために設計された。
【0085】
開示するワクチン製剤中のCpG ODNは、反対の電荷の静電中和を介するプロセスで免疫原と100%結合し、ミクロンサイズの粒子の形成がもたらされる。粒子形態は、CpGアジュバントの通常の使用からCpGの投与量を大幅に低減することを可能にし、不利な自然免疫応答の可能性をより減らし、抗原提示細胞(APC)を含む代替的な免疫プロセシング経路を促進する。したがって、開示する製剤(UBI ADワクチン)は、概念的に新規であり、代替的な機構によって免疫応答の刺激を促進することにより利点を提供する。
【0086】
(iii)ワクチン製剤の製造方法
各種の例示的な態様は、
図5Bに示すように、鉱物塩を有する油中水型乳剤及び懸濁液を使用するワクチン製剤も含む。投与の目標の一部でもある予防を伴って、多くの人々によって使用されるように設計されたワクチンのためには、安全性は考慮される別の重要な因子になる。臨床試験における多くのワクチン製剤のためのヒトへの油中水型乳剤の使用にもかかわらず、アラムは、その数十年にわたる安全性試験によって、依然としてワクチン製剤での使用のための主要なアジュバントである。実施例8及び9に示すように、アラム又はその鉱物塩であるアジュホス(Adjuphos)アラム(リン酸アルミニウム)を臨床適用のための調製物中でアジュバントとして使用した。
【0087】
(f)アルツハイマー病の処置及び予防のための方法
(i)処置の体系的計画(regime)
予防的な適用において、医薬組成物を、アルツハイマー病に影響されやすいか、又はアルツハイマー病の危険性がある患者に、危険性を取り除くかもしくは軽減させるか、重篤度を軽減させるか、又は(生化学的、組織学的及び/又は行動学的に)疾患の発症を遅らせる(疾患の進行中でのその合併症及び中間の病理学的表現型を含む)のに十分な量で、投与する。
【0088】
治療的な適用において、組成物を、このような疾患の疑いがあるか又は既にこのような疾患に罹患している患者に、治療、又は(生化学的、組織学的及び/又は行動学的に)疾患の症状を少なくとも部分的に抑制する(疾患の進行中でのその合併症及び中間の病理学的表現型を含む)のに十分な量で、投与する。
【0089】
ある方法において、薬剤の投与は、まだ特徴的なアルツハイマー病理を発症していない患者における軽度認知障害を軽減又は解消する。治療的又は予防的処置を達成するのに適切な量は、治療的又は予防的に有効な投与量として定義される。予防的及び治療的体系的計画の両方において、薬剤を、通常、十分な免疫応答を達成するまで、幾つかの投与量で投与する。典型的には、免疫応答を監視し、免疫応答が減少し始めたら反復投与する。
【0090】
(ii)処置に適している患者
処置に適している患者として、アルツハイマー病発症の危険性はあるが症状は示していない者、及び現在症状を示している患者が挙げられる。
【0091】
本明細書で使用される用語「予防的処置」は、疾患をもたらす発症プロセスの停止を目的とする処置に関する。
【0092】
本明細書で使用される用語「処置」は、疾患の進行をもたらすか及び/又は対症的な効果を有する発症プロセスの停止を目的とする処置に関する。
【0093】
十分に長く生きている人の場合、全ての人がアルツハイマー病を患う危険性があると言ってもよい。したがって、本方法は、対象患者(即ち、生きている人は誰でも患者としての資格があり得る)の危険性の任意の評価は必要とせずに、一般の人々に対して予防的に投与することができる。本方法は、アルツハイマー病の公知の遺伝的危険性を持つ人に対して特に有用である。そのような人としては、この疾患を経験した親類を持つ人、及び遺伝又は生物学的マーカーの分析により危険性が確定した人が挙げられる。アルツハイマー病に対する危険性の遺伝マーカーとしては、APP遺伝子の変異(特に、ハーディ及びスウェーデン変異とそれぞれ呼ばれる、717番目並びに670及び671番目での変異)が挙げられる(Hardy J. Trends in Neurosciences 1997;20:154-159を参照のこと)。危険性の他のマーカーとして、プレセニリン遺伝子PS1及びPS2、並びにApoE4における変異、ADの家族歴、高コレステロール血症又はアテローム性動脈硬化症がある。
【0094】
一般に、患者は、軽度認知障害がある患者、アルツハイマー病に関連する公知の遺伝子型を有する患者、21トリソミーを有する患者(即ち、潜在的なダウン症候群患者)、アルツハイマー病の危険性を示す代替マーカーを有する患者からなる危険群の対象から選ばれる。
【0095】
無症状の患者において、処置は任意の年齢(例えば、10、20、30歳)で開始することができる。患者が40、50、60又は70歳に達するまで処置を開始する必要はない。潜在的なダウン症候群の患者の症例では、出生前に母親に又は出生後すぐに治療薬を投与することによって処置を開始することができる。
【0096】
現在アルツハイマー病に罹患している人は特徴的な認知症から認識でき、これは本明細書で使用されるように、特に、精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版)(DSM−IV)基準及び上記の危険因子の存在に従って定義される疾患に関する。また、多くの診断テストがADの人を識別するために利用できる。これらは、CSFタウ及びAβ
1−42レベルの測定を含む。タウの上昇及びAβ
1−42レベルの低下は、ADの存在を表す。アルツハイマー病に罹患している人は、NINCDS−ADRDAアルツハイマー基準によって診断することもできる。
【0097】
処置は、典型的には一定期間にわたる複数回投与を必要とする。処置は、治療薬に対する抗体又は活性化T細胞若しくはB細胞の応答をアッセイすることにより(例えばAβ
1−42ELISA)、長時間にわたって監視できる。応答が低下したら追加免疫投与量が指示される。
【0098】
老人性アミロイドプラークの主成分であるAβアミロイドペプチドがADの原因となる役割を果たしていることを示唆する、考慮すべき証拠が蓄積されてきた。ADの成功した疾患改変療法は、脳内のβアミロイドの沈着に影響を与える製品を含む可能性がある。免疫系によって積極的に産生するか又は受動的に投与されるAβ特異的抗体は、異なる遺伝子導入マウスモデルにおけるプラークの負荷を一貫して低減する。抗Aβ抗体を産生するAD患者の免疫系を刺激する最初の臨床的試みは、しかしながら、許容できない副作用のために中断されなければならなかった(処置した患者の6%に髄膜脳炎、Orgogozo JMら、Neurology 2003;61:46-54)。
【0099】
驚くべきことに、有害な免疫反応又は微小出血の発生率は、麻疹ウイルス融合(MVF)タンパク質及びB型肝炎表面抗原(HBsAg)にそれぞれ由来する、2つの理想的な人工ヘルパーTエピトープと等モル比で結合した、2つのAβ
1−14ペプチド免疫原構築物(配列番号64及び65)を使用する本開示の製剤(UBI ADワクチン)では観察されない。
【0100】
開示する方法のある面において、驚くべきことに、Aβペプチド免疫原構築物は、認知症に罹患した温血動物、特にヒトの筋肉内に有利に適用できることが見出された。
【0101】
第2の面において、本発明は、Aβペプチド免疫原構築物を筋肉内に投与するための剤形を提供する。Aβペプチド免疫原構築物の筋肉内用の好ましい剤形は、アジュバントとしての鉱物塩の存在中でCpG ODNと複合化したペプチド免疫原構築物を30μg〜1000μg/0.5mL/用量、好ましくは100μg〜400μg/0.5mL/用量、より好ましくは300μg/0.5mL/用量で含有するワクチン製剤である。剤形は使用直前まで2〜8℃で保管できる。剤形は、好ましくは、温血動物、特にその腕に注射器を用いる筋肉内注射によって投与される。剤形を温めるために、剤形は、周囲温度に、約15分〜45分間、例えば30分間、維持することができる。好ましくは、薬剤物質を吸い上げる前に、潜在的な半可視化粒子の分散のためにバイアルを穏やかに数回反転する。
【0102】
第3の面において、本発明は、1投与当たり30μg〜1000μg/0.5mL、好ましくは1投与当たり100μg〜400μg/0.5mL、より好ましくは1投与当たり約300μg/0.5mLで、それを必要とするヒト患者に、初回免疫後0週、4週及び8週の初回抗原刺激後、12週毎に約1回、好ましくは26週毎に約1回、特に52週に約1回、投与することを有する、ヒト患者における認知症の予防及び処置方法に関する。注射の頻度は、患者の応答に応じて変更できる。例えば、注射が抗体価に従って投与されなければならない場合、投与頻度は変更できる。
【0103】
上記疾患の処置におけるAβペプチド免疫原構築物の有用性は、適切な臨床研究、例えば、実施例に記載されたもののように、0週、4週及び12週の全部で3回、各回1投与当たり300μg/0.5mLのワクチン製剤を投与し、続いて9カ月にわたって追跡する研究において確認することができる。抗体力価に従って、3カ月、6カ月又は12カ月毎に1回、フォローアップ免疫が可能である。
【0104】
適切な臨床研究は、アルツハイマー病の危険性があるか又はアルツハイマー病の症状を有する患者に対する、オープンラベル試験または、特に、無作為化、二重盲検、プラセボコントロールの並行試験である。
【0105】
特定の態様は、AN−1792ワクチン(凝集化Aβ
1−42、エラン/ワイス)を接種した患者における同種Thエピトープの類似体で観察された毒性作用を持たない、ヘルパーT(Th)エピトープ(配列番号46及び47)と合成的に結合した、Aβ
1−42ペプチドのN末端(Aβ
1−14、配列番号4)をそれぞれ有する2つのAβペプチド免疫原構築物(配列番号64及び65)の混合物を含有するワクチン製剤(UBI ADワクチン)を含む。インビトロ研究、及び小動物、ヒヒ及びマカク(macaque)におけるインビボ研究から、予想されるN末端部位特異的な抗体が産生し、これらの抗体が、Aβの毒性作用を中和し、プラークの除去を促進する機能的免疫原性を持つことがわかる。抗体はCNSから、末梢循環へAβ
1−40を導くように見える。結果から、ワクチンが抗Aβ
1−42細胞内応答を惹起しないことがわかる。UBI ADワクチンは、カニクイザルにおける反復投与での急性毒性試験及び慢性毒性試験で良好な忍容性を示した。実施例8及び9に具体化したUBI ADワクチン製剤の安全性及び免疫原性は、軽度〜中程度ADの患者に対する第I相試験において更に試験され、19人の患者全てにおいてAβ
1−14ペプチドのN末端に特異的な抗体を誘発することが見いだされ、これにより、重篤な又は許容できない任意の有害事象を引き起こすことなく、0、4及び12週に筋肉内に免疫化した後、前例のない100%の応答率を達成した。軽度ADの高齢の被験者群(n=6、年齢が≧60歳、MMSEのベースラインが≧20)は、UBI ADワクチン製剤に対する高い抗体反応、並びに、6カ月の中心的試験中及び6カ月のフォローアップ期間の観察後にベースラインスコアと比較して、(i)ADAS−Cog(アルツハイマー病評価尺度−認知(
AD Assessment
Scale-
Cognitive));(ii)ADCS−CGIC(アルツハイマー病共同研究−変化に対する医師の包括的印象(
Alzheimer’s
Disease
Cooperative
Study-
Clinical
Global
Impressions of
Change));及び(iii)MMSE(ミニメンタルステート検査(
Mini-
Mental
State
Exam))スコアによって評価される認知及び機能転帰の改善を示した。ADAS−Cogは、臨床試験で使用される最も一般的な認知力検査の手法である。ADAS−Cogは、記憶、言語、習慣、注意及び他の認知能力の障害を測定する11タスク(70ポイント)からなり、これはしばしばADのコア症状を示す(スコアの上昇は増悪を示す)。ADCS−CGICは、ベースラインからの変化の単一の国際的な評価である(スコアの低下は増悪を示す)。MMSEは認知機能をスクリーニングするために最も一般的に使用される手法であり、見当識、記銘、短期記憶、言語機能の尺度を提供する(スコアの低下は増悪を示す)。第IIa相試験において、バイオマーカー(分子診断法、脳画像診断、遺伝子タイピング)を使用して、脳内の毒性Aβオリゴマーの濃度をおそらくは低下させる、循環中の抗Aβ
1−14抗体を能動免疫を通じて上昇させることによる疾患の進行の軽減の評価を含む、軽度ADの患者に対するワクチン製剤の有効性を評価する。
【0106】
(g) 具体的な態様
本発明の具体的な態様として、次のものを含むが、これらに限定されない。
(1) 下記式を有するAβペプチド免疫原構築物:
(Aβ
1−42ペプチドのN末端フラグメント)−(A)o−(Th)−X
式中、(Aβ
1−42ペプチドのN末端フラグメント)は、配列番号4、5及び6からなる群から選ばれる約10〜約14個のアミノ酸残基を有するAβ由来のB細胞エピトープであり;
各Aは、独立に、アミノ酸、Lys−、Gly−、Lys−Lys−Lys−、(α,ε-N)Lys、及びε-N−Lys−Lys−Lys−Lys(配列番号32)からなる群から選ばれるアミノ酸又は結合基であり;
各Thは、配列番号34、37、38、40〜47及びその機能的免疫学的類似体からなる群から選ばれるヘルパーT細胞エピトープを構成するアミノ酸配列を有し;
Xは、アミノ酸のα-COOH又はα-CONH2であり;且つ
oは0〜約4である。
(2) (Aβ
1−42ペプチドのN末端フラグメント)がAβ
1−14(配列番号4)である、(1)のAβペプチド免疫原構築物。
(3) Aがε-N−Lys−Lys−Lys−Lys(配列番号32)である、(1)のAβペプチド免疫原構築物。
(4) Thエピトープが配列番号45又は46である、(1)のAβペプチド免疫原構築物。
(5) 配列番号48〜65のアミノ酸配列を有する、(1)のAβペプチド免疫原構築物。
(6) 配列番号62〜65のアミノ酸配列から本質的になる、(1)のAβペプチド免疫原構築物。
(7) 配列番号62、63、64、及び/又は65である、(1)のAβペプチド免疫原構築物。
(8) 請求項1のAβペプチド免疫原構築物を有する組成物。
(9) a. (1)のAβペプチド免疫原構築物;及び
b. 医薬上許容可能なデリバリビヒクル及び/又はアジュバント;
を有する医薬組成物。
(10) a. (1)のAβペプチド免疫原構築物;及び
b. 医薬上許容可能なデリバリビヒクル及び/又はアジュバント;
を有するアルツハイマー病ワクチン組成物。
(11) a. (7)のAβペプチド免疫原構築物;及び
b. 医薬上許容可能なデリバリビヒクル及び/又はアジュバント;
を有するアルツハイマー病ワクチン組成物。
(12) (b)のアジュバントが、アルハイドロゲル(Alhydrogel)(Al(OH)
3)又はアジュホス(Adjuphos)(AlPO
4)からなる群から選ばれるアルミニウムの鉱物塩である、(10)のアルツハイマー病ワクチン組成物。
(13) (a)のペプチド免疫原が、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合して安定化免疫刺激複合体を形成する、(10)のアルツハイマー病ワクチン組成物。
(14) (1)のAβペプチド免疫原構築物の(Aβ
1−42ペプチドのN末端フラグメント)成分と結合する、単離抗体又はそのエピトープ結合フラグメント。
(15) Aβ
1−10(配列番号6)と特異的に結合する、(14)の単離抗体又はそのエピトープ結合フラグメント。
(16) 請求項1のAβペプチド免疫原構築物と結合した、(14)の単離抗体又はそのエピトープ結合フラグメント。
(17) 配列番号6と結合した、(15)の単離抗体又はそのエピトープ結合フラグメント。
(18) (14)の単離抗体又はそのエピトープ結合フラグメントを有する組成物。
(19) (10)のワクチン製剤を投与することを有する、ヒト患者の認知症の重篤度を軽減する方法又はヒト患者の認知症の発病を遅らせる方法。
(20) ADの危険性があるか又はADである患者に、前記ワクチン製剤を1投与当たり10μg〜1000μgを有する水溶液を投与する、(19)の方法。
【0107】
(h) さらなる態様
(1) 本発明のAβペプチド免疫原構築物は、下記式によって表される:
(Aβ
1−42ペプチドのN末端フラグメント)−(A)o−(Th)−X
式中、(Aβ
1−42ペプチドのN末端フラグメント)は、配列番号4〜6からなる群から選ばれる約10〜約14アミノ酸残基を有するB細胞エピトープであり;
各Aは、独立に、アミノ酸、Lys−、Gly−、Lys−Lys−Lys−、(α,ε-N)Lys、及びε-N−Lys−Lys−Lys−Lys(配列番号32)からなる群から選ばれるアミノ酸又は結合基であり;
各Thは、配列番号34、37、38、40〜47及びその機能的免疫学的類似体を有する群から選ばれるヘルパーT細胞エピトープを構成するアミノ酸配列を有し;
Xは、アミノ酸のα-COOH又はα-CONH
2であり;且つ
oは0〜約4である。
(2) アルツハイマー病(AD)ワクチン組成物であって、
a.(1)のAβペプチド免疫原構築物;
b.(a)の機能的免疫学的類似体;
c.(a)又は(b)のいかなる組合せ;及び
d.許容可能なデリバリビヒクル又はアジュバント;
を有する上記組成物。
(3) (d)のアジュバントが、アルハイドロゲル(Al(OH)
3)又はアジュホス(AlPO
4)であるアルミニウムの鉱物塩である、(2)のADワクチン。
(4) (a)のペプチド抗原が、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合して安定化免疫刺激複合体を形成する、(2)のADワクチン。
【0108】
(5) アルツハイマー病(AD)ワクチン組成物であって、
a.配列番号49〜51、54、55、及び57〜65を有する群から選ばれるAβペプチド免疫原構築物;
b.(a)の機能的免疫学的類似体;
c.(a)又は(b)のいかなる組合せ;及び
d.許容可能なデリバリビヒクル又はアジュバント;
を有する上記組成物。
(6)アルツハイマー病(AD)ワクチン組成物であって、
a.(5)のAβペプチド免疫原構築物;
b.(a)の機能的免疫学的類似体;
c.(a)又は(b)のいかなる組合せ;及び
d.許容可能なデリバリビヒクル又はアジュバント;
を有する上記組成物。
(7) (d)のアジュバントが、アルハイドロゲル(Al(OH)
3)又はアジュホス(AlPO
4)であるアルミニウムの鉱物塩である、(5)のADワクチン。
(8) (a)、(b)、又は(c)のペプチド抗原が、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合して安定化免疫刺激複合体を形成する、(5)のADワクチン。
(9) (a)、(b)、又は(c)のペプチド抗原が、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合して安定化免疫刺激複合体を形成し、(d)のアジュバントが、アルハイドロゲル(Al(OH)
3)又はアジュホス(AlPO
4)であるアルミニウムの鉱物塩である、(5)のADワクチン。
【0109】
(10)アルツハイマー病(AD)ワクチン組成物であって、
a.配列番号62+63、64+65を有する群から選ばれるAβペプチド免疫原構築物;
b.(a)の機能的免疫学的類似体;
c.(a)又は(b)のいかなる組合せ;及び
d.許容可能なデリバリビヒクル又はアジュバント;
を有する上記組成物。
(11) a.配列番号64及び配列番号65の混合物を有するAβペプチド免疫原構築物;及び
b.CpG ODNとさらに混合した(a)の混合物;
を有する組成物。
(12) a.配列番号64及び配列番号65の混合物を有するAβペプチド免疫原構築物;
b.CpG ODNとさらに混合した(a)の混合物;及び
c.アジュホス;
を有する医薬組成物。
【0110】
(13) a.配列番号64及び配列番号65の混合物を有するAβペプチド免疫原構築物;
b.CpG ODNとさらに混合した(a)の混合物;及び
c.アルハイドロゲル;
を有する医薬組成物。
(14) (13)の医薬組成物をヒトに投与することを有する、ヒトの認知症の重篤度を軽減する方法又はヒトの認知症の発病を遅らせる方法。
(15) (13)の医薬組成物をヒトに300μg/0.5mL/投与で投与することを有する、ヒトの認知症の重篤度を軽減する方法又はヒトの認知症の発病を遅らせる方法。
(16) a.(13)の医薬組成物をヒトに300μg/0.5mL/投与で投与すること;及び
b.初期として0週、4週及び12週に投与すること;
を有する、ヒトの認知症の重篤度を軽減する方法又はヒトの認知症の発病を遅らせる方法。
(17) a.(13)の医薬組成物をヒトに300μg/0.5mL/投与で投与すること;
b.初期として0週、4週及び12週に投与すること;及び
c.(b)の工程後、3カ月毎に1回、及び/又は6カ月毎に1回、及び/又は12カ月毎に1回、追加投与すること;
を有する、ヒトの認知症の重篤度を軽減する方法又はヒトの認知症の発病を遅らせる方法。
(18) 投与が筋肉注射による(14)〜(17)のいずれかの方法。
【0111】
(19) ヒトが軽度AD、MCIであるか、又はADの徴候又は症状を示さないが、年齢が60を越えている(14)〜(18)のいずれかの方法。
(20) ヒトへの投与が以下である(19)の方法:
a.ヒトが軽度ADである場合、投与がADの処置のためである;
b.ヒトがMCIである場合、投与が認知症の重篤度の予防及び/又は軽減のためであるか及び/又は認知症の発病の遅延のためである;
c.ヒトがADの徴候又は症状を示さないが、年齢が60を越えている場合、投与が認知症の重篤度の予防及び/又は軽減のためであるか及び/又は認知症の発病の遅延のためである。
(21) (a)のペプチド抗原が、オリゴデオキシヌクレオチドCpGと混合して安定化免疫刺激複合体を形成する(2)〜(10)のいずれかのADワクチン。
(22) (a)のAβペプチド免疫原構築物が配列番号17〜20のアミノ酸配列を有する上記のADワクチン。
(23) (a)のAβペプチド免疫原構築物が配列番号19及び20のアミノ酸配列を有する上記のADワクチン。
(24) (a)のペプチド抗原の全量が投与当たり約10μg〜約1mgである上記のADワクチン。
(25) デリバリビヒクル又はアジュバントが、モンタニドISA50V、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、エマルシゲン、エマルシゲンD、及びCpGオリゴヌクレオチドからなる群から選ばれる上記のADワクチン。
【0112】
(26) 上記のいずれかのワクチン製剤を投与することを有する、ヒト患者の認知症の重篤度を軽減する方法又はヒト患者の認知症の発病を遅らせる方法。
(27) 認知症が、アルツハイマー型の認知症又はアミロイド血管障害を伴う血管認知症である上記のいずれかの方法。
(28) 認知症が、パーキンソン病又はレビー小体型認知症を伴う認知症である上記のいずれかの方法。
(29) 前記ワクチン製剤を、投与当たり10μg〜1000μgを有する水溶液で、ADの危険性があるか又はADである患者に投与する上記のいずれかの方法。また、許容可能なのは、投与当たり100〜750μg又は投与当たり300μgである。300μgは、臨床試験で効能よく用いられるターゲットの投与量とすることができる。
(30) 投与は、3カ月毎に1回及び/又は6カ月毎に1回及び/又は12カ月毎に1回とすることができる。
(31) 投与は、抗体力価に基づいてワクチン投与の頻回を決定することができる。
【0113】
(32) 患者はアルツハイマー病が進行する危険性があり、さらに、患者は、軽度認知障害がある患者、アルツハイマー病に関連する公知の遺伝子型を有する患者、21トリソミーを有する患者、及びアルツハイマー病の危険性を示す代替マーカーを有する患者からなる群から選ばれる上記のいずれかの方法。
(33) アルツハイマー病に関連する公知の遺伝子型を有する患者がApoE4遺伝子型を有する患者を有する上記のいずれかの方法。
(34) (a)のAβペプチド免疫原構築物及びその組合せを有するワクチン製剤を、0週、4週及び12週に3回投与による初回刺激のために、投与当たり300μg/0.5mLで投与する上記のいずれかの方法。
(35) ワクチン製剤を、3カ月毎に約1回、その後6カ月毎に1回、及びその後12カ月毎に1回、投与する上記のいずれかの方法。
(36) 以前にワクチン製剤の接種を受けた患者の血液由来のB細胞を、ADの予防及び処置のためにAβペプチドのN末端をターゲットとするヒトモノクローナル抗体の調製及び選択に用いる上記のいずれかの方法。
(37) 初期注射から0週、4週及び12週で初期免疫化を提供し、ついで3カ月に1回、6カ月に1回、最も好ましくは12カ月に1回、追加免疫化を行うことを有する対象者における免疫応答を誘発させる方法。
(38) 投与は、投与当たり10μg〜1000μg、好ましくは100μg〜750μg、より好ましくは投与当たり300μgで行うのがよい。
(39) 上記の投与の経路は、当業界で公知の標準の経路、例えば筋肉内経路、皮下経路、経口などによるのがよい。
【0114】
Aβペプチド免疫原構築物ワクチン製剤として有用である医薬組成物は、Aβペプチド免疫原構築物及び許容可能なデリバリビヒクル又はアジュバントを含み、該Aβペプチド免疫原構築物は、
a)配列番号49〜51、54、55、及び57〜65;
b)(a)のホモログ;
c)(a)又は(b)の抗原性及び免疫学的機能的類似体;
d)少なくとも1つの保存的アミノ酸置換、アミノ酸付加、及び/又はアミノ酸欠失を有する(a)、(b)又は(c);
e)(a)〜(d)のいかなる組合せ;
からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する。
【0115】
ある特異な製剤において、Aβペプチド免疫原構築物は、配列番号62及び63並びにそれらの混合物からなる群から選ばれる。
他の特異な製剤において、Aβペプチド免疫原構築物は、配列番号64及び65並びにそれらの混合物からなる群から選ばれる。
他の製剤は、特異な製剤の等モル比混合物をさらに含み、該Aβペプチド免疫原構築物が配列番号62及び63からなる群から選ばれる。他の製剤は、特異な製剤の等モル比混合物をさらに含み、該Aβペプチド免疫原構築物が配列番号64及び65からなる群から選ばれる。
ある特異な製剤において、配列番号62及び63(又は64及び65)の等モル比混合物の量は、投与当たり約1μg〜約1000μgである。
ある特異な製剤において、配列番号62及び63(又は64及び65)の等モル比混合物の量は、投与当たり約100μg〜約750μgである。
ある特異な製剤において、配列番号62及び63(又は64及び65)の等モル比混合物の量は、投与当たり約300μgである。
【0116】
本発明のペプチド組成物の効能は、動物、例えばモルモット、ヒヒ、カニクイザル、又はヒトに、本発明のペプチドを有する免疫原性組成物で注射することによって確立することができる。表4、5、6、7及び8、並びに配列番号48〜65を参照のこと。液性免疫応答は、約10〜約14のアミノ酸残基であるAβ
1−42ペプチドのN末端フラグメントに向けられている。用いた手順の詳細な記述は、実施例で提供する。
以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を限定するために用いられるべきでない。
【0117】
実施例1
アミロイドベータ(Aβ)関連ペプチドの合成
効能ある標的のAβワクチンの設計及び製剤を目的とする開発の試みに含まれるデザイナーAβ関連ペプチド構築物を合成する方法を記載する。ペプチドは、研究室のパイロット試験及び現場での試験に有用である少量で合成できるだけでなく、ワクチン製剤及び血清学的アッセイの工業的商業生産のために有用である大量(キログラム)でも合成できる。
【0118】
長さが約10〜40個のアミノ酸の配列を持つ、豊富なAβ関連抗原性ペプチドのレパートリーを、効能あるADワクチン中で使用する最適のペプチド構築物をスクリーニング及び選択するために、設計した。各種の血清学的アッセイにおけるエピトープマッピングに使用される代表的なAβ
1−40、Aβ
1−42ペプチド、N末端AβペプチドフラグメントAβ
1−28、Aβ
1−14、Aβ
1−10、Aβ
15−42、及び10アミノ酸長のペプチドを表1(配列番号1〜32)で特定する。Aβペプチドフラグメント(Aβ
1−10〜Aβ
1−14)を含有する各構築物は、病原タンパク質(麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF)及びB型肝炎表面抗原タンパク質(HBsAg)を含む)に由来する慎重に設計されたヘルパーT細胞(Th)エピトープに合成的に結合し、表2(配列番号33〜47)に、そのそれぞれのAβペプチド免疫原構築物の免疫原性を増強するための、単一配列(配列番号33〜41、46、47)又はコンビナトリアルライブラリー(配列番号42〜45)のいずれかを特定する。100を超えるペプチド構築物から選ばれた18個の代表的なAβペプチド免疫原構築物を表3(配列番号48〜65)で特定する。
【0119】
抗Aβ抗体の検出及び/又は測定のための免疫原性試験又は関連する血清学的試験で使用する全てのペプチドは、ペプチド合成機(アプライド・バイオシステムズ、430A、431及び/又は433モデル)によるFmoc化学を使用して少量で合成した。N末端のFmoc保護及び三官能アミノ酸の側鎖保護基を有する固相担体上で、独立して合成することによって、各ペプチドを製造した。完成したペプチドを固体担体から切断し、側鎖保護基を90%トリフルオロ酢酸(TFA)によって除去した。合成ペプチド調製物を、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI−TOF)質量分析計によって評価し、正確なアミノ酸含量を決定した。各合成ペプチドを逆相HPLC(RP−HPLC)によっても評価し、合成プロファイル及び調製物の濃度を確認した。
【0120】
合成プロセスの微細な制御(カップリング効率の逐次モニタリングを含む)にもかかわらず、アミノ酸の挿入、欠失、置換、及び早期終了を含む、伸長サイクル中の意図しない現象が原因でペプチド類似体も生成した。したがって、合成された調製物は、典型的には、標的ペプチドと共に多数のペプチド類似体を含んでいた。このような意図しないペプチド類似体を含んでいたにもかかわらず、得られた合成されたペプチド調製物は、免疫診断(抗体捕捉抗原として)及びワクチン投与(ペプチド免疫原として)を含む、免疫学的応用における使用に適していた。典型的には、意図的に設計したか、又は合成プロセスを通じて副生物の混合物として生じたかの、いずれかによるこのようなペプチド類似体は、これらのペプチドを使用する最終製品の再現性及び有効性を保証するような、製造方法及び製品の評価方法の両方を監視するための識別力のあるQC手法が開発される限り、所望のペプチドの精製調製物と同様にしばしば有効である。数百グラムからキログラム量での大量のペプチド合成は、15ミリモル〜50ミリモルスケールで、特別注文の自動ペプチド合成機UBI2003で行った。
【0121】
臨床試験用の最終ワクチン製剤で使用される有効成分として、Aβペプチド構築物を、浅い濃度勾配下の分取RP−HPLCによって精製し、MALDI−TOF質量分析計、アミノ酸分析及びRP−HPLCによって、純度及び同一性を特徴付けた。
【0122】
実施例2
血清学的アッセイ及び試薬
合成ペプチド構築物及びその製剤の機能的免疫原性を評価するための血清学的アッセイ及び試薬を以下に詳述する。
【0123】
a.抗体の特異性分析のための、Aβ1−42、Aβ1−40、Aβ1−28又はAβ1−14ペプチドに基づくELISA試験
以下の実施例に記載の免疫血清試料を評価するためのELISAアッセイを開発した。次に説明する。
【0124】
96ウェルプレートのウェルを、2μg/mL(特に断りのない限り)標的ペプチド(Aβ
1−42、Aβ
1−40、Aβ
1−28又はAβ
1−14(配列番号1〜4))の10mM NaHCO
3緩衝剤溶液(pH9.5(特に断りのない限り))100μLで、1時間、37℃でそれぞれコートした。
【0125】
ペプチドでコートしたウェルを3重量%ゼラチンのPBS溶液250μLと共に培養して、37℃で1時間、非特異的タンパク質の結合部位をブロックし、0.05体積%ツウィーン(登録商標)20を含有するPBSで3回洗浄し、乾燥した。分析する血清を、20体積%正常ヤギ血清、1重量%ゼラチン及び0.05体積%ツウィーン(登録商標)20を含有するPBSで1:20(特に断りのない限り)に希釈した。希釈試料(例えば、血清、血漿)100マイクロリットル(100μL)を各ウェルに添加し、37℃で60分間反応させた。
【0126】
次いで、未結合の抗体を除去するために、ウェルを0.05体積%ツウィーン(登録商標)20のPBS溶液で6回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)複合化種(例えば、マウス、モルモット又はヒト)特異的ヤギ抗IgGを、陽性ウェル中で形成した抗体/ペプチド抗原複合体と結合する標識化トレーサーとして使用した。ペルオキシダーゼ標識化ヤギ抗IgG 100μLを、予備滴定での最適希釈で、PBS中0.05体積%ツウィーン(登録商標)20を有する1体積%正常ヤギ血清中、各ウェルに添加し、37℃で更に30分間培養した。ウェルを0.05体積%ツウィーン(登録商標)20のPBS溶液で6回洗浄して未結合抗体を除去し、0.04重量% 3’,3’,5’,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)及び0.12体積%過酸化水素のクエン酸ナトリウム緩衝剤溶液を含む基質混合物100μLと更に15分間反応させた。この基質混合物は着色生成物を形成することによってペルオキシダーゼ標識を検出するのに用いた。1.0M H
2SO
4 100μLを添加して反応を停止し、450nm(A
450)での吸光度を測定した。ヒヒ及びマカクのIg/IgG検出のため、霊長類のIgGに対して高い交差反応性を有するHRP複合化ヤギ抗ヒトTgG試薬をトレーサーとして使用した。試験中の患者からの臨床試料について、検証済のELISAテストキットで最適に力価測定された、HRP複合化タンパク質A/G試薬を、血清の力価を決定するために使用した。各種Aβペプチドワクチン製剤を接種したワクチン接種動物の抗体価を決定するために、10倍段階希釈の1:100〜1:10,000の血清を試験し、Log
10で表される試験血清の力価を、カットオフA
450を0.5に設定したA
450の線形回帰分析によって計算した。
【0127】
b.担体タンパク質上のヘルパーT細胞エピトープ、特異的な担体タンパク質によるThペプチド又はThコンビナトリアルペプチドライブラリー、ELISA試験に基づくThペプチド又はThコンビナトリアルライブラリーに対する抗体反応性の評価
上述と同様のELISA及び上述と同様にして、96ウェルELISAプレートのウェルを、2μg/mL(特に断りのない限り)KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)のような担体タンパク質、Thペプチド又はThコンビナトリアルペプチドライブラリー(配列番号44〜47)の10mM NaHCO
3緩衝剤溶液(pH9.5(特に断りのない限り))100μLで、1時間、37℃でそれぞれコートした。各種Aβペプチドワクチン製剤を接種したワクチン接種動物の抗体価を決定するために、10倍段階希釈の1:100〜1:10,000の血清を試験し、Log
10で表される試験血清の力価を、カットオフA
450を0.5に設定したA
450の線形回帰分析によって計算した。
【0128】
c.B細胞エピトープクラスターの10アミノ酸長ペプチドに基づくELISA試験による、Aβ及びhAPP(ヒトアミロイド前駆体タンパク質)に対する、微細な特異性分析及びエピトープマッピングの評価
免疫化した宿主又はワクチンにおける抗Aβ抗体の微細な特異性分析をエピトープマッピングによって測定した。簡潔には、96ウェルプレートのウェルを、0.5μg/0.1mL/ウェルのhAPP10アミノ酸長ペプチド(配列番号6、8〜30)でそれぞれコートし、次いで、血清試料(PBS中1:100希釈)100μLを、上述の抗体ELISA法の重複する次の工程で、10アミノ酸長のプレートウェル中で培養した。ワクチンのB細胞エピトープ、並びに免疫化した宿主におけるヒヒ、マカク及びヒト抗Aβ抗体に関連する微細な特異性分析も、Aβ
1−10ペプチド(DAEFRHDSGY、配列番号6)、N末端での置換を有するAβ改変合成ペプチド又は非関連コントロールペプチドで予備吸収し、次いで、更なる特異性確認のために抗Aβ
1−28ELISA試験によって試験した。
【0129】
d.免疫原性の評価
ヒト被験者又は動物由来の免疫前血清試料及び免疫化血清試料を、実験ワクチン投与プロトコルに従って採取し、56℃で30分間加熱して血清の補体因子を不活性化した。ワクチン製剤の投与に続き、プロトコルに従って血液サンプルを入手し、特異的な標的部位に対するそれらの免疫原性を評価した。連続希釈した血清を試験し、陽性の力価を相互希釈のLog
10として表した。特定のワクチン製剤の免疫原性を、所望のB細胞応答を増強するのに用いられる「ヘルパーT細胞エピトープ」に対する抗体の反応性を無視できるほど低く維持しながら、標的抗原内の所望のエピトープ特異性に対する高力価のB細胞抗体反応の誘発能によって評価する。
【0130】
e.血液及び脳脊髄液(CSF)中のAβ関連ペプチド抗原を検出するための固相の酵素結合イムノアッセイ
高感度Aβ
1−40イムノアッセイ(インビトロジェン(Invitrogen)(商標)、バイオソース(BioSource)(商標)Cytokines & Signaling、カマリロ、CA、米国)を使用して、キットの指示書に従って、カニクイザルの血清、血漿及びCSF中のAβ
1−40濃度を測定した。Aβ
1−42レベルは正常なカニクイザルでは検出限界以下であった。hAPP751遺伝子導入マウスの脳組織の血漿、CSF及び化学抽出物中のAβ
1−40及びAβ
1−42レベルを、Aβ
1−40及びAβ
1−42イムノアッセイ(Genentics Company Inc.、チューリッヒ・シュリーレン、スイス)の指示書に従って測定した。軽度〜中程度アルツハイマー病の人の血漿中のAβ
1−40レベルの定量化を、キット指示書(ヒトアミロイドβ(1−40)アッセイキット、IBL、27714)に従って測定した。ヒト血漿中のAβ
1−42レベルは検出限界以下であった。
【0131】
実施例3
免疫組織化学的分析
正常成人ヒト組織(PhenoPath Laboratories Inc.社、シアトル、WA、米国)及びアルツハイマー病症例の脳標本(Dr.Felicia Gaskin、バージニア大学、バージニア、シャーロッツビル、VA、米国)を、死後及び/又は外科病理標本から入手した。カニクイザル組織標本(Beijing Jo-Inn New Drug Research Center、北京、中国)及びhAPP遺伝子導入マウスの脳標本(JSW-Rearch GmbH、グラーツ、オーストリア)を剖検にて入手した。組織は、液体窒素中でスナップ凍結、冷OCT包埋化合物中に浸漬及び凍結切片のいずれかであるか、或いはホルマリン固定、パラフィン包埋及び標準的な手法によって調製した切片であった。
【0132】
凍結保存組織切片の間接的免疫蛍光分析を、モルモット、hAPP遺伝子導入マウス、ヒヒ及びマカクの、免疫前及び過免疫の血清又は精製IgGを用いて、又は市販のマウスモノクローナル抗体と蛍光色素との複合化二次抗体を用いて、行った。アビジン−ビオチンが増強された市販キットを使用する間接的免疫ペルオキシダーゼ染色を、精製モルモット抗AβIgGを使用する正常成体組織の凍結保存組織切片に、又は、CD3、CD4、CD8(Tリンパ球分画)、CD11b(マイクログリア細胞活性化マーカー)、GFAP(アストロサイト)及び特異的Aβエピトープを検出する市販のモノクローナル抗体を使用するコントロール及びUBI ADワクチン(UB−311)で処置したマカクの脳切片に、行った。標準的な病理学検査室の手順に従って免疫組織化学的分析を行った。
【0133】
実施例4
リンパ球増殖及びサイトカイン産生に対するT細胞機能アッセイ
T細胞の活性化を評価するためのリンパ球増殖及びサイトカイン産生を含むT細胞機能アッセイの手順を以下に詳述する。
【0134】
a.末梢血単核球(PBMC)の単離、凍結及び解凍
ヘパリン処置血液を採取し、PBMCをフィコール−ハイパーク(Ficoll-Hypaque)密度勾配遠心分離によって単離した。リン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄後、10%ウシ胎児血清(FCS)を補充したRPMI1640からなる細胞培地でPBMCを再懸濁した。いくつかの実験では、単離PBMCを凍結し、液体N
2中で保管し、続くインビトロでの培養のために解凍した。
【0135】
b.T細胞及び末梢血単核球(PBMC)の増殖アッセイ
ワクチン接種した動物のPBMCを、選択したワクチン免疫組成物10.0μgの存在下、24ウェル培養プレート(Nunc)のそれぞれのウェルに2.5×10
6cells/mLで培養した。抗原を刺激しないPBMCのみを含有するネガティブコントロールの培養物も培養した。全ての培養物を5.0%CO
2インキュベータ中37℃で3日間保った。培養開始から3日後、上清を採取し、上記の定量アッセイを使用してそれぞれのサイトカインを測定した。
【0136】
ヒヒ及びカニクイザル由来の末梢血単核球(PBMC)をフィコール−ハイパーク勾配遠心分離によって単離した。ペプチド誘発増殖及びサイトカイン産生のために、細胞(2×10
5cells/ウェル)を、それのみで又はそれぞれのペプチドドメイン(Aβ
1−42、Aβ
1−14、Aβ
15−42、Thペプチド、及びネガティブコントロールとして非関連ペプチドを含む)を添加して、培養した。マイトジェン(Mitogen)(PHA、PWM、Con A)をポジティブコントロールとして使用した。6日目に、
3H−チミジン(
3H−TdR)1μCiを、3つの各複製細胞培養ウェルに添加した。18時間培養後、細胞を採取し、
3H−TdR取り込みを測定した。刺激指数(S.I.)は、抗原存在下の1分当たりのカウント(cpm)を抗原不存在下のcpmで割ったものを表し;S.I.が>3.0は有意であると考えられる。
【0137】
c.UBI ADワクチンでの免疫前後のPBMC培養物によって産生するサイトカインの評価
カニクイザルのPMBC培養物のサイトカイン分析(IL−2、IL−6、IL−10、IL−13、TNF−α、IFN−γ)を、培地のみ、又は各種Aβペプチドドメイン又はマイトジェン存在下のアリコートで行った。サル特異的サイトカインサンドイッチELISA試験キット(U-CyTech Biosciences社、ユトレヒト、オランダ)を使用して、キットの指示書に従ってそれぞれのサイトカイン濃度を測定した。
【0138】
実施例5
安全性、免疫原性、毒性及び有効性研究で使用した動物
モルモット:免疫原性試験は、成熟した無感作の、成体の雄性及び雌性ダンカン−ハートレー系モルモット(300〜350g/BW)で実施した。実験は1群当たり少なくとも3頭のモルモットを用いた。ダンカン−ハートレー系モルモット(8〜12週齢;Covance Research Laboratories、デンバー、PA、米国)が関わるプロトコルを、IACUC申請の承認の下、契約した動物施設だけでなく、スポンサーのUBIにおいても行った。
【0139】
アヌビスヒヒ:成体の雄性ヒヒ(Papio anubis、8〜10歳齢;オクラホマ大学ヘルス・サイエンス・センター、オクラホマシティ、OK、米国)における免疫原性試験を、IACUC申請の承認の下、契約した動物施設だけでなく、スポンサーのUBIにおいても実施した。
【0140】
カニクイザル:成体の雄性及び雌性サル(Macaca fascicularis、約4歳齢;Beijing Jo-Inn New Drug Research Center、北京、中国)における免疫原性及び反復投与毒性の研究を、IACUC申請の承認の下、契約した動物施設だけでなく、スポンサーのUBIにおいても実施した。
【0141】
hAPP751遺伝子導入マウス:若齢のhAPP751遺伝子導入(tg+)マウス及びその同腹仔(14±2週齢)における免疫原性及び有効性研究を、アルツハイマー病の予防モデルで使用し、老齢のtg+マウス及びその同腹仔(52±2週齢)を治療モデルで使用した。両研究は、IACUC申請の承認の下、契約した動物施設(JSW−リサーチ社、グラーツ、オーストリア)だけでなく、スポンサーのUBIにおいても実施した。
【0142】
hAPP751tg+マウスは、マウスのThy−1プロモーターの調節管理の下、ロンドン(V717I)及びスウェーデンK670M/N671L)の二重変異を含むヒトアミロイド前駆体タンパク質(hAPP)を構造的に過剰発現する(Rockenstein Eら、1995及び2001)。Aβ
1−42沈着は、前頭皮質中に成熟したプラークの出現を伴って、早ければ3〜4月齢で生じ、5〜7月齢になると、プラーク形成はhAPP751tg+マウスの海馬、視床及び嗅部に広がる。16週にわたる筋肉へのワクチン投与の効果は、血清のELISAアッセイによる抗体反応、脳のアミロイド沈着及び脳のプラーク負荷、並びに、免疫染色及び生化学的抽出により、脳内の細胞反応性(例えば、T細胞の浸潤、ミクログリア細胞の活性化)のレベル上昇の証拠を観察した。
【0143】
免疫前に、この実施例で上記した方法に従って、それぞれの動物の血清及び/又は血漿試料について、Aβ標的ペプチドの存在を試験した。各動物は、種及びプロトコルに応じて、ワクチン製剤の1投与当たりのAβ標的ペプチド構築物で免疫化した。
【0144】
実施例6
モルモット及びヒヒに対するAβペプチド構築物の免疫原性の初回順位のための一般的なワクチン製剤
各実験で用いる医薬組成物及びワクチン製剤を下記の実施例においてより詳述する。簡潔には、各研究群で特定した製剤は、通常、異なる型のスペーサー(例えば、εK又はペプチド構築物の溶解度を向上するKKKを有するεK)、並びにデザイナーペプチド構築物のN末端で結合したAβペプチドフラグメントを有する麻疹ウイルス融合タンパク質及びB型肝炎表面抗原に由来する人工ヘルパーTエピトープの2つのセットを含有する非特異的(promiscuous)ヘルパーT細胞エピトープの変異体を介して結合するAβペプチドのフラグメントを有する、全ての型のデザイナーAβペプチド構築物を含有する。100を超えるデザイナーAβペプチド構築物は、全長Aβ
1−42に対するそれらの相対的な免疫原性を最初にモルモットで評価し、更にAD患者の脳切片からの天然プラークとのそれらの交差反応性を評価した。Aβペプチド構築物を、特定のペプチド構築物の様々な量で、鉱物塩又はアルハイドロゲル(Alhydrogel)(アラム)と混合した、ヒトワクチン用に承認された油としてセピック・モンタニド(Seppic Montanide)(商標)ISA51を有する油中水型乳剤に調製した。ワクチンは、通常、Aβペプチド構築物を水に約20〜800μg/mLで溶解することによって調製し、モンタニド(商標)ISA51で油中水型乳剤(体積で1:1)に、又は鉱物塩若しくはアルハイドロゲル(Alhydrogel)(アラム)(体積で1:1)と共に製剤化した。ワクチン製剤を室温で約30分間保ち、免疫前に約10〜15秒間ボルテックスによって混合した。
【0145】
数体の動物は、特定のワクチン製剤で2〜3回の投与で免疫化し、筋肉内経路で、時間0(抗原刺激)及び3週後に初回免疫(wpi)(追加免疫)を、2回目の追加免疫として任意に5又は6wpiに投与した。これらの免疫化した動物を、次いで、ワクチン製剤中に存在する各種合成Aβペプチド免疫原の免疫原性、並びにAβ
1−28及び全長Aβ
1−42とのそれらの交差反応性を評価するために試験した。免疫プロトコルによって指示されるような特定の期間にわたる投与計画で、モルモットの一次スクリーニングにおいて強力な免疫原性を有するAβペプチド免疫原を、次いで油中水型乳剤、鉱物塩及びアラム系製剤の両方をヒヒにおいて更に試験し、この種はヒトと類似の免疫応答プロファイルを持つように較正した。
【0146】
新薬臨床試験開始届の提出及びアルツハイマー病患者に対する臨床試験のための準備として、GLPに沿った前臨床研究における免疫原性、持続性、毒性及び有効性研究用の最終ワクチン製剤に組み込まれる前に、最も有望なAβペプチド免疫原候補のみを更に広く評価した。
【0147】
実施例7
アルツハイマー型認知症の予防及び処置のための、Aβ
1−14ペプチド免疫原構築物を組み込む多成分ワクチン製剤の設計原理、スクリーニング、同定及び最適化
設計の歴史:各ワクチン又は免疫療法製品は、特定の疾患の機構及び治療介入に必要な標的タンパク質に基づく独自設計の焦点とアプローチが必要である。後に設計がモデル化された標的は、疾患経路に関与する細胞タンパク質又は病原体の幾つかのタンパク質が関与してよい感染因子を含むことができる。研究から商業化へのプロセスは、達成までに典型的には10年以上を必要とする非常に長いプロセスである。
【0148】
標的分子が選ばれると、血清学的検証の広範なプロセスが必要になる。標的分子内のB細胞及びT細胞エピトープの同定及び分布は分子ワクチン設計に重要である。標的B細胞が認識されると、小動物における継続的なパイロット免疫原性試験が行われ、デザイナーペプチドのワクチン製剤によって誘発される抗体の機能的特性を評価する。次いで、ワクチン免疫原性及び誘発した抗体の機能的特性をさらに検証するために、標的の種の動物でこのような血清学的適用を行う。評価用に免疫化した宿主から採取した血清を用いる複数の並行群で全ての研究を実施する。ヒトワクチンの場合での標的の種又は非ヒト霊長類に対する初期の免疫原性試験も実施して、免疫原性及び設計の方向性をさらに検証する。次いで、混合物を変えて標的ペプチドを調製し、それぞれの製剤設計で調製した組み合わせで使用する場合の、ペプチド構築物の中でのそれぞれの相互作用に関する機能的特性におけるわずかな相違を評価する。更なる評価の後、最終的なペプチド構築物、ペプチド組成物及びその製剤を、製剤のそれぞれの物理的パラメータと共に確立し、最終製品開発プロセスに至る。
【0149】
幅広い設計経験は、
図1に示す加速されたペースでの商業化に向けて、発見から次世代のワクチン製品の開発を可能にする。
【0150】
a.アルツハイマー病患者を処置する可能性を有するワクチン製剤のための適切なAβ1−14由来ペプチド構築物の設計及び検証
本発明者によって開示された以前の発明(Wang CY、米国特許第6,906,169号(米国、ユナイテッド・バイオメディカル社、2005);Wang CY.、米国特許第7,951,909号(米国、ユナイテッド・バイオメディカル社、2001);Wang CY.、米国特許第8,232,373号(米国、ユナイテッド・バイオメディカル社、2012)に続くものとして、髄膜脳炎のような重篤な副作用を引き起こす、アルツハイマー病患者にしばしば存在するヘルパーTエピトープ類似体を発現する配列のC末端ドメインが欠損したAβ
1−14ペプチド上に沈着したAβ分子からのB細胞エピトープの更なる改良物を、ワクチン製剤に組み込まれる設計中の標的B細胞エピトープとして選択した。
【0151】
ワクチン製剤に組み込まれる最も潜在能力のあるペプチド構築物を得るために、麻疹ウイルス融合(MVF)タンパク質配列又はB型肝炎表面抗原(HBsAg)タンパク質から更に設計された、各種の病原体又は人工ヘルパーTエピトープに由来する、豊富な非特異的(promiscuous)ヘルパーTエピトープのレパートリーを、モルモットに対する免疫原性試験にて作製した。表3(配列番号48、51〜65)に示すように、16個のAβ
1−14由来ペプチド構築物の代表的な研究で、Aβ
1−14ペプチドは、スペーサーとしてのεKを介して、それぞれの非特異的(promiscuous)ヘルパーTエピトープと結合した。ペプチド免疫原構築物をモンタニド(商標)ISA51油中水型乳剤で製剤化し、0wpiに抗原刺激、及び3wpiに追加免疫のために、標準化ISA51乳剤で100μg/0.5mLに調製したそれぞれのワクチン製剤を投与することによって、それらの免疫原性それぞれをモルモットで試験した。予備的な免疫原性分析で、Aβ配列の15〜28番目のアミノ酸のペプチド配列の欠失が、Aβ
1−14配列自身を非免疫原性にする(表4、群1〜3)、Aβ
1−42のC末端におけるヘルパーT細胞エピトープの構造の特徴の存在を確認した。Aβ
1−14ペプチドの免疫原性の免疫原性を復元及び増強するのに用いられるヘルパーTエピトープの昇順での予備的な順位を、最も弱いペプチド構築物が最初に記載される表4に示す:MVF(配列番号51、58、59)及びHBsAg(配列番号60)に由来する人工ヘルパーTエピトープの間で順位付けすると、マンソン住血吸虫Th(配列番号56)<破傷風菌1Th(配列番号48)<百日咳菌Th(配列番号52)<破傷風菌2Th(配列番号53)<ジフテリアTh(配列番号54)<コレラ毒素Th(配列番号57)を有する熱帯熱マラリア原虫Th(配列番号55)。Aβ
1−14由来ペプチド構築物(配列番号51)は、潜在能力あるペプチド免疫原構築物として(配列番号61)に示す分枝状の4量体構造として設計することもできる。要約すると、上記免疫原性試験は、AD患者の老人斑の主要な生化学的成分である、全長Aβ
1−42ペプチドのN末端に対して抗体を誘発するための最終的なワクチン製剤の設計において使用される免疫原としての、特異的なAβ
1−14由来構築物(配列番号51、57〜61)の適合性を検証した。
【0152】
b.異なる非特異的(promiscuous)ヘルパーTエピトープを有するAβ1−14由来構築物を用いることによるMHCの広範囲化
多様な遺伝的背景の患者を処置するワクチンを設計する場合、多様な遺伝的背景を有する人口の範囲を最大にする設計とすることが重要である。したがって、そのような組合せのためにAβ
1−14由来ペプチド免疫原構築物の相乗的な免疫原性効果を探索した。MVF及びHBsAgに由来する非特異的(promiscuous)ヘルパーTエピトープは、このような免疫原性の増強を提供するための最も潜在能力あるものの中の代表であるので、これら2つのヘルパーTエピトープを含むペプチド構築物の組み合わせをこのような探索のために設計した。MVF及びHBsAg(配列番号44及び45)両方のためのヘルパーTエピトープのコンビナトリアルライブラリーの形態を、表2に示すように、最大のMHC結合モチーフ範囲を考慮して、Aβ
1−14由来構築物(配列番号62及び63)に対して設計し、それらは、個々に又は組み合わせて、続いて、1投与当たり100μg/0.5mLで抗原刺激(0wpi)及び2回の追加免疫(3及び5wpi)の予定で、モルモットに対する免疫原性を評価した。表5に示すように、2つの免疫原の等重量比混合物は、個々のペプチド構築物それぞれによって誘発されるものと比較して、かなりの免疫応答を誘発した。
【0153】
c.B細胞エピトープのみを標的することに集中し且つ明らかな免疫応答をもたらす、複数のMHC結合モチーフを有する慎重に選ばれたヘルパーTエピトープと結合する標的のBエピトープを組み込む簡便な免疫原の設計
Bエピトープ免疫原性を増強するために使用されるそれぞれのヘルパーTエピトープを試験するために、初回免疫後8週(wpi)の過免疫の血清を免疫化した宿主から採取した。同様に免疫化した宿主の過免疫の血清は、Aβ
1−14ペプチドのN末端にシステイン残基を付加する化学的カップリングによって調製されたKLH結合Aβ
1−14ペプチドの同様の抗原刺激及び追加免疫の免疫の予定によって得られた。表6から明らかなように、単独又は組み合わせのいずれかのデザイナーAβ
1−14ペプチド免疫原構築物(配列番号62及び63)で免疫化した全ての宿主は、標的のAβ
1−42の交差反応性に対する抗Aβ
1−14抗体の交差反応性に所望の高い力価をもたらした一方、2つのヘルパーTエピトープ(配列番号44及び45)に対しては、反応性はわずかであるか又は全く生じなかった。対照的に、Aβ
1−14エピトープ(Log
10力価が2.2〜3.9)に対する慣用の担体タンパク質KLHによって生じる相対的な免疫原性にもかかわらず、担体タンパク質KLHに対する非常に高い抗体反応が、非常に高い力価(GeoMeanのLog
10力価が6.2)を有する全ての動物によって生じ、「標的B細胞エピトープ」に対して特異な「集中した」応答が、B細胞及びT細胞エピトープの構造及び機能の理解に基づいて、これらの合理的に設計されたペプチド免疫原構築物での免疫化の結果であるという以前の知見が再度検証された。
【0154】
d.ISA51油中水型乳剤中及びアラム中にAβ1−14構築物(配列番号62及び63)を様々な量で含むワクチン製剤の抗原刺激(0wpi)及び追加免疫(3及び6wpi)後のヒヒにおける免疫原性の評価
これらのAβ
1−14ペプチド免疫原構築物によって誘発される抗体の機能的特性を調査する、さらなる開発事業に移行する前に、ヒトの試験で最も頻繁に使用される2つの異なる製剤にこれらのペプチド構築物(配列番号62及び63、等モル比)を様々な量で組み込んだワクチン製剤の相対的な免疫原性の評価をヒヒにおいて評価した。ヒヒは、尺度がヒトのものと最も似ている免疫応答を生じる動物種である。全てのワクチン製剤を、1投与当たり0.5mLで動物に投与した。将来の使用のための本来の標的用量は100μg/mLであるので、この用量で3頭の動物に投与した。より弱いが最も頻繁に使用されるアジュバントであるアラムに対する、より潜在能力のあるISA51油中水型製剤の相対的な免疫原性の評価を、同じ100μgで行った。試験した油中水型乳剤系において、1投与当たり、25μg、100μg及び400μgで用量漸増試験を評価した。この試験の最初の観察では、1投与当たり0.5mL中100μgを与える同じペプチド免疫原含量を有するISA油中水型乳剤の製剤と比較して、アラム系製剤では低下した免疫応答(1Log
10以上の抗体価)が生じた。1投与当たり100μgが免疫化した宿主に対する将来のワクチン製剤投与のための本来の標的量であったが、表7に示すように、25μgから、100μg、400μgそれぞれに投与量を増加すると、免疫応答の上昇が観察された。したがって、デザイナーAβ
1−14ペプチド免疫原構築物(配列番号62及び63)又はそれらの類似体のペプチド免疫原構築物は、100μgを超える用量が更に検討されるだろう。
【0155】
実施例8
アルツハイマー型認知症処置用の成功裡の免疫治療ワクチンの開発の基準
免疫治療ワクチンを開発するためのUBIの戦略は、「自己」バリア、及び遺伝的多様性の制限、並びに安全な(
Safe)、独特の(
Unique)、特徴的な(
Characterizable)、費用対効果の高い(
Cost-effective)、有効で(
Efficacious)、安定(
Stable)且つスケーラブルな(
Scalable)(造語としてのSUCCESS)、最適なペプチド系ワクチン製剤の開発を克服するための基盤技術に基づく標的のB配列と結合する独占的所有権を有する非特異的(promiscuous)Thエピトープの設計を含む(Wang CYら、2005;Sokoll KK,2004)。特別な注意を初期設計段階に払うことで、このワクチンとしての規制当局の承認の観点から特徴付けられるワクチン製剤のためのプログラムの開発段階に入るであろうペプチド免疫原を選ぶことを可能にし、第III相試験後に患者への効能が証明されたとき、これまでの人類の歴史において、数百万の用量基準で、患者に投与される最初の完全な合成ペプチド系ワクチンになるだろう。かなりの所望の免疫応答が生じることが既に証明された多くの中から選ばれたペプチドの品質設計への特別な注意が、細部にわたるとき、使用されるそれぞれのペプチドの「溶解性」、合成化学収率、及び配列設計に固有の精製ハードルに対してはらわれる。高い安全因子を有する十分に許容されるアジュバントもまた、多くの許容される選択の中で、考慮する重要な因子になるだろう。免疫原性の安全因子とスケール間のバランスを考慮しなければならない。また、免疫原性が安全因子によって妥協される場合、免疫応答をさらに高めるために、他のワクチン製剤のいかなる特徴をも組み込むことができる。再び、ワクチンの成功は、多様な遺伝的背景を有する、可能な限り多くの幅広い人口において、所望の免疫応答を生じるその能力に帰し、主要組織適合抗原複合体(MHC)の幅広い範囲はまた、考慮における非常に重要な因子でなければならない。
【0156】
Aβ分子のN末端を標的とするSUCCESSワクチンを達成するための上記の考慮を踏まえると、コンビナトリアルライブラリーの形式におけるそれらのカウンターパートと比較して、コンビナトリアル形状の代わりに単一配列のペプチドが、それらの相対的に弱い免疫原性にもかかわらず選ばれるだろう。ヘルパーTエピトープが増強する高度に強力な免疫原性は、通常、疎水性のアミノ酸残基の長い区間を有し、これは対応するペプチドを不溶性にする傾向があるので、ペプチドの溶解性もまた試験における重要な因子である。Asp、Glu、Lys及びArgのように高荷電の残基がペプチドの溶解性を高めるために特定の位置に付加されるか否かについて、特別な注意を払わなければならない。合成における高収率を達成するために、中間体の生成を伴う全ての合成プロセスに関する化学が広範囲に全て評価され、ワクチン製剤の重要な成分として想定されるであろう最終ペプチドの最適配列に到達した。免疫原性の面からの全ての高度に制限されたペプチド候補のバランスのよい考慮の後、MVF系列のペプチド(配列番号64)、及びHBsAg系列のペプチド(配列番号65)を有する、2つのAβ
1−14ペプチド免疫原構築物(配列番号64及び65)を選択し、ワクチン製剤の更なる探索のために更に分析した。
【0157】
これらのペプチドを合成し、
図2A、2B、2Eに示すように高純度に精製した。浅い濃度勾配の逆相分析下、配列番号65及び64の両方のペプチドのHPLCプロファイルは、それぞれ20分及び21分の溶出時間を示した。これらの精製ペプチドのMALDI−TOF分析は、
図2C及び2Dに示すように、両方とも高精度で、配列番号65のペプチドが3892.274(理論値は3892.52)、配列番号64のペプチドが4374.568(理論値は4374.04)の分子量を与えた。
【0158】
双方共にAβ
1−14の免疫原性を増強するのに用いられる配列番号46及び47の「Th」ペプチドは、
図3A及び3Bに示すように、各種の集合においてそれらの結合モチーフを広く評価した。すべての患者の遺伝的背景の範囲を最大にするために、ワクチン設計に2つの非特異的ヘルパーTエピトープを組み込むことが安全である。範囲の割合の分析から、このワクチンは、ワクチンを接種する患者全てではないが多くの人口、大規模な試験を正当化する重要因子及びワクチンの高い臨床的価値を拡大する開発努力をカバーする非常に合理的な機会を有するだろう。
【0159】
投与の目標の一部として予防も含む多くの人口によって使用されるワクチン設計のために、安全性は考慮される別の重要因子になる。臨床試験における多くのワクチン製剤のためのヒトへの油中水型乳剤の使用にもかかわらず、アラムは、その数十年にわたる安全性試験によって、依然としてワクチン製剤での使用のための主要なアジュバントである。アラム又はその鉱物塩であるアジュホス(リン酸アルミニウム)を臨床適用のための調製物中でアジュバントとして使用することを検討した。
【0160】
a.一定量の鉱物塩と共に高精製Aβ1−14ペプチド免疫原構築物(配列番号64及び65)を様々な量で含むワクチン製剤の抗原刺激(0wpi)及び追加免疫(3及び6wpi)後のモルモットにおける免疫原性の評価
前臨床及び臨床試験用のUBI ADワクチンの開発のための多くの免疫原候補の中から2つの高精製Aβ
1−14ペプチド免疫原構築物(配列番号64及び65)を選択した後、これら2つのペプチドの等モル比混合物を、
図4に示すように、モルモットに対する投薬研究において、一定量(0.5mL)のアラム/鉱物塩の存在下でそれらの免疫原性を試験した。上記の2つのAβ
1−14ペプチド免疫原構築物(配列番号64及び65)を含むペプチド混合物の様々な量として、0.5mLの鉱物塩(リン酸アルミニウム、アジュホス(Adjuphos))中、0μg、10μg、30μg、100μg〜300μgを、26週間にわたる免疫原性の観察を伴う0、3及び5wpi(初回免疫後の週)の免疫の予定に基づき、モルモットで試験した。初回免疫後5週あたりの免疫応答のピークで、1投与当たり300μgを接種した動物は最も高い免疫応答を与え、100μg及び30μgを接種したものと続き、次いで10μg用量であり、続く26週間を通じて同様の免疫応答の順位であった。したがって、0.5mLアジュホス当たり300μgでの最高用量は免疫の最適条件であると考えられ、異なる種での他の関連する製剤において、免疫原性を研究するための手引きとして使用されるだろう。
【0161】
b.ペプチド及びオリゴヌクレオチド間の免疫刺激複合体(ISC)の形成によってワクチン製剤の免疫原性を更に上昇させる手段
アジュバントとしてアラム又はその関連する鉱物塩の使用に内在する、関連するワクチン製剤の免疫原性は、それらの標的のAβ
1−14B細胞エピトープの力価も約1Log
10まで低下するだろう(実施例7における類似の研究から推測される)。したがって、ワクチン製剤の免疫原性を更に上昇させる手段を検討する。
【0162】
より具体的には、
図5Aに示すUBI製剤において、安定化免疫刺激複合体(ISC)はカチオン性ペプチド及びポリアニオン性CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)分子に由来する(上段)(Sokoll KK, 2004)。これは、電荷の静電中和によって駆動する自己組織化システムである。アニオン性オリゴマーに対するカチオン性ペプチドのモル電荷比の化学量論が会合の程度を決める。ペプチド免疫原及びCpG ODNの非共有結合的な静電会合は、完全に再現性のあるプロセスである。免疫系の「プロフェッショナル」抗原提示細胞(APC)への提示を促進するペプチド/CpG ODN免疫刺激複合体の凝集体は、これにより複合体の免疫原性を更に増強する。これらの複合体は、製造中の品質管理のために容易に特徴付けられる。ペプチド/CpG ISCはインビボで十分に許容される。
【0163】
次いで、
図5Bの下段に示すように、免疫刺激複合体は、水性懸濁液を形成する鉱物/アルミニウム塩アジュバントと組み合わすことができる。
【0164】
CpGモチーフは、樹状細胞(pDC)及びB細胞のサブセットで見いだされるトール様受容体9(TLR9)のアゴニストとして特徴付けられている。トール様受容体は、
細菌、ウイルス及び寄生虫のような一般的な外来性の侵入者の個々の分子パターンの特徴を認識する能力を持つ。具体的にはメチル化されていない、合成CpG配列は、TLR9に結合し、活性化することができる。潜在能力のあるB細胞のマイトジェンとして、TLR9アゴニストは、強い抗体免疫応答を誘導するのに有効である。CpGの作用のメカニズムは、それらの中で、持続性の抗原特異的抗体の産生に関与する。
【0165】
標的のAβ
1−42凝集性ワクチンに対して患者の抗体が30%しか誘発しない免疫原性、及び6%の患者に生じた髄膜脳炎様の副作用の両方で失敗したAN1792(Aβ
1−42ペプチドワクチン)の臨床試験の観点から、UBI ADワクチンのために本発明で使用するアルミニウム系アジュバントは、Th−2型の免疫応答(即ち、IL−4及びIL−5サイトカイン)を刺激することが知られている。また、Aβペプチド免疫原構築物/CpG ODN免疫刺激複合体は粒子状である。粒子状の免疫原のプロセシングは、Th−2型の応答の傾向があるAPCによって促進される。
【0166】
要約すると、CpGオリゴヌクレオチドは、幾つかのヒト臨床試験(>1,000の患者)において安全に(
Safely)使用されている。ペプチド/CpG ODN由来免疫刺激複合体は容易に特徴付けられる(
Characterized)。生理的条件下にて安定で(
Stable)、インビボで十分に許容される。多数のペプチド免疫原に由来するCpG系複合体の単独又は鉱物塩との組み合わせは、最小限の有害事象の報告を伴って、マウス、モルモット、ブタ、イヌ、ウシ、ヒヒ及びマカクでの効能(
Efficacious)が証明されている。アルミニウム系鉱物塩は、米国において現在承認されているワクチンに含有される唯一のアジュバントである。これらのアジュバントを使用するワクチン組成物は費用対効果が高く(
Cost-effective)、スケール(
Scale)効率も知られている。特定のワクチン/アジュバント製剤は、対アジュバント単独として承認される。UBIは独特の(
Unique)組成物を探索し、開発してきた。認知症の処置のためのUBI ADワクチンの上記した特徴はSUCCESSに向けての必要な全ての要素を持つ。
【0167】
実施例9
筋肉内注射用のUBI ADワクチン製剤
Aβ
1−14−εK−KKK−MvF5 Thペプチド免疫原構築物(配列番号64)及びAβ
1−14−εK−HBsAg3 Thペプチド免疫原構築物(配列番号65)は、生理学的なpHにおいてカチオン性である。
図2A、2B、2C(左側)は、2つのペプチド単独及び等モル比混合物のHPLCプロファイルを示す。
図2D及び2E(右側)は、それぞれ分子量(Da)が3892及び4374の2つのペプチドのMALDI−TOF質量分析によって特徴付けられるプロファイルを示す。ポリアニオン性CpG ODNの添加は、電荷の中和、溶液中での免疫刺激複合体(ISC)の即時の「自己集合」を生じさせる。カチオン性ペプチド:アニオン性CpGのモル電荷比の化学量論が会合の程度を決める。UBI ADワクチンを段階的に調製した:おおよそ等しいCpG ODNに対するモル電荷比を有する、2つのAβペプチド免疫原構築物の等モル混合物を用いて注射用水でISCを調製した。
【0168】
a.アジュバントとしてアラム又はアジュホスの不存在下又は存在下でCpGオリゴマーと免疫刺激複合体を形成する300μg/0.5mLの高精製Aβ1−14ペプチド免疫原構築物(配列番号64及び65)を含むワクチン製剤の抗原刺激(0wpi)及び追加免疫(3及び6wpi)後のヒヒにおける、10週にわたる免疫原性の評価
高精製Aβ
1−14ペプチド免疫原構築物(配列番号64及び65)を用いるモルモットの免疫原性の初期レベル及び投薬研究に基づき、2つのAβ
1−14ペプチド免疫原構築物(配列番号64及び65)を等モル比で含む混合物300μgを、上述のように、CpGオリゴマーを有する免疫刺激複合体として調製した。次いで、10週にわたって特異的抗体レベルを観察する0、3、6週の免疫プロトコルに基づいて、筋肉注射用の1投与当たり300μgのペプチドをヒヒに免疫化するために、それらをアラム若しくはアジュホスのいずれかを有するか、又はアジュバントなしで製剤化した。この動物種は尺度が人のものと最も似ている免疫応答を生じるので、このような免疫原性評価及びヒト試験の導入前の最終製剤の評価のためにヒヒを使用した。全てのワクチン製剤を1群当たり2頭の動物で、1投与当たり0.5mLで動物に与えた。
図6に示すように、1投与当たり0.5mL中300μgにおいて、アジュバントとしてアラム若しくはアジュホスが存在するか又は不存在の3つの製剤全てが、Aβ
1−14ペプチドに対するELISAによって示すように、0.5Log
10スケールの範囲内で約同等レベルの免疫原性を示した。ISC製剤はペプチド単独によって発現する免疫原性を著しく増強させた。しかしながら、8〜10週にわたる観察後、アジュホスによって支持されている製剤は、他の2群と比較して、応答スケールが0.5〜1Log
10に拡大した、著しく高い免疫応答を維持していた(即ち、約3〜10倍更に強力)。3つの密接に関連する製剤であって、アジュバントからの任意の複雑な要因がないように非常に集中し且つ所望の免疫応答を生じる高精製の合理的に設計されたペプチドを使用することによる高い安全因子であるように設計された製剤でヒヒの免疫原性をこのように慎重に較正することによって、UBI ADワクチン製剤は、以下の実施例に示すように、免疫原性、特異性、誘発抗体に関する機能的特性、急性及び慢性毒性、並びに最終的に臨床的有効性のための、霊長類及びヒトにおける更なる探索のために最終化される。
【0169】
b.免疫原性、急性毒性、慢性毒性、効能、及び臨床的安全性、忍容性及び効能研究用のUBI ADワクチン製剤の調製
CpG ODNに対するペプチドのおおよそ等しいモル電荷比でCpGと更に混合した2つのAβペプチド免疫原構築物(配列番号64及び65)の等モル比混合物を用いて、注射用水でISCを調製した。反対の電荷の静電中和を介するプロセスにおいて、UBI ADワクチン製剤中のCpG ODNはペプチド免疫原構築物と100%結合し、ミクロンサイズの粒子の形成をもたらした。この粒子状形態により、CpG アジュバントの通常の使用からCpG ODNの投与量を著しく低減すること、有害な自然免疫応答の可能性を低減すること、且つプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)を含む代替の免疫原のプロセシング経路を促進することが可能となる。予め形成したISCに、アルミニウム鉱物塩、浸透圧のための生理的食塩水、及び保存剤を連続して添加した。アルミニウム鉱物塩のうち、リン酸アルミニウムを、免疫原性の更によい維持(sustenance)に対するヒヒの免疫原性試験の結果に基づき、アラムゲルに代えて、使用した。
【0170】
c.UBI ADワクチン製剤の安定性研究及び免疫原性試験
アジュバントとして20%の過剰でリン酸アルミニウム(アジュホス)を有する1投与当たり0.5mL中300μgで調製したUBI ADワクチン製剤を上述したように調製し、1mL無菌ガラスバイアルに充填し、2〜8℃で2年間保管した。安定性試験のプロトコルに従って試料を回収した。すべての物理的パラメータは品質管理(QC)規格に適合していた。Aβ
1−14ペプチド免疫原構築物は、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)及びアジュホスアジュバントから脱複合化して、各ペプチド用の分析規格に従ってHPLCにより分析した。
図2Cの左下側に示すように、2つのAβ
1−14ペプチド免疫原構築物(配列番号64及び65)は、HPLC分析における予想溶出時間で、2つのペプチドそれぞれの等モル混合物であることが明らかになった。
【0171】
モルモットにおける免疫原性試験のために、UBI ADワクチン製剤を含むバイアルを回収した。各6頭ずつ有する2群について、1つは1投与当たり300μgのワクチン群に0及び3wpiで投与し、他の群はプラセボワクチン製剤(即ち、2つのペプチド免疫原構築物を含まない同じ製剤)を投与し、試験した。
図7に示すように、著しい免疫原性を、3wpiでの追加免疫後、5wpiまでに応答のピークに達する単回投与で、全ての動物で達成した。8wpiで採取した免疫血清は、免疫原性の増強を提供するのに用いられるそれぞれのThペプチドとのそれらの反応性について更に試験した。表8に示すように、これら2つのThペプチドの「免疫応答しない(Immunosilent)」性質を更に確認するために、任意の反応性がThペプチドに対してわずかな場合、これにより、AβペプチドのN末端に独占的に向けられた非常に集中した免疫応答を可能にする。したがって、UBI ADワクチン製剤は、十分に特徴付けられて
いない生物学的材料を独占的に扱う歴史的なワクチン業界とは違って、設計したように集中した免疫応答を生じる、十分に定義された化学物質で構成され、モノクローナル抗体よりもより幅広い反応性を有し、これにより、通常のペプチド−担体複合型のワクチンよりも明らかに、有効性においてより効果的であるため、高い安全因子が得られる。
【0172】
実施例10
UBI ADワクチンの血清学的特異性及び安全性を評価するための、アルツハイマー病のヒトの脳の免疫組織化学染色
実施例7に記載の等モル比のAβペプチド免疫原構築物(配列番号62及び63)で免疫化した群3及び群4のヒヒから過免疫の血清を精製IgG分画として貯蔵し、ヒトAD脳とのそれらの反応性を試験した。
図8に示すように、大脳の血管及びアミロイドプラーク両方の染色は、過免疫血清からの精製IgGによって認められたが、免疫前の血清から同様のIgG分画からは認められなかった。Aβ
1−14ペプチドでの免疫血清のプレインキュベーションは、脳の血管及びアミロイドプラーク両方との全ての免疫反応性を吸収するが、非関連ペプチドによっては吸収せず、Aβペプチド免疫原構築物(配列番号62及び63)を有するワクチン製剤でのワクチン投与による免疫血清における抗Aβ抗体の反応性の高い特異性を示す。
【0173】
免疫前及び過免疫のモルモットIgGを使用する別の免疫病理組織学研究を、特異性及び望ましくない抗体の自己反応性を監視するために、正常成人ヒト組織の凍結切片で行った。ヒト組織のパネル(N=32)を、UBI AD 免疫治療ワクチンで免疫化したモルモットの精製抗Aβ
1−14IgGでの免疫反応性についてスクリーニングし、同じ動物の免疫前の精製IgGと比較した。正常成体組織の切片で観察された免疫染色パターンをPhenoPath Laboratoriesの認定臨床病理学者によって検討した。幾つかの筋肉組織(例えば、子宮内膜)の弱い陽性免疫反応性を除き、試験した全ての成人ヒト組織は、3つの成体の脳検体の1つにおける老人斑に対する強い陽性反応性及び脊髄試料中の脳脊髄液の陽性の免疫染色以外は陰性であった。
【0174】
実施例11
成体ヒヒにおけるプロトタイプのUBI ADワクチン製剤の免疫原性試験
プロトコルのパートAにおいて、独占的所有権を有する免疫刺激複合体(ISC)に複合化し、アルミニウム鉱物塩アジュバントで製剤化したAβ
1−14ペプチド免疫原(1投与当たり300μgの全ペプチド)で、4頭の成体雄ヒヒを0、3及び6週に免疫化した。ISC/鉱物塩製剤は強い抗Aβ抗体反応を全ての動物にもたらした(
図9A)。有害な注射部位反応は認められなかった。
【0175】
プロトコルのパートBの目的は:(1)標的の臨床用量及び4倍の高用量で反復曝露による安全性及び注射部位の反応源性を監視すること、(2)用量漸増試験における免疫原性を監視すること、及び(3)リコール抗体反応の反応速度論を評価すること、であった。次いで、これらの動物を72週間休薬した。暫定では、抗Aβ抗体の血清レベルは10〜100倍まで減少していた。初回注射後78及び81週で(
図9B)、4頭の動物に、動物番号564及び565に300μgのペプチド用量を、又は動物番号556及び561に1200μgの用量のいずれかのワクチンを投与した。リコール応答は4頭のヒヒ全てにおいて抗体価のピークを迅速に回復した。104週までに抗体価は減少し始め、104週での追加免疫投与によって、動物は再び力価のピークを回復した。血清の抗Aβ抗体反応の反応速度論を、抗Aβ
1−28ペプチドELISAによって、0週、2週、5週、6週、8週、10週、78週、81週、84週、88週、92週、96週、100週、104週、107週及び111週で測定した。300μg用量を接種した動物において注射部位反応は認められなかった。しかしながら、78週のみ高用量(1200μg)を接種したヒヒの注射部位に、幾らかの赤み及び炎症が認められ;この一過性の反応は1週間以内に完全に回復した。他の有害な事象及び安全性の懸念は、ヒヒを評価した2年を通じて報告されなかった。
【0176】
実施例12
抗Aβ抗体による原線維形成の阻害及びAβ
1−40が介する毒性からの保護のためのインビトロでの神経毒性アッセイ
神経毒性アッセイは、Solomon Bら(Proc Natl Acad Sci USA 1997;94:4109-4112)によって以前に記載されたように、ラット褐色細胞腫株PC−12及びAβ
1−40ペプチドの熟成溶液を使用した。ペプチド溶液は、コンゴレッドバインディング(Congo Red Binding)により、原線維の形成によって特徴付けられた。6日及び9日目に、A
540nmで吸収を示す等量の染料と溶液を結合した。この観察は、有毒なAβ
1−40凝集体の形成の証拠を提供し;9日の調製物をPC−12細胞に対する毒性について試験した。
【0177】
PC−12細胞を組織培養液中で増殖させ、アッセイ培地に懸濁し、96ウェルの丸底組織培養プレートのウェルに、100μL中5×10
3cells/ウェルで入れた。37℃で培養したペプチド(即ち、凝集したAβ
1−40)及び新たに調製したペプチド(即ち、非凝集)の毒性を、25及び6.5μMで繰り返し試験した。アッセイ培地のみのPC−12細胞をコントロールとした。プレートを、37℃で48時間、CO
2インキュベータで培養した。細胞に対する毒性を、プロメガサイトトックス(Promega CytoTox)96(登録商標)細胞毒性アッセイによって測定した。溶解をA
492nmでの吸収によって測定し、結果を100%溶解に対する細胞毒性の百分率として表した。
【0178】
機能的免疫原性のためのUBI ADワクチンのインビトロでの評価
ラット褐色細胞腫株PC−12及び毒性を特徴付けるAβ
1−40ペプチドの熟成溶液を使用する神経毒性アッセイを用いて、UBI ADワクチンの抗体反応の機能的効能を評価した。Aβ
1−40ペプチドの熟成溶液を、動物の免疫プロトコルからのモルモット又はヒヒの抗Aβ血清の存在中で1時間のプレインキュベーションに続いて、PC−12細胞に対する毒性について、試験した。抗Aβ血清を1:30及び1:90希釈で試験した。最終的な結果を、Aβ
1−40原線維凝集の抑制割合及びAβ
1−40原線維が媒介する細胞毒性からのPC−12細胞の保護割合として表した。両方の免疫実験の0週の予備免疫血清をコントロールとして含めた。5及び8週の免疫性のモルモット血清及びヒヒ血清の1:30及び1:90の両方の希釈液は、相当する希釈液の予備免疫血清の5〜10%のバックグラウンド阻害と比較して、著しい阻害を提供し(それぞれ、5及び8週の両方で採血されたモルモット血清の1:30及び1:90の両方の希釈液で、50〜70%);且つ原線維の阻害アッセイにおける免疫前のヒヒ血清の15%のバックグラウンド阻害と比較して、著しい阻害を提供した(それぞれ、5及び8週の両方で採血されたヒヒ血清の1:30及び1:90の希釈液で、75及び50%)。同様に、モルモット及びヒヒの両方の予備免疫血清から得られたバックグラウンドの結果と比較して、60〜80%の範囲内でAβ
1−40が媒介する毒性からのPC−12細胞の保護がこれらの条件で認められた。これらの結果から、UBITh(登録商標)アミロイドβペプチド免疫原での免疫化によって惹起される抗体のための有毒なAβ
1−40ペプチドに対する機能的中和活性が確立される。
【0179】
実施例13
hAPP751を過剰発現する若齢の遺伝子導入マウスの脳試料における、脳形態学上の予防モード及びアミロイドβペプチド(Aβ
1−42)濃度に対するUBI ADワクチンの効果
我々は、スウェーデン及びロンドン変異を有するhAPP751を過剰発現する若齢の遺伝子導入(tg+)マウス並びにその非遺伝子導入(ntg)同腹仔(Rockenstein EM.ら、1995及び2001)の脳試料における、脳形態学上の予防モード及びアミロイドβペプチド(Aβ
1−42)濃度に対するUBI ADワクチンの効果を評価した。
【0180】
若齢の遺伝子導入(tg+)マウスを〜14週齢で、UBI ADワクチンで、予防モードで免疫化した。アミロイドプラークを測定するために脳組織を抗Aβ
1−42抗体で免疫組織化学的に染色した場合、これらの応答性の若齢のtg+マウスの結果は、プラーク負荷が減少することがわかった。ワクチン接種した若齢のtg+マウスの脳組織を生化学的に抽出し、定量的アッセイによってAβ
1−42レベルを評価した場合、若齢のtg+レスポンダーマウスの結果はAβ沈着の減少を示した。これらのパラメータは両方とも、Aβ
1−42負荷の減少がUBI ADワクチンに対する抗体反応に相関することを示す。
【0181】
更に、抗CD11b抗体を使用するミクログリア細胞の活性化及び抗CD3抗体を使用するT細胞の浸潤の相対パーセントの測定は、無処置のtg+コントロール動物と比較して、ADワクチン処置の若齢のtg+動物の脳における免疫細胞活性化の増加の証拠がないことを明らかにした。
【0182】
a.全体的な目的:
脳アミロイド沈着及び脳プラーク負荷、並びに血漿中のヒトアミロイドβペプチド(Aβ
1−42)レベルに対する、12〜16週にわたるUBI AD免疫治療ワクチンの筋肉内ワクチン投与の効果を評価すること
【0183】
遺伝子導入動物は、マウスのThy−1プロモーターの調節管理の下、ロンドン(717)及びスウェーデン(670/671)変異を有するヒトアミロイド前駆体タンパク質(hAPP)を恒常的に過剰発現する(Rockenstein EMら、1995及び2001)。Aβ
1−42沈着は、前頭皮質中に成熟したプラークの出現を伴って、早ければ3〜4月齢で生じ、5〜7月齢になると、プラーク形成はhAPP751tg+マウスにおける海馬、視床及び嗅覚の流れ(stream)の皮質突起部に広がる。
【0184】
b.予防モードのためのプロトコルの概要
hAPP751遺伝子導入(tg+)マウス及びそれらの非遺伝子導入(ntg)同腹仔(14+2週齢)を選び、脳Aβ沈着及び脳Aβプラーク負荷に対するUBI ADワクチンの効果を評価した。全部で33頭のtg+マウス及び10頭のntgマウスを4群に分けた:tg+プラセボコントロールマウス(n=10)にアジュバントのみを注射した;tg+実験マウス(n=13)にUBI ADワクチン(150μL投与当たり90μg)を注射した;無処置tg+コントロールマウス(n=10);及び無処置ntgコントロールマウス(n=10)。全部で3用量を0、3、12週に投与し、追加用量を16週に投与した。25.5週にて、全てのマウスについて、モリスの水迷路試験によって空間学習を観察した。マウスを更に4週間追跡し、その後屠殺した。
【0185】
c.抗Aβ1−28抗体価の測定
全てのtg+及びntgマウスについて、0、3、6、9、12、16、19、22及び29週に採血した。Aβ
1−28ELISAを使用して抗Aβ
1−28抗体価を測定するために血清を分離した。プラセボ処置tg+マウス及び無処置tg+マウスでは抗Aβ
1−28抗体価は検出不能であった。しかしながら、UBI ADワクチン注射を少なくとも2回受けた若齢のtg+マウスでは検出可能な抗体価を有していた。
【0186】
d.アミロイド沈着及びプラーク負荷の脳形態学及び分析
生存中の研究の最後にマウスを死なせ、マウスを生理的(0.9%)食塩水で経心的灌流し、脳を素早く取り出し、半切除し、更なる分析用に調製した。左半球を凍結し、後で以下の項目eで記載するようにして分析した。右半球は、新鮮な4%パラホルムアルデヒドのPBS溶液、pH7.4で1時間、浸漬固定した。次いで凍結保護用の15%ショ糖溶液に半球を移した。翌日、脳をドライアイス上で凍結し、組織学的検査で使用するまで−80℃で保管した。凍結切片(10nm厚さ)をH&Eで染色し、記録し、神経細胞層の完全性及び肉眼で形態を評価した。モノクローナル抗体4G8(抗Aβ
17−24)を用いてクライオカット(cryocut)組織切片を評価し、皮質及び海馬におけるAβ沈着及びプラーク負荷を測定した。プラーク数及びプラークで覆われた面積を定量化し、各動物の矢状の脳を横断する5つの異なる層からの9組織切片の平均値を、動物について統計的に関連する値で構築した。UBI ADワクチン処置群の7頭のtg+マウス、及び無処置コントロール群の7頭のtg+マウスを評価した。結果を、UBI ADワクチン処置(n=7)対無処置(n=7)動物のAβ
1−28プラーク負荷のパーセントとして表し(
図10A、10B)、免疫組織化学的検査による9組織切片で検出された相対的なプラーク負荷の平均を表す。UBI ADワクチンレスポンダーtg+マウス対無処置動物の比較は、大脳皮質(0.22%対0.32%)及び海馬(0.20%対0.29%)も含み;プラーク負荷の平均の減少が、高度に応答性のワクチン処置動物で示された。
【0187】
e.脳組織の生化学的分画によるAβ1−42の測定
動物を死なせ、以下の項目で記載するようにして脳を準備した。左脳半球を別々に凍結し、その後、4つの脳抽出物の可溶性分画について、ジェネティクス社(スイス)によって製造されている抗原検出用の高感度Aβ
1−42ELISAキットを使用してAβ
1−42ペプチドレベルを評価し;製造者から提供されている標準と比較してAβ
1−42レベルを測定した。4つの脳の分画から得られた結果は「ng/g wet脳」として示す。各動物の左脳半球(嗅球を含む)を特徴付けるためにTRIS緩衝食塩水(TBS)、トリトンX−100界面活性剤、SDS界面活性剤及びギ酸(FA)で抽出し、Aβ
1−42及び分画の評価を繰り返して試験した。簡潔には、TBS抽出物は脳組織の水溶性Aβ
1−40及びAβ
1−42分画を含有する。残存するβアミロイドペプチドを溶解するために、界面活性剤及び酸が必要である。トリトンX−100は、2つの性質を有するオリゴ−エチレングリコール誘導体であり;ベンゼン環を有するイソオクチル残基が無極性のファンデルワールス力を破壊し、且つ−O−CH
2−CH
2−残基の繰り返しが水素結合を分解する。SDSは類似する二面の効果を持つが、それは強く、全体の二次構造を破壊し;Aβペプチドは直鎖状を獲得し、ペプチド鎖が伸ばされるだろう。ギ酸は最強の溶媒で、主に水素結合を破壊する。TBSがオリゴマー構造を可溶化することが推測できる。トリトンはプロトフィブリル様の低分子ポリマーを可溶化する。SDSは残存する構造の全体を破壊し、強く複合化した不溶性の原線維を有する残存部分は、FA中で主にモノマーとして分離できる。したがって、ベータアミロイドの重合状態及び抗アミロイド生成性の試験化合物の効果を評価するために、4分画全てを調査する。
【0188】
ワクチン処置(UBI ADワクチン)レスポンダーtg+マウスが抗Aβ抗体反応するか否かのAβ定量的ELISA及び生化学的抽出試験は、無処置tg+マウスと比較して、減少したAβ負荷と関連する。特に注目すべきは、脳組織の4つの生化学的抽出物それぞれのAβ
1−42レベルを無処置tg+コントロール動物(
図11A、11B)の結果と比較して、UBI ADワクチンレスポンダーtg+マウスにおけるAβ
1−42の全体的なレベルの減少である。
【0189】
f.ミクログリア細胞の活性化の測定
クライオカット組織切片について、CD11b抗体を使用して活性化ミクログリア細胞を評価し;対象の平均サイズを、ミクログリア細胞のクラスターの平均測定値として各切片中の対象の数による面積を指数として評価し;各動物の矢状の脳を横断する5つの異なる層からの9切片の平均値を、動物について統計的に関連する値で構築した。
【0190】
ワクチン処置tg+マウス(n=7)対無処置tg+マウス(n=7)の結果を、大脳皮質及び海馬中の染色されたCD11b陽性細胞の面積の割合として表し、無処置tg+コントロール動物と比較して、処置動物は染色面積の低い平均割合を示した。これらの結果は、無処置の遺伝子導入マウスと比較して、ワクチン処置動物は活性化ミクログリア細胞の数の増加を示さないことを示す。
【0191】
g.脳組織におけるT細胞浸潤の測定
クライオカット組織切片を評価して、大脳皮質、海馬及び血管内のT細胞の数を検出し、細胞の計数のみ行った。各動物の矢状の脳を横断する5つの異なる層からの9組織切片の平均値を、動物について統計的に関連する値で構築した。ワクチン処置tg+マウス(n=7)対無処置tg+コントロールマウス(n=7)の結果を、大脳皮質及び海馬中の染色されたCD3陽性T細胞数として表し、血管内の染色されたT細胞数は、無処置tg+コントロール動物と比較して、ワクチン処置動物が大脳皮質、海馬及び血管中で計数された免疫染色T細胞の平均数のわずかな減少を示すことを示す。
【0192】
h.結論
hAPP751遺伝子導入マウスに、16週間にわたって、UBI ADワクチン又はプラセボワクチンを筋肉内経路により3又は4回注射した。動物はUBI ADワクチンに対して全体的に良好な忍容性を示し、特に、これら動物に対してUBI Aβ
1−14ペプチド免疫原構築物が1投与当たり90μg/150μLの高濃度での投与が考慮された。レスポンダーにおいて、これら動物の4脳組織抽出物においてAβプラーク負荷の減少及びAβ
1−42レベルの減少が見出された。Aβ沈着及びプラークの減少も免疫組織化学的検査により示された。ワクチン処置tg+hAPP751マウスの脳内のミクログリア細胞の活性化又はT細胞の浸潤の証拠は存在しなかった。
【0193】
実施例14
安全性のためのUBI AD ワクチンに対する抗体反応のエピトープマッピング
固相抗原としてAβ
1−14(配列番号4)、Aβ
1−28(配列番号3)、Aβ
17−42(配列番号67)、MvF5 Th(配列番号46)、HBsAg3 Th(配列番号47)ペプチドでコートしたプレートを用いるELISA試験で、免疫化したモルモット及びヒヒの血清中のUBI ADワクチンに対する抗体反応の特異性を評価した。ワクチンによって惹起された高力価の抗Aβ抗体がAβ
1−14及びAβ
1−28抗原で検出され(表1);しかしながら、Aβ
1−28ペプチドについて、潜在的に有害な交差反応性の原因である14アミノ酸を超える「B細胞エピトープ伝播」による追加抗体も検出されたことが懸念された。
【0194】
この懸念に立ち向かうために、過免疫のモルモットの抗血清及び過免疫のヒヒの抗血清をELISAによるAβ
17−42ペプチドでも試験した。ELISA力価から、試験した過免疫の試料においてエピトープ伝播が検出されなかったことがわかる。過免疫の血清は、Aβ
1−28ペプチドへの増強された結合を示したが、Aβ
17−42とは反応しなかった。過免疫の血清はMvF5 Th(配列番号46)又はHBsAg3 Th(配列番号47)ペプチドドメインのいずれとも反応しなかった。標的領域内の特定の残基に対する主な抗体結合部位を局在化させるための微細エピトープマッピング法において、24番目が重複する10アミノ酸長ペプチドをAβ
1−14ペプチド配列のN末端アスパラギン酸残基「D」及びヒトアミロイドβペプチド前駆体タンパク質(hAPP)の隣接領域の周囲に合成し、Aβ
1−14に加えて隣接するhAPP部位全体の長さをカバーした(表9)。これらのネステッド(nested)ペプチドを、ELISA試験用の固相免疫吸着剤としてマイクロタイターウェルをそれぞれコートするのに用いた。ポジティブコントロールのELISAプレートをAβ
1−28でコートした。それらを、0、10、84及び111週に、4頭の免疫化したヒヒの血清と結合する抗体について試験した。ヒヒ血清を連続希釈し、5μg/mLの10アミノ酸長ペプチドでコートされたプレートでアッセイした。予想通り、Aβ
1−14(配列番号4)のN末端の10アミノ酸長を表す配列番号6のペプチド(DAEFRHDSGY)は、4頭のヒヒ全ての免疫血清と強く反応した。Aβ
1−14の1番目の「D」は抗体特異性の主要部であった。「D」の欠失又は1番目の「E」(グルタミン酸)への改変は、10アミノ酸長ペプチドに対する結合の激しい減少をもたらし、Aβ
1−10(配列番号6)に対するヒヒ抗体の高い特異性、及びAβ
1−42ペプチド又はその前駆体の他にAβペプチド免疫原構築物に対する交差反応性の抗体の認識部位が出現する可能性が低いことを示す。また、免疫血清によって認識される微細な特異性に対するエピトープマッピングを、表10に示す競合的阻害ELISAによって更に確認した。要するに、これらの抗体エピトープの知見から、UBI AD免疫治療ワクチン候補によって誘導される抗体が、14残基を超える部位でもMvF5 Th又はHBsAg3 Thドメインでもなく、AβのN末端ドメインに特異的であることがわかった。
【0195】
実施例15
UBI ADワクチンで複数回免疫化したカニクイザルの血清及びCSF中の抗体反応及びAβ
1−40レベル
ワクチン応答の反応速度論から、低用量群2(0.25mL当たり150μg)の6頭のカニクイザルのうちの4頭が、及び高用量群3(1.25mL当たり750μg)の6頭のカニクイザル全てが、初回免疫後、Aβ
1−42との交差反応性のAβ
1−14ペプチド免疫原構築物に対する抗体を産生したことがわかった。
【0196】
表11に示すように、低用量及び高用量の動物両方で、研究の間(27週を通じて)、高力価の抗体が持続した。UBI ADワクチンの高用量(750μg)又は低用量(150μg)のいずれかで3回(9wpi)及び5回(15wpi)免疫化した、1群当たり4頭のカニクイザルの血清によるエピトープマッピング(表12)による抗体反応の微細な特異性は、先のヒヒの研究(表9)の免疫血清における観察と同様に、1群当たり4頭の動物全てにおいてN末端Aβ
1−10ペプチド(DAEFRHDSGY)(配列番号6)への強い特異性を示した。ヒヒにおいて観察された反応性パターンとは異なり、幾つかの中程度の反応性が、Aβ
1−42ペプチドのN末端の4、5及び6番目のRHD残基の周囲の配列番号20〜22のペプチドについて、4頭の動物全てで観察された。上述の4頭では、他の10アミノ酸長ペプチド以外に対する更なる反応性は、試験したカニクイザル試料のいずれにおいても示さない。
【0197】
血清及びCSF中のAβ
1−40レベルに対するUBI ADワクチンの効果を市販のイムノアッセイキットを使用して測定した。表13に示すように、ワクチン投与後のAβ
1−40濃度を、0、15、21及び25.5週の血清、並びに屠殺時(15週+1日又は27週)のCSFで測定した。血清中のAβ
1−40レベルはUBI ADワクチンを接種したマカクにおいて上昇したが、プラセボワクチンを接種した動物は正常レベルを示した。対照的に、Aβ
1−40レベルはプラセボ又はUBI ADワクチンのいずれかを接種したカニクイザルの脳脊髄液(CSF)中で定常状態を維持した。これらの結果は抗Aβ抗体の作用機序として「末梢シンク(Peripheral Sink)仮説」を支持し、それによって抗体は脳から末梢循環系へのAβペプチドの排出を促進する。
【0198】
実施例16
UBI ADワクチンで複数回免疫化したカニクイザルの細胞免疫応答
末梢血単核球(PBMC)試料を15、21及び25.5週に採取した全血から単離し、次いで各種Aβペプチドの存在中で培養した。表14に示すように、Aβ
1−14ペプチドを培地に添加した場合、リンパ球による増殖応答は観察されなかった。しかしながら、Aβ
1−42又はAβ
17−42(配列番号67)ペプチドを幾つかのPBMC培養物に添加した場合、陽性の増殖応答を示した。
【0199】
15、21及び25.5週に採取されたPBMC試料について、Aβペプチド又はPHAマイトジェンの存在中でサイトカイン分泌も試験した。表15に示すように、3つのサイトカイン(IL−2、IL−6、TNF−α)は、全長Aβ
1−42ペプチドへの応答に対して検出可能な分泌を示したが、Aβ
1−14ペプチドへは示さず;サイトカイン分泌の増加は、プラセボワクチン試料と比較して、UBI ADワクチン処置試料において検出されなかった。Aβペプチド存在中で試験した3つの他のサイトカイン(IL−10、IL−13、IFN−γ)は全てのPBMC培養物においてアッセイの検出限界以下であった。
【0200】
外来のヘルパーTエピトープを有し、Aβ
17−42ペプチドドメイン有さないN末端Aβ
1−14ペプチド免疫原のみを持つUBI ADワクチンでカニクイザルを免疫化し、Aβ
1−42ペプチドが存在するPBMC培養物中で示した陽性の増殖の結果はUBI ADワクチン応答に関連しないが、むしろ天然のAβに対するバックグラウンドの応答であることを示した。
【0201】
これらの結果から、Aβ
1−14及び外来のヘルパーTエピトープのみを持つUBI ADワクチンの安全性を支持し、正常カニクイザルにおけるAβペプチドへの潜在的な炎症性の抗自己細胞性免疫応答を生じないことがわかった。対照的に、AN−1792ワクチンの臨床試験研究における脳炎に関連する有害事象は、ワクチンの原線維/凝集したAβ
1−42免疫原内のT細胞エピトープの包含に部分的に起因する。
【0202】
実施例17
モルモット、マカク及びヒヒの異なるレベルでのUBI ADワクチンの免疫原性の比較
ADワクチンの主要成分としてのそれらの適合性に対する各種Aβペプチド免疫原構築物の詳細な試験の後、配列番号64及び65を有するペプチド構築物を選択し、ワクチン製剤を考案及び設計した。CpGオリゴマーと免疫刺激複合体を形成する2つのペプチド免疫原構築物を有し、鉱物塩のアジュホスで補充した、選択したワクチン製剤(UBI ADワクチン)を、実施例8〜15に記載されたように詳細に試験し、複数の種(モルモット、マカク及びヒヒ)におけるその免疫原性、及び臨床試験でのその使用のための調製物における投与の管理体制を較正した。表16に、1又は2回投与後のペプチド用量対レスポンダーの割合(陽性の力価を有する動物数/試験した全動物数)、及びUBI ADワクチンの投与予定の評価のための各種の体重をまとめる。分析からは、追加免疫において高い又はほぼ完全な応答率を可能にするであろう単回注射後のかなりの応答率を達成するために、関係する全ての種のデータに基づき、用量レベル当たり100μgより高く設定することが好ましい。0.5mL用量当たり300μgのUBI ADワクチンをヒト被験者での研究のために選んだ。第I相臨床試験において、個人を0、4、12週に免疫化した。1回目投与後4週で、登録された19人の被験者のうち2人が陽性の抗Aβ抗体価を示し;8週での2回目投与後4週で、19人の被験者のうち17人が陽性であり;16週での3回目投与後4週で、19人の被験者の全てが陽性であり、24〜26週の第I相試験終了まで陽性を維持した。
【0203】
実施例18
UBI ADワクチン(UB−311)による治療効果を示唆する第I相臨床試験
Aβペプチドは、疾患過程におけるその役割を支持する、病理学的、生化学的及び遺伝的証拠に基づくADの主要な治療標的である。UBI ADワクチン(UB−311)のような活性Aβ免疫療法の目標は、免疫応答を刺激し、循環から過剰のAβペプチドを補足し且つ認知機能低下を予防するか又は遅らせる頑強な抗Aβ抗体を産生することである。
【0204】
「軽度〜中程度のアルツハイマー病の患者に対するUBI AD免疫治療ワクチン(UB−311)の安全性、忍容性及び免疫原性を評価するための第I相オープンラベル試験」という表題のUB−311の第I相臨床試験を、承認された最終的な臨床プロトコルに基づき実施した。全部で19人の軽度〜中程度のAD患者を登録した。各患者は0、4及び12週に、試験薬(UB−311)の筋肉内注射を3回受けた。全試験期間は24〜26週であった。
【0205】
安全性の評価に加えて、忍容性、免疫原性及び効能データをUB−311第I相臨床試験から収集し、探索目的で研究被験者の抗体結合エピトープ、Aβペプチドレベル及び免疫機能の研究の分析を記載する。血清学的及び免疫原性分析用の末梢血単核球(PBMC)及び血清/血漿試料を単離するための、0、4、8、12、16及び24/26週でのUB−311免疫前後に採取した血液の結果は、(1)抗Aβ抗体価、(2)エピトープマッピング、(3)血漿Aβ
1−40レベル、及び(4)インビトロでのリンパ球増殖及びサイトカイン分析を含む。
【0206】
全部で19人の軽度〜中程度のアルツハイマー病(AD)の被験者を試験に登録し、0、4及び12週に、UBI AD免疫治療ワクチン(UB−311)の筋肉内注射を3回接種した。
【0207】
臨床的に実証された軽度〜中程度のADの患者に投与した場合、UB−311は満足な安全性及び忍容性プロファイルを示した。恐らく又は多分UB−311に関連することが明確な有害事象(AE)の発生率を、UB−311処置の安全性を評価するための一次評価項目として設計した。試験期間中、16の処置関連のAEのエピソードが19人の被験者のうち9人で報告された。処置関連のAEのうち、軽度の注射部位反応(5被験者)、中程度の興奮(2被験者)、及び軽度の赤血球沈降速度の増加(2被験者)であった。全ての処置関連のAEは、重篤度のグレード1(軽度)又はグレード2(中程度)として評価され、これらのエピソードについての措置は取らなかった。強直性脊椎炎及び糖尿病の病歴を有する1人の被験者について、追跡調査期間中に、帯状疱疹の重篤有害事象(SAE)が報告された。被験者は事象の発生時にすぐに入院させ、適切な処置を行った。SAEは因果関係がある可能性は低いと判定され、被験者は状態の改善により2週間後病院から退院した。
【0208】
UB−311の
忍容性を評価した。19人の被験者全て処置を終了し、AEの発生にもかかわらず、試験の早期中止はなかった。したがって、忍容性は100%であった。
【0209】
実施例19
全ての被験者に対するAβ
1−14ドメインのN末端に特異的なUB−311ワクチン誘発抗体の投与
表12に示すように、抗Aβ
1−14抗体レベルの変化を、0、4、8、12、16及び24〜26週で測定し、UB−311ワクチンの免疫原性を評価した。0週(処置前)の全ての被験者についてlog
10に変換した抗Aβ
1−14抗体レベルの平均値が1.14であり、4週で1.21にわずかに上昇し、8及び12週で2.00及び1.91に顕著に上昇し、16週(3回目免疫後4週)に2.7のピークに達し、24〜26週で2.28に減少した。
【0210】
抗体価をlog
10に変換し、0週でのそれらの値をベースラインとして使用した。比較可能な傾向が3つの特異的抗体価の全てで観察された。抗体価の変化の平均値は、抗Aβ
1−42モノマー抗体を除いて、被験者が0週に既にUB−311の初回投与を受け、2回目投与前の時点である4週でわずかに上昇した。抗体価は、被験者が4週に2回目投与を受けた後8週でも上昇した。12週での3回目投与後、抗体価の平均変化のピークを16週に検出した。
【0211】
実施例20
軽度〜中程度のアルツハイマー病に対するUB−311ワクチンの効能を評価する神経学的、認知及び機能試験
UB−311の効能を、19人の患者におけるADAS−Cogスコア、MMSEスコア及びADCS−CGICの変化の測定することによって評価した。ADAS−Cogスコア及びADCS−CGICを0週(V2)、16週(V7)及び24〜26週に評価した。MMSEスコアを事前検査(V1)、16週及び24〜26週に測定した。被験者のうち、1.42及び0.79のADAS−Cogスコアの上昇が、0週から16週、及び16週から24〜26週でそれぞれ観察された。ベースラインでの平均ADAS−Cogスコアは被験者で26.26であり、16週に27.68に上昇し、24〜26週に28.47にわずかに上昇した。更に、MMSEスコアの0.32及び0.79の減少が、事前検査来診から16週、及び16週から24〜26週で認められた(
図13)。
【0212】
事前検査来診での被験者の平均MMSEスコアは19.16であった。16週で18.84に、24〜26週の最終来診で18.05にスコアが減少した。特に、2つのスケールの平均スコアの変化にもかかわらず、それぞれの被験者のスコア分布は完全に分散しており、2つのスケールの傾向は安定的であると思われた。
【0213】
ADCS−CGOC評点として、35%超の被験者が、最後の処置(3回目投与)後4週である16週で改善を示した。これらの改善率は、24〜26週での処置の長い休止後、患者群の18%以下で減少した。16週において、被験者の半分弱はADCS−CGICの変化がなく、このカテゴリーの被験者は、16週後の更に8〜10週の無処置の追跡調査期間後、全被験者の50%超にまで穏やかに増加した。悪化に対して改善した被験者の割合を比較すると、16週で試験薬に有利な陽性の結果を示したが、24〜26週では示さなかった(最後のワクチン投与後12週)。
【0214】
サブグループの分析において、結果から、軽度AD(年齢が>60歳、ベースラインMMSEが>20)の高齢被験者は、(1)平均ADAS−Cogが3ポイント減少(12カ月にわたるタレンフルルビルの第II相試験のプラセボ群における3.81ポイントの上昇と比較して)、(2)安定な平均のMMSEスコア(12カ月にわたるタレンフルルビルの第II相試験のプラセボ群における2.04ポイントの減少と比較して)、並びに、
図14に示すように、(3)改善の高い割合、及びADCS−CGICの比率の変化なし、であることがわかり、UB−311ワクチンに対してより良い応答を有していた。年齢が>60歳の軽度AD患者における3つの認知スコアについて、3人に対してこのような改善が報告されたことはなく、最も熱狂的に受け取られた。
【0215】
実施例21
Aβ
1−28モノマー、Aβ
1−42モノマー又はAβ
1−42オリゴマーに対するヒト抗体の検出用の酵素イムノアッセイ(ELISA)
アルツハイマー病の研究から、Aβ凝集体及びAβ由来オリゴマーがAD発病において中心的な役割を果たしていることがわかる。N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)型グルタミン酸受容体(NMDA−R)サブユニットNR1及びNR2Bを発現するニューロンとのAβオリゴマーの結合はLacor PNによってCurrent Genomics 2007; 8:486-508に報告されている。海馬のニューロン細胞におけるNR1及びNR2BにAβオリゴマーが結合すると、このリガンド−受容体結合はシナプス終末数の著しい減少をもたらし、これは記憶及び認知障害及び認知症に関連する。最近、細胞でのインビトロ研究及び臨床試験の結果から、抗Aβオリゴマー抗体が、この結合を遮断でき、Aβオリゴマー毒性からニューロンを保護することがわかった。UBI ADワクチン(UB−311)は、各ペプチドが異なるTh2−バイアスN末端ペプチドエピトープと合成的に結合した短鎖のN末端Aβペプチド(Aβ
1−14)を含む、2つのペプチド免疫原を含む。UBI ADワクチン応答の免疫原性を評価するために、Aβ
1−28モノマー、Aβ
1−42モノマー及びAβ
1−42オリゴマーに対する抗体をインビトロで検出するための抗Aβ抗体酵素イムノアッセイ(ELISA)試験を開発した。
【0216】
Aβ
1−28モノマー、Aβ
1−42モノマー又はAβ
1−42オリゴマーを、固定化抗原としてマイクロプレートのウェル上にプレコートした。アッセイの過程で、血清試料を1:10で、1:100〜1:100,000に連続希釈し、プレコートしたマイクロプレートに添加した。抗Aβ
1−28モノマー、抗Aβ
1−42モノマー又はオリゴマー抗体は、存在するならば、固定化抗原に結合する。ウェルを洗浄して非結合抗体及び他の血清成分を除去した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ複合化組み換えタンパク質A/Gの標準調製物を各ウェルに添加し、結合抗体と反応させた。ウェルを洗浄することによって非結合複合体を除去し、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)及び過酸化水素を含む基質溶液を各ウェルに添加した。試験した血清試料中に、もし存在するなら、存在するAβ特異的抗体の量に比例して黄色が強くなった。酵素−基質反応を、希硫酸溶液の添加により停止した。次いで、各ウェル中で生じた色の変化を、波長450nm(A
450)にてマイクロプレートリーダーで吸光度を分光光度測定することによって測定した。UBI(登録商標)ELISA力価計算プログラムを使用して、相対的な抗体価を計算した。
【0217】
Aβオリゴマーは、Aβモノマー又はアミロイドプラークと比較して、ニューロンに対して最も毒性があることを示す。活性免疫療法の目標は、AβモノマーだけでなくAβオリゴマーにも特異的な抗体の産生を誘発することである。8、16及び24週にUB−311をそれぞれ注射する前の0(ベースライン)、4及び12週に軽度〜中程度の19人のAD患者から採取した血清試料について、抗Aβ抗体価を分析した。
図15は、19人の登録被験者それぞれについて、スクリーニング来院時(V1/V2)、及び最後のUB−311免疫後4週である16週(V7)における、抗Aβ
1−28モノマー、抗Aβ
1−42モノマー及び抗Aβ
1−42オリゴマーの抗体価を示す。
【0218】
実施例22
エピトープマッピング:N末端ペプチドに対するヒト抗体の検出用の競合的結合阻害酵素イムノアッセイ(EIA)
エピトープマッピングを用いて、結合部位、又はAβペプチド(Aβ上の9残基〜24残基の間)の10アミノ酸長のアミノ酸配列と重複する直鎖状の抗Aβ
1−14抗体のエピトープを、ELISA試験で特定した。被験者19人の試験の血清試料を評価した。0、4及び12週での3回の免疫後である、16週における結果を以下に示す(
図16)。
【0219】
合成Aβ
1−28ペプチドを固定化抗原として選択し、マイクロプレートのウェル上に2μg/mLの濃度でプレコートした。実験前に、各血清試料を1:50、1:100、1:200及び1:400で希釈し、試験して、最適な希釈を決定した。最適希釈の抗Aβ血清試料を、液相免疫吸着剤としてそれぞれ設計したアミノ酸長ペプチドと混合した。Aβ
1−28でプレコートされたプレートに移す前に、混合物を最適希釈の血清で1:5で連続希釈した。最適希釈の抗Aβ血清単独をコントロールとして用いた。アッセイの過程で、10アミノ酸長ペプチドは主たる抗体結合部位に特異的に結合し、抗Aβ抗体及び固定化抗原の結合を競合的に阻害した。ウェルを洗浄して非結合抗体及び他の血清成分を除去した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ複合化組み換えタンパク質A/Gの標準調製物を各ウェルに添加し、結合抗体と反応させた。ウェルを洗浄して非結合複合体を除去した後、過酸化水素及び3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を含む基質溶液を各ウェルに添加した。試験した血清試料中に、もし存在するなら、存在するAβ特異的抗体の量に比例して黄色が強くなった。酵素−基質反応を、希硫酸溶液の添加により停止した。次いで、各ウェル中で生じた色の変化を、IC
505Xプログラム(分子デバイス)を使用することによって、波長450nm(A
450)にてマイクロプレートリーダーで分光光度測定した。コントロールウェル中の抗Aβ抗体と固定化抗原との結合を最大の結合(100%)で表し、10アミノ酸長ペプチドの半数最大阻害濃度(IC
50)をエピトープ特異性の指標として使用した。
【0220】
実施例23
UB−311で免疫化した患者の血清試料中の抗体によって認識される主なエピトープはAβ
1−10ペプチドに特異的であった
標的領域(表17)内の特定の残基に対する主な抗体結合部位を局在化させるための微細なエピトープマッピング法において、24番目が重複する10アミノ酸長ペプチド(配列番号6、8〜30)をAβ
1−14ペプチド配列(配列番号4)及びヒトアミロイドβペプチド前駆体タンパク質(hAPP)の隣接領域の周囲に合成し、隣接するhAPP部位に加えてN末端アスパラギン酸残基「D」で始まるAβ
1−14の全体の長さをカバーした(
図16)。被験者19人から採取した血清試料を、免疫前及びUB−311を3回投与後16週に試験した。処置前の試料をベースライン抗Aβ抗体レベルとした(データは示さない)。予想通り、陽性のエピトープマップをもたらした19人全ての試料における主たる抗体反応は、
図16及び表17に示すように、Aβ(配列番号6)の遊離アミノ末端に対するものであった。より具体的には、N末端の10アミノ酸長のAβ
1−14で表されるペプチド(DAEFRHDSGY)が19人の患者全ての免疫化した血清と最も強く反応した。他のAβの10アミノ酸長ペプチドに対する弱い反応性を有する更なる抗体反応を、被験者19人のうち8人で検出した。全てではなく幾人かの被験者から、4、8、12及び24〜26週に採取した血清試料も試験し、一致した結果を示した(データは示さない)。要約すれば、これらのデータから、UB−311によって誘発された抗体の大部分は、14個の残基を超える部位ではなく、AβのN末端ドメインに特異的に向けられたことがわかる。
【0221】
実施例24
UBI ADワクチン(UB−311)の3回の免疫後の血漿中で増加したAβ
1−40ペプチド
現在のところ、Aβ
1−40(配列番号2)、Aβ
1−42(配列番号1)の血漿濃度の変化、又はAβ
1−42:Aβ
1−40の比率について、疾患修飾処置の臨床試験における設定、又はコリンエステラーゼ阻害剤で処置したAD患者のいずれかの処置への応答との有意な関連は見いだされていない。それにもかかわらず、血漿Aβレベルは可能性のあるADのバイオマーカーとして提案されている。
【0222】
我々の以前の研究において、UBI ADワクチンを接種したマカクで血清中のAβ
1−40レベルが上昇したが、プラセボワクチンを接種した動物では正常レベルを示した。これらの結果から、「末梢シンク仮説」が抗Aβ抗体の作用機序であるかもしれないことがわかった。抗Aβ抗体価は、3回の免疫後のヒト被験者における抗体価よりも、6回のUB−311免疫後のマカクの方がずっと高かったが、この現象は現在の研究においても観察された。表18に示すように、UB−311処置前及び16週(3回目の免疫後4週)に試験したAβ
1−40血漿試料の12組の症例の血漿Aβ
1−40レベルを、16週の血清Aβ
1−28抗体濃度と比較した。すべての抗体価は、UB−311免疫前、陰性であった。log
10が2.4を超える抗Aβ
1−28抗体価を有する8人は、UBI ADワクチン(UB−311)を接種後、Aβ
1−40力価が上昇した;一方、log
10が2.0未満の抗体レベルを有する4人のうち3人は処置後、上昇しなかった。Aβ
1−40レベルの上昇は、1つの例外を除いて(被験者P109)、ほとんどの症例において小さく、免疫前の血漿中の異常に高いAβ
1−40レベル、及び免疫後著しく高いレベル(1031.9pg/mL)が示された。非常に高いAβ
1−40の理由は不明のままである。血漿中のAβ
1−42ペプチドが測定可能なレベルの被験者はいなかった。
【0223】
実施例25
Aβ
1−14又はAβ
1−42ペプチド存在下でヒトリンパ球(PBMC)を刺激しないUB−311の免疫用量
新たなワクチンの出現及び特定の免疫及び自己免疫疾患の間の関連を主張する広く公表された報告の数の増加は、免疫の危険性を超えた社会的関心となっている。抗原刺激に応答したリンパ球増殖及びサイトカインの産生は、ワクチン投与に続いて免疫系が過剰に活性化されるか否か、もしあればどの経路が関与するかを評価するために使用することができる。本研究の目的は、Aβペプチド又はポジティブコントロールとしてPHAマイトジェンの不存在下又は存在下でのリンパ球増殖の刺激指数(SI)、並びに16週の3回のUB−311免疫の前後のAD患者の培養リンパ球におけるサイトカイン濃度を測定することによって、UB−311の免疫原(Aβ
1−14)の安全性を評価することであった。
【0224】
AD患者の末梢血単核球(PBMC)をフィコール−ハイパーク勾配遠心分離により単離した。ペプチド誘発増殖及びサイトカイン産生について、細胞(2.5×10
5/ウェル)を3連で、単独又はそれぞれのペプチドドメイン(Aβ
1−14(配列番号4)、Aβ
1−16(配列番号は含まない)、Aβ
1−28(配列番号3)、Aβ
17−42(配列番号(IDN)は含まない)、Aβ
1−42(配列番号1)及び非関連38アミノ酸長ペプチド(p1412)を含む)を添加して(最終濃度10μg/mLで)培養した。培養物を、37℃、5%CO
2にて72時間培養し、次いで上清100μLを各ウェルから取り出し、サイトカイン分析用に−70℃で凍結した。
3H−チミジン(
3H−TdR、アマシャム社、カタログNo.TRK637)0.5μCiを含む培地10μLを各ウェルに添加し、18時間培養し、続いて液体シンチレーション計数により放射性同位体の取り込みを検出した。マイトジェンである植物性血球凝集素(PHA)をリンパ球増殖のポジティブコントロールとして使用した。Aβペプチド又はPHAマイトジェンなしで培養した細胞をネガティブ及びポジティブコントロールとして使用した。3連のAβペプチドを有する実験培養物の1分当たりの平均カウント(cpm)を3連のネガティブコントロールの培養物の平均cpmによって割ることによって刺激指数(SI)を計算し;SI>3.0は有意な増殖応答と考えられた。
【0225】
0週(ベースライン)及び16週(3回目投与後4週)に採取した全血から末梢血単核球試料を単離し、次いで各種Aβペプチドの不存在下又は存在下で培養した。表19に示すように、Aβ
1−14、他のAβペプチド又はp1412(非関連コントロールペプチド)を培地に添加した場合、リンパ球による有意な増殖応答は観察されなかった。予想通り、PHAマイトジェンを培地に添加した場合、陽性の増殖応答を示した。UB−311の免疫前後でのPHAに対する類似の応答の観察(P=0.87)から、被験者の免疫機能の研究において、有意な変化がないことが示唆される(表19)。
【0226】
実施例26
Aβ
1−14ペプチド存在下でのヒトサイトカインを刺激しないUB−311の免疫用量
PBMC培養物のサイトカイン分析(IL−2、IL−6、IL−10、TNF−α、IFN−γ)を、細胞のみ又はAβペプチドドメイン若しくはPHAの存在下で培地のアリコートで行った。ヒト特異的サイトカインのサンドイッチELISAキット(U-CyTech Biosciences社、ユトレヒト、オランダ)を使用して、製造者の指示書に従ってそれぞれのサイトカイン濃度(pg/mL)を測定した。0週及び16週に採取したPBMC試料についても、細胞のみ(ネガティブコントロール)又はAβペプチド、p1412(非関連ペプチド)若しくはPHAマイトジェン(ポジティブコントロール)の存在下のいずれかで3日間培養後、サイトカイン分泌を試験した。キットの定量範囲は5〜320pg/mLである。5pg/mL未満、又は320pg/mLを上回って測定された任意の濃度は、定量限界未満(BQL)又は定量限界超(AQL)として、それぞれ示した。しかしながら、統計的な考慮のために、BQL又はAQLを、それぞれ定量限界より低い(5pg/mL)又は上回る(320pg/mL)に置き換えた。0週及び16週での各サイトカインの平均濃度を表20に示す。予想通り、ポジティブコントロールであるPHAの存在中において、IL−2を除き、サイトカインの産生は有意に上昇した。Aβ
1−14又は他のAβペプチドの刺激による応答に対するサイトカインの産生をベースライン(0週)及び16週で観察したが、ほとんどの値は、相当するネガティブコントロール(細胞のみ)と同様に見えた。
【0227】
免疫後、細胞性免疫応答の変化を評価するために、ベースラインから16週の平均サイトカイン濃度の変化をネガティブコントロールのものと比較し、対応ウィルコクソンの符号順位検定によって検討した。4つのサイトカイン(IFN−γ、IL−6、IL−10、TNF−α)は、全長Aβ
1−42ペプチドに応答する分泌の著しい上昇を示し;この観察は、Aβ
1−42凝集体の高次構造的なエピトープに起因するものであろう。サイトカイン分泌の増加は、Aβ
1−14又は他のAβペプチドで検出されなかった。
【0228】
要約:UBI ADワクチンは、遊離N末端Aβ
1−14ペプチドがMvF5 Th及びHBsAg3Thエピトープそれぞれと合成的に結合した、2つのペプチド免疫原を含有する。インビトロのリンパ球増殖及びサイトカイン分析を使用して、細胞免疫応答に対するUBI ADワクチンの免疫の影響を評価した。表19に示すように、Aβ
1−14ペプチド又は任意の他のAβペプチドを培地に添加した場合、リンパ球による増殖応答は観察されなかった。Aβ
1−14及び他のAβペプチド(Aβ
1−42を除く)での処置において、UBI ADワクチン免疫患者のリンパ球によるサイトカイン分泌の増加は検出されず、処置前の0週のレベルと比較して、16週でUB 311免疫後、4つのサイトカイン(IFN−γ、IL−6、IL−10、TNF−α)のかなりの増加を誘発した(表20)。Th2型T細胞の応答によるサイトカイン放出の増加は、Aβ
1−14のみで増加が検出されなかったので、UBI ADワクチン応答に無関係の可能性がより高い。Aβ
1−42に対する応答は、Aβ
1−42上で識別される天然ヘルパーTエピトープに関係し得る天然Aβに対するバックグラウンド応答であると疑われる。PHAに対する応答におけるIL−2産生の欠如が観察され、これは、正常ヒトPBMCを使用する類似の実験条件下、Katial RKらによって報告された知見(Clin Diagn Lab Immunol 1998;5:78-81)と一致する。結論として、これらの結果から、第I相臨床試験に参加した軽度〜中程度のアルツハイマー病の患者において、UBI ADワクチンが潜在的な炎症性の抗自己細胞性免疫応答を生じさせないことがわかり、さらにUBI AD ワクチン(UB−311)の安全性が実証された。