(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208334
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】アキシャルエアギャップ型回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20170925BHJP
H02K 1/14 20060101ALI20170925BHJP
H02K 16/02 20060101ALI20170925BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20170925BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
H02K1/18 E
H02K1/14 Z
H02K16/02
H02K5/22
H02K21/24 M
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-514682(P2016-514682)
(86)(22)【出願日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】JP2014082363
(87)【国際公開番号】WO2015162819
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2016年10月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-90859(P2014-90859)
(32)【優先日】2014年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】床井 博洋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀一
(72)【発明者】
【氏名】米岡 恭永
(72)【発明者】
【氏名】山路 真也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利文
(72)【発明者】
【氏名】山崎 克之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亨
(72)【発明者】
【氏名】正木 良三
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−60788(JP,A)
【文献】
特開昭59−172941(JP,A)
【文献】
特開平5−284711(JP,A)
【文献】
特開昭55−49968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 1/14
H02K 5/22
H02K 16/02
H02K 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心及びコイルを少なくとも有する複数のコアメンバが、回転軸を中心としてハウジング内周面に反って環状に配置された固定子と、回転軸径方向に所定のエアギャップを介して前記鉄心の端面と面対向する回転子とを有するアキシャルエアギャップ型回転電機であって、
前記ハウジングが、前記固定子と対向する面に、外部と連通する穴部を有するものであり、
前記固定子が、前記複数のコアメンバの少なくともハウジング内周面との対向側面及び前記穴部に樹脂が充填されて一体的にモールドされた樹脂モールド部を有するものであるアキシャルエアギャップ型回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載のアキシャルエアギャップ型回転電機であって、
前記穴部に充填された樹脂が、前記ハウジングの厚さ以下となるものであるアキシャルエアギャップ型回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載のアキシャルエアギャップ型回転電機であって、
前記ハウジングの外周側から前記穴部を遮蔽する抑え部材を有し、
前記樹脂モールド部が、該抑え部材まで樹脂が充填されるものであるアキシャルエアギャップ型回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載のアキシャルエアギャップ型回転電機であって、
前記抑え部材が、前記穴部の内径と概略一致する外径の凸部を有するものであり、
前記樹脂モールド部が、該凸部の端面まで樹脂が充填されるものであるアキシャルエアギャップ型回転電機。
【請求項5】
請求項4に記載のアキシャルエアギャップ型回転電機であって、
前記穴部が、少なくともハウジング外周寄りにネジ山を有するものであり、
前記抑え部材が、該ネジ山に螺合する凸部を有するものであるアキシャルエアギャップ型回転電機。
【請求項6】
請求項1に記載のアキシャルエアギャップ型回転電機であって、
前記穴部のハウジング外周側開口部の外径より大となる外径部分を有すると共に前記コアメンバとの対向面が、前記ハウジングの外周面寄りに位置する蓋部材を備え、
前記樹脂モールド部が、該蓋部材のコアメンバとの対向面まで充填されたものであるアキシャルエアギャップ型回転電機。
【請求項7】
請求項1に記載のアキシャルエアギャップ型回転電機であって、
前記穴部が、前記コアメンバから引き出された渡り線を前記ハウジング外部に引き出す引出口であるアキシャルエアギャップ型回転電機。
【請求項8】
請求項1に記載のアキシャルエアギャップ型回転電機であって、
前記穴部が、複数であるアキシャルエアギャップ型回転電機。
【請求項9】
請求項1~7の何れか一項に記載のアキシャルエアギャップ型回転電機であって、
前記モールド部が、前記コアメンバの端面を除く全周囲に充填されるものであるアキシャルエアギャップ型回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルエアギャップ型回転電機に係り、ハウジングに固定子を固定するアキシャルエアギャップ型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップ型回転電機は,円筒状の固定子と円盤状の回転子を、回転軸径方向に所定のエアギャップを介して面対向して配置したものである。固定子は、ハウジン部内周方向に反って配置した複数の鉄心と、これに巻き回されたコイルとを含む。アキシャルエアギャップ型回転電機は、トルクを発生するギャップ面が、おおよそ径の2乗に比例して増加するため,薄型形状に好適な回転電機と考えられている。
【0003】
特に、2枚の回転子で1つの固定子を挟み込んだダブルロータ型のアキシャルギャップ型回転電機は,2倍のギャップ面積を確保することができるため、より優れた特性を得られる可能性がある構造として注目されている。ダブルロータ型のアキシャルギャップ型回転電機では,鉄心及びコイルが独立して配置されるため、モールド樹脂でこれらをハウジングに支持固定することが多い。固定子には、鉄心が受ける電磁力として、径方向のトルク反力及び軸方向の吸引力が働く。ダブルロータ型のアキシャルギャップ型回転電機では,回転子と固定子間の軸方向吸引力がバランスするため、理想的には固定子に軸方向の荷重は発生しない。しかし、実際にはギャップのアンバランスや部品の寸法ばらつきなどにより軸方向吸引力に不平衡が生じると軸方向の荷重が発生する。したがって,モールド樹脂とハウジングとの界面には,これらの周方向,軸方向の荷重を支持するに十分な強度が求められる。
【0004】
特許文献1は、ハウジングの内周面に溝を設け、モールド樹脂とハウジングを凹凸形状でかみ合う構造とし支持する方法及び溝とインサート部材を組み合わせて支持する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−60788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、モールド樹脂と、ハウジングとの接着力は、ハウジングの表面状態や樹脂注入時の温度や圧力の条件などにより大きく変化する。回転電機の実使用環境では、熱負荷や振動などが加わることもある。さらには,数年から数十年といった長期間に渡って使用される場合もある。したがって、モールド樹脂とハウジングとの接着力のみでコアメンバを支持するのは信頼性の点において十分ではない虞がる。
【0007】
他方、特許文献1のようにハウジング内周面の溝やインサート部材を設けた構造は、モールド樹脂とハウジングとが噛み合う構造となることから、仮にモールド樹脂がハウジングから剥離した場合でも鉄心等(コアメンバ)をハウジングに支持することが可能であり、支持強度が大きく信頼性に優れた構造とも言える。
【0008】
しかしながら、ハウジング内周面への溝加工は、旋盤やブローチ盤、NC加工機など加工時間や加工コストを増加させる要因となる。ハウジングを成型する段階で予め溝を設ける方法もあるが、コアの形状や界面にかかる荷重に応じ溝形状を変更することができないため、同一のハウジングで多品種にコスト増加要因となる。また、本手法によりモールド樹脂と、ハウジングとを確実に支持するためには,モールド樹脂が剥離し、剥離面の重量減少により樹脂が収縮した場合においてもモールド樹脂と、ハウジングの溝とが噛み合うに十分な深さの溝を設ける必要がある。このためには,相応のハウジング厚みが必要となる。
【0009】
また、モールド樹脂により保持された回転電機では、強度や量産性の点から、加熱した樹脂を加圧しながら充填するトランスファー成型が行われることがある。この場合、ハウジングには成型時に高い圧力が加わる。溝加工を施された場合、薄肉となったハウジング面がモールド樹脂からの圧力に負けて破損する虞もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する為、例えば、特許請求の範囲に記載の構成を適用する。即ち鉄心及びコイルを少なくとも有する複数のコアメンバが、回転軸を中心としてハウジング内周面に反って環状に配置された固定子と、回転軸径方向に所定のエアギャップを介して前記鉄心の端面と面対向する回転子とを有するアキシャルエアギャップ型回転電機であって、前記ハウジンが、前記固定子と対向する面に、外部と連通する穴部を有するものであり、前記固定子が、前記複数のコアメンバの少なくともハウジング内周面との対向側面及び前記穴部に樹脂が充填されて一体的にモールドされた樹脂モールド部を有するものであるアキシャルエアギャップ型回転電機である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、固定子及びハウジングを固定する樹脂モールド部が穴であることから、加工が容易である。更に、ハウジングを連通する穴部であることから、回転軸方向及び回転軸径方向に働く力に伴い、当該穴部に充填された樹脂の先端部に作用する引張力を逃がすことができ、ハウジングの損傷を防止することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明にから明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は、本発明を適用した第1実施形態によるダブルロータ型アキシャルエアギャップ型モータの構成を示す断面図である。(b)は、第1実施形態によるモータの電機子構成の概要を示す部分斜視図である。
【
図2】第1実施形態によるモータの1スロット分のコアメンバを示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態による固定子の樹脂モールドの様を示す模式図である。
【
図4】第1実施形態による固定領域(穴部)の一例を示す、部分拡大図である。
【
図5】(a)は、第1実施形態の抑え型の一例を示す部分拡大図である。(b)は、第1実施形態の抑え型の他の例を示す部分拡大図である。
【
図6】(a)は、比較例による固定領域の例を示す部分拡大図である。(b)は、樹脂モールド部の突出部が、ハウジングに与える影響例を示す模式図である。
【
図7】(a)は、第2実施形態の抑え型の例を示す部分拡大図である。(b)は、第2実施形態の抑え型の他の例を示す部分拡大図である。
【
図8】第3実施形態の固定領域の構成を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
図1(a)に、本発明を適用した第1実施形態によるダブルロータ型アキシャルギャップ型永久磁石同期モータ1(以下、単に「モータ1」という場合がある。)の概要構成を表わす断面図を示す。
【0014】
モータ1は、ハウジング50の内周面に沿って配置されたドーナツ形状の固定子19を、円盤状の2つの回転子30が、回転軸径方向に所定のエアギャップを介して挟むように、夫々面対向して配置される。回転子30は、円盤中央が回転軸40と固定される。回転軸40は、固定子19の中央部分を貫通して配置され、両端部が軸受70を介してブラケット60と回転可能に固定される。エンドブラケット60は、概略円筒形からなるハウジング50の両開口端部付近で固定される。
【0015】
回転子30は、円形のヨーク33に、バックヨーク32を介して永久磁石31を備える。永久磁石は、回転軸70方向を中心とする概略扇形の形状からなる複数の平板状の磁石からなり、回転方向に異なる極性の磁石が配置される。なお、永久磁石31はフェライトを適用するものとするが、これに限るものではない。
【0016】
図1(b)に、モータ1の電機子構成を模式的に表わす斜視図を示す。固定子19は、回転軸心Aを中心方向としてハウジング30の内周に沿って配置された12個のコアメンバ20からなる。1つのコアメンバ20が、1スロットを構成するようになっている。また、コアメンバ20同士及びハウジング50の内周面は、後述する樹脂モールドによって互いに一体的に成形され、また固定子に固定されるようになっている。
【0017】
図2に、コアメンバ20の構成を表わす斜視図を示す。コアメンバ20は、鉄心21、ボビン22及びコイル23を有する。鉄心21は、回転子30と面対向する端面が概略台形の形状を有する柱体からなる積層鉄心である。積層鉄心は、磁性体材料を含有する板状(テープを含む。)を、回転軸心Aからハウジング内周面に向かうにつれて、次第に幅が大となる板片を積層することで得る。また、鉄心21は、これに限るものではなく、圧粉鉄心でも削り出しのものでもよく又回転軸方向の断面がT、H若しくはI字型の形状をするものであってもよい。なお、磁性体材料としては、アモルファスを適用するものとするが、これに限るものではない。
【0018】
ボビン22は、鉄心21の外径と概略同一の内径を有する筒形状からなる。ボビン22の両開口部近傍には、外筒部の外周全周から鉛直方向に所定幅延伸する鍔部22bが設けられる。外筒部で、両鍔部22bの間を、コイル23が巻き回されるようになっている。
【0019】
このような構成を有するモータ1は、インバータ(不図示)によって交流電流がコイル23に印加され、固定子19に発生する回転磁界と、回転子30の直流磁界とが吸引反発することで、トルクを発生する。このとき回転子19には、回転方向とは逆向きに周方向のトルク反力が働く。また,部品寸法のばらつきや組立精度に伴い,上下回転子30間の磁気吸引力がアンバランスになった場合、回転軸方向の力も働く。このように、モールド樹脂とハウジング50の界面には、周方向及び軸方向の荷重が係ることになる。第1実施形態では、かかる荷重に対して樹脂モールドを利用する点を特徴の一つとする。
【0020】
図3に、コアメンバ20同士及びハウジング50内周と一体に成形する樹脂モールド工程の様を模式的に示す。ハウジング50が、その内径が略一致する下金型62に挿入され、ハウジング50の反対側開口から、後に回転軸が貫通するための軸芯空間を形成するための筒状の中金型61が、下金型62の中央に配置される。コアメンバ20が、中金型61を中心として環状に配列される。このとき、ボビンの鍔部22bが、径方向の位置決めや隣接するコアメンバ20との回転軸回転方向の位置決めを行うようになっている。
【0021】
その後、ハウジング50の内径と概略一致する外径を有すると共に中金型61を貫通するために中央に円筒空間を有する上金型が、下金型62と反対側のハウジング開口から挿入され、コアメンバ20を挟みこんで支持する。その後、上金型及び下金型62の対向面から樹脂が封入されるようになっている。樹脂は、コアメンバ20間、ハウジング50内周面、中金型61方向及びボビンの鍔部22bの回転子30との対向面上に略隙間なく充填され、やがてハウジング50に設けられた固定領域10a(穴部)にも回り込むようになっている。なお、例えば、コアメンバ20同士を金属等のリング部材で連結し、環状を維持する構成である場合、コアメンバ20の少なくともハウジング50の内周面と対向する面(台形の下底側の側面)と、ハウジング50との間に樹脂を充填するようにすることも可能である。
【0022】
固定領域10aは、ハウジング50の内外を連通する穴であり、固定子19をハウジング50の所望の位置に固定するために、所定位置に設けられる。第1実施形態では、回転軸方向の固定子19幅の外略中間付近に設けるものとする。なお、固定領域10aは、複数設ける構成であってもよい。また、本実施形態では固定領域10は円形の穴とするが、半円や多角形等であってもよい。
【0023】
図4に、固定領域10a付近の拡大図を示す。固定領域10aは、樹脂が周り込んで突出部9が形成される固定部分40aと、樹脂が周り込まないテーパ部分40bとからなる。樹脂が、固定領域10aにも充填され、やがて硬化することで、突出部9が形成される。即ち固定子19の周囲に充填された樹脂と、固定部分40aに形成された突出部9が一体となった形状のモールド部11が形成されるようになる。
【0024】
ここで、固定領域10aが、ハウジング50を貫通する構成であることの利点を、比較例を用いて説明する。
図6(a)に、比較例の固定領域を示す。
図6(a)において、110aは、比較例の固定領域である。比較例ではハウジング50を貫通する穴ではなく、貫通せずに内周側に凹部として形成される。この結果、ハウジング50には、固定領域110aの延長上に薄肉部141bが形成されるようになる。
【0025】
図6(b)に、固定領域110a付近の拡大図を示す。固定子19に回転軸方向及び回転軸径方向の力が働くことにより、突出部9には、ハウジング50との間にF1~F3の力が発生する。ここで、突出部9の先端縁(角)部分に注目すれば(点線部分)、F1~F3といった回転軸方向の力に対しては、一部又は全部の縁に引張力が発生し、ハウジング50に負荷が発生する。かかる負荷によってハウジング50にクラック42を招来する虞がある。
【0026】
これに対し、本実施形態では、固定領域10aがハウジング50を貫通する構成であるので、回転軸径方向及び回転軸方向から働く力に伴って突出部9の先端側の縁(角)に作用する力を逃がすことができる。具体的には、固定子19に対して回転軸径方向や回転軸方向から力が加わると、突出部9にもそれに伴って回転軸径方向や回転軸方向の力が働く。硬化した突出部9において、これらの力は、主に突出部9の先端側の縁(角)に最も伝播するが、固定領域10aが貫通穴であることから、縁がテーパ部分40bやハウジング50の外側に逃げる空間となる。
【0027】
また、固定領域10aでは、テーパ部分40bを残して突出部9が形成されるようになっている。これは、固定領域10aから樹脂が漏れ出るのをより効果的に防ぐ利点がある。
図5(a)に、固定領域10aから樹脂が漏れ出るのを防止するための抑え型60を適用した様を示す。抑え型60は、固定領域10aの内径と概略一致する外径を有する凸部60aを有し、ハウジング50の外周側から凸部60aを固定領域10aに嵌めこむようになっている。図に示すように、凸部60aと、固定領域10aとの間には、樹脂の漏れ流路となるL字形状の隙間が形成されるが、かかる屈曲した流路が樹脂の抵抗を高め、漏れを防止するのに好適である。漏れ抵抗が大であれば、その分樹脂の充填圧力を高めることも可能となる。
【0028】
なお、本発明はテーパ部分40bを設ける構成に限定するものではなく、
図5(b)に示すように、固定領域10aの全てが樹脂で埋まる様になっていてもよい。この場合、抑え型63は、固定領域10aを外周側から抑え込平面部材でよい。樹脂充填後取り除きやすいという効果を期待できる。
【0029】
また、固定領域10aの内側面は、ネジ穴状に形成されていてもよい。この場合、抑え型60の固定領域60と対向する面をネジ形状にすることで、押え部材60をハウジングに確実に固定することが可能であり又モールド時の充填圧によって抑え型60の位置がずれたり、樹脂が漏れたりすることを抑制できる。
【0030】
第1実施形態のモータ1によれば、固定子19とハウジング50の回転軸径方向及び回転軸方向の力に対する応力が向上し、両者間の固定を確実に行うことができ、モータ1の性能に大きく寄与する。
【0031】
また、固定領域10aが貫通穴であることから、固定子19に回転軸径方向及び回転軸方向に働く力に起因して、突出部9がハウジング50を損傷する虞もなく、十分な支持強度を確保することができる。
【0032】
また、コアメンバ20同士とハウジング50のモールド工程において、突出部9を成形する工程を兼ねるため、作業効率が著しく向上する。また、ハウジング50に穴を設けるという簡易な工程で固定領域10a得ることができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
第2実施形態のモータ1は、ハウジング50の内周側から抑え型60を設置する点を特徴の一つとする。
図7(a)、(b)に、夫々の固定領域10a付近の拡大図を示す。なお、第1実施形態と同一の箇所に関しては同一符号を用い、説明を省略する。
【0034】
先ず、
図7(a)の抑え型60は、底面60bと側面60cからなる概略コの字形状の断面を有し、開口部側の全周に渡って鍔部60dが設けられた形状(鍋型)を有する。ハウジング50は、底面60bと、側面cとからなる筒部分の外径と概略一致する内径の穴が設けられ、穴のハウジング50内周側の縁付近が、鍔部60dの径と概略一致する円形の溝が設けられる。抑え型60を固定領域10aに嵌めることで、底面60bがハウジング50の外周面と一致する位置となり、鍔部60dが、ハウジング50内周面と一致する位置になるようになっている。樹脂の充填は、抑え型60がハウジング50の内周面から固定領域10aに設置された後に行われる。
【0035】
鍔部60dは、径方向の抜け止めを行う。即ち固定領域10aのハウジング側開口部の内径よりも大となる外径であるため、樹脂の圧力によって径方向の力を受けると、鍔部60dがハウジング50に係止され、樹脂に対しての蓋として機能する。また、鍔部60dがハウジングに押し付けられることで、ハウジング50との隙間が縮小し、樹脂漏れが抑制される。また、鍔部60dが、ハウジング50に設けた段差をもって配置することで、ハウジング50との隙間が狭小となる間にモールド樹脂が介入することを抑制すると共に、抑え型60自体が、コアメンバ20側に移動することを防ぐことが可能となる。
【0036】
本変形例では、樹脂モールド工程の前段階で、抑え型60をハウジング50に設置するだけでよく、ハウジング50の外周側に漏れ防止の型を配置し又取り除くという手間を省略することができる。
また、抑え型60の形状が、その外周においてハウジング50に設けられた貫通穴及び段差と密着することから、固定子19に働く回転軸径方向及び回転軸方向の力に十分な支持力を発揮する。
また、抑え型60は、樹脂の充填圧力を利用してハウジング50と密着することで、樹脂漏れを防止することができる。
また、突出部9の先端縁(角)に発生する引張力によって負荷を受けるのが抑え型60であるため、万が一にクラックが生じても、抑え型60の交換のみで足り、ハウジング50は保守できる。更に、このようなクラックに対しても、抑え型60をより強度の高い部材(アルミ等の金属)で構成すれば解消することができるし、樹脂、ゴム等で構成すれば、弾性応力で縁部分の力を逃がすことも可能である。
【0037】
なお,
図7(a)に示す抑え型60の場合、突出部9を覆う面とハウジングの内周面に対向する面とを有していればよく,本図の形状に限定されるものではない。
【0038】
次いで、他の抑え型60の構成を
図7(b)に示す。固定領域10aは、ハウジング50の内周側から外周側に向かって断面が徐減するテーパ状の(円)錐台形状の内径を有する。抑え型60は、円錐台の頭頂部(ハウジング外周側)側に概略一致する外周形状を有する(円)錐台形状を有し、樹脂の充填圧力を利用して、固定領域10aの頭頂部側で蓋をするようになっている。即ち抑え型60は、錐台ゆえに、固定領域10aのハウジング外周側開口の内径より大である外径部分を有し且つ下底側の面が、ハウジング内周面よりも外周側に位置するようになっている。
【0039】
上述の
図7(a)の構成に比して、
図7(b)ではより簡素な構成の抑え部60を実現できる。
また、錐台形状の固定領域10aにおいて、底面側(コアメンバ20側)に向かうにつれて固定部分40aの回転軸方向の幅が大となることで、固定子19の支持強度を十分に確保することが可能となる。
本構造では、より単純な抑え部材により効果的に樹脂漏れを抑制することができる。
【0040】
〔第3実施形態〕
第3実施形態のモータ1は、固定領域10aを、各コアメンバ20の渡り線をハウジング50の外部に引き出す為の引出口と兼ねた構成を特徴の一つとする。
図8に、第3実施形態の固定領域10aを示す。なお、第1実施形態と同一の箇所に関しては同一符号を用い、説明を省略する。
【0041】
固定領域10aは、ハウジング50上で、コアメンバ20の出力側乃至反出力側寄りに設けられる。好ましくは、コアメンバ20から渡り線23aが引き出される側(出力乃至反出力側)に寄って配置される。
各コアメンバ20から引き出される渡り線23aは、ハウジング50内周面に沿って固定領域10aに向かって配置され、樹脂モールドによって、固定子19と一体に成形されるようになっている。渡り線23aは、固定領域40aを通してハウジング外に引き出されている。
固定領域10aのハウジング50外周側は、例えば、端子箱(不図示)を設置するための台座90といった径方向に肉厚の部分が設けられる。
【0042】
第3実施形態によれば、渡り線23aの引出口と、固定領域10aとを共有することができ、加工コストを低減することができる。
また、台座90のように、固定領域10aの周囲が肉厚に外周側に突出するため、固定領域10a近傍の強度を確保することができる。
【0043】
なお、第3実施形態では、固定領域10aをコアメンバ20の出力軸又は反出力軸側によって設置する構成としたが、これに限定されず、コアメンバ20の軸方向中心付近であってもよい。渡り線23aの引出位置等に応じて適宜変更可能である。
また、引出口としての固定領域10aが複数であってもよい。
【0044】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記ではダブルロータ型アキシャルギャップ型永久磁石同期モータの例を説明したが、シングルロータ型であってもよいし、他の形態のアキシャルギャップ型永久磁石同期モータであってもよい。また、永久磁石を備えていない、シンクロナスリラクタンスモータ、スイッチトリラクタンスモータ又は誘導モータなどであってもよい。更には、モータではなく発電機であってもよい。
【0045】
また、モールド樹脂の突出部9を覆うように、固定領域10aの外周面にはカバーを設けてもよい。これにより、突出部10aの劣化を防ぐことができる。
【0046】
また,固定領域10aは、コアメンバ20の径方向に一部又は全部が対向する領域に設けられていればよく、位置、数及び形状は任意である。例えば、1個又は複数個設けてもよい。回転軸方向に1又は複数設けてもよい。固定領域の断面形状は、円、楕円又は多角形であってもよい。複数個の固定領域10aを設けた場合には、それらを全て同一形状にする必要はなく、異なる形状で形成してもよい。上記のように,1つの固定子に設ける固定領域の数や形状を増やすことで,ハウジングに対するモールド樹脂の支持強度を向上することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…ダブルロータ型アキシャルエアギャップ型永久磁石同期モータ(モータ)、9…突出部、10a…固定領域、11…モールド部、19…固定子、20…コアメンバ、21…鉄心、22…ボビン、22b…鍔部、23…コイル、23a…渡り線、24…コアメンバ、40…回転軸、40a…固定部分、40b…テーパ部分、42…クラック、49…エンドブラケット、50…ハウジング、50a…嵌合部、60…抑え型、60a…凸部、60b…底面、60c…側面、60d…鍔部、61…中金型、62…下金型、63…抑え型、70…軸受、90…台座、110a…突出部、141a…固定領域、141b…薄肉部、A…回転軸、F1,F2,F3…力