(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208336
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】金属とグラファイトのラミネート
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20170925BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20170925BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20170925BHJP
F16D 65/095 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B15/04 Z
B32B3/30
F16D65/095 J
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-516018(P2016-516018)
(86)(22)【出願日】2014年7月21日
(65)【公表番号】特表2016-525024(P2016-525024A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】CA2014000579
(87)【国際公開番号】WO2015010183
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2016年2月23日
(31)【優先権主張番号】2,821,897
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】CA
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515151815
【氏名又は名称】アール・エイ・インベストメント・マネジメント・ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ
【氏名又は名称原語表記】R.A. INVESTMENT MANAGEMENT S.A.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】レイ・アーベスマン
(72)【発明者】
【氏名】ナイ・ファム
(72)【発明者】
【氏名】ウィンストン・マッケルビー
【審査官】
岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−174431(JP,U)
【文献】
再公表特許第2013/108600(JP,A1)
【文献】
特開2013−012626(JP,A)
【文献】
特開2000−243408(JP,A)
【文献】
米国特許第05788247(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0003401(US,A1)
【文献】
特開2000−035066(JP,A)
【文献】
特開平08−021462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2の対向する面を有する材料からなる第1層であって、第1層の第1面の上に第1の複数の穿孔構造が形成され、第1層の第2面の上に第2の複数の穿孔構造が形成された第1層と、
第1層と結合されて、第1の複数の穿孔構造の少なくとも幾つかはグラファイト箔材料の第2層を穿孔する、グラファイト箔材料からなる第2層と、
第1層と結合されて、第2の複数の穿孔構造の少なくとも幾つかはグラファイト箔材料の第3層を穿孔する、グラファイト箔材料からなる第3層と、
を含み、
第1の複数の穿孔構造は、第2層を突き抜ける第1の複数の先端部を有し、第1の複数の先端部は折り返されて第2層の上に延び、
第2の複数の穿孔構造は、第3層を突き抜ける第2の複数の先端部を含み、第2の複数の先端部は折り返されて第3層の上に延びる雑音減衰シム。
【請求項2】
雑音減衰シムは、ブレーキパッドシムである請求項1に記載の雑音減衰シム。
【請求項3】
第1層は、少なくとも0.3mmの膜厚を有する請求項1に記載の雑音減衰シム。
【請求項4】
第1層は、0.3mm未満の膜厚を有する請求項1に記載の雑音減衰シム。
【請求項5】
材料は、金属である請求項1に記載の雑音減衰シム。
【請求項6】
材料は、鋼である請求項1に記載の雑音減衰シム。
【請求項7】
第1層は、孔があいていない請求項1に記載の雑音減衰シム。
【請求項8】
バッキングプレートを備えたブレーキパッドとピストンとを有するブレーキシステムに使用し、バッキングプレートとピストンとの間で中間要素として機能するように形成された請求項1に記載の雑音減衰シム。
【請求項9】
雑音減衰シムの作製方法であって、
a)グラファイト箔材料の第1シートと、材料のシートの第1面とを一緒に押しつける工程であって、第1面は、それと一緒に押しつけられた場合に、グラファイト箔材料の第1シートを穿孔する第1の複数の穿孔構造を含み、ラミネートシートを形成する工程と、
b)グラファイト箔材料の第2シートと、材料のシートの第2面とを一緒に押しつける工程であって、第2面は、それと一緒に押しつけられた場合に、グラファイト箔材料の第2シートを穿孔する第2の複数の穿孔構造を含み、ラミネートシートを形成する工程と、
c)ラミネートシートを雑音減衰シムの形状に切断する工程と、を含み、
工程a)およびb)は、穿孔構造の先端部を、第1および第2のグラファイト箔材料をそれぞれ通って突き抜けさせる工程と、先端部を折り返してそれらの層の上に延ばす工程とを含む雑音減衰シムの作製方法。
【請求項10】
更に、工程a)と工程c)の間に、巻き取りリールの上にラミネートシートを集める工程を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程a)は、グラファイト箔材料のシートと材料のシートをローラの間に送る工程を含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
先端部を折り返す工程は、グラファイト箔材料のシートと材料のシートとを、第2のローラのセットの間に通す工程を含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
工程c)は、ラミネートシートを、ブレーキパッドシムの形状に切断する工程を含む請求項9に記載の方法。
【請求項14】
材料のシートは、孔があいていない請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ブレーキの雑音を減衰する方法であって、
a)ブレーキピストンとブレーキパッドパッキングプレートとの間に、金属−グラファイトラミネートブレーキパッドシムを挿入する工程を含み、
金属−グラファイトラミネートブレーキパッドシムは、金属の第1薄板と、グラファイト箔材料の第2薄板と、グラファイト箔材料の第3薄板とを含み、
第1薄板は、その第1面から延びて、第2薄板を穿孔する第1の複数の穿孔構造と、その第2面から延びて、第3薄板を穿孔する第2の複数の穿孔構造とを含み、
穿孔構造の先端部はそれぞれ折り返されて第2薄板および第3薄層の上に延びる方法。
【請求項16】
第1薄板は、孔があいていない請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にラミネート材料に関し、特に、少なくとも1つのグラファイト箔層に結合された少なくとも1つのテクスチュア金属シート層を含むラミネート材料に関する。
【背景技術】
【0002】
より軽く、より固く、より安価な構造材料、特に3つ全ての品質を備えた構造材料の必要性が、これらを用いてより良い製品を作製するために高まってきている。
【0003】
グラファイト箔と積層されたステンレス鋼は、広く使用され、例えばガスケットの作製のような、多くの目的に適する特性を有する。そのようなガスケットは、高い破裂抵抗を有し、それゆえに高いシーリング応力を伴う応用に使用できる。そのような材料は、例えば−200℃から550℃のような広い温度範囲にわたって、永久に弾力性を有する。それは、老朽化せず、脆弱ではなく、そして温度に依存しない長時間の均質性と回復性を提供し、高い圧縮応力に耐えることができる。それは、また、例えば500バールまでのような高圧力に耐えることができる。鋼、または「キャリア」層は、一般には0.10〜0.12mm膜厚の「タング付き(tanged)」ステンレス鋼である。次にグラファイト箔のシートを、金属シートのそれぞれの面にプレスして、一般に1〜4mmの膜厚を有するラミネートを作製することにより、ラミネートが形成される。タング付金属を使用することにより、接着剤なしに層を機械的に結びつけることができる。金属のそれぞれの面のタングは、それぞれの面にプレスされたグラファイト箔の中に突き抜けるからである。
【0004】
そのようなタング付の金属シートは、箔に孔をあける針を有する金属箔パンチャーにより形成され、針が突き抜ける側とは反対のシートの側からタングが延びるようにする。この結果、孔あけによりシートは弱くなる。また、もし金属シートが、片側の上にのみ積層された場合、積層されない金属面は、穿孔のために平坦ではなくなる。更に、パンチャーの針が突き抜けるためには十分に薄くする必要があるため、金属層の膜厚は制限される。そのようなタング付の金属を使用することによる不都合の無い、少なくとの片側の上に積層されたグラファイト箔を有する材料の提供が所望される。
【0005】
ディスクブレーキキャリパーでは、作用および反作用により、油圧駆動のピストンが、一対の対向するブレーキパッドに、車両車輪に取り付けられた回転部を締め付けさせる。ブレーキパッドは、片側に取り付けられた摩擦パッドを有する固いバッキングプレートを有する。ピストンが接触するプレートの側面上で、薄い材料のシムがしばしば使用される。シムの摩擦は、それ以外は機械的に完全なブレーキから、大きくて嫌なキーッという雑音が発生する頻度を低減する。少なくとも雑音のいくつかは、急ブレーキを避けるために、プレートがキャリパーの中で半径方向に自由に移動することによりローターが解放され、一方でピストンは殆ど移動の自由がないという事実から発生する。ブレーキをかける場合、固定されたローターが、(次にその硬いブレーキパッドで支持される)硬いブレーキパッドにより摩擦的に噛み合う。ブレーキパッドは、硬いピストンおよびキャリパーに向かってある程度、摩擦的に滑る。この滑り動作中に高い摩擦力が発生し、キーッという音を出す。硬い板に所定の角度で押しつけられた棒状のチョークのように、摩擦は非常に多様な雑音に繋がる。その上に、それらの繰り返される力は、ピストンリムを腐食させ、削り取る。ブレーキが完璧であっても、顧客は、保証期間中に雑音を無くすことを必ず求めるため、ブレークのキーッという音は、車およびブレーキの製造者にとって非常に高価な問題である。
【0006】
様々な材料を用いるシムの非常に多くのデザインが、何年もの間、ピストンとプレートとの間に適合させて、そのような摩擦と結果のキーッという音を減らすために試された。いずれも完全に満足しなかった。グラファイトシートは、雑音低減に非常に適した多くの特性を有するが、その脆弱性のために、それ自身をシムに使用するのは適していない。タングされた金属はブレーキパッドシムに使用するのに適するほど強くないため、グラファイト箔とタングされた金属とを用いたラミネートは一般には適さない。シムとして使用するのに適した少なくとも1つの側面の上にグラファイトを有する材料の供給が望まれる。
【発明の概要】
【0007】
幾つかの形態では、第1面と第2面とを備えた、比較的固い材料の第1薄板を有するラミネートシートが提供される。第1面は、尖っていてもよい、そこを通って延びる穿孔構造を有する。それぞれの構造は、先端部と呼ばれる頂点部分を有する。第2薄膜は、比較的固い材料と結合したグラファイト箔材料である。結合は、グラファイト箔材料中に突き出して、グラファイト箔の内部表面に孔をあけるいくつかの穿孔構造により行われる。
【0008】
比較的固い材料は、好ましくは孔があけられず、第2面が平坦である。少なくともいくつかの穿孔構造は、グラファイト箔材料を完全に通って延びて、グラファイト箔の外部表面を通って突き抜けてその先端部を露出させる。穿孔構造の少なくともいくつかの露出した先端部は、グラファイト箔材料の上または中に折り返され、即ちそれらは向きを変える。他の具体例では、穿孔構造は、グラファイト箔材料を完全には突き抜けず、箔の外部表面は均一に平坦なままである。
【0009】
比較的固い材料は好適には金属であり、好適には鋼である。その膜厚は0.2mm以下でもよいが、少なくとも0.2mmの膜厚、または少なくとも5.0mmの膜厚を有しても良い。
【0010】
幾つかの形態では、2つの面がテクスチュアされた比較的固い材料からなる両面シートである第1薄板を有する多層ラミネートシートが提供される。表面テクスチュアは、複数の持ち上がった、一般には先の尖った穿孔構造により形成され、それぞれの構造は、先端部とよばれる頂点部分を有する。ラミネートは、グラファイト箔材料からなる2つの外部薄板を含み、1つの層は、両面シートのそれぞれの面に配置される。グラファイト箔材料の中に、箔の内部表面を通って突き抜ける比較的固い材料からなるいくつかの穿孔構造を有することにより、グラファイト箔材料は比較的固い材料に結合される。比較的固い材料は、好適には突き抜けない。穿孔構造の少なくともいくつかは、グラファイト箔材料の層の1つを完全に通って延びて、箔の外部表面を通って突き抜けて、それらの先端部を露出しても良い。穿孔構造の露出した先端部の少なくともいくつかは、向きを変えることにより、グラファイト箔材料の上または中に折り返されても良い。幾つかの具体例では、穿孔構造は、グラファイト箔材料を完全に通り抜けて延びずに、箔の外部表面は均一で平坦なままでも良い。
【0011】
幾つかの形態では、雑音減衰シムが提供される。シムは、
第1と第2の対向する面を有する比較的固い材料からなる第1層を有する。第1面は、複数の持ち上がった、一般には先の尖った穿孔構造を有する。グラファイト箔材料からなる第2層が
、第1層と結合して、穿孔構造の少なくともいくつがグラファイト箔材料を突き抜ける。シムはブレーキパッドと噛み合うような形状で、ブレーキシステムのバッキングプレートとピストンとの間で中間要素(またはバッファ)として機能しても良い。
【0012】
雑音減衰シムは、ブレーキパッドシムでも良い。
【0013】
第1薄板は、少なくとも0.3mmまたは0.3mm未満の膜厚を有しても良い。
【0014】
穿孔構造は、第2層を突き抜ける先端部を含んでも良い。先端部は折り返されても良い。
【0015】
比較的固い材料は、金属でも良い。比較的固い材料は、鋼でも良い。
【0017】
幾つかの形態では、雑音減衰シムの作製方法は、a)グラファイト箔材料のシートと、比較的固い材料のシートの第1面とを一緒に押しつける工程を含む。第1面は、それと一緒に押しつけられた場合に、グラファイト箔材料のシートを穿孔する複数の穿孔構造を含み、ラミネートシートを形成する。この方法は、更に、b)ラミネートシートを雑音減衰シムの形状に切断する工程を含む。
【0018】
この方法は、工程a)と工程c)の間に、巻き取りリールの上にラミネートシートを集める工程を含む。
【0019】
工程a)は、グラファイト箔材料のシートと比較的固い材料のシートとを、ローラの間に送る工程を含んでも良い。
【0020】
工程a)は、穿孔構造の先端部を、グラファイト箔材料を通って突き抜けさせる工程を含んでも良い。工程a)は、更に、先端部を折り返す工程を含んでも良い。先端部を折り返す工程は、グラファイト箔材料のシートと比較的固い材料のシートとを、第2のローラのセットの間に通す工程を含んでも良い。
【0021】
工程b)は、ラミネートシートを、ブレーキパッドシムの形状に切断する工程を含んでも良い。
【0022】
比較的固い材料のシートは、孔があかなくても良い。
【0023】
他の形態では、ブレーキの雑音を減衰する方法は、a)ブレーキピストンとブレーキパッドパッキングプレートとの間に、金属−グラファイトラミネートブレーキパッドシムを挿入する工程を含む。
【0024】
金属−グラファイトラミネートブレーキパッドシムは、金属の第1薄板とグラファイト箔材料の第2薄板とを含み、第1薄板は、孔があかなくても良い。
【0025】
金属−グラファイトラミネートブレーキパッドシムは、金属の第1薄板とグラファイト箔材料の第2薄板とを含み、更に、第1薄板は、そこから延びて、第2薄板を穿孔する複数の穿孔構造を含んでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】2つの供給コイルからラミネートシートを作製する連続プロセスを示し、下方の薄板は穿孔構造を有し、上方の薄板はグラファイト箔材料から形成される。
【
図2】端部が尖った先端部である傾斜した断面を有し、表面が存在する穿孔構造を備えた、比較的固い材料からなるテクスチュアラミネートシートの細部を示す。
【
図3】構造がグラファイト箔材料を通って突き抜け、尖った先端部がその表面上にある具体例を示す。
【
図4】双方の表面が穿孔構造を有する比較的固い材料からなるテクスチュアラミネートシートの具体例を示す。
【
図5】比較的固い材料からなる中央テクスチュアラミネートシートは、穿孔構造でテクスチュア化された双方の面を有し、外方のグラファイト箔材料は穿孔構造の尖った先端部により孔があけられた3層ラミネートの具体例を示す。
【
図6】穿孔可能なグラファイト箔薄板の上面上の最終折り返し位置に先端部が連続して曲げられた折り返しの細部を示す。
【
図7】穿孔するには厚すぎる、グラファイト箔薄板中に埋め込まれた1つの穿孔構造の細部を示す。
【
図8】中心材料は、双方の面の上がテクスチュア化されたより固い穿孔薄板であり、外部薄板は、穿孔可能なグラファイト箔材料であり、より固い中心部の上に押しつけられる他の具体例を示す。
【
図9】ブレーキパッドシムの形態の2層金属グラファイトラミネートのグラファイト箔側を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の記載において、「折り返し(”clinch”(clinching, clinchable, clinched))」の用語は、2またはそれ以上の層を突き抜けてそこから延びるピンまたはネイル状の構造の、露出した頂点部分または「先端部」の折り曲げとしての機能を記載するために使用される。折り返しは、木造建築業界では一般的な慣習である。折り返しは、金属作品の返し(reverting)、または容易な離脱を防ぐためのファスナーの他の変形に類似している。折り返しの目的は、そのように接続された2つのラミネート層の間のより強い結合である。
【0028】
「尖った構造(pointed structure)」および「穿孔構造(piecing structure)」は、グラファイト箔の表面に孔を空けて、続いて突き抜けることができる、(埋め込みまたは穿孔のための)材料の表面の上に持ち上がったいずれかのタイプのネイルまたはピン状の構造(またはフックまたはとげ構造)を示すための一般的な用語として、ここでは同義的に使用される。穿孔構造の材料の固さ、形状、および構造の適切な選択は、そのような穿孔能力を確実にするために選択される。
【0029】
本発明では、穿孔構造は、ステンレス鋼のような比較的固い材料からなる箔板の表面から持ち上がる。それらはグラファイト箔材料の隣り合う内部表面の中に突き抜け、もしグラファイト箔の厚さより長い場合は、その箔の外部表面を突き抜けることができる。突き抜けた先端部は、本発明の「フックした薄板」の具体例を形成するように、曲げられまたは折り返されても良い。第1薄板が一つの他の薄板とのみ結合された薄板では、他の薄板に結合された第1薄板の表面または面は内部表面と呼ばれ、他の薄板と結合しない第1薄板の面または表面は外部表面と呼ばれる。
【0030】
図1は、連続してラミネートされた金属とグラファイト材料を形成するためのプロセスを示す。コイル101は、尖った先端部106を有する穿孔構造105でテクスチュア化された1つの面を有するテクスチュア金属の第1薄板104を供給する。コイル102は、グラファイト箔の第2薄板103を供給する。2つの薄板は圧力ロール100、100aの間に挿入される。ロール100、100aからの圧力下で、2つの薄板の内部表面が違いに向き合い、テクスチュア化された金属シート104の穿孔構造の幾つか、または好ましくは殆どまたは全てが、グラファイト箔103の下面を通って突き抜ける。
図1に示すように、それらはグラファイト箔103の上面を突き抜けなくても良い。代わりに、テクスチュア化された金属シート104の穿孔構造は、グラファイト箔103の上面を通って突き抜け、それらの尖った頂点または「先端部」は(
図3に示すように)露出し、次に第2のロールセット(図示せず)または他の手段で折り返されても良い。
【0031】
第1薄板は、適切な比較的固い材料から形成されるが、シートシールのような延性のある材料から形成されても良い。様々な材料が使用されても良い。1つの好適な具体例では、第1材料は、約80より大きなブリネル硬度を有する。テクスチュア化されていない第1薄板の側面(外方の面)は、好適には平坦で均一に平坦で、そこを通る孔やミシン目を有さない。
【0032】
2つの薄板は、これにより、ラミネート108として互いに連続して固定され、続いてラミネートの個々のシート107に切断される。代わりに、薄板108は、巻き取りリール(図示せず)の上にバルク製品として集められる(これにより、このプロセスは、コイル・トゥ・コイルプロセスとなる)。バルク製品は、更に、現場のカット・トゥ・メジャー応用を含む、特定の応用のために切断されまたは成形される。
【0033】
ロール100、100aは、材料の「サンドイッチ」の全体の幅に向かって、または局所領域(例えばエッジ)の中でプレスする。
【0034】
図2は、テクスチュア化された金属シート104のテクスチュア面201と平坦面200を示し、それらの面は、鋼と鋼、または鋼とアルミニウムのような同じまたは異なる材料のでも良い。穿孔構造105は、尖った、鋭い先端部106を有する。
図3では、グラファイト箔103の外部表面を通って突き抜け、その上に延びる先端部106が示される。例えば、カーブしたまたはフック形状の穿孔構造105は、テクスチャ化された金属シート104を準備するための最初のプロセス中に(例えば、カナダに2012年5月29日に出願されたカナダ特許出願2,778,455”Bulk Textured Material Sheeting” に記載されたプロセス、またはカナダ特許1,330,521、1,337,622、または2,127,339のいずれかの例に記載されたプロセスを用いて、これら全ての記載は、参照されることによりここに組み込まれる)、本質的に形成されても良い。代わりに、より真っ直ぐに立ち上がった(例えばネイル状)構造を用いても良い。それらは、よりフック状の構造に予め曲げられても良い。そのように予め曲げることは、薄い先端部をフックに曲げるために平坦な面の間のローラまたはプレス配置を用いて行われても良い。
【0035】
図4は、穿孔構造105でテクスチュア化された双方の面を備えた金属シートを示し、2つのグラファイト箔層103、103aの間に中心部が形成されても良い。
図5では、同じ両面がテクスチュア化された金属シート400が、双方の側面上にグラファイト箔層103、103aを有し、3層ラミネートを形成する第1(中心部)薄板として示されている。
【0036】
図6は、ロールの間を通る間に、アンビルのような固い第3面に共に押しつけられることにより、完全に折り返された位置600に先端部106が折り返されたラミネート108を示す。また、
図6は、グラファイト箔に先端が食い込み、またはつぶされて602、リベットと同様の効果を得るために、どのように先端部106を反転させるかの例を示す。
【0037】
図7は、テクスチュア化された金属シート104のテクスチュア化された面201の上の、1つの穿孔構造700の細部を示す。穿孔構造700は、端部が尖った先端部となる傾斜した断面を有する。グラファイト箔103の内部表面は、穿孔構造700で穿孔されるが、穿孔構造700はグラファイト箔103の外部表面は穿孔せず、それゆえに穿孔構造700は、完全にグラファイト箔103の中に埋め込まれる。これはもちろん、そのようなラミネートプロセスで、全ての穿孔構造に適用される。
【0038】
図8は、両面がテクスチュア化された金属シート800の中心部に、双方が上方と下方のコイル102、102aから供給されるグラファイト箔103、103aである外部薄板を適用するローリングラミネーションプロセスを示す。ローラ100、100aは、金属シート800のテクスチュア化された上面に向かってグラファイト箔の上方のシート103を押しつけ、金属シート800の上面の上の穿孔構造が、上方のグラファイトシートの下面を通って突き抜け、グラファイト箔103の中に埋め込まれてその層をラミネート80中に結合させる。同様に、ローラ100、100aは、金属シート800のテクスチュア化され下面に向かってグラファイト箔の下方のシート103を押しつけ、金属シート800の下面の上の穿孔構造が、下方のグラファイトシートの上面を通って突き抜け、グラファイト箔103の中に埋め込まれてその層をラミネート800中に結合させる。結果のラミネート801は、ラミネートの個々のシート802に切断されても良い。
【0039】
従来技術とは異なり、比較的固い材料の第1薄板は、適切にテクスチュア化できるいずれかの所望の膜厚の材料から形成しても良い。例えば、第1薄板の膜厚は、幾つかの応用では、0.3mm未満、0.2mm未満、または0.1mm未満であるが、0.3mm以上、1.0mm以上、5.0mm以上、または10.0mm以上でも良い。テクスチャ化は穿孔構造の垂直(即ち薄板の表面に垂直)高さが、使用されるグラファイト箔の膜厚を超えないようにするために行われても良く、この場合、穿孔構造はラミネート中の箔の外部表面を通って突き抜けず、ラミネートの外部表面は均一に平坦である。代わりに、穿孔構造は使用されるグラファイト箔の膜厚より十分に大きい(例えば、1.3から1.5倍大きい)垂直高さを有し、穿孔構造の幾つか、殆ど、または全ての先端部がグラファイト箔の外部表面を通って突き抜けて露出しても良い。上で検討したように、穿孔構造の露出した先端部は、折り返されても良い。
【0040】
シムは、いずれかの形状または外形の、雑音低減中間層の一片の材料である。上で検討したように、シムはブレーキピストンとブレーキパッドバッキングプレートとの間に広く使用されて、ブレーキをかけた間にピストンがバッキングプレートと噛み合った場合に発生する、キーッというような雑音を減らす。
【0041】
グラファイトは、雑音防止に使用するのに非常に適した雑音低減特性を有する。しかしながら、それ自身、シムとして使用するには脆弱すぎる。ここに記載された金属−グラファイトラミネートは、しかしながら、ブレーキパッドシムのようなシムとして使用するのに非常に適している。その潤滑特性とともに、グラファイトは、摩擦ライニングのブレーキ効果を調節して、ブレーキの快適さと雑音の低減に貢献する。グラファイトの優れた熱伝導特性は、自動車のブレーキのような、大きな温度ばらつきがある応用において、ラミネートの使用で重要な役割を果たす。グラファイトは、シムを製造するのに一般に使用される材料よりずっと低い摩擦係数を有し、ラミネートシートはスリップ剤として機能し、その雑音低減能力に貢献する。
【0042】
穿孔構造が外部表面を突き抜け、任意的に折り返された具体例では、結果のグラファイト箔の外部表面は、
図9に示すように「泡立つ(bubbled)」。
図9はブレーキパッドシムの形態の2層金属−グラファイトラミネートのグラファイト箔側を示す。それぞれの露出した先端部900は、額の表面上の泡として現れる。露出した先端部が折り曲げられるかまたはある大きさに切られて、少量の先端部のみが露出する場合、結果の泡だった表面は、触ってみると比較的平坦である。
【0043】
本発明の上述の具体例、特にいずれかの「好ましい」具体例は、実施の単なる例であり、単に本発明の原理を明確に理解するために記載されたものであることを理解すべきである。当業者に明らかなように、本発明の上述の具体例に対して、多くの変化および変形を行っても良い。
【0044】
この文献において、1またはそれ以上の要素について、「そのような(such as)」、「含む(including)」の表面が前に置かれ、省略「等(etc.)」が続き、または「例えば(for example)」または「例えば(e.g.)」の表現がそれに続く場合、これは、明確に伝達し、このリストは包括的ではなく、リストの長さに関係ないことを強調するために行われる。そのような表現または他の類似の表現の不在は、リストが包括的であることを暗示するものではない。明確に言及され、または明確に暗示されない限り、そのようなリストは、リストされた要素の、全ての同等または等価な変形を含むものとみなされ、当業者が理解できるリスト中の要素の代替えは、1またはそれ以上の要素がリストされた目的のために適切である。
【0045】
「含む(comprise)」および「含む(comprising)」の用語は、この明細書および請求項で使用された場合、言及した特徴、要素、数字、工程、または構成要素の存在を特定するために使用され、1またはそれ以上の他の特徴、要素、数字、工程、構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を除外するものではなく、またはその必要性を暗示するものでもない。
【0046】
以下に続く請求の範囲は、上記開示に記載された具体例により制限されるものではない。請求項は、上記開示と調和する最も広い目的構成が与えられるべきである。