特許第6208341号(P6208341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208341
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】可視光通信MIMOシステムの受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/116 20130101AFI20170925BHJP
   H04B 10/67 20130101ALI20170925BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H04B10/116
   H04B10/67
   G02B5/20
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-521272(P2016-521272)
(86)(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公表番号】特表2016-540406(P2016-540406A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】CN2014078724
(87)【国際公開番号】WO2014180412
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】201310467767.0
(32)【優先日】2013年10月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】509024525
【氏名又は名称】ゼットティーイー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(72)【発明者】
【氏名】チー,チョウ
(72)【発明者】
【氏名】シュ,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,タオ
(72)【発明者】
【氏名】ユー,チョン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ウェイ
【審査官】 鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−363756(JP,A)
【文献】 特開2010−160212(JP,A)
【文献】 特開平05−056005(JP,A)
【文献】 特開2006−054404(JP,A)
【文献】 特開2012−235411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
G02B 5/20− 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光通信多重入出力MIMOシステムの受信装置であって、視準ユニット、金属フィルム、透明ベース、及び受信ユニットを含み、
前記視準ユニットは、入射光を受信し、前記入射光を視準し、視準後の光を得て、出力した前記視準後の光を垂直に前記金属フィルムに入射させるように設定され、
前記金属フィルムは、前記視準後の光を受信し、前記視準後の光をフィルタリングし、
フィルタリング後の光を得て、前記フィルタリング後の光を前記透明ベースに出力するように設定され、
前記透明ベースは、前記フィルタリング後の光を透過させるように設定され、
前記受信ユニットは、前記透明ベースにより透過された光を受信するように設定され
前記視準ユニットは、凸レンズ、視野絞り、及びコリメータレンズを含み、
前記凸レンズは、前記入射光を受信し、前記入射光を焦点面に収束し、前記収束光を得るように設定され、
前記コリメータレンズは、前記収束光を受信し、前記収束光を平行光にするように設定され、
前記視野絞りは、前記凸レンズと前記コリメータレンズとの中間に位置し、且つ前記凸レンズの焦点面に位置し、前記入射光の視野を制限して、出力した前記平行光を前記視準後の光として前記金属フィルムに垂直に入射させるように設定される可視光通信多重入出力MIMOシステムの受信装置。
【請求項2】
前記金属フィルムにナノ孔の2次元配列が分布され、前記ナノ孔における任意の両点の距離が前記入射光の波長未満である請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記ナノ孔の形状は正方形、又は円形、又は三角形である請求項に記載の受信装置。
【請求項4】
前記金属フィルムはN個の領域を含み、異なる領域でのナノ孔の形状、又は面積、又は周期が異なる請求項に記載の受信装置。
【請求項5】
N個の前記領域のうち、同一の領域でのナノ孔の形状、面積、及び周期がいずれも同じである請求項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記金属フィルムの材料は金、又は銀である請求項に記載の受信装置。
【請求項7】
前記受信ユニットは電荷結合素子CCD2次元配列又は相補型金属酸化物半導体素子CMOS2次元配列であり、各々のCCD又はCMOS画素は1つのナノ孔に対応する請求項に記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可視光通信の技術分野に関し、特に可視光通信多重入出力(MIMO)システムの受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光通信は無線通信技術であり、周波数が390THz〜857THzの可視光を通信媒体として情報伝送を完成する。
【0003】
通信容量を向上させるために、無線電気通信も光ファイバー通信も、周波数分割多重化又は波長分割多重化技術の使用が一般的である。単一周波数通信に比べて、周波数分割多重化技術は多重周波数で信号を伝送する。各々の周波数の電磁波を1つの独立した信号キャリアとしてそれぞれ異なる信号を伝送することができるので、通信容量を大幅に向上させる。しかしながら、無線電気通信の周波数分割多重化では受信端にアンテナを配置して電磁波信号を受信して電磁波を電気信号に変換する必要があるため、情報の受信効果はアンテナの性能及びアンテナの位置に緊密に関わる。
【0004】
従来、可視光通信MIMOシステムにおいては大量の電子部品が使用され、チャネル内に非線形が存在する等の原因により、リンク間の干渉と波形歪みが発生しやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施例は可視光通信MIMOシステムの受信装置を提供して、受信波形歪みの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的問題を解決するために、下記技術的解決手段が採用される。
【0007】
可視光通信MIMOシステムの受信装置であって、視準ユニット、金属フィルム、透明ベース、及び受信ユニットを含み、
前記視準ユニットは、入射光を受信し、前記入射光を視準し、視準後の光を得て、出力した前記視準後の光を前記金属フィルムに垂直に入射させるように設定され、
前記金属フィルムは、前記視準後の光を受信し、前記視準後の光をフィルタリングして、フィルタリング後の光を得て、前記フィルタリング後の光を前記透明ベースに出力するように設定され、
前記透明ベースは、前記フィルタリング後の光を透過するように設定され、
前記受信ユニットは、前記透明ベースにより透過された光を受信するように設定される。
【0008】
選択的に、前記視準ユニットは、凸レンズ、視野絞り、及びコリメータレンズを含み、
前記凸レンズは、前記入射光を受信し、前記入射光を焦点面に収束して、前記収束光を得るように設定され、
前記コリメータレンズは、前記収束光を受信し、前記収束光を平行光にするように設定され、
前記視野絞りは、前記凸レンズと前記コリメータレンズとの中間に位置し、且つ前記凸レンズの焦点面に位置し、前記入射光の視野を制限して、出力した前記平行光を前記視準後の光として前記金属フィルムに垂直に入射させるように設定される。
【0009】
選択的に、前記金属フィルムにはナノ孔(ナノ細孔)の2次元配列が分布し、前記ナノ孔における任意の両点の距離が前記入射光波長未満である。
【0010】
選択的に、前記ナノ孔の形状は正方形、又は円形、又は三角形である。
【0011】
選択的に、前記金属フィルムはN個の領域を含み、異なる領域でのナノ孔の形状、又は面積、又は周期が異なる。
【0012】
選択的に、N個の前記領域のうち、同一の領域でのナノ孔の形状、面積、及び周期はいずれも同じである。
【0013】
選択的に、前記金属フィルムの材料は金、又は銀である。
【0014】
選択的に、前記受信ユニットは電荷結合素子CCD2次元配列又は相補型金属酸化物半導体素子CMOS2次元配列であり、各々のCCD又はCMOS画素は一つのナノ孔に対応する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施例が表面プラズマに基づき提案する受信装置は、光学素子を使用して受信し、且つ金属フィルムを主な受信素子として、フィルタリングと透過増強作用を果たし、電子部品によるフィルタリング及び信号増幅作用に相当する上に、電子部品の非線形効果を克服し、それにより受信波形歪みの問題を解決する。
【0016】
本発明の実施例の受信装置における画素レベルがナノスケールであるため、受信装置は体積が小さいという利点を有し、更に受信光波の周波数は主に検出素子により決められ、従来、検出素子、例えばCCD、CMOSの検出範囲は可視光波段全体であり、そのため、本発明の実施例の受信装置は広帯域信号受信を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下、本発明の実施例における図面を説明し、実施例における図面は本発明を更に理解しやすく、明細書とともに本発明を説明するためのものであり、本発明の保護範囲を制限するものではない。
【0018】
図1図1は、本発明の実施例の受信装置の構成図である。
図2図2は、本発明の実施例の受信装置における視準ユニットの構成図である。
図3図3は、本発明の実施例の正方形ナノ孔の2次元配列模式図である。
図4図4は、本発明の実施例の金属フィルムの透過スペクトルである。
【符号の説明】
【0019】
図において、1011は凸レンズ、1012は視野絞り、1013はコリメータレンズ、102は金属フィルム、103は透明ベース、104は受信ユニット、301はナノ孔である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
当業者が簡単に理解できるようにするために、以下、図面を参照しながら本発明を更に説明し、なお、本発明の実施例の保護範囲を制限するものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施例の受信装置の構成図であり、図1に示されるように、本発明の実施例の可視光通信MIMOシステムの受信装置は、視準ユニット101、金属フィルム102、透明ベース103及び受信ユニット104を含む。
視準ユニット101は、入射光を受信し、入射光を視準し、出力した視準後の光を金属フィルムに垂直に入射させるように設定される。
金属フィルム102は、視準後の光を受信し、視準後の光をフィルタリングして、フィルタリング後の光を前記透明ベース103に出力するように設定される。
透明ベース103は、フィルタリング後の光を透過するように設定される。
受信ユニット104は、透明ベースにより透過された光を受信するように設定される。
【0022】
本発明の実施例に使用される、金属フィルムによる視準後の光のフィルタリングは、Ebbesen等により1998年に初めて実験により見出した、光波が穴を開けた銀フィルムを通過する時に異常光透過現象(EOT−Extraodinary Optical Transmission)が存在するという報告に基づく。Ebbesen等は一枚の石英を基板とする銀フィルムにおいて周期的な2次元サブ波長円孔配列を開け、孔径が入射波長の半分以下である時、特定波長内で光透過増強特性を示し、即ち「透過増強」と「フィルタリング」の2つの重要な光学特性を持ち、それにより従来の回折光学理論が挑戦される。Ebbesenはこの奇妙な局所増強透過現象を表面プラズモン効果(SPs、Surface Plamons)として説明し、即ち金属膜の表面プラズモンポラリトン(SPPs、Surface Plasmon Polaritions)の共鳴励起と結合によりこのような増強効果を引き起こし、金属で伝播する光波を表面波(SPW、Surface Plasmon Wave)と呼ぶ。従来、表面プラズモン共鳴(SPR、Surface Plasmon Resonance)技術が発展するにつれて、SPR技術は環境テスト、分析生化学、薬物研究・開発と食品監視分野に対して不可欠になる。
【0023】
図2は、本発明の実施例の受信装置における視準ユニット101の構成図であり、図2に示されるように、視準ユニット101は凸レンズ1011、視野絞り1012及びコリメータレンズ1013を含む。
凸レンズ1011は、入射光を受信し、入射光を焦点面に収束するように設定される。
コリメータレンズ1012は、収束光を受信し、収束光を平行光にするように設定される。
視野絞り1013は、凸レンズとコリメータレンズとの中間に位置し、且つ凸レンズの焦点面に位置し、入射光の視野を制限して、出力した平行光を金属フィルムに垂直に入射させるように設定される。
【0024】
金属フィルムには、周期的に配列されたナノ孔の2次元配列が分布し、ナノ孔のサイズは、ナノ孔における任意の両点の距離が入射光波長未満であることを満たす。
【0025】
ナノ孔は任意の形状であってもよく、例えば正方形(図3を参照)、又は円形、又は三角形である。
【0026】
周期性を有するナノ孔の2次元配列が増強透過を有する原因は、SPPsの共鳴と励起の存在である。SPPs共鳴はEbbesen等により初めて提案して幅広く受け取られ、その物理画像は入射する電磁波と孔を開けた金属フィルムの表面における自由電子が孔配列逆格子ベクトルにより提供される運動量補正を利用して励起された表面のSPPsであり、これらの金属表面に拘束されたSPPsは孔チャンネルを介して金属フィルムの他端まで至り、次に逆的過程により電磁波を放射することで、電磁波のサブ波長透過を実現する。このメカニズムに基づき、ナノ孔の金属フィルムでの異なる配列方式は異なる逆格子ベクトルに対応し、そのため、ナノ孔の配列方式は直接にSPPsの共鳴ピーク位置を決める。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
異なる周波数の光波を受信するために、金属フィルムにおけるナノ孔の2次元配列を複数の領域に分け、各領域には数千から数万のナノ孔が含まれることができ、異なる領域でのナノ孔配列におけるナノ孔は、形状、面積、又は周期が異なり、同じ領域範囲において、ナノ孔の2次元配列におけるナノ孔は、形状、面積及び周期がいずれも同じである。
【0032】
金属フィルムの材料は、そのプラズマ周波数が入射光の周波数より大きいことを満たさなければならなく、そうでなければ、入射光は金属フィルムの表面で表面プラズモン波を形成できなく、例えば、金又は銀のプラズマ周波数が紫外線波帯にあるので、可視光が入射すると、その表面に表面プラズモン波が形成されることができ、且つ金と銀は性質が比較的安定し、酸化されにくいため、本発明では金属フィルムの材料として、金と銀が好ましい。
【0033】
ナノ孔の2次元配列のナノ孔形状又は面積を変更することで透過ピークの波長を変更することができる。例えば、金属フィルムが銀で製造されて、厚みが320ナノメートル(nm)で、ナノ孔配列が辺長320nm、周期750nmの正方形ナノ孔で構成される場合に、透過ピークの波長は800nmであり、金属フィルムの材料、厚み、ナノ孔形状、ナノ孔の2次元配列の周期が変化せず、ナノ孔の辺長を248nmにする場合に、透過ピークの波長は780nmであり、ナノ孔配列が直径280nmの円形小孔で構成される場合に、透過ピーク波長は750nmである。
【0034】
同様に、ナノ孔の2次元配列の周期を変更することによっても透過ピークの波長を変更することができる。例えば、ナノ孔の2次元配列が周期500nm、直径250nmの円形ナノ孔で構成される場合に、透過ピークの波長は630nmであり、周期が600nmで、他のパラメータがいずれも同じである場合に、透過ピークの波長は710nmである。
【0035】
透明ベースは透明材料で製造され、本発明の実施例では透明ベースの材料について限定がなく、透光性に優れた材料であればよく、例えば重合体PMMA又はSiOが挙げられる。
【0036】
受信ユニットはCCD2次元配列又は2次元CMOS配列を使用して実現することができ、各々のCCD又はCMOS画素は一つのナノ孔に対応する。
【0037】
図4は、金属フィルムの透過スペクトルであり、図4に示されるように、図4において横座標が波長、縦座標が光波透過率を示す。光信号が金属フィルムのナノ孔の2次元配列を透過する時に、特定周波数範囲における光信号を透過するが、該周波数範囲以外の光信号を遮断し、受信ユニットが最終的に異なる周波数の光信号を受信し、受信ユニットにより連続的で迅速に測定することで、各時刻での光の信号の大きさが得られ、受信ユニットは検出した各周波数光信号を電気信号に変換して、各サブチャネルに割り当てて伝送し、且つ復調器で復調し、それにより元の送信信号を取得する。
【0038】
本発明の実施例が表面プラズモンに基づき提案する受信装置は、光学素子で受信し、且つ金属フィルムを主な受信素子として、フィルタリングと増強透過作用を果たし、電子部品によるフィルタリングと信号増幅作用に相当する上に、電子部品の非線形効果を克服し、それにより受信波形歪みの問題を解決する。
【0039】
本発明の実施例の受信装置における画素レベルがナノメートルレベルであるため、受信装置は体積が小さいという利点を有し、且つ受信光波の周波数が主に検出素子により決められ、従来の検出素子、例えばCCD、CMOSの検出範囲は可視光波帯全体であり、そのため、本発明の実施例の受信装置は広帯域信号受信を実現することができる。
【0040】
なお、以上に記載の実施例は当業者が理解しやすいようにするためのものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものではなく、本発明の主旨を脱逸しない限り、当業者により本発明に対して行う明らかな置換や改良等は全て本発明の保護範囲内に入られる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の実施例が表面プラズモンに基づき提案する受信装置は、光学素子で受信し、且つ金属フィルムを主な受信素子として、フィルタリングと増強透過作用を果たし、電子部品によるフィルタリングと信号増幅作用に相当する上に、電子部品の非線形効果を克服し、それにより受信波形歪みの問題を解決する。本発明の実施例の受信装置における画素レベルがナノメートルレベルであるため、受信装置は体積が小さいという利点を有し、且つ受信光波の周波数が主に検出素子により決められ、従来の検出素子、例えばCCD、CMOSの検出範囲は可視光波帯全体であり、そのため、本発明の実施例の受信装置は広帯域信号受信を実現する。従って、本発明の産業上の利用可能性が高い。
図1
図2
図3
図4