(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外部に動力を伝達する動力伝達機構に出力軸が接続された第1のモータのトルク指令およびロータ回転位置に基づいて、前記第1のモータがそのトルク指令に応じたトルクを出力するように前記第1のモータへ通電する第1のトルク制御部と、
前記動力伝達機構に出力軸が接続された第2のモータのトルク指令およびロータ回転位置に基づいて、前記第2のモータがそのトルク指令に応じたトルクを出力するように前記第2のモータへ通電する第2のトルク制御部と、
前記第1または第2のモータの前記出力軸の回転速度の変化率を算出する変化率算出部と、
前記第1のモータが補正用第1トルクを出力し、前記第2のモータが前記補正用第1トルクを打ち消す補正用第2トルクを出力するように前記第1および第2のモータを補正制御するとともに、その補正制御中に前記変化率算出部で算出した前記変化率がゼロとなるように、前記第2のモータの前記ロータ回転位置を補正し、前記変化率がゼロとなったときの補正量を記憶する補正量記憶制御部とを備え、
前記第2のトルク制御部は、前記補正量記憶制御部が前記補正量を記憶した後は、前記第2のモータのロータ回転位置を前記補正量で補正した補正後回転位置と前記第2のモータのトルク指令とに基づいて、前記第2のモータがそのトルク指令に応じたトルクを出力するように前記第2のモータへ通電するモータ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜8を参照して、本発明によるモータ制御装置、モータ駆動装置、および電動車両の一実施の形態を説明する。
図1は、一実施の形態のモータ制御装置100を含む電動車両1の概略構成を示す図である。本実施の形態の電動車両1は、モータ制御装置100と、モータユニット200と、機械装置36と、駆動軸12と、減速ギヤ11と、駆動輪10と、車両側コントローラ3と、メインスイッチ4と、各種センサ5と、パーキングブレーキ6とを備える。
【0009】
モータユニット200は、たとえば同期発電電動機として構成されたモータ20a,20bと、後述する機械装置36とが同一のケーシング内に設けられた装置である。モータ20aは、ロータ22aとステータ21aとを備えるアキシャルギャップ型モータである。同様に、モータ20bは、ロータ22bとステータ21bとを備えるアキシャルギャップ型モータである。モータ20a,20bは、それぞれ発電機としての機能も有する。
【0010】
モータ20aには、ロータ22aの回転位置を検出する回転位置検出センサ25aが設けられている。モータ20bには、ロータ22bの回転位置を検出する回転位置検出センサ25bが設けられている。ロータ22aの出力軸23aは、後述する機械装置36のリング軸30に接続されている。ロータ22bの出力軸23bは、後述する機械装置36のキャリア軸32に接続されている。
【0011】
機械装置36は、サンギヤ軸34とリングギヤ軸30とキャリア軸32とを回転要素として動力合成するシングルピニオン式の遊星歯車機構である。機械装置36は、外歯歯車で構成されるサンギヤ軸34と、サンギヤ軸34と同心円上に配置された内歯歯車で構成されるリングギヤ軸30とを備えている。機械装置36は、サンギヤ軸34に噛合すると共にリングギヤ軸30に噛合する複数のピニオンギヤ31と、複数のピニオンギヤ31を自転かつ公転自在に保持するキャリアで構成されるキャリア軸32とを備えている。
【0012】
サンギヤ軸34は、電動車両1の駆動軸12および減速ギヤ11を介して駆動輪10に連結される。キャリア軸32は、上述したようにモータ20bのロータ22bの出力軸23bに連結される。リング軸30は、上述したようにモータ20aのロータ22aの出力軸23aに連結される。モータ20a、20bが電動機として機能するときには、キャリア軸32から入力されるモータ20bの動力とリングギヤ軸30から入力されるモータ20aの動力が統合されてサンギヤ軸34から出力される。
【0013】
なお、電動車両1には、公知のパーキングブレーキ6が設けられている。パーキングブレーキ6が作動すると、電動車両1の駆動軸12が固定されるので、駆動軸12に接続されているサンギヤ軸34も固定される。
【0014】
モータ20aは、インバータ40aを介してバッテリ50と電力を授受する。モータ20bは、インバータ40bを介してバッテリ50と電力を授受する。モータ20a、20bはともに、後述するモータコントローラ60により駆動制御されるインバータ40a,40bによって駆動制御される。
【0015】
本実施の形態のモータ制御装置100は、各々のモータ20a,20bを駆動するためのインバータ40a,40bと、その電力源である、たとえばリチウムイオン2次電池として構成されたバッテリ50と、インバータ40a,40bを制御するためのモータコントローラ60とを備える。
【0016】
モータコントローラ60には、モータ20a,20bを駆動制御するために必要な各種信号が入力される。モータコントローラ60への入力信号は、たとえば回転位置検出センサ25a,25bからの信号や、図示しない電流センサにより検出されるモータ20a,20bに印加される相電流や、図示しない電圧センサにより検出されるバッテリの直流電圧などである。また、モータコントローラ60には、車両側コントローラ3からの各種信号が入力される。
【0017】
モータコントローラ60からは、インバータ40a,40bへのスイッチング制御信号が出力される。スイッチング制御は周知なので、詳細な説明を省略する。なお、本実施の形態では、モータ制御装置100と、モータ20a,20bと、機械装置36とによって、モータ駆動装置2が構成されている。
【0018】
車両側コントローラ3は、電動車両1の各部を制御する制御装置である。車両側コントローラ3は、たとえば、後述するアクセルペダルセンサ5dで検出した電動車両1のアクセルペダル7の踏み込み量等に基づいて、モータコントローラ60へトルク指令を出力する。車両側コントローラ3には、メインスイッチ4と、各種センサ5とが接続されている。メインスイッチ4は、電動車両1の電源をオンオフするオンオフスイッチである。各種センサ5は、電動車両1の状態を検出するセンサである。各種センサ5には、たとえば、パーキングブレーキ検出スイッチ5aや、車速センサ5b、ブレーキスイッチ5c、アクセルペダルセンサ5dなどが含まれる。
【0019】
パーキングブレーキ検出スイッチ5aは、パーキングブレーキ6が作動しているか否かを検出する検出スイッチであり、パーキングブレーキ6が作動すると、パーキングブレーキ信号を出力する。車速センサ5bは、電動車両1の車速を検出するセンサである。ブレーキスイッチ5cは、電動車両1の不図示の油圧式ブレーキ装置を作動させるための不図示のブレーキペダルが踏み込まれるとブレーキ信号を出力するスイッチである。アクセルペダルセンサ5dは、電動車両1のアクセルペダル7の踏み込み量を検出するセンサである。
【0020】
図2は、機械装置36のサンギヤ軸34、キャリア軸32、および、リング軸30の回転数の範囲を例示する速度線図である。図中のλは(1)式で与えられ、各ギヤ軸の増速比あるいは減速比が把握できる。ここでZrはリングギヤの歯数であり、Zsはサンギヤの歯数である。
λ=Zr/Zs ・・・(1)
【0021】
このように構成される本実施の形態のモータ制御装置100は、車両側コントローラ3からのトルク指令に基づき、モータ20a,20bの駆動制御を行う。本実施の形態のモータ制御装置100では、回転位置検出センサ25a,25bからの信号に基づいてロータ22a,22bの回転位置を検出して、公知のベクトル制御でモータ20a,20bの駆動制御を行う。モータユニット200のケーシングに対する回転位置検出センサ25a,25bの取付位置がずれると、回転位置検出センサ25a,25bで検出するロータ22a,22bの回転位置がずれてしまい、モータ20a,20bの出力トルクが低下してしまう。
【0022】
そのため、モータユニット200の組立後に回転位置検出センサ25a,25bの取付位置を微調整することが望まれるが、回転位置検出センサ25a,25bの配設位置によっては、モータユニット200の組立後に取付位置の微調整が困難となる。たとえば、2つの回転位置検出センサ25a,25bのうちの一方の取付位置の微調整が行えても、他方の微調整が困難であることも考えられる。
【0023】
たとえば本実施の形態では、2つの回転位置検出センサ25a,25bのうちの回転位置検出センサ25aは、モータユニット200の外部からアクセス可能であり、取付位置の微調整を行える。しかし、回転位置検出センサ25bは、モータユニット200の外部からアクセス不能であり、取付位置の微調整ができない。そこで、本実施の形態では、以下のようにして、回転位置検出センサ25bによるロータ22bの検出位置を補正する。
【0024】
本実施の形態では、回転位置検出センサ25bによるロータ22bの検出位置の補正のために、以下に説明する機械装置36の特徴を利用する。
モータ20aを駆動すると、ロータ22aの出力軸に連結されたリング軸30が回転する。たとえば、電動車両1の駆動軸12に接続されているサンギヤ軸34を固定すると、モータ20aのロータ22aとモータ20bのロータ22bとが互いに接続された状態となる。すなわち、サンギヤ軸34を固定すると、リング軸30の回転によってキャリア軸32と、キャリア軸32に連結されたモータ20bのロータ22bとが回転する。このときの、ロータ22aの回転速度とロータ22bの回転速度との速度比Gは、次の(2)式で表される。
G=(Zr+Zs)/Zr ・・・(2)
【0025】
サンギヤ軸34を固定した状態でロータ22bの回転方向とは反対の方向にロータ22bが回転するようにモータ20bを駆動することを考える。
図3は、各モータ20a,20bの出力トルクおよび各ロータ22a,22bの回転速度の推移を示す図である。
図3(a)は、モータ20aの出力トルクTaを示す図であり、
図3(b)は、モータ20bの出力トルクTbを示す図である。
図3(c)は、各ロータ22a,22bの回転速度を示す図である。なお、
図3(a),(b)でモータ20a,20bの出力トルクTa,Tbの立ち上がりにおける時間差△tは、電動車両1でのCAN通信における遅れを想定した時間差である。
【0026】
モータ20aの出力トルクTaの値をTm1とすると、モータ20bの出力トルクTbの値がTm2=−Tm1×Gであれば、機械装置36の機構上、モータ20aの出力トルクTaとモータ20bの出力トルクTbとが釣り合う。したがって、
図3に示すように、各ロータ22a,22bの回転速度は、時間が経過しても増減せずに一定となる。すなわち、モータコントローラ60は、モータ20aの出力トルクTaがTm1となるようなトルク指令値Ta*と、モータ20bの出力トルクTbがTm2となるようなトルク指令値Tb*を算出してインバータ40a,40bを駆動する。このとき、各モータ20a,20bの出力トルクTa,Tbがトルク指令値Ta*,Tb*と一致すれば、サンギヤ軸34固定時の各ロータ22a,22bの回転速度は、時間が経過しても増減せずに一定となる
。
【0027】
しかし、回転位置検出センサ25bの取付位置がずれていると、モータ20bの出力トルクTbは、本来出力されるべきである出力トルク目標値Tm2よりも小さくなる。
図4は、モータ20bの出力トルクTbがTm2よりも小さい場合の各モータ20a,20bの出力トルクTa,Tbおよび各ロータ22a,22bの回転速度の推移を示す図である。
図4(a)は、モータ20aの出力トルクTaを示す図であり、
図4(b)は、モータ20bの出力トルクTbを示す図である。
図4(c)は、各ロータ22a,22bの回転速度を示す図である。
【0028】
図4に示すように、回転位置検出センサ25bの取付位置がずれていると、モータ20bの出力トルクTbは目標トルクTm2よりも低下し、サンギヤ軸34固定時の各ロータ22a,22bの回転速度は、時間の経過とともに増加する。
【0029】
そこで、本実施の形態では、モータコントローラ60は、上述のようにしてモータ20a,20bを駆動した場合のロータ22bの加速度を算出する。そして、算出したロータ22bの加速度がゼロでなければ、モータコントローラ60は、ロータ22bの加速度がゼロとなるように回転位置検出センサ25bによるロータ22bの検出位置の補正値を算出する。そして、モータコントローラ60は、算出した補正値で補正後のロータ22bの検出位置に基づいて、モータ20bの駆動制御を行う。
【0030】
図5は、ロータ22bの検出位置の後述する補正処理を行った場合の各モータ20a,20bの出力トルクTa,Tbおよび各ロータ22a,22bの回転速度の推移を示す図である。
図5(a)は、モータ20aの出力トルクTaを示す図であり、
図5(b)は、モータ20bの出力トルクTbを示す図である。
図5(c)は、各ロータ22a,22bの回転速度を示す図である。ロータ22bの検出位置の補正処理を時点t1以降行うことでモータ20bの出力トルクTbが増加して、各ロータ22a,22bの回転速度が一定値で安定する。
【0031】
図6は、ベクトル制御とともにロータ22bの検出位置の補正処理も行うモータコントローラ60のブロック図である。モータコントローラ60は、トルク指令算出部611と、軸加速度算出部612と、ベクトル制御部621,622と、補正量生成部631と、加算器632と、スイッチ633と、記憶部634とを備えている。トルク指令算出部611は、車両側コントローラ3からのトルク指令に基づき、トルク指令値Ta*およびTb*を算出する。トルク指令値Ta*はベクトル制御器621へ出力され、トルク指令値Tb*はベクトル制御器622へ出力される。
【0032】
トルク指令算出部611は、補正処理に際して、モータ22a,22bがそれぞれ上述した第1,第2目標トルクTm1,Tm2を出力するように、トルク指令値Ta*、Tb*を設定する。モータ22aが第1目標トルクTm1で正転し、モータ22bが第1目標トルクTm1を打ち消す第2目標トルクTm2で逆転すれば、
図5で説明したように、モータ22a,22bの回転速度は増速も加速もせず一定値で安定する。
【0033】
なお、第1、第2目標トルクTm1,Tm2の値は、たとえばモータ20a,20bのコギングトルク以上の値とすることができる。また、第1、第2目標トルクTm1,Tm2は、第1目標トルクTm1を予め適宜設定し、この第1目標トルクTm1に速度比Gを乗じて負の値として第2目標トルクTm2を設定することができる。しかしながら、これらの第1、第2目標トルクTm1,Tm2を実験または解析で決定してもよい。第1目標トルクTm1を補正用第1トルクとも呼び、第2目標トルクTm2を補正用第2トルクとも呼ぶ。
【0034】
ベクトル制御器621は、トルク指令算出部611からのトルク指令値Ta*、および、回転位置検出センサ25aからのロータ22aの回転位置の情報に基づいて公知のPWM信号を生成してインバータ40aへ出力する。ベクトル制御器622は、トルク指令算出部611からのトルク指令値Tb*、および、補正後のロータ22bの回転位置に基づいて公知のPWM信号を生成してインバータ40bへ出力する。
【0035】
軸加速度算出部612は、ロータ22bの回転位置の情報から導かれるロータ22bの回転速度に基づいてロータ22bの加速度を算出する。補正量生成部631は、後述するように、比例積分補償によってロータ22bの回転位置についての補正量を算出する。スイッチ633は、補正量生成部631で算出された補正量か、記憶部634に記憶された補正量のいずれかを選択して加算器632に出力する。加算器632は、スイッチ633を介して入力される補正量と、回転位置検出センサ25bからのロータ22bの回転位置とを加算して、ベクトル制御部622へ出力する。
【0036】
ロータ22bの回転位置についての補正量は、次のようにして算出される。補正量の算出の際には、補正量生成部631からの補正量が加算器632に入力されるようにスイッチ633が切り替えられる。
【0037】
補正量生成部631は、ロータ22bの加速度指令の値(0[rad/s^2])と、軸加速度算出部612で算出されたロータ22bの加速度との差分に基づいて、比例積分補償を行い、補正量を算出する。補正量生成部631で算出された補正量は、スイッチ633を介して加算器632に入力される。加算器632は、スイッチ633を介して入力された補正量生成部631からの補正量と、回転位置検出センサ25bからのロータ22bの回転位置とを加算して、補正後のロータ22bの回転位置をベクトル制御部622へ出力する。
【0038】
ベクトル制御部622は、補正量生成部631で算出された補正量が反映されたロータ22bの回転位置に基づいて、PWM信号を生成してインバータ40bへ出力する。その結果、モータ22bのトルクが増加して、ロータ22bの加速度が徐々に低下する。
【0039】
補正量生成部631での補正量の算出処理は、ロータ22bの加速度がゼロとなるまで繰り返し実行される。ロータ22bの加速度がゼロとなると、その時点で補正量生成部631で算出されている補正量が記憶部634に記憶されて、上述した補正量生成部631での補正量の算出処理が終了する。上述した補正量生成部631での補正量の算出処理が終了すると、記憶部634に記憶されている補正量が加算器632に入力されるように、スイッチ633が切り替えられる。これにより、補正量の算出処理の終了後は、記憶部634に記憶された補正量により補正されたロータ22bの回転位置がベクトル制御部622に入力される。
【0040】
補正量生成部631での補正量の算出処理は、たとえば、モータ制御装置100の電源が投入されることでモータ制御装置100が初期化されると実行される。すなわち、上述した補正量生成部631での補正量の算出処理は、たとえば、モータ制御装置100を搭載する電動車両1のメインスイッチ4がオンされて、電動車両1の電源が投入され、モータ制御装置100の電源が投入されると実施される。
【0041】
なお、補正量生成部631で補正量の算出処理を行うためには、電動車両1の駆動軸12に接続されているサンギヤ軸34が固定されていなければならない。そこで、本実施の形態では、メインスイッチ4がオンされた後、パーキングブレーキ検出スイッチ5aからのパーキングブレーキ信号の有無に基づいて、パーキングブレーキ6が作動していると判断されると、補正量生成部631で補正量の算出処理が行われる。
【0042】
上述したように、補正量が記憶部634に記憶されて、スイッチ633が切り替えられると、通常の制御に切り替わる。通常制御では、加算器632には、記憶部634に記憶されている補正量と、回転位置検出センサ25bからのロータ22bの回転位置とが入力される。したがって、記憶部634に記憶された補正量で補正されたロータ22bの回転位置が加算器632から出力されて、ベクトル制御器622に入力される。
【0043】
図7は、モータコントローラ60におけるモータ20a,20bの制御処理を示すフローチャートである。たとえば、電動車両1のメインスイッチ4がオンされて、モータ制御装置100の電源が投入されると、
図7に示す処理を行うプログラムが起動され、モータコントローラ60のCPUで繰り返し実行される。ステップS1において、モータ制御装置100が初期化されたか否かを判断する。
【0044】
ステップS1が肯定判断されるとステップS3へ進み、パーキングブレーキ検出スイッチ5aからのパーキングブレーキ信号が検出されたか否かを判断する。ステップS3が肯定判断されるとステップS100へ進み、ロータ22bの検出位置の補正処理についてのサブルーチンを実行する。ステップS100のサブルーチンについては、後に詳述する。
【0045】
ステップS100のサブルーチンが実行されるとステップS200へ進み、モータ20a,20bの駆動に関する通常制御を行うサブルーチンを実行する。ステップS200の通常制御のサブルーチンでは、モータ20aについて公知の駆動制御が行われる。また、ステップS200の通常制御のサブルーチンでは、上述したように記憶部634に記憶されている補正量で補正されたロータ22bの回転位置に基づいて、モータ20bの駆動が制御される。
【0046】
ステップS3が否定判断されるとステップS200へ進み、通常制御のサブルーチンを実行する。ステップS1が否定判断されるとステップS200へ進み、通常制御のサブルーチンを実行する。
【0047】
図8は、
図7のステップS100のサブルーチンについてのフローチャートである。
図7のステップS3が肯定判断されると、
図8のステップS101へ進み、補正量生成部631からの補正量が加算器632に入力されるようにスイッチ633を切り替えてステップS102へ進む。ステップS102において、トルク指令値Ta*をTm1に設定し、トルク指令値Tb*をTm2に設定してステップS103へ進む。ステップS103において、ロータ22bの回転位置を読み取ってステップS105へ進む。
【0048】
ステップS105において、ステップS103で読み取ったロータ22bの回転位置に基づいてロータ22bの回転速度と加速度を算出してステップS107へ進む。ステップS107において、ステップS105で算出したロータ22bの加速度がゼロであるか否かを判断する。
【0049】
ステップS107が否定判断されるとステップS109へ進み、ロータ22bの加速度指令の値(0[rad/s^2])と、ステップS105で算出したロータ22bの加速
度との差分に基づいて、比例積分補償を行い、補正量を算出してステップS111へ進む。ステップS111において、ステップS111で算出した補正量で回転位置検出センサ25bからのロータ22bの回転位置を補正してステップS113へ進む。ステップS113において、ステップS111で補正したロータ22bの回転位置をベクトル制御部622へ出力してステップS103へ戻る。
【0050】
ステップS107が肯定判断されるとステップS115へ進み、ステップS111で算出した最新の補正量を読み取って、記憶部634に記憶させて、ステップS117へ進む。ステップS117において、記憶部634に記憶された補正量が加算器632に入力されるようにスイッチ633を切り替えてメインルーチンへ戻る。
【0051】
本実施の形態では、次の作用効果を奏する。
(1) ロータ22bの検出位置の補正処理に際し、機械装置36に出力軸23a,23bが接続されている2つのモータ20a,20bに対して、互いの発生トルクを打ち消す補正用第1トルク、補正用第2トルクを出力させるトルク指令値Ta*,Tb*を出力する補正制御を行うように構成した。そして、補正制御中に、ロータ22bの加速度を算出し、算出したロータ22bの加速度がゼロになるように、ロータ22bの回転位置についての補正量を算出するように構成した。これにより、調整しにくい回転位置センサの出力補正量を簡単な構成で求めることができるので、モータ制御装置100、モータ駆動装置2、および電動車両1のコスト増を抑制できる。また、回転位置センサ出力の補正値でトルク演算が行われるので、モータ20bの出力トルクの制御精度が向上し、モータ20bから正確にトルクを出力できる。
【0052】
また、回転位置検出センサ25bの取付位置の微調整が困難な場合であっても、回転位置検出センサ25bの取付位置のずれに起因したモータ20bの出力トルクの低下を抑制できるので、モータユニット200のコスト増を抑制できる。
さらに、モータ20bの出力トルクの制御精度向上により、モータ20bを効率的に駆動できるので、モータ駆動装置2、および電動車両1の電力消費量の抑制できる。
【0053】
(2) 電動車両1のパーキングブレーキ6が作動しているときに、補正量生成部631で補正量の算出処理が行われるように構成した。これにより、電動車両1の駆動軸12に接続されたサンギヤ軸34を固定しておく必要がある補正量生成部631で補正量の算出処理が、電動車両1の走行に支障がない時期に行われるので、電動車両1のユーザに不便を感じさせない。
【0054】
(3) サンギヤ軸34を固定すると、モータ20aのロータ22aとモータ20bのロータ22bとが互いに接続された状態となる機械装置36の特徴を利用して、サンギヤ軸34を固定した状態で上述したロータ22bの検出位置の補正処理を行うように構成した。これにより、機械的な構成を追加しなくてもロータ22bの検出位置を補正できるので、モータ制御装置100、モータ駆動装置2、および電動車両1のコスト増を抑制できる。
【0055】
(4) アクセルペダルセンサ5dで検出した電動車両1のアクセルペダル7の踏み込み量等に基づいて、車両側コントローラ3がモータコントローラ60へトルク指令を出力するように構成した。そして、車両側コントローラ3からのトルク指令と、回転位置検出センサ25aによるロータ22aの検出位置とに基づいて、モータ20aの出力トルク、具体的にはインバータ40aへ出力するPWM信号をモータコントローラ60で演算するように構成した。また、車両側コントローラ3からのトルク指令と、回転位置検出センサ25bによるロータ22bの検出位置を補正量で補正した検出値とに基づいて、モータ20bの出力トルク、具体的にはインバータ40bへ出力するPWM信号をモータコントローラ60で演算するように構成した。そして、モータコントローラ60からのPWM信号に基づいて、インバータ40a,40bがモータ20a,20bへの通電を制御するように構成した。そして、通常制御時には、記憶部634に記憶されている補正量で補正されたロータ22bの回転位置に基づいて、モータ20bの駆動が制御されるように構成した。これにより、モータ20bの出力トルクの制御精度向上により、モータ20bを効率的に駆動できるので、電動車両1の電力消費量の抑制できる。
【0056】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、電動車両1のメインスイッチ4がオンされて、モータ制御装置100の電源が投入されると、すなわち、モータ制御装置100が初期化されると、補正量生成部631での補正量の算出処理を行うように構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、信号待ちなどで電動車両1のパーキングブレーキ6が作動したときに、補正量生成部631で補正量の算出処理を行うように構成してもよい。
また、補正量生成部631での補正量の算出処理をモータ制御装置100の初期化後に毎回行うのではなく、たとえば、毎月最初のモータ制御装置100の初期化後など、所定の期間の間隔をあけて、補正量生成部631での補正量の算出処理を行うようにしてもよい。
【0057】
(2) 上述したように、補正量生成部631で補正量の算出処理を行うためには、電動車両1の駆動軸12に接続されているサンギヤ軸34が固定されていなければならない。そのため、上述の説明では、パーキングブレーキ検出スイッチ5aからのパーキングブレーキ信号が検出されると、補正量生成部631での補正量の算出処理を行うように構成した。しかし、本発明はこれに限定されない。たとえば、車速センサ5bで検出された電動車両1の車速がゼロであり、かつ、ブレーキスイッチ5cからのブレーキ信号が検出されたときに、補正量生成部631での補正量の算出処理を行うように構成してもよい。なお、ブレーキスイッチ5cからのブレーキ信号に代えて、電動車両1の不図示の油圧式ブレーキ装置のブレーキ液圧を検出することで、油圧式ブレーキ装置、すなわちフットブレーキの作動中であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0058】
(3) 上述の説明では、回転位置検出センサ25bで検出するロータ22bの検出位置を補正するように構成したが、回転位置検出センサ25aで検出するロータ22aの検出位置を補正するように構成してもよい。
【0059】
(4) 上述の説明では、サンギヤ軸34が駆動軸12に連結され、キャリア軸32がモータ20bの出力軸23bに連結され、リング軸30がモータ20aの出力軸23aに連結されている場合について説明しているが、本発明はこれに限定されない。機械装置36の各軸30,32,34と、駆動軸12、モータ20aの出力軸23a、モータ20bの出力軸23bとの結合組合せは、たとえば、
図9の結合組合せA〜Fのいずれであってもよい。
【0060】
図9に示す結合組合せAは、上述した実施の形態における結合組合せである。この場合、上述したように、サンギヤ軸34が駆動軸12に連結され、キャリア軸32がモータ20bの出力軸23bに連結され、リング軸30がモータ20aの出力軸23aに連結されている。結合組合せAにおいてロータ22bの検出位置の補正処理を行う場合、上述したように、トルク指令値Ta*をTm1とし、トルク指令値Tb*を−Tm1×Gとすればよい。なお、速度比Gは、上述したようにG=(Zr+Zs)/Zrである。
【0061】
結合組合せBにおいてロータ22bの検出位置の補正処理を行う場合、トルク指令値Ta*をTm1とし、トルク指令値Tb*を−Tm1/Gとすればよい。なお、速度比Gは、G=(Zr+Zs)/Zrである。結合組合せCにおいてロータ22bの検出位置の補正処理を行う場合、トルク指令値Ta*をTm1とし、トルク指令値Tb*をTm1×Gとすればよい。なお、速度比Gは、G=1である。以下、結合組合せD〜Fについても同様であるので、説明を省略する。
【0062】
(5) 上述の説明では、機械装置36が遊星歯車機構であるが、本発明はこれに限定されない。たとえば、機械装置36が、いわゆるデファレンシャルギヤと呼ばれる差動歯車機構など、他の機構であってもよい。
【0063】
(6) 上述の説明では、モータ20a,20bと、機械装置36とがモータユニット200の同一のケーシング内に設けられているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、モータ20aと、モータ20bと、機械装置36とが、それぞれ分離されていてもよい。
(7) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0064】
なお、本発明は、上記の各実施形態や変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。