(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208378
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】キャピラリー電気泳動装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/447 20060101AFI20170925BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
G01N27/447 331H
G01N27/447 331K
G01N27/447 301C
G01N37/00 103
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-552919(P2016-552919)
(86)(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公表番号】特表2017-512980(P2017-512980A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】CN2014000473
(87)【国際公開番号】WO2015139156
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2016年9月29日
(31)【優先権主張番号】201410108667.3
(32)【優先日】2014年3月21日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516246044
【氏名又は名称】閻 超
【氏名又は名称原語表記】YAN,Chao
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】閻 超
(72)【発明者】
【氏名】姚 冬
(72)【発明者】
【氏名】張 琳
(72)【発明者】
【氏名】李 静
【審査官】
黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−530084(JP,A)
【文献】
特開2007−147509(JP,A)
【文献】
特開2000−298115(JP,A)
【文献】
中国実用新案公告第2694272(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出口が緩衝液集積瓶に挿入されている電気泳動分離キャピラリーと、該電気泳動分離キャピラリーに順番に接続されているカラムオーブンおよび検出器と、一極が前記緩衝液集積瓶に挿入され、他極がガルバニック絶縁装置を介して前記電気泳動分離キャピラリーに接続され、かつ該電気泳動分離キャピラリーにおいて高電圧電場を生成する高電圧電源と、を有する電気泳動システムを含むキャピラリー電気泳動装置であって、
前記キャピラリー電気泳動装置は、前記電気泳動システムに接続されているサンプルインジェクション流路と、該サンプルインジェクション流路に接続されている自動サンプリング流路と、をさらに含み、
前記サンプルインジェクション流路は、4ウェイコネクタの3つのポートにそれぞれ接続されている分流廃液瓶、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブおよび緩衝液注入ポンプを含み、
前記4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブは、前記電気泳動分離キャピラリーに対する定量サンプルインジェクションに使われ、Sポート、Wポート、PポートおよびCポートとの4つの管路固定ポートと、回転可能な内蔵定量リングと、を含み、該Cポートは前記電気泳動分離キャピラリーに接続され、該Pポートは前記4ウェイコネクタに接続され、該内蔵定量リングにはバイパス通路と固定容積を有する定量通路とが設置され、前記内蔵定量リングの回転に合わせて、前記バイパス通路と定量通路とは、前記SポートとWポートとを接続する場合と、前記PポートとCポートとを接続させる場合との間で切り替えし、
前記自動サンプリング流路は、サンプリングプローブ、洗浄液瓶、試料瓶及び緩衝管の両端に接続されている6ウェイ液体デバイダーとシリンジポンプを含み、
前記シリンジポンプは、排気および洗浄機能を切り替え可能な3ウェイ分配弁を含み、該3ウェイ分配弁の3つの弁のポートは、それぞれ洗浄液瓶、オートマチックサンプラー廃液瓶および緩衝管に接続されており、
前記6ウェイ液体デバイダーは、1個の固定ポートと順番に切り替えて該固定ポートに接続可能な6つの分配ポートを有し、該固定ポートは、前記緩衝管に接続され、該6つの分配ポートは、それぞれ前記サンプリングプローブ、4ウェイコネクタのうちの1個のポート、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブのSポート及び電気泳動分離キャピラリーの洗浄およびバランシングに使われる異なる試料が入れられてある3つの試料瓶に接続されており、
前記洗浄液瓶とオートマチックサンプラー廃液瓶との間にはサンプリングプローブの洗浄に使われる洗浄槽が接続され、前記サンプリングプローブは切り替えることにより該洗浄槽または異なるサンプルが入れられてあるサンプル盤に挿入可能であり、
前記オートマチックサンプラー廃液瓶は、前記4ウェイ微量サンプルインジェクション
バルブのWポートに接続されているキャピラリー電気泳動装置。
【請求項2】
前記電気泳動システムは、廃液バランス瓶をさらに含み、前記電気泳動分離キャピラリーの出口は、切り替えることにより該廃液バランス瓶または緩衝液集積瓶に接続される請求項1に記載のキャピラリー電気泳動装置。
【請求項3】
前記4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブの定量通路の容積は、4nL、10nLまたは20nLである請求項1または2に記載のキャピラリー電気泳動装置。
【請求項4】
前記緩衝液注入ポンプと4ウェイコネクタとの間には、管路動作圧力の検査に使われるキャピラリー圧力センサーが接続され、前記シリンジポンプの3ウェイ分配弁と緩衝管との間には、サンプリング流路動作圧力の検出に使われるサンプリング流路圧力センサーが接続されている請求項1に記載のキャピラリー電気泳動装置。
【請求項5】
前記サンプル盤は、冷却構造を有する請求項1に記載のキャピラリー電気泳動装置。
【請求項6】
前記洗浄液瓶には洗浄液が入れられており、該洗浄液はエタノール又は脱イオン水である請求項1に記載のキャピラリー電気泳動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質のキャピラリー電気泳動に関し、具体的には全自動高精度のキャピラリー電気泳動装置に関し、分析テスト技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
キャピラリー電気泳動は、20世紀80年代から始まる。分析を行う際、キャピラリー内を緩衝液により満たし、キャピラリーの両端に高電圧(通常、0〜+30KV/−30KV)を印加すれば、キャピラリー内の電気浸透流は緩衝液を検出器側に流させ、これによりキャピラリー内の全ての物質も検出器側に流れる。ここで、緩衝液内の物質は、その電気泳動移動度、すなわち、帯電電荷とその分子量の比率(質量電荷比)が異なるため、キャピラリー末端の検出器に到達する速度が異なる。したがって、異なる物質を分離し、検出することができる。
【0003】
キャピラリー電気泳動システムは、キャピラリー内の被分析帯電物質が電場作用における移動速度が異なる原理を利用して、異なる分子を分離する目的を達している。キャピラリー電気泳動システムは主に、長管状のキャピラリーと、キャピラリーの両端における液体容器と、電極と、高圧電源供給装置と、検出器と、データを出力し処理する装置とを含む。
【0004】
通常、キャピラリーのサンプルインジェクション方式には、流体力学と電荷移動によるサンプルインジェクションの二種類がある。ここで、流体力学によるサンプルインジェクションは、サイフォンによりサンプルインジェクション側で加圧する、または、検出器側で吸い上げるなどの方法によって実現できる。しかし、この方式のサンプリングは、選択性が悪く、サンプル及び緩衝液が同時にキャピラリーに導入され、後続の分離に対して影響を与える可能性がある。一方、電荷移動によるサンプルインジェクションは、電圧を印加し、電場の作用によりサンプルイオンの電荷移動および(または)電気浸透流によってサンプルをキャピラリー内に注入する。この方式のサンプリングは、電気差が出て、分析の正確性と信頼性を下げる。上記二種類のサンプルインジェクション方式には次のようなデメリットがある。1.両方式ともに「ディップ」という方式、すなわち、キャピラリーをサンプル瓶に浸し、圧力または電圧を印加することによりサンプルインジェクションを行ってから、再度キャピラリーを溶液瓶に移し戻して分離を実施するため、キャピラリー内に入るサンプル量は、おおむね推測するしかない。このため、両方式ともに精度がかける;2.「ディップ」方式によりサンプルインジェクションを行う場合、移動過程中においてキャピラリーの端部のサンプル液滴の大きさは環境の影響により大きく変化する。このため、サンプルインジェクションの精度(重複性)は非常に悪い;3.サンプルインジェクションを行う際、キャピラリーの両端に印加する高電圧の電場を切らなければならないため、すでに構築された電場が時々切られてから改めて構築され、分析結果の精度が理想的でなくなってしまう;4.「ディップ」方式によるサンプルインジェクションは、サンプルと緩衝液及び異なるサンプルとの間の相互汚染をもたらし易い;5.電荷移動によるサンプルインジェクションの方式は、電荷差別現象が生じる可能性があり、分析の精度および信頼性をさらに低下させる。
【0005】
ともかく、キャピラリー電気泳動装置のサンプルインジェクションの量は非常に小さく、すべてがナノリットル(nl)級である。既存のキャピラリー電気泳動装置において使われている従来のサンプルインジェクション方式は、これほど小さい体積に対する精確な定量ができない。キャピラリーの端部をディップしてサンプルインジェクションする方式は、サンプルインジェクションの重複性の誤差大きいため、定量測定に使いにくい。また、サンプリングプローブ回路におけるキャピラリーサンプリングの通経が非常に小さく、20μmぐらいであるため、負圧サンプリングを使用すると、負圧が非常に大きく、サンプリング速度が遅いなどのデメリットをもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は既存技術における問題点に鑑みてなされたものであり、全自動高精度のキャピラリー電気泳動装置を提供することを目的とする。本発明に係るキャピラリー電気泳動装置によれば、自動定量サンプルインジェクションを実現し、サンプルインジェクションの精度、再現性および信頼性を向上させる。また、電荷差別現象とサンプル同士間の相互汚染を取り除ける。さらに、サンプルインジェクションの速度を向上させ、サンプルインジェクションの時間を短縮して、外部空気のサンプルインジェクション流路への進入を最大限に避けることができる。同時に、異なる試料によるキャピラリー分離柱に対する自動洗浄およびバランシングを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の技術的手段によりその技術的課題を解決する。
【0008】
本発明に係るキャピラリー電気泳動装置は、出口が緩衝液集積瓶に挿入されている電気泳動分離キャピラリーと、該電気泳動分離キャピラリーに順番に接続されているカラムオーブンおよび検出器と、一極が前記緩衝液集積瓶に挿入され、他極がガルバニック絶縁装置を介して前記電気泳動分離キャピラリーに接続され、かつ該電気泳動分離キャピラリーにおいて高電圧電場を生成する高電圧電源と、を有する電気泳動システムを含む。
【0009】
前記キャピラリー電気泳動装置は、前記電気泳動システムに接続されているサンプルインジェクション流路と、該サンプルインジェクション流路に接続されている自動サンプリング流路と、をさらに含む。
【0010】
前記サンプルインジェクション流路は、4ウェイコネクタの3つのポートにそれぞれ接続されている分流廃液瓶、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブおよび緩衝液注入ポンプを含む。
【0011】
前記4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブは、正確に定量でき、前記電気泳動分離キャピラリーに対する定量サンプルインジェクションに使われ、Sポート、Wポート、PポートおよびCポートとの4つの管路固定ポートと、回転可能な内蔵定量リングと、を含み、該Cポートは前記電気泳動分離キャピラリーに接続され、該Pポートは前記4ウェイコネクタに接続され、該内蔵定量リングにはバイパス通路と固定容積を有する定量通路とが設置され、前記内蔵定量リングの回転に合わせて、前記バイパス通路と定量通路とは、前記SポートとWポートとを接続させる場合と、前記PポーとCポートとを接続させる場合との間で切り替えする。
【0012】
前記自動サンプリング流路は、サンプリングプローブ、洗浄液瓶、試料瓶及び定量機能を有し、緩衝管の両端に接続されている6ウェイ液体デバイダーとシリンジポンプを含む。
【0013】
前記シリンジポンプは、排気および洗浄機能を切り替え可能な3ウェイ分配弁を含み、該3ウェイ分配弁の3つの弁のポートは、それぞれ洗浄液瓶、オートマチックサンプラー廃液瓶および緩衝管に接続されている。
【0014】
前記6ウェイ液体デバイダーは、1個の固定ポートと順番に切り替えて該固定ポートに接続可能な6つの分配ポートを有する。該固定ポートは、前記緩衝管に接続され、該6つの分配ポートは、それぞれ前記サンプリングプローブ、4ウェイコネクタのうちの1個のポート、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブのSポート及び電気泳動分離キャピラリーの洗浄およびバランシングに使われる異なる試料が入れられてある3つの試料瓶に接続されている。
【0015】
前記洗浄液瓶とオートマチックサンプラー廃液瓶との間にはサンプリングプローブの洗浄に使われる洗浄槽が接続され、前記サンプリングプローブは切り替えることにより該洗浄槽または異なるサンプルが入れられてあるサンプル盤に挿入可能である。
【0016】
前記オートマチックサンプラー廃液瓶は、前記4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブのWポートに接続されている。
【0017】
好ましくは、前記電気泳動システムは、廃液バランス瓶をさらに含み、前記電気泳動分離キャピラリーの出口は、切り替えることにより該廃液バランス瓶または緩衝液集積瓶に接続されることができる。
【0018】
好ましくは、前記4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブの定量通路の容積は、4nL、10nLまたは20nLである。
【0019】
好ましくは、前記緩衝液注入ポンプと4ウェイコネクタとの間には、管路動作圧力の検査に使われるキャピラリー圧力センサーが接続され、前記シリンジポンプの3ウェイ分配弁と緩衝管との間には、サンプリング流路動作圧力の検出に使われるサンプリング流路圧力センサーが接続されている。
【0020】
好ましくは、前記サンプル盤は、恒温および冷却構造を有する。
【0021】
好ましくは、前記洗浄液瓶には洗浄液が入れられており、該洗浄液はエタノール又は脱イオン水である。
【0022】
好ましくは、前記キャピラリー電気泳動装置のあらゆる構造部品の機能はコンピュータープログラムによって自動コントロールを実現する。
好ましくは、前記4ウェイコネクタと分流廃液瓶との間には、前記電気泳動分離キャピラリーの内部圧力のバランシングに使われる分流管が接続されている。
好ましくは、前記検出器は、紫外検出器またはその他のキャピラリーカラム検出器である。
【発明の効果】
【0023】
既存のキャピラリー電気泳動装置に比べ、本発明における自動サンプリング流路は、3ウェイ分配弁を有するシリンジポンプと6ウェイ液体デバイダーを合わせて使用し、サンプルをまず半径の大きい管路により両者の間の緩衝管内に素早く吸い上げてから6ウェイ液体デバイダーの通路に切り替え、正圧によりサンプルを4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ内に打ち込んでいるため、負圧サンプルインジェクションによるサンプルインジェクションの速度が遅いなどのデメリットを解消し、サンプルインジェクションの時間を大幅に短縮させている。同時に、外部空気のサンプルインジェクション流路への進入を最大限に避け、サンプルインジェクションの信頼性を大幅に向上させ、異なる試料によるキャピラリー分離柱に対する自動洗浄とバランシングを実現し、電荷差別現象とサンプル間の相互汚染を解消している。また、本発明では内蔵定量リングのナノリットル級の4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブを使い、その定量体積は1nLから20nLとの間の任意の確定の容積である。4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブの切り替えにより正確な定量サンプルインジェクションを完成できる。本発明のサンプルインジェクション方式は、従来のキャピラリー端部をディップする、または、気体圧力によるサンプルインジェクション方式がこれほど小さい体積に対して正確にサンプルインジェクションができないとのデメリットを解消し、自動定量サンプルインジェクションを実現し、サンプルインジェクションの再現性を向上させ、サンプルインジェクションの重複性の相対標準偏差は3%以下である。
【0024】
本発明に係る全自動高精度のキャピラリー電気泳動装置によれば、サンプルインジェクションの速度が速く、定量正確度が高く、精度が高く、再現性がよく、産業化し易いとのメリットを有し、サンプルのサンプルインジェクション、キャピラリーの洗浄とバランシングの自動化を実現し、異なる物質のキャピラリー電気泳動分析に広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係るキャピラリー電気泳動装置の構造を示す図である。
【
図2】本発明に係るキャピラリー電気泳動装置の動作プロセスの原理を説明するための第一図である。
【
図3】本発明に係るキャピラリー電気泳動装置の動作プロセスの原理を説明するための第二図である。
【
図4】本発明に係るキャピラリー電気泳動装置の動作プロセスの原理を説明するための第三図である。
【
図5】本発明に係るキャピラリー電気泳動装置の動作プロセスの原理を説明するための第四図である。
【
図6】本発明に係るキャピラリー電気泳動装置の動作プロセスの原理を説明するための第五図である。
【
図7】本発明に係るキャピラリー電気泳動装置の動作プロセスの原理を説明するための第六図である。
【
図8】本発明に係るキャピラリー電気泳動装置の動作プロセスの原理を説明するための第七図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、具体的な実施例により本発明を詳しく説明する。ただし、以下の実施例は本発明の保護範囲を限定するものではなく、いかなる本明細書に記載される内容に基づいて行える均等の変化及び修正は、本発明の特許請求の範囲により保護される範囲に属するものとする。
【0027】
本発明に係る全自動高精度のキャピラリー電気泳動装置は、異なる物質のキャピラリー電気泳動分析に使用される。
図1に示すように、全自動高精度のキャピラリー電気泳動装置は、電気泳動システム、サンプルインジェクション流路および自動サンプリング流路を含み、サンプルインジェクション流路は電気泳動システムに接続され、自動サンプリング流路はサンプルインジェクション流路に接続されている。
【0028】
電気泳動システムは、電気泳動分離キャピラリー7、カラムオーブン8、検出器10、高電圧電源9、ガルバニック絶縁装置6、緩衝液集積瓶11及び廃液バランス瓶12を含む。電気泳動分離キャピラリー7は、物質がキャピラリー電気泳動により分離される場所であり、本システムにより分離および分析を行うためのコア部品でもある。電気泳動分離キャピラリー7の出口は、緩衝液集積瓶11に挿入されてある。カラムオーブン8は、電気泳動分離キャピラリー7の温度をコントロールし、主には電気泳動による分離において生成されるジュール熱量の釈放および電気泳動による分離テストにおいてキャピラリー内部の物質の低温結晶を防止するための加熱に用いられる。検出器10は、分離された後の信号の検出に使われ、紫外検出器またはその他のキャピラリーカラム検出器であってよい。カラムオーブン8と検出器10とは、順番通りに電気泳動分離キャピラリー7に接続されている。緩衝液集積瓶11は、電気泳動により分離および分析する場合の電気泳動分離キャピラリー7の出口である。高電圧電源9の一極は緩衝液集積瓶11に挿入され、他極はガルバニック絶縁装置6を介して電気泳動分離キャピラリー7に接続され、電気泳動分離キャピラリー7において高電圧電場を生成する。電気泳動分離キャピラリー7の出口は、切り替えることにより廃液バランス瓶12または緩衝液集積瓶11に接続することができる。電気泳動分離キャピラリー7の洗浄またはバランシングを行うとき、電気泳動分離キャピラリー7の出口を廃液バランス瓶12に切り替える必要があり、そうしないと、緩衝液集積瓶11内の緩衝液のpH値に影響を与え、測定結果に影響を与える。
【0029】
サンプルインジェクション流路は、緩衝液注入ポンプ1、キャピラリー圧力センサー2、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5、4ウェイコネクタ3および分流廃液瓶4を含む。緩衝液注入ポンプ1は、電気泳動分離キャピラリー7へ緩衝液及び所定の圧力の提供、補充に使われる。キャピラリー圧力センサー2は、電気泳動分離キャピラリー7および分流管路の動作圧力の検出に使われる。分流廃液瓶4は、4ウェイコネクタにより3分流された後の緩衝液の収容に使われる。
【0030】
4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5は正確な定量機能を有し、Sポート、Wポート、PポートおよびCポートとの4つの管路固定ポートと回転可能な内蔵定量リングを含む。内蔵定量リングには、バイパス通路52および定量通路51が設置され、定量通路51は1nLから20nLまでの間の任意の固定量の容積を有し、たとえば、4nL、10nLまたは20nLの固定容積を有することにより、nL級の定量サンプリングを実現する。内蔵定量リングの回転に伴い、バイパス通路52と定量通路51とは、SポートとWポートとを接続する場合と、PポートとCポートとを接続する場合との間で切り替える。具体的に言うと、補充液の位置にある場合、定量通路51はSポートとWポートとを接続し、同時にバイパス通路52はPポートとCポートとを接続する。一方、内蔵定量リングが180°回転して、注入液の位置にある場合、バイパス通路52はSポートとWポートとを接続し、定量通路51はPポートとCポートとを接続する。4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5のCポートは電気泳動分離キャピラリー7に接続され、電気泳動分離キャピラリー7への定量サンプルインジェクションに使われる。
【0031】
4ウェイコネクタ3の3つのポートは、それぞれ緩衝液注入ポンプ1、分流廃液瓶4および4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5のPポートに接続されている。キャピラリー圧力センサー2は、緩衝液注入ポンプ1と4ウェイコネクタ3との間に接続され、4ウェイコネクタ3と4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5のPポートとの間にはフィルターが接続され、サンプルおよび試料中における大きいサイズの雑物をフィルタリングして、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5および電気泳動分離キャピラリー7を保護する。4ウェイコネクタ3と分流廃液瓶4との間には分流管23が接続され、分流管23は出口の直径および長さを変えることにより電気泳動分離キャピラリー7の内部圧力をバランシングする。
【0032】
自動サンプリング流路は、6ウェイ液体デバイダー13、サンプリングプローブ15、サンプル盤16、洗浄槽17、緩衝管14、試料瓶20、サンプリング流路圧力センサー18、シリンジポンプ19、洗浄液瓶21およびオートマチックサンプラー廃液瓶22を含む。
【0033】
6ウェイ液体デバイダー13は、1個の固定ポートおよび順番に切り替えて当該固定ポートに接続できる6つの分配ポートを有する。当該固定ポートは緩衝管14に接続され、6つの分配ポートは、それぞれサンプリングプローブ15、4ウェイコネクタ3のうちの1個のポート、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5のSポート及び電気泳動分離キャピラリー7の洗浄とバランシングに使われる異なる試料が入れられてある3つの試料瓶20に接続されている。
【0034】
シリンジポンプ19は、システム全体流路の動力源であり、切り替えることによりシステムの排気と洗浄機能を完成できる3ウェイ分配弁が設置され、3ウェイ分配弁の3つのポートは、それぞれ洗浄液瓶21、オートマチックサンプラー廃液瓶22および緩衝管14に接続されている。サンプリング流路圧力センサー18は、サンプリング流路の動作圧力の検出に使われ、シリンジポンプ19の3ウェイ分配弁と緩衝管14との間に接続されている。
【0035】
洗浄液瓶21には洗浄液が入れられており、該洗浄液もサンプルインジェクション流路における移動相であり、通常、エタノール又は脱イオン水を使用する。オートマチックサンプラー廃液瓶22は、システム洗浄後の廃液の収容に使われ、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5のWポートに接続されている。洗浄槽17は、サンプリングプローブ15の外壁と内壁の洗浄を同時に完成させ、洗浄液瓶21とオートマチックサンプラー廃液瓶22との間に接続されている。
【0036】
緩衝管14は、定量機能を有し、システムにおいてサンプル、サンプルインジェクション移動相、試料、洗浄液などの液体を一時的に預ける場所である。緩衝管14の両端は、6ウェイ液体デバイダー13とシリンジポンプ19とを接続させ、このように組み合わせた部品の協同動作により、システムの排気、洗浄(バランシング)、自動定量サンプルインジェクションなどの機能を完成できる。
【0037】
サンプル盤16には異なるサンプルが入れられており、恒温および冷却構造を有し、サンプルをとても低い温度に保持でき、生物酵素の活性を保持し、サンプルの揮発を減らすことができる。サンプリングプローブ15は、穿刺機能を有し、サンプル瓶のゴム栓を通ってサンプル瓶の内部に入ってサンプリングすることができる。サンプリングプローブ15は、切り替えることにより洗浄槽17またはサンプル盤16へ挿入できる。
【0038】
キャピラリー電気泳動装置のあらゆる部品の機能は、コンピュータープログラムにより自動コントロールを実現でき、本発明に係るキャピラリー電気泳動装置は全自動に運転できる。
【0039】
本発明に係る全自動高精度のキャピラリー電気泳動装置の動作原理は下記のとおりである。
【0040】
<ステップ1>
図2に示すように、電気泳動分離キャピラリー7の出口側を緩衝液集積瓶11内に切り替える。4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5は、液補充の位置にあり、すなわち、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5における定量通路51は、SポートとWポートとを接続する。6ウェイ液体デバイダー13は、サンプリングプローブ15との接続に切り替え、サンプリングプローブ15をサンプル盤16に挿入する。シリンジポンプ19は、「置き換え体積」サンプル(通常、サンプリングプローブ15の体積の1.5倍以上)を吸い込み、サンプリングプローブ15を満たさせてから、さらに一定量の空気を注入して、サンプルを緩衝管14に完全に入らせる。こうすれば、サンプルによりサンプリングプローブ15の内壁を洗浄し、管路中の洗浄液及び干渉成分を置き換え、これらが分離流路に入らないようにする。
【0041】
<ステップ2>
図3に示すように、6ウェイ液体デバイダー13は、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5のSポートとの接続に切り替え、シリンジポンプ19により押し出された「置き換え体積」のサンプルは、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5の内蔵定量リング内に入り、定量に達するまでサンプルを定量通路51に満たさせる。同時に、サンプルは4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5の内壁を洗浄し、管路内の洗浄液及び干渉成分を4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5のWポートから押し出してオートマチックサンプラー廃液瓶22に流入させるようにし、分離流路に入らないようにする。
【0042】
<ステップ3>
図4に示すように、内蔵定量リングが180°回転し、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5を液注入の位置に切り替える。すなわち、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5におけるサンプルにより満たされている定量通路51は、PポートとCポートとを接続させ、電気泳動分離キャピラリー7と接続させる。緩衝液注入ポンプ1の圧力は、定量通路51内のサンプルを電気泳動分離キャピラリー7に入らせ、サンプルの定量電気泳動分析を行い始める。同時に、サンプリングプローブ15は洗浄槽17に移動する。
【0043】
<ステップ4>
図5に示すように、定量通路51内のサンプルが全部押し出された後、内蔵定量リングが180°回転し、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5を液補充の位置に切り替え戻す。すなわち、定量通路51は、SポートとWポートとを接続させる。キャピラリー電気泳動分析を行う同時に、6ウェイ液体デバイダー13は、4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5のSポートとの接続を保持する。シリンジポンプ19は、洗浄液瓶21内の洗浄液を4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5に注入して、内蔵定量リングに対して小さい流量による洗浄を行う。
【0044】
<ステップ5>
図6に示すように、キャピラリー電気泳動分析を行うとともに、6ウェイ液体デバイダー13は、洗浄槽17に挿入されているサンプリングプローブ15との接続に切り替える。シリンジポンプ19は、洗浄液をサンプリングプローブ15に注入することにより、サンプリングプローブ15及びサンプリング流路に対する洗浄を行う。
【0045】
<ステップ6>
図7に示すように、キャピラリー電気泳動分析を完成した後、試料洗浄と電気泳動分離キャピラリー7のバランシング段階に入る。6ウェイ液体デバイダー13は、必要の試料瓶20との接続に切り替え、シリンジポンプ19により電気泳動分離キャピラリー7の洗浄とバランシングに使われた試料を緩衝管14に吸い込む。
【0046】
<ステップ7>
図8に示すように、電気泳動分離キャピラリー7の出口側を廃液バランス瓶12に切り替える。6ウェイ液体デバイダー13は、4ウェイコネクタ3との接続に切り替え、シリンジポンプ19により特定の速度で緩衝管14内の試料を4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ5のバイパス通路52を介して電気泳動分離キャピラリー7に押し入り、電気泳動分離キャピラリー7に対して洗浄およびバランシングを行う。洗浄後の廃液は、廃液バランス瓶12に入る。
【0047】
<ステップ8>
図8に示すように、6ウェイ液体デバイダー13は、4ウェイコネクタ3との接続を保持し、シリンジポンプ19により洗浄液瓶21内の清洗液を緩衝管14に注入してから電気泳動分離キャピラリー7に注入することにより、緩衝管14全体と電気泳動分離キャピラリー7に対して洗浄を行う。
【0048】
洗浄が終わる後、全自動高精度のキャピラリー電気泳動装置は初期の状態に戻り、ステップ1から新しい電気泳動分析を行う。
【0049】
上記の動作過程において、キャピラリー電気泳動装置のあらゆる部品の機能はコンピュータープログラムにより自動コントロールでき、全自動運転を実現する。
【0050】
本発明の保護範囲は、上述した実施例に制限されず、その他の容易に考えられる変換と代替案も含む。
【符号の説明】
【0051】
1 緩衝液注入ポンプ、
2 キャピラリー圧力センサー、
3 4ウェイコネクタ、
4 分流廃液瓶、
5 4ウェイ微量サンプルインジェクションバルブ、
51 定量通路、
52 バイパス通路、
6 ガルバニック絶縁装置、
7 電気泳動分離キャピラリー、
8 カラムオーブン、
9 高電圧電源、
10 検出器、
11 緩衝液集積瓶、
12 廃液バランス瓶、
13 6ウェイ液体デバイダー、
14 緩衝管、
15 サンプリングプローブ、
16 サンプル盤、
17 洗浄槽、
18 サンプリング経路圧力センサー、
19 シリンジポンプ、
20 試料瓶、
21 洗浄液瓶、
22 オートマチックサンプラー廃液瓶。