特許第6208399号(P6208399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208399
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】フェノール樹脂発泡体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/14 20060101AFI20170925BHJP
   B32B 27/42 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C08J9/14CFB
   B32B27/42 101
【請求項の数】13
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-507506(P2017-507506)
(86)(22)【出願日】2016年3月23日
(86)【国際出願番号】JP2016001671
(87)【国際公開番号】WO2016152154
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-61561(P2015-61561)
(32)【優先日】2015年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】浜島 雅人
(72)【発明者】
【氏名】向山 滋美
(72)【発明者】
【氏名】井原 健
(72)【発明者】
【氏名】三堀 寿
(72)【発明者】
【氏名】深沢 義人
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−503547(JP,A)
【文献】 特開2002−037910(JP,A)
【文献】 特表2010−522819(JP,A)
【文献】 特開2013−064139(JP,A)
【文献】 特表2011−504538(JP,A)
【文献】 特開2007−070507(JP,A)
【文献】 特開2007−070506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00− 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化ハイドロフルオロオレフィン、及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、
密度が20kg/m3以上100kg/m3以下であり、
独立気泡率が80%以上99%以下であり、
10%圧縮強さと前記密度とが下記式の関係を満たすことを特徴とするフェノール樹脂発泡体。
C≧0.5X−7
(式中、Cは10%圧縮強さ(N/cm2)を表し、Xは密度(kg/m3)を表す)
【請求項2】
前記塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び前記非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン及び1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項3】
イソプロピルクロリドをさらに含む、請求項1又は2に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項4】
炭素数6以下の炭化水素を任意成分として含み、
前記イソプロピルクロリドの含有量が、前記塩素化ハイドロフルオロオレフィン、前記非塩素化ハイドロフルオロオレフィン、前記イソプロピルクロリド、及び前記炭素数6以下の炭化水素の合計質量に対して、13〜82質量%である、請求項3に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項5】
炭素数6以下の炭化水素をさらに含む、請求項1から4の何れか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項6】
塩素化ハイドロフルオロオレフィン、及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される前記少なくとも1種の含有量が、前記塩素化ハイドロフルオロオレフィン、前記非塩素化ハイドロフルオロオレフィン、イソプロピルクロリド及び前記炭素数6以下の炭化水素の合計量に対して、30質量%以上である、請求項5に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項7】
含窒素化合物をさらに含む、請求項1から6の何れか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項8】
前記含窒素化合物が、尿素、メラミン、ヌクリジン、ピリジン、ヘキサメチレンテトラミン及びこれらの混合物からなる群より選択される化合物である、請求項7に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項9】
乾湿繰り返し3サイクル後の寸法変化量の絶対値が、2.0mm以下である、請求項1から8の何れか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項10】
JIS A 9511(2003)5.1.4に準拠して求められる脆性が50%以下である、請求項1から9の何れか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載のフェノール樹脂発泡体の第1の面上及び第2の面上に面材を有するフェノール樹脂発泡体積層板であって、
前記面材が何れもガス透過性を有することを特徴とするフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項12】
面材上で、フェノール樹脂、界面活性剤、硬化触媒、並びに塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種を含有する発泡性フェノール樹脂組成物を発泡及び硬化させるフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、
ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる前記フェノール樹脂の重量平均分子量Mwが400以上3000以下であり、
前記フェノール樹脂の40℃における粘度が1000mPa・s以上100000mPa・s以下であり、
前記フェノール樹脂の粘度上昇速度定数が0.05(1/分)以上0.5(1/分)以下であることを特徴とする、塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、密度が20kg/m3以上100kg/m3以下であり、独立気泡率が80%以上99%以下であり、10%圧縮強さと前記密度とが下記式の関係を満たすフェノール樹脂発泡体の製造方法。
C≧0.5X−7
(式中、Cは10%圧縮強さ(N/cm2)を表し、Xは密度(kg/m3)を表す)
【請求項13】
前記フェノール樹脂の40℃における損失正接tanδが0.5以上40.0以下であり、且つ60℃における損失正接tanδが2.0以上90.0以下である、請求項12に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂発泡体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネに関する意識向上、及び次世代省エネ基準の義務化等により、住宅の気密性能、断熱性能の向上が求められてきている。このような住宅の気密性能及び断熱性能向上の要求に伴い、必要とされる断熱材の厚みが増すことが予想されるが、室内の居住スペースの圧迫や壁体内の空間に制限があることから断熱材の厚みが増すことに伴う設計変更が必要となるといった問題が生じていた。
【0003】
ここで、住宅用途の断熱材としてはグラスウール、ロックウールをはじめとする繊維系の断熱材やスチレン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂を発泡させた発泡プラスチック系の断熱材が知られている。中でも、フェノール樹脂発泡体は、ガス透過性が低く、長期間に渡り断熱性能が変化しにくい優れた住宅用途の断熱材である。また、フェノール樹脂発泡体は、気泡内に内包される化合物の種類や状態によって断熱性能が大きく影響を受けることが知られている。
【0004】
そして、従来、フェノール樹脂発泡体に用いる上記化合物としては、熱伝導率が低いクロロフルオロカーボン(CFC)が使用されていた。しかし、CFCは、オゾン層の破壊や気候変動に大きく寄与することから1987年に採択されたモントリオール議定書により使用が廃止された。この結果、上記化合物としてオゾン破壊係数が比較的低いハイドロフルオロカーボン(HFC)などへ転換が進んだ。しかしながら、依然として高い地球温暖化係数を有していることから、CFCやHFCのように熱伝導率が低く、オゾン破壊係数が低く、且つ地球温暖化係数が低い化合物が望まれていた。
【0005】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4には、オゾン破壊係数が低く、地球温暖化係数が低く、かつ難燃性である化合物として、塩素化又は非塩素化ハイドロフルオロオレフィンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010−522819号公報
【特許文献2】特開2013−064139号公報
【特許文献3】特開2011−504538号公報
【特許文献4】特開2007−070507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4において、多くの塩素化又は非塩素化ハイドロフルオロオレフィンが開示されているが、中でも1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンはオゾン破壊係数及び地球温暖化係数が低く、さらに発泡プラスチック系断熱材に利用できることが記載されている。しかしながら、これらの化合物は、オゾン破壊係数及び温暖化係数が低いものの、極性が高いため、フェノール樹脂発泡体に使用する場合、親水基である水酸基を有するフェノール樹脂を可塑化し、圧縮強さや独立気泡率を低下させるといった課題があった。このため、従来の炭化水素を使用したフェノール樹脂発泡体の技術を単純に上記塩素化または非塩素化ハイドロフルオロオレフィンに置き換えた場合には圧縮強度及び独立気泡率の低い粗悪な発泡体となってしまう場合があった。一方、従来の技術では圧縮強さを上げるためにはフェノール樹脂発泡体の密度を高くする必要があるため、重量が大きくなり、施工時のハンドリング性の悪化や、他の部材や躯体を用いてフェノール樹脂発泡体を固定することによるコストの高騰などの問題が生じる場合があった。
【0008】
従って、本発明は、環境への負荷が低く(オゾン破壊係数及び温暖化係数が低く)、圧縮強さが高く、且つ施工時のハンドリング性と固定時にかかるコストに優れるフェノール樹脂発泡体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定の化合物を用い、密度、独立気泡率、及び10%圧縮強さを特定の範囲とすることにより、環境への負荷が低く、圧縮強さが高く、且つ施工時のハンドリング性と固定時にかかるコストに優れるフェノール樹脂発泡体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、塩素化ハイドロフルオロオレフィン、及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、密度が20kg/m3以上100kg/m3以下であり、独立気泡率が80%以上99%以下であり、10%圧縮強さと上記密度とが下記式の関係を満たすことを特徴とするフェノール樹脂発泡体を提供する。
C≧0.5X−7
(式中、Cは10%圧縮強さ(N/cm2)を表し、Xは密度(kg/m3)を表す)
【0012】
上記塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び上記非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン及び1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
さらに、イソプロピルクロリドを含むことが好ましい。
また、炭素数6以下の炭化水素を任意成分として含み、前記イソプロピルクロリドの含有量が、前記塩素化ハイドロフルオロオレフィン、前記非塩素化ハイドロフルオロオレフィン、前記イソプロピルクロリド、及び前記炭素数6以下の炭化水素の合計質量に対して、13〜82質量%であることが好ましい。
【0014】
さらに、炭素数6以下の炭化水素を含むことが好ましい。
【0015】
塩素化ハイドロフルオロオレフィン、及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる上記少なくとも1種の含有量が、上記塩素化ハイドロフルオロオレフィン、上記非塩素化ハイドロフルオロオレフィン、イソプロピルクロリド及び上記炭素数6以下の炭化水素の合計量に対して、30質量%以上であることが好ましい。
【0016】
さらに、含窒素化合物を含むことが好ましい。
【0017】
上記含窒素化合物が、尿素、メラミン、ヌクリジン、ピリジン、ヘキサメチレンテトラミン及びこれらの混合物からなる群より選択される化合物であることが好ましい。
【0018】
上記フェノール樹脂発泡体は、乾湿繰り返し3サイクル後の寸法変化量の絶対値が、2.0mm以下であることが好ましい。
【0019】
上記フェノール樹脂発泡体は、JIS A 9511(2003)5.1.4に準拠して求められる脆性が、50%以下であることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明は、上記フェノール樹脂発泡体の第1の面上及び第2の面上に面材を有するフェノール樹脂発泡体積層板であって、上記面材が何れもガス透過性を有することを特徴とするフェノール樹脂発泡体積層板を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、面材上で、フェノール樹脂、界面活性剤、硬化触媒、並びに塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種を含有する発泡性フェノール樹脂組成物を発泡及び硬化させるフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる上記フェノール樹脂の重量平均分子量Mwが400以上3000以下であり、上記フェノール樹脂の40℃における粘度が1000mPa・s以上100000mPa・s以下であり、上記フェノール樹脂の粘度上昇速度定数が0.05(1/分)以上0.5(1/分)以下であり、上記フェノール樹脂発泡体の密度が20kg/m3以上100kg/m3以下であり、上記フェノール樹脂発泡体の独立気泡率が80%以上99%以下であり、上記フェノール樹脂発泡体の10%圧縮強さと上記フェノール樹脂発泡体の上記密度とが下記式の関係を満たすことを特徴とするフェノール樹脂発泡体の製造方法を提供する。
C≧0.5X−7
(式中、Cは10%圧縮強さ(N/cm2)を表し、Xは密度(kg/m3)を表す)
【0022】
上記フェノール樹脂の40℃における損失正接tanδが0.5以上40.0以下であり、且つ60℃における損失正接tanδが2.0以上90.0以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のフェノール樹脂発泡体は、上記構成を有するため、環境への負荷が低く、圧縮強さが高く、且つ施工時のハンドリング性と固定時にかかるコストに優れる。
また、本発明のフェノール樹脂発泡体の製造方法によれば、上記構成を有する本発明のフェノール樹脂発泡体を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、密度が20kg/m3以上100kg/m3以下であり、独立気泡率が80%以上99%以下であり、10%圧縮強さと上記密度とが下記式の関係を満たす。
C≧0.5X−7
(式中、Cは10%圧縮強さ(N/cm2)を表し、Xは密度(kg/m3)を表す)
なお、本明細書において、塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の化合物又は混合物を、「化合物α」と称する場合がある。
【0026】
ここで、本実施形態のフェノール樹脂発泡体が含む化合物αは、オゾン破壊係数及び地球温暖化係数が低いので、本実施形態のフェノール樹脂発泡体は環境への負荷が低い。
上記塩素化ハイドロフルオロオレフィン又は上記非塩素化ハイドロフルオロオレフィンとしては、特に限定されないが、熱伝導率の低さや発泡性の観点から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン等が好ましい。
また、上記ハロゲン化炭化水素としては、特に限定されないが熱伝導率の低さやオゾン破壊係数及び温暖化係数が低さや沸点の観点から、水素元素を少なくとも一つ含むハロゲン化炭化水素、2種類以上のハロゲン原子を含まないハロゲン化炭化水素、又はフッ素原子を含まないハロゲン化炭化水素が好ましく、より好ましくはイソプロピルクロリドである。
上記化合物αは、塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素からなる群より選択される1種の化合物を含んでいてもよいし、複数種を組み合わせて含んでいてもよい。
【0027】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、炭化水素、二酸化炭素など(好ましくは炭化水素)をさらに含んでいてもよい。
【0028】
上記炭化水素としては、例えば、炭素数が6以下の炭化水素が挙げられる。すなわち、本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、例えば、塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素のからなる群より選択される少なくとも1種の化合物の他に、さらに炭素数6以下の炭化水素を含んでいてもよい。上記炭素数6以下の炭化水素としては、具体的には、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、シクロヘキサン等を挙げることができる。中でも、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン等のペンタン類、又はノルマルブタン、イソブタン、シクロブタンのブタン類が好適に用いられる。上記炭化水素は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、特に限定されないが、例えば、1種の上記化合物αからなる単一の化合物を含んでいてもよいし、複数種の上記化合物α、又は少なくとも1種の上記化合物αと少なくとも1種の上記炭化水素とを含んでいてもよい。中でも、本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ハロゲン化炭化水素とを含むことが好ましい。また、本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、平均セル径が小さく、独立気泡率及び圧縮強度が高い発泡体が得られるという観点から、例えば、少なくとも1種の上記化合物αと少なくとも1種の上記炭化水素(特に、第1成分として1種又は2種の上記化合物α、第2成分として上記炭化水素(例えばシクロペンタン、イソペンタンなどのペンタン類)を含むことが好ましい。
【0030】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体に上記炭素数6以下の炭化水素が含まれる場合には、上記化合物αの含有量は、特に限定されないが、平均セル径が小さく、独立気泡率が高く、熱伝導率が低くなるという観点から、例えば、上記化合物αと炭素数6以下の炭化水素の合計量(100質量%)に対して、30質量%以上(例えば、30質量%以上100質量%以下)が好ましく、より好ましくは40質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは50質量%以上100質量%以下、とりわけ好ましくは60質量%以上100質量%以下、特に好ましくは70質量%以上100質量%以下、最も好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0031】
本実施形態において、フェノール樹脂発泡体から放散されるホルムアルデヒド量を低減するためのホルムアルデヒドキャッチャー剤としてや、フェノール樹脂発泡体に柔軟性を付与することを目的に、フェノール樹脂に含窒素化合物を添加してもよい。
【0032】
上記含窒素化合物としては、例えば、尿素、メラミン、ヌクリジン、ピリジン、ヘキサメチレンテトラミン及びこれらの混合物からなる群より選択される化合物等が使用できるが、尿素が好適に用いられる。含窒素化合物以外の添加剤としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸化物、タルク、カオリン、珪石粉、珪砂、マイカ、珪酸カルシウム粉、ワラストナイト、ガラス粉、ガラスビーズ、フライアッシュ、シリカフューム、グラファイト、アルミ粉等を添加することができる。金属酸化物としては酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等、金属水酸化物としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等、金属炭酸化物としては炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等が使用できる。また、含窒素化合物以外の添加剤としてシラン系化合物、シロキサン系化合物を添加することもできる。これらは単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。前記シラン系化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、及びジメトキシジメチルシラン等を用いてもよく、前記シロキサン系化合物としては、ヘキサメチルジシロキサン等を用いてもよい。前記シラン系化合物、シロキサン化合物は非極性を有するため、極性を有するフェノール樹脂と混ざりにくい。このため、多くの気泡核が形成されことから気泡径が小さく、高い独立気泡率を有するフォームを得ることができる。上記含窒素化合物、及び上記含窒素化合物以外の添加物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の密度は、20kg/m3以上100kg/m3以下であり、好ましくは20kg/m3以上70kg/m3以下であり、より好ましくは20kg/m3以上40kg/m3以下であり、さらに好ましくは22kg/m3以上35kg/m3以下であり、最も好ましくは23kg/m3以上28kg/m3以下である。密度が20kg/m3よりも低いと気泡膜が薄い為、発泡時に気泡膜が破れやすくなることから高い独立気泡構造を得ることが困難となり、圧縮強さが極端に低下する。また、密度が100kg/m3より高いと樹脂をはじめとする固形成分由来の固体の熱伝導が大きくなり断熱性能が低下する。
なお、上記密度は、後述の(評価)の「(2)発泡体密度」に記載の方法により測定される値をいう。上記密度は、例えば、上記化合物αや上記炭化水素の割合、硬化触媒の割合、発泡温度、フェノール樹脂の分子量、反応速度、フェノール樹脂の粘度等により調整できる。
【0034】
本発明者らは、従来の炭化水素を含むフェノール樹脂発泡体中の炭化水素を、単に化合物αに置き換えた場合には、フェノール樹脂発泡体の発泡硬化工程における、フェノール樹脂の硬化反応に伴う粘度上昇分が、化合物αのフェノール樹脂に対する高い相溶性によって打ち消されてしまい、相対的に気泡の成長速度が速くなってしまうことを見出した。そのため、炭化水素を化合物αに置き換えただけでは、圧縮強さが高く、且つ施工時のハンドリング性と固定時にかかるコストに優れるフェノール樹脂発泡体が得られにくいことを見出した。そして、鋭意検討を重ねたところ、その原因として、独立気泡率、圧縮強さが、高くなりすぎたり、低くなりすぎたりすることと関連があることを見出した。
さらに、本発明者らは、製造条件、特に特定の範囲のMw、粘度、粘度上昇速度定数、tanδのフェノール樹脂を使用することによって、独立気泡率、圧縮強さ等の物性値を特定の範囲とすることができ、そして物性値を満たすことで、圧縮強さが高く、且つ施工時のハンドリング性と固定時にかかるコストに優れるフェノール樹脂発泡体が得られることを見出した。
【0035】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、80%以上99%以下であり、85%以上99%以下が好ましく、88%以上99%以下がさらに好ましく、90%以上99%以下が特に好ましい。独立気泡率が低すぎると、気泡に内包された炭化水素や化合物αが空気と置換しやすくなることから、長期間経過後の断熱性能が悪化したり、気泡膜が破れ易くなることにより圧縮強さが低下したりするため好ましくない。
なお、上記独立気泡率は、後述の(評価)の「(3)独立気泡率」に記載の方法により測定される値をいう。上記独立気泡率は、例えば、フェノール樹脂の粘度、上記化合物αや上記炭化水素の種類や割合、硬化条件、発泡硬化時のオーブン温度等により調整できる。
【0036】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の10%圧縮強さは、特に限定されないが、フェノール樹脂発泡体の強度やフェノール樹脂発泡体の密度を高くしすぎない(重量を重くしすぎない、製造コストを高くしすぎない)という観点から、例えば、6N/cm2以上50N/cm2以下が好ましく、より好ましくは8N/cm2以上50N/cm2以下、さらに好ましくは10N/cm2以上40N/cm2以下であり、特に好ましくは12N/cm2以上40N/cm2以下であり、最も好ましくは15N/cm2以上40N/cm2以下である。
なお、上記10%圧縮強さは、後述の(評価)の「(4)10%圧縮強さ」に記載の方法により測定される値をいう。上記10%圧縮強さは、例えば、フェノール樹脂の分子量、粘度、反応速度、上記化合物αや上記炭化水素の種類や割合、硬化条件(例えば、硬化触媒の添加量や加熱時間)、発泡条件(例えば、オーブン温度)、発泡体の構造(気泡膜に孔がない構造等)等により調整できる。
【0037】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体は、圧縮に対する強度、及び施工時のハンドリング性と固定時にかかるコスト低減の観点から、上記10%圧縮強さと上記密度とが下記式の関係を満たす。
C≧0.5X−7
(式中、Cは上記10%圧縮強さ(N/cm2)を表し、Xは上記密度(kg/m3)を表す)
中でも、圧縮に対する強度、及び施工時のハンドリング性と固定時にかかるコスト低減に一層優れるという観点から、上記式の左辺(C)が、右辺(0.5X−7)よりも、0.5以上大きいことが好ましく、0.8以上大きいことがより好ましく、1.0以上大きいことがさらに好ましく、1.5以上大きいことが特に好ましい。
また、上記式の関係を満たし、且つ密度が20kg/m3以上であると、発泡体の強度に優れ、フェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂発泡体が床面や平屋根に施工された建築物において、施工時やメンテナンス時に上を歩行する際に、表面がへこむ、または亀裂が入るといった問題が生じにくい。
【0038】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の乾湿繰り返し3サイクル後の寸法変化量の絶対値(寸法変化量の絶対値)は、2.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは1.6mm以下、さらに好ましくは1.3mm以下、最も好ましくは1.0mm以下である。寸法変化量の絶対値が2.0mmより大きいとフェノール樹脂発泡体を施工した後に乾湿繰り返しによりフェノール樹脂発泡体が収縮した場合には発泡体よりなる断熱ボードの接合部に隙間が空いてしまうため建物の断熱性能が損なわれてしまうため好ましくない。一方、フェノール樹脂発泡体が膨張した場合にはボードの接合部がせりあがってしまうため、壁面の平滑性が損なわれてしまい、外観が悪くなるため好ましくない。
なお、上記寸法変化量の絶対値は、後述の(評価)の「(5)乾湿繰り返し3サイクル後の寸法変化量の絶対値」に記載の方法により測定される値をいう。上記寸法変化量の絶対値は、例えば、フェノール樹脂の分子量や反応速度、上記化合物αや上記炭化水素の種類や割合、硬化触媒の添加量やフェノール樹脂の硬化時間、発泡硬化時のオーブン温度等により調整できる。
【0039】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の脆性は、50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、とりわけ好ましくは20%以下、特に好ましくは15%以下であり、最も好ましくは10%以下である。脆性が50%より大きいと、生産コストが高くなるため好ましくない。さらに、施工時にフェノール樹脂発泡体よりなるボードを加工する際に、発泡体が欠けやすくなる傾向にあるため好ましくない。
なお、上記脆性は、後述の(評価)の「(6)脆性」に記載の方法により測定される値をいう。上記脆性は、例えば、フェノール樹脂の組成や割合、含窒素化合物や可塑剤等の添加剤の有無、フェノール樹脂発泡体の密度、フェノール樹脂発泡体中のフェノール樹脂の架橋密度等により調整できる。
【0040】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体は、例えば、フェノール樹脂、及び化合物α(好ましくは、フェノール樹脂、界面活性剤、硬化触媒、及び化合物α)を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、発泡及び硬化させることにより製造することができる。上記発泡性フェノール樹脂組成物は、さらに、炭化水素を含んでいてもよいし、含窒素化合物、可塑剤、難燃剤、硬化助剤、シラン系化合物、シロキサン系化合物等の添加剤を含んでいてもよい。また、より精密に発泡及び硬化速度を制御するためにはフタル酸エステルのような可塑剤を添加しても良い。
【0041】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体の製造方法は、例えば、面材上で、フェノール樹脂、界面活性剤、硬化触媒及び化合物αを含有する発泡性フェノール樹脂組成物を発泡及び硬化させるフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる上記フェノール樹脂の重量平均分子量Mwが400以上3000以下であり、上記フェノール樹脂の40℃における粘度が1000mPa・s以上100000mPa・s以下であり、かつ上記フェノール樹脂の粘度上昇速度定数が0.05(1/分)以上0.5(1/分)以下である製造方法であってもよい。
【0042】
上記フェノール樹脂は、例えば、フェニル基を有する化合物とアルデヒド基を有する化合物またはその誘導体を原料として、アルカリ触媒により40℃以上100℃以下の温度範囲で加熱して重合させることによって得られる。
【0043】
上記フェノール樹脂の調製に用いられる上記フェニル基を有する化合物としては、例えば、フェノール、レゾルシノール、カテコール、o−、m−又はp−クレゾール、キシレノール類、エチルフェノール類、p−tertブチルフェノール等が挙げられる。中でも、フェノール、o−、m−又はp−クレゾールが好ましく、最も好ましくはフェノールである。フェニル基を有する化合物としては、2核のフェニル基を有する化合物も使用できる。これらフェニル基を有する化合物は、単独又は2種類以上で用いてもよい。
2種類以上のフェニル基を有する化合物を用いる場合、「フェニル基を有する化合物のモル量」は、用いる各フェニル基を有する化合物のモル量の総和である。また、2核のフェニル基を有する化合物を用いる場合には、2核のフェニル基を有する化合物のモル数に2を積算した値を、2核のフェニル基を有する化合物のモル量として用いて「フェニル基を有する化合物のモル量」を計算する。
【0044】
上記フェノール樹脂の調製に用いられる上記アルデヒド基を有する化合物またはその誘導体としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、1,3,5−トリオキサン、テトラオキシメチレン等が挙げられる。中でも、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドが好ましい。これらアルデヒド基を有する化合物またはその誘導体は、単独又は2種類以上で用いてもよい。
2種類以上のアルデヒド基を有する化合物またはその誘導体を用いる場合「アルデヒド基を有する化合物またはその誘導体のモル量」は、用いる各アルデヒド基を有する化合物またはその誘導体のモル量の総和である。なお、パラホルムアルデヒドを用いる場合の「アルデヒド基を有する化合物またはその誘導体のモル量」は、用いるパラホルムアルデヒドの重量を30で除した値を用いて計算し、1,3,5−トリオキサンを用いる場合の「アルデヒド基を有する化合物またはその誘導体のモル量」は、用いる1,3,5−トリオキサンのモル数に3を積算した値を用いて計算し、テトラオキシメチレンを用いる場合の「アルデヒド基を有する化合物またはその誘導体のモル量」は、用いるテトラオキシメチレンのモル数に4を積算した値を用いて計算する。
【0045】
上記フェノール樹脂の調製に用いられる、上記フェニル基を有する化合物に対する上記アルデヒド基を有する化合物またはその誘導体のモル比(アルデヒド基を有する化合物またはその誘導体のモル量/フェニル基を有する化合物のモル量)は、好ましくは1.5以上3以下であり、より好ましくは1.6以上2.7以下であり、さらに好ましくは1.7以上2.5以下であり、最も好ましくは1.8以上2.2以下である。フェニル基を有する化合物に対するアルデヒド基を有する化合物またはその誘導体のモル比が1.5以上であることにより、発泡時の気泡膜強度低下を抑えてフェノール樹脂発泡体の強度を保つことができる。また、フェノール核同士を架橋させるために必要となるアルデヒド基を有する化合物またはその誘導体の量が充足されて十分に架橋を進行させることができるので、フェノール樹脂発泡体の気泡膜の強度を高めて独立気泡率の向上を図ることができる。フェニル基を有する化合物に対するアルデヒド基を有する化合物またはその誘導体のモル比が3以下であることにより、フェノール樹脂を架橋し易くさせ、フェノール樹脂発泡体の気泡膜の強度を高めて独立気泡率の向上を図ることができる。
【0046】
上記フェノール樹脂は、後述する(評価)の「(7)フェノール樹脂の重量平均分子量Mw」に記載の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量Mwが、例えば、400以上3000以下であることが好ましく、より好ましくは500以上3000以下、さらに好ましくは700以上3000以下、特に好ましくは1000以上2700以下、最も好ましくは1500以上2500以下である。重量平均分子量Mwが400より小さいとフェノール核に付加反応部位が多く残ってしまうことからフェノール樹脂に硬化触媒を混合した後の発熱量が大きくなるため、塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素からなる群からなる群より選択される少なくとも1種によって可塑化されたフェノール樹脂が高温となりさらに粘度が低下してしまう。この結果、発泡時に気泡の破泡を誘発し、独立気泡率が低下することから圧縮強さが低下してしまう。また、重量平均分子量Mwが十分大きくなっていないとフェノール樹脂が発泡する際気泡膜に十分な延伸がかからなくなることから圧縮強さが低下してしまう傾向がある。さらに、上述のようにフェノール樹脂の粘度が低下することから発泡硬化時に気泡の合一化が発生しやすくなりボイドが多く、平均セル径が大きな粗悪なフォームとなってしまう。また、重量平均分子量Mwが3000より大きいとフェノール樹脂の粘度が高くなりすぎることから、必要な発泡倍率を得ることが困難となるため好ましくない。また、フェノール樹脂中の低分子量成分が少なくなることからフェノール樹脂の硬化時に発生する熱量が低下してしまい、充分な硬化反応が進行せずに圧縮強さが低下してしまう懸念がある。
【0047】
上記フェノール樹脂の40℃における粘度は、例えば、1000mPa・s以上100000mPa・s以下が好ましい。また、独立気泡率の向上や平均セル径低下の観点から、より好ましくは5000mPa・s以上50000mPa・s以下であり、7000mPa・s以上30000mPa・s以下が特に好ましい。フェノール樹脂の粘度が低すぎると(例えば、5000mPa・sより小さいと)、フェノール樹脂中の気泡核が発泡硬化時に合一化してしまうためセル径が大きくなりすぎてしまう傾向にある。さらには発泡圧によって気泡膜が容易に破れてしまうことから独立気泡率の悪化を招いてしまう傾向にある。フェノール樹脂の粘度が高すぎると(例えば、100000mPa・sより大きいと)、発泡速度が遅くなることから必要な発泡倍率を得ることができなくなってしまうため好ましくない。
なお、上記40℃における粘度は、(評価)の(8)の「40℃におけるフェノール樹脂の粘度」に記載の方法により測定される値をいう。上記40℃における粘度は、例えば、フェノール樹脂の重量平均分子量Mwや水分率、可塑剤等の添加等により調整できる。
【0048】
上記フェノール樹脂の粘度上昇速度定数は、例えば、0.05(1/分)以上0.5(1/分)以下が好ましく、より好ましくは0.05(1/分)以上0.4(1/分)以下、さらに好ましくは0.07(1/分)以上0.35(1/分)以下、最も好ましくは0.08(1/分)以上0.3(1/分)以下である。粘度上昇速度定数が0.05(1/分)未満であると、発泡時にフェノール樹脂の硬化反応が十分進まないために、気泡が破泡してしまい粗悪なフォームになってしまうことから圧縮強さが低下してしまう。さらに、フェノール樹脂の架橋反応が十分に進行しないことから、発泡体中の樹脂部の強度が低下してしまうことから、十分な圧縮強さが発現しない懸念がある。粘度上昇速度定数が0.5(1/分)より大きいと、発泡初期においてフェノール樹脂の硬化に伴う反応熱が過大になることによりこれらの熱が発泡体中に蓄熱され、発泡圧が高くなりすぎるために気泡の破泡を誘発してしまい圧縮強さが低下してしまう。
なお、上記粘度上昇速度定数は、後述の(評価)の「(9)粘度上昇速度定数」に記載の方法により測定される値をいう。上記粘度上昇速度定数は、例えば、フェノール樹脂を合成する際のフェニル基を有する化合物やアルデヒド基を有する化合物またはその誘導体の種類や割合、フェノール樹脂の重量平均分子量Mw、含窒素化合物の添加量、硬化触媒の添加量等により調整できる。
【0049】
上記フェノール樹脂の40℃におけるtanδ(損失正接)は、特に限定されないが、独立気泡率及び圧縮強さの観点から例えば、0.5以上40.0以下が好ましく、より好ましくは0.5以上35.0以下、さらに好ましくは0.5以上30.0以下である。
上記フェノール樹脂の50℃におけるtanδ(損失正接)は、特に限定されないが、独立気泡率及び圧縮強さの観点から、例えば、1.25以上65.0以下が好ましく、より好ましくは2.0以上60.0以下、さらに好ましくは4.0以上55.0以下である。
上記フェノール樹脂の60℃におけるtanδ(損失正接)は、特に限定されないが、独立気泡率及び圧縮強さの観点から例えば、2.0以上90.0以下が好ましく、より好ましくは2.0以上80.0以下、さらに好ましくは4.0以上70.0以下である。
【0050】
中でも、上記フェノール樹脂は40℃における損失正接tanδが0.5以上40.0以下であり、且つ60℃における損失正接tanδが2.0以上90.0以下であることが好ましく、40℃における損失正接tanδ、50℃における損失正接tanδ、及び60℃における損失正接tanδが、横軸に温度、縦軸に損失正接tanδをとったグラフ上で(40℃、0.5)、(40℃、40.0)、(60℃、2.0)、(60℃、90.0)の4点から成る四角形(4点の座標を線分で結んでできた四角形)の辺上又は内側にあることがより好ましく、40℃以上60℃以下の範囲における損失正接tanδが、横軸に温度、縦軸に損失正接tanδをとったグラフ上で(40℃、0.5)、(40℃、40.0)、(60℃、2.0)、(60℃、90.0)の4点から成る四角形(4点の座標を線分で結んでできた四角形)の辺上又は内側にあることがさらに好ましい。すなわち、40℃における損失正接tanδ、50℃における損失正接tanδ、及び60℃における損失正接tanδが、横軸に温度、縦軸に損失正接tanδをとったグラフ上でy=0.075x−2.5の直線とy=2.5x−60の直線との間又は各直線上にあることがより好ましく、40℃以上60℃以下の範囲における損失正接tanδが、横軸に温度、縦軸に損失正接tanδをとったグラフ上でy=0.075x−2.5の直線とy=2.5x−60の直線との間又は各直線上にあることがさらに好ましい。
横軸に温度、縦軸に損失正接tanδをとったグラフ上の上記4点としては、(40℃、0.5)、(40℃、35.0)、(60℃、2.0)、(60℃、80.0)がより好ましく、最も好ましくは(40℃、0.5)、(40℃、30.0)、(60℃、4.0)、(60℃、70.0)である。
フェノール樹脂は同じ粘度であっても架橋状態の違いや添加剤により加熱時の挙動が変化する。tanδは損失弾性率と貯蔵弾性率との比であるため、この値が大きいほど発泡時にフェノール樹脂が伸びやすくなり、小さいほど発泡時にフェノール樹脂が破断しやすくなる傾向にある。従って、フェノール樹脂の損失正接tanδが上記範囲より大きいと、発泡圧に対して気泡の成長速度が速くなりすぎてしまうことから破泡を誘発してしまい、独立気泡率や圧縮強さが低下してしまう。また、発泡時にフェノール樹脂に延伸がかかりにくくなるために高い圧縮強さが発現しなくなってしまうといった懸念もある。損失正接tanδが上記範囲より小さいと発泡時にフェノール樹脂が破断しやすくなるために、フェノール樹脂発泡体の気泡膜や骨格部分が切れてしまうため構造が不連続となってしまい、圧縮強さが低下してしまう傾向にある。
なお、本明細書において、tanδ(損失正接)は、後述の(評価)の「(10)tanδ」に記載の方法により測定される値をいう。上記tanδは、例えば、フェノール樹脂を合成する際のフェニル基を有する化合物やアルデヒド基を有する化合物またはその誘導体の種類や割合、フェノール樹脂の重量平均分子量Mw、フェノール樹脂中の水分率、可塑剤等の添加物等により調整できる。
【0051】
上記化合物αとしては、上述のものが挙げられる。
上記発泡性フェノール樹脂組成物中の上記化合物αの含有量は、特に限定されないが、熱伝導率の観点から、例えば、上記フェノール樹脂及び上記界面活性剤の総量(100質量%)に対して、0.5質量%以上25質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上18質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以上15質量%以下である。
本実施形態において、上記化合物α及び/又は上記炭化水素の合計含有量は、特に限定されないが、例えば、上記フェノール樹脂及び上記界面活性剤の総量(100質量%)に対して、3.0質量%以上25.0質量%以下の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは3.0質量%以上22.5質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以上20.0質量%以下、特に好ましくは6.0質量%以上18.0質量%以下、最も好ましくは6.0質量%以上15.0質量%以下である。添加量が3.0質量%未満であると、必要な発泡倍率を得ることが非常に困難となり密度が高すぎる発泡体となってしまい、良好な発泡体が得られなくなるため好ましくない。添加量が25.0質量%超であると、化合物αの可塑化効果によりフェノール樹脂の粘度が低下してしまうことと、添加量が多すぎることによる過剰発泡が起きて発泡体の気泡が破れてしまい、独立気泡率が低下し長期断熱性能や圧縮強さ等の物性が低下してしまうため好ましくない。
【0052】
本実施形態においてフェノール樹脂可塑化に伴う独立気泡率や圧縮強度の低下を改善するために、気泡核剤として化合物αと共に窒素、アルゴン等の無機ガスを上記化合物α及び/又は上記炭化水素の合計量に対して質量換算で0.05%以上5.0%以下の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは0.05%以上3.0%以下、さらに好ましくは0.1%以上2.5%以下、特に好ましくは0.1%以上1.5%以下、最も好ましくは0.3%以上1.0%以下である。添加量が0.05%未満であると気泡核剤としての効果十分にできなくなり、添加量が5.0%超であるとフェノール樹脂発泡体の発泡硬化過程において発泡圧が高くなりすぎてしまうことから発泡体の気泡が破れてしまい、独立気泡率や圧縮強度が低い粗悪な発泡体となってしまうため好ましくない。
【0053】
上記含窒素化合物としては、上述のものが挙げられる。
上記含窒素化合物としては、一般的に知られているように、フェノール樹脂の反応の途中または終点付近のタイミングで直接添加してもよいし、予めホルムアルデヒドと反応させたものをフェノール樹脂に混合してもよい。
上記含窒素化合物の含有量は、特に限定されないが、フェノール樹脂発泡体から拡散されるアルデヒド基を有する化合物またはその誘導体の低減や、フェノール樹脂発泡体の柔軟性の観点から例えば、上記フェノール樹脂全量(100質量%)に対して、1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上10質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以上8質量%以下である。
【0054】
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル類やグリコール類であるエチレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられるが、中でもフタル酸エステルが好適に用いられる。また、脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素、またはそれらの混合物を用いてもよい。上記可塑剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
上記難燃剤としては、例えば、難燃剤として一般的に使用されているテトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテル等の臭素化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、赤リン等のリン又はリン化合物、ポリリン酸アンモニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物が挙げられる。上記難燃剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
上記界面活性剤としては、一般にフェノール樹脂発泡体の製造に使用されるものを使用できるが、中でもノニオン系の界面活性剤が効果的であり、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体であるアルキレンオキサイドや、アルキレンオキサイドとヒマシ油の縮合物、アルキレンオキサイドとノニルフェノール、ドデシルフェノールのようなアルキルフェノールとの縮合物、アルキルエーテル部分の炭素数が14〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテル、更にはポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系化合物、ポリアルコール類等が好ましい。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記界面活性剤の使用量は、特に限定されないが、上記フェノール樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上10質量部以下の範囲で好ましく使用される。
【0057】
上記硬化触媒としては、フェノール樹脂を硬化できる酸性の硬化触媒であればよいが、例えば、無水酸硬化触媒が好ましい。上記無水酸硬化触媒としては、無水リン酸や無水アリールスルホン酸が好ましい。上記無水アリールスルホン酸としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、置換フェノールスルホン酸、キシレノールスルホン酸、置換キシレノールスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられ、これらを一種類で用いても、二種類以上組み合わせてもよい。上記硬化触媒は、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の溶媒で希釈してもよい。
上記硬化触媒の使用量は、特に限定されないが、上記フェノール樹脂100質量部に対して、3質量部以上30質量部以下の範囲で好ましく使用される。また、上記フェノール樹脂及び上記界面活性剤の総量(100質量部)に対して、3質量部以上30質量部以下であってもよい。
【0058】
上記硬化助剤としては、例えば、レゾルシノール、クレゾール、サリゲニン(o−メチロールフェノール)、p−メチロールフェノール等が挙げられる。上記硬化助剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
上記発泡性フェノール樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、上記フェノール樹脂、上記界面活性剤、上記化合物α、上記炭化水素、上記硬化触媒、上記含窒素化合物、上記可塑剤やその他の材料等を、混合することにより得ることができる。
【0060】
フェノール樹脂発泡体は、例えば、上述の発泡性フェノール樹脂組成物を走行する面材上に連続的に吐出することと、発泡性フェノール樹脂組成物の、面材と接触する面とは反対側の面を他の面材で被覆することと、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡及び加熱硬化させることとを含む連続生産方式により得ることができる。また、そのほかの実施形態としては、上述の発泡性フェノール樹脂組成物を、面材によって内側が被覆された型枠内、または離型剤が塗布された型枠内に流し込み、発泡及び加熱硬化させるバッチ生産方式によって得ることもできる。前記バッチ生産方式によって得られたフェノール樹脂発泡体は、必要に応じて厚み方向にスライスして用いることもできる。
なお、本明細書において、面材上にフェノール樹脂発泡体が積層した積層板(面材とフェノール樹脂発泡体を含む積層板)を、フェノール樹脂発泡体積層板と称する場合がある。フェノール樹脂発泡体積層板は、1枚の面材を有していてもよいし、2枚の面材(フェノール樹脂発泡体の第1の面上(上面)及び第2の面上(下面)に設けられた面材(上面材及び下面材))を有していてもよい。上記面材は、フェノール樹脂発泡体に接する形態で設けられていることが好ましい。
【0061】
上記面材は、特に限定されないが、発泡性フェノール樹脂組成物の発泡及び硬化時に発生する水分(フェノール樹脂中に含まれる水分、硬化反応(脱水縮合反応)中に発生する水分など)を除き、気泡内に水蒸気が含まれて内圧が高くなりすぎることによる破泡を防止し、独立気泡率をより向上させる観点から、例えば、ガス透過性を有する面材が好ましい。ガス透過性を有する上記面材としては、例えば、ポリエステル製不織布(ポリエチレンテレフタレート製不織布等)、ポリアミド製不織布(ナイロン製不織布等)等の合成繊維不織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維紙、紙類、貫通する孔を有する金属フィルム(貫通する孔を有する金属箔と紙、ガラスクロスやガラス繊維を張り合わせ補強した積層物)等が挙げられる。中でも、難燃性、面材付着強度、発泡性フェノール樹脂組成物の染み出し防止の観点から、PET繊維不織布、ガラス繊維不織布、貫通する孔を有するアルミが好ましい。なお、貫通する孔を有する金属フィルムは、厚み方向に貫通する孔をあける等の処理により製造することができる。上記フェノール樹脂発泡体積層板は、ガス透過性を有する面材により発泡硬化中に水分がフェノール樹脂発泡体から放散されやすくなることから、水蒸気による気泡の破泡を抑制できる。このような観点から上記フェノール樹脂発泡体は第1の面(上面)及び第2の面(下面)に面材を有し、2枚の面材が何れもガス透過性であることが好ましい。
上記面材におけるガス透過性とは、ASTM D3985−95に準拠して測定される酸素の透過率が4.5cm3/24h・m2以上である面材をいう。
【0062】
上記面材は、例えば、生産時の面材破断を防止する目的で、可撓性を有していることが好ましい。可撓性を有する面材としては、例えば、合成繊維不織布、合成繊維織布、ガラス繊維紙、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、紙類、金属フィルム(貫通する孔を有する金属フィルム)または、これらの組合せ等が挙げられる。上記面材は難燃性を付与するために難燃剤を含有していてもよい。上記難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテル等の臭素化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、赤リン等のリン又はリン化合物、ポリリン酸アンモニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩を用いることができる。上記難燃剤は、上記面材の繊維中に練りこまれていてもよく、アクリル、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、エポキシ、不飽和ポリエステル等の面材のバインダーに添加されていてもよい。また、上記面材は、フッ素樹脂系、シリコーン樹脂系、ワックスエマルジョン系、パラフィン系、アクリル樹脂パラフィンワックス併用系などの撥水剤やアスファルト系防水処理剤によって表面処理されていてもよい。これらの撥水剤や防水処理剤は、単独で用いてもよいし、上記難燃剤を添加し面材に塗布してもよい。
【0063】
面材上に上記発泡性フェノール樹脂組成物を吐出する際の、上記発泡性フェノール樹脂組成物の温度は、例えば、25℃以上50℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以上45℃以下である。上記温度が50℃以下であることにより、適度に発泡が起こり、平滑な発泡板が得られる。上記温度が25℃以上であることにより、適度に硬化が起こり、発泡及び硬化がバランスよく起こる。
【0064】
二枚の面材に挟まれた発泡体フェノール樹脂組成物は、二枚の面材間で発泡することができる。この発泡したフェノール樹脂組成物(発泡体)を硬化させるには、例えば、下記の第1のオーブン及び第2のオーブンを用いることができる。
【0065】
第1のオーブンは、例えば、無端スチールベルト型ダブルコンベアまたはスラット型ダブルコンベアが使用され、60℃以上110℃以下の雰囲気下で発泡、硬化が行われる。このオーブン内で、未硬化の発泡体を板状に成形しながら硬化させ、部分硬化した発泡体を得ることができる。第1オーブン内は全域に渡って均一な温度であってもよいし、複数の温度ゾーンを有していてもよい。
【0066】
第2のオーブンは、70℃以上120℃以下の熱風を発生させ、第1オーブンで部分硬化した発泡体を後硬化させるものであることが好ましい。部分硬化した発泡体ボードはスペーサーやトレイを用いて一定の間隔で重ねてもよい。第2オーブン内の温度は高すぎると発泡体の気泡内部の圧力が高くなりすぎるため破泡を誘発してしまい、低すぎるとフェノール樹脂の反応が進ませるのに時間がかかりすぎる恐れがあるため、80℃以上110℃以下がより好ましい。
また、第1、第2オーブン内において、フェノール樹脂発泡体の内部温度は60℃以上105℃以下が好ましく、より好ましくは70℃以上100℃以下、さらに好ましくは75℃以上95℃以下、最も好ましくは75℃以上90℃以下である。フェノール樹脂発泡体の内部温度は例えばオーブン内の発泡性フェノール樹脂組成物に熱電対とデータ記録機能を入れることによって測定できる。
【0067】
化合物αを用いる場合には、化合物αのフェノール樹脂に対する高い相溶性によりフェノール樹脂が可塑化してしまうため、発泡硬化の工程においてフェノール樹脂の硬化反応に伴う粘度上昇分が打ち消されてしまうことが懸念される。この結果、従来技術と同様のオーブン内加熱ではフェノール樹脂発泡体が十分な硬度が得られなくなることが懸念される。このため、第1及び第2のオーブン内の滞留時間の合計を従来の炭化水素を用いた場合と比較して長くすることが好ましい。第1及び第2オーブン内の合計滞留時間としては、例えば、3分以上60分以下が好ましく、より好ましくは5分以上45分以下、特に好ましくは5分以上30分以下、最も好ましくは7分以上20分以下である。オーブン内の滞留時間が短すぎるとフェノール樹脂発泡体の未硬化の状態でオーブンから出てきてしまうため、寸法安定性が悪い粗悪なフェノール樹脂発泡体となる。オーブン内の滞留時間が長すぎると、フェノール樹脂発泡体の乾燥が進みすぎて含水率が低くなりすぎるため、オーブンから出た後に大気の湿気を多量に吸い込み、ボードが反ってしまう懸念があるため好ましくない。
【0068】
なお、本実施形態のフェノール樹脂発泡体を得るための発泡性フェノール樹脂組成物の発泡及び硬化方法は、上述の方法に限定されない。
【0069】
本発明のフェノール樹脂発泡体は、例えば、住宅建材用、工業用又は産業用の断熱材等として用いることができる。
【0070】
以上、本実施形態に係る製造方法によれば、環境負荷が少なく、圧縮強さが高く、且つ施工時のハンドリング性と固定時にかかるコストに優れるフェノール樹脂発泡体を提供することができる。
【実施例】
【0071】
以下実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例5は、参考例として記載するものである。
【0072】
(評価)
実施例及び比較例中のフェノール樹脂、フェノール樹脂発泡体について、以下の項目の測定及び評価を行った。
【0073】
(1)フェノール樹脂発泡体中の化合物α及び/又は炭化水素の種類同定
はじめに塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン、及びハロゲン化炭化水素の標準ガスを用いて、以下のGC/MS測定条件における保持時間を求めた。
実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板から面材を剥がし、フェノール樹脂発泡体試料約10gと金属製やすりとを10L容器(製品名「テドラーバック」)に入れて密封し、窒素5Lを注入した。テドラーバックの上からヤスリを用いて試料を削り、細かく粉砕した。続いて、試料をテドラーバックに入れたまま、81℃に温調された温調機内に10分間入れた。テドラーバック中で発生したガスを100μL採取し、以下に示す測定条件にて、GC/MS分析を行い、フェノール樹脂発泡体中の上記化合物α及び/又は上記炭化水素の種類を同定した。
塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素の有無を、GC/MSの分析結果より確認した。塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素の種類は、事前に求めた保持時間とマススペクトルから同定した。上記炭化水素については、保持時間とマススペクトルによって種類を求めた。別途、発生したガス成分の検出感度を各々標準ガスによって測定し、GC/MSで得られた各ガス成分の検出エリア面積と検出感度より、組成比を算出した。同定した各ガス成分の組成比とモル質量より各ガス成分の質量比を算出した。
(GC/MS測定条件)
ガスクロマトグラフィー:アジレント・テクノロジー社製「Agilent7890型」
カラム:ジーエルサイエンス社製「InertCap 5」(内径0.25mm、膜厚5μm、長さ30m)
キャリアガス:ヘリウム
流量:1.1ml/分
注入口の温度:150℃
注入方法:スプリット法(1:50)
試料の注入量:100μl
カラム温度:−60℃5分間保持、50℃/分で150℃まで昇温し、2.8分保持
質量分析:日本電子株式会社製「Q1000GC型」
イオン化方法:電子イオン化法(70eV)
スキャン範囲:m/Z=10〜500
電圧:−1300V
イオン源温度:230℃
インターフェース温度:150℃
【0074】
(2)発泡体密度
実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板から、20cm角のボードを切り出し、面材を取り除いて、フェノール樹脂発泡体の質量と見かけ容積を測定した。求めた質量及び見かけ容積を用いて、JIS K 7222に従い、密度(見かけ密度)を算出した。
【0075】
(3)独立気泡率
ASTM D 2856−94(1998)Aを参考に、以下の方法で測定した。
実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板中のフェノール樹脂発泡体の厚み方向中央部から、約25mm角の立方体試片を切り出した。厚みが薄く25mmの均質な厚みの試片が得られない場合は、切り出した約25mm角の立方体試片表面を約1mmずつスライスし均質な厚みを有する試片を用いた。各辺の長さをノギスにより測定し、見かけ体積(V1:cm3)を計測すると共に試片の質量(W:有効数字4桁,g)を測定した。引き続き、エアーピクノメーター(東京サイエンス社、商品名「MODEL1000」)を使用し、ASTM D 2856のA法に記載の方法に従い、試片の閉鎖空間体積(V2:cm3)を測定した。
また、上述の(3)平均セル径の測定法に従い平均セル径(t:cm)を計測すると共に、上記試片の各辺の長さより、試片の表面積(A:cm2)を計測した。
t及びAより、式VA=(A×t)/1.14により、試片表面の切断された気泡の開孔体積(VA:cm3)を算出した。また、固形フェノール樹脂の密度は1.3g/cm3とし、試片に含まれる気泡壁を構成する固体部分の体積(VS:cm3)を式VS=試片質量(W)/1.3により、算出した。
下記式(1)により独立気泡率を算出した。
独立気泡率(%)=〔(V2−VS)/(V1−VA−VS)〕×100 (1)
同一製造条件の発泡体サンプルについて6回測定し、その平均値を代表値とした。
【0076】
(4)10%圧縮強さ
実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板から、長さ100mm、幅100mmの試験片を切り出し、面材を取り除いて試験片を得た。得た試験片を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、24時間間隔で行う2回の秤量値の差が0.1%以下になるまで養生した。養生後の試験片をJIS K 7220に準拠して10%圧縮強さを求めた。
【0077】
(5)乾湿繰り返し3サイクル後の寸法変化量の絶対値
実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板から、長さ300mm、幅300mmの試験片を切り出し、面材を取り除いて試験片を得た。得た試験片を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に2週間放置した。その後、試験片の横(W)及び縦(L)方向の寸法を測定し試験開始時の寸法A0W、A0Lを得た。試験開始より12時間は試験片を温度50℃、相対湿度95%雰囲気化に放置し、試験開始より12時間後から24時間後までは試験片を温度50℃、相対湿度35%雰囲気下に放置した。試験開始から24時間後までを1サイクルとし、3サイクル終了するまで試験片を放置した。3サイクル終了は試験開始より72時間後である。3サイクル終了後、つまり試験開始より72時間後の試験片の横(W)及び縦(L)方向の寸法を測定しA72W、A72Lを得た。乾湿繰り返し3サイクル後の寸法変化量の絶対値は、下記式(2)、(3)のようにして算出した。乾湿繰り返し3サイクル後の寸法変化量の絶対値は縦、横方向の寸法変化量の絶対値いずれかの大きいものをいう。また、試験体の幅及び横方向とは製品の厚み方向に直交する方向をいう。
乾湿繰り返し3サイクル後の幅方向の寸法変化量の絶対値=|A72W−A0W| (2)
乾湿繰り返し3サイクル後の縦方向の寸法変化量の絶対値=|A72L−A0L| (3)
【0078】
(6)脆性
脆性はJIS A 9511(2003)5.1.4に準拠して、以下のようにして算出した。実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板から表面の面材をはがし、一つの面に面材をはがした面を含むように25±1.5mmの立方体状に切り出した試験片を12個作製し、質量を±1%の精度で測定した。試験装置は、箱の一面にドアを付け、ほこりが箱の外に出ないように密閉できる、内径が191×197×197mmの樫製の木箱の197mm面の中央部の外側にシャフトを取り付け、毎分60±2回転で回転できるものとした。乾燥した比重0.65、寸法19±0.8mmの樫製のさいころ24個を試験片と一緒に測定装置に入れて密閉した後、木箱を600±3回転させた。回転終了後、箱の中身を注意深くJIS Z 8801の網ふるい呼び寸法9.5mmの網に移し、ふるい分けをして小片を取り除き、網から残った試験片を採取し、質量を測定した。脆性は以下の式によって求めた。
脆性(%)=100×(m0−m1)/m0
(ここで、m0:試験前の試験片の質量(g)、m1:試験後の試験片の質量(g))
【0079】
(7)フェノール樹脂の重量平均分子量Mw
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により以下のような条件で測定を行い、後に示す標準物質(標準ポリスチレン、2−ヒドロキシベンジルアルコール及びフェノール)によって得られた検量線より実施例及び比較例で用いたフェノール樹脂の重量平均分子量Mwを求めた。
前処理:
フェノール樹脂約10mgをN,Nジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、高速液体クロマトグラフ用)1mlに溶解し、0.2μmメンブレンフィルターでろ過したものを測定溶液として用いた。
測定条件:
測定装置:Shodex System21(昭和電工株式会社製)
カラム:Shodex asahipak GF−310HQ(7.5mmI.D.×30cm)
溶離液:臭化リチウム0.1質量%をN,Nジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、高速液体クロマトグラフ用)に溶解し使用した。
流量:0.6ml/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
標準物質:標準ポリスチレン(昭和電工株式会社製「Shodex standard SL−105」)、2−ヒドロキシベンジルアルコール(シグマアルドリッチ社製、99%品)、フェノール(関東化学株式会社製、特級)
【0080】
(8)40℃におけるフェノール樹脂の粘度
フェノール樹脂0.5mlを量りとり、回転粘度計(東機産業株式会社製、R−100型、ローター部は3°×R−14)にセットした。測定するフェノール樹脂の粘度が、装置の測定上限粘度に対して50〜80%の範囲になるようにローターの回転数を設定した。測定温度を40℃とし、測定開始から3分間後の粘度の値を測定値とした。
【0081】
(9)粘度上昇速度定数
質量10gの実施例及び比較例で用いたフェノール樹脂に、キシレンスルホン酸70質量%及びジエチレングリコール30質量%の硬化触媒をフェノール樹脂に対して10質量%精秤して添加し、20℃で1分間よく混合する。
上記フェノール樹脂と硬化触媒の混合物0.5mlを回転粘度計(東機産業株式会社製、R−100型、ローター部は3°×R−14)にセットし、40℃での粘度を30秒間隔で測定する。測定の結果のX軸を粘度測定開始からの時間(分)、Y軸を粘度(mPa・s)の対数とした片対数プロットする。時間が4分から10分の間を直線とみなし、この「傾き(1/(分)」を求める。この「傾き」を「粘度上昇速度定数」とした。
【0082】
(10)tanδ
粘弾性測定装置(商品名「ARES」、TAインスツルメンツ社製)に、50mmφのアルミ製のパラレルプレート型治具を装着した。上下に設置された2つのパラレルプレートのうち、下側のパラレルプレートにフェノール樹脂を約2ml設置した。その後、パラレルプレートのギャップを0.5mmとしてパラレルプレートの周囲からはみ出した樹脂をスパチェラで掻き取った。続いて、パラレルプレートを囲うようにオーブンを設置した。温度を40℃、50℃、60℃に設定し、後に示す測定条件にてそれぞれの温度にてtanδの測定を行った。測定は設定温度に達した後、5分後の値を読み取りtanδの値とした。
測定は上記上下のパラレルプレートのギャップを0.5mm、歪み量を10%、周波数50Hzで測定を行った。また、測定温度の調整は上記オーブン内と下側のパラレルプレートの裏面に設置された熱電対のうち、下側のパラレルプレートの裏側に設置された熱電対が所定温度になるようにオーブン温度を調整した。
得られた40℃におけるtanδ、50℃におけるtanδ、60℃におけるδを、横軸を温度、縦軸をtanδとするグラフにプロットし、グラフを作成した。
【0083】
<フェノール樹脂Aの合成>
反応器に52質量%ホルムアルデヒド水溶液3500kgと99質量%フェノール2743kgを仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで50質量%水酸化ナトリウム水溶液を反応液のpHが8.7になるまで加えた。反応液を1.5時間かけて85℃まで昇温し、その後オストワルド粘度が73センチストークス(=73×10-62/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を400kg添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液を、pHが6.4になるまで添加した。得られた反応液を薄膜蒸発機によってフェノール樹脂中の水分率が7.4質量%となるまで濃縮処理した結果、40℃における粘度は22000mPa・sであった。
【0084】
表1に示す52質量%のホルムアルデヒド水溶液の仕込み量、99質量%フェノールの仕込み量、オストワルド粘度、尿素の添加量、薄膜蒸発機を用いてフェノール樹脂中の水分率を調整して40℃における粘度を変更した以外はフェノール樹脂Aと同様にしてフェノール樹脂B〜Lを得た。
【0085】
【表1】
【0086】
(実施例1)
フェノール樹脂A100質量部に対して、界面活性剤としてエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドのブロック共重合体及びポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルを質量比率でそれぞれ50質量%、50質量%で含有する混合物を2.0質量部の割合で混合した。上記界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して、表2に示す化合物Aを11質量部、硬化触媒としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%との混合物14質量部を添加し、25℃に温調したミキシングヘッドで混合し、発泡性フェノール樹脂組成物を得た。
得られた発泡性フェノール樹脂組成物を、移動する面材(下面材)上に供給した。面材上に供給した発泡性フェノール樹脂組成物は、面材と接触する面とは反対側の面が、他の面材(上面材)で被覆されると同時に、二枚の面材で挟み込まれるようにして、85℃に加熱されたスラット型ダブルコンベアを有する第1のオーブンに導入された。発泡性フェノール樹脂組成物は、15分の滞留時間で硬化させた後、110℃のオーブンで2時間キュアしてフェノール樹脂発泡体とし、面材上にフェノール樹脂発泡体が積層したフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
なお、上面材及び下面材はガラス繊維不織布(商品名「Dura Glass Type DH70(坪量70g/m2)」、ジョーンズマンビル社製)を使用した。
【0087】
【表2】
【0088】
(実施例2)
化合物Aの代わりに化合物Bを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Bを9質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0089】
(実施例3)
化合物Aの代わりに化合物Cを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Cを8.5質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0090】
(実施例4)
化合物Aの代わりに化合物Dを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Dを14質量部添加したこと、上面材及び下面材として、ポリエステル製不織布(商品名「スパンボンドE05030 坪量30g/m2」、旭化成せんい株式会社製)を使用したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0091】
(実施例5)
化合物Aの代わりに化合物Eを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Eを6質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0092】
(実施例6)
化合物Aの代わりに化合物Fを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Fを8質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0093】
(実施例7)
化合物Aの代わりに化合物Gを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Gを11質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0094】
(実施例8)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Bを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Aを11質量部添加したこと、上面材及び下面材として、ポリエステル製不織布(商品名「スパンボンドE05030 坪量30g/m2」、旭化成せんい株式会社製)を使用したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0095】
(実施例9)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Cを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Aを11質量部添加したこと、上面材及び下面材として、ポリエステル製不織布(商品名「スパンボンドE05030 坪量30g/m2」、旭化成せんい(株)製)を使用したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0096】
(実施例10)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Dを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Aを12質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0097】
(実施例11)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂D、化合物Aの代わりに化合物Fを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Fを6質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0098】
(実施例12)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Eを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Aを12質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0099】
(実施例13)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂E、化合物Aの代わりに化合物Dを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Dを15質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0100】
(実施例14)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂E、化合物Aの代わりに化合物Fを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Fを7質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0101】
(実施例15)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂E、化合物Aの代わりに化合物Gを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Gを12質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0102】
(実施例16)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂F、化合物Aの代わりに化合物Bを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Bを9質量部添加したこと、上面材及び下面材として、ポリエステル製不織布(商品名「スパンボンドE05030 坪量30g/m2」、旭化成せんい株式会社製)を使用したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0103】
(実施例17)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Gを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Aを13質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0104】
(実施例18)
化合物Aの代わりに化合物Hを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Hを7質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0105】
(実施例19)
化合物Aの代わりに化合物Iを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Iを11質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0106】
(実施例20)
化合物Aの代わりに化合物Jを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Jを11質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0107】
(実施例21)
化合物Aの代わりに化合物Kを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Kを11質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0108】
(実施例22)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂E、化合物Aの代わりに化合物Lを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Lを9質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0109】
(実施例23)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂E、化合物Aの代わりに化合物Mを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Mを9質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0110】
(実施例24)
化合物Aの代わりに化合物Nを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Nを10質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0111】
(実施例25)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Eを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して、化合物Aを10質量部添加したこと以外は実施例1と同様にして発泡性フェノール樹脂組成物を得た。この発泡性フェノール樹脂組成物を、面材によって内側が被覆された内寸縦1000mm、横1000mm、厚さ1000mmのアルミ製の型枠内に流し込み、密閉した。型枠の周囲及び上下面は発泡圧によって広がらないようにクランプによって固定した。85℃に加熱されたオーブン内に導入し、60分間硬化させた。その後、フェノール樹脂発泡体を型枠より取り出し、110℃のオーブンで5時間加熱してブロック状のフェノール樹脂発泡体を得た。使用した面材は実施例1と同じである。得られたブロック状のフェノール樹脂発泡体を厚み方向の中心部より厚さ50mmでスライスし、板状のフェノール樹脂発泡体を得た。
【0112】
(実施例26)
上面材及び下面材として、直径0.5mmの貫通孔を20mm間隔で事前穿孔したガス透過性を有する、ガラス繊維で補強されたアルミシートを使用したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0113】
(実施例27)
ヘキサメチルジシロキサンを界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して2質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0114】
(実施例28)
化合物Aの代わりに化合物Gを用い、ヘキサメチルジシロキサンを界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して2質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0115】
(実施例29)
化合物Aの代わりに化合物Iを用い、ヘキサメチルジシロキサンを界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して2質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0116】
(実施例30)
化合物Aの代わりに化合物Oを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Oを7質量部添加し、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して可塑剤としてフタル酸エステルを1質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0117】
(実施例31)
化合物Aの代わりに化合物Pを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Pを7質量部添加し、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して可塑剤としてフタル酸エステルを1質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0118】
(実施例32)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Dを用い、化合物Aの代わりに化合物Oを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Oを7質量部添加し、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して可塑剤としてフタル酸エステルを1質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0119】
(実施例33)
化合物Aの代わりに化合物Qを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Qを7質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0120】
(実施例34)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Eを用い、化合物Aの代わりに化合物Rを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Rを9質量部添加し、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して可塑剤としてフタル酸エステルを1質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0121】
(実施例35)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Fを用い、化合物Aの代わりに化合物Sを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Sを10質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0122】
(実施例36)
化合物Aの代わりに化合物Tを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Tを6質量部添加し、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して可塑剤としてフタル酸エステルを1質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0123】
(実施例37)
化合物Aの代わりに化合物Uを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Uを7質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0124】
(実施例38)
化合物Aの代わりに化合物Vを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Vを6質量部添加し、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して可塑剤としてフタル酸エステルを1質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0125】
(実施例39)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Bを用い、化合物Aの代わりに化合物Wを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Wを10質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0126】
(実施例40)
化合物Aの代わりに化合物Xを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Xを11質量部添加し、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して可塑剤としてフタル酸エステルを1質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0127】
(実施例41)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Fを用い、化合物Aの代わりに化合物Yを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Yを7質量部添加し、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して可塑剤としてフタル酸エステルを1質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0128】
(実施例42)
化合物Aの代わりに化合物Zを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Zを10質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0129】
(比較例1)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Hを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Aを11質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0130】
(比較例2)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Iを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Aを11質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0131】
(比較例3)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Jを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Aを11質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0132】
(比較例4)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂Kを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Aを10質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0133】
(比較例5)
フェノール樹脂としてフェノール樹脂L、化合物Aの代わりに化合物Bを用い、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して化合物Bを9質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0134】
上記実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体で使用した樹脂とその特性、化合物及び得られたフェノール樹脂発泡体の特性及び評価結果を表3、4及び5に示す。
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
実施例1〜32のフェノール樹脂発泡体は、圧縮に対する強度に優れる上、断熱材の重量が重くなりすぎず、ハンドリング性にも優れ、施工時の効率が向上した。また、フェノール樹脂発泡体を固定する際にもちいる部材や躯体が少なく、施工時のコスト面でも優れていた。
また、実施例1〜32のフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂発泡体が床面や平屋根に施工された建築物において、施工時やメンテナンス時に上を歩行する際に、表面がへこむ、または亀裂が入るといった問題も生じなかった。
一方、比較例1〜5のフェノール樹脂発泡体は、密度に対する圧縮強さが低く、圧縮に対する強度が不足していた。特に、比較例1、3〜5のフェノール樹脂発泡体は、独立気泡率が低く、熱伝導率も悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、環境への負荷が低く、圧縮強さが高く、且つ施工時のハンドリング性と固定時にかかるコストに優れるため、住宅用途の断熱材等に好適に用いることができる。