【実施例】
【0015】
実施例に係る空調ダクト10は、自動車等の車両に取り付けられ、エアコンユニットから送り出された調温空気を、インストルメントパネルなどの車両内装部材に設けられたベンチレータに案内するのに用いられる。
図1に示すように、実施例に係る空調ダクト10は、内部に空気を流通可能な空気流通路11が画成された筒状体であって、複数(実施例では2つ)の分割体12A,12Bを、その空気流通方向に沿う端縁部を互いに接合して構成されている。なお、実施例の空調ダクト10は、湾曲形成されており、空気流通路11が水平面に沿うと共に両端の開口10a,10aが横に向く横引き姿勢で、車両に取り付けられる。
【0016】
図3に示すように、前記空調ダクト10は、少なくとも車両への取り付け時に下側となる部位を含む分割体12Aが、発泡体からなる内層部16と不織布からなる外層部18とから構成した複層構造とされる。すなわち、実施例では、車両への取り付け時に空調ダクト10の下側半分を構成する第1分割体12Aが、内層部16と外層部18とからなる複層構造となっている。また、空調ダクト10において、車両への取り付け時に下側となる部位を含まない分割体12Bは、合成樹脂のソリッド体、発泡体、不織布などの単層またはこれらを重ね合わせた複層で構成することができる。実施例では、車両への取り付け時に空調ダクト10の上側半分を構成する第2分割体12Bが、第1分割体12Aと同様に、内層部16と外層部18とからなる複層構造となっている。すなわち、空調ダクト10は、車両への取り付け時に下側となる部位が少なくとも複層構造になっていればよく、実施例では、全ての分割体12A,12Bが複層構造とされ、空気流通路11全周が内層部16で画成されると共に、空調ダクト10の外面全体が外層部18で構成される。ここで、空調ダクト10における車両への取り付け時に下側となる部位とは、空調ダクト10の外面に生じる結露が流下する流下方向下流側に該当する部位を指し、空調ダクト10の横引き部分であれば底面および側面の下端部であり、空調ダクト10の縦引き部分であれば下端部である。
【0017】
次に、分割体12についてより具体的に説明する。実施例では全ての分割体12A,12Bの基本的な構成が同じなのでまとめて説明する。
図2に示すように、分割体12は、空調ダクト10の空気流通方向に溝が延びる略軒樋状に本体部分が形成されると共に、本体部分の空気流通方向に沿う端縁部の夫々に外側方へ延びるフランジ部14が形成されている。空調ダクト10は、両側のフランジ部14を互いに突き合わせて2つの分割体12A,12Bを筒状になるように組み合わせると共に、突き合わせたフランジ部14を接合して分割体12A,12Bを一体化している(
図1または
図3参照)。2つの分割体12A,12Bの接合は、反応系、溶液系、水分散系、ホットメルトなどの接着剤や、フランジ部14の接合面を構成する材料の自己融着等を用いることができ、実施例では、フランジ部14の接合面を構成する熱可塑性樹脂発泡体の自己融着によって接合される。
【0018】
図3に示すように、分割体12は、独立気泡構造の発泡体からなり、空気流通路11に臨む内層部16と、不織布からなり、内層部16の外側全体を覆って外方に臨む外層部18とから構成される。分割体12において、内層部16および外層部18は、反応系、溶液系、水分散系、ホットメルトなどの接着剤や、熱溶着や、一方が他方の構造中に入り込むことによる物理的なアンカー効果などによって、互いに接合される。なお、分割体12は、発泡体シート22と不織布シート24とを重ね合わせた積層シート20を熱成形することで、前記形状に形成される(
図4参照)。
【0019】
前記内層部16を構成する発泡体としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系等の熱可塑性樹脂フォームや、ポリウレタンフォームなどを用いることができる。また、内層部16は、独立気泡構造の発泡体で構成することで、空調ダクト10の内外方向での空気の流通を阻み得るようになっている。ここで、内層部16は、軟質発泡体が用いられて、気密のために空調ダクトに一般的に用いられる合成樹脂製のフィルムと異なり、弾力性を有している。更に、内層部16は、発泡体の気泡を完全に潰さない範囲で圧縮成形しても、発泡体を圧縮しないままの何れの状態であってもよい。
【0020】
前記外層部18は、不織布の繊維状態が残る程度に不織布シート24を加熱圧縮成形することで得られ、熱可塑性樹脂繊維の溶着により繊維の一部が結合すると共に、繊維間に外方に連通した空隙が残るように形成される。すなわち、外層部18は、例えばスパンボンド法などにより得られたウェブをニードルパンチ法などで結合した不織布シート24を熱成形することで、互いに結合・固化した一部の繊維と空隙とにより三次元網目状の骨格を有している。外層部18を構成する不織布としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂繊維を、少なくとも含むものが用いられる。不織布としては、全ての繊維を熱可塑性樹脂繊維で構成してもよく、熱可塑性樹脂繊維と熱硬化性樹脂繊維やその他の繊維(例えばガラス繊維)とを組み合わせたものであってもよい。また、融点が異なる2つの熱可塑性樹脂を含む不織布を用いて、融点が低い方の熱可塑性樹脂のみの溶着により外層部18を成形してもよい。ここで、融点が異なる2つの熱可塑性樹脂とは、例えばポリプロピレンとポリエチレンとの異種の組み合わせであっても、融点が異なる2つのポリエチレンテレフタレート等を組み合わせる同種であってもよい。実施例では、不織布を構成する繊維として、第1の熱可塑性樹脂からなる芯部と、第1の熱可塑性樹脂より融点が低い第2の熱可塑性樹脂からなり、芯部の外周を覆う鞘部とから構成された所謂芯鞘構造のものを用いている。そして、外層部18は、芯部を溶融させることなく、鞘部だけを溶着して結合させることで、鞘部同士が結合した結節点となって自由な動きを制限して、繊維状態を残しつつ外層部18(分割体12)の形状を保持し得るようになっている。
【0021】
このように、空調ダクト10は、内層部16によって気密構造とされると共に、この内層部16の外側全体を覆う外層部18での繊維の溶着によって、全体形状が保持されている。そして、空調ダクト10は、不織布の繊維状態を残した外層部18が、吸水性および保水性を有している。
【0022】
次に、実施例に係る空調ダクト10の製造方法について説明する。独立気泡構造の軟質発泡体からなる発泡体シート22を用意する。また、熱可塑性樹脂繊維を少なくとも含む不織布からなる不織布シート24を用意する。実施例の不織布シート24としては、前述した芯鞘構造の繊維からなる不織布が用いられ、融点が異なる2つの熱可塑性樹脂で構成されている。発泡体シート22と不織布シート24とを重ね合わせ、積層シート20とする。ここで、積層シート20は、不織布において融点が低い方である第2の熱可塑性樹脂の融点以下の加熱温度で接着可能なポリエチレン系などのホットメルト接着剤などによって、発泡体シート22と不織布シート24とが予め接合される。なお、発泡体シート22、不織布シート24および積層シート20は、夫々柔軟性を有しており、任意に曲げることができ、接着時や後述の工程において取り扱いが容易である。
【0023】
図4(a)に示すように、2枚の積層シート20,20を、その端を支持具(図示せず)で夫々保持して、発泡体シート22側を互いに対向させた平らな姿勢で間隔をあけて一対の支持具間に支持する。各積層シート20を、発泡体シート22側および不織布シート24側の両方からヒータ等の加熱手段Hによって、不織布において繊維の鞘部を構成する第2の熱可塑性樹脂の融点以上に加熱する。この加熱工程によって、各積層シート20における不織布シート24を構成する繊維の鞘部が溶融した状態または溶融直前の状態とされる一方、該繊維において第2の熱可塑性樹脂よりも融点が高い第1の熱可塑性樹脂からなる芯部の固体状態が保たれる。なお、加熱工程を行うことで、発泡体シート22も軟化し、積層シート20全体が軟化した状態になるが、発泡体シート22および不織布シート24を予め接合しておくことで、両シート22,24の間でのズレを防止できる。
【0024】
図4(b)に示すように、加熱工程で加熱された2枚の積層シート20,20を、一対の支持具で発泡体シート22側を向かい合わせて支持した状態のまま、成形型30にセットする。ここで、成形型30は、2枚の積層シート20,20における一対の支持具の内側で重ね合わせられた端縁部を挟持する。成形型30で加熱しつつ不織布シート24側から空気を吸引する真空成形を行うことで、成形型30で挟持された端縁部の内側で2枚の積層シート20,20が離間して、夫々の積層シート20の不織布シート24が成形型30の成形面に押し付けられて圧縮成形される。ここで、前記真空成形において、各積層シート20の不織布シート24は、前記加熱工程で溶融した繊維の外周をなす鞘部が溶着することで、繊維の一部が互いに結合される。一方、不織布シート24は、繊維の中央部をなす芯部が溶融せずに固体状態を保っているので、繊維同士が完全に混じり合うことを防止でき、一部の繊維の溶融・固化により骨格が形成されると共に繊維状態が残された外層部18が成形される。また、成形工程において、成形型30における2枚の積層シート20,20の間に、空気を圧入する圧空成形を行うことで、積層シート20の発泡体シート22が外方へ押されて、成形面で成形される不織布シート24に追従して圧縮成形され、内層部16が形成される。更に、2枚の積層シート20,20における成形型30に挟持された端縁部が、発泡体シート22,22同士が自己融着することで、各積層シート20から前述した略軒樋形状に賦形された分割体12が得られるのと同時に、2つの分割体12,12の端縁部が接合されて筒状体に組み合わせられる。そして、前記端縁部をトリミングすることで、空気流通路11に臨む内層部16が発泡体で構成されると共に、外方に臨む外層部18が、繊維間に外方に連通して吸水および保水可能な空隙を残した不織布で構成された筒状の空調ダクト10が得られる。なお、積層シート20は、通気性のない発泡体シート22を有しているので、真空成形および圧空成形が可能になっている。
【0025】
このように、実施例の空調ダクト10によれば、内層部16が独立気泡構造の発泡体で構成されているので断熱性が高く、また内層部16の外側全体を不織布からなる外層部18で覆っているので、全体として断熱性が非常に高く、発泡体だけからなるダクトと比べて外面に生じる結露を抑制することができる。そして、空調ダクト10は、外面に結露が発生したとしても、外面を構成する外層部18の空隙に結露を吸い取り、該空隙で保水し得るので、結露が空調ダクト10から滴下することを防止でき、空調ダクト10から滴下する結露による周辺機器の不具合を回避できる。また、空調ダクト10は、外層部18に保持された結露が蒸発する際に周りから熱を奪うので、温まり難くなる。空調ダクト10は、断熱性に優れているので、該空調ダクト10の入口と出口とで調温空気の温度差を小さくすることができ、空調効率を向上させることができる。
【0026】
前記空調ダクト10は、独立気泡構造の発泡体で構成された内層部16によって気密構造になっているので、空気流通路11を流通する調温空気の流量低下や圧力損失を抑えることができる。また、空調ダクト10は、独立気泡構造の発泡体で構成された内層部16による遮音と、三次元網目状になった外層部18による吸音とによって、優れた消音効果を発揮する。更に、空調ダクト10は、外層部18において結合した繊維によって強固な骨格が形成されているので、比較的柔軟な内層部16の剛性を補って、全体として形状保持し得る好適な剛性を確保できる。このように、空調ダクト10の全体を内層部16および外層部18からなる複層構造の分割体12で構成することで、前述した結露の滴下防止だけでなく、断熱性、剛性および消音性を高いレベルで合わせ持たせることができる。空調ダクト10は、融点が異なる2つの熱可塑性樹脂を含む不織布を熱成形して外層部18を形成することで、製造時の温度管理により簡単に繊維状態を残しつつ繊維の一部を結合させることができる。すなわち、外層部18に、形状保持し得る適度な剛性を有する骨格と、適切に結露を吸収・保持し得る空隙とを形成することができる。
【0027】
前記空調ダクト10の製造方法によれば、2つの分割体12,12の成形と、これらの分割体12,12の接合とを同じ工程で行うことができるので、空調ダクト10を効率よく製造することができる。しかも、成形工程において、圧空成形を行うことで、分割体12を発泡体シート22側から成形面に向けて押して、空気流通路11に臨む内層部16の内面を整えることができると共に、外層部18をよりきれいに成形することができる。また、積層シート20は、発泡体シート22と不織布シート24とを予め接合してあるので、積層シート20全体を軟化させて型成形しても、外側と内側との伸び率の差による発泡体シート22と不織布シート24とのズレを防止できる。すなわち、内層部16と外層部18とが破断することなく、前述した略軒樋形状などの任意形状に分割体12を成形し得る。また、外層部18は、不織布から構成されるので、熱成形時に溶着しない繊維間および熱成形時に溶融状態の繊維間で相対的なズレが許容されるので、シワができ難い。
【0028】
(実験)
実施例1〜4に係る空調ダクトおよび比較例1〜3に係る空調ダクトの夫々について、騒音、結露および調温空気の温度損失に関して評価を行った。なお、実施例1〜4および比較例1〜3の空調ダクトは、形状および大きさが同じに形成されている。
(1)実施例1の空調ダクトは、厚さ5mmの30倍発泡のポリエチレンフォーム(軟化点100℃)と、厚さ5mmの不織布(目付量100g/m
2)とを、ポリエチレン接着剤(融点135℃)で接合した積層シートを、前述した製造方法と同様に成形することで、厚さ1.5mmの内層部と厚さ1.5mmの外層部とを形成したものである。実施例1の不織布は、融点250℃のポリエチレンテレフタレートからなる芯部と、融点150℃のポリエチレンテレフタレートからなる鞘部を備えた芯鞘構造の繊維から構成される。なお、厚さ0.2mmのポリプロピレンからなるスキン層が内層部の内周面に接合されている。
(2)実施例2の空調ダクトは、厚さ5mmの30倍発泡のポリエチレンフォーム(軟化点100℃)と、厚さ5mmの不織布(目付量100g/m
2)とを、ポリエチレン接着剤(融点135℃)で接合した積層シートを、前述した製造方法と同様に成形することで、厚さ1.5mmの内層部と厚さ1.5mmの外層部とを形成したものである。実施例2の不織布は、融点250℃のポリエチレンテレフタレートからなる芯部および融点150℃のポリエチレンテレフタレートからなる鞘部を備えた芯鞘構造の繊維と、ガラス繊維とから構成される。なお、厚さ0.2mmのポリプロピレンからなるスキン層が内層部の内周面に接合されている。
(3)実施例3の空調ダクトは、厚さ5mmの30倍発泡のポリエチレンフォーム(軟化点100℃)と、厚さ5mmの不織布(目付量500g/m
2)とを、ポリエチレン接着剤(融点135℃)で接合した積層シートを、前述した製造方法と同様に成形することで、厚さ1.5mmの内層部と厚さ1.5mmの外層部とを形成したものである。実施例3の不織布は、融点250℃のポリエチレンテレフタレートからなる芯部および融点150℃のポリエチレンテレフタレートからなる鞘部を備えた芯鞘構造の繊維から構成される。
(4)実施例4の空調ダクトは、厚さ5mmの30倍発泡のポリエチレンフォーム(軟化点100℃)と、厚さ5mmの不織布(目付量500g/m
2)とを、ポリエチレン接着剤(融点135℃)で接合した積層シートを、前述した製造方法と同様に成形することで、厚さ1.5mmの内層部と厚さ1.5mmの外層部とを形成したものである。実施例4の不織布は、融点250℃のポリエチレンテレフタレートからなる第1の繊維と、実施例3と同じ芯鞘構造の第2の繊維とを混合したものである。なお、実施例4の不織布は、第1の繊維が75重量%で、第2の繊維が25重量%の割合で混合されている。
(5)比較例1の空調ダクトは、厚さ1.1mmの高密度ポリエチレン(HDPE)のソリッド体である。
(6)比較例2の空調ダクトは、厚さ0.6mmの高密度ポリエチレン(HDPE)のソリッド体の外周に、厚さ3mmのポリウレタンフォームを巻き付けたものである。
(7)比較例3の空調ダクトは、厚さ5mmの25倍発泡のポリプロピレンフォームを2.5mmに圧縮成形して構成され、厚さ0.2mmのポリプロピレンからなるスキン層が内周面に接合されている。
【0029】
騒音は、空調ダクトの一方の開口に設置したスピーカーによりホワイトノイズを流し、空調ダクトの他方の開口に設置したマイクにより騒音を測定した。結露は、40℃、湿度80%に設定された恒温槽内に設置した空調ダクトに対して5℃以下の調温空気を1時間流し、空調ダクトの下に設置した受け皿に滴下した結露の量を測定した。調温空気の温度損失は、結露試験と同じ環境で、空調ダクトの入口での調温空気温度と出口での調温空気温度とを、1分毎に測定し、測定温度平均値の差を評価した。これらの試験の結果を以下の表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
前記実験の結果から判るように、実施例1〜4に係る空調ダクトは、結露の滴下を防止し得ることが確認できる。また、実施例1〜4に係る空調ダクトは、騒音および調温空気の温度損失の各指標が、比較例と同等または比較例より改善されることも確認できる。
【0032】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、例えば以下のように変更することができる。
(1)実施例では、2つの分割体で空調ダクトを構成したが、3つ以上の分割体で空調ダクトを構成してもよい。
(2)不織布としては、第1の熱可塑性樹脂からなる第1の繊維と、第1の熱可塑性樹脂よりも融点が低い第2の熱可塑性樹脂からなる第2の繊維とが混合されたものを用いてもよい。この場合は、相対的に融点が低い第2の熱可塑性樹脂の融点以上で、かつ相対的に融点が高い第1の熱可塑性樹脂の融点未満に不織布を加熱して、第2の熱可塑性樹脂からなる第2の繊維を溶着することで、外層部を成形するとよい。このような変更例の不織布によれば、実験の実施例3で採用した不織布と比べて得られる外層部の繊維同士の溶着点を少なくできるので、該実施例3と比べて変更例の空調ダクトの吸音性および断熱性を向上させることができる。