特許第6208424号(P6208424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208424フッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体、それを含む有機EL材料及びそれを用いた有機EL素子
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  • 特許6208424-フッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体、それを含む有機EL材料及びそれを用いた有機EL素子 図000082
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208424
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】フッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体、それを含む有機EL材料及びそれを用いた有機EL素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/86 20060101AFI20170925BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170925BHJP
   C07D 409/04 20060101ALI20170925BHJP
   C07D 403/10 20060101ALI20170925BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20170925BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20170925BHJP
   C07D 401/10 20060101ALI20170925BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C07D209/86CSP
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
   C07D409/04
   C07D403/10
   C07D403/04
   C07D401/04
   C07D401/10
   C09K11/06 690
【請求項の数】11
【全頁数】77
(21)【出願番号】特願2012-266795(P2012-266795)
(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公開番号】特開2014-111556(P2014-111556A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2015年11月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮田 康生
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/091471(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/043996(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/011756(WO,A1)
【文献】 特開2012−019172(JP,A)
【文献】 特開2011−187959(JP,A)
【文献】 特開2010−053131(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0217492(US,A1)
【文献】 特開2010−031012(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0032656(US,A1)
【文献】 特開2009−185030(JP,A)
【文献】 特開2013−251480(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0169755(US,A1)
【文献】 特開2008−120786(JP,A)
【文献】 特開2008−044923(JP,A)
【文献】 特開2007−318101(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/063986(WO,A1)
【文献】 特開2005−290000(JP,A)
【文献】 特開2006−273791(JP,A)
【文献】 特開2004−115443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09K
H05B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
[式(1)中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立的に置換もしくは無置換のアリール基又は置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、Ar1及びAr2は、それぞれ縮合環を含む基ではなく、Lは、置換もしくは無置換のアリーレン基又は置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基であり、R1及びR2は、それぞれ独立的に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、aは0≦a≦3を満たす整数であり、Ar1及びAr2のうち少なくとも一方は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されており、Ar1及び/又はAr2が置換されている場合、Ar1及び/又はAr2の置換基は、縮合環を含む基ではない。]
で表されるフッ素置換されたアリール基を有するモノアミン誘導体。
【請求項2】
下記式(2)又は下記式(3)で表される請求項1に記載のフッ素置換されたアリール基を有するモノアミン誘導体。
【化2】
【化3】
【請求項3】
前記Ar1及びAr2は、それぞれ独立的に炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基であり、前記Lは、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリーレン基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフッ素置換されたアリール基を有するモノアミン誘導体。
【請求項4】
前記Ar1及びAr2は、それぞれ独立的に置換もしくは無置換のフェニル基又はビフェニル基であり、前記Lは、フェニレン基又はビフェニリレン基であることを特徴とする請求項3に記載のフッ素置換されたアリール基を有するモノアミン誘導体。
【請求項5】
前記R1及びR2は、それぞれ独立的に水素原子、又は置換もしくは無置換のアリール基であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のフッ素置換されたアリール基を有するモノアミン誘導体。
【請求項6】
前記Ar1及びAr2は、それぞれ独立的に置換もしくは無置換のビフェニル基であり、前記Lは、置換もしくは無置換のフェニレン基であり、前記R1は、水素原子であり、前記R2は、置換もしくは無置換のアリール基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフッ素置換されたアリール基を有するモノアミン誘導体。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のフッ素置換されたアリール基を有するモノアミン誘導体を含有する有機EL材料。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のフッ素置換されたアリール基を有するモノアミン誘導体を含有する正孔輸送材料。
【請求項9】
陰極と陽極との間に少なくとも発光層及び正孔輸送層が挟持されている有機EL素子において、該正孔輸送層が、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のフッ素置換されたアリール基を有するモノアミン誘導体を成分として含有する有機EL素子。
【請求項10】
前記R1は、水素原子、無置換のアルキル基、無置換のアルコキシ基、無置換のアリール基、又は無置換のヘテロアリール基であり、前記aは、1≦a≦3を満たす整数であり、前記Lは、無置換のフェニレン基又は無置換のビフェニレン基であり、前記Ar1及びAr2は、それぞれ独立的に置換もしくは無置換のフェニル基又は置換もしくは無置換のビフェニル基であることを特徴とする、請求項1に記載のフッ素置換されたアリール基を有するモノアミン誘導体。
【請求項11】
前記一般式(1)で表わされる化合物は、以下の構造式により示された物質であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素置換されたアリール基を有するモノアミン誘導体。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体、それを含む有機EL材料及びそれを用いた有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(Organic Electroluminescence Display:有機EL表示装置)の開発が盛んになってきている。有機EL表示装置は、液晶表示装置等とは異なり、陽極及び陰極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることにより、発光層における有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型の表示装置である。
【0003】
発光素子(以下、有機EL素子という)としては、例えば、陽極、陽極上に配置された正孔輸送層、正孔輸送層上に配置された発光層、発光層上に配置された電子輸送層及び電子輸送層上に配置された陰極から構成された有機EL素子が知られている。陽極からは正孔が注入され、注入された正孔は正孔輸送層を移動して発光層に注入される。一方、陰極からは電子が注入され、注入された電子は電子輸送層を移動して発光層に注入される。発光層に注入された正孔と電子とが再結合することにより、発光層内で励起子が生成される。有機EL素子は、その励起子の輻射失活によって発生する光を利用して発光する。尚、有機EL素子は、以上に述べた構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0004】
有機EL素子を表示装置に応用するにあたり、有機EL素子の高効率化及び長寿命化が求められており、有機EL素子の高効率化及び長寿命化を実現するために、有機EL素子を構成する各層の定常化、安定化、耐久化などが検討されている。
【0005】
有機EL素子の各層に用いられる材料としては、芳香族アミン系化合物等の様々な化合物などが知られている。例えば、特許文献1では、カルバゾール誘導体が正孔輸送材料又は正孔注入材料として提案されている。また、特許文献2では、ターフェニル基を有するアミン化合物が正孔輸送材料及び発光層のホスト材料として提案されており、特許文献3では、フルオレニル基を有するアミン化合物が正孔輸送材料又は正孔注入材料として提案されている。しかしながら、これらの材料を用いた有機EL素子も充分な発光寿命を有しているとは言い難く、現在では一層、高効率で低電圧駆動が可能であり、発光寿命の長い有機EL素子が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0231503号明細書
【特許文献2】国際公開第2012/091471号
【特許文献3】国際公開第2010/110553号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の課題を鑑み、有機EL素子の長寿命化を実現する有機EL材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によるフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体は、下記式(1)で表される。
【化1】

[式(1)中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立的に置換もしくは無置換のアリール基又は置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、Lは、置換もしくは無置換のアリーレン基又は置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基であり、R1及びR2は、それぞれ独立的に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、aは0≦a≦3を満たす整数であり、Ar1及びAr2のうち少なくとも一方は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている。]
【0009】
前記フッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体は、下記式(2)又は(3)で表される化合物であってもよい。
【化2】

【化3】
【0010】
式(1)〜式(3)におけるAr1及びAr2は、それぞれ独立的に炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基であり、Lは、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリーレン基であってもよい。
【0011】
式(1)〜式(3)におけるAr1及びAr2は、それぞれ独立的に置換もしくは無置換のフェニル基又はビフェニル基であり、Lは、フェニレン基又はビフェニリレン基であってもよい。
【0012】
式(1)〜式(3)におけるR1及びR2は、それぞれ独立的に水素原子、又は置換もしくは無置換のアリール基であってもよい。
【0013】
式(1)〜式(3)におけるAr1及びAr2は、それぞれ独立的に置換もしくは無置換のビフェニル基であり、Lは、置換もしくは無置換のフェニレン基であり、R1は、水素原子であり、R2は、置換もしくは無置換のアリール基であってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態による有機EL材料は、下記式(1)で表されるフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体を含む。
【化4】

[式(1)中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立的に置換もしくは無置換のアリール基又は置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、Lは、置換もしくは無置換のアリーレン基又は置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基であり、R1及びR2は、それぞれ独立的に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、aは0≦a≦3を満たす整数であり、Ar1及びAr2のうち少なくとも一方は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている。]
【0015】
前記有機EL材料によれば、有機EL素子の長寿命化を実現することができる。
【0016】
前記有機EL材料は、下記式(2)又は(3)で表されるフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体を含んでいてもよい。
【化5】

【化6】
【0017】
前記有機EL材料によれば、有機EL素子の長寿命化を実現することができる。
【0018】
式(1)〜式(3)におけるAr1及びAr2は、それぞれ独立的に炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基であり、Lは、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリーレン基であってもよい。
【0019】
前記有機EL材料によれば、有機EL素子の長寿命化を実現することができる。
【0020】
式(1)〜式(3)におけるAr1及びAr2は、それぞれ独立的に置換もしくは無置換のフェニル基又はビフェニル基であり、Lは、フェニレン基又はビフェニリレン基であってもよい。
【0021】
前記有機EL材料によれば、有機EL素子の長寿命化を実現することができる。
【0022】
式(1)〜式(3)におけるR1及びR2は、それぞれ独立的に水素原子、又は置換もしくは無置換のアリール基であってもよい。
【0023】
前記有機EL材料によれば、有機EL素子の長寿命化を実現することができる。
【0024】
式(1)〜式(3)におけるAr1及びAr2は、それぞれ独立的に置換もしくは無置換のビフェニル基であり、Lは、置換もしくは無置換のフェニレン基であり、R1は、水素原子であり、R2は、置換もしくは無置換のアリール基であってもよい。
【0025】
前記有機EL材料によれば、有機EL素子の長寿命化を実現することができる。
【0026】
前記有機EL材料は、有機EL素子の正孔輸送材料として用いられてもよい。
【0027】
前記有機EL材料によれば、有機EL素子の長寿命化を実現することができる。
【0028】
本発明の一実施形態による有機EL素子は、前記本発明の一実施形態によるフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体を含有してもよい。
【0029】
前記有機EL素子は、陰極、陽極、前記陰極と前記陽極との間に配置された発光層及び正孔輸送層を含み、該正孔輸送層が、前記本発明の一実施形態によるフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体を成分として含有していてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、有機EL素子の長寿命化を実現する有機EL材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】有機EL素子の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本願発明者は、上述の課題を検討した結果、電子耐性を有する化合物として、以下に述べるフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体を想到し、有機EL素子における正孔輸送層の材料として、フッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体を用いることにより有機EL素子の長寿命化を達成できることを確認した。以下、本願発明者が想到したフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体について説明する。但し、本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体、それを含む有機EL材料及びそれを用いた有機EL素子は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0033】
本発明に係るフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体は、以下の構造式(1)で表される。
【化7】
【0034】
構造式(1)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立的に置換もしくは無置換のアリール基又は置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。Lは、置換もしくは無置換のアリーレン基又は置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基であり、R1及びR2は、それぞれ独立的に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。aは0≦a≦3を満たす整数である。また、構造式(1)におけるAr1及びAr2のうち少なくとも一方は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている。Ar1及びAr2に置換されるフッ素の数は、有機EL素子において、構造式(1)で表されるフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体を含む層に隣接する層の材料に応じて、適宜設定することができる。
【0035】
Ar1及びAr2は、それぞれ独立的に炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基又は炭素数4〜20の置換もしくは無置換のヘテロアリール基であってもよく、Ar1及びAr2のアリール基又はヘテロアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、トリフェニレン基、ビフェニレン基、ピレニル基、ベンゾチアゾリル基、チオフェニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、キノリニル基、キノキサリル基などが挙げられる。Ar1及びAr2のアリール基としては、フェニル基及びビフェニル基が好ましく、特に、ビフェニル基が好ましい。ここで、上述したように、Ar1及びAr2のアリール基のうち、少なくとも一方は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている。
【0036】
Lは、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリーレン基又は炭素数4〜20の置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基であってもよく、Lのアリール基又はヘテロアリール基としては、上述したAr1及びAr2のアリール基又はヘテロアリール基として挙げたものと同様のものが挙げられる。Lのアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0037】
R1及びR2の置換もしくは無置換のアルキル基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基であってもよく、以下に限定されるわけではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
【0038】
また、R1及びR2の置換もしくは無置換のアルコキシ基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基であってもよく、以下に限定されるわけではないが、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基などが挙げられる。
【0039】
また、R1及びR2の置換もしくは無置換のアリール基又は置換もしくは無置換のヘテロアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数4〜20のヘテロアリール基であってもよく、上述したAr1及びAr2のアリール基又はヘテロアリール基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0040】
Ar1及びAr2のアリール基又はヘテロアリール基に置換される置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はヘテロアリール基であってもよい。ここで、アルキル基としては、R1及びR2のアルキル基として挙げたものであってもよく、アルコキシ基としては、R1及びR2のアルコキシ基として挙げたものであってもよく、アリール基又はヘテロアリール基としては、Ar1及びAr2のアリール基又はヘテロアリール基として挙げたものであってもよい。
【0041】
Lのアリーレン基又はヘテロアリーレン基に置換される置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はヘテロアリール基であってもよい。ここで、アルキル基としては、R1及びR2のアルキル基として挙げたものであってもよく、アルコキシ基としては、R1及びR2のアルコキシ基として挙げたものであってもよく、アリール基又はヘテロアリール基としては、Ar1及びAr2のアリール基又はヘテロアリール基として挙げたものであってもよい。
【0042】
R1及びR2のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基に置換される置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はヘテロアリール基であってもよい。ここで、アルキル基としては、R1及びR2のアルキル基として挙げたものであってもよく、アルコキシ基としては、R1及びR2のアルコキシ基として挙げたものであってもよく、アリール基又はヘテロアリール基としては、Ar1及びAr2のアリール基又はヘテロアリール基として挙げたものであってもよい。
【0043】
本発明に係る構造式(1)で表されるフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体において、以下の構造式(2)及び(3)に示すように、L又はアミン部位は、カルバゾール部位の2位又は3位の位置に置換されることが好ましい。
【化8】

【化9】
【0044】
本発明に係るフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体は、正孔輸送性を示すカルバゾール部位を有するアミン誘導体に電子受容性の置換基であるフッ素置換されたアリール基を導入することにより、アミン誘導体のLUMO準位を低くすることが可能となり、電子耐性を向上させることができる。
【0045】
上述したように、有機EL素子は、発光層に注入された正孔と電子とが再結合することにより発光する。発光の際、発光層と正孔輸送層との界面近傍においても正孔と電子との再結合が起こるが、このとき、正孔と結合できなかった電子が正孔輸送層に侵入し、電子が正孔輸送材料に損傷を与えることにより引き起こされる正孔輸送層の劣化が有機EL素子の劣化を速める一因となっていた。上述したように、本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体は、正孔輸送性を示すカルバゾール部位を有し、且つ電子受容性の置換基であるフッ素置換されたアリール基を有するため高耐電子性を有している。そのため、本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体を有機EL素子の正孔輸送材料として用いることにより、正孔輸送層に侵入した電子が原因となる正孔輸送材料の劣化を抑制することができ、有機EL素子の長寿命化に寄与する。
【0046】
構造式(1)におけるAr1及びAr2の置換基の一例とR1及びR2を含むカルバゾール部位の一例とを以下の表1に示す。本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体は、表1の横一行に示す置換基を構造式(1)のAr1、Ar2及びカルバゾール部位に導入した化合物であってもよい。但し、構造式(1)におけるAr1及びAr2の置換基とR1及びR2を含むカルバゾール部位とは、表1に示したAr1、Ar2の置換基及びカルバゾール部位に限定されるわけではない。また、表1におけるAr1、Ar2及びカルバゾール部位の置換基の組み合わせは、表1の横一行の組み合わせに限定されるわけではなく、Ar1及びAr2のアリール基のうち、少なくとも一方が少なくとも1つのフッ素原子で置換されていれば、いかなる組み合わせであってもよい。
【表1】
【0047】
構造式(1)のR1及びR2を含むカルバゾール部位としては、R1が水素原子であり、且つR2がフェニル基である9−フェニルカルバゾリル基が好ましい。また、構造式(1)のAr1又はAr2におけるフッ素の置換位置は、特に限定されるわけではないが、少なくともAr1又はAr2と窒素原子との結合位置に対してpara位に置換されていることが好ましい。
【0048】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【化64】
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【化69】
【化70】
【0049】
本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体としては、好ましくは、上述した化合物3、8、13、14、15、16、17、20、25、26、27、29、30、31、32、36、39、40、41、42、46、49、50、66、69、70、101、102、109、110、113、117、118、119,120、121、122、123、124、125、126、133、134、137、138、139、140、141、143、144、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、160、161、162、163、164、167、171、172、及び173が挙げられ、さらに好ましくは、化合物3、13、14、15、16、17、20、30、50、121、122、141、147、151、152、153、154、161、162、171、172、及び173が挙げられる。
【0050】
上述したように、本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体は、以上に挙げた化合物に限定されるわけではない。また、本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体は、正孔輸送性を示すカルバゾール部位と高耐電子性を示すフッ素置換されたアリール基とを有するため、有機EL素子の正孔輸送材料として好ましいが、これに限定されない。例えば、以下に示す電子輸送性を示す置換基を構造式(1)のR2に導入することによって、有機EL素子の発光層中のホスト材料として用いてもよい。
【化47】
【0051】
以上では、本発明のアリール基を有するアミン誘導体を有機EL素子の有機EL材料として好適に用いられることを説明したが、本発明のアリール基を有するアミン誘導体の用途は、有機EL材料又は有機EL素子に限定されず、その他の有機エレクトロニクス材料又は有機エレクトロニクス素子に利用されてもよい。
【0052】
本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体について、上述の化合物14、16、143、及び147の合成法を以下に述べる。但し、以下に述べる合成法は一例であって、これに限定されるわけではない。
【0053】
(化合物14の合成)
【化48】
【0054】
反応容器に化合物A(1.00g, 2.06mmol)、化合物B(0.67g, 2.06mmol)、Pd(dba)・CHCl(0.22g, 0.21mmol)、トルエン(20mL)加えた。次に、トリ(t−ブチル)ホスフィン(0.54mL, 0.84mmol、 1.56M)、ナトリウムt−ブトキシド(0.50g, 5.15mmol)を加え、容器内を窒素置換し、その後還流下で8時間撹拌した。放冷後、反応溶液に水を加えて有機層の抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後に、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン)により精製し、得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物である化合物14の白色粉末状固体を0.75g、収率50%で得た(FAB−MS:C48H29F5N2,測定値728)。
【0055】
(化合物16の合成)
【化49】
【0056】
反応容器に化合物C(1.00g, 2.06mmol)、化合物D(1.03g, 4.12mmol)、Pd(dba)・CHCl(0.44g, 0.42mmol)、トルエン(30mL)加えた。次に、トリ(t−ブチル)ホスフィン(1.08mL, 1.68mmol、 1.56M)、ナトリウムt−ブトキシド(0.50g, 5.15mmol)を加え、容器内を窒素置換し、その後還流下で8時間撹拌した。放冷後、反応溶液に水を加えて有機層の抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後に、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン)により精製し、得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物である化合物16の白色粉末状固体を0.83g、収率60%で得た(FAB−MS:C48H32F2N2,測定値674)。
【0057】
(化合物143の合成)
【化50】
【0058】
反応容器に化合物E(0.90g, 1.80mmol)、化合物D(0.45g, 1.80mmol)、Pd(dba)・CHCl(0.26g, 0.18mmol)、トルエン(20mL)加えた。次に、トリ(t−ブチル)ホスフィン(0.46mL, 0.72mmol、 1.56M)、ナトリウムt−ブトキシド(0.43g, 4.50mmol)を加え、容器内を窒素置換し、その後還流下で8時間撹拌した。放冷後、反応溶液に水を加えて有機層の抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後に、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン)により精製し、得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物である化合物143の白色粉末状固体を0.66g、収率55%で得た(FAB−MS:C48H31FN2O,測定値670)。
【0059】
(化合物147の合成)
【化51】
【0060】
反応容器に化合物F(1.20g, 2.14mmol)、化合物B(0.70g, 2.14mmol)、Pd(dba)・CHCl(0.22g, 0.21mmol)、トルエン(20mL)加えた。次に、トリ(t−ブチル)ホスフィン(0.54mL, 0.84mmol、 1.56M)、ナトリウムt−ブトキシド(0.51g, 5.35mmol)を加え、容器内を窒素置換し、その後還流下で8時間撹拌した。放冷後、反応溶液に水を加えて有機層の抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後に、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン)により精製し、得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物である化合物147の白色粉末状固体を0.77g、収率45%で得た(FAB−MS:C48H29F5N2,測定値802)。
【0061】
実施例
本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体を正孔輸送材料に用いた有機EL素子の発光寿命(T50%)を測定した。有機EL素子の正孔輸送材料として、上述の化合物14、16、143及び147を使用した。また、比較化合物として以下の構造式で表せる比較化合物1及び比較化合物2を有機EL素子の正孔輸送材料として使用した。また、ここでは、化合物14を正孔輸送材料に用いた有機EL素子を実施例1、化合物16を正孔輸送材料に用いた有機EL素子を実施例2、化合物143を正孔輸送材料に用いた有機EL素子を実施例3、化合物147を正孔輸送材料に用いた有機EL素子を実施例4、比較化合物1を正孔輸送材料に用いた有機EL素子を比較例1、比較化合物2を正孔輸送材料に用いた有機EL素子を比較例2とする。
【化52】
【0062】
測定に使用した有機EL素子の構成を図1に示す。図1に示す有機EL素子100は、ガラス基板102、ガラス基板102上に配置され、ITOからなる陽極104、前記陽極104上に配置され、2-TNATAを含む正孔注入層106、前記正孔注入層106上に配置され、本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体である化合物14、16、143、147、比較化合物1及び比較化合物2のいずれかを含む正孔輸送層108、前記正孔輸送層108上に配置され、ADNを含むホスト材料にTBPを3%ドープした発光層110、前記発光層110上に配置され、Alq3を含む電子輸送層112、前記電子輸送層112上に配置され、LiFを含む電子注入層114、及び前記電子注入層114上に配置され、Alからなる陰極116を含む。陽極104の膜厚は150nm、正孔注入層106の膜厚は60nm、正孔輸送層108の膜厚は30nm、発光層110の膜厚は25nm、電子輸送層112の膜厚は25nm、電子注入層114の膜厚は1nm、陰極116の膜厚は100nmとした。
【0063】
陽極104及び陰極116を通じて、有機EL素子100に電源から電流を流して、正孔輸送層108の材料に化合物14、化合物16、化合物143、化合物147、比較化合物1又は比較化合物2を使用した場合における有機EL素子100の発光寿命(T50%)の測定結果を以下の表2に示す。発光寿命は1000cd/m2で測定した。
【表2】
【0064】
表1に示す通り、本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体を正孔輸送材料として用いた有機EL素子は、比較化合物1及び比較化合物2を正孔輸送材料として使用した有機EL素子に比べ、長い寿命を示した。
【0065】
以上の実施例においては、本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体をパッシブ型の有機EL素子の有機EL材料として使用した例を説明したが、これに限定されない。フッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体は、アクティブ型の有機EL素子の有機EL材料として使用することも可能であり、アクティブ型の有機EL素子の長寿命化を実現することができる。
【0066】
以上に説明したように、本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体を正孔輸送材料として用いることにより、有機EL素子の長寿命化を実現することができる。また、本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体は、上述した化合物に限定されず、種々の変形が可能である。また、本発明のアリール基を有するアミン誘導体の用途は、有機EL材料及び有機EL素子に限定されず、その他の有機エレクトロニクス材料又は有機エレクトロニクス素子に利用されてもよい。
【0067】
本発明のフッ素置換されたアリール基を有するアミン誘導体を有機EL材料として用いた有機EL素子は、有機EL表示装置や照明装置などに使用することができる。
【符号の説明】
【0068】
100 有機EL素子
102 ガラス基板
104 陽極
106 正孔注入層
108 正孔輸送層
110 発光層
112 電子輸送層
114 電子注入層
116 陰極
図1