特許第6208441号(P6208441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208441シールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208441
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】シールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20170925BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   E21D9/12 D
   E21D9/06 301Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-43677(P2013-43677)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-173228(P2014-173228A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】松尾 琢夫
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 靖
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−038499(JP,A)
【文献】 特開平07−208072(JP,A)
【文献】 特開2002−220993(JP,A)
【文献】 実開昭60−162196(JP,U)
【文献】 特開2012−161768(JP,A)
【文献】 特開2006−316599(JP,A)
【文献】 特開昭57−201495(JP,A)
【文献】 特開昭57−029792(JP,A)
【文献】 特開昭56−135697(JP,A)
【文献】 特開平07−102899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/12
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドマシンで掘削した有害ガスを含む掘削土を坑外に排出するための装置であって、
切羽からの掘削土を排出するスクリューコンベアの後端部に、掘削土排出経路が密閉状態となるように接続した掘削土圧送ポンプと、
前記掘削土圧送ポンプと密閉状態に接続され、掘削土を坑外に搬送する掘削土圧送パイプと、を備え、
有害ガスの進入経路であるシールドマシンのテール部の後端部、シールドジャッキの後端部とセグメントとの間、隣り合うセグメントの間のそれぞれに密閉材を介在させることを特徴とするシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置。
【請求項2】
前記掘削土圧送ポンプと前記スクリューコンベアの後方端部との間に、礫等を破砕するための破砕装置を、掘削土排出経路が密閉状態となるように設けたことを特徴とする請求項に記載のシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置。
【請求項3】
坑外に導出された前記掘削土圧送パイプの後端部に、搬送されてきた掘削土中に含まれる有害ガスを分離して貯留するためのガス分離装置を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置に関するものであり、例えば、泥土圧シールド工法において、地盤中に含まれるメタンガスを安全に坑外に排出することが可能な掘削土排出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド工法を用いたトンネル掘削工事において、掘削土中にメタンガス等の有害ガスが含まれている場合には、坑内に漏れ出した有害ガスを坑外に排出させるための対策を行う必要がある。例えば、メタンガスが発生するおそれがある場合には、防爆設備を設置すると共に、坑内に換気設備を設置し、換気により安全な濃度に希釈し、あるいはメタンガス自体を坑外に排出させる必要がある。
【0003】
具体的には、シールドマシンの後方における所定区間を防爆区域として、エアーカーテン等を設置して、非防爆区域と区画する。また、シールド機本体の電気設備、セグメント搬送用電動ホイスト、坑内照明器具等を防爆化する。さらに、自動ガス検知警報装置を設けて、所定濃度以上のメタンガスを検知した場合には警報を発生する。この場合、坑内の電源を自動的に遮断する自動電源遮断装置を設ける場合もある。
【0004】
従来、シールド工法を用いたトンネル掘削工事において、メタンガス等の有害ガスを坑外に排出するための技術が種々開示されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された技術は、シールド工法の坑内において切羽で掘削された土砂をシールドのテール部に排出させる排土コンベアの出口に有害ガスを捕集するためのチャンバーを設け、チャンバーと坑外に設置した有害ガスの処理プラントとを連通させる排気ラインを形成する。そして、排気ラインに対して、チャンバーで捕集した有害ガスを処理プラントへ排気させるためのポンプを介装させた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−102899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、坑内設備を防爆化するためには種々の対策が必要であり、設備費用が嵩むという問題があった。また、特許文献1に記載された技術は、所定濃度以上のメタンガスを検知した際に、チャンバーを閉じてメタンガスを捕集しているが、ガス検知装置がガスを検知してからチャンバーを閉じるまでにタイムラグが生じることもあり、メタンガスを完全に捕集できるとは言い難かった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、設備費用が嵩む特別な対応設備を設けることなく、掘削に伴い排出される有害ガスを安全かつ確実に坑外に排出することが可能なシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明のシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置は、シールドマシンで掘削した有害ガスを含む掘削土を坑外に排出するための装置であって、切羽からの掘削土を排出するスクリューコンベアの後端部に、掘削土排出経路が密閉状態となるように接続した掘削土圧送ポンプと、当該掘削土圧送ポンプと密閉状態に接続され、掘削土を坑外に搬送する掘削土圧送パイプとを備えている。
【0009】
なお、従来の泥土圧シールド工法では、圧送ポンプを用いて掘削土を搬出する方法を採用することがある。しかし、従来の泥土圧シールド工法において、圧送ポンプを用いて掘削土を搬送する場合には、スクリューコンベアから排出される掘削土を、ベルトコンベアやパイプ等を用いて圧送ポンプのホッパーに一時的に貯留する。そして、ホッパーに貯留された掘削土を圧送ポンプ及び圧送パイプにより坑外に搬送するようになっている。また、搬送距離が長い場合には、複数台の圧送ポンプにより掘削土を中継して搬送することになり、この場合にも、掘削土が各圧送ポンプのホッパーに一時的に貯留されることになる。
【0010】
したがって、従来の泥土圧シールド工法では、圧送ポンプに投入される前の掘削土が坑内に露出した状態となるため、掘削土に有害ガスが含まれていた場合には、この有害ガスが坑内に漏れ出すことになる。この点、本発明のシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置は、スクリューコンベア、掘削土圧送ポンプ、掘削土圧送パイプを密閉状態に連通させているため、従来の泥土圧シールド工法において、何ら対策が行われていない圧送ポンプ及び圧送パイプを用いて掘削土を搬出する方法とは全く異なる構成となっている。
【0011】
そして、有害ガスの進入経路であるシールドマシンのテール部の後端部、シールドジャッキの後端部とセグメントとの間、隣り合うセグメントの間のそれぞれに密閉材を介在させることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置は、上述した構成に加えて、掘削土圧送ポンプとスクリューコンベアの後方端部との間に、礫等を破砕するための破砕装置を、掘削土排出経路が密閉状態となるように設けることが可能である。
【0013】
また、本発明のシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置は、上述した構成に加えて、坑外に導出された掘削土圧送パイプの後端部に、搬送されてきた掘削土中に含まれる有害ガスを分離して貯留するためのガス分離装置を設けることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置によれば、掘削土の搬出経路が密閉されているため、掘削土にメタンガス等の有害ガスが含まれている場合であっても、有害ガスが坑内に漏れ出すおそれがない。したがって、設備費用が嵩む防爆化設備等の特別な設備を設ける必要がなく、掘削に伴い排出される有害ガスを安全かつ確実に坑外に排出することが可能となる。
【0015】
また、有害ガスの進入経路であるシールドマシンのテール部の後端部、シールドジャッキの後端部とセグメントとの間、隣り合うセグメントの間のそれぞれに密閉材を介在させることにより、掘削土排出経路の密閉性を高めることが可能となる。
【0016】
また、掘削土圧送ポンプとスクリューコンベアの後方端部との間に、礫等を破砕するための破砕装置を設けた場合には、掘削土中に掘削土圧送パイプの内径以上の礫等が含まれている場合であっても、礫等により掘削土圧送パイプが閉塞することがなく、掘削土を確実に坑外に搬送することが可能となる。
【0017】
また、坑外に導出された掘削土圧送パイプの後端部に、搬送されてきた掘削土中に含まれる有害ガスを分離して貯留するためのガス分離装置を設けた場合には、有害ガスを大気中に放散することがない。したがって、メタンガス等の可燃性ガスについては、これを捕集して有効活用することが可能となる。また、硫化水素等の有毒ガスについては、適切な処理を行うことにより、大気汚染を防止して良好な自然環境を保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置で使用するシールドマシンの概略構成図。
図2】本発明のシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置の全体概略構成図。
図3】シールドマシンのテール部を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明のシールド工法における有害ガスを含む掘削土排出装置(以下、掘削土排出装置と略記する)の実施形態を説明する。図1図3は本発明の実施形態に係る掘削土排出装置を説明するもので、図1はシールドマシンの概略構成図、図2は掘削土排出装置の全体概略構成図、図3はシールドマシンのテール部を示す模式図である。
【0020】
<掘削土排出装置の適用対象>
なお、以下に示す実施形態では、メタンガス(CH4)を例にとって説明を行うが、本発明で排出の対象とする有害ガスは、エタンやブタンを含む石油系ガス、メタンが主成分の石炭系ガス、水溶性天然ガス等の可燃性ガスや、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素等、人体にとって有害なガスも含むものである。
【0021】
また、以下に示す実施形態では、本発明を泥土圧シールド工法に適用した場合を例にとって説明を行うが、掘削土を密閉状態で搬送することができる工法であれば、他のシールド工法にも適用することができる。
【0022】
<掘削土排出装置の概要>
本発明の実施形態に係る掘削土排出装置は、特に、泥土圧シールド工法に好適に適用される技術である。泥土圧シールド工法に用いるシールドマシン10は、図1に示すように、カッターウイング11の後部に隔壁12を設けて作泥土室13を形成する。そして、カッターで掘削された掘削土に作泥土材を注入して混練機器(例えば練混ぜ翼14)で練り混ぜて、掘削土を不透水性かつ塑性流動性を有する泥土に変換して、作泥土室13内とスクリューコンベア15内に充満する。この状態を維持しながら、シールドジャッキ16をセグメント20の端面に押し当てて、その推力により作泥土室13内の泥土に泥土圧を発生させ、シールドマシン10の掘進量と排土量のバランスを図りながら掘進を行う。
【0023】
泥土圧シールド工法が適用される土質は、沖積粘性土、洪積粘性土、砂質土等であり、掘削対象地盤内にメタンガス等の可燃性ガスが含有されている場合がある。本発明の実施形態に係る掘削土排出装置は、このような可燃性ガスを含有する地盤を掘削する際に使用して、坑内に可燃性ガスを漏出されることなく、安全に工事を行うことができる。
【0024】
<掘削土排出装置の構成>
本発明の実施形態に係る掘削土排出装置は、図1及び図2に示すように、掘削土圧送ポンプ30と、掘削土圧送パイプ40とを主要な構成機器としており、スクリューコンベア15と掘削土圧送ポンプ30との間に破砕装置50を設けることが可能である。さらに、図2に示すように、掘削土圧送パイプ40の後端部に、ガス分離装置60を設けることが可能である。
【0025】
<掘削土圧送ポンプ>
掘削土圧送ポンプ30は、スクリューコンベア15の後端部に、掘削土排出経路が密閉状態となるように接続されている。この掘削土圧送ポンプ30は、従来から汎用されている泥土圧送ポンプに若干の改変を加えることにより製作することができる。なお、搬送経路(掘削土圧送パイプ40)が長距離の場合には、適宜な箇所に、中継のための掘削土圧送ポンプ30を設置してもよい。この場合にも、掘削土圧送ポンプ30は、掘削土排出経路が密閉状態となるように接続する。
【0026】
密閉状態とは、各構成機器の接続部に、ガスケットやOリング(オーリング)を介在させ、あるいはシール材等を塗布することにより、掘削土排出経路から有害ガスが漏れ出さない状態とすることをいう。なお、ガスケット、Oリング、シール材は、掘削土に含まれる有害ガスにより侵食されない材質のものを使用する必要があり、有害ガスの種類にもよるが、例えば、フッ素樹脂やシリコンを含有したものを使用することができる(以下の各部材においても同様である)。
【0027】
<掘削土圧送パイプ>
掘削土圧送パイプ40は、掘削土圧送ポンプ30と密閉状態に接続され、掘削土を坑外に搬送するためのパイプである。この掘削土圧送パイプ40は、従来から汎用されている掘削土圧送パイプ40に若干の改変を加えることにより製作することができる。なお、掘削土圧送パイプ40の直径、材質、長さ等は、施工現場の土質、トンネルの形状等、現場の状況に応じて、適宜変更して実施することができる。
【0028】
<破砕装置>
破砕装置50は、掘削土圧送ポンプ30とスクリューコンベア15の後方端部との間に設けられた装置であり、掘削土に含まれる礫等を破砕する。この破砕装置50は、掘削土排出経路が密閉状態となるように設けられている。この破砕装置50は、従来から汎用されているクラッシャーに若干の改変を加えることにより製作することができる。すなわち、本実施形態の破砕装置50は、一般にクラッシャーと称される装置であり、一対の綱片やロールにより礫等を挟み込んで、圧縮力あるいは衝撃力により礫等を破砕する装置である。
【0029】
<ガス分離装置>
ガス分離装置60は、掘削土圧送パイプ40の後端部に設けられた装置であり、搬送されてきた掘削土中に含まれる有害ガスを分離して貯留する。すなわち、坑外の地上部において、掘削土圧送パイプ40の後端部にガス分離装置60を密閉状態に接続し、掘削土に含まれる有害ガスを分離する。
【0030】
分離された有害ガスは、貯留槽70に貯留して、適宜排出する。有害ガスがメタンガス等の可燃性ガスであれば、ガスボンベに充填し、あるいはガスパイプにより輸送することにより、燃料として使用することができる。また、有害ガスが亜硫酸ガスや亜硝酸ガス等の有毒ガスであれば、環境基準を満たすように、脱硫装置や脱硝装置を用いて有毒成分を除去した後に、大気中に放散すればよい。
【0031】
有害ガスを分離した後の掘削土は、産業廃棄物として廃棄する場合もあるが、埋め立て土等として再利用することもできる。
【0032】
なお、掘削土に含まれる有害ガスがごく微量であり、かつ人体に有害なものでない場合には、ガス分離装置60を省略することができる。この場合にも、ガス濃度を常に監視し、有害ガスの処理を行うべき状況となった場合には、直ちに適切な対応を行うことが必要である。
【0033】
<密閉材>
また、本発明の有害ガスを含む掘削土排出装置では、図3に示すように、シールドマシン10のテール部の後端部(例えば、テールシール17)に密閉材80を塗布することが好ましい。密閉材80としては、例えば、シリコンシール剤を用いることができる。シールドマシン10のテール部の後端部に密閉材80を塗布することにより、シールドマシン10のテール部とセグメント20との間から、土中に含まれる有害ガスが漏れ出すおそれが減少する。
【0034】
さらに、シールドジャッキ16の後端部とセグメント20との間や、隣合うセグメント20の間にも、有毒ガスが漏れ出す隙間が生じないように密閉材80を介在させることが好ましい。
【符号の説明】
【0035】
10 シールドマシン
11 カッターウイング
12 隔壁
13 作泥土室
14 練混ぜ翼
15 スクリューコンベア
16 シールドジャッキ
17 テールシール
20 セグメント
30 掘削土圧送ポンプ
40 掘削土圧送パイプ
50 破砕装置
60 ガス分離装置
70 貯留槽
80 密閉材
図1
図2
図3