特許第6208465号(P6208465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208465脱酸原料加工技術を応用した新感覚リキュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208465
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】脱酸原料加工技術を応用した新感覚リキュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/06 20060101AFI20170925BHJP
   A23L 2/78 20060101ALN20170925BHJP
   A23L 2/70 20060101ALN20170925BHJP
【FI】
   C12G3/06
   !A23L2/36
   !A23L2/30 A
   !A23L2/30 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-94745(P2013-94745)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-212763(P2014-212763A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】597135194
【氏名又は名称】マルボシ酢株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097825
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 久紀
(74)【代理人】
【識別番号】100137925
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 紀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】星野 宗広
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】高水 新
(72)【発明者】
【氏名】末次 卓也
(72)【発明者】
【氏名】岩井 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】松原 輝明
(72)【発明者】
【氏名】川本 順弘
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 千穂
(72)【発明者】
【氏名】後藤 元信
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−312580(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/017116(WO,A1)
【文献】 特開2003−230374(JP,A)
【文献】 特開2010−142123(JP,A)
【文献】 特開2002−017317(JP,A)
【文献】 特開昭64−047368(JP,A)
【文献】 特開2012−228193(JP,A)
【文献】 特開平10−271980(JP,A)
【文献】 国際公開第1997/000024(WO,A1)
【文献】 特開昭58−056663(JP,A)
【文献】 特開平11−146781(JP,A)
【文献】 北川博敏、外3名,「イオン交換樹脂によるミカン果汁の減酸処理」,J. JAPAN SOC. HORT. SCI.,1983年,Vol.52, No.2,pp.189-195
【文献】 前田久夫,「樹脂吸着法によるカンキツ果汁成分の調節と品質改善」,NIPPON SHOKUHIN KOGYO GAKKAISHI,1987年,Vol.34, No.7,pp.489-497
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 1/00− 3/12
A23L 2/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
香酸柑橘果汁及び/又は梅果汁をアクリル系であり且つ酸吸着容量が1.0meq/mL−R以上の弱塩基性イオン交換樹脂で処理し、該果汁中に含まれる有機酸の90%以上を除去した脱酸果汁を得て、これを蒸留酒及び/又は醸造酒に10〜50v/v%の割合で添加すること、を特徴とする柑橘果汁及び/又は梅果汁含有リキュールの製造方法。
【請求項2】
香酸柑橘果汁が、レモン果汁、ライム果汁、ユズ果汁、カボス果汁、スダチ果汁、シークワシャー果汁、ダイダイ果汁から選ばれる少なくともひとつであること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脱酸果汁を濃縮した脱酸濃縮果汁を蒸留酒及び/又は醸造酒に添加すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
弱塩基性イオン交換樹脂処理の前及び/又は後に、1μm以上の夾雑物を除去する清澄化処理を行うこと、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リキュールの製造方法等に関する。詳細には、酸味が強いといわれている香酸柑橘類の果汁に代表される柑橘果汁や、梅果汁を含むリキュールの製造方法及び当該方法によって得られる飲み心地が良く風香味も良好なリキュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、特に若年層のビール・日本酒離れが指摘されており、これに呼応してリキュール類の消費が伸びてきている。リキュールとは、一般的にはスピリッツ(蒸留酒)や清酒などに果実、香草、花などの香気成分を抽出させたり添加したりして、砂糖・シロップ等の甘味を加えて仕上げた酒類を意味し、EUの定義によれば、アルコール含量が15%以上で糖分が100g/L以上のものとされている。
【0003】
この中で、果実系リキュール(果実の実、果汁、果皮などが含まれるリキュール)は最も好まれており、その製造方法としては、果汁などを単純に酒類に添加する方法だけでなく、果皮などの乾燥原料をアルコール中で抽出し蒸留する方法(蒸留法)、果実などをそのままアルコールに長期間浸漬し濾過する方法(冷浸漬法)などもある。例えば、柑橘類を用いたリキュールの製造方法としては、柑橘類の果皮や果汁をアルコールに漬け込み、減圧蒸留する方法等が開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、リキュール製造原料として香酸柑橘類(独特の香りを有した多酸の柑橘類)の果汁に代表される柑橘果汁や梅果汁を使用する場合、果汁中に非常に多く含まれる有機酸(主としてクエン酸)を主な由来とする酸味がリキュールの風香味に好ましくない影響を与える場合が多い。よって、香酸柑橘果汁などを含むリキュールを製造する場合、その果汁をそのまま多量に添加することはできず、果汁の添加量をごく微量とするか、香気を多く付与したい場合には果汁又は果皮から蒸留法等により香気成分のみを取得してこれを添加するしか方法はなかった。
【0005】
このような技術背景において、柑橘果汁や梅果汁などを多量に使用しても飲み心地が良く香りが優れたリキュールの開発、及び、そのようなリキュールの簡便且つ効率的な製造方法等の開発が当業界において求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−125653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、香酸柑橘類の果汁(香酸柑橘果汁)を含む柑橘果汁や梅果汁を含有し、且つ、飲み心地が良く香りが優れたリキュール、及び、その簡便且つ効率的な製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究の結果、香酸柑橘果汁や梅果汁等を弱塩基性イオン交換樹脂で処理し、該果汁中に含まれる有機酸を除去した脱酸果汁を得て、これを蒸留酒及び/又は醸造酒に添加することにより、香酸柑橘類などの果汁を多く含有しながら、飲み心地が良く香りが優れたリキュールを簡便且つ効率的に提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の実施形態は次のとおりである。
(1)柑橘果汁及び/又は梅果汁を弱塩基性イオン交換樹脂で処理(樹脂通液処理)し、該果汁中に含まれる有機酸を除去した脱酸果汁を得て、これを蒸留酒及び/又は醸造酒に添加すること、を特徴とする柑橘果汁及び/又は梅果汁含有リキュールの製造方法。
(2)柑橘果汁が、香酸柑橘果汁であること、を特徴とする(1)に記載の方法。
(3)香酸柑橘果汁が、レモン果汁、ライム果汁、ユズ果汁、カボス果汁、スダチ果汁、シークワシャー果汁、ダイダイ果汁から選ばれる少なくともひとつ(1又は2以上)であること、を特徴とする(2)に記載の方法。
(4)脱酸果汁を濃縮した脱酸濃縮果汁を蒸留酒及び/又は醸造酒に添加すること、を特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5)弱塩基性イオン交換樹脂処理の前及び/又は後に、1μm以上の夾雑物を除去する清澄化処理を行うこと、を特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の方法。
(6)弱塩基性イオン交換樹脂が、アクリル系又はスチレン系であり且つ酸吸着容量が0.4meq/mL−R以上(好ましくは1.0〜3.0meq/mL−R)のものを使用すること、を特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法。
(7)(1)〜(6)のいずれか1つに記載の方法により製造された、香酸柑橘果汁等を多量に(例えば、容量パーセント(v/v%)で10〜50%、特に16〜40%)含有しながら飲み心地が良く香りが優れた柑橘果汁及び/又は梅果汁含有リキュール。
【0010】
(8)弱塩基性イオン交換樹脂で脱酸した柑橘果汁及び/又は梅果汁を、例えば、容量パーセント(v/v%)で10〜50%配合すること、を特徴とする柑橘果汁及び/又は梅果汁含有リキュールの風味改善方法。
(9)柑橘果汁が、香酸柑橘果汁であること、を特徴とする(8)に記載の方法。
(10)香酸柑橘果汁が、レモン果汁、ライム果汁、ユズ果汁、カボス果汁、スダチ果汁、シークワシャー果汁、ダイダイ果汁から選ばれる少なくともひとつ(1又は2以上)であること、を特徴とする(9)に記載の方法。
(11)脱酸果汁を濃縮したものを蒸留酒及び/又は醸造酒に添加すること、を特徴とする(8)〜(10)のいずれか1つに記載の方法。
(12)弱塩基性イオン交換樹脂処理の前及び/又は後に、1μm以上の夾雑物を除去する清澄化処理を行うこと、を特徴とする(8)〜(11)のいずれか1つに記載の方法。
(13)弱塩基性イオン交換樹脂が、アクリル系又はスチレン系であり且つ酸吸着容量が0.4meq/mL−R以上(好ましくは1.0〜3.0meq/mL−R)のものを使用すること、を特徴とする(8)〜(12)のいずれか1つに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来では添加量の制限があった柑橘果汁や梅果汁を非常に多く含有しながら、酸味が極めて軽減され、且つ、飲み心地が良く香りが優れた柑橘果汁及び/又は梅果汁含有リキュールを簡便且つ効率的に提供できることができる。特に、本発明は、香酸柑橘果汁を用いた香酸柑橘リキュールを製造する際に極めて効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の脱酸果汁の一例である脱酸濃縮果汁を製造する際の製造プロセス概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、リキュール製造の原料として柑橘果汁及び/又は梅果汁を使用する。本発明は、柑橘果汁のうちの香酸柑橘類の果汁(香酸柑橘果汁)を使用する場合に最も効果的なものであるが、香酸柑橘類とは、独特の清涼感ある香りを有し且つ多酸(有機酸含量3重量%以上、例えば3〜30重量%、特に20〜30重量%)のものであり、レモン、ライム、ユズ、カボス、スダチ、シークワシャー、ダイダイなどが例示される。しかし、ミカン類、オレンジ類、グレープフルーツ類、雑柑類(ナツミカン、ハッサク等)などの柑橘果汁を使用することも可能であり、また、梅果汁を使用することも好適であり、さらに、これらのうち2種以上を用いる実施態様も包含される。なお、本発明においては、リキュール製造の原料として果皮などの果汁以外の部分から得られた香気成分の併用、あるいは、果汁から抽出した香気成分の併用等が除外されるものではないが、上記果汁のみを脱酸して使用する態様が好ましい。
【0014】
本発明における柑橘果汁・梅果汁の脱酸処理は、弱塩基性イオン交換樹脂への通液(酸の樹脂への吸着)による。弱塩基性イオン交換樹脂は、アクリル系又はスチレン系であり且つ酸吸着容量が0.4meq/mL−R以上(好ましくは1.0〜3.0meq/mL−R、さらに好ましくは1.0〜2.0meq/mL−R)のものを使用する。通液速度0.1〜0.5L/hr程度、通液温度は25〜35℃程度が好ましい。この脱酸処理により、柑橘果汁・梅果汁中に含まれる有機酸の85〜100%、さらに言えば90〜100%を除去する。この方法では、樹脂への通液をするだけで、これらの果汁中に含まれる有機酸を短時間でほぼ吸着できるため、極めて高効率である。
【0015】
吸着する有機酸の種類としては、酢酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、グルコン酸などが例示され、主としてクエン酸が挙げられるが、これ以外の種類の有機酸を除去(吸着)することを除外するものではない。また、使用する弱塩基性イオン交換樹脂は、アクリル系、スチレン系のいずれを用いても良いが、脱酸果汁への樹脂臭の影響を極めて低くするためにはアクリル系を使用することが好ましい。なお、樹脂臭の影響をほとんど受けない種類の果汁処理においては、スチレン系を使用しても何ら差し支えない。
【0016】
また、本発明においては、上記脱酸果汁をそのまま酒類に添加しても良いが、この脱酸果汁を濃縮処理した脱酸濃縮果汁を用いることも可能である。なお、本発明では、上記果汁が脱酸処理されていることにより、濃縮工程において通常の柑橘果汁や梅果汁よりスムースに濃縮を行うことができることも特徴である。
【0017】
さらに、本発明においては、柑橘果汁・梅果汁の脱酸処理前及び/又は後に1μm以上の夾雑物(ファイバーなど)を除去する清澄化処理を行うことが好ましい。清澄化処理は、凝集沈殿、フィルターろ過、遠心分離など、液体を清澄にするための方法であればどのようなものでも使用できる。特に、樹脂通液処理を効率的に行うためには、樹脂通液処理前に清澄化処理を行うことが好ましい。なお、上記濃縮処理を行う場合には、その前後にも清澄化処理を行うのが好ましく、脱酸処理前に清澄化処理を行い且つ濃縮処理前後にも清澄化処理を行う態様が最も好ましい。
【0018】
このようにして得られた柑橘・梅脱酸果汁を使用して、柑橘果汁及び/又は梅果汁含有リキュールを製造する。脱酸果汁の添加・配合方法は、用いる蒸留酒及び/又は醸造酒(焼酎、ウォッカ、ブランデー、清酒、ワインなど)の製造時(醸造・発酵前)に添加しても良いし、これらの酒類を製造した後(醸造・発酵後)に所要の割合で添加・混合する方法でも良く限定はされないが、酒類の醸造・発酵後に添加・混合するのが特に好適である。果汁の添加量としては、リキュール全体の容量に対する容量パーセント(v/v%)で10〜50%、特に15〜40%が好適範囲として示され、リキュール中の果汁由来糖度(Bx)として1〜10程度(なお、アルコール度数としては15〜25%程度)が示されるが、これも限定されるものではない。また、リキュール製造後、容器充填前及び/又は後に加熱処理やろ過処理などの公知の殺菌・除菌処理を行ってもよい。
【0019】
このようにして、従来ではその酸味の強さからリキュールへの添加量の制限があった香酸柑橘果汁や梅果汁等について、本発明によれば、これを非常に多く(例えば、リキュール全体の容量に対する容量パーセント(v/v%)で10%以上という高い割合で)含有しながら、酸味が極めて軽減され、且つ、飲み心地が良く香りが優れた柑橘果汁及び/又は梅果汁含有リキュールを簡便且つ効率的に提供できる。なお、本発明に用いる脱酸果汁製造プロセスの一例として、脱酸濃縮果汁の製造プロセス概略図(清澄化処理含む)を図1に示した。
【0020】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内においてこれらの様々な変形が可能である。
【実施例1】
【0021】
ユズ果汁を、弱塩基性イオン交換樹脂(ダイヤイオンWA10,三菱化学株式会社製品)を充填したガラスカラムに通液した。通液は通液速度0.1L/hr、通液温度を30℃で行った。この結果、含有していた有機酸の90%以上を除去した脱酸ユズ果汁(Bx10.5)を得た。
【0022】
得られた脱酸ユズ果汁250mlと麦焼酎(アルコール度25%)750ml及びグラニュー糖100gを混合し、ユズ果汁入りリキュール(本発明品)を製造した。
【0023】
対照として、脱酸処理(樹脂通液)前のユズ果汁をそのまま用いて上記と同じ配合でユズ果汁入りリキュール(対照品)を製造した。本発明品及び対照品について、訓練された10名のパネラーにより官能評価を実施した結果、本発明品は対照品と比較して、ユズの酸味が非常に軽減されており、且つ、飲み心地、香りが有意に優れていることが明らかとなった。
【実施例2】
【0024】
フィルターろ過処理により1μm以上の夾雑物を除去したレモン果汁を、弱塩基性イオン交換樹脂(IRA67,オルガノ株式会社製品)を充填したガラスカラムに通液した。通液は通液速度0.2L/hr、通液温度を30℃で行った。この結果、含有していた有機酸の90%以上を除去した脱酸レモン果汁(Bx11.0)を得た。
【0025】
得られた脱酸レモン果汁400mlと米焼酎(アルコール度25%)600ml及びグラニュー糖100gを混合し、レモン果汁入りリキュール(本発明品)を製造した。
【0026】
対照として、脱酸処理(樹脂通液)前のレモン果汁をそのまま用いて上記と同じ配合でレモン果汁入りリキュール(対照品)を製造した。本発明品及び対照品について、訓練された10名のパネラーにより官能評価を実施した結果、本発明品は対照品と比較して、レモンの酸味が極めて軽減されており、且つ、飲み心地、香りが有意に優れていることが明らかとなった。
【実施例3】
【0027】
フィルターろ過処理により1μm以上の夾雑物を除去したライム果汁を、弱塩基性イオン交換樹脂(IRA67,オルガノ株式会社製品)を充填したガラスカラムに通液した。通液は通液速度0.2L/hr、通液温度を30℃で行った。この結果、含有していた有機酸の90%以上を除去した脱酸ライム果汁(Bx9.1)を得た。
【0028】
得られた脱酸ライム果汁160mlと清酒(アルコール度18%)840ml及びグラニュー糖100gを混合し、ライム果汁入りリキュール(本発明品)を製造した。
【0029】
対照として、脱酸処理(樹脂通液)前のライム果汁をそのまま用いて上記と同じ配合でライム果汁入りリキュール(対照品)を製造した。本発明品及び対照品について、訓練された10名のパネラーにより官能評価を実施した結果、本発明品は対照品と比較して、ライムの酸味が極めて軽減されており、且つ、飲み心地、香りが有意に優れていることが明らかとなった。
【実施例4】
【0030】
梅果汁を、弱塩基性イオン交換樹脂(ダイヤイオンWA10,三菱化学株式会社製品)を充填したガラスカラムに通液した。通液は通液速度0.1L/hr、通液温度を30℃で行った。さらに、この脱酸果汁を逆浸透膜装置で40℃の温度条件で膜濃縮を行った。この結果、含有していた有機酸の90%以上を除去した脱酸濃縮梅果汁(Bx40)を得た。
【0031】
得られた脱酸濃縮梅果汁100mlと米焼酎(アルコール度25%)600ml及びグラニュー糖100g、純水300mlを混合し、梅果汁入りリキュール(本発明品)を製造した。
【0032】
対照として、脱酸処理(樹脂通液)前の梅果汁をそのまま用いて果汁糖度及びアルコール濃度を本発明品と合わせた配合で梅果汁入りリキュール(対照品)を製造した。本発明品及び対照品について、訓練された10名のパネラーにより官能評価を実施した結果、本発明品は対照品と比較して、梅の酸味が非常に軽減されており、且つ、飲み心地、香りが有意に優れていることが明らかとなった。
【0033】
本発明を要約すれば、以下の通りである。
【0034】
本発明は、香酸柑橘類の果汁(香酸柑橘果汁)を含む柑橘果汁や梅果汁を含有し、且つ、飲み心地が良く香りが優れたリキュール、及び、その簡便且つ効率的な製造方法等を提供することを目的とする。
【0035】
そして、香酸柑橘果汁や梅果汁等を弱塩基性イオン交換樹脂で処理し、該果汁中に含まれる有機酸を除去した脱酸果汁を得て、これを蒸留酒及び/又は醸造酒に添加することにより、香酸柑橘類等の果汁を多く含有しながら、飲み心地が良く香りが優れたリキュールを簡便且つ効率的に提供する。
図1