(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シームレスに構成された、弾性糸を用いてなるインナーソックスであって、先端が開口してなる筒状の包指部と、踵部が膨出形成されていないストレート形状の本体部とを有しており、該包指部の開口部及び本体開口部はフライス編、それ以外の部分はメッシュ編で編成されており、前記フライス編部分の編密度は、25コース/2.54cm以上、35ウェル/2.54cm以上、前記メッシュ編の部分の編密度は、5〜20コース/2.54cm、10〜30ウェル/2.54cmであることを特徴とするインナーソックス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の5本指靴下は、足の指全体を個別に包むため、靴を履いているときなどに指先が熱くなって装着感が悪いという問題があった。また、靴を脱いだときの見栄えが悪い場合があり、自宅以外では利用しない人が少なくない。
また、特許文献1に記載のインナーソックスは、パイル編のため厚みがあり、インナーソックスとして使用したとき、ごわごわして快適性に乏しく、また、組織が密であるために汗を吸うと濡れた状態となり、不快感が残るという問題がある。また、編組織が複雑であるため、生産に手間がかかるという問題もある。
【0005】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、靴下の中に着用しても違和感なく、加えて蒸れなどからくる不快感が軽減され、汗を吸収し、また、左右上下をなくすことにより、汎用性に富んだ、更に、容易に製造できるインナーソックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、シームレスに構成された、弾性糸を用いてなるインナーソックスであって、先端が開口してなる筒状の包指部と、踵部が膨出形成されていないストレート形状の本体とを有しており、該包指部の開口部及び本体開口部はフライス編、それ以外の部分はメッシュ編で編成されて
おり、前記フライス編部分の編密度は、25コース/2.54cm以上、35ウェル/2.54cm以上、前記メッシュ編の部分の編密度は、5〜20コース/2.54cm、10〜30ウェル/2.54cmであることを特徴とするインナーソックスによって達成される。
【0007】
また、上記インナーソックスは、上記包指部と、該包指部と隣接する本体の一部と、本体の踵部周縁とにおける編密度が、それ以外の本体部より高く設定されていることが好適である。
このとき、前記フライス編部分の編密度は、25コース/2.54cm以上、35ウェル/2.54cm以上、前記高密度部分の編密度は、20〜30コース/2.54cm、30〜40ウェル/2.54cm、前記高密度部分以外のメッシュ編の部分の編密度は、5〜20コース/2.54cm、10〜30ウェル/2.54cmであることが好適である。
また、少なくとも上記包指部にはポリアミド系繊維が用いられていることが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインナーソックスは、薄手であり、通常の靴下の中に着用しても違和感なく、加えて、汗を吸収し、蒸れなどからくる不快感が軽減される。更に、指周りの神経を刺激することで身体活性を高める効果も期待できる。
また、踵部を膨出形成しないことで、履くときに上下左右を気にする必要がなく、汎用性に富む。
本発明のインナーソックスは、労働者の他、どのような層の人々にも適応できる。
また、包指部の編組織を密にすることで、吸汗性を良好とすることができ、また、破れを防止できる。
また、抗菌防臭加工を施せば、におい、雑菌の繁殖を軽減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のインナーソックスは、例えば、
図1に示すような形態が挙げられる。
図1は、インナーソックスの一実施態様を示す説明図である。
1はインナーソックス、2は包指部、3は本体、4は本体開口部である。
【0013】
図1に示すように、本発明のインナーソックスは、先端が開口してなる筒状の包指部2と、踵部が膨出形成されていないストレート形状の本体3とを有してなる。
包指部2は、足指5本分形成されている。
本体3を、踵部が膨出形成されていないストレート形状とすることにより、上下左右にとらわれることがないので、汎用性が上がり、好適である。
また、5本指にすることで、各足指間に空隙ができ、蒸れが防止できると共に、フィット感が良好である。
【0014】
また、インナーソックス1は、弾性糸を使用し、ダブルラッセル編でシームレスに編成されたものであり、包指部の開口部2a及び本体開口部4はフライス編、それ以外の包指部2と本体3とはメッシュ編に編成された編物からなる。
【0015】
メッシュ編とすることで、通気性が良好となり、装着時に蒸れを感じることなく、履き心地が爽やかである。
【0016】
編密度を数値で表すと、フライス編部分の編密度は、25コース/2.54cm以上、35ウェル/2.54cm以上、メッシュ編の部分
(図1においては3b、3d)の編密度は、5〜20コース/2.54cm、10〜30ウェル/2.54cmとすることが好適である。
【0017】
また、メッシュ編部分において、包指部2b、包指部2bに隣接した本体3の一部3a、更に、踵部周縁3cにおける編密度が、それ以外の部分(3b、3d)の編密度より高いようにすると好適である。
包指部2bと、包指部2bに隣接した本体3の一部3aとの編密度を高くすることで、足指間の汗を吸水し易く、蒸れを防止でき、履き心地を良好とすることができる。
また、本体3の踵部周縁3cの編密度を高くすることで、踵が当たる箇所の強度を上げることができ、耐久性が上がる。
具体的には、高密度部分の編密度は、20〜30コース/2.54cm、30〜40ウェル/2.54cmとすることが好適である。
【0018】
上記フライス編とメッシュ編の各部分の編密度の好適な範囲は、一部重複するが、適宜編密度の密粗の上記関係を満たすように設定する。
【0019】
また、インナーソックスの厚みは、フライス編部分は、0.7〜1.5mm、メッシュ編部分は、0.5〜0.8mmであることが好適である。この範囲であれば、インナーソックスとして、靴下の中に着用しても違和感がなく、履き心地が良好である。
【0020】
本発明においては、インナーソックスに、良好な伸びと伸長回復率を付与するため、弾性糸を用いる。弾性糸としては、ポリウレタン系繊維を芯糸とし、熱可塑性合成繊維を鞘糸としてなるカバリング糸を用いることが好適である。カバリング糸は、シングルカバリング糸でもダブルカバリング糸でもよい。
【0021】
上記芯糸をカバリングするための鞘糸である熱可塑性合成繊維としては、6ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系繊維等が挙げられ、中でも、ポリアミド系繊維が好適に用いられる。
本発明で用いられるポリアミド系繊維は、上記したナイロン6の他、例えば、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン610、あるいはこれらの2種以上の任意の共重合ナイロン等が挙げられる。
【0022】
上記芯糸としては、総繊度15〜35デシテックスのポリウレタン系繊維を用いるのが好ましい。また、鞘糸としては総繊度10〜50デシテックスの上記熱可塑性合成繊維を用いることが好ましい。
上記範囲よりも細い芯糸は製造が困難であり、強度的に問題が生じる恐れがある。逆に太過ぎると編物としたときの肌ざわりや着用感が問題となることがある。また、鞘糸である熱可塑性合成繊維が上記範囲より細過ぎても太過ぎても肌ざわりや風合いが悪くなる傾向にある。更に、芯糸と鞘糸とが太過ぎると、得られるインナーソックスが厚くなってしまい、靴下の中に着用したとき、違和感を生じること傾向にある。
【0023】
また、芯糸は、モノフィラメントでも、マルチフィラメント(2〜10本)でもよい。 また、鞘糸は10〜50本のマルチフィラメントが好適である。風合いや吸水性の点から単糸繊度1デシテックス以下の極細繊維を用いてもよい。
【0024】
また、芯糸への鞘糸の巻きつけ回数は、700〜2000回/mとすることが好ましい。
【0025】
また、本発明のインナーソックスは、上記のようなカバリング糸を100%用いてもよいが、ポリアミド系糸等と組み合わせてもよい。
用いる糸の総繊度は、30〜85デシテックスが好ましく、カバリング糸と同程度の総繊度の糸を用いることが好ましい。
他の糸を併用する場合、カバリング糸は、インナーソックス中50質量%以上用いることが好適である。
【0026】
特に、包指部にポリアミド系繊維を用いることで、より足指部の汗等水分を吸収でき、蒸れを防止し、履き心地を良好とすることができる。
このポリアミド系繊維は、カバリング糸の鞘糸と同じであってもよいし、他のポリアミド系糸であってもよい。
【0027】
インナーソックスは、タテ方向において、伸び率が好ましくは100%以上、より好ましくは150%以上である。また、伸長回復率が90%以上であることが好適である。
また、ヨコ方向伸び率は、好ましくは300%以上、より好ましくは400%以上である。伸長回復率が85%以上であることが好ましい。
タテ伸び率が100%未満、ヨコ伸び率が300%に未満であると、足の大きい人にはフィットしにくくなり、苦痛に感じる傾向にある。
また、タテ伸長回復率が90%未満、ヨコ伸長回復率が85%未満であると、一度着用すると伸びてしまい、洗濯後の再着用が困難になる傾向にある。
【0028】
本発明のインナーソックスは、シームレス編機を用いることにより製造される。特に、経編機で編製することにより、容易に製造でき、生産に手間がかからない。
【0029】
また、本発明のインナーソックスは、編製後、目的に応じて、染色、抗菌加工処理を施してもよい。
【0030】
本発明のインナーソックスの形態は、
図1に示すものに限られず、本発明の目的を達成するよう、適宜設定すればよい。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。
【0032】
尚、実施例において、各評価は以下の方法により行った。
【0033】
1)伸び率
JIS L−1096B法に準じ、試料幅25mm、長さ80mm、印間の長さ40mmとして測定した。
測定方法:テンシロン(ORIENTEC CORPORATION RTM−250)を使用し、試料に加重14.7Nをかけたときの伸び率を測定。
【0034】
2)伸長回復率
JIS L−1096B法に準じ、試料幅25mm、長さ80mm、印間の長さ40mmとして測定した。
測定方法:テンシロン(ORIENTEC CORPORATION RTM−250)を使用し、試料に加重14.7Nを1分間かけ、装置から取り外し、30秒、1時間後の伸長回復率を測定。
【0035】
3)堅牢度
洗濯堅牢度:JIS L−0844 A−2法に準じ、測定した。
汗堅牢度:JIS L−0848 A法に準じ、測定した。
【0036】
4)抗菌性
JIS L−1902定量試験(菌液吸収法)に準じ、測定した。
なお、洗濯は、JIS L−0217の試験方法で行った。
生菌の測定は、混釈平板培養法(黄色ブドウ球菌)で行った。
【0037】
5)破裂強度
JIS L−1096 A法に準じ、測定した。
【0038】
[実施例1]
ポリウレタン糸(22デシテックス/1本、Yiwu Yuan社製)にナイロン6糸(33デシテックス/12本、Fujian Jiayi社製)をカバリングしたカバリング糸とナイロン6糸(56デシテックス/48本、Fujian Jiayi社製)とを用い、シームレス経編機(ドイツ・マイヤー社製)にて2本ずつ給糸して編み立て、
図1に示すようなインナーソックスを編成した。
編組織と編密度は、それぞれ、本体(3b、3d)はメッシュ編(タテ 10コース/2.54cm、ヨコ 16ウェル/2.54cm)、本体(3c)と包指部(2b)はメッシュ編(タテ 25コース/2.54cm、ヨコ 35ウェル/2.54cm)、本体(4)と包指部(2a)はフライス編(タテ 33コース/2.54cm、ヨコ 44ウェル/2.54cm)であった。
【0039】
得られたインナーソックスを、ナイロンサン(クラリアント社製)を用い、ドラム染色機で、浴比1:30、90℃、20分間染色処理した後、60℃、20分間固定化処理し、次いで、抗菌防臭加工(ウンデシレン酸モノグリセライド系抗菌剤使用、40℃、20分間)を実施した。
得られたインナーソックス(4.33g)のフライス編部分の厚みは、0.95mm、メッシュ編部分の厚みは、0.75mmであった。また、インナーソックスの伸び率、伸長回復率、堅牢度、抗菌性、破裂強度を評価した。
その結果を、表1〜表4に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
表1〜表4の結果より、実施例のインナーソックスは、伸縮性が良好で、履き心地も良かった。また、堅牢度、抗菌防臭性も良好であった。