(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208487
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】血液測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/12 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
G01N15/12 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-151648(P2013-151648)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2015-21892(P2015-21892A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年2月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】新山 時弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡
(72)【発明者】
【氏名】増田 剛志
【審査官】
土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−128327(JP,A)
【文献】
特開2012−127680(JP,A)
【文献】
特開平08−075632(JP,A)
【文献】
特開2012−098203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N15/00〜15/14、27/00〜27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アパーチャを介して連通する第1及び第2の容器と、
前記第1の容器と前記第2の容器に設けられる第1及び第2の電極と、
シース液が貯液され、加圧されて前記第1及び第2の容器へ前記シース液を供給する単一の液供給源と、
前記液供給源から前記第1の容器へ前記シース液を供給する第1の供給経路と、
前記液供給源から前記第2の容器へ前記シース液を供給する第2の供給経路と、
前記第1の容器に供給される血液試料を前記液供給源から供給されるシース液によるシースフローによって集束させ前記アパーチャへ送り込むシースフロー作成手段と、
前記アパーチャから前記第2の容器へ流出する血液試料を前記液供給源から供給されるシース液による旋回流によって集束させ前記アパーチャから離間する方向へ流出させる旋回流作成手段と、
前記第2の供給経路の長さ及び径を変化させて構成され、前記第2の供給経路の流量を調整する流量調整手段と
を具備し、
前記第1及び第2の容器へ供給する前記シース液の圧力を異ならせる、血液測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気抵抗法を用いて血液測定を行う血液測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気抵抗法を用いて血球を正確に測定するために、アパーチャ(検知孔)の上流においてシースフローを用いて血液試料がアパーチャの中心を流れるようにして、綺麗な血球パルスを得るように構成したものが知られている(特許文献1)。しかしながら、このようにアパーチャの上流においてシースフローを用いる構成でも、アパーチャの下流において血球の舞い戻りが発生し、測定に誤差を生じるという問題があった。
【0003】
一方、アパーチャの下流においてバックシースやスイープシースを用いて血小板測定の障害となる大血球のアパーチャへの舞い戻りを阻害する構成を備える装置が知られている(特許文献2、特許文献3)。この装置による測定によってアパーチャを通過した血球は再びアパーチャにおける感知領域へ戻ることがなく、測定誤差の発生を防止可能である。
【0004】
しかしながら、バックシースやスイープシースの構成は、噴流拡散する前に血球を回収するものである。このため、アパーチャ近傍に機構を取り付ける必要があり、構成が複雑化する。更に、回収管を介してシース液を流す構成であるため、アパーチャ付近における流れは弱く、浮遊している血球やアパーチャが形成されている隔壁などに付着した泡などを除去することは困難である。
【0005】
上記に対し、本願出願人はアパーチャの下流において希釈液の吸引を行う手段により旋回流を発生させて血球が感知領域に舞い戻ることを防ぎ、これによって誤測定を防止する血液測定装置を提供した(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−184841号公報
【特許文献2】特開2001−264233号公報
【特許文献3】特表2003−501621号公報
【特許文献4】特開2012−127680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の本願出願人が提供した血液測定装置は、上記のような極めて優れた効果を有するものである。本発明は更に改良した血液測定装置を提供せんとしてなされたもので、その目的は、血球の感知領域への舞い戻りを防止することができると共に、血球計測の精度をより向上させることが可能な血液測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る血液測定装置は、アパーチャを介して連通する第1及び第2の容器と、前記第1の容器と前記第2の容器に設けられる第1及び第2の電極と、シース液が貯液され、加圧されて前記第1及び第2の容器へ前記シース液を供給する
単一の液供給源と、
前記液供給源から前記第1の容器へ前記シース液を供給する第1の供給経路と、前記液供給源から前記第2の容器へ前記シース液を供給する第2の供給経路と、前記第1の容器に供給される血液試料を前記液供給源から供給されるシース液によるシースフローによって集束させ前記アパーチャへ送り込むシースフロー作成手段と、前記アパーチャから前記第2の容器へ流出する血液試料を前記液供給源から供給されるシース液による旋回流によって集束させ前記アパーチャから離間する方向へ流出させる旋回流作成手段と、
前記第2の供給経路の長さ及び径を変化させて構成され、前記第2の供給経路の流量を調整する流量調整手段とを具備し、前記第1及び第2の容器へ供給する前記シース液の圧力を異ならせる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る血液測定装置は、第1の容器に供給される血液試料を前記液供給源から供給されるシース液によるシースフローによって集束させ前記アパーチャへ送り込むシースフロー作成手段と、アパーチャから前記第2の容器へ流出する血液試料を前記液供給源から供給されるシース液による旋回流によって集束させ前記アパーチャから離間する方向へ流出させる旋回流作成手段とを具備し、前記第1及び第2の容器へ供給する前記シース液の圧力を異ならせるので、アパーチャの前方ではシースフローによってアパーチャに向けて試料を集束させて送り込むことができ、アパーチャの後方では旋回流によって集束させて舞い戻りすることなく試料を流すことができ、誤測定を防止することが可能である。
【0016】
本発明に係る血液測定装置では、前記第1及び第2の容器へ供給する前記シース液の圧力を異ならせるという簡単な構成によって、アパーチャの後方では旋回流を発生させ、これによって集束させて舞い戻りすることなく試料を流すことができ、誤測定を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る血液測定装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る血液測定装置を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図1に本発明の実施形態に係る血液測定装置の構成図を示す。この血液測定装置は、第1の容器11と第2の容器12が設けられている。第1の容器11と第2の容器12は、両者を隔てる隔壁13の中央部に形成された感知領域であるアパーチャ14を介して連通されている。
【0019】
アパーチャ14と対向する第1の容器11における面には、第1の電極21が設けられている。第1の容器11は、第1の電極21からアパーチャ14へ向かってテーパ状に細径となる、例えば円錐台形状の容器により構成することができる。また、アパーチャ14と対向する第2の容器12における面には、第2の電極22が設けられている。第2の容器12は、隔壁13から第2の電極22へ向かってテーパ状に細径となる、例えば円錐台形状の容器により構成することができる。
【0020】
第1の容器11には試料供給管23が結合されている。この試料供給管23は、第1の容器11の外側から第1の電極21の中央を介して第1の容器11内まで延在するように設けられている。試料供給管23には、チューブ24を介して試料供給部31から希釈血液試料が供給される。
【0021】
第1の容器11はチューブ(第1の供給経路)25を介してシース液タンク32に接続されており、第2の容器12はチューブ26(第2の供給経路)を介してシース液タンク32に接続されている。シース液タンク32には、希釈液であるシース液が貯留されている。シース液タンク32には、シース液に圧力を加える陽圧手段33が備えられている。陽圧手段33は、測定制御部40の制御に基づいてシース液タンク32のシース液に陽圧を印加してシース液を送出する。このように、本実施形態に係る血液測定装置には、陽圧を印加してシース液を第1の容器11と第2の容器12に供給する液供給源を備える。
【0022】
チューブ25の先端は第1の容器11における第1の電極21の近くに接続されている。また、試料供給管23の先端である試料供給口23aは、チューブ25の先端よりアパーチャ14に近く設けられる。これにより、チューブ25から供給されたシース液は試料供給管23から放出される希釈血液試料のサンプルフローKを包むようにしてアパーチャ14へ向かうシースフローSを発生させる。このように、この血液測定装置には、第1の容器11に供給される血液試料をシースフローSによって集束させてアパーチャ14へ送り込むシースフロー作成手段が備えられている。
【0023】
第2の容器12における隔壁13に近接するチューブ26の先端26aには、第2の容器12から排出される液の流量を所定に調整する流量調整手段50が設けられている。この流量調整手段50は、チューブ25から第1の容器11へ供給されるシース液の圧力と、チューブ26から第2の容器12へ供給されるシース液の圧力を異ならせるように働き、チューブ26から第2の容器12へ供給されるシース液の流量を所定に調整する。
【0024】
流量調整手段50は、バルブにより構成することができる。この流量調整手段50であるバルブの開度を制御して流量調整(圧力調整)することにより、アパーチャ14より上流の第1の容器11とアパーチャ14より下流の第2の容器12との差圧を所望にする。つまり、第1の容器11の圧力を第2の容器12の圧力より高くし、アパーチャ14を通過するシースフローSが希釈血液試料のサンプルフローKの周囲を鞘状に包んだ状態で第2の電極22側へ流れるようにする。ここに、バルブの開度を制御して流量調整し、旋回流W中のサンプルフローKの絞り径が所望となるようにすることができる。勿論、バルブの開度を所望に制御して流量調整し、希釈血液試料のサンプルフローKの流量を調整して、旋回流W中のサンプルフローKの絞り径が所望となるようにすることもできる。いずれにしても、希釈血液試料のサンプルフローKを包んだ状態のシースフローSが旋回流W中を進む速さ(強さ)を容易に所望に調整することができる。
【0025】
流量調整手段50は、上記のバルブに限られるものではなく、チューブなどの経路を構成する手段における長さ及び/または径を変化させて構成したものであっても良い。
【0026】
第2の電極22側の端部には、廃液チューブ27が接続されている。第2の容器12内の液体は、廃液チューブ27を介して廃液タンク34へ排出される。この構成と上記のような流量調整手段50による流量調整(圧力調整)により、チューブ26の先端26aから放出されたシース液が隔壁13の周縁に近接する第2の容器12の内壁に沿って流れ、流速の早いシースフローSを第2の容器12の全体に亘って巻くように旋回して流れる旋回流Wが発生する。この旋回流Wは、アパーチャ14から第2の容器12へと進んだ希釈血液試料のサンプルフローKを中心にして旋回して廃液チューブ27へと向かう。また、シースフローSが希釈血液試料のサンプルフローKを包んだ状態で廃液チューブ27へと向かう。このように、この血液測定装置には、アパーチャ14から第2の容器12へ流出する血液試料を液供給源から供給されるシース液による旋回流Wによって集束させてアパーチャ14から離間する方向へ流出させる旋回流作成手段が備えられている。
【0027】
更に、流量調整手段50より先のチューブ26の先端26aは、第2の容器12における隔壁13近くに接続される。この接続部分においては、例えば本願出願人の出願に係る特開2012−127680号公報に記載のように、チューブ26の先端26aから放出されたシース液が隔壁13の周縁に近接する第2の容器12における内壁に沿って流れるように方向付けされるように、チューブ26の先端26aを設けることができる。このように構成することによって、隔壁13における第2の容器12側の内壁に沿って渦を巻くように旋回し、更に第2の電極22向かって流れる旋回流Wの発生を的確に補助するように働き、容器12をテーパ状に細径することで旋回流の勢いを保たせている。
【0028】
第1の電極21と第2の電極22は、測定制御部40に接続されている。測定制御部40には、文字等の表示やプリントを行う出力部とキーが設けられた操作部とを有する操作出力部41が接続されている。測定制御部40は、第1の容器11と廃液タンク34を接続するチューブ28に設けられたバルブ55の開閉制御を行う。具体的には、測定するために第1の容器11が液により満たされた状態とする場合にはバルブ55を閉成すると共に廃液チューブ27に設けられた図示せぬ流路開閉手段で第2の容器12からの液排出を止めてシース液で満たされた状態とする。測定時には、バルブ55の閉成を継続する一方、第2の容器12から液排出が可能となるように図示せぬ流路開閉手段を制御する。また、試料供給部31を制御して希釈血液試料を第1の容器11へ供給する。更に、測定制御部40は、第1の電極21及び第2の電極22間に微少電流を流して血液測定を行う測定手段として機能する。
【0029】
測定制御部40は、第1の容器11からアパーチャ14を介して第2の容器12へと流れ、第1の電極21と第2の電極22との間に存在するサンプルフローK中の血球による電気抵抗の変化を捕らえ、この変化に基づき血球計数の測定を行う。そして、測定結果を操作出力部41から出力する。
【0030】
更に、上記測定の際に測定制御部40は、陽圧手段33を制御してシース液タンク32から、第1の容器11及び第2の容器12へシース液の供給を行う。このとき流量調整手段50は、前述の通りにシースフローSと旋回流Wの強さが所望に調整された状態とされる。
【0031】
このため、第1の容器11内に所要の強さの流れでシースフローSが生じ、第2の容器12内に所要の強さの旋回流Wが発生する。アパーチャ14付近には旋回流Wを生じさせる新たなシース液が流入し、アパーチャ14付近に泡や血液が付着することなく高精度な測定を可能とする。これと共に旋回流Wは、希釈血液試料の噴流拡散を阻害して希釈血液試料がアパーチャ14付近などの感知領域に舞い戻ることなく高精度な測定を可能とする。上記の調整された流れに対してサンプルフローKの流量を変化させることにより、アパーチャ14を通過するサンプルフローKの絞り径を所望とすることができる。これにより、血球数の少ない希釈血液試料を大量に供給して(流入させて)血球の通過量を増加させることもでき、血球計測精度を向上させることが可能である。
【0032】
また、上記では、第1の容器11及び第2の容器12へシース液を供給する単一液供給源により供給する構成を示したが、これに限られるものではない。即ち、液供給源は、上記第1の容器11へシース液を供給する第1の液供給源と、上記第2の容器12へシース液を供給する第2の液供給源とを備え、上記第1及び第2の容器11、12へ供給するシース液の圧力を異ならせる構成を採用することができる。ここに、上記第2の液供給源の圧力が上記第1の液供給源の圧力より低圧とすると好適である。このような変更によっても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0033】
23 試料供給管
25、26 チューブ
31 試料供給部
32 シース液タンク
33 陽圧手段
34 廃液タンク
40 測定制御部
41 操作出力部
50 流量調整手段
55 バルブ