(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の技術の場合、基板にマスキングテープを貼り付ける工程、および、基板からマスキングテープを剥がす工程を、塗布装置外で行うことを要し、非効率であった。また、マスキングテープを剥がしたときに、基板にマスキングテープの粘着剤が付着し、残渣となる虞があった。また、特許文献3に記載の技術の場合、プラズマ処理が、下地となる基板に悪影響を及ぼす可能性があった。このため、従来技術には改善の余地があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板に対して非塗布領域を効率的かつ有効に形成する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、基板に流動性材料が塗布されていない非塗布領域を形成する塗布装置であって、基板を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記基板の主面に向けて流動性材料を吐出する吐出部と、前記吐出部を、前記保持部に保持された基板に対して相対的に移動させる移動機構と、前記保持部に保持された前記基板の主面のうち、前記非塗布領域に対応する部分に対向するようにマスク部を配するとともに、該マスク部を前記基板の移動に合わせて移動させるマスク機構とを備え
、前記移動機構は、前記吐出部を前記保持部に保持された前記基板の主面に平行な主走査方向に移動させる吐出部移動機構と、前記基板を保持した前記保持部を前記主走査方向に交差する副走査方向に移動させる保持部移動機構とを有し、前記マスク機構は、帯状のマスキングテープと、前記マスキングテープを巻出す巻出部と、前記巻出部が巻き出された前記マスキングテープを巻き取る巻取部と、前記巻出部から巻出された前記マスキングテープを前記基板に押し当てる押当部と、を備え、前記保持部移動機構による前記基板の前記副走査方向への移動に合わせて、前記巻出部が前記マスキングテープを前記副走査方向に巻出す。
【0013】
また、第
2の態様は、第
1の態様に係る塗布装置において、前記マスキングテープの移動方向および移動量が、前記基板の移動方向および移動量に一致するように、前記巻出部が前記マスキングテープを巻き出す。
【0014】
また、第
3の態様は、第
1または第
2の態様に係る塗布装置において、前記押当部は、前記マスキングテープの幅方向端部を前記基板から浮かせつつ、前記マスキングテープを前記基板に押し当てる。
【0015】
また、第
4の態様は、第
3の態様に係る塗布装置において、前記押当部は、前記マスキングテープの幅方向両端部のうち少なくとも一方の端部に対応する部分において、径が小さくなるローラを有する。
【0016】
また、第
5の態様は、第1から第
4までのいずれか1態様に係る塗布装置において、前記マスク機構は、前記基板の端部から外側にはみ出るように前記マスク部を配する。
【0017】
また、第
6の態様は、第1から第
5までのいずれか1態様に係る塗布装置において、前記マスク機構は、前記マスク部を複数有する。
【0018】
また、第
7の態様は、第
6の態様に係る塗布装置において、前記マスク機構は、複数の前記マスク部の間隔を調整する調整機構をさらに備えている。
【0019】
また、第
8の態様は、第1から第
7までのいずれか1態様に係る塗布装置において、前記マスク部を洗浄する洗浄機構、をさらに備えている。
【0020】
また、第
9の態様は、第1から
8までのいずれか1態様に係る塗布装置において、前記流動性材料が、有機EL液または正孔輸送液である。
【0021】
また、第
10の態様は、基板に流動性材料が塗布されない非塗布領域を形成する塗布方法であって、(a)基板を保持する工程と、(b)前記(a)工程で保持された前記基板の主面のうち、前記非塗布領域に対応する部分に対向するようにマスク部を配する工程と、(c)前記(b)工程で前記マスク部が配された前記基板に向けて、吐出部を前記基板に対して相対的に移動させつつ、流動性材料を吐出する工程と、(d)前記(c)工程において、前記(b)工程で前記基板の主面上に配された前記マスク部を移動させる工程とを有
し、前記(c)工程は、(c−1)前記吐出部を前記基板の主面に平行な主走査方向に移動させる工程と、前記基板を前記主走査方向に交差する副走査方向に移動させる工程とを含み、前記(b)工程は、帯状のマスキングテープを前記非塗布領域に対応する部分に対向するように配する工程であり、前記(d)工程は、(d−1)前記マスキングテープを、前記(c−1)工程における前記基板の副走査方向への移動に合わせて巻出部から巻き出す工程と、(d−2)前記(d−1)工程にて前記巻出部から巻き出された前記マスキングテープを巻き取る工程と、を含む。
【0024】
また、第
11の態様は、第
10の態様に係る塗布方法において、前記(d−1)工程は、前記マスキングテープの移動方向および移動量が、前記基板の移動方向および移動量に一致するように、前記巻出部が前記マスキングテープを巻き出す工程である。
【0025】
また、第
12の態様は、第
10または
11の態様に係る塗布方法において、前記(b)工程は、前記マスキングテープの幅方向両端部のうち少なくとも一方の端部を前記基板から浮かせるようにして、前記マスキングテープを前記基板に押し当てる工程である。
【0026】
また、第
13の態様は、第
10から
12までのいずれか1態様に係る塗布方法において、前記(b)工程は、前記基板の端部から外側にはみ出るように前記マスク部を配する工程である。
【0027】
また、第
14の態様は、第
10から
13までのいずれか1態様に係る塗布方法において、前記(b)工程は、複数の前記マスク部を前記基板上に配する工程である。
【0028】
また、第
15の態様は、第
14の態様に係る塗布方法において、前記(b)工程は、(b−1)複数の前記マスク部の間隔を調整する工程を含む。
【0029】
また、第
16の態様は、第
10から
15までのいずれか1態様に係る塗布方法において、(e)前記マスク部を洗浄する工程、をさらに有する。
【0030】
また、第
17の態様は、第
10から
16までのいずれか1態様に係る塗布方法において、前記流動性材料が、有機EL液または正孔輸送液である。
【発明の効果】
【0031】
第1の態様に係る塗布装置によると、保持部に保持された基板の非塗布領域にマスク部を配し、その基板上で流動性材料を吐出する吐出部を移動させることによって、基板に非塗布領域を効率的に形成することができる。また、マスク部を非塗布領域に対応する部分を覆うため、従来のように基板への接着剤の付着、あるいは、流動性材料剥離のためのプラズマ処理が不要となる。これによって、基板に非塗布領域を有効に形成することができる。
【0032】
また、第
1の態様に係る塗布装置によると、基板に対して吐出部を主走査方向および副走査方向に相対的に移動させることによって、基板に流動性材料を効率良く塗布することができる。
【0033】
また、第
1の態様に係る塗布装置によると、巻出部及び巻取部によって、マスキングテープの巻き出しおよび巻き取りを行うことによって、マスキングテープの同じ箇所に対して何度も流動性材料が塗布されることを抑制できる。これによって、マスク部表面から基板に流動性材料が流出することを抑制することができる。また、押当部によって、マスキングテープが基板から浮くことを抑制できるため、非塗布領域に対応する部分を有効に覆うことができる。
【0034】
また、第
2の態様にかかる塗布装置によると、基板の移動方向および移動量に一致するように、マスキングテープを移動させるため、基板がマスキングテープに擦れることでゴミなどが発生することを低減することができる。
【0035】
また、第
3の態様に係る塗布装置によると、マスキングテープの端部を基板から浮かせるように押し当てるため、マスキングテープの端部において、毛細管現象によって流動性材料が基板とマスキングテープとの間に侵入することを低減できる。
【0036】
また、第
4の態様に係る塗布装置によると、ローラによって、マスキングテープを基板に押し当てた際に、マスキングテープの端部を基板から浮かせることができる。
【0037】
また、第
5の態様に係る塗布装置によると、基板の端部をマスク部で確実に覆うことができるため、基板の端部および側面に流動性材料が塗布されることを抑制できる。
【0038】
また、第
6の態様に係る塗布装置によると、基板上の複数の箇所に、非塗布領域を形成することができる。
【0039】
また、第
7の態様に係る塗布装置によると、マスク部の間隔を調整することができるため、非塗布領域間の間隔を適宜調整することができる。
【0040】
また、第
8の態様に係る塗布装置によると、マスク部を洗浄することで流動性材料を除去することができる。
【0041】
また、第
9の態様に係る塗布装置によると、有機EL液または正孔輸送液を基板に塗布することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態に係る塗布装置1について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面においては、理解容易のため、各部の寸法や数が必要に応じて誇張または簡略化して図示されている場合がある。また、
図1および以降の各図においては、説明の便宜のため、X方向およびこれに直交するY方向を水平方向とし、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系が示されている。ただし、これらの各方向は、各要素の配置関係を限定する趣旨のものではない。
【0044】
<1. 実施形態>
<1.1. 構成および機能>
図1は、実施形態に係る塗布装置1の概略平面図である。また、
図2は、
図1に示される塗布装置1の概略正面図である。
【0045】
塗布装置1は、有機EL液、正孔輸送材料または正孔注入材料などの流動性材料を塗布液として用いる有機EL表示装置を製造するための装置として構成されている。なお、塗布装置1では、有機EL液、正孔輸送材料、正孔注入材料などの複数の塗布液を用いることが可能であるが、以下の説明では、それらの代表として有機EL液3を塗布液とした場合について説明を行う。
【0046】
塗布装置1は、基板保持装置2、有機EL塗布機構5、マスク機構6、洗浄機構7(
図7参照)および制御部10を備えている。
【0047】
図1(b)に示すように、基板保持装置2は、ステージ21、旋回部22、平行移動テーブル23、ガイド受け部24、およびガイド部材25を有している。
【0048】
ステージ21は、被塗布体となるガラス基板等の基板Pをその上面に保持する水平な厚板状の剛性材である。ステージ21の下部は、旋回部22によって支持されており、旋回部22の回動動作によって図示θ方向にステージ21が水平面内で旋回可能に構成されている。
【0049】
また、ステージ21の内部には、図示を省略するが、有機EL液3が塗布された基板Pをステージ21面上で予備加熱処理するための加熱機構、基板Pを下方から吸着して保持する吸着機構、および、基板Pを搬送機構との間で受け渡しする際に利用される受け渡しピン機構などが設けられている。ステージ21によって基板Pが保持される。
【0050】
ステージ21は、保持部の一例である。
【0051】
ガイド部材25は、有機EL塗布機構5の下方を通るように、Y軸方向に延びるように配され、床面に水平に固定されている。平行移動テーブル23の下面には、ガイド部材25と当接してガイド部材25上を滑動するガイド受け部24が固定されている。
【0052】
また、平行移動テーブル23の上面には、旋回部22が固定されている。平行移動テーブル23が、例えばリニアモータ(図示せず)からの駆動力を受けて、ガイド部材25に沿ったY軸方向に移動可能になり、旋回部22に支持されたステージ21の水平直進移動も可能になる。平行移動テーブル23、ガイド受け部24、ガイド部材25、および、例えばリニアモータ(図示せず)からなる駆動機構によって、ステージ移動機構26が構成されている。
【0053】
有機EL塗布機構5は、ノズルユニット50とノズル移動機構51とを有している。
【0054】
ノズルユニット50は、赤、緑、および青色の何れか1色の有機EL液3を吐出する複数の塗布ノズル52(
図1では、3本の塗布ノズル52a、52b、および52c)を並設した状態で保持する。ノズルユニット50は、ステージ21に保持された基板Pの主面に有機EL液3を吐出する吐出部の一例である。なお、「基板の主面」とは、基板Pが矩形状である場合において、基板Pの長手方向および幅方向のそれぞれと平行な面をいう。無論、基板Pの形状は、矩形に限定されるものではなく、様々な形状のものが想定されるが、一般的には、基板Pは、平坦な面を主面として有する板状部材が想定される。
【0055】
各塗布ノズル52a〜52cへは、それぞれ図示しない供給部から赤、緑、および青色の何れか1色の有機EL液3が供給される。なお、複数の塗布ノズル52から同色の有機EL液3が吐出されるようにしてもよい。
【0056】
塗布ノズル52a〜52cの先端は、それらの高さ(Z軸方向に関する位置)が同じであり、水平面内においてはX軸方向から傾いた斜め方向に、等間隔でほぼ直線的に1列に配置されている。また、ノズルピッチ(各ノズル間のY方向の間隔)は、適宜設定することが可能であるが、実施形態においては、基板Pに形成されたストライプ状の溝3列分の間隔と一致するように設定されている。
【0057】
ノズル移動機構51は、X軸方向に延びるシャフトガイド511およびボールネジ512と、図示しないモータとを備えている。ノズルユニット50には、ボールネジ512が螺合し、シャフトガイド511が貫通している構成となっている。そのため、図示しないモータにより、ボールネジ512が回動されると、それに螺合されているノズルユニット50はガイドシャフト511に沿って、X方向に移動する。
【0058】
制御部10が、塗布ノズル52a〜52cから有機EL液3を塗布させつつ、ノズルユニット50をX軸方向に沿って移動させるようにノズル移動機構51を制御することで、ステージ21上に保持される基板Pの溝に、塗布ノズル52a〜52cから所定流量の有機EL液3を吐出させる。このとき、塗布ノズル52a〜52cのピッチが基板Pの溝3列分と一致するため、互いに2列ずつ間隔をあけた3列分の溝について塗布が行われる。すなわち、X軸方向が、主走査方向となる。
【0059】
また、塗布ノズル52a〜52cのX軸方向吐出位置において、ステージ21に保持された基板Pから逸脱した両側空間には、基板Pから外れて吐出された有機EL液3を受ける液受部53L,53Rがそれぞれ設けられている。ノズル移動機構51は、基板Pの一方サイド外側に配設されている液受部53(例えば、液受部53L)の上部空間から、基板Pを横断して、基板Pの他方外側に配設されている液受部53(例えば、液受部53R)の上部空間まで、ノズルユニット50を往復移動させることで、基板上に有機EL液3を塗布する。
【0060】
また、平行移動テーブル23は、ノズルユニット50が液受部53の上部空間に配置されている際、ノズル往復移動方向とは交差する副走査方向(ここでは、主走査方向に直交する+Y方向)に所定ピッチ(例えば、ノズルピッチの3倍分)だけステージ21を移動させる。このようなノズル移動機構51および平行移動テーブル23の動作と、塗布ノズル52a〜52cから有機EL液3を液柱状態で吐出する吐出動作とを行うことによって、赤色の有機EL液3が基板Pに形成されたストライプ状の溝毎に配列された、いわゆる、ストライプ配列が基板P上に形成される。
【0061】
図3は、基板P上に配置されたマスク機構6の概略斜視図である。
図4は、基板Pにマスキングテープ611を押し当てているマスク機構6の概略側面図である。マスク機構6は、複数(ここでは4つ)のマスキングテープ駆動機構61と、各マスキングテープ駆動機構61を昇降する昇降機構62と、各マスキングテープ駆動機構61の主走査方向の位置を調整する調整機構63(
図9参照)とを備えている。
【0062】
各マスキングテープ駆動機構61は、マスキングテープ611(マスク部)、巻出ローラ612,巻取ローラ613および一対の押当ローラ614,614を備えている。
【0063】
巻出ローラ612および巻取ローラ613は、それぞれの回転軸が主走査方向(X軸方向)と平行に延びるように配されている。巻出ローラ612および巻取ローラ613は、副走査方向(+Y方向)に関して所定の間隔を空けて配置されている。
【0064】
マスキングテープ611は、金属製(例えばアルミニウム製)の帯状フィルムである。マスキングテープ611の厚さは、塗布処理が行われる際の、塗布ノズル52と基板P間の距離(例えば0.2〜0.5mm程度)よりも小さく、例えば、0.05〜0.1mm程度とされる。なお、マスキングテープ611として、樹脂製のものを使用することも可能である。
【0065】
マスキングテープ611の上下面のうち、例えば上面(すなわち、塗布ノズル52に対向する面)と幅方向(主走査方向)両側の面に、フッ素樹脂コーティングなどの撥油性処理を施してもよい。これによって、マスキングテープ611に、有機EL液3を弾く性質を持たせることができる。
【0066】
マスキングテープ611は、各端部が巻出ローラ612および巻取ローラ613にそれぞれ巻回されている。マスキングテープ611は、巻出ローラ612から送り出されて、巻取ローラ613に巻き取られる。
【0067】
一対の押当ローラ614,614は、好ましくは、樹脂製などで形成されることによって、適当な弾性を有している。一対の押当ローラ614,614は、主走査方向に延びている。一対の押当ローラ614,614は、巻出ローラ612および巻取ローラ613の間に配置されており、かつ、副走査方向に所定の間隔を空けて配置されている。
【0068】
図5は、押当ローラ614の正面図である。また、
図6は、押当ローラ614によって基板に押し当てられているマスキングテープ611の断面を示す概略図である。
【0069】
図5に示されるように、押当ローラ614は、クラウン形状を有している。すなわち、主走査方向両端部の径が、中央部の径よりも小さくなっている。より詳細には、押当ローラ614の中央部から所定位置までは同一径とされており、途中から端部にかけて径が小さくなっている。このため、押当ローラ614によってマスキングテープ611を基板Pに押し当てた際に、押当ローラ614の主走査方向両端部が基板Pから距離d1だけ離間する。このように、本実施形態では、押当ローラ614がクラウン形状を有することによって、マスキングテープ611の幅方向両端部が、
図6に示されるように、基板Pから浮かせることができる。
【0070】
仮に、押当ローラ614の径を、主走査方向に関して一定とした場合、マスキングテープ611における、押当ローラ614,614に挟まれた部分は、その幅方向両端部が基板Pに接触するか、もしくは、僅かに隙間を作って浮く可能性がある。仮に、その隙間が比較的小さい場合、マスキングテープ611の幅方向端部付近に塗布された有機EL液3が、毛細管現象によって、基板Pとマスキングテープ611との間に侵入する虞がある。
【0071】
これに対して、本実施形態では、一対の押当ローラ614,614がクラウン形状を有するため、マスキングテープ611の幅方向両端部を基板Pから十分に浮かせることができる。このため、
図6に示される様に、両端部付近に塗布された有機EL液3が、有機EL液3が基板Pとマスキングテープ611との間に侵入することを効果的に抑制することができる。なお、マスキングテープ611の幅方向端部は、その上部を通過する塗布ノズル52の先端部よりも低くなるように、クラウン形状が設けられる。これによって、マスキングテープ611と塗布ノズル52とが干渉することを抑制できる。
【0072】
なお、詳細については後述するが、本実施形態では、マスキングテープ611の送り出しは、マスキングテープ611と基板Pとの間の摩擦力によるギア効果によって、行われる。このため、巻出ローラ612および巻取ローラ613および一対の押し当てローラ614,614は、受動的に回転するフリーローラとして構成されていてもよい。ただし、後述するように、洗浄機構7が備える洗浄液供給部71による洗浄時において、巻取ローラ613から巻出ローラ612に向けてマスキングテープを逆送する場合(
図7参照)には、巻出ローラ612および巻取ローラ613を能動的に回転させる駆動機構を設けてもよい。
【0073】
昇降機構62は、各マスク機構61を一体的または独立して昇降させる機能を備えている。詳細には、昇降機構62は、各マスク機構61を、一対の押当ローラ614,614が、マスキングテープ611を基板Pに押しつける押当位置(
図4参照)と、該押当位置よりも上方であって、押当ローラ614,614によるマスキングテープ611の押し当てが解除される解除位置(不図示)との間で昇降させる。
【0074】
図7は、洗浄機構7を示す概略図である。
図8は、マスキングテープ611が洗浄液供給部71によって洗浄されている様子を示す概略図である。洗浄機構7は、マスキングテープ611の上面と下面とを同時に覆い、それぞれの面に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給部71を備えている。
【0075】
各洗浄液供給部71は、マスキングテープ611の幅方向に移動可能とされており、マスキングテープ611の上面および下面を覆う洗浄位置(実線で示すポジション)と、マスキングテープ611から退避する退避位置(破線で示すポジション)との間で移動する。
【0076】
マスキングテープ611が洗浄される場合、まず、洗浄機構7が各洗浄液供給部71を各マスキングテープ611の側方の位置(退避位置)に移動させる。そして、各洗浄液供給部71をマスキングテープ611の幅方向に沿って洗浄液供給部71を洗浄位置にまで移動させる。これによって、マスキングテープ611の上下面が、洗浄液供給部71のU字状の内面に対向する。そして、洗浄液供給部71からマスキングテープ611の上面および下面に、洗浄液が供給される。そして、巻出ローラ612および巻取ローラ613が逆回転されことによって、マスキングテープ611が逆送りされ、有機EL液3が付着した部分が洗浄液供給部71に順次送り込まれ、洗浄される。
【0077】
なお、図示を省略するが、洗浄液供給部71から出たマスキングテープ611の部分に、ジェットエアなどを供給することによって、マスキングテープ611を乾燥させるエア供給部が設けられていてもよい。もちろん、洗浄液供給部71の内部でジェットエアを供給できるようにしてもよい。
【0078】
図9は、基板P上における複数のマスキングテープ611の位置関係を示す概略平面図である。調整機構63は、詳細な図示を省略するが、ノズル移動機構51と同様に、ガイド機構によって、マスキングテープ駆動機構61を主走査方向に沿って一体的に平行移動させる。これによって、調整機構63は、複数のマスキングテープ611のそれぞれを、主走査方向に関して任意の位置に配することができる。
【0079】
例えば、
図9(a)に示される様に、1つのマスキングテープ611を基板Pの主走査方向端部に重なるように配置し、かつ、該マスキングテープ611を基板Pの主走査方向端部から少しはみ出すように配置してもよい。これによって、基板Pの端部を確実に覆うことができるため、基板Pの端面や裏面に有機EL液3が付着することを効果的に抑制できる。
【0080】
また、
図9(b)に示される様に、複数のマスキングテープ611のうち、使用しないマスキングテープ611を、基板Pの上方から逸脱する位置に退避させておき、残りのマスキングテープ611のみを使用して、塗布処理を行うことも可能である。
【0081】
なお、基板P毎に非塗布領域の位置を変更する必要がない場合には、調整機構63を省略することも可能である。
【0082】
<1.2. 動作>
次に、塗布装置1が実行する塗布処理の動作フローを説明する。
図10は、塗布装置1の動作フローを示す図である。なお、以下で説明する塗布装置1の各動作は、特に断らない限り、制御部10の制御に基づいて行われる。
【0083】
まず、不図示の搬送機構によって基板Pがステージ21上に搬送され、ステージ21に保持される(ステップS1)。そして、ステージ21が副走査方向に適宜移動することによって、ノズルユニット50が塗布を開始する位置にくるように、基板Pが移動される(ステップS2)。
【0084】
次に、マスク機構6が、各マスキング駆動機構部61を駆動することによって、複数のマスキングテープ611がそれぞれ主走査方向に移動される。これによって、主走査方向における各マスキングテープ611の間隔が調整される(ステップS3)。すなわち、基板Pの非塗布領域に対応する部分の上方に、各マスキングテープ611が配される。
【0085】
マスキングテープ611間の調整が行われると、マスキングテープ駆動機構61が下降される。詳細には、押当ローラ614,614がマスキングテープ611を介して基板Pに接触するまで、マスキングテープ611、巻出ローラ612、巻取ローラ613および一対の押当ローラ614,614が下降される。これによって、基板Pの非塗布領域に対応する部分に、各マスキングテープ611が押し当てられることとなる(ステップS4)。これにより、基板Pの非塗布領域に対応する部分に対向する様に、マスキングテープ611が配されることとなる。
【0086】
マスキングテープ611の配置が完了すると、ノズルユニット50が、塗布ノズル52a〜52cから有機EL液3を吐出しながら、液受部53L,53Rのいずれか一方から他方へ向けて、主走査方向に移動する。これによって、基板Pおよび基板P上に配された複数のマスキングテープ611上に、有機EL液3がストライプ状に塗布される(ステップS5)。この1回の主走査方向の塗布動作が完了すると、ノズルユニット50は、液受部53Lまたは53R上で有機EL液3を吐出しながら所要時間待機する。
【0087】
ノズルユニット50が待機している間、ステージ移動機構26によって、所要の距離(例えば、ノズルピッチの3倍分の距離)だけステージ21を+Y方向(副走査方向)に移動させる。その結果、ステージ21上に保持された基板Pが、副走査方向に移動される(ステップS6)。
【0088】
またステップS6において、基板Pが副走査方向に移動する際、基板Pに押し当てられているマスキングテープ611が、ギア効果によって受動的に基板Pに引っ張られる。これによって、基板Pの移動量に相当する分、巻出ローラ612、巻取ローラ613および一対の押当ローラ614,614が回転され、マスキングテープ611が移動される。換言すると、マスキングテープ611の移動方向および単位時間当たりの移動量が、基板Pの移動方向および単位時間当たりの移動量に一致するように、巻出ローラ612が、マスキングテープ611を巻き出す。すなわち、マスキングテープ611の移動速度が、基板Pの移動速度に一致するように制御される。このようにして、新たな未塗布部分を基板P上に送り出される。
【0089】
すなわち、本実施形態では、副走査方向に関して、基板Pに対するノズルユニット50の塗布位置が変更される度に、マスキングテープ611が順次送り出されることとなる。これによって、マスキングテープ611の上面の同じ場所に対して、何度も有機EL液3が塗布されることが抑制される。したがって、有機EL液3の飛び跳ねを低減することができる。また、マスキングテープ611の移動速度を基板Pの移動速度に一致させることによって、基板P・マスキングテープ611間の擦れを低減できる。これによって、粉塵などのゴミの発生を低減することができる。
【0090】
1回の副走査方向の基板Pの送り動作が完了すると、塗布処理が完了したかどうかが判定される(ステップS7)。また、塗布処理が完了していない場合には、塗布装置1は、ステップS5に移行し、基板P上の未塗布部分に対する塗布処理が行われる。
【0091】
結果として、一回の主走査方向の塗布動作と、一回の副走査方向の送り動作とが繰り返し行われることによって、基板Pの有効領域(溝が形成されている領域)に対して有機EL液3が塗布される。塗布処理が完了すると、マスク機構6は、各マスキングテープ駆動機構61を上昇させる。これによって、マスキングテープ611の押当が解除される(ステップS8)。そして、図示しない搬送機構によって、基板Pが塗布装置1から搬出される(ステップS9)。搬出された基板Pに対しては、乾燥処理(ベーク処理)が行われる。
【0092】
基板Pの搬出処理と並行して、マスキングテープ611に対し、洗浄機構7による洗浄処理が実行される(ステップS10)。詳細には、洗浄機構7が、洗浄液供給部71を各マスキングテープ611の側方部に配する。そして、洗浄液供給部71がマスキングテープ611の幅方向に移動することによって、各マスキングテープ611が洗浄液供給部71内に挿入される。そして巻出ローラ612および巻取ローラ613が逆回転することによって、マスキングテープ611の逆送りが行われ、マスキングテープ611が洗浄される。
【0093】
以上の動作によって、特定色の有機EL液3について塗布・乾燥処理が完了すると、有機EL表示装置の発光層が形成される。なお、各塗布ノズル52から異なる色の有機EL液3を吐出するようにしてもよいが、同じ色の有機EL液3を吐出することも考えられる。この場合、各色について塗布・乾燥処理が順次行われることによって、発光層が形成される。発光層が形成された基板に対して例えば真空蒸着法により陰極電極が発光層上に形成されることによって、有機EL表示装置が製造される。
【0094】
本実施形態に係る塗布装置1によると、塗布装置1が備えるステージ21上で、基板Pの非塗布領域に対応する部分にマスキングテープ611を配置することができる。このため、基板Pに非塗布領域を形成しつつ有効領域に有機EL液3を塗布することができる。また、マスキングテープ611を基板Pに対して接着剤で接着させることを要さず、また、有機EL液3を剥離するためのプラズマ処理することを要しない。このため、基板Pが汚れたり損傷したりする虞が少なくなり、非塗布領域を有効に形成することができる。
【0095】
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0096】
例えば、上記実施形態では、マスキングテープ611の幅が一定とされている。しかしながら、
図11に示されるマスキングテープ611Aのように、幅が一定ではなく、幅が大きい部分と小さい部分とが連続していてもよい。このようなマスキングテープ611Aの場合、巻出ローラ612および巻取ローラ613を制御することによって、基板Pの非塗布領域に対応する部分に、適切な幅の部分が配される。このとき、所望の幅の部分を巻き出すため、例えば、巻出ローラ612または巻取ローラ613の回転量を監視したり、あるいは、センサー装置などで幅を検出したりすることが考えられる。
【0097】
また、マスキングテープ611に任意の形状の孔を設けてもよい。例えば、
図12に示されるマスキングテープ611Bは、複数の細長い孔H1が、幅方向に沿って並列するように形成されている。これによって、基板Pの非塗布領域内に、孔形状に対応したパターンを形成することが可能となる。
【0098】
また、上記実施形態では、塗布装置1において、複数のマスキングテープ駆動機構61が設けられているが、1つのマスキングテープ駆動機構61のみが備えられていてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、マスキングテープ611が移動する基板Pに引っ張られることによって、巻出ローラ612、巻取ローラ613および一対の押当ローラ614,614が受動的に回転するように構成されている。しかしながら、塗布処理時において、これらのローラを能動的に回転するように構成してもよい。例えば、基板Pの副走査方向の移動に同期して動作するモータによって、これらのローラを回転させてもよい。基板Pの移動に同期して回転させることによって、基板Pとマスキングテープ611とが擦れることがより確実に抑制され、ゴミの発生を抑制できる。
【0100】
また、上記実施形態では、押当ローラ614をクラウン形状とすることによって、マスキングテープ611の幅方向端部を基板Pから離間させている。しかしながら、押当ローラ614のうち、マスキングテープ611に接触する主走査方向の長さを、マスキングテープ611の幅よりも短くしてもよい。これによっても、マスキングテープ611の幅方向両端部を基板Pから浮かせることが可能である。
【0101】
また、マスキングテープ611自体の幅方向端部の厚みを、その中央部の厚みよりも薄くすることによって、幅方向端部を基板Pから離間させることも考えられる。例えば、中央部から幅方向端部に向かうに連れて、マスキングテープ611の下面が基板Pから遠ざかるように、幅方向端部の厚みを次第に薄くなるようにマスキングテープ611を構成してもよい。もちろん、1段階もしくは多段階でステップ状に薄くなるようにマスキングテープ611を構成してもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、洗浄機構7によるマスキングテープ611の洗浄処理は、塗布処理後に実施する構成を例示しているが、例えば、マスキングテープ611の洗浄処理が必要か否かを判断し、必要と判断された時のみ洗浄処理を実施するようにしてもよい。もしくは、定期的に洗浄処理を実施するようにしてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、洗浄機構7として、洗浄液供給部71を設ける構成を例示しているが、例えば、洗浄液供給部71の代わり、もしくは追加的に、マスキングテープ611の表面に押し当てられることによって、有機EL液3を除去する(スクイーズする)ゴム部材などを採用してもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、昇降機構62は、各マスキングテープ駆動機構61を昇降すると説明した。このため、巻出ローラ612、巻取ローラ613および一対の押当ローラ614,614を一体的に昇降させている。しかしながら、例えば、一対の押当ローラ614,614のみを、巻出ローラ612および巻取ローラ613に対して上下に移動できるようにしてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、ノズルユニット50をX軸方向に移動させ、基板Pを+Y方向に移動させることによって、基板Pに対するノズルユニット50の主走査方向および副走査方向の相対的な移動が実現されている。しかしながら、ノズルユニット50を+Y方向へ、あるいは、基板PをX軸方向に移動させるように、塗布装置1が構成されていてもよい。無論、ノズルユニット50および基板Pのいずれか一方のみを、X軸方向および+Y方向へ移動させるように、塗布装置1が構成されていてもよい。
【0106】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り、適宜組み合わせたり、あるいは適宜省略したりすることができる。