特許第6208508号(P6208508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208508燃料加熱システム、および、これを用いた燃料レール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208508
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】燃料加熱システム、および、これを用いた燃料レール
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20170925BHJP
   F02M 53/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F02M55/02 350G
   F02M53/02
   F02M55/02 330D
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-194900(P2013-194900)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-59542(P2015-59542A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000113942
【氏名又は名称】マルヤス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】小倉 隼太
(72)【発明者】
【氏名】原田 成樹
(72)【発明者】
【氏名】中根 民之
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−196365(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/009846(WO,A1)
【文献】 特開2011−074782(JP,A)
【文献】 特開2011−074779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(2)に燃料を供給する燃料噴射弁(10)とともに前記内燃機関または前記内燃機関近傍に取り付けられ、燃料供給源(7)からの燃料を加熱して前記燃料噴射弁に導く燃料加熱システム(100)であって、
内側に加熱室(300)を形成する加熱室形成部(30)と、
前記燃料供給源からの燃料を前記加熱室内に導く入口開口部(33)と、
前記加熱室内の燃料を前記燃料噴射弁に導く出口開口部(34)と、
発熱可能な発熱部(62)を有し、当該発熱部が前記加熱室内に位置するよう前記加熱室形成部に設けられ、前記加熱室内の燃料を前記発熱部により加熱可能な加熱装置(60)と、
一端に前記出口開口部が形成され、他端が前記加熱室形成部に接続するよう前記加熱室内に設けられ、内側に前記燃料噴射弁を接続可能な筒部(32)と、を備え、
前記入口開口部は、軸が前記発熱部の軸に対しねじれの関係となるよう形成されており、
前記出口開口部は、前記燃料加熱システムが前記内燃機関または前記内燃機関近傍に取り付けられた状態において、前記発熱部に対し鉛直方向上側に位置している燃料加熱システム。
【請求項2】
前記発熱部は、棒状に形成されており、
前記発熱部の軸を含む仮平面で前記加熱室を2つの領域に分けたとき、前記入口開口部および前記出口開口部は、いずれも、前記2つの領域の一方側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の燃料加熱システム。
【請求項3】
前記筒部は、前記加熱室形成部と一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料加熱システム。
【請求項4】
前記加熱室形成部は、
所定の板厚の材料により形成され、上凹部(41)を有する上部材(40)と、
所定の板厚の材料により形成され、下凹部(51)を有し、前記上部材と接合することにより前記上凹部と前記下凹部との間に前記加熱室を形成する下部材(50)と、
からなることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料加熱システム。
【請求項5】
前記入口開口部は、前記上部材に形成され、
前記筒部は、前記下部材に接続するよう設けられていることを特徴とする請求項に記載の燃料加熱システム。
【請求項6】
前記入口開口部と前記出口開口部とは、互いに対向するのを避けた位置に形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料加熱システム。
【請求項7】
前記出口開口部は、前記加熱室を形成する壁面のうち互いに対向する壁面(301、304)間の距離の1/2の位置よりも一方の壁面(301)側に寄った位置に形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料加熱システム。
【請求項8】
前記出口開口部は、前記燃料加熱システムが前記内燃機関または前記内燃機関近傍に取り付けられた状態において、前記加熱室の鉛直方向の長さの1/2の位置よりも鉛直方向上側の位置に形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料加熱システム。
【請求項9】
前記加熱室内に設けられ、前記入口開口部から前記加熱室に流入した燃料を前記発熱部側へ案内可能な第1案内部(70)をさらに備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料加熱システム。
【請求項10】
前記第1案内部は、前記入口開口部の軸上に設けられていることを特徴とする請求項に記載の燃料加熱システム。
【請求項11】
前記発熱部は、棒状に形成され、
前記第1案内部により案内された燃料を前記発熱部の長手方向に沿って流れるよう案内可能な第2案内部(305)をさらに備えることを特徴とする請求項または10に記載の燃料加熱システム。
【請求項12】
前記第2案内部は、前記加熱室を形成する壁面のうち、前記第1案内部により案内される燃料が衝突する曲面状の壁面(305)であることを特徴とする請求項11に記載の燃料加熱システム。
【請求項13】
前記第1案内部は、板状の本体(71)、および、当該本体を板厚方向に貫く穴部(74)を有することを特徴とする請求項12のいずれか一項に記載の燃料加熱システム。
【請求項14】
前記第1案内部は、板状の本体(71)、および、前記本体の外縁部から前記本体に対し傾斜しながら延びる傾斜部(75)を有し、
前記本体と前記傾斜部との境界は、前記入口開口部の中心軸(Ax1)に対し前記発熱部とは反対側に位置していることを特徴とする請求項13のいずれか一項に記載の燃料加熱システム。
【請求項15】
前記筒部の前記発熱部側の外壁と、前記加熱室を形成する壁面との距離は、前記筒部の前記発熱部とは反対側の外壁と、前記加熱室を形成する壁面との距離よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の燃料加熱システム。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の燃料加熱システムと、
前記入口開口部に接続し前記燃料供給源からの燃料が流れる燃料流路(200)を有する長尺状のレール部(20)と、を備え、
前記燃料加熱システムは、前記レール部の長手方向に沿って複数設けられ、
前記燃料噴射弁は、複数の前記燃料加熱システムのそれぞれに対応するよう複数取り付けられることを特徴とする燃料レール(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を加熱する燃料加熱システム、および、これを用いた燃料レールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱した燃料を燃料噴射弁から噴射し内燃機関に供給する燃料供給システムが知られている。例えば特許文献1に記載された燃料レールでは、加熱室で加熱した燃料を内燃機関に供給することにより、燃料の着火性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4834728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、エタノール等のアルコール燃料、または、アルコールとガソリンとの混合燃料を内燃機関に用いる場合、アルコールの濃度が高く、かつ、環境温度が低いとき、燃料の着火性が低下し、内燃機関が始動不可となることがある。そこで、上述のように加熱した燃料を内燃機関に供給することにより、アルコール燃料またはアルコール濃度の高い混合燃料であっても、環境温度にかかわらず内燃機関を始動させることができる。
【0005】
また、ガソリンを内燃機関に用いる場合、環境温度が低いとき、燃料の粘度が増大し、燃料噴霧の粒度が増大することがある。燃料噴霧の粒度が増大すると、燃料の着火性が低下し、内燃機関の出力低下およびエミッション悪化を引き起こすおそれがある。そこで、上述のように加熱した燃料を内燃機関に供給することにより燃料噴霧の粒度を小さくし、環境温度が低い場合でも、内燃機関の出力低下およびエミッション悪化を抑制することができる。
【0006】
ところで、特許文献1には、円筒状の加熱室を形成する円筒部材の中心軸に沿うよう棒状の発熱部を設けた燃料加熱システムおよび燃料レールが開示されている(特許文献1の図20参照)。この燃料加熱システムでは、燃料噴射弁は、円筒部材とは別体の筒状の接続カップの内側に接続される。接続カップは、円筒部材の端部から径方向外側へ飛び出すようにして加熱室の外側に設けられている。そのため、接続カップを含む燃料加熱システム全体の体格が大型化するおそれがある。
【0007】
また、特許文献1の燃料加熱システムでは、接続カップが加熱室の外側に位置し外気に晒されるため、加熱室内で加熱され接続カップを経由して燃料噴射弁に導かれる燃料の温度が接続カップの内側において低下するおそれがある。これにより、加熱室内で燃料を加熱したにもかかわらず、温度が低下した燃料が燃料噴射弁に導かれるおそれがある。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温の燃料を効率的に燃料噴射弁に導くことが可能な小型の燃料加熱システム、および、燃料レールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内燃機関に燃料を供給する燃料噴射弁とともに内燃機関または内燃機関近傍に取り付けられ、燃料供給源からの燃料を加熱して燃料噴射弁に導く燃料加熱システムであって、加熱室形成部と入口開口部と出口開口部と加熱装置と筒部とを備えている。
加熱室形成部は、内側に加熱室を形成している。入口開口部は、燃料供給源からの燃料を加熱室内に導く。出口開口部は、加熱室内の燃料を燃料噴射弁に導く。
【0010】
加熱装置は、発熱可能な発熱部を有し、当該発熱部が加熱室内に位置するよう加熱室形成部に設けられ、加熱室内の燃料を発熱部により加熱可能である。
筒部は、一端に出口開口部が形成され、他端が加熱室形成部に接続するよう加熱室内に設けられ、内側に燃料噴射弁を接続可能である。
【0011】
このように、本発明では、燃料噴射弁を接続可能な筒部は、加熱室内に設けられている。すなわち、筒部は、加熱室形成部から飛び出さないよう設けられている。そのため、筒部を含む燃料加熱システム全体の体格を小さくすることができる。また、本発明の燃料加熱システムに燃料噴射弁を接続したとき、燃料噴射弁は、長手方向の一部(端部)が加熱室形成部内に位置する状態となる。よって、燃料噴射弁を接続した状態の燃料加熱システムと燃料噴射弁とを合わせた体格に関し、燃料噴射弁の長手方向の長さを短縮することができる。
【0012】
また、本発明では、筒部が加熱室内に設けられているため外気に晒されることがなく、従来技術のように筒部が加熱室外に設けられる場合と比べ、加熱室内で加熱され出口開口部および筒部を経由して燃料噴射弁に導かれる燃料の温度低下を筒部の内側において抑制することができる。したがって、高温の燃料を効率的に燃料噴射弁に導くことができる。
また、本発明では、入口開口部は、軸が発熱部の軸に対しねじれの関係となるよう形成されている。また、出口開口部は、燃料加熱システムが内燃機関または内燃機関近傍に取り付けられた状態において、発熱部に対し鉛直方向上側に位置している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態による燃料加熱システムおよび燃料レールを示す斜視図。
図2】本発明の第1実施形態による燃料加熱システムおよび燃料レールを示す斜視図であって、図1とは別の方向から見た図。
図3】本発明の第1実施形態による燃料加熱システムを示す断面図。
図4図3のIV−IV線断面図。
図5】本発明の第1実施形態による燃料加熱システムを内燃機関近傍に取り付けた状態の断面図であって、図3のV−V線断面図。
図6】本発明の第1実施形態による燃料加熱システムの加熱室形成部を示す分解斜視図。
図7】本発明の第1実施形態による燃料加熱システムの加熱室形成部の下部材を示す断面図。
図8】本発明の第2実施形態による燃料加熱システムを示す断面図。
図9図8のIX−IX線断面図。
図10】本発明の第2実施形態による燃料加熱システムを内燃機関近傍に取り付けた状態の断面図であって、図8のX−X線断面図。
図11】本発明の第3実施形態による燃料加熱システムを示す断面図。
図12図11のXII−XII線断面図。
図13】本発明の第3実施形態による燃料加熱システムを内燃機関近傍に取り付けた状態の断面図であって、図11のXIII−XIII線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の複数の実施形態による燃料加熱システムおよび燃料レールを図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、図面の記載が煩雑になることを避けるため、1つの図面において、実質的に同一の複数の部材または部位には、複数のうち1つのみに符号を付す場合がある。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料加熱システム、これを用いた燃料レール、および、その一部を図1〜7に示す。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態の燃料レール1は、内燃機関(以下、「エンジン」という)2の近傍に取り付けられる。エンジン2は、4つの気筒3を有する4気筒エンジンである。各気筒3には、燃焼室4が形成されている。エンジン2は、例えばエタノール等のアルコール燃料、または、アルコールとガソリンとの混合燃料を燃料として駆動する。各燃焼室4には、吸気ポート5が接続されており、当該吸気ポート5を経由して燃焼室4に吸気が導入される。吸気ポート5は、インテークマニホールド6に形成されている。
【0017】
吸気ポート5のそれぞれに燃料噴射弁10が設けられる。すなわち、燃料噴射弁10は、4つ設けられる。燃料噴射弁10は、噴孔11が吸気ポート5内に露出するよう設けられる。燃料噴射弁10の噴孔11から吸気ポート5内に噴射される燃料は、霧状となって吸気とともに燃焼室4に導入され、燃焼室4で燃焼する。
本実施形態では、燃料レール1は、燃料噴射弁10とともに、エンジン2近傍のインテークマニホールド6に取り付けられ、燃料供給源としての燃料タンク7からの燃料を燃料噴射弁10に分配する。
【0018】
燃料レール1は、レール部20、および、燃料加熱システム100等を備えている。
図1、2に示すように、レール部20は、上部材21および下部材22からなる。
上部材21および下部材22は、例えば、所定の板厚の金属板をプレス加工等の塑性変形加工をすることにより形成されている。上部材21および下部材22は、長尺状に形成されている。ここで、上部材21と下部材22との長手方向の長さ、および、短手方向の長さは、概ね同じである。
【0019】
上部材21は、一方の面側から他方の面側へ凹む凹部を有している。また、下部材22も、一方の面側から他方の面側へ凹む凹部を有している。
下部材22は、上部材21に対し長手方向および短手方向が対応するよう、かつ、凹部が上部材21の凹部に対向するよう上部材21に接合している。これにより、上部材21の凹部と下部材22の凹部との間に燃料流路200が形成されている(図1、2参照)。
【0020】
また、図1、2に示すように、レール部20には、長手方向に略等間隔で凸部23が形成されている。凸部23は、レール部20の長手方向に対し垂直な方向に突出するよう形成されている。凸部23は、取り付けられる燃料噴射弁10に対応するよう4つ形成されている。
【0021】
上部材21には、長手方向の一端に燃料入口24が形成されている(図1、2参照)。燃料入口24は、上部材21の一方の面と他方の面とを接続するよう、すなわち、上部材21を板厚方向に貫くよう形成されている。
【0022】
図1、2に示すように、レール部20(上部材21)の燃料入口24には、インレットパイプ25の一端が接続される。インレットパイプ25の他端には、燃料タンク7から延びる燃料供給路8が接続される(図1参照)。燃料供給路8の燃料タンク7とインレットパイプ25との間には、燃料ポンプ9が設けられている。燃料ポンプ9は、燃料タンク7内の燃料を吸引し吐出する。燃料ポンプ9が作動すると、燃料タンク7内の燃料が燃料供給路8を経由してインレットパイプ25へ圧送される。これにより、燃料タンク7からの燃料が燃料流路200に流入する。
【0023】
燃料加熱システム100は、加熱室形成部30、入口開口部33、出口開口部34、加熱装置60および案内部材70等を備えている。本実施形態では、燃料加熱システム100は、レール部20の凸部23に取り付けられるよう、レール部20の長手方向に沿って複数が略等間隔で設けられている(図1、2参照)。燃料加熱システム100は、取り付けられる燃料噴射弁10に対応するよう4つ設けられている。
【0024】
加熱室形成部30は、上部材40および下部材50からなる(図3〜6参照)。
上部材40および下部材50は、例えば、所定の板厚の金属板をプレス加工や深絞り加工等の塑性変形加工をすることにより形成されている。
上部材40は、一方の面側から他方の面側へ凹む上凹部41を有している。下部材50は、一方の面側から他方の面側へ凹む下凹部51を有している。
【0025】
加熱室形成部30は、上部材40の上凹部41と下部材50の下凹部51とが対向するよう、上部材40と下部材50とを接合することにより形成されている。図3、5に示すように、上部材40と下部材50との接合面は筒状に形成されている。本実施形態では、上部材40と下部材50とは、例えばろう付けにより接合されている。これにより、加熱室形成部30の上凹部41と下凹部51との間に、所定の容積の加熱室300が形成されている。
【0026】
加熱室形成部30は、加熱室300を形成する平面状の壁面として、第1壁面301、第2壁面302、第3壁面303および第4壁面304等を有している。
第1壁面301、第2壁面302および第3壁面303は、上部材40の上凹部41に形成されている。第4壁面304は、第1壁面301に対向するよう、下部材50の下凹部51に形成されている。
【0027】
図5に示すように、第2壁面302は、第1壁面301に対し概ね直角に交わるよう形成されている。これにより、第1壁面301と第2壁面302との間に角部310が形成されている。ここで、加熱室300は、角部310を含むよう形成されている。
第3壁面303は、第1壁面301と第2壁面302とを接続するよう角部310に形成されている。
【0028】
図4に示すように、本実施形態では、加熱室形成部30は、加熱室300を形成する曲面状の壁面として、第5壁面305を有している。第5壁面305は、加熱室300内の特定の点Pを中心とする円弧に沿うよう形成されている。なお、第5壁面305は、第1壁面301および第4壁面304に対し略垂直となるよう形成されている。
【0029】
本実施形態では、第1筒部31および第2筒部32をさらに備えている。
第1筒部31は、上部材40と同じ材料により筒状に形成されている。第1筒部31は、加熱室300外に位置し、一端が上部材40に接続するよう上部材40と一体に形成されている。
入口開口部33は、上部材40の上凹部41の第1筒部31の一端に対応する位置に形成されている。入口開口部33は、第1壁面301上に位置している(図3、5参照)。
【0030】
第2筒部32は、下部材50と同じ材料により有底筒状に形成されている。第2筒部32は、加熱室300内に位置し、底部とは反対側の端部が下部材50に接続するよう下部材50と一体に形成されている(図7参照)。本実施形態では、第2筒部32は、例えば深絞り加工により下部材50と一体に形成されている。
出口開口部34は、第2筒部32の底部に形成されている(図3〜7参照)。第2筒部32は、底部とは反対側の端部が、下部材50の下凹部51とは反対側の面に開口している(図6、7参照)。このように、第2筒部32は、一端(底部側端部)に出口開口部34が形成され、他端(底部とは反対側の端部)が加熱室形成部30の下部材50に接続するよう加熱室300内に設けられている。ここで、第2筒部32は、特許請求の範囲における「筒部」に対応している。
【0031】
図4、5、7に示すように、出口開口部34は、第2筒部32の軸Ax2に対し角部310側に位置するよう形成されている。すなわち、出口開口部34は、角部310および第3壁面303の近傍に形成されている。
なお、入口開口部33および出口開口部34は、互いに所定距離以上離れるよう形成されている。
【0032】
また、入口開口部33と出口開口部34とは、互いに対向するのを避けた位置に形成されている(図3、4参照)。
また、出口開口部34は、加熱室300を形成する壁面のうち互いに対向する第1壁面301と第4壁面304との間の距離の1/2の位置よりも第1壁面301側に寄った位置に形成されている(図3参照)。すなわち、第2筒部32の底部(出口開口部34)は、加熱室300の全体の高さの1/2よりも高い所に位置していると言うこともできる。
【0033】
図3、5に示すように、加熱室形成部30は、第1筒部31の他端側がレール部20の燃料流路200内に位置するよう、上部材40がレール部20の凸部23(下部材22)に接合されている。これにより、レール部20の燃料流路200内の燃料は、第1筒部31の他端側の開口部、内側、および、入口開口部33を経由して加熱室300内に流入する。本実施形態では、加熱室形成部30(上部材40)とレール部20(下部材22)とは、例えばろう付けにより接合されている。
【0034】
図3、5に示すように、第2筒部32の内側には、燃料噴射弁10の噴孔11とは反対側の端部が接続される。そのため、加熱室300内の燃料は、出口開口部34を経由して燃料噴射弁10に導かれる。
【0035】
図3に示すように、加熱装置60は、本体61、発熱部62およびホルダ63を有している。
本体61は、略円筒状に形成されている。発熱部62は、例えば金属により棒状、より具体的には長い円柱状に形成されている。発熱部62は、本体61と同軸となるよう本体61に設けられている。発熱部62は、電力を供給されることにより発熱する。これにより、発熱部62は、周囲の媒体(気体または液体等)を加熱することができる。
【0036】
ホルダ63は、例えば金属により略円筒状に形成され、加熱室形成部30の上部材40に形成された開口部に一端が接続するよう上部材40に設けられている。ホルダ63と上部材40とは、例えばろう付けにより接続されている。
【0037】
本体61は、発熱部62が加熱室300内に位置するようホルダ63の内側に設けられている。すなわち、加熱装置60は、発熱部62が加熱室300内に位置するよう加熱室形成部30に設けられている。これにより、加熱装置60は、加熱室300内の燃料を発熱部62により加熱可能である。
【0038】
ここで、上述の特定の点Pは、発熱部62と出口開口部34との間に位置している(図4参照)。また、加熱装置60は、発熱部62の軸が第1壁面301および第4壁面304に対し傾斜するよう加熱室形成部30に設けられている(図3参照)。また、本体61とホルダ63との間は、液密に保持されている。
【0039】
本実施形態では、4つの加熱装置60は、それぞれ、長手方向が、「レール部20の長手方向および凸部23の突出方向を含む仮想平面」に対し傾斜するよう設けられている(図1、2参照)。すなわち、加熱装置60は、本体61の軸が前記仮想平面に対し傾斜するよう設けられている。また、4つの加熱装置60は、それぞれの本体61の軸が互いに略平行になるよう、加熱室形成部30に設けられている(図1、2参照)。
【0040】
案内部材70は、例えば、所定の板厚の金属板を折り曲げ加工等の塑性変形加工することにより形成されている。
図3、4に示すように、案内部材70は、本体71、遮蔽部72および固定部73を有している。
【0041】
本体71は、略矩形板状に形成されている(図4参照)。遮蔽部72は、略三角板状に形成され(図5参照)、一辺が本体71の一辺に接続するとともに本体71に対し直交するよう本体71と一体に形成されている。固定部73は、略矩形板状に形成され(図4参照)、一辺が遮蔽部72の一辺に接続するとともに遮蔽部72に対し直交するよう遮蔽部72と一体に形成されている。そのため、本体71は、固定部73を含む仮想平面に対し傾斜するよう形成されている。
【0042】
案内部材70は、固定部73が上部材40の第1壁面301の入口開口部33近傍に接合および固定されるようにして加熱室300内に位置するよう設けられている(図3参照)。固定部73と上部材40(第1壁面301)とは、例えばろう付けにより接合されている。ここで、案内部材70は、第1筒部31の軸Ax1が本体71を通るよう設けられている。
【0043】
また、本体71は、本体71を含む仮想平面が発熱部62の一部を通るよう、第1壁面301に対し傾斜している(図5参照)。これにより、第1筒部31を経由して入口開口部33から加熱室300に流入した燃料は、第1筒部31の軸Ax1に沿って流れ、本体71に衝突する。本体71に衝突した燃料は、本体71に沿って発熱部62側へ流れる。このように、本体71は、入口開口部33から加熱室300に流入した燃料を発熱部62側へ案内可能である。ここで、案内部材70は、特許請求の範囲における「第1案内部」に対応している。
案内部材70は、入口開口部33と対向する位置に設けられた、燃料の主な流れの方向を誘導する向きに傾斜する傾斜面(本体71)を有している、と言うこともできる。
【0044】
また、案内部材70は、入口開口部33と出口開口部34との間に遮蔽部72が位置するよう設けられている。すなわち、案内部材70は、少なくとも一部が入口開口部33と出口開口部34との間に位置するよう設けられている。そのため、入口開口部33から加熱室300に流入した燃料の出口開口部34側への流れを遮蔽部72により遮ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、第1筒部31を経由して入口開口部33から加熱室300に流入した燃料は、第1筒部31の軸Ax1に沿って流れ、案内部材70の本体71に衝突し、本体71に沿って発熱部62側へ流れる。そして、本体71に沿って発熱部62側へ流れた燃料は、曲面状の第5壁面305に衝突し、第5壁面305に沿って流れ、発熱部62に接触しながら発熱部62の長手方向に沿って流れる。すなわち、第5壁面305は、案内部材70により案内された燃料を、発熱部62の長手方向に沿って流れるよう案内する。ここで、第5壁面305は、特許請求の範囲における「第2案内部」に対応している。
【0046】
また、本実施形態では、第2筒部32の発熱部62側の外壁と、加熱室300を形成する壁面との距離は、第2筒部32の発熱部62とは反対側の外壁と、加熱室300を形成する壁面との距離よりも大きく設定されている(図4、5参照)。つまり、本実施形態では、加熱室300の第2筒部32(の外壁)と加熱室形成部30(加熱室300を形成する壁面)との間の空間のうち、発熱部62が位置する部分は、発熱部62が位置しない部分と比べ、空間的に大きく形成されている。
【0047】
本実施形態では、燃料レール1は、取付部材90をさらに備えている。
取付部材90は、本体91および取付部92を有している。
本体91は、例えば金属により長尺の板状に形成されている。取付部92は、本体91の長手方向の2箇所に形成されている(図2参照)。
【0048】
取付部材90は、本体91が、4つの加熱室形成部30の下部材50に接合するよう設けられている。取付部材90と加熱室形成部30(下部材50)とは、例えばろう付けにより接合されている。
燃料レール1は、取付部92の穴部に例えばボルト等の締結部材を通し、取付部92をインテークマニホールド6に固定することにより、インテークマニホールド6に取り付けられる。
【0049】
図5に示すように、本実施形態では、燃料加熱システム100(燃料レール1)は、角部310、入口開口部33および出口開口部34が加熱室300の鉛直方向上側に位置するよう、エンジン2近傍のインテークマニホールド6に取り付けられる。このとき、発熱部62は、角部310、入口開口部33および出口開口部34に対し鉛直方向下側に位置している。すなわち、本実施形態では、角部310、入口開口部33および出口開口部34は、燃料加熱システム100(燃料レール1)がインテークマニホールド6に取り付けられた状態において、発熱部62に対し鉛直方向上側に位置するよう形成されている。
また、出口開口部34は、燃料加熱システム100がエンジン2近傍のインテークマニホールド6に取り付けられた状態において、加熱室300の鉛直方向の長さの1/2の位置よりも鉛直方向上側の位置に形成されている(図5参照)。
【0050】
ここで、入口開口部33は、燃料加熱システム100(燃料レール1)がインテークマニホールド6に取り付けられた状態において、加熱室300の鉛直方向上側に形成されている。より具体的には、入口開口部33は、加熱室300を形成する壁面のうち、鉛直方向上側の壁面(第1壁面301)に形成されている。
【0051】
また、第3壁面303は、燃料加熱システム100(燃料レール1)がインテークマニホールド6に取り付けられた状態において、外縁部のうち出口開口部34側の部位が鉛直方向上側になるよう、水平面(鉛直方向に直交する平面)に対し傾斜するよう形成されている(図5参照)。
【0052】
図1に示すように、本実施形態では、電子制御ユニット(以下、「ECU」という)12をさらに備えている。ECU12は、演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROM、RAM、および、入出力手段等を有する小型のコンピュータである。ECU12は、車両の各部に取り付けられたセンサ類からの信号等に基づき、ROMに格納されたプログラムに従って処理を行い、車両各部の装置等を制御する。
【0053】
本実施形態では、ECU12は、エンジン2の始動時、燃料のアルコール濃度が所定値以上で、かつ、環境温度が所定値以下の場合、燃料噴射弁10から燃料の噴射を開始する前に、燃料のプレヒート(予熱)を行う。このとき、加熱室300には、レール部20の燃料流路200および入口開口部33を経由して、燃料タンク7からの燃料が流入しているものとする。
【0054】
ECU12は、プレヒートにおいて、加熱装置60に電力を供給し、発熱部62を発熱させる。これにより、加熱室300内の発熱部62近傍の燃料が加熱される。発熱部62により加熱された燃料は、重量が変化し鉛直方向上側、すなわち、角部310側に移動し、角部310(第3壁面303近傍)に滞留する。発熱部62により加熱室300内の燃料が十分に加熱されると、プレヒートが完了する。
【0055】
ECU12は、プレヒートの完了後、燃料噴射弁10に燃料の噴射を指示する。これにより、加熱室300の角部310に滞留した温度の高い燃料が出口開口部34を経由して燃料噴射弁10に導かれ、噴孔11から吸気ポート5内に噴射され、エンジン2の燃焼室4に供給される。このとき噴射される燃料は、温度が高いため、着火性が向上している。よって、燃料のアルコール濃度が所定値以上で、かつ、環境温度が所定値以下であっても、エンジン2を始動させることができる。
【0056】
ECU12は、エンジン2の始動後も、燃料のアルコール濃度が所定値以上で、かつ、環境温度が所定値以下の場合、加熱装置60に継続的に電力を供給し、加熱室300内の燃料を加熱する。そのため、発熱部62により加熱された温度の高い燃料が燃料噴射弁10から噴射される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、(1)加熱室形成部30は、内側に加熱室300を形成している。入口開口部33は、燃料タンク7からの燃料を加熱室300内に導く。出口開口部34は、加熱室300内の燃料を燃料噴射弁10に導く。
【0058】
加熱装置60は、発熱可能な発熱部62を有し、当該発熱部62が加熱室300内に位置するよう加熱室形成部30に設けられ、加熱室300内の燃料を発熱部62により加熱可能である。
第2筒部32は、一端に出口開口部34が形成され、他端が加熱室形成部30に接続するよう加熱室300内に設けられ、内側に燃料噴射弁10を接続可能である。
【0059】
このように、本実施形態では、燃料噴射弁10を接続可能な第2筒部32は、加熱室300内に設けられている。すなわち、第2筒部32は、加熱室形成部30から飛び出さないよう設けられている。そのため、第2筒部32を含む燃料加熱システム100の体格を小さくすることができる。また、本実施形態の燃料加熱システム100に燃料噴射弁10を接続したとき、燃料噴射弁10は、長手方向の一部(噴孔11とは反対側の端部)が加熱室形成部30内に位置する状態となる。よって、燃料噴射弁10を接続した状態の燃料加熱システム100と燃料噴射弁10とを合わせた体格に関し、燃料噴射弁10の長手方向の長さを短縮することができる。
【0060】
また、本実施形態では、第2筒部32が加熱室300内に設けられているため外気に晒されることがなく、例えば従来技術のように第2筒部32が加熱室300外に設けられる場合と比べ、加熱室300内で加熱され出口開口部34および第2筒部32を経由して燃料噴射弁10に導かれる燃料の温度低下を第2筒部32の内側において抑制することができる。したがって、高温の燃料を効率的に燃料噴射弁10に導くことができる。
【0061】
また、本実施形態では、(2)第2筒部32は、加熱室形成部30と一体に形成されている。そのため、例えば第2筒部32が加熱室形成部30と別体に設けられる場合と比べ、部材点数を削減することができる。また、第2筒部32と加熱室形成部30との間のシール性を考慮する必要がなくなる。
【0062】
また、本実施形態では、(3)加熱室形成部30は、上部材40と下部材50とからなる。上部材40は、所定の板厚の材料により形成され、上凹部41を有している。下部材50は、所定の板厚の材料により形成され、下凹部51を有し、上部材40と接合することにより上凹部41と下凹部51との間に加熱室300を形成している。
本実施形態では、所定の板厚の上部材40と下部材50とを接合することにより加熱室300が形成されている。そのため、燃料噴射弁10から燃料を断続的に噴射するとき、上部材40または下部材50が弾性変形することにより、加熱室300内の燃料の脈動を低減することができる。これにより、燃料噴射弁10からの燃料の噴射を安定させることができる。
【0063】
また、上部材40および下部材50は、所定の板厚の材料により形成されているため、質量を低減でき、耐振動性に優れる。
また、上部材40および下部材50が所定の板厚の材料により形成されているため、上凹部41または下凹部51の形状が複雑であったとしても、上部材40および下部材50を例えばプレス加工や深絞り加工等の塑性変形加工により容易に形成することができる。そのため、加熱室300を形成する上部材40および下部材50を例えば切削加工等により形成する場合と比べ、製造コストを低減することができる。
【0064】
また、本実施形態では、(4)入口開口部33は、上部材40に形成されている。また、第2筒部32は、下部材50に接続するよう設けられている。よって、第2筒部32の一端に形成される出口開口部34は、上部材40の上凹部41(第1壁面301)近傍に位置することとなる。本実施形態では、燃料加熱システム100は、下部材50に対し上部材40が鉛直方向上側になるようエンジン2近傍のインテークマニホールド6に取り付けられる。発熱部62により加熱された加熱室300内の燃料は、重量が変化し、加熱室300の鉛直方向上側、すなわち、上凹部41(第1壁面301)側に移動し滞留する。出口開口部34が上凹部41(第1壁面301)近傍に位置しているため、上凹部41(第1壁面301近傍)の高温の燃料を、出口開口部34を経由して燃料噴射弁10に効率的に導くことができる。
また、入口開口部33が上部材40に形成されているため、入口開口部33から加熱室300に流入する燃料により、上凹部41(第1壁面301近傍)に滞留した高温の燃料を撹拌することができる。したがって、加熱室300内の燃料の加熱効率を向上することができる。
【0065】
また、本実施形態では、(5)入口開口部33と出口開口部34とは、互いに対向するのを避けた位置に形成されている。そのため、「入口開口部33から加熱室300に流入した燃料が発熱部62により加熱されることなく出口開口部34に導かれる」のを抑制することができる。よって、温度の低い燃料が燃料噴射弁10から噴射されるのを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、(6)出口開口部34は、加熱室300を形成する壁面のうち互いに対向する第1壁面301と第4壁面304との間の距離の1/2の位置よりも第1壁面301側に寄った位置に形成されている。本実施形態では、燃料加熱システム100は、第4壁面304に対し第1壁面301が鉛直方向上側になるようエンジン2近傍のインテークマニホールド6に取り付けられる。発熱部62により加熱された加熱室300内の燃料は、重量が変化し、加熱室300の鉛直方向上側、すなわち、第1壁面301側に移動し滞留する。出口開口部34が第1壁面301と第4壁面304との間の距離の1/2の位置よりも第1壁面301側に寄った位置に形成されているため、第1壁面301近傍の高温の燃料を、出口開口部34を経由して燃料噴射弁10に効率的に導くことができる。
【0067】
また、本実施形態では、(7)出口開口部34は、燃料加熱システム100がエンジン2近傍のインテークマニホールド6に取り付けられた状態において、加熱室300の鉛直方向の長さの1/2の位置よりも鉛直方向上側の位置に形成されている。上述のように、発熱部62により加熱された加熱室300内の燃料は、重量が変化し、加熱室300の鉛直方向上側に移動し滞留する。出口開口部34が加熱室300の鉛直方向の長さの1/2の位置よりも鉛直方向上側の位置に形成されているため、加熱室300の鉛直方向上側の高温の燃料を、出口開口部34を経由して燃料噴射弁10に効率的に導くことができる。
【0068】
また、本実施形態では、(8)加熱室300内に設けられ、入口開口部33から加熱室300に流入した燃料を発熱部62側へ案内可能な案内部材70をさらに備えている。そのため、入口開口部33から加熱室300に流入した低温の燃料を、発熱部62に積極的に接触させることができる。したがって、発熱部62による燃料の加熱効率を向上することができる。
【0069】
また、本実施形態では、(9)発熱部62は、棒状に形成されている。また、案内部材70により案内された燃料を発熱部62の長手方向に沿って流れるよう案内する第5壁面305をさらに備えている。本実施形態では、第1筒部31を経由して入口開口部33から加熱室300に流入した燃料は、第1筒部31の軸Ax1に沿って流れ、案内部材70の本体71に衝突し、本体71に沿って発熱部62側へ流れる。そして、本体71に沿って発熱部62側へ流れた燃料は、曲面状の第5壁面305に衝突し、第5壁面305に沿って流れ、発熱部62に接触しながら発熱部62の長手方向に沿って流れる。これにより、燃料と発熱部62との接触の機会をさらに増大させることができ、燃料の加熱効率をさらに向上することができる。
【0070】
また、本実施形態では、(10)第5壁面305は、加熱室300を形成する壁面のうち、案内部材70により案内される燃料が衝突する曲面状の壁面である。よって、加熱室300内に「第2案内部」を別途設ける場合と比べ、部材点数を削減することができる。なお、第5壁面305は、加熱室300内の特定の点Pを中心とする円弧に沿うよう形成されている。
【0071】
また、本実施形態では、(13)第2筒部32の発熱部62側の外壁と、加熱室300を形成する壁面との距離は、第2筒部32の発熱部62とは反対側の外壁と、加熱室300を形成する壁面との距離よりも大きく設定されている。つまり、本実施形態では、加熱室300の第2筒部32(の外壁)と加熱室形成部30(加熱室300を形成する壁面)との間の空間のうち、発熱部62が位置する部分は、発熱部62が位置しない部分と比べ、空間的に大きく形成されている。そのため、発熱部62の周囲に多くの燃料を流すことができ、燃料の加熱効率を向上することができる。
【0072】
また、本実施形態では、(14)燃料レール1は、レール部20と、4つの燃料加熱システム100と、を備えている。
レール部20は、長尺状に形成され、入口開口部33に接続し燃料タンク7からの燃料が流れる燃料流路200を有している。燃料加熱システム100は、レール部20の長手方向に沿って略等間隔で4つ設けられている。燃料噴射弁10は、4つの燃料加熱システム100のそれぞれに対応するよう4つ取り付けられる。
本実施形態では、エンジン2の4つの気筒3のそれぞれに対応するよう、4つの加熱室300が設けられるため、気筒3の燃焼室4に供給される燃料の温度に関する気筒間差を抑制しつつ、燃料タンク7からの燃料を効率的に加熱して各燃料噴射弁10に分配することができる。
【0073】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による燃料加熱システムを図8〜10に示す。第2実施形態は、案内部材70の構成が第1実施形態と異なる。
【0074】
第2実施形態では、案内部材70は、穴部74をさらに有している。穴部74は、本体71を板厚方向に貫くよう形成されている。
図8〜10に示すように、穴部74は、第1筒部31の軸Ax1の近傍に形成されている。ここで、第1筒部31の軸Ax1は、本体71の穴部74以外の部位を通る。また、図9に示すように、入口開口部33を第1筒部31の軸Ax1方向、本体71に投影すると、穴部74の一部に重なる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態では、(11)案内部材70は、板状の本体71、および、本体71を板厚方向に貫く穴部74を有している。
上記構成により、第1筒部31を経由して入口開口部33から加熱室300に流入した燃料の多くは、本体71に衝突し本体71に沿って発熱部62側へ流れる。そのため、発熱部62による燃料の加熱効率を向上することができる。また、第1筒部31を経由して入口開口部33から加熱室300に流入した燃料の一部は、穴部74を経由して本体71の遮蔽部72とは反対側へ流れる。そのため、本体71の遮蔽部72とは反対側、すなわち、角部310に滞留した高温の燃料を、入口開口部33から流入する燃料により撹拌することができ、加熱室300内の燃料の加熱効率を向上することができる。また、入口開口部33から流入する低温の燃料を、穴部74を経由して角部310側へ導き高温の燃料と混合することにより、角部310における燃料の沸騰および気泡の発生を抑制するとともに、入口開口部33から流入する燃料の早期加熱を図ることができる。
【0076】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による燃料加熱システムを図11〜13に示す。第3実施形態は、案内部材70の構成が第1実施形態と異なる。
【0077】
第3実施形態では、案内部材70は、傾斜部75をさらに有している。傾斜部75は、本体71の外縁部から本体71に対し傾斜しながら延びるよう本体71と一体に形成されている。ここで、本体71と傾斜部75との境界(稜線)は、入口開口部33の中心軸、すなわち、第1筒部31の軸Ax1に対し発熱部62とは反対側に位置している(図12、13参照)。また、図12に示すように、入口開口部33を第1筒部31の軸Ax1方向に投影すると、一部が本体71に位置し、他の一部が傾斜部75に位置する。
【0078】
以上説明したように、本実施形態では、(12)案内部材70は、板状の本体71、および、本体71の外縁部から本体71に対し傾斜しながら延びる傾斜部75を有している。また、本体71と傾斜部75との境界は、入口開口部33の中心軸(軸Ax1)に対し発熱部62とは反対側に位置している。
【0079】
上記構成により、第1筒部31を経由して入口開口部33から加熱室300に流入した燃料の多くは、本体71に衝突し本体71に沿って発熱部62側へ流れる。そのため、発熱部62による燃料の加熱効率を向上することができる。また、第1筒部31を経由して入口開口部33から加熱室300に流入した燃料の一部は、傾斜部75に沿って本体71に対し発熱部62とは反対側へ流れる。そのため、本体71に対し発熱部62とは反対側、すなわち、角部310に滞留した高温の燃料を、入口開口部33から流入する燃料により撹拌することができ、加熱室300内の燃料の加熱効率を向上することができる。また、入口開口部33から流入する低温の燃料を、傾斜部75を経由して角部310側へ導き高温の燃料と混合することにより、角部310における燃料の沸騰および気泡の発生を抑制するとともに、入口開口部33から流入する燃料の早期加熱を図ることができる。
【0080】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、筒部(第2筒部32)は、加熱室形成部と別体に形成されることとしてもよい。
【0081】
また、本発明の他の実施形態では、加熱室形成部は、上部材と下部材とが一体に形成されることにより形成されていてもよい。また、加熱室形成部は、例えば切削加工等、プレス加工以外の方法により形成されていてもよい。また、加熱室形成部は、どのような形状に形成されていてもよい。
【0082】
また、本発明の他の実施形態では、入口開口部は、加熱室を形成する壁面のうち、どの壁面に形成されていてもよく、下部材50に形成されていてもよい。また、本発明の他の実施形態では、第1筒部31を備えないこととしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、出口開口部とは反対側の端部が上部材40に接続するよう設けられていてもよい。
【0083】
また、本発明の他の実施形態では、入口開口部と出口開口部とは、互いに対向する位置に形成されていてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、出口開口部は、加熱室を形成する壁面のうち互いに対向する第1壁面301と第4壁面304との間の距離の1/2の位置、または、当該位置よりも第4壁面304側に寄った位置に形成されていてもよい。
【0084】
また、本発明の他の実施形態では、出口開口部は、燃料加熱システムが内燃機関または内燃機関近傍に取り付けられた状態において、加熱室の鉛直方向の長さの1/2の位置、または、当該位置よりも鉛直方向下側の位置に形成されていてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、第1案内部(案内部材70)は、入口開口部から加熱室に流入した燃料を発熱部側へ案内可能であれば、どのような形状に形成されてもよく、加熱室内のどの位置に設けられていてもよい。また、第1案内部は、加熱室形成部と一体に形成されていてもよい。また、本発明の他の実施形態では、第1案内部を備えないこととしてもよい。
【0085】
また、本発明の他の実施形態では、第2案内部(第5壁面305)は、第1案内部により案内された燃料を発熱部の長手方向に沿って流れるよう案内可能であれば、どのような形状に形成されていてもよい。また、第2案内部は、加熱室形成部とは別体に形成されていてもよい。また、本発明の他の実施形態では、第2案内部を備えないこととしてもよい。
【0086】
また、本発明の他の実施形態では、第1案内部の穴部は、本体のどの位置にどのような形状で形成されていてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、第1案内部の本体と傾斜部との境界は、入口開口部の中心軸(軸Ax1)上、または、当該中心軸に対し発熱部側に位置していてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、筒部(第2筒部32)の発熱部側の外壁と、加熱室を形成する壁面との距離は、筒部(第2筒部32)の発熱部とは反対側の外壁と、加熱室を形成する壁面との距離以下に設定されていてもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、取付部材を加熱室形成部の下部材に接合し、燃料加熱システム(燃料レール)をインテークマニホールドに取り付ける例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、取付部材を、例えば加熱室形成部の上部材等、下部材以外の部位に接合することとしてもよい。また、本発明の他の実施形態では、取付部材を備えず、燃料加熱システム(燃料レール)を、内燃機関または内燃機関近傍に直接取り付けることとしてもよい。
【0088】
また、本発明の他の実施形態では、加熱装置の本体、発熱部およびホルダは、どのような形状に形成されていてもよい。また、ホルダは、加熱室形成部と一体に形成されていてもよい。また、加熱装置は、本体およびホルダを備えていなくてもよい。
【0089】
また、本発明の他の実施形態では、レール部は、上部材と下部材とが一体に形成されることで形成されていてもよい。また、レール部は、例えば切削加工等、プレス加工以外の方法により形成されていてもよい。また、レール部は、内側に燃料流路を有し、長尺状に形成されるのであれば、例えばパイプ状の部材等、どのような部材により形成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、各部材同士をろう付けにより接合する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、各部材同士を、例えば溶接等、ろう付け以外の方法により接合することとしてもよい。
【0090】
また、上述の実施形態では、燃料レールを、燃料噴射弁の噴孔が吸気ポート内に露出するようインテークマニホールドに取り付ける例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、燃料レールを、例えば燃料噴射弁の噴孔が内燃機関の燃焼室に露出するよう、すなわち、直噴式の内燃機関に取り付けることとしてもよい。
【0091】
また、本発明の他の実施形態では、加熱室形成部および加熱装置は、内燃機関に取り付けられる燃料噴射弁の数に応じて、任意の数設けることができる。すなわち、本発明は、任意の気筒数の内燃機関に適用することができる。例えば、本発明の燃料加熱システムを単気筒の内燃機関に適用することもできる。この場合、加熱室形成部および加熱装置はそれぞれ1つ設けられ、レール部は不要である。
【0092】
また、本発明は、エタノール等のアルコール燃料、または、アルコールとガソリンとの混合燃料を燃料とする内燃機関に限らず、ガソリンを燃料とする内燃機関にも適用することができる。この場合、環境温度が低くても、加熱装置による燃料の加熱により、燃料の粘度が低下し、噴霧の粒度を小さくできる。よって、燃焼室での燃料の着火性を向上できる。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0093】
100 ・・・燃料加熱システム
30 ・・・・加熱室形成部
32 ・・・・第2筒部(筒部)
33 ・・・・入口開口部
34 ・・・・出口開口部
300 ・・・加熱室
60 ・・・・加熱装置
62 ・・・・発熱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13