(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の技術の場合、基板にマスキングテープを貼り付ける工程、および、基板からマスキングテープを剥がす工程を、塗布装置外で行うことを要し、非効率であった。また、マスキングテープを剥がしたときに、基板にマスキングテープの粘着剤が付着し、残渣となる虞があった。また、特許文献3に記載の技術の場合、プラズマ処理が、下地となる基板に悪影響を及ぼす可能性があった。このため、従来技術には改善の余地があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板に対して非塗布領域を効率的かつ有効に形成する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、基板に対して、流動性材料を塗布しつつ、前記流動性材料が塗布されない非塗布領域を形成する塗布装置であって、基板を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記基板の主面に向けて流動性材料を吐出する吐出部と、前記吐出部を、前記保持部に保持された基板に対して相対的に移動させる移動機構と、前記保持部に保持された前記基板の主面のうち、前記非塗布領域に対応する部分に対向するように、磁性を有するマスク部を配するとともに、該マスク部を前記基板の移動に合わせて移動させるマスク機構と、磁場を発生させることによって、前記マスク部を前記基板に吸着させる磁場発生部とを備え
、前記移動機構は、前記吐出部を、前記保持部に保持された前記基板の主面に平行な主走査方向に移動させる吐出部移動機構と、前記基板を保持した前記保持部を前記主走査方向に交差する副走査方向に移動させる保持部移動機構と、を有し、前記マスク機構は、磁性を有する帯状の前記マスク部であるマスキングテープと、前記マスキングテープを送り出す送出部と、前記送出部から送り出された前記マスキングテープを巻き取る巻取部と、を備え、前記保持部移動機構による前記基板の前記副走査方向への移動に合わせて、前記送出部が前記マスキングテープを前記副走査方向に送り出す。
【0013】
また、第
2の態様は、第
1の態様に係る塗布装置において、前記マスキングテープの移動方向および移動量が、前記基板の移動方向および移動量に一致するように、前記送出部が前記マスキングテープを送り出す。
【0014】
また、第
3の態様は、第
1または第
2の態様に係る塗布装置において、前記移動機構は、前記保持部を移動させることによって、前記基板を前記副走査方向に移動させ、前記送出部は、前記マスキングテープを前記副走査方向に送り出し、前記保持部は、前記基板を保持する平面を有するステージ、を含み、前記磁場発生部は、前記ステージにおいて、前記副走査方向に沿って複数配置されている磁性体を含む。
【0015】
また、第
4の態様は、第1から第
3までのいずれか1態様に係る塗布装置において、前記マスク機構は、前記マスク部を複数有する。
【0016】
また、第
5の態様は、第1から第
4までのいずれか1態様に係る塗布装置において、前記マスク部を洗浄する洗浄機構、をさらに備えている。
【0017】
また、第
6の態様は、第1から第
5までのいずれか1態様に係る塗布装置において、前記流動性材料が、有機EL液または正孔輸送液である。
【0018】
また、第
7の態様は、第1から第
6までのいずれか1態様に係る塗布装置において、前記基板の主面のうち、デバイスとして利用される有効領域を除く領域において、前記吐出部から吐出された前記流動性材料の塗布パターンを撮影する撮影部、をさらに備えている。
【0019】
また、第
8の態様は、第
7の態様に係る塗布装置において、前記撮影部は、前記マスク部上に吐出された前記流動性材料の塗布パターンを撮影する。
【0020】
また、第
9の態様は、第
8の態様に係る塗布装置において、前記マスク部の表面に、前記塗布パターンを保持する被覆部が形成されている。
【0021】
また、第
10の態様は、基板に対して、流動性材料を塗布しつつ、前記流動性材料が塗布されない非塗布領域を形成する塗布方法であって、(a)基板を保持する工程と、(b)前記(a)工程で保持された基板の主面のうち、前記非塗布領域に対応する部分の上方に、磁性を有するマスク部を配する工程と、
(c)吐出部を前記基板に対して相対的に移動させつつ、前記吐出部から前記(b)工程で前記マスク部が配された前記基板に向けて流動性材料を吐出する工程と、(d) 前記(c)工程において、前記(b)工程で前記基板の主面上に配された前記マスク部を、前記主面に平行な主走査方向に交差する副走査方向への基板の移動に合わせて移動させる工程と、(
e)前記(b)工程で配された前記マスク部を、磁力によって
、前記基板の主面に吸着させる工程とを含
み、前記(c)工程は、(c1)前記吐出部を、前記基板の主面に平行な主走査方向に移動させる工程と、(c2)前記基板を前記主走査方向に交差する副走査方向に移動させる工程と、を含み、前記(b)工程は、前記マスク部として帯状のマスキングテープを前記非塗布領域に対応する部分に対向するように配する工程であり、前記(d)工程は、(d1)前記マスキングテープを、前記(c2)工程における前記基板の副走査方向への移動に合わせて送出部から送り出す工程と、(d2)前記(d1)工程にて前記送出部から送り出された前記マスキングテープを巻取部で巻き取る工程と、を含む。
【発明の効果】
【0022】
第1の態様に係る塗布装置によると、磁性を有するマスク部を、磁力によって基板に吸着することができる。このため、基板における非塗布領域に対応する部分を容易に覆うことができる。
【0023】
また、第
1の態様に係る塗布装置によると、基板に対して吐出部を主走査方向および副走査方向に相対的に移動させることによって、基板に流動性材料を効率良く塗布することができる。
【0024】
また、第
1の態様に係る塗布装置によると、送出部及び巻取部によって、マスキングテープの送り出しおよび巻き取りを行うことによって、マスキングテープの同じ箇所に対して何度も流動性材料が塗布されることを抑制できる。これによって、マスキングテープ表面から基板に流動性材料が流出することを抑制することができる。
【0025】
また、第
2の態様にかかる塗布装置によると、基板の移動方向および移動量に一致するように、マスキングテープを移動させるため、基板がマスキングテープに擦れることでゴミなどが発生することを低減することができる。
【0026】
また、第
3の態様に係る塗布装置によると、複数の磁性体を基板の移動方向に沿って配することで、マスキングテープを基板の移動方向に延ばして吸着させることができる。また、間隔を隔てて複数の磁性体配設することで、1つの大きな磁性体を配設する場合よりも、磁場発生部の材料コストを抑えることができる。
【0027】
また、第
4の態様に係る塗布装置によると、基板上の複数の箇所に、非塗布領域を形成することができる。
【0028】
また、第
5の態様に係る塗布装置によると、マスク部を洗浄することで流動性材料を除去することができる。
【0029】
また、第
6の態様に係る塗布装置によると、有機EL液または正孔輸送液を基板に塗布することができる。
【0030】
また、第
7の態様に係る塗布装置によると、基板の主面のうち、デバイスとして利用される有効領域を除く残余の領域に形成された塗布パターンを監視することによって、吐出部からの流動性材料の吐出方向の変動を監視することができる。
【0031】
また、第
8の態様に係る塗布装置によると、マスク部上における塗布パターンを監視することで、吐出方向の変動を監視することができる。
【0032】
また、第
9の態様に係る塗布装置によると、マスク部に吐出された流動性材料を付着位置にて保持することができるため、吐出方向の変動を正確に把握することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態に係る塗布装置1について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面においては、理解容易のため、各部の寸法や数が必要に応じて誇張または簡略化して図示されている場合がある。また、
図1および以降の各図においては、説明の便宜のため、X方向およびこれに直交するY方向を水平方向とし、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系が示されている。ただし、これらの各方向は、各要素の配置関係を限定する趣旨のものではない。
【0035】
<1. 実施形態>
<1.1. 構成および機能>
図1は、実施形態に係る塗布装置1の概略平面図である。また、
図2は、
図1に示される塗布装置1の概略正面図である。
【0036】
塗布装置1は、有機EL液、正孔輸送材料または正孔注入材料などの流動性材料を塗布液として用いる有機EL表示装置を製造するための装置として構成されている。なお、塗布装置1では、有機EL液、正孔輸送材料、正孔注入材料などの複数の塗布液を用いることが可能であるが、以下の説明では、それらの代表として有機EL液3を塗布液とした場合について説明を行う。
【0037】
塗布装置1は、基板保持装置2、有機EL塗布機構5、マスク機構6、洗浄機構7(
図6参照)および制御部10を備えている。
【0038】
図2に示されるように、基板保持装置2は、ステージ21、旋回部22、平行移動テーブル23、ガイド受け部24、およびガイド部材25を有している。
【0039】
ステージ21は、被塗布体となるガラス基板等の基板Pをその上面に保持する水平な厚板状の剛性材である。ステージ21の下部は、旋回部22によって支持されており、旋回部22の回動動作によって図示θ方向にステージ21が水平面内で旋回可能に構成されている。
【0040】
また、ステージ21の内部には、図示を省略するが、有機EL液3が塗布された基板Pをステージ21面上で予備加熱処理するための加熱機構、基板Pを下方から吸着して保持する吸着機構、および、基板Pを搬送機構との間で受け渡しする際に利用される受け渡しピン機構などが設けられている。ステージ21は、平坦な上面によって、基板Pを保持する保持部である。また、詳細については後述するが、ステージ21の内部には、複数の磁石91が埋設されている。複数の磁石91は、磁場を発生させることによって、マスキングテープ611を、基板Pを介してステージ21に吸着する磁性体の一例である。
【0041】
ガイド部材25は、有機EL塗布機構5の下方を通るように、Y軸方向に延びるように配され、床面に水平に固定されている。平行移動テーブル23の下面には、ガイド部材25と当接してガイド部材25上を滑動するガイド受け部24が固定されている。
【0042】
また、平行移動テーブル23の上面には、旋回部22が固定されている。平行移動テーブル23が、例えばリニアモータ(図示せず)からの駆動力を受けて、ガイド部材25に沿ったY軸方向に移動可能になり、旋回部22に支持されたステージ21の水平直進移動も可能になる。平行移動テーブル23、ガイド受け部24、ガイド部材25、および、例えばリニアモータ(図示せず)からなる駆動機構によって、ステージ移動機構26が構成されている。
【0043】
有機EL塗布機構5は、ノズルユニット50とノズル移動機構51とを有している。
【0044】
ノズルユニット50は、赤、緑、および青色の何れか1色の有機EL液3を吐出する複数の塗布ノズル52(
図1では、3本の塗布ノズル52a、52b、および52c)を並設した状態で保持する。ノズルユニット50は、ステージ21に保持された基板Pの主面に有機EL液3を吐出する吐出部の一例である。なお、「基板の主面」とは、基板Pが矩形状である場合において、基板Pの長手方向および幅方向のそれぞれと平行な面をいう。無論、基板Pの形状は、矩形に限定されるものではなく、様々な形状のものが想定されるが、一般的には、基板Pは、平坦な面を主面として有する板状部材が想定される。
【0045】
各塗布ノズル52a〜52cへは、それぞれ図示しない供給部から赤、緑、および青色の何れか1色の有機EL液3が供給される。なお、複数の塗布ノズル52から同色の有機EL液3が吐出されるようにしてもよい。
【0046】
塗布ノズル52a〜52cの先端は、それらの高さ(Z軸方向に関する位置)が同じであり、水平面内においてはX軸方向から傾いた斜め方向に、等間隔でほぼ直線的に1列に配置されている。また、ノズルピッチ(各ノズル間のY方向の間隔)は、適宜設定することが可能であるが、実施形態においては、基板Pに形成されたストライプ状の溝3列分の間隔と一致するように設定されている。
【0047】
ノズル移動機構51は、X軸方向に延びるシャフトガイド511およびボールネジ512と、図示しないモータとを備えている。ノズルユニット50には、ボールネジ512が螺合し、シャフトガイド511が貫通している構成となっている。そのため、図示しないモータにより、ボールネジ512が回動されると、それに螺合されているノズルユニット50はシャフトガイド511に沿って、X方向に移動する。
【0048】
制御部10が、塗布ノズル52a〜52cから有機EL液3を塗布させつつ、ノズルユニット50をX軸方向に沿って移動させるようにノズル移動機構51を制御することで、ステージ21上に保持される基板Pの溝に、塗布ノズル52a〜52cから所定流量の有機EL液3を吐出させる。このとき、塗布ノズル52a〜52cのピッチが基板Pの溝3列分と一致するため、互いに2列ずつ間隔をあけた3列分の溝について塗布が行われる。すなわち、X軸方向が、主走査方向となる。
【0049】
また、塗布ノズル52a〜52cのX軸方向吐出位置において、ステージ21に保持された基板Pから逸脱した両側空間には、基板Pから外れて吐出された有機EL液3を受ける液受部53L,53Rがそれぞれ設けられている。ノズル移動機構51は、基板Pの一方サイド外側に配設されている液受部53(例えば、液受部53L)の上部空間から、基板Pを横断して、基板Pの他方外側に配設されている液受部53(例えば、液受部53R)の上部空間まで、ノズルユニット50を往復移動させることで、基板上に有機EL液3を塗布する。
【0050】
また、平行移動テーブル23は、ノズルユニット50が液受部53の上部空間に配置されている際、ノズル往復移動方向とは交差する副走査方向(ここでは、主走査方向に直交する+Y方向)に所定ピッチ(例えば、ノズルピッチの3倍分)だけステージ21を移動させる。このようなノズル移動機構51および平行移動テーブル23の動作と、塗布ノズル52a〜52cから有機EL液3を液柱状態で吐出する吐出動作とを行うことによって、赤色の有機EL液3が基板Pに形成されたストライプ状の溝毎に配列された、いわゆる、ストライプ配列が基板P上に形成される。
【0051】
図3は、基板P上に配置されたマスク機構6の概略斜視図である。また、
図4は、基板Pに吸着されているマスキングテープ611の概略側面図である。マスク機構6は、複数(ここでは4つ)のマスキングテープ駆動機構61と、各マスキングテープ駆動機構61の主走査方向の位置を調整する調整機構63(
図5参照)とを備えている。
【0052】
各マスキングテープ駆動機構61は、マスキングテープ611(マスク部)、送出ローラ612,巻取ローラ613を備えている。
【0053】
送出ローラ612および巻取ローラ613は、それぞれの回転軸が主走査方向(X軸方向)と平行に延びるように配されている。送出ローラ612および巻取ローラ613は、副走査方向(+Y方向)に関して所定の間隔を空けて配置されている。
【0054】
マスキングテープ611は、磁性を有する帯状フィルムである。マスキングテープ611の厚さは、塗布処理が行われる際の、塗布ノズル52と基板P間の距離(例えば0.2〜0.5mm程度)よりも小さく、例えば、0.05〜0.1mm程度とされる。
【0055】
また、磁性を有するマスキングテープ611の上下面(表裏面)を、例えば樹脂フィルムで挟み込むことによって、塗布液の溶着の抑制、耐薬性の向上、錆の発生を防止や、基板Pとマスキングテープ611との接触に対する保護を行うことができる。
【0056】
マスキングテープ611の各端部は、送出ローラ612および巻取ローラ613にそれぞれ巻回されている。マスキングテープ611は、送出ローラ612から送り出されて、巻取ローラ613に巻き取られる。
【0057】
図1〜
図4に示されるように、ステージ21の内部には、複数の磁石91が埋設されている。複数の磁石91は、磁場を発生させる磁場発生部9を構成する。磁場発生部9によって磁場が発生することにより、マスキングテープ611が磁性を帯びる。これによって、マスキングテープ611が、ステージ21の方に引き付けられ、基板Pの主面に吸着される。なお、磁石91は、永久磁石であってもよいし、電磁石であってもよい。
【0058】
詳細については後述するが、本実施形態では、送出ローラ612からのマスキングテープ611の送り出しは、基板P上に吸着されたマスキングテープ611が副走査方向に移動する磁石91に引っ張られるのに合わせて、行われる。そして、主走査方向に移動したマスキングテープ611の使用済み部分(有機EL液3が塗布された部分)が、順次、巻取ローラ613によって巻き取られる。
【0059】
図1〜4に示されるように、複数の磁石91は、副走査方向に関して、隣り合う磁石91同士が、所定の間隔を隔てて配置されている。このように、複数の磁石91を分散配置することによって、全面に1つの磁石を配置する場合よりも、材料コストを抑えることができる。
【0060】
また、本実施形態では、
図1に示されるように、ステージ21の主走査方向(X軸方向)の一方端付近から他方端付近にかけて、所要の間隔を隔てて複数の磁石91が配置されている。このため、主走査方向に隣り合う磁石91,91間の位置では、マスキングテープ611を引き付ける力が弱くなる虞があり、良好に吸着できない場合がある。そこで、これら主走査方向に並ぶ複数の磁石91の代わりに、ステージ21の一方端から他方端にかけて延びる1つの磁石を設けてもよい。これによって、マスキングテープ611を主走査方向に関して任意の位置において、基板Pに吸着させることが可能となる。なお、ステージ21の外側の領域にも、磁石を配するようにしてもよい。この場合、ステージ21よりも大きなサイズの基板Pが配された際に、ステージ21からはみ出した基板Pの部分においても、良好にマスキングテープ611を吸着させることができる。
【0061】
図5は、基板P上に配された複数のマスキングテープ611を示す概略平面図である。調整機構63は、詳細な図示を省略するが、ノズル移動機構51と同様に、ガイド機構によって、複数のマスキングテープ駆動機構61の各々を主走査方向に沿って平行移動させる。調整機構63を駆動することによって、複数のマスキングテープ611のそれぞれを、主走査方向に関して任意の位置に配することができる。これによって、主走査方向に関して、基板P上の任意の位置に複数の非塗布領域を形成することができる。
【0062】
また、複数のマスキングテープ611のうち、使用しないマスキングテープ611を、基板Pの上方から逸脱する位置に退避させておき、残りのマスキングテープ611のみを基板P上に配して使用することも可能である。
【0063】
なお、基板P毎に非塗布領域の位置を変更する必要がない場合には、調整機構63を省略することも可能である。
【0064】
また、磁石91を主走査方向に移動可能に構成すれば、マスキングテープ611を配する位置に合わせて、磁石91を移動させることができる。これによって、マスキングテープ611を、基板Pの主走査方向の任意の位置に良好に吸着させることができる。
【0065】
図6は、洗浄機構7によって洗浄されるマスキングテープ611を示す概略斜視図である。洗浄機構7は、マスキングテープ611の上面と下面とを覆い、それぞれの面に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給部71と、マスキングテープ611を、その裏面側から支持する複数の支持ローラ73を備えている。
【0066】
各洗浄液供給部71は、マスキングテープ611の幅方向(主走査方向)に移動可能とされており、マスキングテープ611の上面および下面を覆う洗浄位置と、マスキングテープ611から退避する退避位置との間で移動する。
【0067】
マスキングテープ611を洗浄する際、まず、洗浄機構7が各洗浄液供給部71を各マスキングテープ611の側方の位置(退避位置)に移動させる。そして、各洗浄液供給部71をマスキングテープ611の幅方向に沿って洗浄液供給部71を洗浄位置にまで移動させる。これによって、マスキングテープ611の上下面が、洗浄液供給部71のU字状の内面に対向する。そして、洗浄液供給部71からマスキングテープ611の上下面に、洗浄液が供給される。そして、送出ローラ612および巻取ローラ613が逆回転されことによって、マスキングテープ611が巻取ローラ613から送出ローラ612に逆送りされる。これによって、有機EL液3の付着した部分が洗浄液供給部71の内部に順次送り込まれ、洗浄される。
【0068】
なお、図示を省略するが、洗浄液供給部71から出たマスキングテープ611の部分に、ジェットエアなどを供給することによって、マスキングテープ611を乾燥させるエア供給部が設けられていてもよい。もちろん、洗浄液供給部71の内部でジェットエアを供給できるようにしてもよい。
【0069】
<1.2. 塗布動作>
図7は、塗布装置1の塗布動作の流れを示す図である。なお、以下で説明する塗布装置1の各動作は、特に断らない限り、制御部10の制御に基づいて行われる。
【0070】
まず、不図示の搬送機構によって基板Pがステージ21上に搬送され、ステージ21に保持される(ステップS11)。
【0071】
次に、ステージ21が、Y軸方向に移動することによって、基板Pにおける塗布を開始する位置にノズルユニット50が配置される。
図7に示される例では、ステップS11の時点において、ステージ21は、ノズルユニット50の+Y側に配されている。このため、ステージ21が、−Y方向に移動することによって、基板Pがノズルユニット50の下方に配される。また、このステージ21の移動によって、マスク機構6のマスキングテープ611が、基板Pの上方に配置される(ステップS12)。
【0072】
基板Pの上方にマスキングテープ611が配されると、マスク機構6は、各マスキングテープ駆動機構61を駆動することによって、各マスキングテープ611を主走査方向(X軸方向)に移動させる。これによって、主走査方向における各マスキングテープ611の間隔が調整され、基板Pの非塗布領域に対応する部分の上方に、各マスキングテープ611が配される。
【0073】
次に、マスキングテープ611が基板Pに吸着される(ステップS13)。具体的には、送出ローラ612が正回転、巻取ローラ613が逆回転することによって、引張されているマスキングテープ611が緩められる。これによって、マスキングテープ611が自重で下降する。そして、ステージ21に埋め込まれている複数の磁石91に引き付けられることによって、基板Pを介してステージ21に吸着されることとなる。このとき、マスキングテープ611における、吸着された部分と送出ローラ612および巻取ローラ613に巻回された部分との間が若干緩められることによって、余裕代が設けられることが望ましい。また、マスキングテープ611が基板Pに吸着されたか否かは、例えば、光センサー39の検出結果に基づいて判定される。
【0074】
なお、マスキングテープ611を吸着させる態様は、上記の態様に限定されるものではなく、様々な態様が考えられる。例えば、巻取ローラ613のみを逆回転することによって、Y軸方向に延びているマスキングテープ611のうち、巻取ローラ613側(+Y側)の一部分のみを基板Pに吸着させる。その後、巻取ローラ613の逆回転を停止するとともに送出ローラ612を正回転することで、マスキングテープ611の基板Pから浮いている部分を、−Y方向に向かって次第に吸着させていく。この態様によると、マスキングテープ611に皺が発生することが抑えられるため、マスキングテープ611をより良好に基板Pに吸着させることができる。
【0075】
マスキングテープ611が基板Pに吸着されると、ノズルユニット50が、塗布ノズル52a〜52cから有機EL液3を吐出しながら、液受部53L,53Rのいずれか一方から他方へ向けて、主走査方向に移動する。これによって、基板Pおよび基板P上に配された複数のマスキングテープ611上に、有機EL液3がストライプ状に塗布される(ステップS14)。この1回の主走査方向の塗布動作が完了すると、ノズルユニット50は、液受部53Lまたは53R上で有機EL液3を吐出しながら所要時間待機する。そして、ノズルユニット50が待機している間、ステージ移動機構26によって、所要の距離(例えば、ノズルピッチの3倍分の距離)だけステージ21を+Y方向(副走査方向)に移動させる。その結果、ステージ21上に保持された基板Pが、副走査方向に移動される。
【0076】
ステージ21が副走査方向に移動する際、マスキングテープ611が磁石91に引っ張られる。これに同期して、ステージ21の移動量(すなわち、基板Pの移動量)に相当する分、送出ローラ612、巻取ローラ613も回転し、マスキングテープ611が移動する。換言すると、マスキングテープ611の移動方向および単位時間当たりの移動量が、基板Pの移動方向および単位時間当たりの移動量に一致するように、送出ローラ612が、マスキングテープ611を送り出す。すなわち、マスキングテープ611の移動速度が、基板Pの移動速度に一致するように制御される。このようにして、マスキングテープ611の新たな未塗布部分が基板P上に送り出される。
【0077】
本実施形態では、副走査方向に関して、基板Pに対するノズルユニット50の塗布位置が変更される度に、マスキングテープ611が順次送り出されることとなる。これによって、マスキングテープ611の上面の同じ場所に対して、何度も有機EL液3が塗布されることを抑制できる。したがって、有機EL液3の飛び跳ねを低減することができる。また、マスキングテープ611の移動速度を基板Pの移動速度に一致させることによって、基板P・マスキングテープ611間の擦れを低減できる。これによって、粉塵などのゴミの発生を抑えることができる。
【0078】
結果として、一回の主走査方向の塗布動作と、一回の副走査方向の送り動作とが繰り返し行われることによって、基板Pの有効領域(溝が形成されている領域)に対して有機EL液3が塗布される。
【0079】
塗布処理が完了すると、送出ローラ612および巻取ローラ613のうち少なくとも一方が、マスキングテープ611を巻き取ることによって、マスキングテープ611が基板Pから引き剥がされ、引き上げられる(ステップS15)。マスキングテープ611の引き上げが完了したかどうかは、光センサー39の検出結果に基づいて判定される。塗布処理が完了した基板Pは、Y軸方向(図示の例では、+Y方向)に搬送され、不図示の搬送機構によって、塗布装置1から搬出される。搬出された基板Pに対しては、例えば乾燥処理(ベーク処理)が行われる。
【0080】
<1.3. 洗浄動作>
図8は、塗布装置1の洗浄動作の流れを示す図である。基板Pの搬出処理(
図7:ステップS15)と並行して、マスキングテープ611に対し、
図8に示されるように、洗浄機構7による洗浄処理が実行される。
【0081】
詳細には、まず、洗浄機構7が、洗浄液供給部71および複数の支持ローラ73を各マスキングテープ611の側方の位置(退避位置)に配する(ステップS21)。そして、洗浄液供給部71および複数の支持ローラ73がマスキングテープ611の幅方向に沿って移動することによって、各マスキングテープ611が洗浄位置に配された洗浄液供給部71内に挿入され、その下方に複数の支持ローラ73が配される。
【0082】
次に、送出ローラ612が正回転、巻取ローラ613が逆回転することによって、マスキングテープ611が緩められ、自重によって下降する。そして、複数の支持ローラ73に支持される(ステップS22)。なお、送出ローラ612、巻取ローラ613の何れか一方を回転させることで、マスキングテープ611を下降させてもよい。マスキングテープ611が所要の位置に下降したどうかは、光センサー39の検出結果に基づいて判定される。
【0083】
そして、送出ローラ612および巻取ローラ613が逆回転することによって、マスキングテープ611の逆送りされつつ、洗浄液供給部71が洗浄液をマスキングテープ61の上下面に供給する。これによって、マスキングテープ611が洗浄される(ステップS23)。
【0084】
マスキングテープ611における、洗浄対象部分の洗浄が完了すると、送出ローラ612および巻取ローラ613のうちの少なくとも一方が回転することで、マスキングテープ611を巻き取る。これによって、マスキングテープ611が引き上げられる。マスキングテープ611が完全に引き上げられたかどうかは、光センサー39の検出結果に基づいて判定される。そして、洗浄液供給部71および複数の支持ローラ73が退避位置に移動し、塗布処理の妨げとならない位置に移動する。これによって、次の新たな基板Pに対する塗布処理の準備が完了する(ステップS24)。
【0085】
以上の動作によって、特定色の有機EL液3について塗布・乾燥処理が完了すると、有機EL表示装置の発光層が形成される。なお、各塗布ノズル52から異なる色の有機EL液3を吐出するようにしてもよいが、同じ色の有機EL液3を吐出することも考えられる。この場合、各色について塗布・乾燥処理が順次行われることによって、発光層が形成される。発光層が形成された基板に対して例えば真空蒸着法により陰極電極が発光層上に形成されることによって、有機EL表示装置が製造される。
【0086】
本実施形態に係る塗布装置1によると、ステージ21上において、磁力の作用によって、基板Pの非塗布領域に対応する部分にマスキングテープ611を吸着させることができる。このため、基板Pに非塗布領域を形成しつつ有効領域に有機EL液3を塗布することができる。また、マスキングテープ611を基板Pに対して接着剤で接着させることを要さず、また、有機EL液3を剥離するためのプラズマ処理することを要しない。このため、基板Pが汚れたり損傷したりする虞が少なくなり、非塗布領域を有効に形成することができる。
【0087】
<1.4. ストライプパターンの監視>
図9は、基板Pに形成されたストライプパターンST1をカメラ80で撮影して監視する様子を示す図である。なお、
図9においては、主走査方向の端部がマスキングテープ611で覆われている基板Pの一部が図示されている。
【0088】
図9に示されるように、塗布ヘッド50が主走査方向に移動することによって、基板P上にストライプパターンST1(塗布パターン)が形成される。ここで、長時間の塗布が行われると、塗布ノズル52a〜52cの吐出穴にゴミが付着したり、ゴミが堆積したりすることによって、各塗布ノズル52a〜52cからの流動性材料の吐出方向が変動する場合がある。このように吐出方向が変動すると、ストライプパターンST1を構成する線の間隔が変動してしまう。
【0089】
そこで、従来は、例えば基板P上における、溝等が形成された有効領域SP1(
図9中、斜線のハッチングで示される領域。有機ELディスプレイのパネルとして利用されるパネル領域に相当する。)に形成されたストライプパターンST1がカメラ(CCD等)で撮影され、監視されている。しかしながら、有効領域SP1において、隔壁(バンク)や撥油処理等のコーティング処理が施されている場合、流動性材料が当初の付着位置からすぐに移動してしまう場合があり、ストライプパターンST1の線の変動を正確に検出することが困難であった。また、ストライプパターンST1を監視する手段として、基板Pの搬出または搬入が行われている間に、ステージ21の近傍に備えられたプリスキャン部にて試し塗布が行われる場合もある。しかしながら、この場合は、監視できるタイミングが限られているため、塗布不良の基板Pが生じてしまう可能性が高い。また、プリスキャン部を別途用意する必要もあった。
【0090】
そこで、本実施形態では、基板9の主面のうち、有効領域SP1を除いた残余の領域SP2において、塗布ノズル52a〜52cから吐出された流動性材料のストライプパターンST1を、カメラ80(撮影部)によって撮影する。より詳細には、
図9に示されるように、カメラ80は、この基板Pの主面における残余の領域SP2のうち、マスキングテープ611で覆われている部分を撮影する。
【0091】
なお、塗布されたストライプパターンST1を保持する(すなわち、流動性材料を付着時の位置に維持する)被覆部65が、マスキングテープ611の表面に形成されていてもよい。被覆部65の材料は、使用される流動性材料の種別に対応して決定されるが、例えば油性の流動性材料であれば、撥油性を低下させるコーティング処理が施される。
【0092】
カメラ80で取得された画像信号は、制御部10に送られる。そして制御部10にて画像信号に基づく画像が生成される。生成された画像は、不図示のモニターに表示してもよい。また、画像処理を施すことによって、ストライプパターンST1を構成する複数の線の間隔を取得したり、該間隔が許容値であるかどうかを判定する手段を設けたりしてもよい。
【0093】
また、線の間隔が許容値を外れる場合には、許容値から外れた線に対応する塗布ノズル52a〜52cのいずれかを、副走査方向に所定の距離だけ移動させて、隣り合う塗布ノズル52の間隔(ピッチ)が自動または所定の操作入力で調整されるようにしてもよい。
【0094】
このように、本実施形態によると、塗布処理を行いながら、ストライプパターンST1を常時監視することが可能となる。また、バンクなどの構造がない領域を撮影することによって、流動性材料の付着位置を良好に監視することができる。また、プリスキャン部などを別途用意する必要もない。
【0095】
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0096】
例えば、マスキングテープ611の幅は、必ずしも一定である必要はなく、幅の広い部分と短い部分とが設けられていてもよい。また、マスキングテープ611の幅方向中央に孔を設けられていてもよい。このようなマスキングテープ611を用いた場合、非塗布領域内に孔形状に対応して流動性材料を塗布することができる。
【0097】
また、洗浄機構7によるマスキングテープ611の洗浄処理は、塗布処理後に必ずしも実施する必要はない。例えば、マスキングテープ611の洗浄処理が必要か否かを判断し、必要と判断された時のみ洗浄処理を実施するようにしてもよい。もしくは、定期的に洗浄処理を実施するようにしてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、洗浄機構7として、洗浄液供給部71を設ける構成を例示しているが、例えば、洗浄液供給部71の代わり、もしくは追加的に、マスキングテープ611の表面に押し当てられることによって、有機EL液3を除去する(スクイーズする)ゴム部材などを採用してもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、ノズルユニット50をX軸方向に移動させ、基板Pを+Y方向に移動させることによって、基板Pに対するノズルユニット50の主走査方向および副走査方向の相対的な移動が実現されている。しかしながら、ノズルユニット50を+Y方向へ、あるいは、基板PをX軸方向に移動させるように、塗布装置1が構成されていてもよい。無論、ノズルユニット50および基板Pのいずれか一方のみを、X軸方向および+Y方向へ移動させるように、塗布装置1が構成されていてもよい。
【0100】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り、適宜組み合わせたり、あるいは適宜省略したりすることができる。