(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の操作装置であって、前記第1拘束部材は第1歯車を有し、前記第2拘束部材は第2歯車を有し、前記連動機構は前記第1歯車及び前記第2歯車を互いに逆向きに連動させるようにこれら第1及び第2歯車と噛み合う少なくとも一つの中間歯車を含む、操作装置。
請求項1〜3のいずれかに記載の操作装置であって、前記操作伝達部材、前記第1及び第2拘束部材をこれらが前記特定の運動方向に運動可能となるように支持する支持部材をさらに備える、操作装置。
請求項5記載の操作装置であって、前記第1拘束部材は、前記支軸を中心とする円弧状をなして前記第1被拘束部を受け入れる第1拘束用空間を囲む形状を有し、この第1拘束用空間内でのみ当該第1拘束部材に対する前記第1被拘束部の相対回転を許容するものであり、前記第2拘束部材は、前記支軸を中心とする円弧状をなして前記第2被拘束部を受け入れる第2拘束用空間を囲む形状を有し、この第2拘束用空間内でのみ当該第2拘束部材に対する前記第2被拘束部の相対回転を許容する、操作装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明される実施の形態に係る操作装置は、例えばクレーンやショベルといった建設機械に設けられ、オペレータの操作を受けてその操作内容に対応した電気信号を出力するものであるが、本発明に係る操作装置が搭載される機械の種類は限定されない。
【0019】
図1〜
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る操作装置を示す。この操作装置は、操作部材に相当する操作レバー10と、操作伝達部材20と、第1拘束部材30と、第2拘束部材40と、連動機構50と、抵抗力付与装置を構成するモータ60と、ケーシング70と、を備える。
【0020】
前記操作レバー10は、支持部材である前記ケーシング70に所定の回動中心軸回りに回動可能となるように支持されており、当該回動中心軸は、この実施の形態では
図1の奥行き方向に相当する水平方向の軸に設定されている。これにより、前記操作レバー10は、
図1に示すように当該操作レバー10が真上を向く中立位置を基準として、当該中立位置から第1の操作方向である左方向と、これと逆向きの第2の操作方向である右方向とに回動操作されることが可能とされている。
【0021】
前記操作伝達部材20は、前記操作レバー10の回動操作と連動して(この実施の形態では操作レバー10と一体に)前記回動中心軸回りに回動するものであり、本体板22と、第1支軸部23と、第2支軸部24と、第1被拘束部25と、第2被拘束部26と、を一体に有する。
【0022】
前記本体板22は、均一な厚みを有する平板により構成され、その厚み方向が前記回動中心軸と平行な方向すなわち装置の前後方向と合致する姿勢で前記ケーシング70内に収容されており、この本体板22の上端に前記操作レバー10が一体に連結されている。この本体板22の具体的な形状は特に限定されない。この実施の形態に係る本体板22は、大きな半円をなす上部と、当該上部よりも径の小さい半円をなす下部と、からなる形状を有する。
【0023】
前記第1及び第2支軸部23,24は、前記本体板22からそれぞれ前後方向に突出し、かつその端部が前記ケーシング70の前後壁にそれぞれ軸支されている。従って、この実施の形態では両支軸部23,24の中心を通る軸が前記操作レバー10の回動中心軸に相当する。
【0024】
前記第1被拘束部25及び前記第2被拘束部26は、前記支軸部23,24から外れた位置に設けられる。この実施の形態に係る第1及び第2被拘束部25,26は前記第1及び第2支軸部23,24と同じくそれぞれ前後方向に延びる軸状をなし、前記本体板22の上端部の前側面及び後側面からそれぞれ前後方向に突出する。ただし、これら被拘束部25,26の突出寸法は前記両支軸部23,24の突出寸法よりも小さい寸法(前記ケーシング70の前後壁と干渉しない寸法)に設定されている。
【0025】
前記第1拘束部材30及び前記第2拘束部材40は、前記本体板22を挟んでその前後両側に配設され、前記操作伝達部材20の運動方向に沿う方向に運動可能、すなわち、この実施の形態では前記回動中心軸回りに回転可能、換言すれば、前記両支軸部23,24を中心として回転可能、となるように前記ケーシング70内に支持される。
【0026】
この実施の形態に係る第1及び第2拘束部材30,40は、互いに等しい形状をもつ円形平歯車により構成されている。つまり、これら第1及び第2拘束部材30,40の外周部はそれぞれ第1歯車及び第2歯車を構成している。第1及び第2拘束部材30,40は、その中心部にそれぞれ貫通孔32,42を有し、これらの貫通孔32,42にそれぞれ前記第1及び第2支軸部23,24が挿通されている。すなわち、第1及び第2拘束部材30,40はそれぞれ前記操作伝達部材20に対して前記回動中心軸回りに(つまり第1及び第2支軸部23,24を中心として)相対回転可能となるように前記第1及び第2支軸部23,24にそれぞれ支持されている。
【0027】
前記第1拘束部材30は、この第1拘束部材30に対する前記操作伝達部材20の相対回転を特定範囲内に制限する部材として機能する形状を有する。具体的に、この第1拘束部材30は、当該第1拘束部材30を貫通する長孔である第1拘束用空間34を囲む形状を有する。この第1拘束用空間34は前記第1拘束部材30の上部に形成され、前記回動中心軸を中心とする円弧状をなし、当該第1拘束用空間34に前記第1被拘束部25が内側から挿入される。従って、この第1拘束部材30は、前記第1拘束用空間34の弧長の分だけ、当該第1拘束部材30に対する前記操作伝達部材20及びこれに連結される操作レバー10の相対的な回動を許容する。
【0028】
前記第2拘束部材40は、この第2拘束部材40に対する前記操作伝達部材20の相対回転を特定範囲内に制限する部材として機能する形状を有する。具体的に、この第2拘束部材40は、当該第2拘束部材40を貫通する長孔である第2拘束用空間44を囲む形状を有する。この第2拘束用空間44は前記第2拘束部材40の上部に形成され、前記回動中心軸を中心とする円弧状をなし、当該第2拘束用空間44に前記第2被拘束部26が内側から挿入される。従って、この第2拘束部材40は、前記第2拘束用空間44の弧長の分だけ、当該第2拘束部材40に対する前記操作伝達部材20及びこれに連結される操作レバー10の相対的な回動を許容する。
【0029】
前記連動機構50は、第1及び第2拘束部材30,40が互いに逆向きに連動するように両拘束部材30,40に連結されるとともに、これら第1及び第2拘束部材30,40とともに抵抗力伝達機構を構成する。具体的に、この実施の形態に係る連動機構50は、互いに噛合する第1中間歯車52及び第2中間歯車54により構成される。これらの中間歯車52,54は、互いに等しい形状をもつ平歯車により構成され、かつ、当該第1及び第2中間歯車52,54がそれぞれ前記第1拘束部材30及び第2拘束部材40に噛合されるように前記ケーシング70に回転可能に軸支されている。従って、前記第1及び第2拘束部材30,40のうちの一方の拘束部材が左方向または右方向に回転すると、連動機構50はこれと連動して他方の拘束部材を同じ回転速度で逆向きに回転させる。
【0030】
ここで、前記連動機構50により相互連結される両拘束部材30,40の回転位相は、
図1に示すように第1及び第2拘束用空間34,44が最上位置で互いに合致する(完全に重なり合う)ように設定されている。ここで前記最上位置とは、
図1に示すように操作レバー10が中立位置にあるときに第1及び第2被拘束部25,26が各拘束用空間34,44のちょうど中央に位置するような当該拘束用空間34,44の位置が相当する。
【0031】
前記モータ60は、モータ本体62と、このモータ本体62から突出する出力軸64と、を有し、この出力軸64が前記抵抗力伝達機構のうちの第1中間歯車52に連結されている。すなわち、モータ60は前記第1中間歯車52を回転駆動する。この回転駆動は、前記操作レバー10が第1及び第2操作方向のうちのいずれの方向に操作された場合でもそれぞれ第1拘束部材30及び第2拘束部材40によって当該操作に抵抗を与えることができる向きに行われる。つまり、前記操作レバー10が第1操作方向である左方向に操作されたときにこれに対応する操作伝達部材20の左方向の回転に対して前記第1拘束部材30が前記第1被拘束部25に抵抗を与える(つまり右向きの回転力を与える)一方、前記操作レバー10が第2操作方向である右方向に操作されたときにこれに対応する操作伝達部材20の右方向の回転に対して前記第2拘束部材40が前記第1被拘束部26に抵抗を与える(つまり右向きの回転力を与える)向きに、モータ60が作動する。
【0032】
より具体的に、モータ60のモータ本体62は、操作レバー10の操作の向きにかかわらず、操作抵抗を与えるときは常に、
図4〜
図8に白抜き矢印で示される向き、すなわちこれらの図における反時計回りの向き、のトルクを出力軸64に与えるように、作動する。これによる抵抗力付与の詳細は後に詳述する。
【0033】
この実施の形態に係る操作装置では、前記モータ60がコントローラ80に電気的に接続され、このコントローラ80により当該モータ60の駆動が制御される。具体的に、このコントローラ80は、次のような演算制御動作を行う。
【0034】
1)前記モータ60に内蔵されるエンコーダの出力信号に基づき、当該モータ60の出力軸64の回転位置から操作レバー10の操作位置を割り出す。
【0035】
2)前記操作装置が設けられる建設機械等の各所に設けられたセンサの出力する信号に基づいて当該建設機械等における作業状態及びそれに相当する負荷を把握する。
【0036】
3)前記操作レバー10の操作位置と、前記作業状態とに基づき、油圧式操作装置(例えばリモコン弁)を用いていたならば操作レバーに作用するであろう反力を予測演算し、その反力に相当する抵抗を操作レバー10に与えるようなトルクで前記モータ60の出力軸64を回転させる。このトルクの大きさは、前記操作レバー10の操作に対して抵抗を与えながらその抵抗に打ち勝ってオペレータが操作をすることが可能な程度に、設定される。
【0037】
次に、この第1の実施の形態に係る操作装置の作用を説明する。
【0038】
まず、モータ60が通電されていないオフの状態では、第1及び第2拘束部材30,40と第1及び第2中間歯車52,54が
図1に示すような基準位置に保持される。この基準位置は、第1及び第2拘束部材30,40が囲む第1及び第2拘束用空間34,44が
図1に示す最上位置で互いに合致するような位置である。従って、このままモータ60が通電されなくても、操作レバー10は
図5(a)(b)に示すように前記両拘束用空間34,44の弧長の範囲内で、より具体的には第1及び第2拘束用空間34,44内で操作伝達部材20の第1及び第2被拘束部25,26が動ける範囲内で、回動操作されることが可能である。換言すれば、オペレータは、モータ60を作動させないモードを選択すれば、当該モータ60による抵抗を受けることなく前記拘束用空間34,44の弧長に対応する範囲内で自由に操作レバー10を回動操作することができる。
【0039】
これに対して、操作レバー10に対して操作抵抗を与えるモードが選択されると、コントローラ80はモータ60を作動させてその出力軸64から
図4に白抜き矢印で示す向き(同図反時計回り方向)のトルクを出力させる。このトルクは、連動機構50の第1中間歯車52を介して第1拘束部材30に伝達され、これにより第1拘束部材30を
図4に黒矢印で示される向き(時計回り方向)に回転させる。その一方、前記トルクは、前記連動機構50の第1中間歯車52に噛合される第2中間歯車54を介して第2拘束部材40にも伝達され、これにより第2拘束部材40を前記第1拘束部材30と逆向き、すなわち
図4に黒破線矢印で示される向き(反時計回り方向)に回転させる。
【0040】
従って、前記操作抵抗を与えるモードが選択されてから操作レバー10が操作されるまでの初期段階では、
図4に示す正面からみて、第1拘束部材30のうち前記第1拘束用空間34の左端に隣接する部分である第1拘束部36が操作伝達部材20の第1被拘束部25に対して左側から当接すると同時に、第2拘束部材40のうち前記第2拘束用空間44の右端に隣接する部分である第2拘束部46が操作伝達部材20の第2被拘束部26に対して右側から当接する。つまり、操作伝達部材20はその第1及び第2被拘束部25,26が第1及び第2拘束部材30,40の第1及び第2拘束部36,46によって左右両側から挟みこまれるようにして拘束され、当該操作伝達部材20に連結されている操作レバー10は
図4に示される中立位置に保持される。
【0041】
次に、
図4に示される状態から操作レバー10が前記モータ60の出力トルクに抗して左方向(第1の操作方向)に操作されると、当該操作力が操作伝達部材20の第1被拘束部25から第1拘束部材30の第1拘束部36に伝えられ、これにより当該第1拘束部材30さらには第2拘束歯車40の歯車、中間歯車52,54を含む全ての歯車は、
図6(a)に示すようにモータ60の出力トルクの向き(同図白抜き矢印の向き)に対応するとは逆の向き(第1拘束部材30は同図黒実線矢印の向き)に回転させられる。つまり、第1拘束部材30は、操作伝達部材20及び操作レバー10に対して当該操作レバー10の操作方向と逆向きの抵抗(つまりモータ60の出力トルクによる抵抗)を与えながら、その操作レバー10の操作方向と同じ方向に回転する。
【0042】
一方、前記第1拘束部材30と連動機構50を介して連結されている第2拘束部材40は前記第1拘束部材30と逆向き(
図6(a)の破線矢印の向き)に回転するため、当該第2拘束部材40の第2拘束部46は第2被拘束部26から徐々に離れる。さらに、前記操作レバー10の左方向への操作による両拘束部材30,40の相互逆向き回転が進行して
図6(b)に示すように両拘束部材30,40が基準位置つまり両拘束用空間34,44が最上位置で互いに重なり合うような位置まで戻ると、
図6(b)に示すように前記第2被拘束部26が前記第2拘束部材40のうちその第2拘束用空間44の左端に隣接する部分(つまり第2拘束部46と反対側の部分)48に当たり、これにより操作伝達部材20及び操作レバー10がそれ以上に左方向へ回動することが阻止される。すなわち、この位置が、操作レバー10が左方向にフル操作された位置に相当する。
【0043】
逆に、
図4に示される状態から操作レバー10が右方向(第2の操作方向)に操作される場合も、モータ60の出力トルクの向きを変えることなく当該操作レバー10に対して前記と同じ原理で操作抵抗が与えられる。具体的に、操作レバー10が前記右方向に操作されると、その操作力が操作伝達部材20の第2被拘束部26から第2拘束部材40の第2拘束部46に伝えられ、これにより当該第2拘束部材40の歯車さらには第1拘束部材30の歯車及び中間歯車52,54を含む全ての歯車は、
図7(a)に示すようにモータ60の出力トルクの向き(同図白抜き矢印の向き)に対応する向きとは逆の向き(第2拘束部材40は同図黒破線矢印の向き)に回転させられる。つまり、第2拘束部材40は、操作伝達部材20及び操作レバー10に対して当該操作レバー10の操作方向と逆向きの抵抗(つまりモータ60の出力トルクによる抵抗)を与えながら、その操作レバー10の操作方向と同じ方向に回転する。
【0044】
一方、前記第1拘束部材30は前記第2拘束部材40と逆向き(
図7(a)の実線矢印の向き)に回転するため、当該第1拘束部材30の第1拘束部36は第1被拘束部25から徐々に離れる。さらに、前記操作レバー10の右方向への操作による両拘束部材30,40の相互逆向き回転が進行して
図7(b)に示すように両拘束部材30,40が基準位置まで戻ると、
図7(b)に示すように前記第1被拘束部25が前記第1拘束部材30のうちその第1拘束用空間34の右端に隣接する部分(つまり第1拘束部36と反対側の部分)38に当たり、これにより操作伝達部材20及び操作レバー10がそれ以上に右方向へ回動することが阻止される。すなわち、この位置が、操作レバー10が右方向にフル操作された位置に相当する。
【0045】
このように、モータ60が出力するトルクは操作レバー10の操作方向にかかわらず常にその操作に抵抗を与える向き、換言すれば、当該操作レバー10を中立位置に戻そうとする向き、に作用するため、仮にコントローラ80やモータ60の故障によって当該モータ60が正規の方向(つまり前記のように操作抵抗を与えるための方向)及びその逆の方向のいずれに暴走した場合でも(つまり常に最大トルクを出力し続ける異常状態に陥っても)、操作レバー10は中立位置に保持されることになる。
【0046】
具体的に、
図8(a)の白抜き矢印で示す方向すなわち正規の方向にモータ60が暴走した場合、その出力トルクは各歯車52,54,30を図の黒矢印(第2拘束部材40については黒破線矢印)の方向に回転させる。これにより、第1拘束部材30の第1拘束部36が操作伝達部材20の第1被拘束部25に対して左側から当接すると同時に第2拘束部材40の第2拘束部46が操作伝達部材20の第2被拘束部26に対して右側から当接する状態、つまり、
図4に示した初期段階の状態と同じ状態が形成される。よって、前記モータ60の暴走にかかわらず操作レバー10は
図4に示される中立位置に保持される。
【0047】
一方、
図8(b)の白抜き矢印で示す方向すなわち前記正規の方向と逆の方向にモータ60が暴走した場合、その出力トルクは各歯車52,54,30を図の黒矢印(第2拘束部材40については黒破線矢印)の方向に回転させる。これにより、第1拘束部材30のうちその第1拘束部36と反対側の部分(第1拘束用空間34の右端に隣接する部分)38が操作伝達部材20の第1被拘束部25に対して右側から当接すると同時に第2拘束部材40のうちその第2拘束部46と反対側の部分(第2拘束用空間44の左端に隣接する部分)48が操作伝達部材20の第2被拘束部26に対して左側から当接する状態、つまり、
図4に示した初期段階の状態とはトルクの向きが逆ではあるが当該状態と同じく第1及び第2拘束部材30が第1及び第2被拘束部25,26を左右から拘束する状態が形成され、この場合も操作レバー10は
図4に示される中立位置に保持される。
【0048】
このように、モータ60の暴走時にはその方向に関係なく操作レバー10が中立位置に保持される。これにより操作装置の高い安全性が保証される。
【0049】
この第1の実施の形態では、操作伝達部材20と操作レバー10とが一体に回動するように両者が互いに直結されているが、本発明に係る操作レバーと操作伝達部材との間には別の部材、例えば運動伝達機構が介在していてもよい。従って、本発明に係る操作伝達部材は必ずしも操作レバーと同じ動きをするものでなくてもよく、ある決まった特定の運動を行うものであればよい。
【0050】
その例を第2の実施の形態として
図9及び
図10に示す。ここに示す操作装置は、操作部材に相当する操作レバー110と、操作伝達部材120と、第1拘束部材130と、第2拘束部材140と、連動機構150と、抵抗力付与装置を構成するモータ160と、支持部材であるケーシング170と、運動伝達機構であるリンク機構180と、を備える。これら操作レバー110、操作伝達部材120、第1及び第2拘束部材130,140、連動機構150、モータ160及びケーシング170は、それぞれ、前記第1の実施の形態に係る操作レバー10、操作伝達部材20、第1及び第2拘束部材30,40、連動機構50、モータ60及びケーシング70に相当するものであり、そのうち一致している点については説明を省略する。
【0051】
第1の実施の形態と異なり、前記操作伝達部材120は前記操作レバー110の回動中心軸の下方においてその回動中心軸とは独立した回動軸121を中心に回動可能となるようにケーシング170に支持され、前記リンク機構180は前記操作レバー110の回動操作と連動して前記操作伝達部材120が前記回動軸121回りに回動するように両者を連結する。操作伝達部材120は第1の実施の形態の第1被拘束部25及び第2被拘束部26と同様の第1被拘束部125及び第2被拘束部126を有する。
【0052】
第1及び第2拘束部材130,140は、前記第1及び第2拘束部材30,40と同じく、a)平歯車により構成され、b)前記回動軸121を中心として前記操作伝達部材120に対して相対回転可能であり、c)前記第1及び第2被拘束部125,126がそれぞれ挿入可能な円弧状の第1拘束用空間134及び第2拘束用空間144をそれぞれ囲んでその弧長の範囲でのみ当該第1及び第2拘束部材130,140に対する前記操作伝達部材120の相対回転を許容する。しかし、第1及び第2拘束部材130,140は、前記第1及び第2拘束部材30,40と異なり、前記回動軸121を中心とする扇状をなし、その外周の一部にのみ歯を有する。
【0053】
前記連動機構150は、第1の実施の形態に係る連動機構50と同様、互いに噛合される第1及び第2中間歯車152,154を有し、第1中間歯車152が前記第1拘束部材130に噛合され、第2中間歯車152が前記第2拘束部材140に噛合される。しかし、この連動機構150は、さらに、第1中間歯車152と同軸回りに回転するかさ歯車156を備える。
【0054】
一方、前記モータ160は前記モータ60と同じくモータ本体162及び出力軸164を有するが、出力軸164にはかさ歯車166が固定され、このかさ歯車166が前記かさ歯車156に噛合されている。これらのかさ歯車156,166の使用は、前記各中間歯車152,154の中心軸とモータ160の出力軸164を交差させて当該モータ160を図に示されるような縦置き姿勢でケーシング170内に収容することを可能にする。すなわち、この第2の実施の形態に係る操作装置では、水平方向の寸法を抑えながら、前記第1の実施の形態に係る操作装置と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0055】
また、本発明において、操作伝達部材や第1及び第2拘束部材の具体的な形状及び配置は自由に設定することが可能である。その変形例として第3の実施の形態に係る操作装置の要部を
図11及び
図12に示す。この操作装置は、操作部材に相当する操作レバー210と、操作伝達部材220と、第1拘束部材230と、第2拘束部材240と、連動機構250と、抵抗力付与装置を構成するモータ260と、図略のケーシングと、を備える。
【0056】
第1の実施の形態と同様、前記操作レバー210は中立位置から左方向及び右方向に回動操作可能となるように設けられている。操作伝達部材220は、前記操作レバー210の回動操作と連動して
図11に示される軸Xを中心に回動するように当該操作レバー210に連結されているが、両者の間には増速器212が介在している。この増速器212は、前記操作レバー210の回動操作量に対する操作伝達部材220の回動量を増幅する。この増速器212は、操作レバー210の回動操作中心軸と操作伝達部材220の回動中心軸Xとを異ならせるような運動変換機構を兼ねるものであってもよい。
【0057】
前記操作伝達部材220は、本体部222と被拘束凸部224とを一体に有する。本体部222は、前記軸Xを中心とする円筒状をなし、その内側に図略の回動支軸が挿通される。前記被拘束凸部224は、前記本体部222の外周面の周方向の一部から径方向の外側に突出し、かつ、本体部222の軸方向の全域にわたって延びている。この実施の形態では、後にも述べるとおり、当該被拘束凸部224の軸方向の一方の端部(
図11では左側端部)が第1被拘束部を構成し、他方の端部(
図11では右側端部)が第2被拘束部を構成する。また、図に示される被拘束凸部224はその先端に向かうに従って幅が小さくなる山型状の断面を有する。
【0058】
この実施の形態では、前記操作レバー210が中立位置にある状態で前記被拘束凸部224が
図12(a)に示すように真上を向くように、前記操作伝達部材220と前記操作レバー210との回転位相が設定されている。
【0059】
前記第1及び第2拘束部材230,240は、前記操作伝達部材220を挟んでその軸方向の両側(
図11では左右両側)にそれぞれ配置されるとともに、前記操作伝達部材220の運動方向に沿う方向に運動可能、すなわち、この第3の実施の形態では前記回動中心軸X回りに回転可能、となるように図略の支持部材に支持される。
【0060】
具体的に、第1および第2拘束部材230,240は、それぞれ、前記操作伝達部材220をその軸方向の両外側から覆う外側壁232,242と、各外側壁232,242よりも軸方向の内側に位置する筒状の内側壁234,244と、を有する。各外側壁232,242の中央には前記操作伝達部材220の回動支軸が挿通可能な貫通孔233,243が設けられ、当該回動支軸を中心として各拘束部材230,240が前記操作伝達部材220に対して相対回転することが可能である。
【0061】
前記内側壁234,244は、それぞれ、前記第1及び第2拘束部材230,240の軸方向の端部を径方向の外側から覆う円筒状の内周面と、内側に向かうに従って縮径する円錐台状の外周面と、を有し、それぞれの外周面はかさ歯車236,246を構成している。
【0062】
前記第1拘束部材230は、この第1拘束部材230に対する前記操作伝達部材220の相対回転を特定範囲内に制限するための第1拘束部238を有する。この第1拘束部238は、前記内側壁232の内周面からその周方向の一部の領域において内向きに突出し、前記被拘束凸部224のうち第1被拘束部に相当する部位(
図11の左側端部、
図12の奥側端部)に対して
図12の時計回り方向に当接することにより当該部位を周方向から拘束する。従って、前記第1拘束部材230が囲む内部空間すなわち前記第1拘束部238を除く円弧状の空間が、前記第1被拘束部を受け入れる第1拘束用空間に相当する。
【0063】
同様に、前記第2拘束部材240は、この第2拘束部材240に対する前記操作伝達部材220の相対回転を特定範囲内に制限するための第2拘束部248を有する。この第2拘束部248は、前記内側壁242の内周面からその周方向の一部の領域において内向きに突出し、前記被拘束凸部224のうち第2被拘束部に相当する部位(
図11の右側端部、
図12の手前側端部)に対して
図12の反時計回り方向に当接することにより当該部位を周方向から拘束する。従って、前記第2拘束部材240が囲む内部空間すなわち前記第2拘束部248を除く円弧状の空間が、前記第2被拘束部を受け入れる第2拘束用空間に相当する。
【0064】
前記第1及び第2拘束部238,248は、その先端(径方向内側端)に向かうに従って幅が小さくなる山型状の断面を有している。各拘束部238,248の両側面の傾斜角度は、前記被拘束凸部224の両側面と略合致するように、設定されている。
【0065】
前記連動機構250は、前記第1の実施の形態に係る連動機構50と同様に、第1及び第2拘束部材230,240が互いに逆向きに連動するように両拘束部材230,240に連結されるものであり、ここでは上下一対のかさ歯車252,254により構成される。これらのかさ歯車252,254は、これらの中心軸が上下方向を向く姿勢で、前記両拘束部材230,240に形成されたかさ歯車236,246の双方に同時に噛合するように配置される。これらかさ歯車252,254のいずれか一方は省略されることが可能である。
【0066】
ここで、前記連動機構250により相互連結される両拘束部材230,240の回転位相は、
図12(a)に示すように前記被拘束凸部224が上を向く姿勢で第1及び第2拘束部238,248が当該被拘束凸部224を左右両側から拘束する一方、この位置から両拘束部材230,240が相互逆向きに回転することにより同図(c)に示すように両拘束部238,248が最下位置で互いに軸方向に合致するように、設定されている。
【0067】
また、この実施の形態では、両拘束部238,248の根元部分(内側壁234,244の内周面に近い部分)にそれぞれ段部239,249が形成され、
図12(a)に示すように最上位置にある被拘束凸部224を左右両側から拘束する位置で前記段部239,249同士が周方向に当接することにより、前記第1及び第2拘束部238,248の側面と前記被拘束凸部224の側面との間に若干の隙間が確保されるように前記両段部239,249を含む第1及び第2拘束部238,248の形状が設定されている。当該隙間は、中立位置において操作レバー210に遊びを持たせる(つまり両拘束部材230,240の拘束を受けずに微小範囲で動くことを許容する)ためのものである。
【0068】
前記モータ260は、前記第1の実施の形態に係るモータ60と同じく、モータ本体と出力軸とを有し、この出力軸が前記両拘束部材230,240及び連動機構250からなる抵抗力伝達機構の例えば下側かさ歯車254に連結されるが、これらの間には
図11に示すような増速器270が介在している。この増速器270は前記かさ歯車254の回転を増速して前記モータ260の出力軸に伝達するものである。
【0069】
この実施の形態に係る操作装置では、前記モータ260がコントローラ280に接続され、前記両拘束部材230,240に対して
図12(a)に白抜き矢印で示す方向のトルクを与える向きに駆動される。つまり、第1拘束部材230に対しては
図12(a)〜(c)の時計回り方向のトルクを、第2拘束部材240に対しては同図反時計回り方向のトルクを、それぞれ与える向きに駆動される。
【0070】
次に、この第3の実施の形態に係る操作装置の作用を説明する。
【0071】
まず、モータ260が通電されると、当該モータ260の出力トルクがかさ歯車254を介して第1及び第2拘束部材230,240に伝達され、これにより、両拘束部材230,240には
図12(a)に白抜き矢印で示すような互いに逆向きのトルクが与えられる。これにより、操作伝達部材220は、
図12(a)に示すように被拘束凸部224が真上を向く基準位置に保持され、当該被拘束凸部224は第1及び第2拘束部材230,240によって左右両側からの拘束を受ける。従って、操作レバー210は、前記操作伝達部材220の基準位置に対応する位置である中立位置に保持される。
【0072】
次に、
図12(a)に示される状態から操作レバー210が前記モータ260の出力トルクに抗して例えば左方向に操作されると、当該操作力が操作伝達部材220に伝えられ、これにより操作伝達部材220は、前記モータ260の出力トルク(同図白抜き矢印に示される時計回り方向のトルク)に抗して第1拘束部238を押しながら、つまり、
図12(b)に黒実線矢印に示す反時計回り方向に第1拘束部材230を回転させながら、自らも同方向に回転する。換言すれば、第1拘束部材230は、操作伝達部材220及び操作レバー210に対して当該操作レバー10の操作方向と逆向きの抵抗(つまりモータ260の出力トルクによる抵抗)を与えながら、操作伝達部材220とともに前記操作レバー210の操作に服従する方向に回転する。
【0073】
一方、前記第1拘束部材230と連動機構250を介して連結されている第2拘束部材240は前記第1拘束部材230と逆向き(
図12(b)の時計回り方向)に回転するため、当該第2拘束部材240の第2拘束部248は前記被拘束凸部224から徐々に離れる。さらに、前記操作レバー210の左方向への操作による両拘束部材230,240の相互逆向き回転が進行して
図12(c)に示すように両拘束部238,248が最下位置で互いに合致する位置まで両拘束部材230,240が回転すると、前記第2拘束部248が前記被拘束凸部224に対して前記第1拘束部238と反対の側(図では右側)から当たり、これにより、操作伝達部材220及び操作レバー210がそれ以上に左方向へ回動することを阻止する。すなわち、この位置が、操作レバー210が左方向にフル操作された位置に相当する。
【0074】
逆に、
図12(a)に示される状態から操作レバー210が右方向(第2の操作方向)に操作される場合は、操作伝達部材220及び両拘束部材230,240が前記と逆の向きに回転しながら第2拘束部材240の第2拘束部248がモータ260の出力トルクに相当する抵抗を操作伝達部材220の被拘束凸部224さらには操作レバー210に与える。つまり、モータ260のトルクの向きを変えることなく当該操作レバー210に対して左方向操作時と同じ原理で右方向操作に対しても抵抗が与えられる。
【0075】
このように、第3の実施の形態においても、モータ260が出力するトルクは操作レバー210の操作方向にかかわらず常にその操作に抵抗を与える向き、つまり、当該操作レバー10を中立位置に戻そうとする向き、に作用するため、仮にコントローラやモータ260の故障によって当該モータ260が正規の方向(つまり前記のように操作抵抗を与えるための方向)及びその逆の方向のいずれに暴走した場合でも(つまり常に最大トルクを出力し続ける異常状態に陥っても)、操作伝達部材220は
図12(a)に示すようにその被拘束凸部224が両拘束部238,248によって左右両側から拘束される位置に保持され、よって操作レバー210は中立位置に保持されることになる。これにより、操作装置の高い安全性が保証される。つまり、この第3の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0076】
以上説明した第1〜第3の実施の形態に係る操作伝達部材20,120及び220はいずれも操作レバーの操作に連動して回転運動するものであるが、本発明に係る操作伝達部材並びに第1及び第2拘束部材の運動は回転運動に限られない。当該運動は例えば直線運動であってもよい。
【0077】
その例を第4の実施の形態として
図13及び
図14に示す。ここに示す操作装置は、操作部材に相当する操作レバー310と、操作伝達部材320と、第1拘束部材330と、第2拘束部材340と、連動機構350と、抵抗力付与装置を構成するモータ360と、支持部材である図略のケーシングと、を備え、これらはそれぞれ第1の実施の形態に係る操作レバー10、操作伝達部材20、第1及び第2拘束部材30,40、連動機構50、モータ60及びケーシング70に相当するが、第4の実施の形態に係る操作伝達部材320、第1及び第2拘束部材330,340はいずれも同一の方向に直線運動することが可能、つまり特定のスライド方向(
図13,14の矢印方向)にスライド可能、となるように前記ケーシングに支持されている。
【0078】
具体的に、この第4の実施の形態が前記第1の実施の形態と相違する点は次のとおりである。
【0079】
1)操作レバー310と操作伝達部材320との間には直進変換機構312が介在する。この直進変換機構312は操作レバー310の回動操作を操作伝達部材320の直線運動に変換するものである。この直進変換機構312は、操作レバー310が直線方向に操作されるものである場合には、省略されることも可能である。
【0080】
2)第1の実施の形態と同様、操作伝達部材320はその前後方向に突出する軸状の第1被拘束部321及び第2被拘束部322を有する。第1拘束部材330及び第2拘束部材340はそれぞれ前記第1及び第2被拘束部321,322が内側から挿入可能な第1拘束用空間334及び第2拘束用空間344を囲む形状の本体板331,341をそれぞれ有する。前記第1及び第2拘束用空間334,344の形状は前記スライド方向と平行な直線状に設定されている。
【0081】
3)第1及び第2拘束部材330,340は、さらに、第1及び第2ラック332,342をそれぞれ有し、連動機構350はピニオン354を有する。第1及び第2ラック332,342は前記スライド方向と平行に延び、第1及び第2拘束部材330,340の本体板331,341の内側面にそれぞれ固定されている。前記ピニオン354は、前記第1及び第2ラック332,342の双方に噛合されるように両ラック332,342の間に配置されている。従って、当該ピニオン354の回転に伴って両拘束部材330,340は互いに逆向きにスライドするように連動する。また、この連動機構350を介して相互連結される第1及び第2拘束部材330,340の相対位置関係は、
図13及び
図14に示すように第1及び第2拘束用空間334,344が中央位置で互いに合致する(前後方向に重なり合う)ように、設定されている。
【0082】
4)モータ360は、第1の実施の形態のモータ60と同様にモータ本体及び出力軸を有するが、その出力軸は増速器370を介して前記ピニオン354の回転中心軸に連結されている。前記増速器370は前記ピニオン354の回転を増速して前記モータ360の出力軸に伝達する。
【0083】
なお、モータ360の駆動の向きは、例えば第1及び第2拘束部材330,340をそれぞれ
図13及び
図14の左側及び右側にスライドさせる向きに設定される。この場合、第1拘束部材330の本体板331うち第1拘束用空間334の右端に隣接する部分が第1拘束部336に相当し、第2拘束部材340の本体板341のうち第2拘束用空間344の右端に隣接する部分が第2拘束部346に相当する。
【0084】
この第4の実施の形態においても、前記第1の実施の形態と同じ原理で操作レバー310に対する操作抵抗の付与及びモータ360の暴走時の安全性の確保が実現される。すなわち、
図13,
図14に示される状態からモータ360が作動すると、そのトルクが連動機構350を介して第1及び第2拘束部材330,340に互いに逆向きのスライド力が与えられ、これらのスライド力は両被拘束部321,322を図に示される中央位置に保持する力、つまり、操作レバー310を中立位置に保持する力として機能する。従って、操作レバー310が中立位置から左方向及び右方向のいずれに操作された場合にも当該操作レバー310にはこれを中立位置に戻そうとする操作抵抗が与えられ、また、モータ360の暴走時には当該操作レバー310が確実に中立位置に保持されてその高い安全性が確保される。