(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208523
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】垂直円筒貯水槽の建設工法
(51)【国際特許分類】
E04H 7/06 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
E04H7/06 301Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-210739(P2013-210739)
(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2015-74897(P2015-74897A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】IHIプラント建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】西浦 功
(72)【発明者】
【氏名】松岡 明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小島 成之
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−179185(JP,A)
【文献】
米国特許第03935633(US,A)
【文献】
特開2002−144085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 7/06
E04H 7/18
B23K 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側板を円周方向に複数に分割した分割側板ブロックを、吊り上げて基礎上に円周方向に並べると共に円周方向で隣接した分割側板ブロックの突き合わせ部を鉛直方向に溶接して垂直円筒貯水槽を構築するに際し、
前記分割側板ブロックの両側部の上下方向に沿って位置合わせ用リブを設けて分割側板ブロックを製作し、この分割側板ブロックを基礎上に円周方向に並べると共に円周方向で隣接した分割側板ブロックの前記位置合わせ用リブ同士をスリーブを介してボルト・ナットで仮締めし、そのスリーブと分割側板ブロックの面との間に寄せポンチを打ち込んで、隣接する分割側板ブロックの側部突き合わせ部の円周面を位置合わせし、しかる後、前記側部突き合わせ部を鉛直方向に溶接することを特徴とする垂直円筒貯水槽の建設工法。
【請求項2】
前記分割側板ブロックの内周面側の両側部の一方には、側部裏当て板が、前記分割側板ブロックの側部から周方向に突出するよう設けられ、隣接する分割側板ブロックの位置合わせの際に、隣接する分割側板ブロックの側部突き合わせ部の内周面が前記側部裏当て板に密着するように寄せポンチで打ち込んで位置合わせし、しかる後その外周面の側部突き合わせ部を、側部裏当て板と共に溶接する請求項1記載の垂直円筒貯水槽の建設工法。
【請求項3】
前記位置合わせ用リブは、隣接した分割側板ブロックの側部突き合わせ部の側部裏当て板の両側に位置するように前記分割側板ブロックの内周面側の両側部に設けられる請求項2記載の垂直円筒貯水槽の建設工法。
【請求項4】
前記位置合わせ用リブには、前記スリーブを介して隣接する位置合わせ用リブを仮締めするボルトの挿入穴が上下方向に間隔を置いて形成され、隣接する分割側板ブロックの位置合わせの際に、上方の挿入穴から下方の挿入穴にかけてボルト・ナットを順次仮締めし、隣接する分割側板ブロックの側部突き合わせ部を、上方から下方にかけて位置合わせしていく請求項1〜3いずれかに記載の垂直円筒貯水槽の建設工法。
【請求項5】
前記分割側板ブロックの下端には分割アニュラー板が予め溶接されている請求項1〜3いずれかに記載の垂直円筒貯水槽の建設工法。
【請求項6】
基礎上に複数枚の分割底板を並べると共にその分割底板同士を溶接して中央底板を形成し、その中央底板の周りに前記分割側板ブロックを円周方向に並べると共に、前記分割側板ブロックの位置合わせを行い、しかる後、前記分割側板ブロックの側部突き合わせ部を溶接すると共に前記分割アニュラー板の突き合わせ部を溶接し、さらに分割アニュラー板と前記底板の外周の突き合わせ部を溶接する請求項5記載の垂直円筒貯水槽の建設工法。
【請求項7】
前記分割側板ブロックの下端両側部には、前記分割アニュラー板の突き合わせ部を溶接するための切り欠き部が形成され、その分割アニュラー板の突き合わせ部の溶接後に、前記切り欠き部に当て板を当てて、前記分割側板ブロックと分割アニュラー板に溶接する請求項6記載の垂直円筒貯水槽の建設工法。
【請求項8】
基礎上に前記分割側板ブロックを円周方向に並べた後、その各分割側板ブロックと前記中央底板間をステーで連結して、前記分割側板ブロックを基礎上に垂直に固定し、しかる後、円周方向に並べた前記分割側板ブロック周りに移動自在に昇降用梯子を取り付け、前記分割側板ブロック同士の側部突き合わせ部を溶接する際に、前記昇降用梯子に昇降自在に設けた半自動溶接機で溶接する請求項7記載の垂直円筒貯水槽の建設工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中型或いは小型の貯水用の垂直円筒貯水槽の建設工法に係り、特に、短期間に垂直円筒貯水槽を構築できる垂直円筒貯水槽の建設工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大量の水を貯水するために多数の垂直円筒貯水槽を短期間に、しかも低コストで構築する必要に迫られている。
【0003】
従来、垂直円筒貯水槽を構築するには、円弧状に形成した側板セグメントを基礎上に円周方向に並べると共にその突き合わせ部を突き合わせ溶接して1段目の側板を形成し、2段目以降は、下段の円弧状側板セグメント同士の突き合わせ部と互い違いになるように重ねながら、上下の円弧状側板セグメント同士を、周溶接すると共に上下方向の突き合わせ部を溶接して順次垂直円筒貯水槽を構築していくレンガ積み工法が一般的であるが、このように円弧状側板セグメントを突き合わせ溶接し、順次高さ方向に組み上げて周溶接するレンガ積み工法は、突き合わせ部の突き合わせも確実で、溶接欠陥もない確実な工法であるが、1000KLクラスの貯水槽で、工期が2ヶ月近くになってしまう欠点がある。
【0004】
そこで、特許文献1で提案されるように、側板を円周方向に複数に分割した分割側板ブロックを予め工場で製作し、これを設置する現場に順次搬送し、これら分割側板ブロックを、クレーンで吊り上げて基礎上に円周方向に並べると共に仮組みし、しかる後、周方向で隣接した分割側板ブロックの突き合わせ部を鉛直方向に溶接して垂直円筒貯水槽を構築する工法が知られている。
【0005】
この工法は、分割側板ブロックを予め工場で製作するため、現場では、分割側板ブロックの縦方向の突き合わせ部を溶接するだけで済むため工期を大幅に短縮することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−35074号公報
【特許文献2】特開平5−113053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、小型から中型の垂直円筒貯水槽、例えば約1000〜2500KL(直径約10〜17m、高さ約9〜15m)の垂直円筒貯水槽は、側板の板厚が
6〜15mmと薄いため、分割側板ブロック同士の位置合わせを正確に行う作業が必要となり、また側板セグメントと違って分割側板ブロックの重量も数倍重くなるため、現場での位置合わせ作業のための作業足場を組まなければならない等、突き合わせ溶接作業に手間が掛かってしまい、現実的には従来のレンガ積み工法の方が確実である。
【0008】
そこで、特許文献2では、分割側板ブロックとは別個に、円周方向に側柱を立設し、分割側板ブロック同士を側柱を介して突き合わせ溶接することで、突き合わせ溶接の問題を解決する工法が提案されている。この工法は、分割側板ブロック同士の直接の突き合わせが不要となるため、特許文献1の問題を解消できるメリットがある。
【0009】
しかし、特許文献2は、突き合わせ溶接のために側柱を立設するため、その作業が必要となると共に側柱分、確実にコストアップとなってしまう問題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、分割側板ブロックの位置合わせが簡単にできると共に短期間に建設できる垂直円筒貯水槽の建設工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、側板を円周方向に複数に分割した分割側板ブロックを、吊り上げて基礎上に円周方向に並べると共に円周方向で隣接した分割側板ブロックの突き合わせ部を鉛直方向に溶接して垂直円筒貯水槽を構築するに際し、前記分割側板ブロックの両側部の上下方向に沿って位置合わせ用リブを設けて分割側板ブロックを製作し、この分割側板ブロックを基礎上に円周方向に並べると共に円周方向で隣接した分割側板ブロックの前記位置合わせ用リブ同士をスリーブを介してボルト・ナットで仮締めし、そのスリーブと分割側板ブロックの面との間に寄せポンチを打ち込んで、隣接する分割側板ブロックの側部突き合わせ部の円周面を位置合わせし、しかる後、前記側部突き合わせ部を鉛直方向に溶接することを特徴とする垂直円筒貯水槽の建設工法である。
【0012】
前記分割側板ブロックの内周面側の両側部の一方には、側部裏当て板が、前記分割側板ブロックの側部から周方向に突出するよう設けられ、隣接する分割側板ブロックの位置合わせの際に、隣接する分割側板ブロックの側部突き合わせ部の内周面が前記側部裏当て板に密着するように寄せポンチで打ち込んで位置合わせし、しかる後その外周面の側部突き合わせ部を、側部裏当て板と共に溶接するのが好ましい。
【0013】
前記位置合わせ用リブは、隣接した分割側板ブロックの側部突き合わせ部の側部裏当て板の両側に位置するように前記分割側板ブロックの内周面側の両側部に設けられるのが好ましい。
【0014】
前記位置合わせ用リブには、前記スリーブを介して隣接する位置合わせ用リブを仮締めするボルトの挿入穴が上下方向に間隔を置いて形成され、隣接する分割側板ブロックの位置合わせの際に、上方の挿入穴から下方の挿入穴にかけてボルト・ナットを順次仮締めし、隣接する分割側板ブロックの側部突き合わせ部を、上方から下方にかけて位置合わせしていくのが好ましい。
【0015】
前記分割側板ブロックの下端には分割アニュラー板が予め溶接されているのが好ましい。
【0016】
基礎上に複数枚の分割底板を並べると共にその分割底板同士を溶接して中央底板を形成し、その中央底板の周りに前記分割側板ブロックを円周方向に並べると共に、前記分割側板ブロックの位置合わせを行い、しかる後、前記分割側板ブロックの側部突き合わせ部を溶接すると共に前記分割アニュラー板の突き合わせ部を溶接し、さらに分割アニュラー板と前記底板の外周の突き合わせ部を溶接するのが好ましい。
【0017】
前記分割側板ブロックの下端両側部には、前記分割アニュラー板の突き合わせ部を溶接するための切り欠き部が形成され、その分割アニュラー板の突き合わせ部の溶接後に、前記切り欠き部に当て板を当てて、前記分割側板ブロックと分割アニュラー板に溶接するのが好ましい。
【0018】
基礎上に前記分割側板ブロックを円周方向に並べた後、その各分割側板ブロックと前記中央底板間をステーで連結して、前記分割側板ブロックを基礎上に垂直に固定し、しかる後、円周方向に並べた前記分割側板ブロック周りに移動自在に昇降用梯子を取り付け、前記分割側板ブロック同士の側部突き合わせ部を溶接する際に、前記昇降用梯子に昇降自在に設けた半自動溶接機で溶接するのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、分割側板ブロックの両側部の上下方向に沿って位置合わせ用リブを予め設けておき、隣接する位置合わせ用リブ間をスリーブを介してボルト・ナットで仮締めし、その状態で、スリーブと分割側板ブロック間に寄せポンチで打ち込むことで、分割側板ブロックの面を簡単に位置合わせすることができ、これにより、低コストで、しかも短期間に、垂直円筒貯水槽を建設できるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の垂直円筒貯水槽を示す全体図である。
【
図2】
図1の底板近くの側、底部の平断面図である。
【
図3】本発明の垂直円筒貯水槽を建設する際の底板の据え付け状態を示す図である。
【
図4】本発明の垂直円筒貯水槽を建設する際の側板の据え付け状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の垂直円筒貯水槽を建設する際の蓋部の組み付け状態を示す図である。
【
図6】本発明の建設工法で建設した垂直円筒貯水槽の全体斜視図である。
【
図7】本発明の建設工法における分割側板ブロックを示す斜視図である。
【
図8】
図7の分割側板ブロックの各要部の詳細と隣接する分割側板ブロックの据え付けの詳細を示す部分拡大斜視
図である。
【
図9】
図8で隣接する分割側板ブロックの位置合わせを示す部分詳細斜視図である。
【
図10】
図9で位置合わせするときの突き合わせ部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0022】
先ず、
図1、
図2により本発明で建設する垂直円筒貯水槽10を説明する。
【0023】
垂直円筒貯水槽10は、基礎11上に、中央底板12とアニュラー板13からなる底板14が敷設され、その底板14のアニュラー板13に側板15が構築され、側板15の上端に蓋部16が構築されて構成される。
【0024】
この側板15には、蓋部16への昇降用梯子17が取り付けられ、蓋部16上の周縁には手摺18が設けられる。また蓋部16には、ベントノズル19と貯水導入ノズル24が設けられ、また側板15には、他の貯水槽へ貯水を供給する連結ノズル20と排出ノズル21がそれぞれ設けられている。
【0025】
中央底板12は、複数の分割底板22で形成され、その分割底板22を基礎11上に並べると共にその突き合わせ部22aを、その下面に設けた底部裏当て材22bと共に、突き合わせ溶接されて形成される。アニュラー板13は、円周方向に複数に分割された分割アニュラー板23で形成され、分割アニュラー板23同士の突き合わせ部23aが、その下面に設けたアニュラー部裏当て材23bと共に、突き合わせ溶接されて形成される。またアニュラー板13と中央底板12の外周とが、その下面に設けた円周部裏当て材12bと共に突き合わせ溶接されて、底板14が形成される。
【0026】
側板15は、円周方向に複数に分割された分割側板ブロック25で形成される。この分割側板ブロック25は、工場で予め組み立てられるもので、円弧状に形成した側板セグメント26を、高さ方向に複数段、図では3段順次積み重ね、その継ぎ目26aを溶接して形成される。またこの継ぎ目26aは、継ぎ目が十字溶接とならないよう、円周方向で隣接する同じ段の継ぎ目26aが高さ方向で互い違いとなるように積み重ねる側板セグメント26の高さが選定される。
【0027】
分割側板ブロック25による側板15の形成は、建設する現地にて、分割側板ブロック25を円周方向に並べ、その円周方向で隣接した分割側板ブロック25同士の鉛直方向の突き合わせ部25aを、後述する側部裏当て材25bと共に突き合わせ溶接して形成する。
【0028】
この分割側板ブロック25は、
図1、
図2では、円周を12分割した例で示しているが、建設する垂直円筒貯水槽10の大きさとトラックやトレーラに積載して搬送できるサイズに合わせて適宜8〜20分割して形成される。
【0029】
次に、
図3〜
図6により、分割側板ブロック25を用いた垂直円筒貯水槽10の建設工法の概略を説明する。
【0030】
図3に示すように基礎11上に、複数の分割底板22を並べると共にその突き合わせ部22aの下面に底部裏当て材22bを配置し、その底部裏当て材22bと共に突き合わせ部22aを突き合わせ溶接して中央底板12を構築する。
【0031】
次に、分割側板ブロック25を、クレーン等で吊り上げて、
図4に示すように円周方向に並べ、その円周方向で隣接した分割側板ブロック25同士の鉛直方向の側部突き合わせ部25aを順次溶接して側板15を構築する。この際、分割側板ブロック25の下端には、分割アニュラー板23が予め一体に溶接され、分割側板ブロック25同士の側部突き合わせ部25aの溶接と共に分割アニュラー板23同士の突き合わせ部23aが溶接され、さらに分割アニュラー板23で形成されたアニュラー板13と中央底板12の外周とが突き合わせ溶接されて、底板14と側板15とが構築される。
【0032】
なお、図示していないが連結ノズル20と排出ノズル21は対応する分割側板ブロック25に予め取り付けられている。
【0033】
その後、
図5に示すように地上で、分割蓋材27を溶接して蓋部16を構築し、その蓋部16にベントノズル19と貯水導入ノズル24を取り付け、また蓋部16の周縁に手摺18を取り付ける。
【0034】
このように地上で蓋部16を構築した後、この蓋部16をクレーン等で吊り上げて、側板15上に溶接して
図6に示したように垂直円筒貯水槽10を構築する。
【0035】
本発明は、
図7〜
図10に示すように、分割側板ブロック25を、クレーン等で吊り上げて基礎11上に円周方向に並べると共に円周方向で隣接した分割側板ブロック25の側部突き合わせ部25aを鉛直方向に溶接して垂直円筒貯水槽10を構築するに際し、分割側板ブロック25の両側部の上下方向に沿って位置合わせ用リブ30を設けて分割側板ブロック25を製作し(
図7)、この分割側板ブロック25を基礎11上に円周方向に並べ(
図8)、円周方向で隣接した分割側板ブロック25の位置合わせ用リブ30同士をスリーブ42を介してボルト・ナット41で仮締めし、そのスリーブ42と分割側板ブロック25の面との間に寄せポンチ(ボロシン)43を打ち込んで、隣接する分割側板ブロック25の側部突き合わせ部25aの円周面を位置合わせした後(
図9、
図10)、側部突き合わせ部25aを鉛直方向に溶接して垂直円筒貯水槽10を建設するものである。
【0036】
以下、
図7〜
図10により位置合わせ用リブ30を用いて分割側板ブロック25同士を位置合わせして垂直円筒貯水槽10を建設する工法を説明する。
【0037】
図7は、予め工場で製作される分割側板ブロック25の詳細斜視図を示したもので、
図8は、隣接させた分割側板ブロック25同士を、位置決めして突き合わせ溶接する際に、
図7に丸で囲んだA部とВ部を含めて拡大して示した分割側板ブロック25同士の据え付けの詳細図を示したものである。
【0038】
分割側板ブロック25は、円弧状に形成した側板セグメント26を、例えば図示のように高さ方向に3段に重ね、その継ぎ目26aを溶接して形成される。この分割側板ブロック25の下端には、分割アニュラー板23が溶接され、上端には、山形鋼などの形鋼からなる分割トップ材31が溶接され、内周面側の両側部には、山形鋼等からなる位置合わせ用リブ30が鉛直方向に溶接されて構成される。また、分割側板ブロック25の内周面側の上部には、クレーン等からのワイヤWを掛け止めるフック32が溶接され、その下方には、分割側板ブロック25を底板14にステー33で固定するためのステー固定具34が設けられる。
【0039】
図8に示すように、分割トップ材31は、分割側板ブロック25の側部突き合わせ部25aに対して周方向に一方が突出し、他方が凹むようにオフセットして側板セグメント26の上端面に溶接され、その分割トップ材31のオフセット部31aで、隣接する分割側板ブロック25の上端部の位置決めが行えるようになっている。
【0040】
分割側板ブロック25の下部の側板セグメント26の両側下端には、半自動溶接機のトーチ(図示せず)で、分割アニュラー板23の突き合わせ部23aを溶接するための切り欠き部36が形成される。
【0041】
位置合わせ用リブ30は、分割トップ材31の下方から切り欠き部36の上方にかけて、分割側板ブロック25の内周面側の両端部に鉛直に溶接される。位置合わせ用リブ30には、上下方向に間隔を置いて挿入穴37が形成される。分割側板ブロック25の内周面側には、一方の位置合わせ用リブ30より側部側に、側部裏当て板38が、側部突き合わせ部25aから周方向に突出するよう設けられ、分割側板ブロック25を突き合わせた際に、隣接する位置合わせ用リブ30の間に側部裏当て板38が位置するようになっている。
【0042】
この側部裏当て板38は、分割側板ブロック25にオフセットして設けられる分割トップ材31の凹んだ側、
図8で見て右側に位置した分割側板ブロック25の左側の側部に設けられる。
【0043】
以上において、
図3で説明したように基礎11上に中央底板12を構築した後、
図7に示したようにクレーン等からワイヤWにて分割側板ブロック25を吊り上げて、順次中央底板12の周りに、分割側板ブロック25の下部に設けた分割アニュラー板23を突き合わせながら並べる。この際、分割トップ材31は、分割側板ブロック25の上端にオフセットされて設けられているため、突出した側のオフセット部31aが他方の分割側板ブロック25の上面に重なるように並べることで、上下方向の位置合わせが行える。また、最後に並べる分割側板ブロック25の分割トップ材31のオフセット部31aは、最初に並べた分割側板ブロック25のオフセット部31aとの干渉を避けるために、最初に並べる分割側板ブロック25のオフセット部31aの両側を凹ませて形成し、最後に並べる分割トップ材31の両側のオフセット部31aを突出するように形成することで、支障なく隣接して並べる分割側板ブロック25の上下方向の位置合わせが行える。
【0044】
このように、順次分割側板ブロック25を吊り上げて、中央底板12の周りに、分割側板ブロック25を並べたならば、その分割側板ブロック25を鉛直に保った状態で、ステー33にて、底板14に分割側板ブロック25を仮止めする。これと併せて、
図9、
図10に示すように、隣接して並べた分割側板ブロック25同士の位置合わせ用リブ30間にスリーブ42を嵌め、一方の挿入穴37からボルト41Вを挿入し、スリーブ42を通して他方の挿入穴37から突出させ、そのボルト41Вにナット41Nをねじ込むことで、位置合わせ用リブ30同士の間隔がスリーブ42で規制されて、分割側板ブロック25同士の突き合わせ部25aが突き合わされる。これにより、分割側板ブロック25同士の周方向の突き合わせは、スリーブ42とボルト・ナット41で位置決めされる。
【0045】
ボルト・ナット41を仮締めして、分割側板ブロック25同士の側部突き合わせ部25aの周方向の位置合わせをした後、位置合わせ用リブ30間の分割側板ブロック25の内面(側部裏当て板38の内面)とスリーブ42との間に寄せポンチ(ボロシン)43を打ち込んで、分割側板ブロック25の内面とスリーブ42間の間隔を調整することで、分割側板ブロック25同士の側面の位置合わせが行える。
【0046】
この際、分割側板ブロック25の一方には、側部裏当て板38が予め溶接されており、他方の分割側板ブロック25の内周面が側部裏当て板38に密着するように寄せポンチ43を打ち込むことで容易に突き合わせ面を位置合わせすることができる。
【0047】
スリーブ42、ボルト・ナット41及び寄せポンチ43による分割側板ブロック25同士の側部突き合わせ部25aの位置合わせは、位置合わせ用リブ30の上方の挿入穴37から順次下方の挿入穴37にボルト・ナット41を仮締めし、隣接する分割側板ブロック25の側部突き合わせ部25aを上方から下方にかけて位置合わせして行くことで、ボルト・ナット41とスリーブ42による位置合わせが容易に行える。すなわち、下方から位置合わせを行うとすると、その位置での締め付けに、その上方の分割側板ブロック25の荷重がかかるが、上方から行うことで、分割側板ブロック25の荷重を分散させながら位置合わせができ、しかも正確な位置合わせが簡単に行える。
【0048】
このように、分割側板ブロック25同士の側部突き合わせ部25aの位置合わせを行った後は、ボルト・ナット41を仮締めした状態で、分割側板ブロック25の外側から側部突き合わせ部25aを側部裏当て板38と共に垂直に溶接すると共に、分割アニュラー板23同士の突き合わせ部23aと、分割アニュラー板23と中央底板12とを溶接する。
【0049】
側部突き合わせ部25aを垂直に溶接する際には、分割側板ブロック25の分割トップ材31に、周方向に移動自在に昇降用梯子17を取り付け、その昇降用梯子17に、半自動溶接機を昇降移動自在に取り付けることで、半自動溶接機の昇降移動に別途作業用の足場を設けることなく、垂直方向に溶接することができ、また昇降用梯子17ごと半自動溶接機を周方向に移動して、次の側部突き合わせ部25aを半自動溶接することが可能となる。
【0050】
このように、分割側板ブロック25を円周方向に並べ、位置合わせを行い、側部突き合わせ部25aの溶接を順次行って側板15を構築する間に、ボルト・ナット41、スリーブ42、ステー33を適宜の時点で順次取り外し、側板15を構築し、側板15上に、
図5の蓋部16を溶接して垂直円筒貯水槽10を構築する。
【0051】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0052】
上述したように、本実施の形態では、工場内で、分割側板ブロック25を製作する際に、その分割側板ブロック25の内周面側の両側部に位置合わせ用リブ30を予め設けておき、その状態で、分割側板ブロック25をトラックやトレーラなどで、建設現場まで搬送し、その現場で、分割側板ブロック25同士を並べ、隣接した位置合わせ用リブ30同士をスリーブ42を介してボルト・ナット41で仮締めすることで、周方向の位置決めが行え、また寄せポンチ43の打ち込みで、厚さ方向(径方向)の位置決めが簡単に行うことができる。この位置決め作業は、ボルト・ナット41の締め付けと寄せポンチ43の打ち込み作業だけで済むため、作業足場は梯子などの簡単な足場でよく、また側部突き合わせ部25aの溶接は、側板15に据え付ける昇降用梯子17を用いて行うことで、溶接用の足場を組むことなく溶接が行える。
【0053】
また、分割アニュラー板23の突き合わせ部23aの溶接の際には、分割側板ブロック25の下端両側に切り欠き部36を予め形成しているため、その突き合わせ部23aの溶接も簡単にでき、また溶接後に残る切り欠き部36は、適宜当て板45(
図1参照)を溶接して塞ぐ。
【0054】
このように、本発明では、垂直円筒貯水槽10を建設する際の位置合わせと溶接が簡単に行えるため、1000KLクラスの貯水槽で、その建設工期を3週間以内、配管取り付け、さび止め塗装など、その後の作業を含めても、最大で30日以内にすることが可能となると共に、建設のための作業足場を必要とすることがないため建設コストを大幅にカットすることが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
10 垂直円筒貯水槽
11 基礎
14 底板
15 側板
16 蓋部
25 分割側板ブロック
25a 側部突き合わせ部
30 位置合わせ用リブ
37 挿入穴
41 ボルト・ナット
42 スリーブ
43 寄せポンチ(ボロシン)