特許第6208525号(P6208525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208525
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   H02K13/00 T
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-213870(P2013-213870)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-77048(P2015-77048A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】高田 勉
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−054735(JP,A)
【文献】 特開2010−130898(JP,A)
【文献】 特開2003−088052(JP,A)
【文献】 特開2003−164115(JP,A)
【文献】 特開2006−149020(JP,A)
【文献】 特開2001−204152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子を有する電機子と、
前記整流子と摺接されるブラシと、
前記電機子を収容するヨークと、
前記ヨークにおける軸方向一方側の開口部を塞ぐ本体部と、前記本体部から前記ヨークと反対側に膨出し、前記ブラシをその先端部から後端部に亘って収容するブラシ収容部とを有するブラシホルダと、
前記本体部における前記ブラシ収容部の先端側方部に形成され、前記ブラシホルダの厚み方向に貫通する通風口と、
前記本体部に立設されたリブ状であり、前記ブラシ収容部の側壁部の後端下部と前記本体部とを連結する連結部と、
を備えた回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、整流子を有する電機子と、整流子と摺接されるブラシと、電機子を収容するヨークと、ヨークにおける軸方向一方側の開口部を塞ぐ本体部を有すると共に該本体部からヨークと反対側に膨出してブラシを収容するブラシ収容部を有するブラシホルダと、を備えた回転電機がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−234438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような回転電機では、整流子とブラシとが摺接するため、ブラシが発熱する。また、整流子とブラシの摺接に伴いブラシがブラシ収容部を加振するため、ブラシ収容部が振動する。従って、ブラシの冷却性確保とブラシ収容部の振動抑制とが要求される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、ブラシの冷却性を確保すると共に、ブラシ収容部の振動を抑制することができる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の回転電機は、整流子を有する電機子と、前記整流子と摺接されるブラシと、前記電機子を収容するヨークと、前記ヨークにおける軸方向一方側の開口部を塞ぐ本体部と、前記本体部から前記ヨークと反対側に膨出し、前記ブラシをその先端部から後端部に亘って収容するブラシ収容部とを有するブラシホルダと、前記本体部における前記ブラシ収容部の先端側方部に形成され、前記ブラシホルダの厚み方向に貫通する通風口と、前記本体部に立設されたリブ状であり、前記ブラシ収容部の側壁部の後端下部と前記本体部とを連結する連結部と、を備えている。
【0007】
この回転電機によれば、本体部におけるブラシ収容部の側方部には、ブラシホルダの厚み方向に貫通する通風口が形成されている。従って、この通風口を通じてブラシの側方を冷却風が流れることにより、ブラシを冷却することができるので、ブラシの冷却性を確保することができる。
【0008】
また、ブラシ収容部の側壁部と本体部とは、連結部によって連結されている。従って、この連結部によりブラシ収容部の剛性を高めることができるので、ブラシ収容部の振動を抑制することができる。
【0010】
また、この回転電機によれば、通風口は、本体部におけるブラシ収容部の先端側方部に形成されている。従って、整流子とブラシの摺接に伴いブラシの先端部が発熱した場合でも、通風口を通じてブラシの先端部に近い位置を冷却風が流れるので、ブラシの先端部を冷却することができる。
【0012】
また、この回転電機によれば、連結部は、ブラシ収容部の側壁部の後端部と本体部とを連結している。従って、整流子とブラシの摺接に伴い、ブラシと整流子との接触点を支点にしてブラシの後端部が大きく振れた場合でも、ブラシ収容部の側壁部の後端部における振動を連結部により効果的に抑制することができる。
【0014】
また、この回転電機によれば、連結部は、ブラシ収容部の側壁部の後端下部と本体部とを連結している。従って、整流子とブラシの摺接に伴い、ブラシと整流子との接触点を支点にしてブラシの後端下部が大きく振れた場合でも、ブラシ収容部の側壁部の後端下部における振動を連結部により効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る回転電機の縦断面図である。
図2図1に示される回転電機を軸方向一方側から見た図である。
図3図1に示される回転電機の要部拡大斜視図である。
図4】ブラシと整流子との接触点を支点にしてブラシの後端部が大きく振れる場合を説明する図である。
図5】ブラシと整流子との接触点を支点にしてブラシの後端下部が大きく振れる場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る回転電機10は、ブラシ付き直流モータであり、電機子12と、ヨーク14と、マグネット16と、エンドハウジング18と、ブラシ装置20とを備えている。
【0018】
電機子12は、回転子であり、シャフト22と、コア24と、整流子26と、巻線28とを有している。コア24及び整流子26は、シャフト22に固定されている。シャフト22は、後述するエンドハウジング18及びブラシ装置20に設けられた一対の軸受30,32によって回転可能に支持されている。巻線28は、コア24に巻装されると共に、整流子26に接続されている。
【0019】
ヨーク14は、筒状に形成されており、このヨーク14の内側には、電機子12が回転可能に収容されている。マグネット16は、ヨーク14の内周面に固定されており、コア24の径方向外側にコア24と対向して配置されている。エンドハウジング18は、ヨーク14におけるブラシ装置20と反対側に設けられており、ヨーク14におけるブラシ装置20と反対側の開口部を塞いでいる。
【0020】
ブラシ装置20は、複数のブラシ34と、スプリング36と、保持部材38と、ブラシホルダとしてのフロントハウジング40とを有している。フロントハウジング40は、樹脂製とされており、本体部42と複数のブラシ収容部44とを有している。本体部42は、ヨーク14の軸方向一方側に設けられており、ヨーク14における軸方向一方側の開口部を塞いでいる。
【0021】
本体部42の軸芯部には、上述の軸受32を収容する凹状の軸受収容部46が形成されている(図2図3も参照)。また、この本体部42には、図3に示されるように、軸受収容部46の周囲に拡がる傾斜部48が形成されている。傾斜部48は、フロントハウジング40の側断面視において本体部42の径方向外側に向かうに従ってヨーク14側に向かうように本体部42の径方向に対して傾斜している。さらに、本体部42には、傾斜部48の周囲に拡がるフランジ部50が形成されている。フランジ部50は、フロントハウジング40の側断面視において本体部42の径方向に沿って延びており、ヨーク14における軸方向一方側の開口縁部と接合されている。
【0022】
ブラシ収容部44は、本体部42の周方向の一部に形成されると共に、本体部42からヨーク14と反対側に膨出されている。このブラシ収容部44は、一対の側壁部52と、この一対の側壁部52の上端部を繋ぐ上壁部54とを有している。このブラシ収容部44は、本体部42の径方向に沿って延びており、傾斜部48及びフランジ部50に亘って形成されている。
【0023】
このブラシ収容部44における軸受収容部46側であって後述するブラシ34の先端が位置する側は、ブラシ収容部44の先端側であり、このブラシ収容部44の先端は、軸受収容部46の周壁部に接続されている。また、このブラシ収容部44は、フロントハウジング40の側断面視において本体部42の径方向外側に向かうに従ってヨーク14側に向かうように本体部42の径方向に対して全体的に傾斜している(図1参照)。このブラシ収容部44における軸受収容部46と反対側であって後述するブラシ34の後端が位置する側は、ブラシ収容部44の後端側であり、このブラシ収容部44の後端は、フロントハウジング40の外縁部に位置している。
【0024】
ブラシ34は、図1に示されるように、その先端部から後端部に亘ってブラシ収容部44に収容されている。ブラシ34は、整流子26に対する径方向外側に配置されており、このブラシ34の先端は、整流子26の外周面に当接されている。このブラシ34は、電機子12の回転に伴い整流子26と摺接される。保持部材38は、ブラシ収容部44に組み付けられており、ブラシ収容部44の後端開口部を塞ぐ蓋部56を有している。スプリング36は、ブラシ34の後端と蓋部56との間に介在されており、蓋部56に対してブラシ34を整流子26側に付勢している。
【0025】
また、図2図3に示されるように、本体部42におけるブラシ収容部44の両側の側方部には、フロントハウジング40の厚み方向に貫通する通風口58がそれぞれ形成されている。この通風口58は、フロントハウジング40の軸方向視にてブラシ収容部44の長手方向に沿う矩形状のスリットにより形成されており、ヨーク14の内部とフロントハウジング40の外部とを連通している。この通風口58は、より具体的には、本体部42におけるブラシ収容部44の先端側方部(本体部42のうちブラシ収容部44の先端部の側方に位置する部分)に形成されている。つまり、この通風口58は、上述のブラシ34の先端部(先端側の部分)とブラシ34の長手方向にオーバラップしている。
【0026】
また、本体部42におけるブラシ収容部44の両側の側方部には、ブラシ収容部44の側壁部52と本体部42とを連結する連結部60がそれぞれ形成されている。この連結部60は、ブラシ収容部44の側壁部52から側方に向けて延びる第一腕部62と、この第一腕部62の先端からブラシ収容部44の長手方向に沿って傾斜部48側へ延びる第二腕部64とを有する概略L字状に形成されている。
【0027】
図3に示されるように、第一腕部62及び第二腕部64の下端は、フランジ部50に接続されており、第二腕部64の先端は、傾斜部48に接続されている。この連結部60は、より具体的には、上述の通風口58よりもフロントハウジング40の径方向外側に形成されており、ブラシ収容部44の側壁部52の後端部52A(さらに具体的には、側壁部52の後端下部52A1)と本体部42とを連結している。
【0028】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0029】
この回転電機10によれば、本体部42におけるブラシ収容部44の側方部には、ブラシホルダの厚み方向に貫通する通風口58が形成されている。従って、この通風口58を通じてブラシ34の側方を冷却風が流れることにより、ブラシ34を冷却することができるので、ブラシ34の冷却性を確保することができる。
【0030】
特に、この通風口58は、本体部42におけるブラシ収容部44の先端側方部(本体部42のうちブラシ収容部44の先端部の側方に位置する部分)に形成されている。従って、整流子26とブラシ34の摺接に伴いブラシ34の先端部が発熱した場合でも、通風口58を通じてブラシ34の先端部に近い位置を冷却風が流れるので、ブラシ34の先端部を冷却することができる。
【0031】
また、ブラシ収容部44の側壁部52と本体部42とは、連結部60によって連結されている。従って、この連結部60によりブラシ収容部44の剛性を高めることができるので、ブラシ収容部44の振動を抑制することができる。
【0032】
ところで、図4に示されるように、ブラシ34は、整流子26との接触点を支点にしてその後端部34Aが大きく振れるように振動する。さらに、より具体的には、図5に示されるように、ブラシ34は、整流子26との接触点を支点にしてその後端下部34A1が大きく振れるように振動する。
【0033】
この点、この回転電機10によれば、連結部60は、図2図3に示されるように、ブラシ収容部44の側壁部52の後端部52Aと本体部42とを連結している。従って、整流子26とブラシ34の摺接に伴い、ブラシ34と整流子26との接触点を支点にしてブラシ34の後端部が大きく振れた場合でも、ブラシ収容部44の側壁部52の後端部52Aにおける振動を連結部60により効果的に抑制することができる。
【0034】
また、連結部60は、より具体的には、図3に示されるように、ブラシ収容部44の側壁部52の後端下部52A1と本体部42とを連結している。従って、整流子26とブラシ34の摺接に伴い、ブラシ34と整流子26との接触点を支点にしてブラシ34の後端下部34A1が大きく振れた場合でも、ブラシ収容部44の側壁部52の後端下部52A1における振動を連結部60により効果的に抑制することができる。
【0035】
しかも、上述の如くブラシ収容部44の振動を抑制するためにブラシ収容部44の肉厚を一様に増加させるのではなく、連結部60をブラシ収容部44の一部に局所的に設けた構成であるので、重量増加及びコスト増加を抑制することができる。
【0036】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0037】
上記実施形態において、ブラシ装置20は、ブラシホルダの一例として、ブラシ34を保持すると共に回転電機10の外装を形成するフロントハウジング40を有していた(フロントハウジング40がブラシホルダを兼ねていた)。しかしながら、ブラシ装置20は、回転電機10の外装を形成するフロントハウジング40とは別に、ブラシ34を保持するブラシホルダを有していても良い。そして、このブラシホルダに上述の通風口58やブラシ収容部44や連結部60等が形成されていても良い。
【0038】
また、フロントハウジング40には、ブラシ収容部44の両側の側方に通風口58及び連結部60がそれぞれ形成されていた。しかしながら、通風口58及び連結部60は、ブラシ収容部44の片側の側方にのみ形成されていても良い。
【0039】
また、連結部60は、ブラシ収容部44の側壁部52の後端部52A(より具体的には後端下部52A1)と本体部42とを連結していた。しかしながら、連結部60は、ブラシ収容部44の側壁部52の後端部52A(後端下部52A1)を含む部分と本体部42とを連結していても良い。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
10…回転電機、12…電機子、14…ヨーク、16…マグネット、18…エンドハウジング、20…ブラシ装置、22…シャフト、24…コア、26…整流子、28…巻線、30,32…軸受、34…ブラシ、36…スプリング、38…保持部材、40…フロントハウジング(ブラシホルダの一例)、42…本体部、44…ブラシ収容部、46…軸受収容部、48…傾斜部、50…フランジ部、52…側壁部、52A…後端部、52A1…後端下部、54…上壁部、56…蓋部、58…通風口、60…連結部、62…第一腕部、64…第二腕部
図1
図2
図3
図4
図5