特許第6208530号(P6208530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208530
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ホームドア装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20170925BHJP
   E01F 1/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B61B1/02
   E01F1/00
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-218217(P2013-218217)
(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公開番号】特開2015-80952(P2015-80952A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143396
【氏名又は名称】株式会社高見沢サイバネティックス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正博
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−161078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道駅のプラットホーム上において車両の乗降口に対応する位置に設置されるホームドア装置であって、
第1の方向に開閉可能な一対の可動扉と、
第1の検出手段とを備え、
前記第1の方向に沿った基準線に対し、一方の前記可動扉の戸先部分が前記車両側に配置され、他方の前記可動扉の戸先部分が前記車両とは逆側に配置され、
前記一方の可動扉の前記戸先部分の前記基準線側の側面を含む第1の架空平面と、前記他方の可動扉の前記戸先部分の前記基準線側の側面を含む第2の架空平面とが、前記第1の方向と交差する方向に互いに離間しており、
前記第1の検出手段は、前記第1の架空平面と前記第2の架空平面との間の領域内に存在する物体を検出することを特徴とする、ホームドア装置。
【請求項2】
前記第1の検出手段が、光を二次元状に走査する二次元センサを有することを特徴とする、請求項に記載のホームドア装置。
【請求項3】
前記第1の検出手段が、光を直線的に照射する一次元センサを有することを特徴とする、請求項に記載のホームドア装置。
【請求項4】
前記第1の検出手段が前記物体を検出した場合に、光、音、及び画像のうち少なくとも一つを用いて乗客に知らせる案内手段を更に備えることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載のホームドア装置。
【請求項5】
前記他方の可動扉の前記基準線とは反対側の側面を含む第3の架空平面に対して前記車両とは逆側の領域内に存在する物体を検出する第2の検出手段を更に備えることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のホームドア装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の架空平面のうち少なくとも一方の法線方向から見て前記一対の可動扉の前記戸先部分が互いに重なっていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のホームドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、ホームドアの制御システムに関する技術が記載されている。これらの制御システムでは、扉の戸先部にセンサが配置され、一対の扉の間に挟まれた物が動くとセンサがその物の存在を感知する。そして、扉の閉ロックが施された状態、若しくは扉の閉ロックが解除された状態で、扉が或る一定間隔だけ開き、挟まれた物が取り除かれる。
【0003】
特許文献3には、自動ドア装置の戸挟み回避装置が記載されている。この装置は、扉の戸先部分のみが可動して開く構造を有しており、扉が閉じた状態において戸挟みされた物を取り除くことが可能となっている。
【0004】
特許文献4には、可動ホーム柵に関する技術が記載されている。この可動ホーム柵では、周囲温度の変化による戸袋間の距離の変化に対応するため、一方の扉を移動させるモータのトルクを、他方の扉を移動させるモータのトルクよりも大きくしている。そして、該一方の扉にはストッパが設けられており、該ストッパが戸袋内の或る部分に当接することにより該一方の扉の戸先部分の位置決めがなされる。また、他方の扉の戸先部分は、一方の扉の戸先部分に当接することにより位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3947960号公報
【特許文献2】特開2003−137086号公報
【特許文献3】特開2010−007456号公報
【特許文献4】特開2012−096768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、駅のプラットホームには、プラットホーム上からの乗降客の落下や列車との接触を防ぐため、開閉可能な両開きの扉を備えるホームドア装置(可動式ホーム柵とも言われている)が、車両の乗降口に対応する位置に設置されている。このようなホームドア装置では、扉が閉じられる際に乗客や物が挟み込まれる、いわゆる戸挟みに対する対策を施す必要がある。一例として、戸挟みが生じた際に、扉の戸先部分に設置されたセンサにより扉位置の異常を検知する方式、扉を作動させるモータへの負荷を検知してモータを反転動作若しくは停止させる方式、戸先部分を可動構造とする方式などが考えられる。
【0007】
しかしながら、扉位置の異常を検知する方式及びモータへの負荷を検知する方式では、指、傘先、バッグの紐部分などの細い物や厚みの無い物が挟み込まれた場合、異常を検知することができないおそれがある。異常判定の基準値を厳しくすると、誤動作の原因となる。更に、扉の戸先部分にセンサを配置すると、扉が閉じる際の衝撃によってセンサが故障する等、耐久性に問題が生じる。また、戸先部分を可動構造とする方式では、扉の構造が複雑になり、信頼性の低下やコストの増加を招いてしまう。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成によって、細い物や厚みの無い物であっても戸挟みを回避することができるホームドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明によるホームドア装置は、鉄道駅のプラットホーム上において車両の乗降口に対応する位置に設置されるホームドア装置であって、第1の方向に開閉可能な一対の可動扉を備え、第1の方向に沿った基準線に対し、一方の可動扉の戸先部分が車両側に配置され、他方の可動扉の戸先部分が車両とは逆側に配置され、一方の可動扉の戸先部分の基準線側の側面を含む第1の架空平面と、他方の可動扉の戸先部分の基準線側の側面を含む第2の架空平面とが、第1の方向と交差する方向に互いに離間していることを特徴とする。
【0010】
このホームドア装置では、一対の可動扉の戸先部分が、基準線に対して車両側及び車両とは逆側にそれぞれ配置されている。言い換えれば、これらの戸先部分は、基準線と交差する方向に互い違いに並んで配置されている。そして、これらの戸先部分の側面同士が、第1の方向すなわち開閉方向と交差する方向に互いに離間している。このような構成によれば、可動扉同士が完全に閉じた状態であってもそれらの戸先部分の間に隙間が必ず生じるので、細い物や厚みの無い物の戸挟みを回避することができる。また、前述した種々の方式と比較して、簡易な構成によって実現することができる。
【0011】
また、ホームドア装置は、第1の架空平面と第2の架空平面との間の領域内に存在する物体を検出する第1の検出手段を更に備えることを特徴としてもよい。これにより、戸先部分同士の隙間より大きな物であっても、その戸挟みを効果的に回避することができる。
【0012】
また、ホームドア装置は、第1の検出手段が、光を二次元状に走査する二次元センサを有することを特徴としてもよい。これにより、例えば三次元の立体センサを設置する場合と比較して構成を簡易にでき、製造コストを低減することができる。
【0013】
また、ホームドア装置は、第1の検出手段が、光を直線的に照射する一次元センサを有することを特徴としてもよい。これにより、二次元センサを設置する場合及び三次元センサを設置する場合の双方と比較して構成をより簡易にでき、製造コストを更に低減することができる。
【0014】
また、ホームドア装置は、第1の検出手段が物体を検出した場合に、光、音(音声による案内を含む)、及び画像(文字や絵の表示)のうち少なくとも一つを用いて乗客に知らせる案内手段を更に備えることを特徴としてもよい。これにより、乗客に注意を促し、より効果的に事故を防ぐことができる。
【0015】
また、ホームドア装置は、他方の可動扉の基準線とは反対側の側面を含む第3の架空平面に対して車両とは逆側の領域内に存在する物体を検出する第2の検出手段を更に備えることを特徴としてもよい。これにより、上記他方の可動扉のみでなく、上記一方の可動扉への乗客の寄り掛かりや該一方の可動扉側の戸袋への巻き込みの防止を図ることができる。
【0016】
また、ホームドア装置は、第1及び第2の架空平面のうち少なくとも一方の法線方向から見て一対の可動扉の戸先部分が互いに重なっていることを特徴としてもよい。これにより、乗客側から見た戸先部分の先端部同士の隙間を無くすことができるので、プラットホーム上からの乗降客の落下や列車との接触をより効果的に防止し、乗客の安全性を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるホームドア装置によれば、簡易な構成によって、細い物や厚みの無い物であっても戸挟みを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るホームドア装置を複数備えるホームドアシステムの構成を概略的に示す平断面図である。
図2】ホームドアシステムの構成を概略的に示す正面図である。
図3】プラットホーム側から見たホームドアシステムの構成を示す斜視図である。
図4】軌道側から見たホームドアシステムの構成を示す斜視図である。
図5】ホームドア装置の構成を拡大して示す斜視図である。
図6図5に示されるホームドア装置の構成を示す上面図である。
図7】第1変形例として、ホームドア装置の構成を示す斜視図である。
図8】第2変形例として、ホームドア装置の構成を示す斜視図である。
図9】第3変形例として、ホームドア装置の構成を示す上面図である。
図10】第4変形例として、ホームドア装置の構成を示す上面図である。
図11】第4変形例として、ホームドア装置の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明によるホームドア装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るホームドア装置3Aを複数備えるホームドアシステム1の構成を概略的に示す平断面図である。図2は、図1に示されるホームドアシステム1の構成を概略的に示す正面図である。図1及び図2は、車両CがプラットホームPに停車した状態を示している。図3は、プラットホームP側から見たホームドアシステム1の構成を示す斜視図である。図4は、軌道側から見たホームドアシステム1の構成を示す斜視図である。
【0021】
図1図4に示されるように、ホームドアシステム1は、複数のホームドア装置3Aを備えている。複数のホームドア装置3Aは、鉄道駅のプラットホームPの縁部付近において、車両Cの乗客用の乗降口E1に対応する位置にそれぞれ設置されている。各ホームドア装置3Aは、両開きのスライド式ドアであり、一対の可動扉4及び5と、可動扉4及び5をそれぞれ収納可能なホームドア用戸袋31及び32とを備えている。可動扉4及び5は、図示しない駆動機構により、ホームドア用戸袋31及び32にそれぞれ収納された位置とホームドア用戸袋31及び32からそれぞれ引き出された位置との間を往復動する。一対の可動扉4及び5は、互いに対向する向きに移動して引き出されることにより乗客の乗降通路が閉じられることとなり、互いに反対の向きに移動してホームドア用戸袋31及び32にそれぞれ収納されることにより上記乗降通路が開かれることとなる。ホームドア用戸袋31及び32は、可動扉4,5を駆動する駆動機構、可動扉4,5の閉状態を検出する扉開閉検知器、及び車両C側の障害物を検知する支障物センサ38(図4を参照)を備える。
【0022】
また、ホームドアシステム1は、乗務員ドア7と、乗務員ドア用戸袋9とを更に備えている。乗務員ドア7は、乗客用の乗降口E1(ホームドア装置3A)とは異なる位置に設けられている。乗務員ドア7及び乗務員ドア用戸袋9は車両Cの乗務員室に乗り降りする乗務員が通る乗降通路を開閉するための乗務員ドア及び乗務員ドア用戸袋であり、乗務員室(乗務員用の乗降口E2)に対して設けられている。また、ホームドアシステム1は、非常用脱出ドア10と、非常用脱出ドア用戸袋12とを更に備えている。非常用脱出ドア10は、ホームドア装置3Aの位置と車両Cの乗降口E1とが一致しない状態で車両Cが停止(例えば災害、電源オフ、停電、事故等による緊急停止)をしたときに、乗客が車両Cから脱出するために設けられている。
【0023】
図5は、ホームドア装置3Aの構成を拡大して示す斜視図である。図6は、図5に示されるホームドア装置3Aの構成を示す上面図である。図5及び図6に示されるように、ホームドア装置3Aの可動扉4及び5は、プラットホームPの端縁部に沿った第1の方向(図中の矢印A1)に往復動して開閉可能となっている。そして、可動扉4及び5が閉じられた状態において、一方の可動扉4の戸先部分41は、第1の方向A1に沿った基準線SLに対して車両C側に配置されており、他方の可動扉5の戸先部分51は、基準線SLに対して車両Cとは逆側(反対側)に配置されている。言い換えれば、これらの戸先部分41,51は、基準線SLと交差する方向(図中の矢印A2)に互い違いに並んで配置されている。なお、本実施形態では、可動扉4及び5が閉じられた状態において、戸先部分41を含む可動扉4の全体が基準線SLに対して車両C側に配置されており、戸先部分51を含む可動扉5の全体が基準線SLに対して車両Cとは逆側(反対側)に配置されている。
【0024】
ここで、戸先部分41の基準線SL側の側面41aを含む第1の架空平面P1と、戸先部分51の基準線SL側の側面51aを含む第2の架空平面P2とをそれぞれ定義する。可動扉4及び5が閉じられた状態において、架空平面P1と架空平面P2とは、第1の方向A1と交差する方向(例えば方向A2)に互いに離間している。従って、図6に示されるように、第1の方向A1から見て戸先部分41と戸先部分51との間の領域は隙間Bとなっている。なお、本実施形態では、側面41aを含む可動扉4の基準線SL側の側面全体が架空平面P1に含まれており、側面51aを含む可動扉5の基準線SL側の側面全体が架空平面P2に含まれている。
【0025】
また、可動扉4及び5が完全に閉じられた状態において、戸先部分41の先端部41bと戸先部分51の先端部51bとの第1の方向A1における相対位置は任意である。一例として、図6には、同方向における先端部41bの位置と先端部51bの位置とが互いに間隔D1をあけて離間している形態が示されている。この場合、架空平面P1,P2の法線方向(すなわち方向A2)から見て、戸先部分41及び51は互いに重ならない。
【0026】
ホームドア装置3Aは、第1の検出手段30Aを更に備えている。第1の検出手段30Aは、架空平面P1と架空平面P2との間の領域(隙間Bを含む)内に存在する物体、例えば戸挟みされた傘やバッグ、乗客等を検出する。本実施形態では、第1の検出手段30Aは、二つの二次元センサ33及び34を有する。二次元センサ33及び34は、ホームドア用戸袋31及び32にそれぞれ固定されている。二次元センサ33及び34は、例えば光を二次元状に走査して、物体からの反射光を光電管等により検出する。図5に示される二次元センサ33,34の各検知領域C1,C2は、可動扉4及び5に遮蔽されることなく、架空平面P1と架空平面P2との間の領域を通る。二次元センサ33及び34の各検知領域C1,C2は、隙間Bを通り二次元センサ33,34を各々の円弧の中心点とする扇状平面を呈する。第1の検出手段30Aは、例えばホームドア用戸袋31,32の扉開閉検知器が可動扉4,5の閉状態を検出したタイミングで、検知動作を開始するとよい。
【0027】
ホームドア装置3Aは、案内手段35を更に備えている。案内手段35は、例えば発光体、表示画面、及びスピーカーのうち少なくとも一つを含んで構成される。案内手段35は、第1の検出手段30Aが物体を検出した場合に、光、音(音声による案内を含む)、及び画像(文字や絵の表示)のうち少なくとも一つを出力することにより、物体が検出されたことを乗客等に知らせる。
【0028】
以上の構成を備えるホームドア装置3Aによって得られる効果について説明する。このホームドア装置3Aでは、一対の可動扉4,5の戸先部分41,51が、基準線SLに対して車両C側及び車両Cとは逆側にそれぞれ配置されている。そして、これらの戸先部分41,51の側面41a,51a同士が、第1の方向A1すなわち開閉方向と交差する方向A2において互いに離間している。このような構成によれば、可動扉4,5同士が完全に閉じた状態であってもそれらの戸先部分41,51の間に隙間Bが必ず生じるので、細い物や厚みの無い物の戸挟みを回避することができる。また、[発明が解決しようとする課題]欄で述べた種々の方式と比較して、戸挟みの回避が可能なホームドア装置をより簡易な構成によって実現することができる。そして、ホームドア装置を簡易な構成とすることにより、ホームドア装置をプラットホーム上に設置する際の作業を容易にし、設置に要する時間を短縮することができる。
【0029】
なお、一般のホームドア装置(例えば特許文献1〜4を参照)のように一対の可動扉を一直線上に配置する場合であっても、戸先部分同士に隙間をあけることは可能である。しかしながら、本実施形態のホームドア装置3Aによれば、乗客側すなわち第2の方向A2から見た戸先部分41の先端部41bと戸先部分51の先端部51bとの間隔を狭くすることができるので、乗客の安全性を十分に担保しつつ、戸挟みを回避するための隙間Bの幅を十分に確保することができる。
【0030】
また、本実施形態のホームドア装置3Aによれば、戸先部分41,51が互いに当接しないので、可動扉4と可動扉5との相対的な高さや傾き、或いは扉開閉検知器の検知基準値などを厳密に調整する必要がなく、いわゆる戸当り合わせ(扉の合わせ調整)を容易にできる。従来においては、閉動作時の戸先部分同士の衝突音の回避のため、両扉間に例えば数ミリ程度の隙間が開くように調整がなされている。この調整は、扉を駆動するモータ、モータの駆動力を扉に伝達するベルト、扉開閉検知器を構成するセンサ、及び扉本体の寸法誤差といった構成部品の個体差、並びに、設置条件、設置環境、及び周囲温度の違いによって必要となる。本実施形態のホームドア装置3Aによれば、そのような調整を不要とすることができる。
【0031】
また、本実施形態のホームドア装置3Aによれば、列車が通過する際に可動扉4と可動扉5との間を風が抜けるので、列車からの風圧によりホームドア装置及びその土台部分にかかる負荷を低減し、ホームドア装置の耐久性を高めることができる。
【0032】
また、本実施形態のように、ホームドア装置3Aは、架空平面P1と架空平面P2との間の領域内に存在する物体を検出する第1の検出手段30Aを備えることが好ましい。これにより、戸先部分41と戸先部分51との間の隙間Bより大きな物が隙間Bに存在する場合であっても、可動扉4,5の閉動作の中断、或いは戸挟みに対する警告等によって、戸挟みの発生を効果的に回避することができる。また、第1の検出手段30Aの検知領域を広くすることにより、プラットホームP側から可動扉4に接触する物体を検知することも可能となるので、可動扉4への乗客の寄り掛かりや可動扉4側の戸袋31への巻き込みの防止を図ることもできる。
【0033】
例えば、戸挟みされた物がプラットホームP側にいる乗客の持ち物(傘、バッグなど)である場合には、強引に抜き取るか、または次の列車が来て可動扉4,5が再び開くまで待つことも可能である。しかしながら、車両Cに既に乗り込んだ乗客の持ち物が可動扉4,5に挟まれた場合には、必然的に車両Cの乗降口の扉にも挟まるので、抜き取ることは容易ではない。特許文献1,2に記載された装置では、そのような場合であっても、戸先センサが検知可能な幅を有する持ち物であれば扉を開くことができる。しかし、戸先センサが検知出来ないような細い持ち物であれば、そのまま車両Cが動き出すおそれがある。これに対し、本実施形態によれば、第1の検出手段30Aが設けられることにより、持ち物の幅(太さ)にかかわらず、戸挟みの発生を効果的に回避することができる。
【0034】
また、本実施形態のように、第1の検出手段30Aは、光を二次元状に走査する二次元センサ33,34を有することが好ましい。これにより、例えば三次元の立体センサを設置する場合と比較して構成を簡易にでき、製造コストを低減することができる。
【0035】
また、本実施形態のように、ホームドア装置3Aは、第1の検出手段30Aが物体を検出した場合に、光及び音の少なくとも一方を用いて乗客に知らせる案内手段35を備えることが好ましい。これにより、乗客に注意を促し、より効果的に事故を防ぐことができる。
【0036】
(第1の変形例)
図7は、上記実施形態の第1変形例として、ホームドア装置3Bの構成を示す斜視図である。このホームドア装置3Bと上記実施形態に係るホームドア装置3Aとの相違点は、第1の検出手段の構成である。本変形例の第1の検出手段30Bでは、一方の戸袋31のみに二次元センサ36が配置されており、他方の戸袋32にはセンサが配置されていない。二次元センサ36は、例えば光を二次元状に走査して、物体からの反射光を光電管等により検出する。二次元センサ36の検知領域C3は、可動扉4及び5に遮蔽されることなく、図6に示された架空平面P1と架空平面P2との間の領域を通る。二次元センサ36は、上記実施形態の二次元センサ33よりも下方(プラットホーム面寄り)に配置されており、扇状の検知領域C3の中心角が、二次元センサ33の検知領域C1の中心角よりも大きい。
【0037】
本変形例の第1の検出手段30Bによれば、上記実施形態の第1の検出手段30Aと同様に、架空平面P1と架空平面P2との間の領域(隙間Bを含む)内に存在する物体を好適に検出することができる。従って、戸挟みの発生を効果的に回避することができる。また、可動扉4への乗客の寄り掛かりや可動扉4側の戸袋31への巻き込みの防止を図ることもできる。
【0038】
(第2の変形例)
図8は、上記実施形態の第2変形例として、ホームドア装置3Cの構成を示す斜視図である。このホームドア装置3Cと上記実施形態に係るホームドア装置3Aとの相違点は、第1の検出手段の構成である。本変形例の第1の検出手段30Cは、複数(図では4つ)の一次元センサ37を有する。各一次元センサ37は、互いに対向配置された発光部37a及び受光部37bをそれぞれ有する。発光部37aは、受光部37bに向けて光L1を直線的に照射する。受光部37bは、発光部37aからの光L1を検出する。この光L1の光路(すなわち検知領域)は、図6に示された架空平面P1と架空平面P2との間の領域内に含まれる。この領域内に物体が存在すると、光L1が遮蔽されるので受光部37bが光L1を検出できなくなる。このことにより、該領域内に物体が存在することが検出される。
【0039】
本変形例では、複数の一次元センサ37が上下方向に並んで配置されている。一次元センサ37の配置形態はこのような形態に限られず、一次元センサ37は任意の位置に配置されるとよい。また、一次元センサ37の個数も任意であり、例えば一つのみであってもよい。
【0040】
本変形例の第1の検出手段30Cによれば、上記実施形態の第1の検出手段30Aと同様に、架空平面P1と架空平面P2との間の領域(隙間Bを含む)内に存在する物体を好適に検出することができる。従って、戸挟みの発生を効果的に回避することができ、可動扉4への乗客の寄り掛かりや可動扉4側の戸袋31への巻き込みの防止を図ることもできる。また、本変形例のように、第1の検出手段は、光L1を直線的に照射する一次元センサ37を有してもよい。これにより、二次元センサを設置する場合及び三次元センサを設置する場合の双方と比較して構成をより簡易にでき、製造コストを更に低減することができる。
【0041】
(第3の変形例)
図9は、上記実施形態の第3変形例として、ホームドア装置3Dの構成を示す上面図である。このホームドア装置3Dは、上記実施形態に係るホームドア装置3Aの構成に加えて、第2の検出手段60を更に備えている。第2の検出手段60は、可動扉5の両側面5a,5bのうち基準線SLとは反対側の側面5bを含む第3の架空平面P3に対して、車両Cとは逆側の領域(すなわちプラットホームP側の領域)内に存在する物体を検出する。第2の検出手段60は、一次元センサ及び二次元センサの何れによって構成されてもよく、例えば前述した第1の検出手段30A〜30Cのうち何れかの構成を有してもよい。但し、第2の検出手段60の検知領域C4は、架空平面P3に対して車両Cとは逆側の領域内に含まれる。好適には、検知領域C4が架空平面P3に沿っているとよく、また、架空平面P3に僅かな間隔をあけて近接しているとよい。
【0042】
ここで、ホームドア用戸袋31,32の車両Cとは逆側の側面31a,32aを含む架空平面P4を定義する。架空平面P4に対して車両Cとは逆側(プラットホームP側)の領域には、乗客の通行の妨げとなるような突起物が設けられないことが望ましい。従って、第2の検出手段60は、架空平面P4に対して車両C側の領域に配置されていることが好ましい。
【0043】
本変形例によれば、可動扉4のみでなく、可動扉5(すなわち基準線SLに対してプラットホーム側の可動扉)への乗客の寄り掛かりや可動扉5側の戸袋32への巻き込みの防止を図ることができる。なお、本変形例では上記実施形態のホームドア装置3Aに第2の検出手段60を適用したが、第1及び第2の変形例のホームドア装置3B,3Cの何れかに第2の検出手段60を適用してもよい。
【0044】
(第4の変形例)
図10及び図11は、上記実施形態の第4変形例として、ホームドア装置3E及び3Fの構成をそれぞれ示す上面図である。図10に示されるホームドア装置3Eでは、可動扉4及び5が閉じられた状態において、可動扉4の先端部41bと可動扉5の先端部51bとの第1の方向A1における相対位置が互いに一致している。言い換えれば、先端部41b及び51bは互いに面一となっている。この場合、架空平面P1,P2の法線方向(すなわち方向A2)から見た戸先部分41及び51の隙間はゼロとなる。また、図11に示されるホームドア装置3Fでは、可動扉4及び5が閉じられた状態において、第1の方向A1における先端部41bの位置が、同方向における先端部51bの位置に対して戸袋32側に位置している。この場合、架空平面P1,P2の法線方向(すなわち方向A2)から見て、可動扉4,5の戸先部分41,51が互いに重なる。図11には、第1の方向A1におけるその重複長さD2が示されている。
【0045】
本変形例によれば、乗客側から見た戸先部分41と戸先部分51との隙間を無くすことができるので、プラットホームP上からの乗降客の落下や列車との接触をより効果的に防止し、乗客の安全性を更に向上させることができる。なお、本変形例では、2つの架空平面P1,P2双方の法線方向から見て戸先部分41,51が互いに重なる場合を例示したが、架空平面P1,P2が互いに平行ではない場合には、架空平面P1,P2のうち一方の架空平面の法線方向から見て戸先部分が互いに重なっていればよい。
【0046】
本発明によるホームドア装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態及び各変形例では、乗客側から見て右側の可動扉4が基準線SLに対して車両C側に配置され、乗客側から見て左側の可動扉5が基準線SLに対して車両Cとは逆側に配置されているが、左側の可動扉が基準線SLに対して車両C側に配置され、右側の可動扉が基準線SLに対して車両Cとは逆側に配置されてもよい。また、上記実施形態及び各変形例では、プラットホームPの表面に沿った左右方向に可動扉4,5が開閉する形態を例示したが、本発明は、一対の可動扉がプラットホームの表面に垂直な方向に開閉するホームドア装置にも適用可能である。また、本発明のホームドア装置は、第1、第2の検出手段及び案内手段に対して上位の制御装置を更に備えても良い。第1、第2の検出手段が物体を検出した場合に制御装置へ検出信号を送信し、また、制御装置にて検出信号のコントロールを行い、案内手段に指示することにより、第1、第2の検出手段及び案内手段の動作を好適に制御することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…ホームドアシステム、3A〜3F…ホームドア装置、4,5…可動扉、30A〜30C…第1の検出手段、31,32…ホームドア用戸袋、33,34…二次元センサ、35…案内手段、36…二次元センサ、37…一次元センサ、37a…発光部、37b…受光部、41,51…戸先部分、41a,51a…側面、41b,51b…先端部、60…第2の検出手段、A1…第1の方向、A2…第2の方向、B…隙間、C…車両、C1〜C4…検知領域、L1…光、P…プラットホーム、P1〜P4…架空平面、SL…基準線。
図1
図2
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図9
図10
図11