(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
天面部と、該天面部の周縁から略垂下させてなる円筒部とを備えるキャップ本体に、前記円筒部の天面部近傍に周方向に間隔をあけて交互に配置される複数の凸部及び凹部からなるナール部が形成された金属製のキャップであって、前記凸部は、半径方向外方に突出しており、その突出高さが前記円筒部の軸方向の所定位置で最大となる頂部を有し、前記凸部のうち少なくとも1つの凸部が他の凸部と異なる形状とされ、その異なる形状の凸部は、前記キャップ本体を前記円筒部の周方向に沿って回転させて前記凸部と前記凹部とが交互に加工される回転成形時に形成される成形始まりの成形始端部と成形終わりの成形終端部とが重なるように加工されたオーバーラップ部を避けた位置に形成されていることを特徴とするキャップ。
前記異なる形状の凸部は、前記頂部が他の凸部の頂部と比較して前記円筒部の軸方向にずれた位置に配置されることにより形成されていることを特徴とする請求項1記載のキャップ。
前記異なる形状の凸部の頂部と、前記他の凸部の頂部とは、前記円筒部の軸方向に0.2mmを超えてずれた配置とされていることを特徴とする請求項2に記載のキャップ。
前記頂部は、前記円筒部の軸方向において、前記凹部が最も半径方向内方に押し込まれた最大押し込み部よりも下側に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のキャップ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2のように、キャップに識別マークを付すことにより、そのキャップに付された識別マークの違いによって各キャップを識別することが可能となる。
ところが、特許文献1に記載されるキャップにおいては、ナール凸条の切欠位置を変更する等しても、その変更部分と他の部分との違いはごく僅かであることから、円筒部の全周に形成されたナール凸条の中から変更部分を見つけることは容易ではない。また、複数の成形装置により成形される複数のキャップを識別するために、複数の凸部の位置を変更する必要があり、その結果、キャップ外観のデザイン性を損なうおそれがある。また、ナール部は、開栓時にキャップを握り易くするために設けられるものであるが、複数の凸部の位置を変更することによって、キャップを握った際に感じるグリップ感を損なうおそれもある。
さらに、特許文献2に記載される方法は、合成樹脂製のキャップに適用可能な方法であるので、金属製キャップに適用することは難しい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、金属製のキャップの開栓時のグリップ感を向上させることができるとともに、キャップ外観のデザイン性を損なうことなく、成形装置ごとの識別を行うことが可能なキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、天面部と、該天面部の周縁から略垂下させてなる円筒部とを備えるキャップ本体に、前記円筒部の天面部近傍に周方向に間隔をあけて交互に配置される複数の凸部及び凹部からなるナール部が形成された金属製のキャップであって、前記凸部は、半径方向外方に突出しており、その突出高さが前記円筒部の軸方向の所定位置で最大となる頂部を有し、前記凸部のうち少なくとも1つの凸部が他の凸部と異なる形状とされ、その異なる形状の凸部は、
前記キャップ本体を前記円筒部の
周方向に沿って回転させて前記凸部と前記凹部とが交互に加工される回転成形時に形成される
成形始まりの成形始端部と
成形終わりの成形終端部と
が重なるように加工されたオーバーラップ部を避けた位置に形成されていることを特徴とする。
【0009】
ナール部を形成する各凸部に頂部を設けることで、キャップをしっかりと握り易くすることができ、使用者に高いグリップ感を与えることができる。
また、本発明のキャップにおいては、凸部の少なくとも1つにおいて他の凸部と異なる形状の凸部を形成することによってキャップの成形装置ごとの識別マークを設けることとしており、その形状の違いは凸部形成部分のごく僅かな範囲で変更されることから、キャップのデザイン性や開封時のグリップ感が損なわれることがない。
【0010】
このように凸部の形状の違いはごく僅かであるので、円筒部の全周に形成された凸部の中から形状が変更された凸部を見つけることは容易ではないが、本発明のキャップにおいては、回転成形時に形成されるオーバーラップ部(二重加工部)を基準として識別マークを確認することで、識別マークを容易に見つけることができる。
また、オーバーラップ部においては、凸部の形状が重ねて加工されることから、他の部分に形成される凸部と比較して形状が崩れやすくなるが、異なる形状の凸部はオーバーラップ部を避けた位置に設けることとしているので、僅かな形状の変更であっても他と区別し得る程度に明確に形成することができる。さらに、異なる形状の凸部は、オーバーラップ部を避けて形成することとしているので、その異なる形状の凸部を確認するナール部の範囲が狭められ、識別マークを見つけ易くなっている。したがって、オーバーラップ部を避けた位置に識別マークを設けることで、形状の違いが僅かであっても確実に識別マークを認識することができる。
【0011】
本発明のキャップにおいて、前記異なる形状の凸部は、前記頂部が他の凸部の頂部と比較して前記円筒部の軸方向にずれた位置に配置されることにより形成されているとよい。
この場合、異なる形状の凸部と他の凸部とは、凸部に形成された頂部を利用して、頂部の高さ位置(円筒部の軸方向位置)をずらして形成することによってキャップの識別マークを設けることとしており、この頂部の高さ位置の違いは凸部形成部分のごく僅かな範囲で変更されることから、キャップのデザイン性や開栓時のグリップ感が損なわれることを低減させることができる。
【0012】
本発明のキャップにおいて、前記異なる形状の凸部の頂部と、前記他の凸部の頂部とは、前記円筒部の軸方向に0.2mmを超えてずれた配置とされているとよい。
頂部の軸方向の高さ位置の変位量が0.2mm以下では、頂部の位置を変更した異なる形状の凸部を容易に識別することが難しくなる。
【0013】
本発明のキャップにおいて、前記異なる形状の凸部の個数は、前記ナール部を構成する凸部の個数の1/4以下とされているとよい。
キャップの円筒部に形成されるナール部において、形状の異なる凸部の個数が増えると、成形時にフック部が変形して成形不良を引き起こし易くなる。この場合、その変形したフック部からライナが外れてフック部の係止性能を損なうおそれがあるため、形状の異なる凸部の個数は、全体の1/4以下とすることが望ましい。
【0014】
本発明のキャップにおいて、前記頂部は、前記円筒部の軸方向において、前記凹部が最も半径方向内方に押し込まれた最大押し込み部よりも下側に配置されているとよい。
ナール部は、円筒部の天面部近傍に形成されるが、凸部の頂部位置が、凹部の最大押し込み部よりも上側にあると、キャップを容器にキャッピング加工(絞り加工)する際に頂部が変形し易くなり、認識マークとして識別することが難しくなる。そこで、各凸部の頂部を、最大押し込み部よりも下側に配置することで、キャップを容器にキャッピング加工する際に頂部が変形することが回避できるので、認識マークを良好に認識することできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属製のキャップを握り易くして開栓時のグリップ感を向上させることができるとともに、キャップ外観のデザイン性を損なうことなく、成形装置ごとの識別を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るキャップの実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態のキャップ1は、
図10に示すように、例えば38mm口径のアルミニウム又はアルミニウム合金製(金属製)のボトル缶2の口金部21に装着されて密栓するピルファープルーフキャップ(PPキャップとも称す。)となるものである。
【0018】
このキャップ1は、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材をカップ状に成形したもので、
図1に示すように、天面部41と、その天面部41の周縁から略垂下されてなる円筒部42とを備えるキャップ本体4と、そのキャップ本体4の内面に設けたライナ5とを有する。
【0019】
キャップ本体4の円筒部42には、
図1に示すように、天面部41近傍に、周方向に間隔を空けて交互に配置される複数の凸部11及び凹部12からなるナール部13や、円筒部42の下端部に周方向に断続的に形成されたスリット43、アッパーグルーブ部44、パネル部45等の形状が、回転成形(ロールフォーミング)により形成されている。
回転成形では、
図2に示すようなナーラー6を用いて、固定側のアウターツール61の外周面に沿って、キャップ本体4を装着した可動側のインナースピンドル62を転がしながら移動させ、アウターツール61とインナースピンドル62との間にキャップ本体4の円筒部42を挟み込むことによって成形を行う。
【0020】
また、キャップ本体4の円筒部42は、
図1に示すように、その下端部に周方向に断続的に形成されたスリット43を介して筒上部46と筒下部47の上下に分割された構成とされ、隣接するスリット43間に形成される複数のブリッジ43aによって、筒上部46と筒下部47とを連結した形状とされる。
そして、凸部11及び凹部12によって、円筒部42(筒上部46)の外周面に凹凸表面のナール部13が形成されており、開栓時にキャップ1を保持する指との間に摩擦抵抗を増大させることができる。この凸部11は、
図1及び
図5に示すように、半径方向外方に突出しており、その突出高さが円筒部42の軸方向の所定位置で最大となる頂部11aを有する形状とされる。この頂部11aが開栓時に手に食い込むことによってキャップ1をしっかりと握ることができるので、使用者に高いグリップ感を与えることができる。したがって、手を滑らせることなくキャップ1を把持することが可能となり、使用者は、容易に開栓することが可能となる。
【0021】
また、キャップ1においては、この凸部11に形成された頂部11aを利用することにより、キャップ1が成形される設備を区別する識別マークが設けられる。識別マークは、複数設けられる凸部11の少なくとも1つにおいて、
図1及び
図8に示すように、他の凸部11の頂部11aと高さ位置(円筒部42の軸方向位置)を距離Hずらして頂部11aを形成することによって、他の凸部11と異なる形状の凸部を形成して設けられる。この識別マークの詳細については、後述する。
【0022】
また、これら凸部11に形成される頂部11aは、円筒部42の軸方向において、凹部12が最も半径方向内方に押し込まれた最大押し込み部12aよりも下側で、隣接するアッパーグルーブ部44の1.5mmだけ上側の領域F内に配置されている。
なお、凹部12の一部には、凹部12を周方向に切断してなる開口部14を有するフック部15が適宜形成されており、これらフック部15に係止されることによりライナ5がキャップ本体4の内面に設けられる。
また、フック部15は、円筒部42の周方向に沿って形成した切り込みの下方部分を半径方向内方に押し込むことによって形成されており、半径方向内方に山形(V字状)に突出形成されている。そして、切り込みが開くことにより、開口部14が形成されている。
【0023】
このフック部15の上端面は、
図1に示すように、少なくともライナ5の厚さ分だけ天面部41の内面から離れた位置に形成されている。そして、ライナ5は、フック部15の上端面と天面部41の内面との間に配置されることにより、キャップ本体4に取り付けられる。
なお、開口部14は、キャップ1がブリッジ43aを破断しつつ回転操作された際、ボトル缶2の内部のガスを外部に放出するためのベントホールとして機能する。また、ライナ5の厚みやライナ5を構成する摺動層51の外径、密封層52の外径等は、キャップ本体4の寸法に応じて決定される。
【0024】
そして、ライナ5は、ボトル缶2のキャップ1による閉止時に口金部21に当接し、ボトル缶2の内部を密封し得るように形成されており、キャップ本体4の天面部41の内面側に配置されている。
なお、ライナ5を構成する摺動層51は、ポリプロピレン等により円盤状に形成されている。また、密封層52は、摺動層51よりも軟質のエラストマー樹脂等により形成され、シール機能を有するものである。
【0025】
次に、本実施形態のキャップ1に形成される識別マークの詳細について説明する。
キャップ1には、ナール部13の凸部11に形成される頂部11aを利用して、各キャップの設備を特定する識別マークが設けられる。
具体的には、例えば
図1に示すように、円筒部42の周方向に沿って複数設けられる凸部11のうち、少なくとも1つの凸部11において、他の凸部11と高さ位置(円筒部42の軸方向位置)をずらして頂部11aを形成することにより、キャップ1に識別マークを付与することとしている。
【0026】
この際、各凸部11の頂部11aは、
図1又は
図8に示すように、凹部12の最大押し込み部12aよりも下側の位置からアッパーグルーブ部44より1.5mm上側の位置までの領域F内に形成される。また、頂部11aの軸方向の高さ位置の変位量が0.2mm以下であると、頂部11aの高さ位置をずらした異なる形状の凸部11を容易に識別することが難しくなるため、軸方向位置をずらした頂部11aは、他の凸部11の頂部11aの形成位置から少なくとも0.2mmよりも大きくずれた位置に形成される。
また、異なる形状の凸部11の個数は、ナール部13を構成する凸部11の個数の1/4以下とすることが望ましい。形状の異なる凸部11の個数が増えると、成形時にフック部15が変形して成形不良を引き起こし易くなるため、その変形したフック部15からライナ5が外れて、フック部15の係止性能を損なうおそれがある。また、フック部15の成形不良は、開口部14のベントホールとしてのベント性能にも影響を与えるおそれがある。
【0027】
なお、凸部11の頂部11aを最大押し込み部12aよりも上側の天面部41側に形成した場合にも、成形時にフック部15が変形して成形不良を引き起こし易くなるため、その変形したフック部15からライナ5が外れて、フック部15の係止性能を損なうおそれがある。また、フック部15の成形不良は、開口部14のベントホールとしてのベント性能にも影響を与えるおそれがある。さらに、キャップ1をボトル缶2にキャッピング加工する際に頂部11aが変形するおそれがあり、識別マークとしての視認性が損なわれるおそれがある。
一方、頂部11aを、アッパーグルーブ部44に1.5mmよりも接近させて成形しようとすると、頂部11aを十分に突出させて形成することが難しくなり、ナール部13のグリップ感を損なうおそれがあるとともに、キャッピング加工の際に金型と接触して頂部11aが変形するおそれがあり、やはり識別マークとしての視認性が損なわれるおそれがある。
【0028】
この頂部11aを利用した識別マークは、キャップ1を成形する成形装置毎に異なる識別マークが付与されるように、軸方向の高さ位置をずらした頂部11aを有する凸部11の形成位置やその配置個数を変更する等して複数個の凸部11内でその凸部11が有する頂部11aの組合せを変更して付与される。このように、高さ位置をずらした頂部11aを有する凸部11の配置パターンによって、複数種類の識別マークが設けられる。
【0029】
また、これら頂部11aを有する凸部11や凹部12等の円筒部42に形成される形状は、上述したように回転成形によって形成される。
例えば、
図2及び
図3に示すナーラー6では、キャップ本体4を装着したインナースピンドル62を、アウターツール61に押し付けながら時計回りに回転させることによって、キャップ本体4がインナースピンドル62とともに回転させられ、円筒部42がアウターツール61とインナースピンドル62との間に挟まれて成形される。この際、円筒部42の全周を、隙間を残すことなく加工するために、成形始まりの成形始端部と成形終わりの成形終端部とが重なるように加工され、キャップ本体4の円筒部42の一部には、二重に加工されたオーバーラップ部(二重加工部)が形成される。
【0030】
なお、
図3から
図8に示すインナースピンドル62に付された符号63は、凸部11及び頂部11aを成形する頂部成形部であり、アウターツール61に付された符号65は、インナースピンドル62に設けられる受け部64との間で凹部12を成形する凹部成形部、符号66はアッパーグルーブ部44を成形するグルーブ成形部である。そして、
図4に示すように、インナースピンドル62の頂部成形部63が、アウターツール61に対向する位置にあるときに、頂部成形部63は、
図5に示すように、アウターツール61の逃げ部67に押し込まれた状態とされる。またその際に、円筒部42の頂部成形部63によって押し込まれた部分の両側が、
図4に示すように、逃げ部67の両側の凹部成形部65によって押さえられることにより、半径方向外方に突出する凸部11及び、その突出高さが円筒部42の軸方向で最大となる頂部11aが成形される。
【0031】
一方、
図6及び
図7(a)に示すように、インナースピンドル62の逃げ部64が、アウターツール61に対向する位置にあるときに、インナースピンドル62の逃げ部64とアウターツール61の凹部成形部65が対向する。そして、凹部成形部65が、インナースピンドル62の逃げ部64に押し込まれた状態とされる。この際、円筒部42の凹部成形部65によって押し込まれた部分の両側が、
図6に示すように、逃げ部64の両側の頂部成形部63によって押さえられることにより、半径方向内方に突出する凹部12が成形される。
【0032】
また、アウターツール61には、凹部成形部65とは別に、
図7(b)に示すように、フック部15を有する凹部12を成形するフック部成形部68が設けられている。そして、インナースピンドル62の逃げ部64と、アウターツール61のフック部成形部68が対向する位置において、円筒部42がフック部成形部68によって半径方向内方に押し込まれることにより、フック部15が成形される。
【0033】
続いて、円筒部42の加工では、
図3に示すように、各頂部成形部63に付された符号〈1〉〜〈26〉の数字の小さい順にインナースピンドル62の各頂部成形部63がアウターツール61に対向するように回転移動して、各凸部11と頂部11aの形状を成形するとともに凹部12を成形し、円筒部42の周方向に沿って凸部11と凹部12との成形を交互に行う。そして、符号〈26〉の頂部成形部63がアウターツール61に対向する位置までインナースピンドル62が回転することにより、加工済みの円筒部42が、符号〈1〉〜〈7〉及び符号〈20〉〜〈26〉で示す頂部成形部63によって2回加工される。これにより、円筒部42の全周が隙間を残すことなく加工され、この符号〈1〉〜〈7〉と符号〈20〉〜〈26〉とで示す領域Aに、オーバーラップ部が形成される。
【0034】
識別マークを構成する凸部11は、このオーバーラップ部(領域A)を避けた位置に配置され、
図3では、符号〈13〉〜〈17〉で示す領域B内に配置される5つの凸部11により構成される。そして、この領域Bに形成される5つの凸部11において、それぞれの頂部11aの高さ位置の組合せによって、異なる識別マークが構成される。
【0035】
表1は、5つの凸部11により形成される識別マークの一例を示す。この表1に記載された識別マークは、異なる9つの金型(ナーラー)により成形されたキャップを識別する場合の9種類の識別マークを、5つの凸部11によって構成する場合の一例であり、表1中の符号〈13〉〜〈17〉は、
図3に示す符号〈13〉〜〈17〉に対応するものである。この場合、「A」で示す凸部11の頂部11aは、
図8に示すように、二点鎖線で示す他の部分の凸部11と比較して、軸方向の高さ位置が天面部41側に距離Hずれて配置されたものである。また、「―」で示す凸部11の頂部11aは、二点鎖線で示す他の部分の凸部11と同じ高さ位置に配置されていることを示す。
例えば、ヘッド#1は、符号〈13〉で示す頂部成形部63によって加工される頂部11aの高さ位置が「A」とされ、符号〈14〉〜〈17〉に対応する部分が「―」とされていることから、符号〈13〉の位置の頂部11aだけが他の部分の凸部11と比較して、ずれて配置されることがわかる。
【0037】
このように、複数設けられる凸部11の少なくとも1つにおいて他の凸部11の頂部11aと高さ位置(円筒部42の軸方向位置)をずらして頂部11aを形成することによって、複数種類の識別マークを設けることができる。
また、他の凸部11と異なる形状を有する凸部11としては、上記実施形態のように頂部11aの位置をずらした形状の他にも、
図9に示すように、円筒部42の周方向に沿う凸条11Aにより形成される他の凸部に対して、凸条11Aと直交する方向の円筒部42の軸方向に沿う凸条11Bを形成することができる。この場合、いずれの凸条11A,11Bにおいても、その突出高さが円筒部42の軸方向の所定位置で最大となる頂部を有する形状とされるが、各凸条11A,11Bの頂部は、軸方向の同じ位置に配置することができるので、キャップのデザイン性や開封時のグリップ感を損なうことなく識別マークを付与することができる。
なお、他の凸部と異なる形状とする凸部の形状は、上記実施形態の形状に限定されるものではなく、その他の形状を用いることもできる。
【0038】
そして、円筒部42に形成されるオーバーラップ部の位置は、例えば、
図11に示すように円筒部42のスリット43に形成される終端痕48により明確に判断することができる。この場合、終端痕48から、一定距離だけ離れた位置に識別マークを構成する凸部11の一群を構成することとし、その凸部11が有する頂部11aの位置や並び順によって、各設備で製造されるキャップの情報を識別することができる。また一方で、この回転成形時に形成される終端痕48を基準として、所定距離だけ離れた位置を確認することにより、識別マークを容易に確認することができる。
【0039】
そして、このように形成される上記のキャップ1をボトル缶2の口金部21に被せた状態でキャッピング加工を施すことにより、キャップ1が口金部21に巻締められた状態で被着され、キャップ付ボトル缶3が製造される。
キャップ1のキャッピング加工は、プレッシャーブロック、ネジローラー、スカートローラー等からなるキャッピング装置を用いて行われる。すなわち、口金部21に被せたキャップ本体4の天面部41を、プレッシャーブロック(図示略)でボトル缶2の底部の方向に押圧し、この状態でプレッシャーブロックによる絞り加工を行うことでキャップ1の肩部に段差部58を形成する。
【0040】
さらに、この状態でネジローラー(図示略)によりキャップ側ねじ部56を形成し、スカートローラー(図示略)で口金部21の膨出部22にピルファープルーフ部57を巻きつけることで、キャッピング加工が行われる。この場合、キャップ1(キャップ本体4)が被着されるボトル缶2の口金部21には、ボトル側ねじ部23及び膨出部22が形成されており、ここに被せられたキャップ1は、ボトル側ねじ部23、膨出部22等の形状に沿うようにキャップ側ねじ部56及びピルファープルーフ部57が塑性変形される。これによって、キャップ1がボトル缶2の口金部21に装着され、ボトル缶2が密封状態とされて、キャップ付ボトル缶3が製造される。この際、キャップ本体4の天面部41の内側には、上述したようにライナ5が配置されており、そのライナ5によってボトル缶2の開口部がシールされる。
【0041】
このように構成されたキャップ付ボトル缶3において、キャップ1を開栓させるために回転させると、ナール部13を形成する各凸部11に頂部11aが設けられているので、キャップ1をしっかりと握り易くすることができ、使用者に高いグリップ感を与えることができる。
また、キャップ1は、凸部11の少なくとも1つにおいて他の凸部11と異なる形状の凸部を形成することによってキャップの識別マークが設けられており、付された識別マークの情報によって、不具合の生じたキャップがその設備(ナーラー)によって作製されたものであるかを直ちに識別することができる。また、識別マークの形状の違いは凸部形成部分のごく僅かな範囲で変更されることから、キャップのデザイン性や開封時のグリップ感を損なうことなく、各キャップを識別することができる。
【0042】
また、識別マークを形成する凸部の形状の違いはごく僅かであるが、回転成形時に形成されるオーバーラップ部(二重加工部)を基準として識別マークを確認することにより、円筒部の全周に形成された凸部の中から形状が変更された凸部を容易に見つけることができる。
また、オーバーラップ部においては、凸部の形状が重ねて加工されることから、他の部分に形成される凸部と比較して形状が崩れやすくなるが、異なる形状の凸部はオーバーラップ部を避けた位置に設けることとしているので、僅かな形状の変更であっても他と区別し得る程度に明確に形成することができる。さらに、異なる形状の凸部は、オーバーラップ部を避けて形成することとしているので、その異なる形状の凸部を確認するナール部の範囲が狭められ、識別マークを見つけ易くなっている。したがって、オーバーラップ部を避けた位置に識別マークを設けることで、形状の違いが僅かであっても確実に識別マークを認識することができる。
【0043】
また、各凸部の頂部は、円筒部の軸方向において、凹部が最も半径方向内方に押し込まれた最大押し込み部よりも下側に配置することとしているので、キャップを容器にキャッピング加工する際に頂部が変形するおそれがなく、認識マークを良好に認識することできる。
なお、上記実施形態では、複数の凸部において形状を変更することにより、複数種類の識別マークを構成していたが、オーバーラップ部を基準としているので、異なる形状の凸部が1つであっても、その形状変更された凸部の形成位置を円筒部の周方向で変化させることによっても複数種類のキャップを識別することが可能である。
【実施例】
【0044】
次に、本実施形態のキャップを用いてキャップ付ボトル缶を作製し、キャップ開栓の官能試験を実施し、開栓時におけるライナの脱落(フック外れ)と、識別マークの視認性について評価した。
各ボトル缶は、38mm口径の口金部を有するアルミニウム製のボトル缶とされ、各ボトル缶に装着されるキャップには、円筒部にナール部の凸部が24個形成されたものを用い、識別マークは、それら凸部のうちオーバーラップ部のスリットに形成される終端痕から凸部2個分の所定距離だけ離れた位置から数えて10個の凸部により構成した。なお、オーバーラップ部には、7個分の凸部が形成されている。各キャップの凸部の形成条件を、表2に示す。
【0045】
実施例1〜6及び比較例1,2,4,5は、
図1に示すように、識別マークとして使用される10個の凸部のうち、異なる形状の凸部を構成するいくつかの凸部(表2に示す個数)について頂部の位置を天面部側に距離Hずらして作製した。なお、その他の凸部の頂部は、キャップの天面部から開口側に3.5mmずらした位置に配置し、表2の「距離H」は、これら他の凸部の頂部と位置をずらした頂部との軸方向間の距離である。
なお、試験に使用したキャップについては、凹部の最大押し込み位置がキャップ天面部から2.5mm、アッパーグルーブ部がキャップ天面部から5.0mmに設定されており、頂部の形成領域Fは、キャップ天面部から2.5mmを超えて3.5mm以下の範囲とされる。
また、実施例7及び比較例3は、
図9に示すように、識別マークとして使用される10個の凸部のうち、異なる形状の凸部を構成するいくつかの凸部を、円筒部の軸方向に沿う凸条により形成し、他の凸部と、異なる形状の凸部とは、頂部の高さを円筒部の軸方向の同じ位置に配置した。
【0046】
そして、開栓時におけるライナの脱落の評価は、各キャップを装着したキャップ付ボトル缶を作製して、それぞれのボトル缶について開栓したキャップを目視評価することにより行った。そして、ライナが外れたフック部の数と、そのフック外れが発生したボトル缶の数(以下、フック外れ発生缶数と称す)とから「フック外れ度数」を調べて、その結果から良否を判定した。
【0047】
なお、「フック外れ度数」は、以下の数式により算出した。
フック外れ度数=(外れたフック部の数×フック外れ発生缶数)÷評価缶数
例えば、評価した缶数が30缶であり、2つの缶で2つのフック部が外れ、3つの缶で3つのフック部が外れ、さらに3つの缶で4つのフック部が外れた場合、以下のように算出される。
((2フック部×2缶)+(3フック部×3缶)+(4フック部×3缶))÷30缶=0.83(フック外れ度数)
【0048】
また、「良否判定」は、「フック外れ度数」が1.0以上の場合をライナ脱落のリスクが有るとして「×」とし、0.4以上1.0未満の場合をライナ脱落までに至らないが外観不良となるおそれがあるとして「△」とし、0.4未満の場合をライナ脱落の問題はないとして「○」として評価した。なお、本実施例では、5℃の低温で各条件100缶を評価した。
【0049】
また、識別マークの視認性の評価は、開栓したキャップを目視評価することにより行った。識別マークの視認性の評価は、識別マークの識別し易さを評価するものであり、オーバーラップ部を基準として識別マークを確認した場合に、頂部の位置をずらした凸部を容易に識別することが可能であったものを「○」、識別が困難であると評価されるものを「×」として評価した。これらの結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2の結果からわかるように、識別マークを構成する異なる形状の凸部は、頂部の位置を変更したり、凸部を形成する凸条の向きを変更したりすることによって、凸部形成部分のごく僅かな範囲で変更された形状であっても、確実に識別することが可能である。
また、識別マークを構成するために凸部の形状を変更した場合においても、その形状の変更が僅かにされた実施例1〜7のキャップについては、ライナ脱落のリスクが抑えられ、良好な結果を得ることができた。
一方、比較例1のキャップについては、距離Hを0.5mm設けているので、位置を変更した頂部を容易に識別することができたが、その位置を変更した頂部を有する凸部の個数が、全体の1/4を超えており(10個)、ライナのフック外れを引き起こし易くなる傾向が確認できた。また、異なる形状の凸部を7個形成した比較例3と比較例5のキャップについても、ライナのフック外れを引き起こし易くなる傾向が確認された。
また、距離Hを0.2mmとした比較例2のキャップについては、異なる形状の凸部の頂部を容易に識別することが難しく、視認性を低下させる結果となった。さらに、距離Hを1mmとした比較例4,5のキャップについては、位置を変更した頂部が形成領域Fを外れた位置に配置されており、キャッピング加工時に変形して視認性を低下させる結果となった。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、キャップ付ボトル缶及びボトル缶に装着されるキャップについて説明を行ったが、本発明でいうキャップ付容器の容器は、ボトル缶に限定されるものではなく、ボトル缶の他、ガラスビンやPETボトル等の容器も含まれる。
また、上記実施形態では、頂部の高さ位置を変更する場合において、異なる形状の凸部の頂部を、他の凸部の頂部が形成された位置から所定距離だけ天面部側にずらすことにより作製していたが、天面部側ではなく、円筒部の下端部側に向けてずらすことにより作製することもできる。