特許第6208534号(P6208534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208534
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】電動スクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20170925BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F04C18/02 311G
   F04C29/00 S
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-221734(P2013-221734)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-83781(P2015-83781A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出口 裕展
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−065257(JP,A)
【文献】 特開2011−027048(JP,A)
【文献】 特開2000−329416(JP,A)
【文献】 特開2002−371977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機構収容ハウジング部材及びこれに軸方向で締結されたモータ収容ハウジング部材を有し、
前記圧縮機構収容ハウジング部材内に収容され、基板及び渦巻壁を有する固定スクロールと、基板及び渦巻壁を有する揺動スクロールとを、互いに噛み合わせて圧縮室が形成される圧縮機構と、
前記揺動スクロールを公転させる駆動軸と、
前記揺動スクロールの自転を防止する自転防止機構と、
前記モータ収容ハウジング部材内に収容され、前記駆動軸を回転駆動する電動モータと、
を備えた電動スクロール圧縮機であって、
前記電動モータは、前記駆動軸に固定されたロータと、前記ロータを励磁し駆動するステータとを有し、
前記モータ収容ハウジング部材は、前記電動モータが固定されるモータ固定部と、前記揺動スクロールの軸方向荷重を支持し、且つ、前記駆動軸を回転可能に支持するエンドプレートとが一体に形成され、
前記モータ固定部の内周壁に、前記ステータと接触するステータ接触部と、前記ステータと接触しないステータ非接触部とが周方向に交互に配設されている電動スクロール圧縮機において、
前記エンドプレートには、前記ステータ接触部の軸方向に対応する位置に形成され、前記エンドプレートを軸方向で貫通する孔が設けられていることを特徴とする電動スクロール圧縮機。
【請求項2】
前記エンドプレートには、前記ステータ非接触部の軸方向に対応する位置に形成され、前記エンドプレートを補強する補強用リブが設けられていることを特徴とする請求項1記載の電動スクロール圧縮機。
【請求項3】
前記孔は、エンドプレートの周方向に長い長孔であることを特徴とする請求項1又は2記載の電動スクロール圧縮機。
【請求項4】
前記孔は、前記圧縮室で圧縮される被圧縮流体が流れる流体通路であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電動スクロール圧縮機。
【請求項5】
前記自転防止機構は、前記揺動スクロールの前記基板と前記エンドプレートとの間に、周方向に配設された複数のリング部材と、前記リング部材に係合する複数のピンとで構成され、
前記リング部材は、前記揺動スクロールの前記基板に形成された凹部に収容され、前記ピンは、前記エンドプレートに固定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電動スクロール圧縮機。
【請求項6】
前記エンドプレートには、前記エンドプレートに対して前記固定スクロールを位置決めする位置決めピンが配設され、この位置決めピンは、それぞれの前記孔を含む仮想円上に設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電動スクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置の冷凍サイクル等に用いられる電動スクロール圧縮機に関し、特に電動モータを収容するハウジング部材が、電動モータが固定されるモータ固定部と、揺動スクロールの軸方向荷重を支持し、且つ、駆動軸を回転可能に支持するエンドプレートとを一体に形成して構成された電動スクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動スクロール圧縮機としては、従来、例えば、下記する特許文献1に示されるような構成が公知となっている。これは、吐出ポートを備えると共に、固定スクロール部材と可動スクロール部材とを対向配置させて構成した圧縮部(圧縮機構)を収容する吐出ハウジングと、吸入ポートを備えた吸入ハウジングと、吐出ハウジングと吸入ハウジングとの間に介在され、吸入ハウジングと共に電動モータを収容する中間ハウジングとを備えているもので、中間ハウジングは、電動モータの一部を収容固定するモータ固定部と、このモータ固定部の吐出ハウジング側に一体に形成され、揺動スクロールのスラスト荷重を支持すると共に駆動軸を軸受を介して支持する軸受支持部(エンドプレート)とを有して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−291557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、電動モータのステータは、電動モータを収容するハウジング部材に対して、圧入、焼き嵌め等による閉まり嵌めにて固定されるので、モータ固定部がモータの閉まり嵌めによって拡径変形すると、これと一体をなすエンドプレートも変形することになる。
【0005】
エンドプレートは、揺動スクロールのスラスト荷重を支持する部材であるので、その変形は、スラストギャップや接触面圧の管理を難しくし、圧縮機の性能や信頼性に影響を及ぼす不都合がある。このため、モータ固定部のモータの閉まり嵌めによる変形が避けられないのであれば、エンドプレートの変形を低減する構成が必要となる。
【0006】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、モータ固定部とエンドプレートとが一体化されているハウジング部材を備え、エンドプレートによって揺動スクロールのスラスト荷重を支持する電動スクロール圧縮機において、エンドプレートの変形を低減することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明に係る電動スクロール圧縮機は、圧縮機構収容ハウジング部材及びこれに軸方向で締結されたモータ収容ハウジング部材を有し、
前記圧縮機構収容ハウジング部材内に収容され、基板及び渦巻壁を有する固定スクロールと、基板及び渦巻壁を有する揺動スクロールとを、互いに噛み合わせて圧縮室が形成される圧縮機構と、
前記揺動スクロールを公転させる駆動軸と、
前記揺動スクロールの自転を防止する自転防止機構と、
前記モータ収容ハウジング部材内に収容され、前記駆動軸を回転駆動する電動モータと、
を備えた電動スクロール圧縮機であって、
前記電動モータは、前記駆動軸に固定されたロータと、前記ロータを励磁し駆動するステータとを有し、
前記モータ収容ハウジング部材は、前記電動モータが固定されるモータ固定部と、前記揺動スクロールの軸方向荷重を支持し、且つ、前記駆動軸を回転可能に支持するエンドプレートとが一体に形成され、前記モータ固定部の内周壁に、前記ステータと接触するステータ接触部と、前記ステータと接触しないステータ非接触部とが周方向に交互に配設されている電動スクロール圧縮機において、
前記エンドプレートには、前記ステータ接触部の軸方向に対応する位置に形成され、前記エンドプレートを軸方向で貫通する孔が設けられていることを特徴としている。
【0008】
したがって、ステータ接触部の軸方向に対応する位置に孔が形成されているので、ステータ接触部がステータと接触して押し広げられるように変形しても、その変形に伴う応力は孔によってエンドプレートに伝達されにくくなる。このため、モータ固定部が拡径変形することによりエンドプレートが変形してしまう不都合を防ぐことが可能となる。
【0009】
また、上述の構成を前提として、前記エンドプレートには、前記ステータ非接触部の軸方向に対応する位置に、前記エンドプレートを補強する補強用リブを設けるようにしてもよい。
【0010】
エンドプレートの剛性を高めるためには、エンドプレートに補強用リブを設けることが有用であるが、補強用リブをステータ接触部の軸方向に対応する位置に形成すると、ステータ接触部の変形に伴う応力が補強用リブを介してエンドプレートに直接伝達されるので、補強用リブをステータ非接触部の軸方向に対応する位置に形成することで、ステータ接触部の変形が補強用リブを介してエンドプレートに影響することを回避することが可能になる。
【0011】
ここで、前記孔は、エンドプレートの周方向に長い長孔に形成してもよい。このような構成とすることで、モータ固定部(ステータ接触部)の変形がエンドプレートに一層伝達されにくくなる。
また、前記孔は、圧縮室で圧縮される被圧縮流体が流れる流体通路で構成するようにしてもよい。このように孔を被圧縮流体の通路とすることで、流体通路の孔とは別に変形防止用の孔を形成する必要がなくなる。
【0012】
さらに、上述した構成において、前記自転防止機構を、前記揺動スクロールの前記基板と前記エンドプレートとの間に、周方向に配設された複数のリング部材と、前記リング部材に係合する複数のピンとで構成する場合には、前記リング部材を、前記揺動スクロールの前記基板に形成された凹部に収容し、前記ピンを、前記エンドプレートに固定するようにしてもよい。
このような構成とすることで、変形が抑制された剛性の高いエンドプレートにピンを固定することができ、ピンの組み付け精度を高めて、圧縮機の性能や信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0013】
また、前記エンドプレートに、該エンドプレートに対して前記固定スクロールを位置決めする位置決めピンを配設し、この位置決めピンを、それぞれの前記孔を含む仮想円上に設けるようにしてもよい。
【0014】
位置決めピンによるエンドプレートと固定スクロールとの位置決めを精度よく行う観点からは、ピンを軸中心からできるだけ離れた箇所に設けることが好ましい。これに対して、エンドプレートのモータの締まり嵌めによる影響(変形)が抑えられるのは、孔が設けられた仮想円上もしくはそれより内側の部分である。そこで、これらを両立させる最も適した位置決めピンの配設箇所は、孔を含む仮想円上であり、この位置に位置決めピンを設ければ、位置決めピンの傾倒が回避でき、また、位置決め精度を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、電動モータが固定されるモータ固定部と、揺動スクロールの軸方向荷重を支持すると共に駆動軸を回転可能に支持するエンドプレートとが一体に形成されたハウジング部材を備え、モータ固定部の内周壁に、ステータと接触するステータ接触部と、ステータと接触しないステータ非接触部とが周方向に交互に配設された電動スクロール圧縮機において、ステータ接触部の軸方向に対応するエンドプレートの位置に軸方向で貫通する孔を設けたので、ステータ接触部が変形するような場合でもエンドプレートの変形を低減することができ、圧縮機の性能や信頼性の低下を回避することが可能となる。
【0016】
また、エンドプレートを補強する補強用リブをエンドプレートに形成する場合には、ステータ非接触部の軸方向に対応する位置に形成することで、ステータ接触部の変形が補強用リブを介してエンドプレートに影響することを回避することが可能となる。
【0017】
なお、上述の構成を前提として、自転防止機構を、揺動スクロールの基板とエンドプレートとの間に設けられた周方向に配設されるリング部材と、リング部材に係合する複数のピンとで構成し、リング部材を揺動スクロールの基板に形成された凹部に収容し、ピンをエンドプレートに固定することで、変形が抑制された部位にピンが固定されることになり、ピンの組み付け精度を高めて、圧縮機の性能や信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0018】
また、固定スクロールを位置決めする位置決めピンを、エンドプレートのそれぞれの孔を含む仮想円上に設けることで、位置決めピンの傾倒を回避しつつ、位置決め精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係る電動スクロール圧縮機を示す断面図である。
図2図2は、揺動スクロールを示す図であり、(a)はその背面図、(b)は(a)のA−A線で切断した断面図である。
図3図3は、エンドプレートが一体化されたハウジング部材を示す図であり、(a)はモータ収容部側から軸方向に見た図、(b)は圧縮機構側から軸方向に見た図である。
図4図4は、エンドプレートが一体化されたハウジング部材を示す側断面図である。
図5図5は、エンドプレートが一体化されたハウジング部材を示す一部を切り欠いた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る電動スクロール圧縮機について、図面を参照しながら説明する。
図1において、電動スクロール圧縮機1は、冷媒を作動流体とする冷凍サイクルに適した電動型圧縮機であり、アルミ合金で構成されたハウジング2内に、図中右方において圧縮機構3を配設し、また、図中左側において圧縮機構3を駆動する電動モータ4を配設している。尚、図1において、図中左側を圧縮機1の前方、図中右側を圧縮機の後方としている。
【0021】
ハウジング2は、圧縮機構3を収容する圧縮機構収容ハウジング部材5と、圧縮機構3を駆動する電動モータ4を収容するモータ収容ハウジング部材6と、電動モータ4を駆動制御する図示しないインバータ装置を収容するインバータ収容ハウジング部材7とを有し、これらハウジング部材を図示しない位置決めピンにより位置決めすると共に締結ボルト8,9で軸方向に締結するようにしている。
【0022】
圧縮機構収容ハウジング部材5は、後述する圧縮機構の固定スクロールを固定し、モータ収容ハウジング部材と対峙する側が開放された有底の筒状形状に形成されている。モータ収容ハウジング部材6は、電動モータが固定される筒状のモータ固定部6aと、圧縮機構収容ハウジング部材5と対峙する側に設けられ、後述する圧縮機構3の揺動スクロール22の軸方向荷重を支持すると共に、軸支部10が一体に設けられたエンドプレート6bとが一体に形成されている。また、インバータ収容ハウジング部材7は、筒状に形成されたインバータ収容部7aとモータ収容ハウジング部材6と対峙する側に軸支部11が一体に形成されたエンドプレート7bとが一体に設けられている。
【0023】
そして、モータ収容ハウジング部材6のエンドプレート6bの軸支部10とインバータ収容ハウジング部材7のエンドプレート7bの軸支部11には、ベアリング12,13を介して駆動軸14が回転可能に支持されている。このモータ収容ハウジング部材6とインバータ収容ハウジング部材7とに形成されたそれぞれのエンドプレート6b,7bによりハウジング2の内部が後方から圧縮機構3を収納する圧縮機構収容部15a、電動モータ4を収納するモータ収容部15b、及び、インバータ装置を収容するインバータ収容部15cに仕切られている。
尚、この例において、インバータ収容部15cは、インバータ収容ハウジング部材7に図示しないボルト等によって蓋体16を固定することで画成されている。
【0024】
圧縮機構3は、固定スクロール21とこれに対向配置された揺動スクロール22とを有するスクロールタイプのもので、固定スクロール21は、ハウジング2(圧縮機構収容ハウジング部材5)に対して、軸方向の動きが許容されつつ、後述する位置決めピン23により径方向への動きが規制されており、円板状の基板21aと、この基板21aの外縁に沿って全周に亘って設けられると共に前方に向かって立設された円筒状の外周壁21bと、その外周壁21bの内側において前記基板21aから前方に向かって延設された渦巻状の渦巻壁21cとから構成されている。
【0025】
また、揺動スクロール22は、図2にも示されるように、円板状の基板22aと、この基板22aから後方に向かって立設された渦巻状の渦巻壁22cとから構成され、基板22aの背面中央に設けられた嵌合凹部24に、駆動軸14の後端部に設けられると共に駆動軸14の軸心に対して偏心して設けられた偏心軸25がラジアル軸受27を介して支持され、駆動軸14の軸心を中心として公転運動可能に設けられている。
【0026】
固定スクロール21と揺動スクロール22とは、それぞれの渦巻壁21c、22cを互いに噛み合わせ、固定スクロール21の基板21a及び渦巻壁21cと、揺動スクロール22の基板22a及び渦巻壁22cとによって囲まれた空間によって圧縮室26が画成されている。
また、固定スクロール21とモータ収容ハウジング部材6のエンドプレート6bとは、位置決めピン23により、径方向の位置が規定されている。
【0027】
なお、この例では、モータ収容ハウジング部材6のエンドプレート6bに対して固定スクロール21が直接組み付けられ、また、揺動スクロール22の軸方向荷重をエンドプレート6bで直接支持するようにしているが、固定スクロール21の外周壁21bとエンドプレート6bとの間に、薄板状の環状のスラストレースを介在させ、固定スクロール21とエンドプレート6bとは、このスラストレースを介して突き合わされると共に、揺動スクロール22の軸方向荷重もこのスラストレースを介してエンドプレートで支持するようにしてもよい。
【0028】
モータ収容ハウジング部材6のエンドプレート6bに一体に形成された軸支部10は、中央に貫通孔10a有し、揺動スクロール22から最も離れた前方側から、ベアリング12が収容されるベアリング収容部31と、駆動軸14と一体をなして回転するバランスウエイト32を収容するウエイト収容部33とが形成されている。
【0029】
前述した固定スクロール21の外周壁21bと揺動スクロール22の渦巻壁22cの最外周部との間には、後述する吸入口38から導入された冷媒を吸入経路45を介して吸入する吸入室35が形成され、また、ハウジング内の固定スクロール21の背後には、圧縮室26で圧縮された冷媒ガスが固定スクロール21の略中央に形成された吐出孔36を介して吐出される吐出室37が圧縮機構収容ハウジング部材5の後端壁との間に画成されている。この吐出室37に吐出された冷媒ガスは、吐出口39を介して外部冷媒回路へ圧送されるようになっている。
【0030】
前記モータ収容ハウジング部材6のエンドプレート6bよりも前方の部分に形成されたモータ固定部6aには、電動モータ4を構成するステータ41とロータ42とが収容されている。ステータ41は、円筒状をなす鉄心とこれに巻回されたコイルとで構成され、ハウジング2(モータ収容ハウジング部材6)の内面に固定されている。また、駆動軸14には、ステータ41の内側において回転可能に収容されたマグネットからなるロータ42が固装され、このロータ42が、ステータ41によって形成される回転磁力により回転され、駆動軸14を回転するようになっている。
【0031】
尚、インバータ収容ハウジング部材7に収容されるインバータ装置は、エンドプレート7bに形成された図示しない貫通孔に取付けられるターミナル(気密端子)を介してステータ41と電気的に接続し、電動モータ4に対してインバータ装置から給電するようになっている。
【0032】
そして、ハウジング2(モータ収容ハウジング部材6)の側面には、モータ収容部15bに冷媒ガスを吸入する吸入口38が形成され、ステータ41とハウジング2(モータ収容ハウジング部材6)との間の隙間や、エンドプレート6bに形成された孔63、及び固定スクロール21とハウジング2との間に形成される隙間等を介して、吸入口38からモータ収容部15bに流入した冷媒を前記吸入室35に導く吸入経路45が構成されている。
【0033】
モータ収容ハウジング部材6の内周面には、図3乃至図5に示されるように、ステータ41と接触するステータ接触部61とステータ41と接触しないステータ非接触部62とが周方向に交互に形成されている。これらステータ接触部61とステータ非接触部62は、軸方向に延びるように形成され、ステータ41の外周部をステータ接触部61に圧入または焼き嵌め等により締まり嵌めすることで、ステータをハウジング(モータ収容ハウジング部材6)に固定するようにしている。したがって、前記吸入経路45の一部を構成するステータ41とハウジング2(モータ収容ハウジング部材6)との間の隙間は、ステータ非接触部62の内壁とステータ41の外周部との間の間隙により形成されている。
【0034】
この例において、ステータ非接触部62とステータ接触部61は、中心角にして約60度の間隔で周方向に6箇所ずつ形成されており、この例では、ステータ接触部61の周方向の巾はステータ非接触部62の周方向の幅より相対的に小さく形成されている(円周角にしてステータ接触部61の幅は約20度、ステータ非接触部62の幅は約40度に形成されている)。
【0035】
また、モータ収容ハウジング部材6のエンドプレート6bには、モータ収容部15bと圧縮機構収容部15aとを連通する孔63が形成され、この孔63を介して吸入口38からモータ収容部15bに流入した冷媒を吸入室35へ導くようにしている。
【0036】
この孔63は、後述する自転防止機構のピン51よりも径方向外側に形成されているもので、前記ステータ接触部61の軸方向に対応する位置、すなわち、ステータ接触部61と周方向でほぼ重なる位置に(ほぼ同位相となる位置に)、周方向に複数形成され、この例では、周方向に延びる長孔として形成されており、一箇所のステータ接触部を除く残り全てのステータ接触部に対応する位置(5箇所)に形成されている。
なお、64は、ボルト9を挿通させるボルト孔である。
【0037】
さらに、この例では、エンドプレート6bのモータ収容部側の面には、軸支部10からモータ固定部6aの内周面にかけてエンドプレート6bを補強する補強用リブ65が径方向に一体に延設されている。この補強用リブ65は、ステータ非接触部62の軸方向に対応する位置、すなわち、ステータ非接触部62と周方向でほぼ重なる位置に(ほぼ同位相となる位置に)、周方向に略等間隔に複数形成されているもので、この例では、後述するピン51の数に合わせて周方向に6箇所設けられている。したがって、補強用リブ65は、ステータ接触部61と周方向の位置が重ならないように(同位相とならないように)形成され、ステータ接触部61の変形による応力が直接伝達されないようになっている。
【0038】
尚、エンドプレート6bに対して固定スクロール21を位置決めする位置決めピン23は、図3(b)に示されるように、それぞれの孔63を含む仮想円α上に設けられ、エンドプレート6bに形成されたピン取り付け孔55に圧入することで固定されている。
【0039】
以上の構成において、ロータ42が回転して駆動軸14が回転すると、圧縮機構3において、揺動スクロール22は偏心軸25を介して駆動されることで公転運動する。
これにより、吸入口38からモータ収容部15bに吸引された冷媒は、ロータ周囲のステータ非接触部62とステータ41との間の隙間やステータ41のコイルの隙間を通り、エンドプレート6bの孔63を介して吸入室35に導かれる。
圧縮機構の圧縮室26は、揺動スクロール22の公転運動により、両スクロールの渦巻壁21c、22cの外周側から中心側へ容積を徐々に小さくしつつ移動するので、吸入室35から圧縮室26に吸入された冷媒ガスは圧縮され、この圧縮された冷媒ガスは、固定スクロール21の基板21aに形成された吐出孔36を介して吐出室37に吐出し、吐出口39を介して外部冷媒回路へ送出される。
【0040】
ところで、上述した電動スクロール圧縮機1においては、駆動軸14の回転に伴って揺動スクロール22に自転力が発生するため、揺動スクロール22を自転を規制しつつ駆動軸14の軸心の周りに公転運動させる必要がある。このため、本圧縮機においては、揺動スクロール22の基板22aとモータ収容ハウジング部材6のエンドプレート6bとの間に、ピン51を係合させる自転防止機構が設けられている。
【0041】
この例において、ピン51を係合させる自転防止機構としては、例えば、ピン&リングカップリングが採用されているもので、周方向に配設された複数のピン51と、これらピン51に係合する複数のリング部材52と、それぞれのリング部材52を収容する複数の円筒状凹部53とで構成されている。
【0042】
円筒状凹部53は、図1及び図2に示されるように、揺動スクロール22の基板22aの背面に断面円状の窪みを形成して構成されているもので、前記揺動スクロール22の嵌合凹部24の周囲に等間隔(この例では、60度間隔)に形成されている。リング部材52は、鉄製の円環状のもので、前記円筒状凹部53に遊嵌されるように円筒状凹部53の内径よりも小さい外径を有しており、軸方向の厚みは、円筒上凹部53の軸方向幅にほぼ等しいか、それより小さく形成されている。
【0043】
前記ピン51は、鉄製の円柱状に形成され、前記リング部材52の内径よりも小さい外径に形成され、モータ収容ハウジング部材6のエンドプレート6bのウエイト収容部33の周囲に円筒状凹部53の位置に合わせて等間隔に固定されている。この例において、ピン51は、エンドプレート6bに形成されたピン取付孔54に圧入することで固定され、また、エンドプレート6bの補強用リブ65が形成された部分の背面に固定されている。
【0044】
したがって、揺動スクロール22は、駆動軸14の回転により自転力が発生するが、エンドプレート6bに固定されたピン51がリング部材52の内周面に当接し、このリング部材を介して円筒状凹部53に係合されて動きが制限されるので、揺動スクロール22は、自転が規制されつつ駆動軸14の軸心に対して公転運動のみが許容されるようになっている。
【0045】
また、自転防止機構としてピン&リングカップリングが用いられる上述の構成において、円筒状凹部が揺動スクロールの基板に形成されているので、可動部材としての揺動スクロール22の重量を低減することが可能となり、揺動スクロール22の駆動性の向上を図ることができる。しかも、ピン51は、揺動スクロール22の基板22aよりも剛性の高い固定部材としてのモータ収容ハウジング部材6のエンドプレート6bに圧入固定されているので、ピン51の圧入時のエンドプレート6bの変形は殆どなく、また、ピン51がリング部材52を介して円筒状凹部53に係合し、径方向荷重を受ける場合でも、その径方向荷重によりピン51を圧入している箇所が変形することもなくなり、ピン51の組み付け精度を高めることが可能となる(ピンの傾倒を回避することが可能となる)。
【0046】
また、上述の構成においては、エンドプレート6bのピン51の固定箇所よりも径方向外側に孔63が形成されているので、電動モータのステータ41をモータ収容ハウジング部材6のモータ固定部6a(ステータ接触部61)に締まり嵌めする際に、モータ固定部6aが押し広げられる場合でも、孔63によってエンドプレート6bの変形が抑えられ、ピン51の固定箇所への変形を回避することが可能となる。特に、本実施例のように、エンドプレート6bに形成される孔63が、周方向に延びる長孔として形成され、また、ステータ接触部61の軸方向に対応する位置に形成される場合には、モータ固定部6aの変形が最も顕著であるステータ接触部61からの応力の伝達を孔によって確実に阻止することが可能となり、エンドプレート6bの変形(ピンの固定箇所の変形)を一層効果的に防止することが可能となる。
【0047】
さらに、上述の構成においては、エンドプレート6bに設けられた補強用リブ65が形成された部分にピン51が固定されているので、エンドプレート6bの中でもより剛性の高い箇所にピン51が固定されることになり、ピン51の圧入固定時や径方向荷重を受ける際のピン51が圧入されている箇所の変形をより確実に回避することが可能となる。
また、補強用リブ65は、ステータ非接触部62の軸方向に対応する位置に形成されているので、ステータ接触部61の変形に伴う応力が補強用リブ65を介してエンドプレート6bに伝達されることを回避することができる。
【0048】
さらにまた、上述の構成においては、エンドプレート6bと固定スクロール21とを位置決めする位置決めピン23が、それぞれの孔63を含む仮想円上に設けられているので、位置決めピン23の位置を軸中心からできるだけ離れた箇所に設けてエンドプレート6bと固定スクロール21との位置決め精度を確保する要請と、モータ収容ハウジング部材6の電動モータ4の圧入(締まり嵌め)によるエンドプレート6bへの影響(変形)を抑える要請とを満たすことができ、固定スクロール21の位置決め精度を確保しつつ位置決めピン23の組み付け精度を確保することが可能となる。
【0049】
なお、上述の構成例においては、ピン51にリング部材52を介して円筒状凹部53を係合する例を示したが、自転防止機能を確保するためには、リング部材52を割愛することも可能であり、このような場合には、ピン52に円筒状凹部53を直接係合するようにしてもよい。このような構成においても、前記構成例と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 電動スクロール圧縮機
2 ハウジング
3 圧縮機構
4 電動モータ
6 モータ収容ハウジング部材
6a モータ固定部
6b エンドプレート
14 駆動軸
21 固定スクロール
21a 基板
21c 渦巻壁
22 揺動スクロール
22a 基板
22c 渦巻壁
23 位置決めピン
26 圧縮室
51 ピン
52 リング部材
53 円筒状凹部
61 ステータ接触部
62 ステータ非接触部
63 孔
65 補強用リブ
図1
図2
図3
図4
図5