特許第6208541号(P6208541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208541
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】赤外線燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/14 20060101AFI20170925BHJP
   F23D 14/22 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F23D14/14 G
   F23D14/22 Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-226056(P2013-226056)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-87059(P2015-87059A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000147202
【氏名又は名称】株式会社成田製陶所
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】茂木 徹
(72)【発明者】
【氏名】十河 桜子
(72)【発明者】
【氏名】安田 益雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悟
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−145635(JP,U)
【文献】 特開2009−192213(JP,A)
【文献】 特開平06−137526(JP,A)
【文献】 特開昭58−117911(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/069772(WO,A1)
【文献】 米国特許第04569657(US,A)
【文献】 特開2014−029256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/14−14/16
F23D 14/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に貫通して表面側に炎口が開口し裏面側に貫通口が開口する炎孔部を有する赤熱輻射板と、
燃料ガスを供給するガス供給路を有するガス供給体とを備え、
前記ガス供給体は、前記貫通口内に突出して前記ガス供給路を通った燃料ガスを前記炎孔部内に出射するガス出射部を備え、
前記ガス供給体と前記赤熱輻射板の裏面側との間の間隙に前記炎孔部に燃焼用空気を供給する空気流路を形成し、
前記炎孔部は炎口を表面側に向けて徐々に拡げる第1テーパー角度と貫通口を前記ガス供給体側に向けて徐々に拡げる第2テーパー角度を有し、
前記ガス出射部は、前記第2テーパー角度に対応する円錐台形状を有することを特徴とする赤外線燃焼装置。
【請求項2】
前記炎孔部は平面上に複数配置され、前記ガス出射部は前記炎孔部毎に複数配置されることを特徴とする請求項1記載の赤外線燃焼装置。
【請求項3】
前記ガス供給体は、前記ガス出射部を一体成形した板状体であることを特徴とする請求項1又は2記載の赤外線燃焼装置。
【請求項4】
前記第1テーパー角度は、垂直軸に対して20〜40°に設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の赤外線燃焼装置。
【請求項5】
燃料ガス供給源に連通するガス室を有する基体を備え、
前記基体上に前記ガス室を覆うように前記ガス供給体が配備され、
前記ガス供給体を覆うように前記基体上に前記赤熱輻射板が配備されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の赤外線燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理、暖房、乾燥、熱処理などの各種用途に使用可能な赤外線燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線燃焼装置としては、セラミックなどの耐火材からなる燃焼プレート上に多数の予混合火炎を形成させることにより燃焼プレートを赤熱させるものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
この従来技術は、燃焼プレートを貫通する形で多数の炎孔が設けられており、燃焼プレートの上流側で予め燃料ガスと燃焼用空気を混合した予混合気を形成し、この予混合気を燃焼プレートの炎孔に供給して、単一の炎孔上或いは複数の炎孔上に一つの予混合火炎を形成させるものである。
【0004】
このような従来の赤外線燃焼装置は、燃焼プレート面上に前述した予混合火炎を複数形成して平面燃焼させると同時に、火炎の燃焼により燃焼プレートを赤熱することで、火炎の燃焼による加熱と赤熱された燃焼プレートからの赤外線放射によって被加熱対象物を加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−35403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の赤外線燃焼装置は、燃焼プレート面を均一に赤熱させるために、火炎長を短くすることができ且つ平面上に均一に火炎形成が可能な予混合火炎を用いている。しかしながら、赤熱状態になった燃焼プレートはプレート温度が800℃以上となるため、予混合火炎による燃焼を用いている従来の赤外線燃焼装置では、加熱運転条件によっては逆火が発生してしまう懸念があった。
【0007】
逆火とは、炎孔に至る予混合気供給経路に火炎が伝播する現象であり、通常は予混合気の噴出速度を適正に調整して、予混合気の噴出速度と火炎の燃焼速度との釣り合いを保つことで逆火現象を防いでいる。しかしながら、何らかの不具合や不適正な使用条件がなされると予混合気の噴出速度と火炎の燃焼速度の釣り合いが崩れて逆火現象が発生することがある。
【0008】
逆火現象は予混合燃焼方式の燃焼装置における宿命的な問題であり、一般にはこれに対する十分な対策が検討されているが、この逆火現象が頻繁に発生することがあると、予混合気供給経路の加熱による損傷など、装置の不具合に繋がる虞がある。
【0009】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、赤外線燃焼装置において、逆火発生の問題を根本的に解決すること、燃焼火炎を安定化させ、良好な状態での赤熱燃焼を継続することができること、などが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明による赤外線燃焼装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0011】
赤外線燃焼装置は、厚さ方向に貫通して表面側に炎口が開口し裏面側に貫通口が開口する炎孔部を有する赤熱輻射板と、燃料ガスを供給するガス供給路を有するガス供給体とを備え、前記ガス供給体は、前記貫通口内に突出して前記ガス供給路を通った燃料ガスを前記炎孔部内に出射するガス出射部を備え、前記ガス供給体と前記赤熱輻射板の裏面側との間の間隙に前記炎孔部に燃焼用空気を供給する空気流路を形成し、前記炎孔部は炎口を表面側に向けて徐々に拡げる第1テーパー角度と貫通口を前記ガス供給体側に向けて徐々に拡げる第2テーパー角度を有し、前記ガス出射部は、前記第2テーパー角度に対応する円錐台形状を有することを特徴とする赤外線燃焼装置。
【発明の効果】
【0012】
このような特徴を有する赤外線燃焼装置によると、赤熱輻射板の炎孔部に燃料ガスと燃焼用空気の混合空間を形成する先混合方式を採用することができ、予混合燃焼方式で問題となる逆火現象を根本的に解消することができる。赤熱輻射板の炎孔部内でガス供給体のガス出射部から出射される燃料ガスと燃焼用空気を混合して火炎を生じさせるので、炎孔部の凹部形態によって火炎燃焼の安定化を図ることができ、また、火炎長の短い安定した微小火炎を赤熱輻射板の表面に複数形成することができる。これによって赤熱輻射板から均一な赤外線の平面輻射を得ることができる。ガス供給体と赤熱輻射板の裏面側との間の間隙に炎孔部に燃焼用空気を供給する空気流路を形成することで、構成部品の簡略化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る赤外線燃焼装置の一構成例を示した説明図(同図(a)が平面図、同図(b)が同図(a)におけるX−X部分断面図)である。
図2】本発明の実施形態に係る赤外線燃焼装置の内部構造を示した平面図である((a)が図1(b)のY−Y部分断面図であり、(b)が図1(b)のZ−Z断面図である)。
図3】本発明の実施形態に係る赤外線燃焼装置の炎孔部の特性を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る赤外線燃焼装置の一構成例を示した説明図である。図1(a)が平面図、図1(b)が図1(a)におけるX−X部分断面図を示している。図2は、本発明の実施形態に係る赤外線燃焼装置の内部構造を示した平面図である。図2(a)が図1(b)のY−Y部分断面図であり、図2(b)が図1(b)のZ−Z断面図である。
【0015】
本発明の実施形態に係る赤外線燃焼装置1は、炎孔部11を有する赤熱輻射板10と燃料ガスを供給するガス供給路21を有するガス供給体20とを少なくとも備える。また、図示の例では、燃料ガスの供給源に連通するガス室31を有する基体30を備えており、基体30上にガス室31を覆うようにガス供給体20が配備され、ガス供給体20を覆うように基体30上に赤熱輻射板10が配備されている。
【0016】
赤熱輻射板10は、例えば、セラミックなどの耐火材で形成され、赤熱燃焼によって赤外線を輻射熱として放射するものである。図示の例では所定板厚の平面板によって構成されている。この赤熱輻射板10は、厚さ方向に貫通して表面側に炎口11Aが開口し裏面側に貫通口11Bが開口する炎孔部11を有している。図示の例では炎孔部11がマトリクス状に複数配置されているが、配列形態やその数はこれに限定されるものではない。炎孔部11は、その炎口11A内で火炎長の短い微小火炎を形成するものであり、表面に形成された複数の炎孔部11のそれぞれに微小火炎を形成することで赤熱輻射板10が平面的且つ均一に赤熱燃焼される。
【0017】
ガス供給体20は、赤熱輻射板10の貫通口11B内に突出してガス供給路21を通った燃料ガスを炎孔部11内に出射するガス出射部22を備えている。ガス供給体20と赤熱輻射板10の裏面側との間には間隙Gが形成されており、この間隙Gが炎孔部11に燃焼用空気を供給する空気流路Gaを形成している。
【0018】
基体30は、前述したようにガス室31を内部に備えている。ガス室31には燃料ガス供給源に連通するガス流入口32が設けられている。ガス室31に流入した燃料ガスは、ガス供給体20のガス供給路21を通って、ガス出射部22の出射口から炎孔部11内に出射される。これに対して空気流路Gaに流入した燃焼用空気は、ガス供給体20の表面に沿って流れ、ガス供給体20に対面して配置される赤熱輻射板10の貫通口11Bから炎孔部11内に供給される。炎孔部11内には供給される燃料ガスと燃焼用空気を混合させる混合空間が形成されている。
【0019】
ここで、ガス供給体20は、ガス出射部22を一体成形した板状体であり、赤熱輻射板10の炎孔部11は平面上に複数配置され、ガス供給体20のガス出射部22は炎孔部11毎に複数配置されている。そして、板状体であるガス供給体20の上に赤熱輻射板10を配置することで、ガス供給体20の表面側と赤熱輻射板10の裏面側との間に形成された間隙Gが平面的な空気流路Gaになっている。
【0020】
赤外線燃焼装置1は、前述した構成を備えることで、先混合方式で赤熱輻射板10に形成された炎孔部11の炎口11Aに微小火炎を形成することができる。これによって、炎孔部11の上流側では燃焼混合気が形成されない構造になっており、火炎の燃焼は炎孔部11の炎口11A内でのみ生じることになる。これによって、予混合燃焼方式で問題となる逆火現象を根本的に解消することができる。また、炎孔部11を赤熱輻射板10の表面に複数設けることで、赤熱輻射板10の表面で短火炎長の微小火炎を複数形成して平面燃焼させることができ、赤熱輻射板10の表面を効率的且つ均一に加熱することができる。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に係る赤外線燃焼装置の炎孔部の特性を示した説明図である。図3(a)に示した例では、炎孔部11は、炎口11Aを表面側に向けて徐々に拡げる第1テーパー角度θ1と貫通口11Bをガス供給体20側に向けて徐々に拡げる第2テーパー角度θ2を有している。また、貫通口11B内に突出しているガス出射部22は、第2テーパー角度θ2に対応する円錐台形状を有している。
【0022】
第1テーパー角度θ1を有する炎口11A内及びその上の空間には図示のような微小火炎Mfが形成される。ここで、この第1テーパー角度θ1を適正に設定することで、微小火炎Mfの燃焼安定性を向上させることができる。
【0023】
図3(b)には、炎孔部11の第1テーパー角度θ1を変えた場合の、吹き飛び限界空気比λの値を示している。空気比とは、燃料ガスを完全燃焼させる必要最低限の理論空気量Aと実際に供給されている空気量Bの比(λ=B÷A)で定義される。空気比が1に近い燃焼が理想であるが、空気比λを高くした場合にも火炎の吹き飛びが生じないことで燃焼の安定性を評価することができる。図3(b)から明らかなように、炎孔部11の第1テーパー角度θ1を変化させると、吹き飛びが生じる限界の空気比(吹き飛び限界空気比)が変化し、第1テーパー角度θ1を20〜40°、更に好ましくは25〜35°の範囲にすることで、吹き飛び限界空気比を最大にすることができる。すなわち、炎孔部11の第1テーパー角度θ1を20〜40°(好ましくは25〜35°)の範囲にすることで、微小火炎の安定性を向上させることができる。
【0024】
炎孔部11の貫通口11Bにおける第2テーパー角度θ2は、ガス供給体20のガス出射部22の円錐角に応じて適宜に設定することができる。このような第2テーパー角度θ2を設けることで、円錐台形状のガス出射部22に対して十分な燃焼用空気流入面積を確保することができる。
【0025】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る赤外線燃焼装置1は、赤熱輻射板10に形成される炎孔部11で燃料ガスと燃焼用空気の混合を行うことで、逆火発生の問題を根本的に解決することができる。また、炎孔部11の形態を適正に設定し、特に、炎孔部11の炎口11Aに第1テーパー角度θ1を設け、その第1テーパー角度θ1を20〜40°の範囲に設定することで、燃焼火炎を安定化させることができ、良好な状態での赤熱燃焼を継続することができる。これによって、安全且つ良好な赤外線燃焼を実現することができ、赤熱輻射板10から均一な赤外線の平面輻射を得ることができる。
【0026】
また、ガス供給体20を円錐台形状のガス出射部22を一体に備える板状体にすることで、このガス供給体20を一体プレス成形によって簡易に形成することができる。このガス供給体20は、例えばセラミック部品で量産化が可能な形態になっている。そして、円錐台形状のガス出射部22に対して赤熱輻射板10の裏面側に形成される貫通口11Bに第2テーパー角度θ2を設けることで、炎孔部11の内面とガス出射部22の外面との間の間隙に形成される空気流入路の面積を十分に確保することができる。これによって、燃焼用空気供給系の圧力損失を増大させることなく、各炎孔部11に対して燃焼に十分な空気を供給することができ、安定燃焼の実現と適正な燃焼負荷の調整が可能になる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1:赤外線燃焼装置,
10:赤熱輻射板,11:炎孔部,11A:炎口,11B:貫通口,
20:ガス供給体,21:ガス供給路,22:ガス出射部,
30:基体,31:ガス室,32:ガス流入口,
G:間隙,Ga:空気流路,
θ1:第1テーパー角度,θ2:第2テーパー角度
図1
図2
図3