特許第6208546号(P6208546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208546カルバゾール化合物及びそれを添加したリチウムイオン電池用電解液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208546
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】カルバゾール化合物及びそれを添加したリチウムイオン電池用電解液
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/86 20060101AFI20170925BHJP
   C07D 209/88 20060101ALI20170925BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20170925BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170925BHJP
【FI】
   C07D209/86CSP
   C07D209/88
   H01M10/0567
   H01M10/052
【請求項の数】9
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-228094(P2013-228094)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2015-86202(P2015-86202A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】591180358
【氏名又は名称】東ソ−・エフテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】相原 秀典
(72)【発明者】
【氏名】平山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅裕
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−219730(JP,A)
【文献】 特開平10−134845(JP,A)
【文献】 特開2004−288380(JP,A)
【文献】 特表2012−505860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 209/86−88
H01M 10/0567
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基又は一般式(2)
【化2】
(式中、R1a、R1b及びR1cは、各々独立に、フッ素原子、炭素数1〜4のフルオロアルキル基又は炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基を表す。)で示されるフェニル基を表す。Rは、同一又は相異なって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)で示されるカルバゾール化合物。
【請求項2】
が、炭素数1〜4のフルオロアルキル基である請求項1に記載のカルバゾール化合物。
【請求項3】
で示されるフェニル基において、R1a及びR1bがフッ素原子であり、R1cがフッ素原子又はトリフルオロメチル基である請求項1に記載のカルバゾール化合物。
【請求項4】
が、2,2,2−トリフルオロエチル基である請求項1又は2に記載のカルバゾール化合物。
【請求項5】
が、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基である請求項1〜4のいずれかに記載のカルバゾール化合物。
【請求項6】
が、メトキシ基、エトキシ基又はtert−ブチル基である請求項1〜4のいずれかに記載のカルバゾール化合物。
【請求項7】
一般式(1)
【化3】

(式中、Rは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基又は一般式(2)
【化4】
(式中、R1a、R1b及びR1cは、各々独立に、フッ素原子、炭素数1〜4のフルオロアルキル基又は炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基を表す。)で示されるフェニル基を表す。Rは、同一又は相異なって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)で示されるカルバゾール化合物を含むリチウムイオン電池用電解液。
【請求項8】
カルバゾール化合物の含有量が、0.01重量%以上20重量%以下である請求項7に記載のリチウムイオン電池用電解液。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のリチウムイオン電池用電解液を含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過充電防止剤として有用なカルバゾール化合物と、該カルバゾール化合物を含むリチウムイオン電池用電解液、及び該電解液を用いてなるリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、金属酸リチウム塩を正極、グラファイト等を負極に持ち、六フッ化リン酸リチウム等の電解質を有機溶媒に溶解した電解液にて両極間を満たした構造を持つ。リチウムイオン電池は、携帯電話やパソコン、さらには航空機にまで幅広く用いられているが、規定容量を超えた充電(過充電)を行うと、正極や電解液に用いる有機溶媒が分解し、電池素子の膨張や爆発を起こすことがあり、安全性の点で大きな課題である。
【0003】
過充電防止剤とは、過充電時に電極等の電池構成部材に先立って酸化又は還元を受け、自らの拡散によって電荷を対極へ受け渡すことで電池構成部材を保護する剤である。これまでにリチウムイオン電池に用いる過充電防止剤としては、例えば特許文献1〜3に開示されている化合物があるが、カルバゾール類が過充電防止剤として用いられた例は全くない。
【0004】
また、本発明のカルバゾール化合物に類する物質が特許文献4に開示されているものの、カルバゾール環3,6位で置換基を持つことを特徴とする本発明のカルバゾール化合物とは異なる。
【0005】
また、特許文献5には本発明のカルバゾール化合物に類するN−フェニルカルバゾール類が開示されているが、該特許文献にはフェニル基上のフッ素原子又はフッ素原子で置換された基の置換数に関して特段の記述はなく、この点で3つ以上の置換数を特徴とする本発明のカルバゾール化合物とは異なる。
【0006】
さらに特許文献4及び5には、カルバゾール類を過充電防止剤として用いた記述は一切ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開1997−017447号公報
【特許文献2】WO2007−097912
【特許文献3】WO2006−094069
【特許文献4】特表2012−505860号公報
【特許文献5】特開平10−134845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、リチウムイオン電池における過充電を防止する効果を持つカルバゾール化合物と、該カルバゾール化合物を含むことで過充電防止効果を備えたリチウムイオン電池用電解液、及び該電解液を用いてなる過充電が抑制されたリチウムイオン電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で示されるカルバゾール化合物が、リチウムイオン電池における過充電の防止に適した酸化電位と優れた酸化還元耐性を持つことを見出し、また、本化合物を含むリチウムイオン電池用電解液及び該電解液を用いてなるリチウムイオン電池が、本化合物を含まない場合と比べ、過充電を抑制する効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、一般式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Rは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基又は芳香族炭化水素基を表す。該芳香族炭化水素基は、フッ素原子、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、又は炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基で3つ以上置換されている。Rは、同一又は相異なって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)で示されるカルバゾール化合物に関する。
【0013】
また本発明は、一般式(1)で示されるカルバゾール化合物を含むリチウムイオン電池用電解液に関する。
【0014】
さらに本発明は、一般式(1)で示されるカルバゾール化合物を含むリチウムイオン電池用電解液を用いてなるリチウムイオン電池に関するものである。
【0015】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0016】
本発明のカルバゾール化合物におけるR及びRの定義について説明する。
【0017】
で表される炭素数1〜6のフルオロアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状フルオロアルキル基のいずれでもよく、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1,1−ジフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、1,2,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(トリフルオロメチル)プロピル基、1−(トリフルオロメチル)プロピル基、1−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペルフルオロシクロブチル基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロシクロブチル基、ペルフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチル基、5,5,5−トリフルオロペンチル基、1,2,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(ペルフルオロエチル)プロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−(ペルフルオロエチル)プロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロヘキシル基、5,5,6,6,6−ペンプタフルオロヘキシル基、6,6,6−トリフルオロヘキシル基、ペルフルオロシクロヘキシル基等を例示することができる。電解液に対する溶解性が良い点で、直鎖上フルオロアルキル基、具体的にはトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基又は2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基が好ましく、合成容易である点で2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基又は2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基がさらに好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル基がことさら好ましい。
【0018】
で表されるフッ素原子、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、及び炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基の群から選ばれる同一又は相異なった置換基で3ヶ所以上置換されている芳香族炭化水素基における芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基又はアントラニル基等を例示することができ、過充電防止剤としての性能が良い点で、フェニル基が好ましい。該芳香族炭化水素基の置換基である炭素数1〜4のフルオロアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状フルオロアルキル基のいずれでもよく、具体的には、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1,1−ジフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、1,2,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(トリフルオロメチル)プロピル基、1−(トリフルオロメチル)プロピル基、1−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペルフルオロシクロブチル基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロシクロブチル基等を例示することができる。また、炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基は、直鎖状、分岐状又は環状フルオロアルコキシ基のいずれでもよく、具体的にはトリフルオロメトキシ基の他、ジフルオロメトキシ基、ペルフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、1,1−ジフルオロエトキシ基、2,2−ジフルオロエトキシ基、ペルフルオロプロピルオキシ基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルオキシ基、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピルオキシ基、3,3,3−トリフルオロプロピルオキシ基、1,1−ジフルオロプロピルオキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エトキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エトキシ基、ペルフルオロシクロプロピルオキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピルオキシ基、ペルフルオロブチルオキシ基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルオキシ基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチルオキシ基、4,4,4−トリフルオロブチルオキシ基、1,2,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(トリフルオロメチル)プロピルオキシ基、1−(トリフルオロメチル)プロピルオキシ基、1−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルオキシ基、ペルフルオロシクロブチルオキシ基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロシクロブチルオキシ基等を例示することができる。該芳香族炭化水素基の具体例として、次の1−1から1−180を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
【化9】
【0027】
【化10】
【0028】
【化11】
【0029】
【化12】
【0030】
で表される好ましい芳香族炭化水素基としては、過充電防止剤としての性能が良い点で、フッ素原子;炭素数1又は2のフルオロアルキル基;炭素数1又は2のフルオロアルコキシ基を組み合わせて3ヶ所以上置換されたフェニル基が挙げられ、3,4,5−トリフルオロフェニル基(1−1)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基(1−87)又は2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル基(1−88)がさらに好ましい。
【0031】
で表される炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基を例示することができる。合成が容易である点で、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、さらに、溶解性が良い点で、tert−ブチル基が好ましい。
【0032】
で表される炭素数1〜6のアシル基は、直鎖状、分岐状又は環状アシル基のいずれでもよく、具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、バレリル基、2−メチルプロピオニル基、イソバレリル基、ペンタノイル基、2−メチルブチロイル基、3−メチルブチロイル基、4−メチルブチロイル基、2−エチルプロピオニル基、3−エチルプロピオニル基、ヘキサノイル基等を例示することができる。合成が容易である点で、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチロイル基又はバレリル基が好ましく、さらに、溶解性が良い点で、アセチル基が好ましい。
【0033】
で表される炭素数1〜4のアルコキシ基は、直鎖状、分岐状又は環状アルコキシ基のいずれでもよく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基等を例示することができる。中でも、過充電防止剤としての性能が良い点で、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、エトキシ基がさらに好ましい。
【0034】
次に本発明のカルバゾール化合物の製造方法について説明する。
【0035】
本発明のカルバゾール化合物に含まれる化合物(1a)は、次の反応式に示される「工程1」により製造することができる。
【0036】
【化13】
【0037】
(式中、R1aは、芳香族炭化水素基を表す。該芳香族炭化水素基は、フッ素原子、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、又は炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基で3つ以上置換されている。R2aは、同一又は相異なって、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
【0038】
「工程1」は、化合物(2)を、場合によってはパラジウム触媒の存在下に、塩基及びR1a−Xと反応させ、本発明のカルバゾール化合物(1a)を製造する方法である。
【0039】
1aで表される芳香族炭化水素基としては、Rにて例示した芳香族炭化水素基と同様のものを例示することができる。中でも、過充電防止剤としての性能が良い点で、3,4,5−トリフルオロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基又は2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル基が好ましい。
【0040】
2aで表される炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基としては、Rにて例示した炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基と同様のものを例示することができる。中でも、過充電防止剤としての性能が良い点で、tert−ブチル基又はエトキシ基が好ましい。
【0041】
「工程1」に用いる化合物(2)は、参考例−1,2,4に示した方法、又はJournal of the American Chemical Society,2006年,128巻,5592−5593頁に開示されている方法等を用いて製造することができる。
【0042】
「工程1」に用いることのできる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の炭酸塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の酢酸塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のリン酸塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムイソプロピルオキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の水素化金属、塩化エチルマグネシウム、臭化イソプロピルマグネシウム、メチルリチウム、ブチルリチウム等のアルキル金属、リチウムジイソプロピルアミド、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド等の金属アミドを例示することができる。取り扱いが容易である点で、アルキル金属、金属アルコキシド又は水素化金属が好ましく、金属アルコキシド又はアルキル金属がさらに好ましい。塩基と化合物(2)とのモル比に特に制限はないが、収率が良い点で1:2〜10:1から適宜選ばれた比が好ましく、経済的な観点から1:1〜4:1から適宜選ばれた比がさらに好ましい。
【0043】
1a−Xは、当業者のよく知る一般的な合成法に従って製造することができ、また市販品を用いてもよい。R1a−Xと化合物(2)とのモル比に特に制限はないが、収率が良い点で1:2〜100:1から適宜選ばれた比が好ましく、1:1〜20:1から適宜選ばれた比が経済的にさらに好ましい。
【0044】
「工程1」は、パラジウム触媒の存在下に実施することもできる。この際、用いることのできるパラジウム触媒としては、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム等の塩を例示することができる。さらに、π−アリルパラジウムクロリドダイマー、パラジウムアセチルアセトナト、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム等の錯化合物を例示することができる。中でも、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は収率がよい点で好ましく、入手容易であり、収率がよい点で、トリ−tert−ブチルホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体がさらに好ましい。「工程1」で用いるパラジウム触媒の量は、いわゆる触媒量であれば特に制限はないが、収率がよい点で、パラジウム触媒と化合物(2)とのモル比は、1:50〜1:10が好ましい。
【0045】
なお、これらの第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は、パラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調製することもできる。第三級ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、tert−ブチルジフェニルホスフィン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリス(2,5−キシリル)ホスフィン、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル等を例示することができる。入手容易であり、収率がよい点で、トリ(tert−ブチル)ホスフィンが好ましい。第三級ホスフィンとパラジウム塩又は錯化合物とのモル比は、1:10〜20:1が好ましく、収率がよい点で1:2〜10:1がさらに好ましい。
【0046】
「工程1」は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒に特に制限はなく、反応を阻害しない溶媒であればよい。該溶媒として具体的には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限は無い。収率がよい点でTHF又はトルエンを用いることが望ましい。
【0047】
「工程1」を実施する際の反応温度には特に制限はないが、−100〜200℃から適宜選択された温度にて実施することができ、収率が良い点で、−80〜130℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
【0048】
本発明のカルバゾール化合物(1a)は、反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー又は昇華等で精製してもよい。
【0049】
また、本発明のカルバゾール化合物に含まれる化合物(1b)は、次の反応式に示される「工程2」により製造することができる。
【0050】
【化14】
【0051】
(式中、R1bは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す。R2aは、前記と同じ意味を表す。)
「工程2」は、化合物(2)を塩基と反応させ、続いてR1b−OSOCFで示されるトリフルオロメタンスルホン酸エステルと反応させ、本発明のカルバゾール化合物(1b)を製造する方法であり、一般的なWilliamson合成の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0052】
1bで表される炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、Rにて例示した炭素数1〜6のフルオロアルキル基と同様のものを例示することができる。中でも、過充電防止剤としての性能が良い点で、2,2,2−トリフルオロエチル基が好ましい。
【0053】
「工程2」に用いることのできる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の炭酸塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の酢酸塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のリン酸塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムイソプロピルオキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の水素化金属、塩化エチルマグネシウム、臭化イソプロピルマグネシウム、メチルリチウム、ブチルリチウム等のアルキル金属、リチウムジイソプロピルアミド、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド等の金属アミドを例示することができる。取り扱いが容易である点で、アルキル金属、金属アルコキシド又は水素化金属が好ましく、アルキル金属がさらに好ましい。塩基と化合物(2)とのモル比に特に制限はないが、収率が良い点で1:2〜10:1から適宜選ばれた比が好ましく、経済的な観点から1:1〜4:1から適宜選ばれた比がさらに好ましい。
【0054】
1b−OSOCFで示されるトリフルオロメタンスルホン酸エステルは、当業者のよく知る一般的な合成法に従って製造することができ、また市販品を用いてもよい。トリフルオロメタンスルホン酸エステルと化合物(2)とのモル比に特に制限はないが、収率が良い点で1:2〜10:1から適宜選ばれた比が好ましく、1:1〜4:1から適宜選ばれた比が経済的にさらに好ましい。
【0055】
「工程2」は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒に特に制限はなく、反応を阻害しない溶媒であればよい。該溶媒として具体的には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限は無い。収率がよい点でTHFを用いることが望ましい。
【0056】
「工程2」を実施する際の反応温度には特に制限はないが、−100〜150℃から適宜選択された温度にて実施することができ、収率が良い点で、−80〜100℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
【0057】
本発明のカルバゾール化合物(1b)は、反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー又は昇華等で精製してもよい。
【0058】
さらに、本発明のカルバゾール化合物に含まれる化合物(1c)は、次の反応式に示される「工程3」により製造することができる。
【0059】
【化15】
【0060】
(式中、Rは、前記と同じ意味をを表す。R2bは、同一又は相異なって、炭素数1〜6のアシル基を表す。)
「工程3」は、ルイス酸の存在下に、化合物(3)と、R2b−Clで示されるカルボン酸クロリドとを反応させ、本発明のカルバゾール化合物(1c)を製造する方法であり、一般的なFriedel−Crafts合成の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0061】
2bで表される炭素数1〜6のアシル基としては、Rにて例示した炭素数1〜6のアシル基と同様のものを例示することができる。中でも、過充電防止剤としての性能が良い点で、アセチル基が好ましい。
【0062】
「工程3」に用いる化合物(3)は、参考例−3に示した方法、又はTetrahedron Letters,2000年,41巻,481−483頁に開示されている方法等を用いて製造することができる。
【0063】
「工程3」に用いることのできるルイス酸としては、臭化マグネシウム、塩化カルシウム、ヨウ化バリウム、三塩化スカンジウム、三塩化イットリウム、四塩化チタン、四臭化ジルコニウム、四塩化ハフニウム、五フッ化バナジウム、五臭化ニオビウム、五塩化タンタル、六塩化タングステン、二フッ化マンガン、三塩化鉄、臭化銅、塩化銀、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化インジウム、三フッ化ホウ素、四塩化ケイ素、四塩化スズ、五塩化アンチモン等の金属ハロゲン化物塩を例示することができ、反応性が良い点で、四塩化チタン、三塩化鉄、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、四塩化スズ又は五塩化アンチモンが好ましく、塩化アルミニウムがさらに好ましい。ルイス酸と化合物(3)とのモル比に特に制限はないが、収率が良い点で1:2〜10:1から適宜選ばれた比が好ましく、経済的な観点から1:1〜4:1から適宜選ばれた比がさらに好ましい。
【0064】
2b−Clで示されるカルボン酸クロリドは、当業者のよく知る一般的な合成法に従って製造することができ、また市販品を用いてもよい。カルボン酸クロリドと化合物(3)とのモル比に特に制限はないが、収率が良い点で1:2〜10:1から適宜選ばれた比が好ましく、1:1〜4:1から適宜選ばれた比が経済的にさらに好ましい。
【0065】
「工程3」は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒に特に制限はなく、反応を阻害しない溶媒であればよい。該溶媒として具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等の塩化炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の塩化芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、デカリン等の炭化水素、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン等のニトロ化合物を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限は無い。収率がよい点でジクロロメタンを用いることが望ましい。
【0066】
「工程3」を実施する際の反応温度には特に制限はないが、0〜150℃から適宜選択された温度にて実施することができ、収率が良い点で、20〜100℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
【0067】
本発明のカルバゾール化合物(1c)は、反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー又は昇華等で精製してもよい。
【0068】
次に、本発明のカルバゾール化合物を含むリチウムイオン電池用電解液(以下、本発明の電解液という)の調製方法について説明する。
【0069】
本発明の電解液は、リチウムイオン電池用電解液に本発明のカルバゾール化合物を添加することにより調製することができる。
【0070】
リチウムイオン電池用電解液は、当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、市販品を用いてもよい。また、リチウムイオン電池用電解液は、支持電解質を有機溶媒に溶解させることによっても得られる。支持電解質としては、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化リン酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、六フッ化アンチモン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド、テトラキス(ペルフルオロフェニル)ホウ酸リチウム等を例示することができ、リチウムイオン電池の性能が良い点で、四フッ化ホウ酸リチウム又は六フッ化リン酸リチウムが好ましい。リチウムイオン電池用電解液に用いる有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ−ラクトン等のエステル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等のエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン等のアミドを例示することができ、これらを混合して用いてもよい。溶解性が良い点で、エステル又は炭酸エステルが好ましく、リチウムイオン電池の性能が良い点で、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はこれらの混合溶媒がさらに好ましい。
【0071】
本発明の電解液の調製をする際、リチウムイオン電池用電解液に添加する本発明のカルバゾール化合物の量は、0.01重量%以上20重量%以下から適宜選ばれた量であることが好ましく、過充電防止効果が高い点で、0.1重量%以上10重量%以下から適宜選ばれた量であることがさらに好ましい。
【0072】
次に、本発明の電解液を使用するリチウムイオン電池(以下、本発明のリチウムイオン電池という)の作成方法について説明する。
【0073】
本発明のリチウムイオン電池は、正極及び負極によりセパレータを挟み、これらをセルケースに収納した後、本発明の電解液を注入することで作成される。正極の材質としては、当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、具体的にはコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウム(マンガン−コバルト複合酸化物)、リチウム(ニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物)、リチウム五酸化バナジウム、バナジン酸リチウム、リチウム(オリビン型リン酸鉄)等を例示することができる。電池の性能が良い点で、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウム(マンガン−コバルト複合酸化物)、リチウム(ニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物)又はリチウム(オリビン型リン酸鉄)が好ましい。負極の材質としては、リチウムを可逆的に吸蔵及び放出できるものであれば特に制限はなく、具体的には、リチウム金属、グラッシーカーボン、天然黒鉛等の炭素、アルミニウム;ケイ素;ゲルマニウム;スズ;鉛;インジウム;亜鉛;チタンから選ばれる1種類以上の元素とリチウムとの合金、チタン酸リチウム、リン;バナジウム;スズ;銅;ニッケル;コバルト;鉄から選ばれる1種類以上の元素を含有するリチウムチタン複合酸化物等を例示することができる。電池の性能が良い点で、グラッシーカーボン、天然黒鉛、ケイ素;スズ;チタンから選ばれる1種類以上の元素とリチウムとの合金又はチタン酸リチウムが好ましい。セパレータの材質としては、当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、具体的には、ポリオレフィン樹脂、フッ素系樹脂、ガラス繊維、ポリエステル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリオキシアルキレン樹脂等を例示することができる。電池の性能が良い点で、ポリオレフィン樹脂又はフッ素系樹脂が好ましい。セルケースの材質としては、当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、具体的には、ステンレス、アルミ合金、チタン合金、ニッケル合金等を例示することができる。耐久性が良い点で、ステンレス又はチタン合金が好ましい。
【発明の効果】
【0074】
本発明のカルバゾール化合物は、リチウムイオン電池の過充電を抑制する過充電防止剤として有用であり、これを含むリチウムイオン電池用電解液を用いてなるリチウムイオン電池の安全性を向上させることができる。
【実施例】
【0075】
次に、本発明を実施例、参考例、試験例及び比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
本発明のカルバゾール化合物の同定には、以下の分析方法を用いた。H−NMR及び19F−NMRの測定には、Bruker ULTRASHIELD PLUS AVANCE III(400MHzおよび376MHz)を用いた。H−NMRは、重クロロホルム(CDCl)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。19F−NMRは、重クロロホルム(CDCl)を測定溶媒とし、内部標準物質としてベンゾトリフルオリドを用いて測定した。質量分析は、SHIMADZU社製 GCMS−QP2010を用いて行った。融点(mp)は、メトラートレード社製 MP70を用いて測定した。サイクリックボルタンメトリー(CV)の測定は、北斗電工株式会社製 HSV−100を用いて行った。CV測定は、10mMの本発明のカルバゾール化合物及び0.1Mの支持電解質(六フッ化リン酸テトラブチルアンモニウム)を含むエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合溶液(重量比:3/7)を調製し、これに作用電極としてグラッシーカーボン、基準電極としてAg/AgCl、対極として白金を挿入し、30,50,100,200mV/sの各走査速度にて行った。CV測定の結果から、酸化還元電位(E1/2又はEonset)及び拡散係数Dを算出した。E1/2は、可逆なボルタノグラムにおける酸化及び還元ピークの半波電位である。Eonsetは、不可逆なボルタノグラムにおいて、第1酸化ピークの5%に相当する酸化電流が得られる電位である。拡散係数D(cm/s)は、式(4)
=2.69×10(3/2)AD(1/2)(1/2)c (4)
(式中、Iは酸化ピーク電流値(A)、nは移動電子数、Aは作用電極面積(cm)、vは電位の走査速度(V/s)及びcはカルバゾール化合物の濃度(mol/cm)を表す。)に従って算出した。
実施例−1
【0077】
【化16】
【0078】
アルゴン雰囲気下、3,6−ジ−tert−ブチルカルバゾール(2.96g,10.6mmol)をTHF(45mL)に溶解し、ここに室温にてn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.64M,6.45mL,10.6mmol)をゆっくりと滴下した。室温で30分間撹拌した後、−78℃に冷却し、オクタフルオロトルエン(3.00g,12.7mmol)を加え、同温にて1時間、さらに室温で16時間撹拌した。反応終了後、反応溶液にジエチルエーテル及び水を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)及び再結晶(95%エタノール)で精製し、3,6−ジ−tert−ブチル−N−[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバゾールを白色固体(mp:209.8〜210.8℃)として得た(4.71g,収率89%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.46(s,18H),δ7.06(d,J=8.6Hz,2H),δ7.50(dd,J=8.6,1.9Hz,2H),δ8.12(d,J=1.9Hz,2H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−140.5(d,J=10.6Hz,2F),δ−139.6(qd,J=21.7,10.6Hz,2F),δ−56.5(t,J=21.7Hz,3F).
MS(EI,0.92V):m/z(%)=495(M,38),481(34),480(100),57(88),41(32).
1/2:1.57V(vs.Ag/AgCl).
D:2.9×10−6cm/s.
実施例−2
【0079】
【化17】
【0080】
アルゴン雰囲気下、3,6−ジ−tert−ブチルカルバゾール(3.78g,13.5mmol)をTHF(57mL)に溶解し、−78℃に冷却した。ここにn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.64M,8.25mL,13.5mmol)をゆっくりと滴下した。室温まで昇温し30分間撹拌した後、再び−78℃に冷却し、ヘキサフルオロベンゼン(37.8g,203mmol)を加え、同温にて1時間、さらに室温で16時間撹拌した。反応終了後、反応溶液にジエチルエーテル及び水を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)で精製し、3,6−ジ−tert−ブチル−N−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)カルバゾールを白色固体(mp:185.8〜186.3℃)として得た(3.40g,収率56%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.45(s,18H),δ7.01(d,J=8.6Hz,2H),δ7.48(dd,J=8.6,1.9Hz,2H),δ8.12(d,J=1.9Hz,2H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−161.2(dd,J=21.5,16.4Hz,2F),δ−154.4(t,J=21.5Hz,1F),δ−143.0(d,J=16.4Hz,2F).
MS(EI,0.92V):m/z(%)=445(M,32),430(100),179(41),57(98),41(34).
1/2:1.53V(vs.Ag/AgCl).
実施例−3
【0081】
【化18】
【0082】
アルゴン雰囲気下、参考例−2にて合成した3,6−ジブチルカルバゾール(150mg,0.54mmol)をTHF(2.3mL)に溶解し、ここに室温にてn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.65M,205μL,0.54mmol)をゆっくりと滴下した。室温で30分間撹拌した後、−78℃に冷却し、オクタフルオロトルエン(152mg,0.64mmol)を加え、同温にて1時間、さらに室温で16時間撹拌した。反応終了後、反応溶液にジエチルエーテル及び水を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粘稠な油状の3,6−ジブチル−N−[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバゾールを得た(263mg,収率99%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.97(t,J=7.3Hz,6H),δ1.42(sext,J=7.3Hz,4H),δ1.71(quint,J=7.3Hz,4H),δ2.80(t,J=7.3Hz,4H),δ7.04(d,J=8.3Hz,2H),δ7.27(dd,J=8.3,1.6Hz,2H),δ7.91(d,J=1.6Hz,2H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−140.5(d,J=19.8Hz,2F),δ−139.6(qd,J=21.7,19.8Hz,2F),δ−56.5(t,J=21.7Hz,3F).
MS(EI,0.92V):m/z(%)=495(M,47),452(100),192(33).
onset:1.48V(vs.Ag/AgCl).
実施例−4
【0083】
【化19】
【0084】
アルゴン雰囲気下、参考例−2にて合成した3,6−ジブチルカルバゾール(150mg,0.54mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(12mg,0.01mmol)、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロホウ酸塩(47mg,0.16mmol)、tert−ブトキシナトリウム(155mg,1.61mmol)及び1−ブロモ−3,4,5−トリフルオロベンゼン(136mg,0.64mmol)をトルエン(2.5mL)に懸濁し、16時間加熱還流した。反応溶液を室温まで冷却し、シリカゲルろ過した後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)にて精製し、粘稠な油状の3,6−ジブチル−N−(3,4,5−トリフルオロフェニル)カルバゾールを得た(161mg,収率73%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.96(t,J=7.3Hz,6H),δ1.41(sext,J=7.3Hz,4H),δ1.70(quint,J=7.3Hz,4H),δ2.79(t,J=7.3Hz,4H),δ7.22(d,J=8.2Hz,2H),δ7.24(dd,J=8.3,0.9Hz,2H),δ7.30(d,J=8.3Hz,2H),δ7.89(d,J=0.9Hz,2H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−162.0(t,J=20.5Hz,1F),δ−132.7(dd,J=20.5,8.2Hz,2F).
MS(EI,0.92V):m/z(%)=409(M,47),452(100),323(30).
実施例−5
【0085】
【化20】
【0086】
アルゴン雰囲気下、3,6−ジ−tert−ブチルカルバゾール(501mg,1.79mmol)をTHF(10mL)に溶解し、ここに室温にてn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.58M,1.25mL,1.98mmol)をゆっくりと滴下した。この溶液を室温で30分間撹拌した後、トリフルオロメタンスルホン酸(2,2,2−トリフルオロエチル)(1.25g,5.37mmol)を加え、同温にて18時間撹拌した。反応終了後、反応溶液にクロロホルム及び水を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)で精製し、3,6−ジ−tert−ブチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)カルバゾールを白色固体(mp:173.3〜175.1℃)として得た(306mg,収率47%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.45(s,18H),δ4.74(q,J=8.8Hz,2H),δ7.32(d,J=8.6Hz,2H),δ7.53(dd,J=8.6,1.9Hz,2H),δ8.08(d,J=1.9Hz,2H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−70.8(t,J=8.8Hz,3F).
MS(EI,0.92V):m/z(%)=361(M,35),346(100),138(42),57(55).
1/2:1.24V(vs.Ag/AgCl).
D:3.3×10−6cm/s.
実施例−6
【0087】
【化21】
【0088】
アルゴン雰囲気下、参考例−2にて合成した3,6−ジブチルカルバゾール(99mg,0.36mmol)をTHF(2mL)に溶解し、ここに室温にてn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.58M,230μL,0.36mmol)をゆっくりと滴下した。この溶液を室温で30分間撹拌した後、−78℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸(2,2,2−トリフルオロエチル)(224mg,0.97mmol)を加え、同温にて3時間、さらに室温で18時間撹拌した。反応終了後、反応溶液にクロロホルム及び水を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)で精製し、3,6−ジブチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)カルバゾールを白色固体(mp:67.5〜68.7℃)として得た(60mg,収率47%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.95(t,J=7.3Hz,6H),δ1.40(sext,J=7.3Hz,4H),δ1.69(quint,J=7.3Hz,4H),δ2.78(t,J=7.3Hz,4H),δ4.72(q,J=8.8Hz,2H),δ7.29(s,4H),δ7.86(s,2H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−70.8(t,J=8.8Hz,3F).
MS(EI,0.92V):m/z(%)=361(M,36),318(100).
onset:1.29V(vs.Ag/AgCl).
実施例−7
【0089】
【化22】
【0090】
アルゴン雰囲気下、無水塩化アルミニウム(803mg,6.02mmol)をジクロロメタン(10mL)に懸濁した。この懸濁液を0℃に冷却後、塩化アセチル(787mg,10.0mmol)を加え、溶液が均一になるまで撹拌し、参考例−3にて合成したN−(2,2,2−トリフルオロエチル)カルバゾール(501mg,2.01mmol)を同温にて加えた。この溶液を0℃にて30分間、さらに室温で18時間撹拌した。反応終了後、反応溶液にクロロホルム及び水を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、3,6−ジアセチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)カルバゾールを白色固体(mp:236.8〜242.7℃)として得た(670mg,収率100%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ2.75(s,6H),δ4.89(q,J=8.5Hz,2H),δ7.50(d,J=8.6Hz,2H),δ8.21(dd,J=8.6,1.7Hz,2H),δ8.79(d,J=1.7Hz,2H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−70.4(t,J=8.5Hz,3F).
MS(EI,0.92V):m/z(%)=333(M,40),318(100),275(39).
onset:1.72V(vs.Ag/AgCl).
実施例−8
【0091】
【化23】
【0092】
アルゴン雰囲気下、参考例−5にて合成した3,6−ジエトキシカルバゾール(5.01g,19.6mmol)をTHF(100mL)に溶解した。この溶液を0℃まで冷却し、n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.60M,14.7mL,23.5mmol)をゆっくりと滴下し、45分間撹拌した後、室温で減圧濃縮した。得られた残渣をTHF(100mL)及びN,N’−ジメチルプロピレンウレア(10mL)を加えて溶解した後、この溶液を0℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸(2,2,2−トリフルオロエチル)(8.05g,34.7mmol)を加え、同温にて1時間、さらに室温で16時間撹拌した。反応終了後、反応溶液にクロロホルム及び飽和塩化アンモニウム水を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/ヘキサン)で精製し、3,6−ジエトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)カルバゾールを白色固体(mp:140.9〜141.2℃)として得た(3.81g,収率58%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.47(t,J=7.0Hz,6H),δ4.14(q,J=7.0Hz,4H),δ4.71(q,J=8.8Hz,2H),δ7.10(dd,J=8.9,2.5Hz,2H),δ7.27(d,J=8.9Hz,2H),δ7.49(d,J=2.5Hz,2H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−71.0(t,J=8.8Hz,3F).
MS(EI,0.92V):m/z(%)=337(M,95),308(100),280(42).
1/2:1.10V(vs.Ag/AgCl).
D:3.6×10−6cm/s.
参考例−1
【0093】
【化24】
【0094】
アルゴン雰囲気下、無水塩化アルミニウム(4.78g,35.9mmol)をジクロロメタン(40mL)に懸濁した。この懸濁液を0℃に冷却し、ここに酪酸クロリド(3.82g,35.9mmol)を加え、溶液が均一になるまで撹拌し、カルバゾール(2.00g,12.0mmol)を加えた。この溶液を同温にて30分間、さらに室温で20時間撹拌した。反応終了後、反応溶液にクロロホルム及び水を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物を再結晶(アセトン/ヘキサン)で精製し、3,6−ジブチロイルカルバゾールを白色固体として得た(2.80g,収率76%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.06(t,J=7.2Hz,6H)δ1.85(sext,J=7.2Hz,4H),δ3.10(t,J=7.2Hz,4H),δ7.49(d,J=8.6Hz,2H),δ8.14(dd,J=8.6,1.7Hz,2H),δ8.61(brs,1H),δ8.79(d,J=1.7Hz,2H).
参考例−2
【0095】
【化25】
【0096】
アルゴン雰囲気下、水素化リチウムアルミニウム(1.23g,32.5mmol)及び無水塩化アルミニウム(2.17g,16.3mmol)をTHF(20mL)に懸濁した。この懸濁液を0℃に冷却し、参考例−1にて合成した3,6−ジブチロイルカルバゾール(2.50g,8.13mmol)を5回に分けて加えた。この溶液を室温まで昇温し18時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に水及び硫酸ナトリウムを加え1時間撹拌した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)で精製し、3,6−ジブチルカルバゾールを白色固体として得た(1.52g,収率67%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.95(t,J=7.4Hz,6H),δ1.40(sext,J=7.4Hz,4H),δ1.69(quint,J=7.4Hz,4H),δ2.79(t,J=7.4Hz,4H),δ7.21(dd,J=8.2,1.6Hz,2H),δ7.30(d,J=8.2Hz,2H),δ7.84(d,J=1.6Hz,2H).
参考例−3
【0097】
【化26】
【0098】
アルゴン雰囲気下、カルバゾール(3.01g,18.0mmol)をTHF(60mL)に溶解し、ここにn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.58M,11.4mL,18.0mmol)を室温にてゆっくりと滴下した。この溶液を室温で30分間撹拌した後、−78℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸(2,2,2−トリフルオロエチル)(12.5g,53.8mmol)を加え、同温にて3時間、さらに室温で16時間撹拌した。反応終了後、反応溶液にジエチルエーテル及び水を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)で精製し、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)カルバゾールを白色固体として得た(3.40g,収率76%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.81(q,J=9.0Hz,2H),δ7.30(ddd,J=7.8,7.1,1.0Hz,2H),δ7.43(d,J=8.1Hz,2H),δ7.50(ddd,J=8.1,7.1,1.2Hz,2H),δ8.09(ddd,J=7.8,1.2,1.0Hz,2H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−70.7(t,J=9.0Hz,3F).
参考例−4
【0099】
【化27】
【0100】
アルゴン雰囲気下、オートクレーブ容器にナトリウムエトキシド(8.94g,131mmol)、3,6−ジブロモカルバゾール(7.00g,21.5mmol)、ヨウ化銅(I)(8.20g,43.1mmol)、DMF(7mL)及びエタノール(24.5mL)を加え、120℃で20時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に酢酸エチルを加え、シリカゲルろ過を行い、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6−ジエトキシカルバゾールを白色固体として得た(4.39g,収率80%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.47(t,J=7.0Hz,6H),δ4.14(q,J=7.0Hz,4H),δ7.04(dd,J=8.7,2.5Hz,2H),δ7.27(d,J=8.7Hz,2H),δ7.48(d,J=2.5Hz,2H),δ7.74(brs,1H).
試験例−1
アルゴン雰囲気下、六フッ化リン酸リチウム(1.52g,10.0mmol)及び実施例−1にて合成した3,6−ジ−tert−ブチル−N−[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバゾール(149mg,0.30mmol)を量りとり、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合溶媒(体積比:30/70)を用いて10mLにメスアップし、電解液を得た。
【0101】
リチウムイオン電池は、セパレータ6(無機フィラー含有ポリオレフィン、日本板硝子製)を挟んで正極1(活物質:コバルト酸リチウム、単層シートプレス品、パイオトレック製)、負極4(活物質:天然球状グラファイト、単層シートプレス品、パイオトレック製)を対向配置し、負極ステンレス製キャップ3にステンレス製板バネ5を設置し、負極4、セパレータ6および正極1からなる積層体をコイン型セル内に収納した。この積層体に上記3,6−ジ−tert−ブチル−N−[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル)カルバゾールを含有した電解液を注入した後、ガスケット7を配置後、正極ステンレス製キャップ2をかぶせ、コイン型セルケースをかしめることで電池素子を得た(図1)。
【0102】
上記電池素子をマルチチャンネルポテンショスタット/ガルバノスタット(VMP−3)を用いて、25℃の恒温条件下、0.1Cの充電電流で上限電圧を4.2Vとして充電し、続いて0.1Cの放電電流で3.0Vとなるまで放電した。この操作を3回行った後に25℃の恒温条件下、0.2Cの充電電流で定電流充電を行い、4.95Vを上限電圧として、電池容量が規定の2倍(6mAh)になるまで充電を行った。この時の電圧は4.7Vであった(図2)。
試験例−2
3,6−ジ−tert−ブチル−N−[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバゾールに代え、実施例−2にて合成した3,6−ジ−tert−ブチル−N−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)カルバゾール(134mg,0.30mmol)を用いた以外は、試験例−1と同様に行った。作成したリチウムイオン電池を6mAhまで充電を行った時の電圧は4.5Vであった(図2)。
比較例−1
カルバゾール化合物を添加しなかった他は、試験例−1と同様に行った。作成したリチウムイオン電池を5.2mAhまで充電した時、上限電圧(4.95V)に達し、それ以上の充電を行うことはできなかった(図2)。
【0103】
本発明のカルバゾール化合物を添加した試験例−1及び2では、比較例1に比べて充電に伴う電圧上昇が抑制されており、本発明のカルバゾール化合物が過充電防止剤として機能していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】試験例及び比較例で作成したリチウムイオン電池の概略図である。
図2】試験例及び比較例の充電曲線を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1 正極
2 正極ステンレス製キャップ
3 負極ステンレス製キャップ
4 負極
5 ステンレス製板バネ
6 無機フィラー含浸ポリオレフィン多孔質セパレータ
7 ガスケット
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、過充電時においてもリチウムイオン電池の電圧上昇を抑制することができるため、安全性に優れたリチウムイオン電池を提供することができる。また、本発明はリチウムイオン電池のみならず、ナトリウムイオン電池、リチウム硫黄電池、カルシウム;マグネシウム;アルミニウム等の金属負極電池等への利用も可能である。
図1
図2