(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルミニウムを成分として含むガラス繊維からなるガラスクロスと、前記ガラスクロスに含浸した樹脂材料とからなる樹脂含浸基板からなる研磨用キャリアの製造方法であって、
前記樹脂含浸基板を切削することで研磨用キャリアの形状加工をする切削処理と、
前記切削処理による切削面に露出したガラス繊維を、フッ酸を含むエッチング溶液によりエッチングするエッチング処理と、
前記エッチング処理により生じたフッ化アルミン酸塩を除去する除去処理と、
を有する、研磨用キャリアの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
切削加工後の樹脂含浸基板に対して、ガラス繊維のエッチング処理を行って作成した研磨用キャリアを用いてガラス基板の研磨処理を行うと、研磨処理後のガラス基板の表面(主表面および端面)における異物の数が増大した。また、この異物が原因と見られるガラス基板のスクラッチが増大した。
【0007】
そこで、本発明は、研磨処理後のガラス基板
あるいは基板の表面における異物の数および傷を低減することができる研磨用キャリアおよび研磨用キャリアの製造方法、ガラス基板の製造方法及び
基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、発明者がガラス基板の表面に残存する異物を分析したところ、フッ化アルミン酸塩の結晶が含まれることが判明した。フッ化アルミン酸は、ガラスにアルミナ(酸化アルミニウム)が成分として含まれる場合、フッ酸を含むエッチング液でガラスのエッチング処理を行うと、エッチング液中のフッ素がアルミナと反応することで生成される。
【0009】
研磨用キャリアの材料である樹脂含浸基板のガラスクロスは、ガラス糸を織り上げて製造されている。このガラス糸を構成するガラス繊維は単位重量当たりの表面積が大きく、空気中の二酸化炭素や水による風化を受けやすい。そこで、ガラス繊維の耐久性を高くするために、ガラス成分中のアルミナ(Al
2O
3)の比率が高められている。このため、切削加工後の樹脂含浸基板に対して、ガラス繊維のエッチング処理を行うことで、フッ化アルミン酸塩の結晶が研磨用キャリアの表面に析出したものと考えられる。また、析出物はエッチングによりキャリア表面に形成された凹部に詰まりやすく、容易に除去できないことがわかった。そして、析出物が付着したまま研削や研磨の加工に供されると、それらが徐々に脱離することがわかってきた。フッ化アルミン酸塩の結晶は鋭利な外形を有しており、研磨用キャリアに残存すると研磨処理においてガラス基板に傷をつけるおそれがある。このため、あらかじめフッ化アルミン酸塩を研磨用キャリアから除去する必要がある。
【0010】
このため、本発明の第1の態様は、アルミニウムを成分として含むガラス繊維からなるガラスクロスと、前記ガラスクロスに含浸した樹脂材料とからなる樹脂含浸基板からなる研磨用キャリアの製造方法であって、
前記樹脂含浸基板を切削することで研磨用キャリアの形状加工をする切削処理と、
前記切削処理による切削面に露出したガラス繊維を、フッ酸を含むエッチング溶液によりエッチングするエッチング処理と、
前記エッチング処理により生じたフッ化アルミン酸塩を除去する除去処理と、
を有することを特徴とする。
【0011】
また、研磨用キャリアの表面に析出したフッ化アルミン酸塩の除去方法について検討したところ、フッ化アルミン酸塩が混酸に対しては難溶又は不溶であるが、ある種の金属イオンを含む酸性の電解質溶液に対しては可溶であることを、本発明者は見出した。
すなわち、前記除去処理において、金属イオンを含む酸性の電解質溶液にフッ化アルミン酸塩を溶解させることが好ましい。
【0012】
特に、前記電解質溶液は、硫酸アルミニウム水溶液又は硝酸アルミニウム水溶液であることが好ましい。
【0013】
前記切削加工において、前記樹脂含浸基板の厚さ方向に貫通し、内部に
研磨される基板を保持する
保持孔を作成し、
前記エッチング処理において、前記
保持孔の内壁面に露出したガラス繊維をエッチングすることが好ましい。
【0014】
前記切削加工において、研磨用キャリアの外周形状が歯車状となるように前記樹脂含浸基板を切削し、
前記エッチング処理において、前記歯車状の外周面に露出したガラス繊維をエッチングすることが好ましい。
【0015】
また、前記除去処理において、前記
保持孔の内壁面を研磨することによりフッ化アルミン酸塩を除去してもよい。
【0016】
本発明の第2の態様は、磁気ディスク用ガラス基板
あるいは磁気ディスク用基板の製造方法であって、
上記の製造方法により製造された研磨用キャリア又は上記の研磨用キャリアにガラス基板
あるいは基板を保持させた状態で、前記ガラス基板
あるいは基板の主表面を研磨する研磨処理を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述の研磨用キャリアの製造方法によれば、表面に突出するガラス繊維がなく、また、表面に残存するフッ化アルミン酸塩の結晶が極めて少ない研磨用キャリアを製造することができる。
また、この研磨用キャリアは表面に突出するガラス繊維がなく、また、表面に残存するフッ化アルミン酸塩の結晶が極めて少ない、あるいは無いため、この研磨用キャリアを用いてガラス基板
あるいは基板の研磨処理を行うことで、ガラス繊維やフッ化アルミン酸塩の結晶による傷が少ないガラス基板
あるいは基板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、研磨用キャリア、研磨用キャリアの製造方法および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法について詳細に説明する。
【0020】
(研磨用キャリア)
研磨用キャリア10は、後述する研磨処理(第1研磨処理、第2研磨処理)において、研磨対象であるガラス基板を保持するものである。
研磨用キャリア10には、
図1に示すように、ガラス基板保持孔20と、ギヤ部30とが設けられている。ガラス基板保持孔20の内部に、研磨対象であるガラス基板が収納されることにより、ガラス基板保持孔20の内壁がガラス基板の外周側端面を保持する。
ギヤ部30は研磨用キャリア10の外周部に沿って設けられた複数の歯を有する。研磨用キャリア10は、遊星歯車機構を備えた両面研磨装置の太陽歯車(sun gear)と内歯車(outer gear)との間に配置される遊星歯車(planetary gear)となる。
【0021】
図2は
図1のII−II矢視断面図であり、
図3は
図2のIII部の拡大図であり、
図4は
図2のIV部の拡大図である。
研磨用キャリア10は、アルミニウムを成分として含むガラス繊維からなるガラスクロス11と、ガラスクロス11に含浸した樹脂材料12とからなる樹脂含浸基板を用いて製造することができる。
ガラスクロス11には、ガラス繊維からなるガラス糸(JIS R3413:2012)を織り上げて製造したガラスクロス(JIS R3414:2012)を用いることができる。ガラス繊維はシリカ(SiO
2)を主成分とし、耐風化性、耐久性を維持するために、アルミナ(Al
2O
3)を1〜30重量%含むことが好ましい。
【0022】
ガラスクロス11に含浸させる樹脂材料12として、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)を用いることができる。
上述のガラスクロス11に樹脂材料12を含浸させた後、樹脂材料12を乾燥させることで得られるプリプレグを積層し、圧着させることで、研磨用キャリア10の材料となる樹脂含浸基板が得られる。このような樹脂含浸基板として、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(JIS K7051:1987)を用いることができる。
【0023】
ガラス基板保持孔20の内壁面には、
図3に示すように、凹部21が設けられている。凹部21は、切削加工により樹脂含浸基板に作成したガラス基板保持孔20の内壁面(切削面)に露出したガラス繊維をエッチングすることにより形成される。ガラス基板保持孔20の内壁面に凹部21が設けられることで、ガラスクロス11を構成するガラス繊維に対して樹脂材料12がガラス基板保持孔20の内壁面側に突出し、ガラス基板保持孔20に保持されるガラス基板の外周側端面に樹脂材料12が当接するため、ガラス基板がガラス繊維により傷つけられるおそれがない。
【0024】
また、
図4に示すように、ギヤ部30の外周面に凹部31を設けてもよい。凹部31は、切削加工により樹脂含浸基板に作成したギヤ部30の外壁面(切削面)に露出したガラス繊維をエッチングすることにより形成することができる。ギヤ部30の外壁面に凹部31が設けられていると、ガラスクロス11を構成するガラス繊維に対して樹脂材料12がギヤ部30の外壁面側に突出し、太陽歯車および内歯車に樹脂材料12が当接するため、太陽歯車および内歯車がガラス繊維により傷つけられるおそれがない。
【0025】
次に、研磨用キャリア10の製造方法について説明する。
〔切削処理〕
まず、エンドミルにより樹脂含浸基板を切削加工し、
図1に示すような研磨用キャリアの外周形状および保持孔を作成する。
【0026】
〔エッチング処理〕
次に、切削加工後の樹脂含浸基板をエッチング液に浸漬し、切削加工により露出したガラス繊維のエッチングを行う。エッチング液は、フッ酸を含むものであれば特に限定されず、フッ化アンモニウム(NH
4F)やフッ化水素アンモニウム(NH
5F
2)等を含んでいてもよい。また、フッ酸と、硫酸、硝酸等の強酸を混合した混酸をエッチング液に用いてもよい。
【0027】
なお、切削加工により樹脂含浸基板に作成された切削面のうち、ガラス基板保持孔20の内壁面のみをエッチングし、ギヤ部30の外壁面のエッチングを行わない場合、ギヤ部30の外壁面に図示しない保護材を設けることにより、ギヤ部30の外壁面にエッチング液が接触しないようにする。保護材として、マスク用テープをギヤ部30の外壁面に貼り付けてもよいし、マスク用の樹脂層をギヤ部30の外壁面に形成してもよい。保護材は、後述する除去処理の後に除去する。なお、保護材を完成した研磨用キャリア10のギヤ部30の外壁面に残存させてもよい。保護材をギヤ部30の外壁面に残存させると、ギヤ部30の摩耗を低減することができる。
【0028】
〔除去処理〕
次に、エッチング処理により生じ、樹脂含浸基板の表面に析出したり、エッチング処理により生じた凹部に詰まったフッ化アルミン酸塩を除去する。ここで、ガラス繊維のエッチング処理により生じるフッ化アルミン酸塩として、例えば、Li
3AlF
6、Na
3AlF
6、Li
3Na
3(AlF
6)
2等が挙げられる。
【0029】
一般に、フッ化アルミン酸塩は、フッ酸、硫酸、硝酸等の混酸や、強塩基に対しても難溶又は不溶である。しかし、フッ化アルミン酸塩は、金属イオンを含む酸性の電解質溶液に対しては可溶である。このような、金属イオンを含む酸性の電解質溶液に、エッチング処理後の樹脂含浸基板を浸漬することにより、樹脂含浸基板の表面に析出したフッ化アルミン酸塩を溶解させ、樹脂含浸基板の表面から除去することができる。
【0030】
この「金属イオン」は特に限定されないが、例えば鉄イオンやアルミニウムイオンを含む酸性の水溶液にフッ化アルミン酸塩が溶解することが確認されている。特にフッ化アルミン酸塩の溶解速度の観点から、「金属イオン」はアルミニウムイオンであることが好ましい。
酸性の電解質溶液に含まれる金属以外のイオンは特に限定されないが、フッ化アルミン酸塩の溶解度の観点から、硫酸イオンや硝酸イオンであることが好ましい。特に、樹脂含浸基板の樹脂材料を溶解させないという点で、硫酸イオンであることが好ましい。
したがって、金属イオンを含む酸性の電解質溶液は、硫酸アルミニウム水溶液又は硝酸アルミニウム水溶液であることが好ましく、硫酸アルミニウム水溶液であることがより好ましい。
【0031】
なお、フッ化アルミン酸塩を機械的に除去してもよい。例えば、ガラス基板保持孔20の内壁面やギヤ部30の外壁面を、ブラシやスポンジ等により研磨することで、フッ化アルミン酸塩を除去してもよい。
【0032】
以上の処理により、研磨用キャリア10が製造される。このように製造された研磨用キャリア10は、表面に突出するガラス繊維がない。また、研磨用キャリア10の表面に残存するフッ化アルミン酸塩の結晶が極めて少ない、あるいは無いため、この研磨用キャリア10を用いてガラス基板の研磨処理を行うことで、ガラス繊維やフッ化アルミン酸塩の結晶による傷が少ないガラス基板を製造することができる。
【0033】
特に、所定濃度の硫酸アルミニウム水溶液に所定時間浸漬したときに、硫酸アルミニウム水溶液中に溶解するフッ化アルミン酸塩の量が、研磨用キャリア10の全表面積に対して所定量以下である研磨用キャリア10を用いると、研磨用キャリア10の表面に析出しているフッ化アルミン酸塩の結晶がほとんどないため、研磨処理時に研磨用キャリア10からフッ化アルミン酸塩の結晶が脱離することがなく、結晶によりガラス基板が傷つかないため、欠陥の少ないガラス基板を得ることができる。
【0034】
また、特に、凹部21に堆積するフッ化アルミン酸塩の結晶の、ガラス基板保持孔20の内壁面の単位面積当たりの数が所定量以下である研磨用キャリア10を用いると、研磨処理時に研磨用キャリア10からフッ化アルミン酸塩の結晶が脱離することがなく、結晶によりガラス基板が傷つかないため、欠陥の少ないガラス基板を得ることができる。
【0035】
上記の除去処理において、例えば、エッチング処理後の樹脂含浸基板を浸漬する、金属イオンを含む酸性の電解質溶液のpHや濃度、浸漬時間を調節することで、研磨用キャリア10の表面に残存するフッ化アルミン酸塩の結晶の量を調節することができる。例えば、濃度1〜40wt%の硫酸アルミニウム水溶液に0.1〜3時間浸漬後、純水で洗浄することにより得られる研磨用キャリア10は、表面に析出しているフッ化アルミン酸塩の結晶がほとんどない。
【0036】
次に、この研磨用キャリア10を用いて磁気ディスク用ガラス基板を製造する方法について説明する。
【0037】
(磁気ディスク用ガラス基板)
まず、磁気ディスク用ガラス基板について説明する。磁気ディスク用ガラス基板は、円板形状であって、外周と同心の円形の中心孔がくり抜かれたリング状である。磁気ディスク用ガラス基板の両面に円環状の磁性層(記録領域)が形成されることで、磁気ディスクが形成される。
【0038】
磁気ディスク用ガラスブランク(以降、単にガラスブランクという)は、後述するプレス成形により作製される円形状のガラス板であって、中心孔がくり抜かれる前の形態である。
【0039】
ガラスブランクの材料として、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平面度及び基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。
【0040】
(磁気ディスク用ガラス基板の製造方法)
次に、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を説明する。先ず、一対の主表面を有する板状の磁気ディスク用ガラス基板の素材となるガラスブランクをプレス成形により作製する(プレス成形処理)。次に、作製されたガラスブランクの中心部分に円孔を形成しリング形状(円環状)のガラス基板とする(円孔形成処理)。次に、円孔を形成したガラス基板に対して形状加工を行う(形状加工処理)。これにより、ガラス基板が生成される。次に、形状加工されたガラス基板に対して端面研磨を行う(端面研磨処理)。端面研磨の行われたガラス基板に、固定砥粒による研削を行う(研削処理)。次に、ガラス基板の主表面に第1研磨を行う(第1研磨処理)。次に、ガラス基板に対して化学強化を行う(化学強化処理)。次に、化学強化されたガラス基板に対して第2研磨を行う(第2研磨処理)。以上の処理を経て、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。以下、各処理について、詳細に説明する。
【0041】
(a)プレス成形処理
溶融ガラス流出管の下部の流出口から溶融ガラス流が所定の量流出したとき、溶融ガラス流の先端部を切断器により切断することによって、溶融ガラス塊を落下させる。次に、溶融ガラス塊の落下方向と交差する方向(例えば水平方向)両側に移動する一対の金型を互いに近接させることで、落下中の溶融ガラスの塊を一対の金型のプレス成形面の間に挟みこみ、プレスしてガラスブランクを成形する(以下、水平プレス方式という)。所定時間プレスを行った後、金型を開いてガラスブランクが取り出される。
【0042】
(b)円孔形成処理
ガラスブランクに対してドリル等を用いて円孔を形成することにより円形状の孔があいたディスク状のガラス基板を得ることもできる。
【0043】
(c)形状加工処理
次に、形状加工処理について説明する。形状加工処理では、円孔形成処理後のガラス基板の端部に対する面取り加工(外周側端面および内側端面の面取り加工)を含む。面取り加工は、円孔形成処理後のガラス基板の外周側端面および内側端面において、ダイヤモンド砥石により面取りを施す形状加工である。この形状加工により所定の形状をしたガラス基板が生成される。面取りの傾斜角度は、主表面に対して例えば40〜50度であり、略45度であることが好ましい。
【0044】
(d)端面研磨処理
次に、端面研磨処理を説明する。端面研磨では、ガラス基板の内側端面及び外周側端面に対して、ブラシ研磨により鏡面仕上げを行う。このとき、酸化セリウム等の微粒子を遊離砥粒として含む砥粒スラリが用いられる。端面研磨を行うことにより、ガラス基板の端面での塵等が付着した汚染、傷等の損傷の除去を行うことにより、サーマルアスペリティ障害の発生の防止や、ナトリウムやカリウム等のコロージョンの原因となるイオン析出の発生を防止することができる。
【0045】
(e)研削処理
研削処理では、遊星歯車機構を備えた両面研削装置を用いて、ガラス基板の主表面に対して研削加工を行う。具体的には、ガラスブランクから生成されたガラス基板の外周側端面を、両面研削装置の保持部材に設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研削を行う。両面研削装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス基板が狭持される。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させ、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス基板の両主表面を研削することができる。
【0046】
(f)第1研磨処理
次に、研削のガラス基板の主表面に第1研磨が施される。第1研磨は、主表面加工処理の1つである。具体的には、ガラス基板の外周側端面を、両面研磨装置の研磨用キャリアに設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研磨が行われる。第1研磨は、例えば固定砥粒による研削を行った場合に主表面に残留したキズや歪みの除去、あるいは微小な表面凹凸(マイクロウェービネス、粗さ)の調整を目的とする。
【0047】
第1研磨処理では、固定砥粒による研削処理に用いる両面研削装置と同様の構成を備えた両面研磨装置を用いて、研磨スラリを与えながらガラス基板が研磨される。第1研磨処理では、固定砥粒による研削と異なり、固定砥粒の代わりに遊離砥粒を含んだ研磨スラリが用いられる。第1研磨に用いる遊離砥粒として、例えば、酸化セリウム砥粒、あるいはジルコニア砥粒などが用いられる。両面研磨装置も、両面研削装置と同様に、上下一対の定盤の間にガラス基板が狭持される。下定盤の上面及び上定盤の底面には、全体として円環形状の平板の研磨パッド(例えば、樹脂ポリッシャ)が取り付けられている。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させることで、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス基板の両主表面を研磨する。
【0048】
(g)化学強化処理
次に、ガラス基板は化学強化される。化学強化液として、例えば硝酸カリウムと硫酸ナトリウムの混合溶融液等を用い、ガラス基板を化学強化液中に浸漬する。
【0049】
(h)第2研磨(最終研磨)処理
次に、化学強化処理後のガラス基板に第2研磨が施される。第2研磨処理は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨においても、第1研磨に用いる両面研磨装置と同様の構成を有する両面研磨装置が用いられる。具体的には、ガラス基板の外周側端面を、両面研磨装置の研磨用キャリアに設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研磨が行われる。第2研磨による取り代は、例えば1〜10μm程度である。第2研磨処理が第1研磨処理と異なる点は、遊離砥粒の種類及び粒子サイズが異なることと、樹脂ポリッシャの硬度が異なることである。
【0050】
第2研磨処理に用いる遊離砥粒として、例えば、スラリに混濁させたコロイダルシリカ等の微粒子(粒子サイズ:直径5〜100nm程度)が用いられる。研磨されたガラス基板を中性洗剤、純水、IPA等を用いて洗浄することで、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。
第2研磨処理は、必ずしも必須な処理ではないが、ガラス基板の主表面の表面凹凸のレベルをさらに良好なものとすることができる点で実施することが好ましい。第2研磨処理を実施することで、主表面の粗さ(Ra)を0.1nm以下とすることができる。このようにして、第2研磨の施されたガラス基板は、洗浄されて磁気ディスク用ガラス基板となる。
【0051】
このような磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によれば、研磨用キャリア10から露出したガラス繊維や研磨用キャリア10から脱離したフッ化アルミン酸塩の結晶によりガラス基板がに傷つかないため、欠陥の少ないガラス基板を得ることができる。
【0052】
〔実施例〕
フェノール樹脂およびエポキシ樹脂を混合してなる樹脂材料をガラスクロスに含浸させ、乾燥、硬化して得られるプリプレグを積層し、圧着して得られるガラス繊維強化プラスチック(JIS K7051:1987)を、樹脂含浸基板として研磨用キャリアの材料に用いた。エンドミルにより樹脂含浸基板を切削加工し、
図1に示すような形状とした。切削加工後の樹脂含浸基板をフッ酸(HF)1wt%、硫酸2wt%のエッチング溶液に1時間浸漬し、エッチング処理を行った。エッチング処理後の樹脂含浸基板を水で洗浄した後、硫酸アルミニウム水溶液に浸漬し、フッ化アルミン酸塩の除去処理を行った。その後、硫酸アルミニウム水溶液から樹脂含浸基板を取り出し、水で洗浄し、研磨用キャリアを得た。
【0053】
〔比較例〕
エッチング処理後の樹脂含浸基板を水で洗浄した後、硫酸アルミニウム水溶液に浸漬しなかった点以外は、実施例1と同様にして研磨用キャリアを得た。
【0054】
<ガラス基板の主表面上のスクラッチ>
得られた研磨用キャリアのガラス基板保持孔に上記の第2研磨前まで実施したガラス基板を挿入し、研磨用キャリアおよびガラス基板を両面研磨装置の上定盤および下定盤の間に狭持させ、第2研磨を実施した。上定盤と下定盤との間に遊離砥粒を供給しながら上定盤および下定盤とガラス基板とを相対的に移動させることにより、ガラス基板の両主表面を1時間研磨した。なお、100枚ずつサンプルを作成した。
研磨処理後のガラス基板の主表面をレーザー式の表面欠陥検査装置を用いて検査し、スクラッチが存在するガラス基板の数を計測した。
結果を表1に示す。
【0056】
比較例では15枚のガラス基板でスクラッチが発見されたのに対し、実施例ではスクラッチが発見されたガラス基板は0枚であった。硫酸アルミニウム水溶液によりフッ化アルミン酸塩の除去処理を行うことで、研磨用キャリアに析出したフッ化アルミン酸塩の量を減らすことができ、フッ化アルミン酸塩によるスクラッチを防ぐことができることが分かる。
【0057】
以上、本発明の研磨用キャリア、研磨用キャリアの製造方法および磁気ディスク用ガラス基板
あるいは磁気ディスク用基板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。