特許第6208574号(P6208574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208574
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20170925BHJP
   H02K 1/27 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H02K1/22 A
   H02K1/27 501B
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-264451(P2013-264451)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-161210(P2014-161210A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2016年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-13342(P2013-13342)
(32)【優先日】2013年1月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】番場 辰徳
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−015598(JP,A)
【文献】 特開平05−284679(JP,A)
【文献】 特開平10−136596(JP,A)
【文献】 特開平05−316671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/22
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアに電機子巻線が設けられてなるステータと、
ロータコアの前記ステータ側の表面に磁石が設けられてなるロータと、
を備えたモータであって、
前記ステータコアは、メインコア部と、該メインコア部の軸方向端部に設けられる磁性板とを備え、
前記磁性板は、前記メインコア部における軸方向端部に積層される積層部と、該積層部の前記ロータ側の端部から軸方向外側に延出されるとともに前記ロータと径方向に対向するロータ対向部とを有し、
前記ロータコアは、前記磁石の周方向の位置決めをする位置決め部を備え、
前記位置決め部は、少なくとも前記磁性板の積層部と径方向において対向しない位置に形成されることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記位置決め部は、少なくとも前記ロータの軸方向中央部に形成されることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータにおいて、
前記位置決め部は、少なくとも前記ロータの軸方向端部に形成されることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータにおいて、
前記位置決め部は、径方向における前記ステータ側に向けて徐々に周方向幅が小さい態様で形成され、
前記磁石は、径方向における前記ロータコア側の周方向端部が前記位置決め部に倣った形状に形成されることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項4に記載のモータにおいて、
前記位置決め部は、周方向両側に斜面を有し、
前記周方向両側の斜面は、径方向中心及び該位置決め部の周方向中心を通る直線に対して対称となる形状であることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のモータにおいて、
前記磁石は、前記ロータコアと円筒状のカバーとで径方向において挟持されて固定されることを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のモータにおいて、
前記ロータコア及びステータコアは、コアシートを軸方向に複数積層して構成されることを特徴とするモータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のモータにおいて、
前記ステータコアの軸方向両側にそれぞれ設けられて該ステータコアを軸方向に挟持する第1フレーム及び第2フレームを備え、
前記第1フレームと前記第2フレームとの間から前記ステータコアの外周面が外部に露出されるように構成されることを特徴とするモータ。
【請求項9】
請求項8に記載のモータにおいて、
前記第1及び第2フレームは、前記磁性板の前記積層部を介して前記メインコア部を軸方向に挟むように構成されることを特徴とするモータ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のモータにおいて、
前記ステータコアの前記メインコア部は、板状のコアシートを軸方向に複数積層して構成され、
前記磁性板の板厚は、前記コアシートの板厚よりも厚く設定されていることを特徴とするモータ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のモータにおいて、
前記電機子巻線は、前記ステータコアに軸方向に沿って形成された複数のスロットに挿入されるとともに該スロットから軸方向に突出する突出部が互いに電気的に接続された複数のセグメント導体よりなり、
前記セグメント導体の前記突出部が、前記磁性板の前記ロータ対向部と径方向に対向するように構成されていることを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、コアの軸方向端面において、コアに積層される積層部と、この積層部から軸方向外側に延びて磁石と径方向において対向する対向部を有する磁性板(特許文献1では補助ロータコア)を備えたモータが知られている。このように磁石と径方向において対向する対向部を設けることで、磁気取り込み量を増やすことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−284679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなモータにおいて、減磁界の影響が生じる場合には、磁石の断面略L字状の磁性板の積層部と対向する部位が減磁され易く、この減磁部分に合わせて磁石全体の厚さ(径方向厚さ)を決めることが好ましい。
【0005】
また、磁石の空転(周方向への移動)を抑えるために、コアの表面に突起等の位置決め部を形成することが考えられるが、マグネットと位置決め部との接触等により、減磁耐力がより低下する虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、磁石の空転を抑える位置決め部を有したモータにおいて、耐減磁性を高めることができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するモータは、ステータコア及び該ステータコアに設けられた電機子巻線を有するステータと、ロータコア及び該ロータコアの前記ステータ側の表面に設けられる磁石を有するロータと、を備えたモータであって、前記ステータコアは、メインコア部と、該メインコア部の軸方向端部に設けられる磁性板とを備え、前記磁性板は、前記メインコア部における軸方向端部に積層される積層部と、該積層部の前記ロータ側の端部から軸方向外側に延出されるとともに前記ロータと径方向に対向するロータ対向部とを有し、前記ロータコアは、前記磁石の周方向の位置決めをする位置決め部を備え、前記位置決め部は、少なくとも前記磁性板の積層部と径方向において対向しない位置に形成される。
【0008】
この構成によれば、磁石の周方向位置決めを行う位置決め部が磁性板の積層部と径方向において対向しない位置に形成されるため、磁石の位置決め部と周方向に当接する部位と、磁石の積層部と径方向に対向する部位とが軸方向において異なる位置となるため、耐減磁性を高めることができる。
【0009】
上記モータにおいて、前記位置決め部は、少なくとも前記ロータの軸方向中央部に形成されることが好ましい。
この構成によれば、位置決め部が軸方向中央部に形成されるため、より確実に積層部と径方向において対向しない位置となるため、耐減磁性をより確実に高めることが可能となる。
【0010】
上記モータにおいて、前記位置決め部は、少なくとも前記ロータの軸方向端部に形成されることが好ましい。
この構成によれば、軸方向端部に位置決め部を形成することで、軸方向にある程度の長さを有する磁石を安定して保持(位置決め)することができる。
【0011】
上記モータにおいて、前記位置決め部は、径方向における前記ステータ側に向けて徐々に周方向幅が小さい態様で形成され、前記磁石は、径方向における前記ロータコア側の周方向端部が前記位置決め部に倣った形状に形成されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、位置決め部の周方向幅がステータ側に向けて小さくなるように形成され、磁石が前記位置決め部と周方向に当接する周方向端部が位置決め部に倣った形状とされるため、ロータの回転に伴って磁石に慣性力が発生した場合に、位置決め部には慣性力の一部のみが作用することなる。このため、磁石又は位置決め部の破損を抑えることが可能となる。また、磁石間に位置する位置決め部がステータ側に向けて小さくなるため、磁石間の距離を狭めることができ、磁石の周方向幅を大きくすることができる。
【0013】
上記モータにおいて、前記位置決め部は、周方向両側に斜面を有し、前記周方向両側の斜面は、径方向中心及び該位置決め部の周方向中心を通る直線に対して対称となる形状であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、位置決め部の周方向両側の斜面が位置決め部の周方向中心を通る直線に対して対称となる形状である。このため、位置決め部の周方向両側に位置する磁石の形状を同一とすることができる。
【0015】
上記モータにおいて、前記磁石は、前記ロータコアと円筒状のカバーとで径方向において挟持されて固定されることが好ましい。
この構成によれば、磁石がロータコアと円筒状のカバーとで径方向において挟持されて固定されるため、接着剤等による接着固定などを行うことなく固定することができる。また、接着剤を併用して磁石を固定する場合においては、その接着力の補強をすることができる。さらにカバーによって磁石の飛散によるステータ等の損傷を抑えることができる。また、位置決め部をステータ側に向けて周方向幅が小さくなるように構成した場合において、カバーによってロータの回転に伴う磁石の慣性力を受けることができるため、より確実に磁石の空転を抑えることができる。
【0016】
上記モータにおいて、前記ロータコア及びステータコアは、コアシートを軸方向に複数積層して構成されることが好ましい。
この構成によれば、ロータコア及びステータコアがいずれもコアシートを軸方向に複数積層して構成されるため、例えば、板状部材から両コアのコアシートをプレス成形にて打ち抜いて形成する、所謂共取りが可能となる。
【0017】
上記モータにおいて、前記ステータコアの軸方向両側にそれぞれ設けられて該ステータコアを軸方向に挟持する第1フレーム及び第2フレームを備え、前記第1フレームと前記第2フレームとの間から前記ステータコアの外周面が外部に露出されるように構成されることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、各フレームでステータコアを軸方向に挟持する際に、ステータコアの外周面が露出されるため、ステータコア(ステータ)の熱を外部に放出しやすくできる。
【0019】
上記モータにおいて、前記第1及び第2フレームは、前記磁性板の前記積層部を介して前記メインコア部を軸方向に挟むように構成されることが好ましい。
この構成によれば、磁性板の積層部を各フレームに対して軸方向に干渉しないように小型にする必要がないため、出力の低下を抑えることができる。
【0020】
上記モータにおいて、前記ステータコアの前記メインコア部は、板状のコアシートを軸方向に複数積層して構成され、前記磁性板の板厚は、前記コアシートの板厚よりも厚く設定されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、磁性板の板厚をコアシートの板厚よりも厚くして磁性板を介して磁気を取り込みやすくすることができるため、より一層の高出力化に寄与できる。
上記モータにおいて、前記電機子巻線は、前記ステータコアに軸方向に沿って形成された複数のスロットに挿入されるとともに該スロットから軸方向に突出する突出部が互いに電気的に接続された複数のセグメント導体よりなり、前記セグメント導体の前記突出部が、前記磁性板の前記ロータ対向部と径方向に対向するように構成されていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、セグメント導体の軸方向の突出部が磁性板のロータ対向部と径方向に対向するため、ステータコアにおけるロータとの対向面を磁性板のロータ対向部によって確保して高出力を図りつつも、ステータの軸方向への大型化を抑えることができる。また、電機子巻線がセグメント導体にて構成されたステータは、電機子巻線の占積率を高く構成できる一方で発熱しやすくもなるが、ステータコアの外周面が各フレーム間から外部に露出されるため、ステータで生じた熱を外部に逃がしやすく好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のモータによれば、磁石の空転を抑える位置決め部を有した構成において、耐減磁性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態のモータの模式断面図である。
図2】同形態のモータの平面図である。
図3】同形態の磁性板のロータ対向部を説明するための正面図である。
図4】同形態のステータコアの分解斜視図である。
図5】同形態のステータコアを模式断面図である。
図6】同形態のステータを部分的に拡大して示す平面図である。
図7】同形態のセグメント導体の屈曲部位を示す模式断面図である。
図8】同形態のモータの一部を拡大して示す模式断面図である。
図9】別例のモータを部分的に拡大して示す模式断面図である。
図10】別例のモータを部分的に拡大して示す模式断面図である。
図11】別例のモータを部分的に拡大して示す模式断面図である。
図12】(a)は別例のモータの平面図であり、(b)は(a)の一部を拡大した拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、モータの一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態のモータ10は、リヤフレーム11とフロントフレーム12によってモータ10の軸方向に挟持された環状のステータ13の内側にロータ14が配置されて構成されている。なお、モータ10の軸方向出力側(後述するジョイント63側)を保持するフレームをフロントフレーム12とし、軸方向反出力側を保持するフレームをリヤフレーム11としている。各フレーム11,12は、互いに離間しないようにステータ13の外周側の位置でスルーボルト15にて締結固定されている。
【0026】
[フレーム]
リヤフレーム11及びフロントフレーム12は、アルミニウムや鋼鉄等の金属材料にて形成されている。リヤフレーム11は、略円盤状の本体部11aと、本体部11aの外周縁からモータ10の軸方向に延出された円筒状のステータ保持部11bとを備えている。一方のフロントフレーム12も略同様の構成であり、略円盤状の本体部12aと、本体部12aの外周縁からモータ10の軸方向に延出された円環状のステータ保持部12bとを備えている。各フレーム11,12の本体部11a,12aの径方向中央には、同軸上に配置された軸受16,17が保持され、その軸受16,17には、ロータ14の回転軸18が軸支されている。
【0027】
各フレーム11,12の本体部11a,12aには、その外周縁の複数箇所(例えば2箇所)から径方向外側に延びる締結固定部11c,12cが形成されている。なお、図1では、周方向に複数設けられた締結固定部11c,12cをそれぞれ1つのみ図示している。リヤフレーム11側の締結固定部11cとフロントフレーム12側の締結固定部12cは互いに同数設けられるとともに、回転軸18の軸方向に互いに対向している。そして、それぞれ対をなす締結固定部11c,12cがスルーボルト15によって締結固定されることで、各フレーム11,12がステータ13を挟持する状態で互いに固定されるようになっている。
【0028】
[ステータ]
ステータ13は、各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bに挟持された円環状のステータコア21と、そのステータコア21に装着された電機子巻線22とを備える。
【0029】
図2及び図6に示すように、ステータコア21は、その外周を構成する円筒部23と、その円筒部23から径方向内側に延出された複数(本実施形態では60個)のティース24とからなる。各ティース24には、径方向内側に向かうにつれて周方向幅が狭くなるテーパ状をなす径方向延出部24aが形成され、その各径方向延出部24aの先端部(径方向内側端部)には、該径方向延出部24aよりも周方向幅が広い幅広部24bが形成されている。径方向延出部24aの周方向両端面は、回転軸18の軸線と平行な平面状をなすとともに、周方向に隣り合う周方向端面同士が平行をなしている。
【0030】
各ティース24の間の空間は、電機子巻線22を構成するセグメント導体25を収容する部位であるスロットSとして構成される。つまり、スロットSは、ティース24の周方向側面とティース24間における円筒部23の内周面とから構成されている。本実施形態では、ティース24は、周方向に隣り合う径方向延出部24aの周方向端面同士が平行となるように形成されるため、各スロットSが軸方向視で略矩形状をなすように構成されている。また、各スロットSは、ステータコア21を軸方向に沿って貫通するとともに、径方向内側に開口する形状をなしている。なお、ステータコア21に形成されたスロットSの個数は、ティース24と同数(本実施形態では60個)である。
【0031】
[ステータコア]
上記のような形状を有するステータコア21は、複数の鋼板を積層して一体化することによって成形されている。
【0032】
詳述すると、図4に示すように、ステータコア21は、鋼板をプレス加工により打ち抜いて形成した複数枚のコアシート30を軸方向に積層してかしめて一体化することにより形成されたメインコア部31と、メインコア部31の軸方向両端部にそれぞれ固定された磁性板40(補助コア部)とから構成されている。なお、本実施形態では、磁性板40は、同形状のものがメインコア部31の軸方向両側に1枚ずつ設けられている。
【0033】
メインコア部31の各コアシート30は同一形状をなし、板面が軸方向と直交するように配置されている。この各コアシート30は、円環状をなす環状部32と、その環状部32から径方向内側に延びる複数のティース構成部33を有している。また、各コアシート30は、ティース構成部33が軸方向沿って重なるように積層されている。
【0034】
図2図4及び図6に示すように、磁性板40は、プレス加工により成形されるものであり、メインコア部31の軸方向両端のコアシート30に積層された板状の積層部41を有している。積層部41は、メインコア部31のコアシート30に対して平行且つ同軸となるように積層されている。また、磁性板40は、その板厚T1がメインコア部31のコアシート30の板厚T2よりも厚く設定されている(図1参照)。
【0035】
積層部41には、コアシート30の環状部32と軸方向に重なる円環状をなす環状部42と、その環状部42から径方向内側に延びる複数のティース構成部43とが形成されている。積層部41のティース構成部43は、軸方向視においてコアシート30のティース構成部33と同形状をなしている。磁性板40は、積層部41の環状部42及びティース構成部43が、コアシート30の環状部32及びティース構成部33とそれぞれ軸方向に重なるように設けられている。このコアシート30と磁性板40の各環状部32,42がステータコア21の円筒部23を構成し、各ティース構成部33,43がステータコア21のティース24を構成している。また、積層部41の環状部42の外径は、コアシート30の環状部32の外径よりも小さく形成されている(図2参照)。これにより、軸方向視においてコアシート30の環状部32の外周縁全体が露出するように構成されている。
【0036】
磁性板40のティース構成部43の径方向内側端部(ロータ14側端部)には、軸方向外側(反メインコア部側)に延出されたロータ対向部44が形成されている。ロータ対向部44は、ティース構成部43の径方向内側端部を軸方向外側に直角に屈曲することで形成されている。つまり、磁性板40は、軸方向外側に屈曲形成されたロータ対向部44で板面が径方向を向くように形成されている。なお、ロータ対向部44の内径面は、メインコア部31(コアシート30)の内径と同径となるように曲面形成されている。また、積層部41の軸方向厚みとロータ対向部44の径方向厚みは、磁性板40の板厚T1によって決まり、それらは互いに等しい厚みとなっている。また、ロータ対向部44とティース構成部43との間の折曲部位(ティース構成部43とロータ対向部44のなす角部)の肉厚は、ロータ対向部44の板厚(つまり、磁性板40の板厚T1)よりも厚くなるように形成されている。
【0037】
図3に示すように、ロータ対向部44は、周方向両側に周方向側部としての側縁部44aを有する。この側縁部44aは、回転軸18の軸線方向に対して周方向に傾斜する形状とされる。側縁部44aは、先端側(反メインコア部側)ほどロータ対向部44の周方向中央側に近づくように傾斜されている。また、各側縁部44aは、ロータ対向部44を径方向から見たときに、ロータ対向部44の周方向の中心線に対して左右対称となるように形成されている。このため、ロータ対向部44は、軸方向基端側(軸方向内側)の周方向幅がティース構成部43の先端部(幅広部24b)の周方向幅と等しく形成されるとともに、軸方向先端側(軸方向外側)ほど周方向幅が狭く、径方向視で台形形状をなすように形成される。なお、本実施形態の各ロータ対向部44は全て同形状をなすように形成される。
【0038】
図5に示すように、コアシート30と磁性板の積層部41の各環状部32,42には、板厚方向に突出する凸部45(ダボ)がプレス加工にて形成されている。各環状部32,42において、凸部45は周方向に複数(本実施形態では4つ)形成されている。また、各環状部32,42は、各凸部45の裏側において凸部45の成形時に形成された凹部46を有している。そして、各凸部45は、軸方向に隣り合うコアシート30の凹部46に圧入固定(かしめ固定)されている。これにより、各コアシート30が一体化されてメインコア部31を構成するとともに、そのメインコア部31の軸方向両側に磁性板40が固定される。
【0039】
図6に示すように、ステータコア21の各スロットS内には、絶縁性の樹脂材料から形成されたシート状の絶縁部材47が装着されている。各絶縁部材47は、スロットSの径方向外側端部で折り返された状態で設けられ、スロットSの内周面に沿うように形成されている。また、各絶縁部材47はスロットSに軸方向に挿入されるものであり、絶縁部材47の軸方向長さは、スロットSの軸方向長さよりも長く設定されている。つまり、絶縁部材47の軸方向両端部は、スロットSの軸方向両端部から外部に突出している(図7参照)。
【0040】
[電機子巻線]
図6及び図8に示すように、上記したステータコア21に装着された電機子巻線22は、複数のセグメント導体25(セグメントコンダクタ)にて構成されている。各セグメント導体25は、所定のもの同士で接続されて、3相(U相、V相、W相)Y結線の電機子巻線22を構成している。また、各セグメント導体25は、同一断面形状(断面矩形状)の線材から形成されるものである。
【0041】
各セグメント導体25は、スロットS内に挿通される部位である一対の直線部51と、スロットSから軸方向一方側(リヤフレーム11側)に突出する第1突出部52と、スロットSから軸方向他方側(フロントフレーム12側)に突出する第2突出部53とを有し、第1突出部52側で折り返される略U字状をなしている。また、第1及び第2突出部52,53は、磁性板40のロータ対向部44と径方向に対向している。
【0042】
一対の直線部51は、径方向位置が互いにずれるように形成されるとともに、周方向位置の異なるスロットSにそれぞれ挿入される。また、直線部51はスロットS内において絶縁部材47の内側に配置されている(図6参照)。この絶縁部材47によってセグメント導体25とステータコア21とが電気的に絶縁されている。
【0043】
セグメント導体25は、各スロットS内において直線部51が径方向に4つ並ぶように配置されている。そして、セグメント導体25には、2つの直線部51が径方向内側から1つ目と4つ目に配置されるもの(図8において外側に図示されたセグメント導体25x)と、2つの直線部51が径方向内側から2つ目と3つ目に配置されるもの(図8において内側に図示されたセグメント導体25y)の2種類が用いられている。なお、主にこの2種類のセグメント導体25x,25yから電機子巻線22が構成されるが、例えば電機子巻線22の端部(電源接続端子や中性点接続端子等)を構成するセグメント導体には、別種類のもの(例えば、直線部が1つだけのセグメント導体)が用いられる。
【0044】
各直線部51は、スロットSを軸方向に貫通してフロントフレーム12側に突出した第2突出部53が、周方向に屈曲されて他のセグメント導体25の直線部51や、特殊な種類のセグメント導体と溶接等により電気的に接続され、これにより、各セグメント導体25によって電機子巻線22が構成される。
【0045】
また、セグメント導体25の第1及び第2突出部52,53は、スロットSの軸方向両端で直線部51に対して周方向に屈曲されている。ここで、第1突出部52が周方向に屈曲されたスロットSの軸方向端部付近の拡大図を図7に示す。同図に示すように、スロットSの軸方向一端を構成する磁性板40(積層部41)のティース構成部43の角部には、円弧状に面取りされた面取り部43aが形成されている。また、第2突出部53側の磁性板40にも同様に、スロットSの軸方向他端を構成するティース構成部43の角部に面取り部43aが形成されている。面取り部43aは、第1及び第2突出部52,53の周方向への屈曲形状に沿う円弧状をなし、その屈曲部位に対して広い面積で接触するようになっている。これにより、第1及び第2突出部52,53の周方向の屈曲部位に対して、ティース構成部43の角部から局所的に力が加わることが抑制され、その屈曲部位の損傷が抑制されるようになっている。また同様に、第1及び第2突出部52,53の屈曲部位と面取り部43aとに挟まれた絶縁部材47の損傷も抑制されている。また、本実施形態では、磁性板40の板厚T1(ティース構成部43の板厚)がコアシート30の板厚T2よりも厚いため、面取り部43aの曲率半径Rmをコアシート30の板厚T2よりも大きく設定可能となっている。これにより、曲率半径Rmが大きい面取り部43aによってセグメント導体25の屈曲部位の損傷がより好適に抑制されるようになっている。
【0046】
また、図8に示すように、セグメント導体25の折り返し部25aが形成された第1突出部52は、径方向外側に傾く(膨らむ)ように形成されている。これにより、折り返し部25aがスロットSの径方向中央よりも径方向外側に偏倚するとともに、第1突出部52の径方向内側端部52aがスロットSの径方向内側端部Saよりも径方向外側に位置するように構成される。これにより、第1突出部52と磁性板40のロータ対向部44との径方向間の間隙が広く構成されるため、第1突出部52とロータ対向部44との干渉がより好適に抑制されている。その結果、セグメント導体25とロータ対向部44との絶縁性がより好適に確保されるだけでなく、第1突出部52との干渉によってロータ対向部44が変形することによるコギングトルクの増大や出力の低下が抑制されている。
【0047】
一方、セグメント導体25の第2突出部53には、折り返し部が形成されず、その第2突出部53同士が溶接接合される構成のため、第2突出部53とロータ対向部44との間隙を容易に確保できるようになっている。また、第2突出部53の溶接部位は、フロントフレーム12側のロータ対向部44の軸方向先端部よりも軸方向外側(反メインコア部側)に形成されている。これにより、第2突出部53の溶接作業においてロータ対向部44が邪魔になりにくく、作業性が向上されるとともに、第2突出部53とロータ対向部44との絶縁性をより確実に確保することが可能となっている。なお、第2突出部53の溶接部位を、フロントフレーム12側のロータ対向部44の軸方向先端部よりも軸方向内側(メインコア部31側)に設定してもよく、この場合には、第2突出部53がロータ対向部44よりも軸方向外側に突出しないように構成できるため、ステータ13の軸方向の小型化に寄与できる。
【0048】
[ステータコアの保持構成]
図1に示すように、上記構成のステータ13を保持する各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bは、各フレーム11,12の本体部11a,12aから軸方向に延出する円筒状をなしている。ステータ保持部11b,12bの外径は、ステータ保持部11b,12bのメインコア部31の外径よりも大きく形成されている。また、ステータ保持部11b,12bの内径は、メインコア部31の外径よりも小さく、且つ、磁性板40(積層部41)の外径よりも大きく形成されている。
【0049】
図8に示すように、ステータ保持部11b,12bの先端部(軸方向内側端部)には、外嵌部11d,12dがそれぞれ形成されている。各外嵌部11d,12dは、ステータ保持部11b,12bの内径を大きくすることにより径方向の厚さが薄く形成された部分であり、円環状をなしている。外嵌部11d,12dの内径は、メインコア部31の外径と略等しく形成されており、外嵌部11d,12dの径方向内側には、軸方向と直交する平面状をなす当接面11e,12eがそれぞれ形成されている。
【0050】
ステータコア21において、磁性板40の積層部41の外周側でメインコア部31の外周縁が軸方向両側に露出された部位(露出面31a)が各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bに挟持されている。詳しくは、ステータ保持部11b,12bは、外嵌部11d,12dがメインコア部31の軸方向両端の外周縁にそれぞれ外嵌されるとともに、当接面11e,12eがメインコア部31の軸方向両側の露出面31aにそれぞれ軸方向に当接している。この状態で、各フレーム11,12が前記スルーボルト15によって互いに連結固定されることで、メインコア部31がステータ保持部11b,12bによって軸方向に挟持される。また、ステータ保持部11b,12bの先端部の間からは、ステータコア21のメインコア部31の外周面が外部に露出されている。
【0051】
[ロータ]
図1図2及び図8に示すように、ロータ14は、軸受16,17に軸支された回転軸18と、回転軸18に一体回転可能に固定された円筒状のロータコア61と、ロータコア61の外周面に固設された複数(本実施形態では10個)の界磁磁石62とから構成されている。
【0052】
図8に示すようにロータコア61は、第1及び第2コアシート61a,61bを軸方向に複数積層して構成される。第1コアシート61aは、図2に示すように円環状の円環状部61cを備える。第2コアシート61bは、前記第1コアシート61aと略同形状の円環状部61cの径方向外側面において、径方向外側に突出する位置決め部としての突起部61dを周方向に複数有する。
【0053】
図8に示すように本実施形態のロータコア61は、その軸方向略中央に前記突起部61dを有する第2コアシート61bを複数積層し、その軸方向両側のそれぞれに第1コアシート61aを複数積層して構成される。すなわち、ロータコア61は、軸方向中央側に前記突起部61dが位置する構成とされる。
【0054】
図2に示すように各界磁磁石62は、フェライト磁石よりなり、磁極(N極とS極)が周方向で交互に異なるように配置されている。各界磁磁石62は、周方向において間隙を有して前記ロータコアの外周面に固着された所謂セグメント磁石である。
【0055】
ロータコア61及びロータ14の界磁磁石62の軸方向長さをステータコア21の内周端部の軸方向長さ(即ち、一方の磁性板40のロータ対向部55の先端から他方の磁性板40のロータ対向部44の先端までの長さ)に対して長くなるように設定されている。即ち、界磁磁石62は、ステータコア21のメインコア部31の内周面と各磁性板40のロータ対向部44に対して径方向に対向している。そして、各界磁磁石62は、ロータコア61の軸方向略中央側に設けられた突起部61dと周方向において当接あるいは僅かの隙間を隔てて配置され、周方向への位置ずれ(空転)が抑えられている。
【0056】
図1に示すように、回転軸18の先端部(図1において左側の端部)は、フロントフレーム12を貫通してモータ10の外部に突出している。そして、この回転軸18の先端部には、該回転軸18と一体回転するジョイント63が設けられている。このジョイント63は図示しない外部装置に連結され、その外部装置に回転軸18の回転を伝達する。
【0057】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ステータ13の電機子巻線22への通電により発生した磁界とロータ14の界磁磁石62の磁界とが、メインコア部31の内周面と各磁性板40のロータ対向部44を介して作用し合い、ロータ14が回転する。なお、本実施形態では、磁性板40の板厚T1がコアシート30の板厚T2よりも厚く設定されているため、磁性板40での磁気飽和が生じにくく、磁性板40を介して磁気を取り込みやすくなっている。
【0058】
ここで、各磁性板40のロータ対向部44は、ステータコア21のティース24のロータ14側端部(径方向内側端部)から軸方向に延びるように形成されている。これにより、ステータコア21のロータ14との対向面(ステータコア21の内周面)の軸方向長さを確保して高出力化を図りつつも、メインコア部31の積厚が抑えられるようになっている。そして、メインコア部31の積厚が抑えられることで、メインコア部31の積厚の変動(公差)が少なく抑えられるため、そのメインコア部31を挟む各フレーム11,12の軸方向の間隔の変動が抑えられ、ひいては、モータ10全体の軸方向寸法の変動が抑えられるようになっている。
【0059】
また、磁性板40は、その板厚T1が厚いほどその変動(公差)が大きくなるが、本実施形態のように、各フレーム11,12がメインコア部31のみを挟持して磁性板40とは軸方向に当接しないように構成することで、モータ10全体の軸方向寸法の変動がより抑えられるようになっている。
【0060】
また、ロータ14のロータコア61は、その外周面に固設される界磁磁石62がロータコア61の突起部61dと周方向において当接するように構成される。このため、界磁磁石62の周方向の位置ずれが抑えられる。前記突起部61dは、前記磁性板40と径方向において対向しないように、ロータコア61の軸方向中央部に設けられるため、減磁されやすい部位が軸方向に分散されるため、相対的に耐減磁性を高めることが可能となる。
【0061】
また、電機子巻線22にセグメント導体25を用いた構成では、セグメント導体25を収容するスロットSの数(ティース24の数)が多く、ティース24の周方向幅が狭くなる傾向がある。このため、ティース24におけるロータ14との対向面(径方向内側端面)の面積を広くして出力を向上させるためには、本実施形態のように、ロータ対向部44によってティース24の径方向内側端面を軸方向に延ばす構成が適している。また、本実施形態のティース24は、内周側ほど周方向幅が狭くなる径方向延出部24aと幅広部24bの境界部分で磁気集中しやすい構成であるが、その境界部位に磁性板40の積層部41が重なっているため、磁気集中が緩和されるようになっている。
【0062】
次に、本実施形態の効果を記載する。
(1)磁石の周方向位置決めを行う突起部61dが磁性板40の積層部41と径方向において対向しない位置に形成されるため、前記界磁磁石62の突起部61dと周方向に当接する部位と、界磁磁石62の前記積層部41と径方向に対向する部位とが軸方向において異なる位置となるため、耐減磁性を高めることができる。
【0063】
(2)突起部61dが軸方向中央部に形成されるため、より確実に積層部41と径方向において対向しない位置となるため、耐減磁性をより確実に高めることが可能となる。
(3)ロータコア61及びステータコア21がいずれもコアシート61a,61b,30を軸方向に複数積層して構成されるため、例えば、板状部材から両コア61,21のコアシート61a,61b,30をプレス成形にて打ち抜いて形成する、所謂共取りが可能となる。
【0064】
(4)各フレーム11,12でステータコア21を軸方向に挟持する際に、ステータコア21の外周面が露出されるため、ステータコア21(ステータ13)の熱を外部に放出しやすくできる。
【0065】
(5)磁性板40の板厚T1は、コアシート30の板厚T2よりも厚く設定されるため、磁性板40を介して磁気を取り込みやすくすることができ、その結果、より一層の高出力化に寄与できる。
【0066】
(6)各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bは、メインコア部31の外周縁(露出面31a)を軸方向に直接的に挟むように構成され、磁性板40に対しては軸方向に当接しないように構成される。このため、メインコア部31を挟む各フレーム11,12の軸方向の間隔の変動(公差)を抑えることができ、その結果、モータ10全体の軸方向寸法の変動を抑えることが可能となる。また、本実施形態のように、磁性板40の板厚T1をコアシート30の板厚T2よりも厚くして出力向上を図る場合には、磁性板40の板厚変動が大きくなる。このため、各フレーム11,12が磁性板40とは軸方向に当接しないように構成することで、モータ10全体の軸方向寸法の変動を抑える効果がより顕著となる。
【0067】
(7)電機子巻線22は、ステータコア21に軸方向に沿って形成された複数のスロットSに挿入されるとともに該スロットSから軸方向に突出する第1及び第2突出部52,53を有する複数のセグメント導体25よりなる。そして、セグメント導体25の第1及び第2突出部52,53は、磁性板40のロータ対向部44と径方向に対向するように構成される。これにより、ステータコア21におけるロータ14との対向面を磁性板40のロータ対向部44によって確保して高出力を図りつつも、ステータ13の軸方向への大型化を抑えることができる。また、電機子巻線22がセグメント導体25にて構成されたステータ13は、電機子巻線22の占積率を高く構成できる。その一方でセグメント導体25がスロットS内において径方向に並ぶことから特に径方向に発熱しやすくもなるが、ステータコア21(メインコア部31)の外周面が各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bの間から外部に露出されるため、ステータ13で生じた熱を外部に逃がしやすく好適である。
【0068】
尚、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、位置決め部としての突起部61dが前記磁性板40の積層部41と径方向において対向しない位置として、ロータコア61の軸方向中央部に設ける構成としたが、これに限らない。
【0069】
例えば、図9に示すように、ロータコア61の軸方向中央部に突起部61dを有し、更にロータコア61の軸方向端部に突起部61dを設ける構成を採用してもよい。また、ロータコア61の軸方向端部のみに突起部61dを設ける構成を採用してもよい。ロータコア61の軸方向両端部に突起部61dを設けることで、その突起部61dと界磁磁石62の長手方向両端部(軸方向両端部)とを周方向において当接することができるため、界磁磁石62を安定して保持(位置決め)することができる。
【0070】
・上記実施形態並びに各変形例では、磁性板40の積層部41及びロータ対向部44の両方と、径方向において対向しない位置において突起部61dを設ける構成としたが、少なくとも積層部41と径方向に対向しない位置であれば突起部61dの軸方向位置は変更してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、位置決め部としての突起部61dの形状について具体的に言及していないが、その形状は様々なものを採用することができる。図2に示すように突起部61dを軸方向視で矩形状となるように構成してもよい。
【0072】
また、図12(a)(b)に示すように突起部61dを径方向外側ほど周方向幅が狭くなるように形成してもよい。詳述すると図12に示すように、突起部61dは、ステータ13側である径方向外側ほど周方向幅が狭くなるように、周方向両側に斜面71を有する。この斜面71は、径方向中心O及び突起部61dの周方向中心を通る直線X1に対して対称となる形状である。
【0073】
図12(a)(b)に示すように、界磁磁石62は、その径方向内側であって周方向両側の角部62aが突起部61dの周方向両側の斜面71と略平行な斜面62bを有する。また界磁磁石62は、ロータコア61と円筒状のカバー72とで径方向において挟持されて固定される。
【0074】
上述したように突起部61d並びに界磁磁石62を構成することで、ロータ14の回転に伴って界磁磁石62に慣性力F1が作用した場合、界磁磁石62はその角部62aの斜面62bが突起部61dの斜面71と当接し、慣性力F1が前記斜面71と直交する方向の分力F2と、前記斜面71と平行な方向の分力F3とに分離される。
【0075】
その結果、平行な方向の分力F3においては、主に円筒状のカバー72で受けることとなる。そして、突起部61dには斜面71と直交する方向の分力F2が作用するため、突起部61dに作用する慣性力を軽減でき、突起部61dや界磁磁石62の破損を抑えることができる。
【0076】
また、界磁磁石62には突起部61dの斜面71と面接触する斜面62bを有する角部62aが形成されるため、突起部61dに分力F2が作用する際の応力集中を抑えることが可能となる。
【0077】
このため、接着剤等による接着固定などを行うことなく固定することができる。また、接着剤を併用して界磁磁石62を固定する場合においては、その接着力の補強をすることができる。さらにカバー72によって界磁磁石62の飛散によるステータ13等の損傷を抑えることができる。また、突起部61dをステータ13側に向けて周方向幅が小さくなるように構成した場合において、カバー72によってロータ14の回転に伴う界磁磁石62の慣性力(分力F3)を受けることができるため、より確実に界磁磁石62の空転を抑えることができる。
【0078】
・上記実施形態では、各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bは、メインコア部31の外周縁(露出面31a)を軸方向に直接的に挟み、磁性板40に対しては軸方向に当接しないように構成されたが、これに特に限定されるものではない。例えば図10に示すように、磁性板40の環状部42(積層部41)を介してメインコア部31を軸方向に挟むように構成してもよい。この図10に示すような構成によれば、磁性板40の積層部41をステータ保持部11b,12bに対して軸方向に干渉しないように径方向に小さくする必要がないため、出力の低下を抑えることができる。また、磁性板40の板厚T1をコアシート30の板厚T2よりも厚くして出力向上を図る場合には、磁性板40よりも板厚が薄いコアシート30の枚数を調整することで、モータ10全体の軸方向寸法の変動を抑えることが可能である。
【0079】
・上記実施形態では、各セグメント導体25は、スロットSに挿通された一対の直線部51を繋ぐ第1突出部52側で折り返されるように形成し、第2突出部53側で溶接等により接合するように構成されたが、これに特に限定されるものではない。例えば図11に示すように、一対の直線部51をそれぞれ別体とし、第1突出部52においても溶接等により接合するように構成してもよい。また、セグメント導体25同士の接続は、溶接以外に例えば、バスバー等の別部材を用いた接続構造としてもよい。
【0080】
・上記実施形態では、磁性板40の積層部41の外径をコアシート30の外径よりも小さくすることで、メインコア部31の軸方向端面の外周縁全体に亘って露出面31aを形成し、その露出面31aを各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bで挟むように構成したが、これに特に限定されるものではない。例えば、メインコア部31(コアシート30)の外周面から径方向外側に突出する突出部を形成し、その突出部をステータ保持部11b,12bで挟むように構成してもよい。
【0081】
・上記実施形態では、ロータ対向部44を径方向視で台形形状に形成したが、これ以外に例えば、径方向視で矩形状に形成してもよく、磁気の取り込みが可能な形状であればよい。
【0082】
・上記実施形態では、磁性板40の積層部41は、環状部42とティース構成部43とを有するが、これ以外に例えば、積層部41をティース構成部43のみで構成してもよい。
【0083】
・上記実施形態では、磁性板40はメインコア部31(コアシート30)にかしめ固定されたが、これ以外に例えば、接着や溶接によって固定してもよい。
・上記実施形態では、磁性板40の板厚T1をコアシート30の板厚T2よりも厚く設定したが、これに特に限定されるものではなく、磁性板40の板厚T1をコアシート30の板厚T2に対して等しく、又は薄く設定してもよい。
【0084】
・上記実施形態では、磁性板40をメインコア部31の軸方向両側にそれぞれ設けたが、これに特に限定されるものではなく、磁性板40をメインコア部31の軸方向一方側のみに設けてもよい。
【0085】
・上記実施形態では、ステータコア21のメインコア部31を複数のコアシート30よりなる積層構造としたが、これ以外に例えば、メインコア部31を鋳造等により成形される一体成形品としてもよい。
【0086】
・上記実施形態では、セグメント導体25にて構成される電機子巻線22を用いたが、これ以外に例えば、銅線等をティースに巻回してなる電機子巻線を用いてもよい。
・上記実施形態では、ロータ14の界磁磁石62にフェライト磁石を用いたが、これ以外に例えば、ネオジム磁石等、その他の磁石を用いてもよい。
【0087】
・上記実施形態では、ロータコア61及びロータ14の界磁磁石62の軸方向長さをステータコア21の内周端部の軸方向長さ(即ち、一方の磁性板40のロータ対向部55の先端から他方の磁性板40のロータ対向部44の先端までの長さ)に対して長くなるように構成したが、これに限らない。例えば、ロータコア61及びロータ14の界磁磁石62の軸方向長さを、ステータコア21の内周端部の軸方向長さと略等しくなるように構成してもよい。また、ロータコア61及びロータ14の界磁磁石62の軸方向長さを、ステータコア21の内周端部の軸方向長さに対して若干短く構成してもよい。
【0088】
・上記実施形態では、ロータコア61の軸方向長さより、界磁磁石62の軸方向長さを短くなるように構成したが、これに限らず、界磁磁石62の軸方向長さをロータコア61の軸方向長さより長くしてもよい。また、界磁磁石62の軸方向長さとロータコア61の軸方向長さとを同じとしてもよい。
【0089】
・上記実施形態では、ロータコア61を複数の第1及び第2コアシート61a,61bよりなる積層構造としたが、これ以外に例えば、ロータコア61を鋳造等により成形される一体成形品としてもよい。但し、このような構成であっても位置決め部としての突起部61dを形成する。
【0090】
・上記実施形態では、ロータ14をステータ13の内周側に配置したインナロータ型のモータ10に具体化したが、これに特に限定されるものではなく、ロータをステータの外周側に配置したアウタロータ型のモータに具体化してもよい。
【0091】
・上記実施形態並びに上記各変形例は適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10…モータ、11…リヤフレーム(第1フレーム)、12…フロントフレーム(第2フレーム)、13…ステータ、14…ロータ、18…回転軸、21…ステータコア、22…電機子巻線、25,25x,25y…セグメント導体、30…コアシート、31…メインコア部、40…磁性板、41…積層部、43a…面取り部、44…ロータ対向部、52,53…第1及び第2突出部(突出部)、61…ロータコア、61a…第1コアシート、61b…第2コアシート、61d…位置決め部としての突起部、62…界磁磁石、71…斜面、72…カバー、O…径方向中心、S…スロット、T1,T2…板厚、X1…直線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12