特許第6208598号(P6208598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208598
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   A61F13/494 111
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-37034(P2014-37034)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-159972(P2015-159972A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】松村 貴史
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−10706(JP,A)
【文献】 特開2008−79642(JP,A)
【文献】 特開2009−207660(JP,A)
【文献】 特開2007−229199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15−13/84
A61L 15/16−15−64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介装される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記トップシート側において、前記吸収体の長手方向に沿った両側部に、一対のギャザーシートを備え、
前記ギャザーシートの幅方向外側の端部は、前記吸収体の側方で前記トップシートの上面に固着され、
前記ギャザーシートには、その長手方向に沿って弾性部材が備えられ、
前記ギャザーシートの長手方向の少なくともいずれか一方の端部には、前記トップシートに着脱可能に接着される接着部が形成され、
前記ギャザーシートの前記接着部が形成されていない部分により立体ギャザーが形成され、
前記接着部には、複数の接着部材が長手方向に沿って所定の間隔で配置されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記接着部よりも前記ギャザーシートの長手方向外側には、前記トップシートに固着された固着部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記接着部材の幅方向内側の端部には、前記弾性部材が配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記ギャザーシートの幅方向内側の端部よりも幅方向外側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記複数の接着部材の各々は、識別可能に色分けされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記接着部は、着用者の腹側に位置する腹側部側の端部に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品である紙おむつは、一般に、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シートの間に配置された吸収体と、を備えており、着用時に排泄された尿等の排泄物を液透過性のトップシートを介して吸収体に保持し、液不透過性のバックシートにより、排泄物が紙おむつの外に漏れ出すのを防ぐ構造になっている。
【0003】
また、従来の紙おむつには、横漏れ防止を目的として、ギャザーシートが備えられている。ギャザーシートは、トップシート側において、長手方向に沿った両側部に腹側部から背側部に亘ってそれぞれ備えられ、腹側部及び背側部の長手方向の各端部付近ではトップシートに固着され、それ以外の部分ではトップシートに固着されずに立体ギャザーが形成されている。
この立体ギャザーは、着用者の体型によっては、張力を変更したい場合がある。特に、着用者が痩せ型の場合、立体ギャザーの張力を強くすることが好ましい。
【0004】
立体ギャザーの張力を変更可能なものとして、長手方向の左右両側に立体ギャザー弾性部材が長手方向に沿って配されている紙おむつにおいて、立体ギャザー弾性部材は、他の部材に固定されていない自由部分を有し、自由部分の少なくとも一端部に自由部分の伸張率を調整可能な止着手段を設けたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−333931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の紙おむつは、止着手段を、背側部に設けられた被止着部に止着する位置を調整することで、立体ギャザーの張力を調整する構成であるため、実際に紙おむつを着用者に装着させる際にしか張力を調整することができない。従って、例えば、装着補助者がいつもと異なる場合などに、予め最適な張力に調整した状態で用意しておくことができず、調整の失念や調整ミス等により最適な張力に調整できずに横漏れが発生する虞がある。
【0007】
本発明は、装着前であっても立体ギャザーの張力の調整量を容易に制御することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介装される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記トップシート側において、前記吸収体の長手方向に沿った両側部に、一対のギャザーシートを備え、
前記ギャザーシートの幅方向外側の端部は、前記吸収体の側方で前記トップシートの上面に固着され、
前記ギャザーシートには、その長手方向に沿って弾性部材が備えられ、
前記ギャザーシートの長手方向の少なくともいずれか一方の端部には、前記トップシートに着脱可能に接着される接着部が形成され、
前記ギャザーシートの前記接着部が形成されていない部分により立体ギャザーが形成され、
前記接着部には、複数の接着部材が長手方向に沿って所定の間隔で配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の吸収性物品において、
前記接着部よりも前記ギャザーシートの長手方向外側には、前記トップシートに固着された固着部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の吸収性物品において、
前記接着部材の幅方向内側の端部には、前記弾性部材が配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の吸収性物品において、
前記弾性部材は、前記ギャザーシートの幅方向内側の端部よりも幅方向外側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品において、
前記複数の接着部材の各々は、識別可能に色分けされていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品において、
前記接着部は、着用者の腹側に位置する腹側部側の端部に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、装着前であっても立体ギャザーの張力の調整量を容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態のインナーパッドの展開図である。
図2図1のインナーパッドに備えられたギャザーシートの接着部の拡大図である。
図3図1のIII−III部の一例を示す断面図である。
図4図1のIV−IV部の一例を示す断面図である。
図5図1のインナーパッドと併せて使用される紙おむつの展開図である。
図6図5の紙おむつを組み立てた状態を示す斜視図である。
図7図2の状態から接着部をトップシートから剥離した様子の一例を示す図である。
図8】第2実施形態の紙おむつの展開図である。
図9図8の紙おむつに備えられたギャザーシートの接着部の拡大図である。
図10】変形例1のインナーパッドに備えられたギャザーシートの接着部の拡大図である。
図11】変形例2のインナーパッドに備えられたギャザーシートの接着部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る吸収性物品は、例えば、夜用又は長時間用の尿取りパッドであり、おむつやおむつカバー、パンツなどの人体に装着される外装体と併せて着脱・交換自在に使用される。以下の説明においては、吸収性物品としてインナーパッド200を、外装体として紙おむつ100(図5及び図6参照)を例示して説明する。
なお、以下の説明では、装着時に人体(着用者)の背側から股下を通って腹側に亘る方向を長手方向Xとし、長手方向Xに略直交する一の方向を幅方向Yとする。
【0018】
インナーパッド200は、図1図4に示すように、着用者の身体との接触面側(表面側)に設けられる透液性の不織布からなるトップシート201と、装着時に身体との接触面と反対側の面側(裏面側)に設けられる不透液性のバックシート202と、トップシート201とバックシート202との間に介装される吸収体203と、トップシート201側の吸収体203の両側部に、インナーパッド200の長手方向Xに沿って備えられるギャザーシート204、204と、を備えている。
【0019】
また、インナーパッド200は、人体の股部を腹側から背側にかけて覆うように、長手方向Xの一方の端部に腹側部205が形成され、他方の端部に背側部206が形成されている。さらに、腹側部205と背側部206との間に、着用者の股間部を被覆する股下部207が形成され、股下部207の幅方向Yの両縁部には、装着時に着用者の脚周りを囲む一対の脚周り部208、208が形成されている。なお、腹側部205及び背側部206の位置関係は便宜上定められたものであり、腹側部205を背側部206とし、背側部206を腹側部205として使用することも可能である。
【0020】
トップシート201は、尿などの体液を速やかに透過させる透液性を有する素材から形成され、体液を受けて、吸収体203まで輸送する機能を有する。
トップシート201は、不織布が好適に用いられ、具体的には、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を繊維素材として、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって加工したものが用いられる。
【0021】
バックシート202は、吸収体203を固定する外装体を構成している。また、バックシート202は、不透液性を有する素材から形成され、体液などのインナーパッド200外部への染み出し、漏れ出しを防ぐ機能を有する。
バックシート202は、例えば、ポリエチレンフィルムからなるシート材であって、ムレ防止の観点から透湿性を有するシート材であることが好ましい。
なお、バックシート202の外側にポリエチレンやポリプロピレン等の不織布を貼り合わせることとしても良く、この場合はインナーパッド200の外装が布のような風合いになり、肌触りがよくなる。
【0022】
吸収体203は、腹側部205の所定位置から股下部207を通って背側部206の所定位置に亘るように配設されている。また、吸収体203は、例えば、当該インナーパッド200の形状に対応させるように、股下部207側が腹側部205側及び背側部206側に対して幅狭に形成されている。
この吸収体203は、インナーパッド200の使用時に体液としての尿等の水様成分を吸収するものである。具体的には、吸収体203は、綿やパルプ等の吸収性素材や、繊維或いはフィルム等のシート状基材と高吸収性ポリマーのような高吸水性樹脂とが組み合わされて形成された吸収体コアが、透液性のクレープ紙、不織布、孔開きシート等の被覆部材により覆われて構成されている。
高吸水性樹脂としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸およびその塩類、アクリル酸塩重合体架橋物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、ポリオキシエチレン架橋物、カルボキシメチルセルロース架橋物、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド等の水膨欄性ポリマーを部分架橋したもの、あるいはイソブチレンとマレイン酸との共重合体等が好適に用いられる。
【0023】
ギャザーシート204は、トップシート201側において、吸収体203の長手方向Xに沿った両側部に、腹側部205から背側部206に亘ってそれぞれ備えられている。
ギャザーシート204の幅方向Y外側の端部は、吸収体203の側方でバックシート202及びトップシート201の上面に固着されている。また、ギャザーシート204の幅方向Y内側の端部側には、その長手方向Xに沿って複数の弾性部材(例えば、糸ゴム等)204aが略平行に備えられ(図2図4参照)、ギャザーシート204の腹側部205側の端部及び背側部206側の端部付近ではトップシート201に着脱可能に接着されているものの、それ以外の部分ではトップシート201に接着されず、断面略「く」字状及び逆「く」字状に立ち上がって着用者の体型に合わせて伸縮自在に変形可能な立体ギャザー241が形成されている。以下、ギャザーシート204のトップシート201に着脱可能に接着される部分を接着部242と称する。なお、弾性部材204aは、必ずしも複数である必要はなく、1本のみであってもよい。
ギャザーシート204の接着部242は、図2図4に示すように、複数のメカニカルテープ(接着部材)243が長手方向Xに沿って所定の間隔で配置され、この複数のメカニカルテープ243によりトップシート201に接着可能となっている。ここで、所定の間隔とは、図2に示したような等間隔の場合に限定されず、例えば、長手方向Xの端部に向かうにつれて間隔が幅広となる場合などの異なる間隔の場合をも含む。なお、初期状態では、図2に示すように、弾性部材204aを長手方向Xに広げた状態、即ち、複数のメカニカルテープ243が所定の間隔を保った状態で接着されている。複数のメカニカルテープ243は、例えば、幅方向Yに長い略矩形状に形成され、面ファスナのオス材の係止要素である、鉤状、きのこ状、錨状等の多数の突起が形成されたフック材が設けられている。複数のメカニカルテープ243の幅方向Y内側の端部は、図2に示すように、複数の弾性部材204aのうち最も幅方向Y内側に配置された弾性部材204aの位置となるように配置されることが最も好ましい。なお、複数のメカニカルテープ243の幅方向Y内側の端部が、最も幅方向Y内側に配置された弾性部材204aよりも幅方向Y内側に配置されることもある。
また、接着部242よりもギャザーシート204の長手方向X外側の各端部には、図2に示すように、トップシート201に固着された固着部244が形成されていることが好ましい。
【0024】
紙おむつ100は、図5及び図6に示すように、着用者の身体との接触面側に設けられる透液性の不織布からなるトップシート1と、装着時に身体との接触面と反対側の外部側に設けられる不透液性のバックシート2と、トップシート1とバックシート2との間に介装される吸収体3と、トップシート1側の吸収体3の両側部に、紙おむつ100の長手方向Xに沿って備えられるギャザーシート4、4と、を備えている。
【0025】
また、紙おむつ100の長手方向Xの一方の端部(図5における下端部)には、着用者の腹側に配置されて腹周りを被覆する腹側部5が形成され、他方の端部(図5における上端部)には、着用者の背側に配置されて背周りを被覆する背側部6が形成され、腹側部5と背側部6との間に、着用者の股間部を被覆する股下部7が形成されている。
【0026】
なお、トップシート1、バックシート2及び吸収体3は、トップシート201、バックシート202及び吸収体203と同様の構成であるので、その詳細な説明を省略する。
ギャザーシート4は、トップシート1側において、吸収体3の長手方向Xに沿った両側部に、腹側部5から背側部6に亘ってそれぞれ備えられている。
ギャザーシート4の幅方向Y外側の部分は、吸収体3の側方でバックシート2及びトップシート1の上面に固着されている。また、ギャザーシート4の幅方向Y内側の端部側には、その長手方向Xに沿って複数の弾性部材(例えば、糸ゴム等)4aが略平行に備えられ(図9参照)、ギャザーシート4の腹側部5側の端部及び背側部6側の端部付近ではトップシート1に固着されているものの、それ以外の部分ではトップシート1に固着されず、断面略「く」字状及び逆「く」字状に立ち上がって着用者の体型に合わせて伸縮自在に変形可能な立体ギャザー41が形成されている。
【0027】
腹側部5は、股下部7よりも幅方向Y外側に突出するように形成されている。また、腹側部5の長手方向X側の端部の外面(着用者の身体と反対側の面)側には、図6に示すように、止着テープ20を係止する被止着部51が設けられている。
被止着部51は、腹側部5の長手方向X側の端部の外面(着用者の身体と反対側の面)側に設けられ、止着テープ20に設けられた止着部21を係止するためのメス材の係止要素を構成している。
具体的には、被止着部51は、例えば、係止用不織布により構成され、基材シートに止着部21のフック材と機械的に係合するループ状の繊維であるループ材が配置されて構成されている。なお、係止用不織布としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなど、広く知られた汎用性の高い可塑性素材からなる単組成の素材若しくは複合組成の素材を用いることができる。
なお、被止着部51とバックシート2は、一体として同様の素材から構成しても良いし、被止着部51のみをバックシート2と異なる素材から構成しても良い。
【0028】
背側部6は、股下部7よりも幅方向Y外側に突出するように形成されている。背側部6の外面(着用者の身体と反対側の面)側の幅方向Yの両端部の各々には、止着テープ20が設けられている。
また、背側部6には、例えば、糸ゴム等の弾性部材(図示略)が幅方向Yに沿って配設され、この弾性部材により平面ギャザー(背モレギャザー)が形成されている。これにより、紙おむつ100の使用の際に、着用者の胴周りにて、当該紙おむつ100が伸縮自在となるように構成されている。
【0029】
股下部7の幅方向Yの両縁部の各々には、腹側部5の幅方向Yの各端部から股下部7を通り背側部6の幅方向Yの各端部に亘って、紙おむつ100の着用者の脚周りを囲む一対の脚周り部8、8が形成されている。
一対の脚周り部8、8には、例えば、糸ゴム等の複数の弾性部材8a、…が当該脚周り部8の湾曲形状に合わせてそれぞれ設けられている。そして、弾性部材8aにより平面ギャザーが形成され、着用者の脚周りに伸縮自在にフィットし、横漏れを防止するようになっている。
【0030】
止着テープ20は、着用者の腹周りに沿うように配設されて、腹側部5の長手方向X側の端部の外面(着用者の身体と反対側の面)側に設けられた被止着部51に止着されることで、当該紙おむつ100が着用者に装着された状態となる(図6参照)。
止着テープ20は、図5に示すように、背側部6の幅方向Y側の両側端部の各々に幅方向Y外側に延出するように、各端部に2つずつ配設されている。なお、止着テープ20の数に特に制限はなく、例えば、各端部に1つずつ配設されていてもよい。
止着テープ20は、例えば、不織布等により形成され、当該止着テープ20の自由端部は、幅方向Yに突出した凸形状に形成されている。そして、止着テープ20の凸部分の内面、即ち、背側部6の外面側の面に、例えば、所定の接着剤により止着部21が接着固定されている。
【0031】
止着部21は、例えば、略矩形状に形成され、面ファスナのオス材の係止要素である、鉤状、きのこ状、錨状等の多数の突起が形成されたフック材が設けられている。そして、止着部21は、バックシート2の外面(着用者の身体と反対側の面)における腹側部5の所定位置に形成された被止着部51に止着される(図6参照)。
従って、止着テープ20は、止着部21を介して、被止着部51に着脱自在に係止可能となっている。
【0032】
次に、第1実施形態に係るインナーパッド200の着用者の身体に対する装着方法について説明する。なお、ここでは、痩せ型の着用者にインナーパッド200を装着する場合を想定して説明する。
まず、インナーパッド200のバックシート202側を、紙おむつ100のトップシート1側の所定の位置に固着させる。
ここで、痩せ型の着用者にインナーパッド200を装着する場合、立体ギャザー241の張力を強くして、横漏れを防止する必要がある。
従って、まず、ギャザーシート204の接着部242をトップシート201から剥離する。剥離された接着部242は、複数の弾性部材204aにより長手方向Xに収縮する(図7参照)。そして、収縮した接着部242を再度トップシート201に接着する。これにより、立体ギャザー241が接着部242側に引っ張られて張力が強くなる。なお、ここでは、接着部242に配置されたメカニカルテープ243が全て剥離された場合を例示して説明したが、メカニカルテープ243を長手方向X内側から剥離する数により、立体ギャザー241の張力の調整量を制御することもできる。具体的には、メカニカルテープ243を長手方向X内側から剥離する数が多ければ多いほど、立体ギャザー241の張力を強くすることができる。
次に、インナーパッド200が固着された紙おむつ100の背側部6を着用者の身体の背側に当接させるようにして、当該紙おむつ100を着用者の身体の下側に載置する。
次に、股下部7及び腹側部5の中心を着用者の身体の中心に合わせながら当該腹側部5を着用者の身体の手前側に配置させる。
最後に、止着テープ20を着用者の身体の腹周りに沿って配設し、止着部21を腹側部5の長手方向X側の端部の外面側に設けられた被止着部51に止着させる。これにより、立体ギャザー241の張力が強くなった状態のインナーパッド200を着用者の身体に装着することができる。
なお、ここでは、インナーパッド200の着用前に立体ギャザー241の張力を強くする場合を例示して説明したが、接着部242をトップシート201から着脱可能な状態、即ち、止着テープ20による止着状態から解放されている状態であればいつでも張力を調整できるので、インナーパッド200の着用時又は着用後に張力を強くすることも可能である。
【0033】
以上のように、第1実施形態に係るインナーパッド200は、トップシート201側において、吸収体203の長手方向Xに沿った両側部に、一対のギャザーシート204を備える。また、ギャザーシート204の幅方向Y外側の端部は、吸収体203の側方でトップシート201の上面に固着され、ギャザーシート204には、その長手方向Xに沿って弾性部材204aが備えられている。さらに、ギャザーシート204の長手方向Xの少なくともいずれか一方の端部には、トップシート201に着脱可能に接着される接着部242が形成され、ギャザーシート204の接着部242が形成されていない部分により立体ギャザー241が形成されている。そして、接着部242には、複数のメカニカルテープ243(接着部材)が長手方向Xに沿って所定の間隔で配置されている。
従って、第1実施形態に係るインナーパッド200によれば、実際に着用者に装着させるときだけでなく、着用者に装着させる前であっても立体ギャザー241の張力を調整することができるので、装着前であっても立体ギャザー241の張力の調整量を容易に制御することができる。また、立体ギャザー241の張力を強くすることができるので、立体ギャザー241を立ち易くすることができる。
【0034】
また、第1実施形態に係るインナーパッド200によれば、接着部242よりもギャザーシート204の長手方向X外側には、トップシート201に固着された固着部244が形成されているので、接着部242をトップシート201から剥離した状態でも、ギャザーシート204の長手方向X外側の各端部が長手方向X内側に引っ張られることがなく、ギャザーシート204の位置ずれやしわの形成を抑制することができる。
【0035】
また、第1実施形態に係るインナーパッド200によれば、メカニカルテープ243の幅方向Y内側の端部は、弾性部材204aのうち最も幅方向Y内側に配置された弾性部材204aの位置となるように配置されるので、初期状態において接着部242を、弾性部材204aを伸張させた状態でトップシート201に接着することができる。従って、接着部242をトップシート201から剥離した際に、弾性部材204aの収縮量を十分に確保することができるので、立体ギャザー241の張力を効率よく調整することができる。
【0036】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る吸収性物品は、止着テープ20を所定位置に止着することで着用者に装着され、装着状態にて着用者の股下部7を腹側から背側にかけて覆うように形成される止着式の紙おむつ100Aである。
なお、紙おむつ100Aは、第1実施形態の紙おむつ100と比べ、ギャザーシート4Aの構造のみが異なっている。従って、説明の簡略化のため、第1実施形態の紙おむつ100と同様の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0037】
紙おむつ100Aのギャザーシート4Aは、図8及び図9に示すように、第1実施形態に係るインナーパッド200のギャザーシート204と同様の構成を備えている。
即ち、ギャザーシート4Aの幅方向Y内側の端部側には、その長手方向Xに沿って複数の弾性部材(例えば、糸ゴム等)4aが略平行に備えられ、ギャザーシート4Aの腹側部5側の端部及び背側部6側の端部付近ではトップシート1に着脱可能に接着されているものの、それ以外の部分ではトップシート1に接着されず、断面略「く」字状及び逆「く」字状に立ち上がって着用者の体型に合わせて伸縮自在に変形可能な立体ギャザー41が形成されている。以下、ギャザーシート4Aのトップシート1に着脱可能に接着される部分を接着部42と称する。
ギャザーシート4Aの接着部42は、複数のメカニカルテープ(接着部材)43が長手方向Xに沿って所定の間隔で配置され、この複数のメカニカルテープ43によりトップシート1に接着可能となっている。複数のメカニカルテープ43の幅方向Y内側の端部は、図9に示すように、複数の弾性部材4aのうち最も幅方向Y内側に配置された弾性部材4aの位置となるように配置されることが最も好ましいが、最も幅方向Y内側に配置された弾性部材204aよりも幅方向Y内側に配置されることもある。
また、接着部42よりもギャザーシート4Aの長手方向X外側の各端部には、図9に示すように、トップシート1に固着された固着部44が形成されていることが好ましい。
【0038】
第2実施形態に係る紙おむつ100Aの装着方法は、インナーパッド200を紙おむつ100の所定の位置に固着させる動作が不要である点を除き、第1実施形態に係る装着方法と同様であるので、説明を省略する。
以上のように、第2実施形態に係る紙おむつ100Aによれば、第1実施形態に係るインナーパッド200と同様の効果を得ることができる。
なお、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせることも可能である。
【0039】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0040】
(変形例1)
例えば、図10に示す例では、第1実施形態のギャザーシート204と比べ、複数の弾性部材204a及び複数のメカニカルテープ243の配置、並びに複数のメカニカルテープ243の大きさが異なっている。なお、説明の簡略化のため、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
具体的には、変形例1に係るギャザーシート204Aの接着部242Aに備えられた複数の弾性部材204bは、第1実施形態の複数の弾性部材204aよりも、即ち、幅方向Y内側の端部よりも、ギャザーシート204Aの幅方向Y外側に配置されている。また、変形例1に係るギャザーシート204Aの接着部242Aに備えられた複数のメカニカルテープ243Aの幅方向Y内側の端部は、複数の弾性部材204bのうち最も幅方向Y内側に配置された弾性部材204bの位置となるように配置される。即ち、メカニカルテープ243Aの幅方向Yの長さは、第1実施形態のメカニカルテープ243の幅方向Yの長さよりも短くなるように形成されている。
なお、変形例1を、第2実施形態に係る紙おむつ100Aのギャザーシート4Aに適用することも当然に可能である。
【0041】
以上のように、変形例1に係るインナーパッド200によれば、弾性部材204b及び複数のメカニカルテープ243Aは、ギャザーシート204Aの幅方向Y内側の端部よりも幅方向Y外側に配置されているので、メカニカルテープ243Aが幅方向Y内側の端部からはみ出すことがなくなり、着用者の肌に接触することによる不快感を防止することができる。また、ギャザーシート204Aの幅方向Y内側の端部をメカニカルテープ243A側に折り返すことで、より確実にメカニカルテープ243Aのはみ出しを防止することができる。
【0042】
(変形例2)
また、図11に示す例では、第1実施形態のギャザーシート204と比べ、複数のメカニカルテープ243の各々が識別可能に形成されている点が異なっている。なお、説明の簡略化のため、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
具体的には、変形例2に係るギャザーシート204Bの接着部242Bに備えられた複数のメカニカルテープ243Bの各々は、識別可能に色分けされている。
なお、変形例2を、第2実施形態に係る紙おむつ100Aのギャザーシート4Aに適用することも当然に可能である。
【0043】
以上のように、変形例2に係るインナーパッド200によれば、複数のメカニカルテープ243Bの各々は、識別可能に色分けされているので、メカニカルテープ243を長手方向X内側から剥離する数で立体ギャザー241のテンションを微調整する際に、どの位置まで剥離するかを視覚的に認識し易くなり、容易に微調整を行うことができる。
【0044】
(その他の変形例)
また、上記第1実施形態では、ギャザーシート204の接着部242が、ギャザーシート204の長手方向X側の両端部、即ち、ギャザーシート204の腹側部205側の端部及び背側部206側の端部に形成されているが、これに限定されるものではない。即ち、ギャザーシート204の接着部242は、ギャザーシート204の長手方向Xの少なくともいずれか一方の端部に形成されていればよく、この場合、腹側部205側の端部に形成されることがより好ましい。接着部242を腹側部205側の端部に形成することで、インナーパッド200の着用後であっても、止着テープ20による止着状態を解放するだけで、容易に接着部242における調整作業を行うことができる。
【0045】
また、上記第1実施形態では、複数のメカニカルテープ243に関し、全て同一の接着力のものを使用しているが、これに限定されるものではない。例えば、複数のメカニカルテープ243の接着力を各々異ならせるようにしてもよい。この場合、長手方向X内側の端部に向かうにつれて接着力を弱くすることが好ましい。
これにより、長手方向X内側の端部側に配置されたメカニカルテープ243ほど剥離し易くなるので、メカニカルテープ243を長手方向X内側から剥離する数で立体ギャザー241のテンションを微調整する際に、容易に剥離作業を行うことができる。
【0046】
また、上記第1実施形態では、メカニカルテープ243の幅方向Y内側の端部を、複数の弾性部材204aのうち最も幅方向Y内側に配置された弾性部材204aの位置となるように配置しているが、これに限定されるものではなく、例えば、メカニカルテープ243の幅方向Y内側の端部を、複数の弾性部材204aよりも幅方向Y外側に配置することも可能である。
また、上記第1実施形態では、メカニカルテープ243の形状として、幅方向Yに長い略矩形状のものを例示して説明しているが、これに限定されるものではない。即ち、メカニカルテープ243の形状は、長手方向Xに沿って間欠的に配置可能であればいかなる形状であってもよく、例えば、円形、楕円形、方形、方形の角を丸めた形状などの形状とすることもできる。
なお、以上の変形例は全て、第2実施形態に係る紙おむつ100Aのギャザーシート4Aに適用することも可能である。
【0047】
また、上記第1及び第2実施形態では、止着テープ20を先細りの凸形状に形成するようにしたが、当該止着テープ20の形状は一例であってこれに限られるものではなく、適宜任意に変更可能である。
【0048】
その他、インナーパッド200及び紙おむつ100、100Aの細部構成に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0049】
200 インナーパッド(吸収性物品)
201 トップシート
202 バックシート
203 吸収体
204、204A、204B ギャザーシート
204a、204b 弾性部材
241 立体ギャザー
242、242A、242B 接着部
243、243A、243B メカニカルテープ(接着部材)
244 固着部
205 腹側部
100 紙おむつ
100A 紙おむつ(吸収性物品)
1 トップシート
2 バックシート
3 吸収体
4、4A ギャザーシート
4a 弾性部材
41 立体ギャザー
42 接着部
43 メカニカルテープ(接着部材)
44 固着部
5 腹側部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11