【実施例】
【0078】
次に、本発明化合物またはその製薬上許容される塩の製造方法を実施例によって具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
本製法に記載はなくとも、必要に応じて官能基に保護基を導入し、後工程で脱保護を行う;官能基を前駆体として各工程に処し、しかるべき段階で所望の官能基に変換する;各製法および工程の順序を入れ替える等の工夫により効率のよい製造を実施してもよい。
また、各工程において、反応後の処理は、通常行われる方法で行えばよく、単離精製は、必要に応じて、結晶化、再結晶、蒸留、分液、シリカゲルクロマトグラフィー、分取HPLC等の慣用される方法を適宜選択し、また組み合わせて行えばよい。全ての試薬および溶媒は、市販用の品質を備えており、精製することなく使用した。
【0079】
百分率%は重量%を示す。その他の本文中で用いられている略号は下記の意味を示す。
s:シングレット
d:ダブレット
t:トリプレット
q:カルテット
m:マルチプレット
br:ブロード
dd:ダブルダブレット
td:トリプルダブレット
ddd:ダブルダブルダブレット
J:カップリング定数
CDCl
3:重クロロホルム
DMSO−D
6:重ジメチルスルホキシド
1H NMR:プロトン核磁気共鳴
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
DPPA:ジフェニルリン酸アジド
1H−NMRスペクトルはCDCl
3またはDMSO−D
6中、テトラメチルシランを内部標準として測定し、全δ値をppmで示した。
【0080】
(10mM リン酸塩緩衝液(pH2.0))
リン酸二水素ナトウム(3.60g)を水(3000ml)に溶解し、リン酸を用いてpHを2.0にすることで、標題緩衝液を得た。
【0081】
HPLC分析条件
分析条件1
測定機器:HPLCシステム 島津製作所 高速液体クロマトグラフ Prominence
カラム:ダイセル CHIRALCEL OD−3R 4.6mmφ×150mm
カラム温度:40℃
移動相:(A液)10mM リン酸塩緩衝液(pH2.0)、(B液)アセトニトリル
移動相の組成(A液:B液)を50:50から20:80まで20分間かけて直線的に変化させ、その後、20:80で5分間保持した。
流速:0.5ml/min
検出:UV(220nm)
【0082】
分析条件2
測定機器:HPLCシステム 島津製作所 高速液体クロマトグラフ Prominence
カラム:ダイセル CHIRALCEL OJ−RH 4.6mmφ×150mm
カラム温度:40℃
移動相:(A液)10mM リン酸塩緩衝液(pH2.0)、(B液)アセトニトリル
移動相の組成(A液:B液)を70:30から40:60まで20分間かけて直線的に変化させ、その後、40:60で10分間保持した。
流速:0.5ml/min
検出:UV(220nm)
【0083】
分析条件3
測定機器:HPLCシステム 島津製作所 高速液体クロマトグラフ Prominence
カラム:ダイセル CHIRALPAK AD−3R 4.6mmφ×150mm
カラム温度:40℃
移動相:(A液)10mM リン酸塩緩衝液(pH2.0)、(B液)アセトニトリル
移動相の組成(A液:B液)を50:50から20:80まで20分間かけて直線的に変化させ、その後、20:80で5分間保持した。
流速:0.5ml/min
検出:UV(220nm)
【0084】
実施例1
2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロパンアミド(化合物(2))の合成
【0085】
工程1
2’−クロロ−4’−メトキシビフェニル−2−カルボン酸エチル
【0086】
【化10】
【0087】
アルゴン雰囲気下、1−ブロモ−2−クロロ−4−メトキシベンゼン(44.3g)をトルエン(220ml)に溶解し、2−(4,4,5,5−テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)安息香酸エチル(60.8g)、水(132ml)、炭酸水素ナトリウム(33.6g)およびジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(2.8g)を加えた後、油浴温度120℃で7時間撹拌した。反応混合物に2−(4,4,5,5−テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)安息香酸エチル(5.2g)を追加し、さらに2時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、トルエン(100ml)および水(200ml)を加え、一晩撹拌した。反応混合物に活性炭(3g)を加え、さらに1時間撹拌した。不溶物をセライトでろ去し、ろ過物をトルエン(100ml)および水(200ml)で洗浄した。得られたろ液を合わせて分層した。得られた有機層を水(100ml)で洗浄した後、溶媒を留去して、標題化合物(67.7g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 7.88-7.86 (1H, m), 7.63 (1H, td, J = 7.6, 1.4 Hz), 7.51 (1H, td, J = 7.6, 1.4 Hz), 7.27 (1H, dd, J = 7.6, 0.9 Hz), 7.18 (1H, d, J =8.6 Hz), 7.06 (1H, d, J = 2.6 Hz), 6.95 (1H, dd, J = 8.6, 2.6 Hz), 4.01 (2H, m), 3.80 (3H, s), 0.96 (3H, t, J = 7.1 Hz).
【0088】
工程2
2’−クロロ−4’−メトキシビフェニル−2−カルボン酸
【0089】
【化11】
【0090】
2’−クロロ−4’−メトキシビフェニル−2−カルボン酸エチル(67.7g)をエタノール(100ml)に溶解し、4N水酸化ナトリウム水溶液(100ml)を加え、油浴温度110℃で4.5時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、水(200ml)およびトルエン(100ml)を加えて一晩撹拌した。反応混合物に活性炭(3.6g)を加え、さらに1時間撹拌した。不溶物をセライトろ去し、ろ過物をトルエン(30ml)および水(300ml)で洗浄した。得られたろ液を合わせて分層した。得られた水層をトルエン(100ml)で洗浄した後、水層に濃塩酸(40ml)を加えて酸性にし、室温で1時間撹拌した。析出した固体をろ取した。得られた固体を3時間風乾した後、60℃で一晩減圧乾燥して、標題化合物(50.2g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 12.57 (1H, s), 7.90-7.88 (1H, m), 7.60 (1H, td, J = 7.6, 1.3 Hz), 7.49 (1H, td, J = 7.6, 1.3 Hz), 7.24 (1H, dd, J = 7.6, 1.0 Hz), 7.19 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.06 (1H, d, J = 2.4 Hz), 6.95 (1H, dd, J = 8.5, 2.4 Hz), 3.81 (3H, s).
【0091】
工程3
4−クロロ−2−メトキシ−9H−フルオレン−9−オン
【0092】
【化12】
【0093】
アルゴン雰囲気下、2’−クロロ−4’−メトキシビフェニル−2−カルボン酸(65.4g)にEaton試薬(五酸化りん−メタンスルホン酸(重量比1:10)溶液)(330ml)を加え、油浴温度100℃で1時間撹拌した。反応混合物を氷冷し、水(650ml)をゆっくり滴下した後、室温で1時間撹拌した。析出した固体をろ取し、水(500ml)で洗浄した。得られた固体を一晩風乾して、標題化合物を(92.0g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 8.01 (1H, d, J = 7.4 Hz), 7.64-7.60 (2H, m), 7.36 (1H, td, J = 7.4, 0.9 Hz), 7.17 (2H, dd, J = 8.4, 2.3 Hz), 3.85 (3H, s).
【0094】
工程4
4−クロロ−2−ヒドロキシ−9H−フルオレン−9−オン
【0095】
【化13】
【0096】
アルゴン雰囲気下、4−クロロ−2−メトキシ−9H−フルオレン−9−オン(92.0g)にN−メチルピロリドン(120ml)およびピリジン塩酸塩(144g)を加えた。反応混合物をディーン・スターク装置で水を留去しながら、油浴温度200℃で3時間撹拌した。反応混合物を90℃まで冷却した後、水(600ml)を滴下し、室温で2時間撹拌した。析出した固体をろ取し、ろ過物を水(400ml)で洗浄した。得られた固体を3日間風乾後、ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒(ヘキサン:酢酸エチル 1:1、300ml)を加え室温で1時間撹拌した。固体をろ取し、ろ過物をヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒(ヘキサン:酢酸エチル=1:1、500ml)で洗浄した。得られた固体を50℃で3時間減圧乾燥して、標題化合物(48.6g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 10.56 (1H, s), 7.96 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.61-7.57 (2H, m), 7.32 (1H, td, J = 7.4, 0.9 Hz), 6.97 (1H, d, J = 2.2 Hz), 6.94 (1H, d, J = 2.2 Hz).
【0097】
工程5
4−(4−クロロ−9−オキソ−9H−フルオレン−2−イルオキシ)酪酸エチル
【0098】
【化14】
【0099】
4−クロロ−2−ヒドロキシ−9H−フルオレン−9−オン(48.6g)を、N,N−ジメチルホルムアミド(150ml)に溶解し、炭酸カリウム(58.3g)および4−ブロモ酪酸エチル(33.5ml)を加え、60℃で2時間撹拌した。反応混合物を40℃まで冷却し、トルエン(300ml)および水(300ml)を加え、分層した。得られた水層をトルエン(100ml)で再抽出した。得られた有機層を合わせて、水(100ml)で2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムおよび活性炭(2.5g)を加え、室温で5分間撹拌した。不溶物をセライトろ去し、ろ液の溶媒を留去した。得られた残渣にヘキサン(220ml)を加え、50℃で10分間、室温で1時間撹拌した。析出した固体をろ取し、ろ過物をヘキサンで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥して、標題化合物(66.9g)を得た。また、得られたろ液は溶媒を留去し、残渣に酢酸エチル(5ml)およびヘキサン(20ml)を加えて、室温で1時間撹拌した。析出した固体をろ取し、ろ過物をヘキサンで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥して、標題化合物(2.5g)をさらに得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 8.01 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.65-7.61 (2H, m), 7.37 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.17-7.14 (2H, m), 4.13-4.05 (4H, m), 2.47 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.02-1.95 (2H, m), 1.19 (3H, td, J = 7.2, 0.7 Hz).
【0100】
工程6
4−[(9R)−4−クロロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2−イルオキシ]酪酸エチル
【0101】
【化15】
【0102】
アルゴン雰囲気下、4−(4−クロロ−9−オキソ−9H−フルオレン−2−イルオキシ)酪酸エチル(69.4g)をTHF(700ml)に溶解し、N−(4−tert−ブチルベンジル)シンコニジウム 4−メトキシフェノキシド(6.4g)を加えた。反応混合物に−16℃でトリメチル(トリフルオロメチル)シラン(52.0ml)のTHF(140ml)溶液を滴下し、同温で15分間撹拌した。反応混合液に酢酸(23.0ml)および1Mテトラブチルアンモニウムフルオリド/THF溶液(222ml)を順次加えた後、室温で1時間撹拌した。反応混合液の溶媒を留去し、得られた残渣にトルエン(500ml)および飽和重曹水(200ml)を加え、分層した。得られた有機層を飽和重曹水(150ml)で2回、1N水酸化ナトリウム水溶液(100ml)、水(100ml)、1N塩酸(100ml)、水(100ml)、飽和食塩水(100ml)で順次洗浄した。得られた有機層に無水硫酸マグネシウムおよびシリカゲル(150g)を加え、10分間撹拌した。不溶物をろ去し、ろ過物をトルエン(300ml)および酢酸エチル(800ml)で順次洗浄した。得られたろ液とトルエン洗浄液を合わせて溶媒を留去し、標題化合物(72.1g)を得た。また、酢酸エチル洗浄液の溶媒を留去し、得られた残渣にシリカゲル(40g)ならびに、ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒(酢酸エチル:ヘキサン 2:1、300ml)を加え、室温で撹拌した。不溶物をろ去し、ろ過物をヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒(酢酸エチル:ヘキサン=2:1、300ml)で洗浄した。得られたろ液の溶媒を留去して標題化合物(20.3g)をさらに得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 8.14 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.66 (1H, d, J = 7.5 Hz),7.53 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.42-7.38 (2H, m), 7.14 (2H, s), 4.11-4.05 (4H, m), 2.47 (2H, t, J = 7.5 Hz), 2.03-1.96 (2H, m), 1.19 (3H, td, J = 7.1, 0.8 Hz).
【0103】
(絶対立体配置について)
後述する工程10において4−クロロ−2−メチル−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−9−オールの絶対立体配置を同定したことにより、本工程で得られた標題化合物は(R)体であることが確認された。光学純度は52.9%e.e.であった。
光学純度は、HPLC分析条件1にて決定した。(S)体の保持時間19.6分、(R)体の保持時間23.0分。
【0104】
工程7
4−[(9R)−4−クロロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2−イルオキシ]酪酸
【0105】
【化16】
【0106】
4−[(9R)−4−クロロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2−イルオキシ]酪酸エチル(92.2g)をエタノール(100ml)に溶解し、4N水酸化ナトリウム水溶液(100ml)を加え、80℃で一晩撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、水(200ml)を加え、トルエン(100ml)で2回洗浄した。得られた水層を濃塩酸(40ml)で中和し、酢酸エチル(300ml)で2回抽出した。得られた酢酸エチル抽出液を水(100ml)で2回、飽和食塩水(100ml)で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムおよび活性炭(4.2g)を加え、室温で10分間撹拌した。不溶物をろ去し、ろ液の溶媒を留去した。得られた残渣にクロロホルム(80ml)を加え、50℃に加熱した後、ヘキサン(400ml)を滴下し、同温で30分間、室温で2時間撹拌した。析出した固体をろ取し、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒(ヘキサン:クロロホルム=9:1、50ml)で洗浄した後、80℃で2時間減圧乾燥して、標題化合物(72.5g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 12.17 (1H, br s), 8.14 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.66 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.54 (1H, td, J = 7.7, 1.2 Hz), 7.42-7.30 (2H, m), 7.18-7.15 (2H, m), 4.09 (2H, t, J = 6.4 Hz), 2.41 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.00-1.93 (2H, m).
【0107】
工程8
4−[(9R)−4−クロロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2−イルオキシ]酪酸の(1S)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミンの塩
【0108】
【化17】
【0109】
窒素雰囲気下、(1S)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン(19.5g)を酢酸エチル(720ml)に溶解し、4−[(9R)−4−クロロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2−イルオキシ]酪酸(72.5g)を加えた。反応混合物を60℃で2時間、室温で一晩撹拌した。析出した固体をろ取し、ろ過物を酢酸エチル(100ml)で洗浄した。得られた固体を60℃で5時間減圧乾燥して、標題化合物(68.6g)を得た。一方、ろ液から4−[(9S)−4−クロロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2−イルオキシ]酪酸を得ることができた。
【0110】
(光学純度について)
4−[(9R)−4−クロロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2−イルオキシ]酪酸の光学純度は、HPLC分析条件1にて決定した(光学純度90.2%e.e.)。(R)体の保持時間12.9分、(S)体の保持時間10.4分。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 8.14 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.66 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.53 (1H, td, J = 7.6, 1.1 Hz), 7.40 (1H, td, J = 7.6, 1.0 Hz), 7.26 (2H, d, J = 7.9 Hz), 7.16-7.10 (4H, m), 4.08 (2H, t, J = 6.5 Hz), 4.01 (1H, q, J = 6.7 Hz), 2.32 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.26 (3H, s), 1.98-1.91 (2H, m), 1.26 (3H, d, J = 6.7 Hz).
【0111】
工程9
4−[(9R)−4−クロロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2−イルオキシ]酪酸
【0112】
【化18】
【0113】
4−[(9R)−4−クロロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2−イルオキシ]酪酸と(1S)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミンの塩(68.6g)に酢酸エチル(500ml)、2N塩酸(300ml)を加え、室温で10分撹拌した。この混合液を分層した。得られた有機層を水(250ml)、飽和食塩水(200ml)で順次洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、不溶物をろ去し、ろ液の溶媒を留去して、標題化合物(60.0g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 12.17 (1H, br s), 8.14 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.66 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.54 (1H, td, J = 7.7, 1.2 Hz), 7.42-7.30 (2H, m), 7.18-7.15 (2H, m), 4.09 (2H, t, J = 6.4 Hz), 2.41 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.00-1.93 (2H, m).
【0114】
工程10
(9R)−4−クロロ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2,9−ジオール
【0115】
【化19】
【0116】
4−[(9R)−4−クロロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2−イルオキシ]酪酸(50g)に、N−メチルピロリドン(200ml)とピリジン塩酸塩(298g)を加え、油浴温度200℃で2日間撹拌した。反応混合液を室温まで冷却した後、酢酸エチル(500ml)で希釈し、水で2回洗浄した。得られた水層を酢酸エチル(300ml)で再抽出し、先に得られた有機層と合わせて、水、1N塩酸、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層に無水硫酸マグネシウムおよび活性炭(10g)を加え、室温で攪拌した後、不溶物をセライトろ去した。得られた有機層の溶媒を留去し、残渣にヘキサンを加え、室温で撹拌した。析出した固体をろ取し、室温で減圧乾燥した。得られた粗生成物を酢酸エチル(500ml)に溶解し、水で3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物をろ去し、ろ液の溶媒を留去した。残渣にヘキサンを加え、室温で撹拌した。析出した固体をろ取し、室温で減圧乾燥して、標題化合物(22.4g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 10.37 (1H, br s), 8.09 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.63 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.50 (1H, td, J = 7.6, 1.0 Hz), 7.36 (1H, td, J = 7.6, 1.0 Hz), 7.32 (1H, br s), 7.06 (1H, s), 6.91 (1H, br d, J = 2.0 Hz).
【0117】
(絶対立体配置について)
標題化合物の絶対立体配置は、下記の工程(工程A−1から工程A−2および工程B−1)により調製した化合物(100A)と化合物(100B)の光学活性カラムを用いたHPLC分析によって決定した。
【0118】
工程A−1
【0119】
【化20】
【0120】
4−クロロ−2−メチル−9H−フルオレン−9−オンに対して、トリフルオロメチル化、ブロモ酢酸エチルとの反応、および加水分解を行い、[4−クロロ−2−メチル−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−9−イルオキシ]酢酸を得た。この化合物を(1R)−1−フェニルエチルアミンを用いて光学分割し、得られた(1R)−1−フェニルエチルアミンの塩(100AA)を単結晶X線構造解析により、絶対立体配置を(R)と決定した。
【0121】
工程A−2
【0122】
【化21】
【0123】
化合物100AAから酸処理等により、(9R)−4−クロロ−2−メチル−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−9−オール(化合物(100A))を合成した。
【0124】
工程B−1
【0125】
【化22】
【0126】
工程10で得られた4−クロロ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2,9−ジオールの2位水酸基を、上記の方法によりメチル基に変換し、4−クロロ−2−メチル−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−9−オール(化合物(100B))を得た。
【0127】
(光学活性カラムを用いたHPLC分析)
化合物(100)の両対掌体は、光学活性カラムを用いたHPLCで分離することができた(HPLC分析条件3)。化合物100AのHPLC分析結果から、(R)体の保持時間18.4分、(S)体の保持時間17.0分であることが明らかとなった。このHPLC条件により、化合物(100A)と化合物(100B)を分析したところ、保持時間が一致した。
上記化合物(100A)および化合物(100B)の製造の際に、不斉炭素の立体配置の変換は起こらないと考えられる。この結果から、工程10で得られた4−クロロ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2,9−ジオールは(R)の絶対立体配置を持つことが確認された。
【0128】
工程11
(9R)−4−クロロ−2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−9−オール
【0129】
【化23】
【0130】
窒素雰囲気下、(9R)−4−クロロ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2,9−ジオール(55.5g)をN,N−ジメチルホルムアミド(550ml)に溶解し、トルエン−4−スルホン酸 3−ヒドロキシ−3−メチルブチルエステル(49.6g)と炭酸カリウム(39.5g)を加え、油浴温度70℃で一晩撹拌した。反応混合液にトルエン−4−スルホン酸 3−ヒドロキシ−3−メチルブチルエステル(4.0g)のN,N−ジメチルホルムアミド(5ml)溶液を追加し、同温でさらに9.5時間撹拌した。反応混合液を氷冷後、水(800ml)を加え、酢酸エチル(900ml)で抽出した。得られた有機層を水(500ml)で3回、飽和食塩水(500ml)で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、不溶物をろ去し、ろ液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒としてヘキサンと酢酸エチルの混合液を用いた。まず混合比3:1(ヘキサン:酢酸エチル)の混合液を溶出した。ついで混合比2:1の混合液で溶出し、さらに混合比3:2の混合液で溶出した。)で精製して、標題化合物(49.5g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 8.12 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.64 (1H, d, J = 7.4 Hz), 7.52 (1H, td, J = 7.6, 0.9 Hz), 7.40-7.36 (2H, m), 7.15-7.13 (2H, m), 4.41 (1H,s), 4.16 (2H, t, J = 7.1 Hz), 1.85 (2H, t, J = 7.1 Hz), 1.17 (6H, s).
【0131】
工程12
2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロピオン酸エチル
【0132】
【化24】
【0133】
アルゴン雰囲気下、(9R)−4−クロロ−2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−9−オール(49.5g)をトルエン(445ml)に溶解し、2−メチル−2−[4−(4,4,5,5−テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]プロピオン酸エチル(59.2g)、水(149ml)、リン酸三カリウム(54.3g)、酢酸パラジウム(2.9g)および2−ジシクロヘキシルフォスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(SPhos)(10.5g)を加え、油浴温度100℃で3.5時間撹拌した。反応混合液を室温まで冷却し、水(300ml)を加えた後、不溶物をセライトろ去し、トルエン(150ml)および水(50ml)で洗浄した。得られたろ液を合わせて分層した。得られた有機層を水(500ml)、飽和食塩水(500ml)で順次洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、不溶物をろ去し、ろ液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒としてヘキサンと酢酸エチルの混合液を用いた。まず混合比2:1(ヘキサン:酢酸エチル)の混合液を溶出した。ついで混合比1:1、2:3の混合液で溶出し、さらに混合比1:2の混合液で溶出した。)にて精製した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒としてヘキサンとアセトンの混合液を用いた。まず混合比2:1(ヘキサン:アセトン)の混合液を溶出した。ついで混合比4:1、3:1、2:1、1:1、2:3の混合液で順次溶出し、さらに混合比1:2の混合液にて溶出した。)で精製し、標題化合物(68.4g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 8.18 (1H, s), 7.65 (1H, s), 7.59-7.57 (1H, m), 7.25-7.21 (4H, m), 7.13 (1H, br d, J = 1.6 Hz), 6.84 (1H, d, J = 2.3 Hz), 4.38 (1H, s), 4.16-4.11 (4H, m), 1.86 (2H, t, J = 7.1 Hz), 1.84 (6H, s), 1.16 (6H, s), 1.13 (3H, t, J = 7.0 Hz).
【0134】
工程13
2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロピオン酸
【0135】
【化25】
【0136】
2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロピオン酸エチル(68.4g)をエタノール(256ml)に溶解し、4N水酸化ナトリウム水溶液(128ml)を加え、室温で2.5時間撹拌した。反応混合物を氷冷し、2N塩酸(333ml)を滴下後、酢酸エチル(500ml)で抽出した。得られた有機層を水(400ml)で2回、飽和食塩水(400ml)で順次洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、不溶物をろ去し、ろ液の溶媒を留去して、標題化合物(70.0g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ:13.06 (1H, br s), 8.14 (1H, s), 7.62 (1H, s), 7.57 (1H, dd, J = 6.4, 0.6 Hz), 7.27-7.19 (4H, m), 7.12 (1H, s), 6.84 (1H, d, J = 2.3 Hz), 4.38 (1H, s), 4.14 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.85 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.82 (3H,s), 1.81 (3H, s), 1.16 (6H, s).
【0137】
工程14
2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2-メチルプロパンアミド(化合物(2))
【0138】
【化26】
【0139】
窒素雰囲気下、2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロピオン酸(66.7g)をN,N−ジメチルホルムアミド(480ml)に溶解し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)1水和物(27.6g)、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)塩酸塩(34.6g)および28%アンモニア水(24.5ml)を加え、室温で一晩撹拌した。反応混合物を氷冷し、水(630ml)および2N塩酸(330ml)を滴下後、酢酸エチル(800ml)で抽出した。得られた水層を酢酸エチル(500ml)で再抽出した。得られた有機層を合わせて、水(500ml)で2回、飽和重曹水(500ml)、飽和食塩水(500ml)で順次洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、不溶物をろ去し、ろ液の溶媒を留去して、標題化合物(60.0g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 8.08 (1H, s), 7.66 (1H, s), 7.58-7.56 (1H, m), 7.32-7.30 (1H, m), 7.25-7.22 (4H, m), 7.12 (1H, br s), 6.96 (1H, br s), 6.87 (1H, d, J = 2.3 Hz), 4.38 (1H, s), 4.14 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.85 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.78 (3H, s), 1.78 (3H, s), 1.17 (6H, s).
【0140】
工程15
2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロパンアミド・1水和物(化合物(2h))
【0141】
【化27】
【0142】
前工程で得られた2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2-メチルプロパンアミド(化合物(2))(60.0g)を酢酸エチル(109ml)に溶解し、水(2ml)を加え、50℃に加熱した。この混合液にヘキサン(226ml)、ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒(ヘキサン:酢酸エチル 2:1、150ml)を順次滴下した後、室温に戻し一晩撹拌した。析出した固体をろ取し、ろ過物をヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒(ヘキサン:酢酸エチル=2:1、180ml)で洗浄した。得られた固体を室温で一晩減圧乾燥して、標題化合物(52.2g、光学純度98.6%e.e.)を得た。光学純度は、HPLC分析条件2にて決定した。(R)体の保持時間11.3分、(S)体の保持時間13.9分。
比旋光度[α]
D +37.9°(c=1.01 MeOH 25℃).
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 8.08 (1H, s), 7.66 (1H, s), 7.58-7.56 (1H, m), 7.32-7.30 (1H, m), 7.25-7.22 (4H, m), 7.12 (1H, br s), 6.96 (1H, br s), 6.87 (1H, d,J = 2.3 Hz), 4.38 (1H, s), 4.14 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.85 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.78 (3H, s), 1.78 (3H, s), 1.17 (6H, s).
(元素分析測定)
元素分析結果は、化合物(2h)の理論値と良く一致した。
計算値:C,59.88;H,5.80;N,8.06(1水和物としての計算値)
実測値:C,59.86;H,5.74;N,8.00.
【0143】
工程16
2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロパンアミド(化合物(2))
【0144】
【化28】
【0145】
前工程で得られた2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2メチルプロパンアミド・1水和物(化合物(2h))(22.63g)にトルエン(340ml)を加えた。窒素雰囲気下、反応混合物をディーン・スターク装置で脱水しながら、油浴温度130℃で2時間攪拌した。反応混合物を油浴温度70℃でさらに1時間半攪拌した後、室温に戻し一晩撹拌した。析出した固体をろ取し、ろ過物をトルエン(100ml)で洗浄した。得られた固体を室温で3日間減圧乾燥後、さらに60℃で1日減圧乾燥して、標題化合物(21.5g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 8.08 (1H, s), 7.66 (1H, s), 7.58-7.56 (1H, m), 7.32-7.30 (1H, m), 7.25-7.22 (4H, m), 7.12 (1H, br s), 6.96 (1H, br s), 6.87 (1H, d,J = 2.3 Hz), 4.38 (1H, s), 4.14 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.85 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.78 (3H, s), 1.78 (3H, s), 1.17 (6H, s).
(元素分析測定)
元素分析結果は、化合物(2)の理論値と良く一致した。
計算値:C,62.02;H,5.61;N,8.35(無水和物としての計算値)
実測値:C,62.17;H,5.60;N,8.47.
【0146】
工程C−1
N−(4−tert−ブチルベンジル)シンコニジウムブロミドの合成
【0147】
【化29】
【0148】
シンコニジン(10.6g)をテトラヒドロフラン(200ml)に溶解し、4−tert−ブチルベンジルブロミド(10.1g)、テトラブチルアンモニウムヨージド(0.66g)を加え、70℃で一晩撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、固体をろ取し、酢酸エチル(50ml)で洗浄した。得られた固体を一晩減圧乾燥して、標題化合物(18.5g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 8.99 (1H, d, J = 4.4 Hz), 8.27 (1H, d, J = 8.2 Hz), 8.11 (1H, dd, J = 8.5, 1.0 Hz), 7.89-7.79 (2H, m), 7.78-7.71 (1H, m), 7.63 (2H,d, J = 8.4 Hz), 7.59 (2H, t, J = 8.4 Hz), 6.72 (1H, d, J = 4.2 Hz), 6.57-6.51 (1H, br s), 5.67 (1H, ddd, J = 17.0, 10.4, 6.4 Hz), 5.14 (1H, d, J = 17.2 Hz), 5.08 (1H, d, J = 12.6 Hz), 5.00-4.90 (2H, m), 4.30-4.18 (1H, m), 3.91 (1H, t, J = 8.7 Hz), 3.74-3.64 (1H, m), 3.35-3.18 (2H, m), 2.76-2.65 (1H, m), 2.18-1.94 (3H,m), 1.90-1.78 (1H, m), 1.40-1.22 (1H, m), 1.34 (9H, s).
【0149】
工程C−2
N−(4−tert−ブチルベンジル)シンコニジウム 4−メトキシフェノキシドの合成
【0150】
【化30】
【0151】
N−(4−tert−ブチルベンジル)シンコニジウムブロミド(18.5g)、アンバーリスト(登録商標)A26(スチレン、ジビニルベンゼンマトリックスの強塩基性イオン交換樹脂)(18.5g)およびメタノール(280ml)を加え、室温で一晩撹拌した。不溶物をセライトろ去し、メタノール(100ml)で洗浄した。ろ液に4−メトキシフェノール(4.8g)を加え、溶媒を留去した。残渣をトルエン(100ml)で3回共沸後、トルエン(20ml)を加え、次いでジイソプロピルエーテル(200ml)を滴下し、室温で3時間撹拌した。析出した固体をろ取し、ジイソプロピルエーテル(50ml)で洗浄した後、室温で一晩減圧乾燥して標題化合物(21.8g)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 8.91 (1H, d, J = 4.4 Hz), 8.17 (1H, d, J = 8.2 Hz), 8.07 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.89 (1H, d, J = 4.4 Hz), 7.79 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.64 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.57-7.52 (5H, m), 6.56-6.55 (2H, m), 6.43-6.42 (3H, m), 5.67-5.59 (1H, m), 5.28 (1H, d, J = 12.1 Hz), 5.12 (1H, d, J = 17.2 Hz), 4.92 (1H, d, J = 10.6 Hz), 4.84 (1H, d, J = 12.1 Hz), 4.65-4.53 (1H, m), 3.80 (1H, t, J = 8.8 Hz), 3.65-3.63 (1H, m), 3.57 (3H, s), 3.25 (1H, t, J = 11.6 Hz), 3.10-3.07 (1H, m), 2.67 (1H, br s), 2.07-2.02 (2H, m), 1.95 (1H, br s), 1.79-1.76 (1H, br m), 1.33 (9H, s), 1.16-1.11 (1H, m).
【0152】
工程D
トルエン−4−スルホン酸 3−ヒドロキシ−3−メチルブチルエステルの合成
【0153】
【化31】
【0154】
窒素雰囲気下、3−メチルブタン−1,3−ジオール(300g)をピリジン(900ml)に溶解し、4−メチルベンゼンスルホニルクロリド(500g)のトルエン(900ml)、アセトニトリル(125ml)溶液を2時間かけて滴下した。反応混合物を室温で4時間撹拌した後、トルエン(500ml)と水(1800ml)を加え、分層した。得られた有機層を硫酸水、水2回で順次洗浄した。得られた有機層の溶媒を留去した後、トルエン(500ml)で共沸して、標題化合物(535g)を得た。
1H-NMR (CDCl
3) δ: 7.81-7.76 (2H, m), 7.36-7.31 (2H, m), 4.20 (2H, td, J = 6.8, 1.6 Hz), 2.44 (3H, s), 1.85 (2H, td, J = 6.8, 1.6 Hz), 1.33 (1H, s), 1.21 (6H, s).
【0155】
実施例2
2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロパンアミド(化合物(3))の合成
【0156】
工程1
4−[(9R)−4−クロロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2−イルオキシ]酪酸エチル
【0157】
【化32】
【0158】
実施例1工程10で得られた(9R)−4−クロロ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2,9−ジオール(200mg)をN,N−ジメチルホルムアミド(2ml)に溶解し、炭酸カリウム(185mg)および4−ブロモ酪酸エチル(105μl)を加え、室温で7時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層を、水で2回、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、不溶物をろ去し、ろ液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒としてヘキサンと酢酸エチルの混合液を用いた。まず混合比5:1(ヘキサン:酢酸エチル)の混合液にて溶出した。ついで混合比3:1の混合液にて順次溶出し、さらに混合比2:1の混合液にて溶出した。)にて精製し、標題化合物(197mg)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl
3) δ: 8.19 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.66 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.46 (1H, td, J = 7.6, 1.0 Hz), 7.32 (1H, td, J = 7.6, 1.0 Hz), 7.16 (1H, br s), 6.93 (1H, d, J = 2.1 Hz), 4.14 (2H, q, J = 7.1 Hz), 4.05 (2H, t, J = 7.1 Hz), 2.82 (1H, s), 2.50 (2H, t, J = 7.1 Hz), 2.15-2.06 (2H, m), 1.25 (3H, t, J = 7.1 Hz).
【0159】
工程2
(9R)−4−クロロ−2−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−9−オール
【0160】
【化33】
【0161】
窒素雰囲気下、4−[(9R)−4−クロロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−2−イルオキシ]酪酸エチル(197mg)をTHF(2ml)に溶解し、0℃でメチルリチウム/ジエチルエーテル溶液(1.07M、2.2ml)を滴下した。反応混合液を同温で2時間撹拌した後、水を加え、酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層を水で2回、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、不溶物をろ去し、ろ液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒としてヘキサンと酢酸エチルの混合液を用いた。まず混合比3:1(ヘキサン:酢酸エチル)の混合液を溶出した。ついで混合比2:1の混合液にて溶出した。)にて精製して、標題化合物(169mg)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl
3) δ: 8.19 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.66 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.47 (1H, td, J = 7.7, 1.0 Hz), 7.32 (1H, td, J = 7.7, 1.0 Hz), 7.17 (1H, br s), 6.93 (1H, d, J = 2.3 Hz), 4.02 (2H, t, J = 6.4 Hz), 2.82 (1H, s), 1.92-1.85 (2H, m), 1.65-1.62 (2H, m), 1.26 (3H, s), 1.25 (3H, s).
【0162】
工程3
2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロピオン酸エチル
【0163】
【化34】
【0164】
アルゴン雰囲気下、(9R)−4−クロロ−2−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−9−オール(169mg)を1,4−ジオキサン(1.5ml)で溶解し、2−メチル−2−[4−(4,4,5,5−テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]プロピオン酸エチル(194mg)、水(0.5ml)、リン酸三カリウム(178mg)、酢酸パラジウム(9mg)、SPhos(33mg)を加え、100℃で4.5時間撹拌した。反応混合液を室温まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層を、水で2回、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、不溶物をろ去し、ろ液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒として混合比1:1(ヘキサン:酢酸エチル)の混合液にて溶出した。)にて精製して、標題化合物(218mg)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl
3) δ: 7.69 (1H, s), 7.63-7.62 (2H, m), 7.21-7.19 (4H, m), 6.81 (1H, d, J = 2.3 Hz), 4.21 (2H, q, J = 7.1 Hz), 4.04 (2H, t, J = 6.3 Hz), 2.82 (1H, s), 1.92 (3H, s), 1.91 (3H, s), 1.89-1.88 (2H, m), 1.66-1.64 (2H, m), 1.26 (6H, s), 1.26-1.23 (3H, m).
【0165】
工程4
2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロピオン酸
【0166】
【化35】
【0167】
2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロピオン酸エチル(218mg)をエタノール(2.2ml)に溶解し、4N水酸化ナトリウム水溶液(320μl)を加え、室温で一晩撹拌した。反応混合液を1N塩酸で中和し、酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層を水で2回、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、不溶物をろ去し、ろ液の溶媒を留去して、標題化合物(179mg)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl
3) δ: 7.73 (1H, s), 7.68 (1H, s), 7.63-7.62 (1H, m), 7.23-7.09 (4H, m), 6.78 (1H, d, J = 2.6 Hz), 4.02 (2H, t, J = 6.3 Hz), 1.93 (6H, s), 1.89-1.86 (2H, m), 1.65-1.61 (2H, m), 1.25 (6H, s).
【0168】
工程5
2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロパンアミド(化合物(3))
【0169】
【化36】
【0170】
窒素雰囲気下、2−{4−[(9R)−9−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルオキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロピオン酸(89mg)をN,N−ジメチルホルムアミド(1ml)に溶解し、塩化アンモニウム(28mg)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(148μl)および1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イウム 3−オキシド ヘキサフルオロフォスフェート(HATU)(99mg)を加え、室温で一晩撹拌した。反応混合液に水を加え、酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層を、食塩水で2回、飽和食塩水で1回順次洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、不溶物をろ去し、ろ液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒としてクロロホルムとメタノールの混合液を用いた。混合比9:1(クロロホルム:メタノール)の混合液を用いた。)にて精製して、標題化合物(48mg、光学純度96.9%e.e.)を得た。光学純度は、HPLC分析条件2にて決定した。(R)体の保持時間13.0分、(S)体の保持時間14.4分。
比旋光度[α]
D +37.5°(c=1.04 MeOH 25℃).
1H-NMR (400MHz, DMSO-D
6) δ: 8.07 (1H, s), 7.66 (1H, s), 7.57-7.55 (1H, m), 7.34-7.31 (1H, m), 7.24-7.23 (3H, m), 7.18 (1H, s), 7.11 (1H, br s), 6.94 (1H, br s), 6.86 (1H, d, J = 2.3 Hz), 4.16 (1H, s), 4.03 (2H, t, J = 6.5 Hz), 1.80 (3H, s), 1.79 (3H, s), 1.80-1.75 (2H, m), 1.51-1.47 (2H, m), 1.11 (6H, s).
【0171】
(化合物(3)の結晶の調製例)
上記実施例の手順で合成した化合物(3)(40mg)にMeOHと水の混合液(容量比1:3(0.5mL))を添加した。ついで、この溶液に化合物(2h)の結晶(0.5mg)を添加し室温にて3日間撹拌した。析出した固体を濾取し、化合物(3)の結晶(41mg)を得た。
【0172】
(化合物(A)、(B)、(C)、および(D)の合成)
下記式で表される化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)及び化合物(D)は、国際公開第2010/041748号に記載の製造方法に従い、それぞれ光学活性体として得た。
【0173】
【化37】
【0174】
化合物(A)
2−(4−{(9R)−9−ヒドロキシ−2−[2−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)エトキシ]−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル}−1H−ピラゾール−1−イル)酢酸アミド
【0175】
【化38】
【0176】
化合物(B)
(9R)−2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)−4−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−9−オール
【0177】
【化39】
【0178】
化合物(C)
(9R)−4−[1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−9−オール
【0179】
【化40】
【0180】
化合物(D)
2−{4−[(9R)−2−フルオロ−9−ヒドロキシ−9−(トリフルオロメチル)−9H−フルオレン−4−イル]−1H−ピラゾール−1−イル}−2−メチルプロパンアミド
【0181】
本発明の製剤例としては、例えば下記の製剤が挙げられる。しかしながら、本発明はこれら製剤例によって限定されるものではない。
【0182】
製剤例1(カプセルの製造)
1)実施例1の化合物(化合物(2)) 30mg
2)微結晶セルロース 10mg
3)乳糖 19mg
4)ステアリン酸マグネシウム 1mg
1)、2)、3)および4)を混合して、ゼラチンカプセルに充填する。
【0183】
製剤例2(錠剤の製造)
1)実施例1の化合物(化合物(2)) 10g
2)乳糖 50g
3)トウモロコシデンプン 15g
4)カルメロースカルシウム 44g
5)ステアリン酸マグネシウム 1g
1)、2)、3)の全量および30gの4)を水で練合し、真空乾燥後、整粒を行う。この整粒末に14gの4)および1gの5)を混合し、打錠機により打錠する。このようにして、1錠あたり実施例1の化合物(化合物(2))10mgを含有する錠剤1000錠を得る。
【0184】
試験例1:インビトロにおけるPDHK活性阻害作用
PDHK活性阻害作用は被験化合物存在下においてキナーゼ反応を行い、その後、残存したPDH活性を測定することにより、間接的に評価した。
【0185】
(PDHK1活性阻害作用)
ヒトPDHK1(hPDHK1,ジーンバンク(Genbank)寄託番号L42450.1)の場合、このタンパク質をコードする1.3kbpフラグメントをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりヒト肝cDNAから単離した。PCRでN末端にFLAG−Tag配列を付加した改変hPDHK1 cDNAを作製し、ベクター(pET17b−Novagen社)にクローニングした。組換え構築体を大腸菌(DH5α−TOYOBO社)内へ形質転換した。組換えクローンを同定し、プラスミドDNAを単離し、DNA配列分析した。予想核酸配列を持つ1クローンを発現作業用に選択した。
【0186】
hPDHK1活性発現のために、改変hPDHK1 cDNAを含むpET17bベクターを大腸菌株BL21(DE3)(Novagen社)内に形質転換した。大腸菌を光学濃度0.6(600nmol/L)に達するまで30℃で増殖させた。500μmol/L イソプロピル−β−チオガラクトピラノシドの添加によりタンパク質発現を誘導した。大腸菌を30℃で5時間培養した後、遠心分離により採集した。大腸菌ペースト再懸濁液をマイクロフロイダイザーにより破砕した。FLAG−Tag付加タンパク質を、FLAGアフィニティーゲル(Sigma社)により分離した。
【0187】
20mmol/L N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸−水酸化ナトリウム(HEPES−NaOH)、500mmol/L 塩化ナトリウム、1% エチレングリコール、0.1% ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体(プルロニックF−68)(pH8.0)でゲルを洗浄した後、20mmol/L HEPES−NaOH,100μg/mL FLAGペプチド、500mmol/L 塩化ナトリウム、1% エチレングリコール、0.1% プルロニックF−68(pH8.0)で結合タンパク質を溶離した。
【0188】
FLAG−Tag付加タンパク質を含有する溶離画分をプールし、20mmol/L HEPES−NaOH、150mmol/L 塩化ナトリウム、0.5mmol/L エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1% エチレングリコール、0.1% プルロニックF−68(pH8.0)に対し透析し、−80℃に保存した。アッセイに際し、hPDHK1の酵素濃度は90%を上回るPDH活性抑制を示す最少濃度に設定した。
【0189】
緩衝液(50mmol/L 3−モルホリノプロパンスルホン酸(pH7.0)、20mmol/L リン酸水素二カリウム、60mmol/L 塩化カリウム、2mmol/L 塩化マグネシウム、0.4mmol/L EDTA、0.2% プルロニックF−68、2mmol/L ジチオスレイトール)中において、0.05U/mL PDH(ブタ心臓PDH複合体、Sigma社 P7032)および1.0μg/mL hPDHK1を混合し、4℃で一晩インキュベーションしてPDH/hPDHK1複合体を調製した。
【0190】
被験化合物はジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈した。96穴ハーフエリアUV透過マイクロプレート(Corning社 3679)にPDH/hPDHK1複合体20μL、被験化合物1.5μLおよび3.53μmol/L ATP(緩衝液にて希釈)8.5μLを添加し、室温で45分間PDHK反応を行った。対照ウェルには被験化合物の代わりにDMSOを1.5μL添加した。また、PDH反応の最大速度を測定するためのブランクウェルには、被験化合物の代わりにDMSOを1.5μL添加し、hPDHK1を除いた。
【0191】
続いて、基質(5mmol/L ピルビン酸ナトリウム、5mmol/L コエンザイムA、12mmol/L NAD、5mmol/L チアミンピロリン酸、緩衝液にて希釈)を10μL添加し、室温で90分間インキュベーションすることにより、残存PDH活性を測定した。
【0192】
PDH反応前後における340nmの吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定することにより、PDH反応により産生されるNADHを検出した。被験化合物のhPDHK1阻害率(%)は式[{(被験化合物のPDH活性−対照のPDH活性)/ブランクのPDH活性−対照のPDH活性)}×100]から算出した。IC
50値はhPDHK1阻害率50%を挟む2点の被験化合物濃度より算出した。
被験化合物として化合物(2)、化合物(2h)および化合物(3)を用いた場合に得られた結果を以下の表1に示す。
【0193】
(PDHK2活性阻害作用)
ヒトPDHK2(hPDHK2、ジーンバンク(Genbank)寄託番号BC040478.1)の場合、hPDHK2 cDNAクローン(pReceiver−M01/PDK2−GeneCopoeia社)を基に、PCRでN末端にFLAG−Tag配列を付加した改変hPDHK2 cDNAを作製し、ベクター(pET17b−Novagen社)にクローニングした。組換え構築体を大腸菌(DH5α−TOYOBO社)内へ形質転換した。組換えクローンを同定し、プラスミドDNAを単離し、DNA配列分析した。予想核酸配列を持つ1クローンを発現作業用に選択した。
【0194】
hPDHK2活性発現のために、改変hPDHK2 cDNAを含むpET17bベクターを大腸菌株BL21(DE3)(Novagen社)内に形質転換した。大腸菌を光学濃度0.6(600nmol/L)に達するまで30℃で増殖させた。500μmol/L イソプロピル−β−チオガラクトピラノシドの添加によりタンパク質発現を誘導した。大腸菌を30℃で5時間培養した後、遠心分離により採集した。大腸菌ペースト再懸濁液をマイクロフロイダイザーにより破砕した。FLAG−Tag付加タンパク質を、FLAGアフィニティーゲルにより分離した。20mmol/L HEPES−NaOH、500mmol/L 塩化ナトリウム、1% エチレングリコール、0.1% プルロニックF−68(pH8.0)でゲルを洗浄した後、20mmol/L HEPES−NaOH、100μg/mL FLAGペプチド、500mmol/L 塩化ナトリウム、1% エチレングリコール、0.1% プルロニックF−68(pH8.0)で結合タンパク質を溶離した。FLAG−Tag付加タンパク質を含有する溶離画分をプールし、20mmol/L HEPES−NaOH、150mmol/L 塩化ナトリウム、0.5mmol/L EDTA、1% エチレングリコール、0.1% プルロニックF−68(pH8.0)に対し透析し、−80℃に保存した。アッセイに際し、hPDHK2の酵素濃度は90%を上回るPDH活性抑制を示す最少濃度に設定した。
【0195】
緩衝液(50mmol/L 3−モルホリノプロパンスルホン酸(pH7.0)、20mmol/L リン酸水素二カリウム、60mmol/L 塩化カリウム、2mmol/L 塩化マグネシウム、0.4mmol/L EDTA、0.2% プルロニックF−68、2mmol/L ジチオスレイトール)中において、0.05U/mL PDHおよび0.8μg/mL hPDHK2を混合し、4℃で一晩インキュベーションしてPDH/hPDHK2複合体を調製した。被験化合物はDMSOで希釈した。96穴ハーフエリアUV透過マイクロプレートにPDH/hPDHK2複合体20μL、被験化合物1.5μLおよび3.53μmol/L ATP(緩衝液にて希釈)8.5μLを添加し、室温で45分間PDHK反応を行った。対照ウェルには被験化合物の代わりにDMSOを1.5μL添加した。また、PDH反応の最大速度を測定するためのブランクウェルには、化合物の代わりにDMSOを1.5μL添加し、hPDHK2を除いた。続いて、基質(5mmol/L ピルビン酸ナトリウム、5mmol/L コエンザイムA、12mmol/L NAD、5mmol/L チアミンピロリン酸、緩衝液にて希釈)を10μL添加し、室温で90分間インキュベーションすることにより、残存PDH活性を測定した。PDH反応前後における340nmの吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定することにより、PDH反応により産生されるNADHを検出した。被験化合物のhPDHK2阻害率(%)は式[{(被験化合物のPDH活性−対照のPDH活性)/ブランクのPDH活性−対照のPDH活性)}×100]から算出した。IC
50値はhPDHK2阻害率50%を挟む2点の被験化合物濃度より算出した。
被験化合物として化合物(2)、化合物(2h)、化合物(3)、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)、および化合物(D)を用いた場合に得られた結果を以下の表1に示す。
【0196】
【表1】
【0197】
試験例2:Ex vivo PDH活性化試験
(試験方法)
被験化合物を投与した動物における組織のPDH活性化作用を評価した。p−ヨードニトロテトラゾリウムバイオレット(INT)共役系を介してNADH生成を検出することによりPDH活性を測定した。
正常な雄性Sprague−Dawleyラットを媒体群または被験化合物群にランダムに群分けした。ラットに媒体(0.5%メチルセルロース水溶液,5mL/kg)または被験化合物を経口投与した。投与後、5または20時間後に、ペントバルビタールナトリウム60mg/kgを腹腔内投与して麻酔を施し、肝切片および副睾丸上脂肪組織を摘出した。
摘出した肝切片に湿重量の9倍容の氷冷したホモジナイズ緩衝液(0.25mol/L スクロース、5mmol/L トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(pH7.5)、2mmol/L EDTA)を速やかに添加し、ポリトロンホモジナイザーを用いてホモジナイズした。ホモジネートを600×g、4℃、10分間遠心して上清を回収した。上清1mLを16000×g、4℃、10分間遠心して沈殿を得た。この沈殿をホモジナイズ緩衝液1mLに再懸濁し、同様に遠心して沈殿を洗浄した。この沈殿を肝ミトコンドリア画分とし、液体窒素にて凍結後、−80℃に保存した。
摘出した脂肪組織に湿重量の3倍容の氷冷したホモジナイズ緩衝液を速やかに添加し、ポリトロンホモジナイザーを用いてホモジナイズした。ホモジネートを600×g、4℃、10分間遠心して上清を回収した。上清全量を16000×g、4℃、10分間遠心して沈殿を得た。この沈殿をホモジナイズ緩衝液1mLに再懸濁し、同様に遠心して沈殿を洗浄した。この沈殿を脂肪組織ミトコンドリア画分とし、液体窒素にて凍結後、−80℃に保存した。
ミトコンドリア画分を解凍し、サンプル緩衝液(0.25mol/L スクロース、20mmol/L トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(pH7.5)、50mmol/L 塩化カリウム、1mL/L 4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール(トリトンX−100))に懸濁した。PDH活性は活性型PDH活性(PDHa活性)と総PDH活性(PDHt活性)の2種類を測定した。PDHt活性を測定するために、ミトコンドリア懸濁液と活性化緩衝液(0.25mol/L スクロース、20mmol/L トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(pH7.5)、50mmol/L 塩化カリウム、1mL/L トリトンX−100、4mmol/L 塩化カルシウム、40mmol/L 塩化マグネシウム、10mmol/L ジクロロ酢酸ナトリウム)を等量混合し、37℃にて10分間インキュベーションした。サンプル緩衝液で希釈したミトコンドリア懸濁液40μLを活性測定用およびブランク測定用としてそれぞれ96穴マイクロプレートに添加した。これに反応混合液(0.056mmol/L リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、5.6mmol/L DL−カルニチン、2.8mmol/L NAD、0.22mmol/L チアミンピロリン酸、0.11mmol/L コエンザイムA、1.1mL/L トリトンX−100、1.1mmol/L 塩化マグネシウム、1.1g/L ウシ血清アルブミン、0.67mmol/L INT、7.2μmol/L フェナジンメトサルフェート、28mmol/L オキサミド酸ナトリウム)を180μL添加した。活性測定用に50mmol/L ピルビン酸ナトリウムを、ブランク測定用に精製水をそれぞれ20μL添加し、室温、遮光下にてインキュベーションした。最終的な電子受容体であるINTの還元に起因する500−750nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーにて経時的に測定して吸光度変化を算出した。活性測定ウェルの吸光度変化からブランクウェルの吸光度変化を差し引いて、PDH活性とした。PDHt活性に対するPDHa活性の百分率を算出し、PDH活性化の指標とした。
被験化合物として化合物(2h)、化合物(3)、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)および化合物(D)を用いた場合に得られた結果を表2、
図1(肝)及び
図2(脂肪組織)に示す。また、化合物(2)を用いた場合に得られた結果を表3に示す。
【0198】
【表2】
【0199】
【表3】
【0200】
試験例3:ZDFラットにおける被験化合物反復投与のHbA1cに対する効果
(試験方法)
精製飼料(5.9% fat diet、オリエンタル酵母工業)を供与した2型糖尿病モデルZucker Diabetic Fattyラット(雄、7週齢、日本チャールス・リバー)を血糖値、血漿中インスリン濃度、HbA1cおよび体重に差がでないように、媒体群および被験化合物群に群わけを行った。ラットに被験化合物(1mg/kg/5mL)を暗期3時間前に1日1回反復経口投与した。媒体群のラットには0.5%メチルセルロース水溶液を同様に経口投与した。投与14日目に尾静脈から採血を行い、HbA1c(%)を測定した。統計的有意性は、Dunnett法により検定し、危険率p<0.05を有意とみなした。
被験化合物として化合物(2)および化合物(3)を用いた場合に得られた結果を以下の表4に示す。
【0201】
【表4】
【0202】
試験例4:hERG(human Ether−a−go−go Related Gene)ホールセルパッチクランプ試験
(試験方法)
Human ether−a−go−go related gene(hERG)導入HEK293細胞(Cytomyx Limited)を用いて、hERG電流に及ぼす影響をホールセルパッチクランプ法により検討した。hERG導入HEK293細胞は、CO
2インキュベーター(BNA−111、タバイエスペック株式会社)を使用し、温度37℃、炭酸ガス濃度5%、飽和湿度の設定条件下で継代培養した。培養容器には、Collagen Type I Coated 75cm
2フラスコ(4123−010、旭テクノグラス株式会社)およびCollagen Type I Coated 35mm培養皿(4000−010、旭テクノグラス株式会社)を使用した。培養液には10%FCS(Fetal calf serum、バイオウェスト社)、1%MEM Non−Essential Amino Acids Solution(NEAA、インビトロジェン株式会社)を添加したE−MEM(Eagle Minimum Essential Medium(Earle’s Salts、株式会社日研生物医学研究所))を使用した。これにhERG遺伝子発現細胞を選別するためのgeneticinを400μg/mLの濃度になるように加えた。測定用の細胞として、hERG電流測定の4から7日前に、35mm培養皿に3×10
4個のhERG導入HEK293細胞を播種した。測定用に作製する培養皿内には、上記培養液にgeneticin(インビトロジェン株式会社)を加えないものを使用した。
各化合物の評価最高濃度は、標準細胞外液(NaCl:140mmol/L、KCl:2.5mmol/L、MgCl
2:2mmol/L、CaCl
2:2mmol/L、HEPES:10mmol/L、glucose:10mmol/L(Tris−baseを用いてpH7.4に調整))中で析出の認められなかった最高濃度から設定した。適用方法として、細胞に近接(約2mm)させた先端径約0.25mmのY−tubeにより各適用液を噴出させて細胞に適用した。噴出速度は、約0.4mL/minとした。
実験は室温、位相差顕微鏡下にて行った。細胞を播種した35mm培養皿を測定装置にセットし、細胞に常時Y−tubeより標準細胞外液を与えた。測定用ガラス電極内には細胞内液(Potassium Gluconate:130mmol/L、KCl:20mmol/L、MgCl
2:1mmol/L、ATP−Mg:5mmol/L、EGTA:3.5mmol/L、HEPES:10mmol/L(Tris−baseを用いてpH7.2に調整))を充填した。細胞にconventional whole cell patch clamp法を適用し、保持電位を−80mVとした。電位固定下に全細胞電流をパッチクランプ用アンプ(AXOPATCH−200B、Axon Instruments, Inc.)により増幅し、データ取得解析ソフトウェア(pCLAMP 9.2、Axon Instruments,Inc.)を用いてデータをコンピュータ(IMC−P642400、Intermedical Co.,Ltd.)に取り込んだ。
hERG電流の測定は次の2段階で実施した。なお、どちらの場合においてもcommand potential(保持電位−80mV、prepulse +20mV、1.5秒間、test−pulse −50mV、1.5秒間)を与えてhERG電流を惹起させた。
工程(1):上記command potentialを0.1Hzで2分間与えた。
工程(2):上記command potentialにpCLAMP 9.2のP/3 subtractionを行なって、leak電流を取り除き、これを3度繰り返してその平均をhERG電流とした。
工程(1)に続いて工程(2)を行い(約3分間)、工程(2)の方法で得られたhERG電流のtest−pulseにおけるtail電流の最大値をhERG電流値とした。以後、実験終了まで(1)、(2)の操作を交互に繰り返し行い、hERG電流値を測定した。
安定したhERG電流値を3回記録した(約10分間)後、標準細胞外液を各適用液に瞬時に交換した。適用液灌流中も同様にhERG電流値を3回測定し(約10分間)、3回目の測定で得られた電流値を適用液灌流後のhERG電流値とした。
データは各細胞において、適用液灌流前の約10分間で記録した3回のhERG電流値の平均値(Before値)を100%とする相対値に変換した。これを2細胞について測定し、その平均値をRelative current(%)として算出した。
Relative current(%)=100×A÷B
A:適用液灌流後のhERG電流値
B:適用液灌流前の約10分間で記録した3回のhERG電流値の平均値(Before値)
また、DMSO群に対する抑制率を以下の式に従い算出した。
抑制率(%)=100−(C÷D)×100
C:各被験化合物群のRelative current(%)の平均値
D:DMSO群のRelative current(%)の平均値
被験化合物として化合物(2)、化合物(3)、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)および化合物(D)を用いた場合に得られた結果を表5に示す。
【0203】
【表5】
【0204】
試験例5:肝ミクロソーム中での代謝安定性試験
(試験方法)
ヒトの肝ミクロソーム(Xenotech社製、H0620、終濃度(希釈後)、0.2mg protein/mL)を100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4、β−nicotinamide adenine dinucleotide phosphate:1.3mM、D−glucose−6−phosphate:3.3mM、塩化マグネシウム:3.3mM、glucose−6−phosphate dehydrogenase:0.45U/mLを含む)に懸濁し、さらに、MeCN/DMSO(95/5)にて溶解した被験化合物(終濃度5μM)と混合した。混合液を37℃にて10分および60分インキュベート後、ギ酸(終濃度0.1%)を含むアセトニトリルを加え、遠心分離した上清中の被験化合物(未変化体)を高速液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(LC/MS)(Waters社製、LC:Acquity UPLC、MS:SQ Detectorまたは TQ Detector)を用いて測定した。得られた測定値より、残存率(%)を算出した。
被験化合物として化合物(2)、化合物(3)、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)および化合物(D)を用いた場合に得られた結果を表6に示す。
【0205】
【表6】