【0009】
最初に、以下に説明する実施例の絶縁ゲート型半導体装置の特徴を列記する。なお、以下の各特徴は、いずれも、独立して有用なものである。
(特徴1)半導体基板を表面側から平面視したときに、第5領域が第6領域に対して部分的に重複する。このように第5領域と第6領域を配置することで、これらをより接近して配置することができる。これによって、絶縁ゲート型半導体装置の耐圧をより向上させることができる。また、第5領域と第6領域の深さ方向の位置の製造誤差は、平面方向の位置の製造誤差よりも小さい。したがって、上記のように第5領域と第6領域を配置しても、これらが製造誤差によって繋がることを防止することができる。
(特徴2)第6領域の厚みが、第5領域の厚みよりも厚い。この構成によれば、第6領域の界面のカーブが、第5領域の界面のカーブよりも緩やかになる。第6領域は第5領域よりも裏面側に突出しているため電界が集中しやすいが、このように第6領域の界面のカーブを緩やかにすることで、第6領域への電界の集中を緩和することができる。
(特徴3)第5領域に、第1種の第2導電型不純物が含まれており、第6領域に、第1種の第2導電型不純物よりも半導体基板中における拡散係数が大きい第2種の第2導電型不純物が含まれている。この構成によれば、第6領域の界面のカーブを緩やかにすることができる。
(特徴4)半導体基板がSiCにより構成されており、第5領域と第6領域にカーボンとボロンが含まれており、第5領域のカーボンの濃度が、第6領域のカーボンの濃度よりも高い。この構成によれば、第6領域の界面のカーブを緩やかにすることができる。
(特徴5)第2領域の外側の領域に、第1外周トレンチと第2外周トレンチが、交互に複数個形成されている。
(特徴6)絶縁ゲート型半導体装置は以下の方法により製造することができる。この方法は、第1外周トレンチを形成する工程と、第1外周トレンチの底面に第2導電型不純物を注入することによって第5領域を形成する工程と、第2外周トレンチを形成する工程と、第2外周トレンチの底面に第2導電型不純物を注入することによって第6領域を形成する工程を有する。
(特徴7)第1外周トレンチと第2外周トレンチのいずれか一方のトレンチを先に形成し、前記一方のトレンチを形成した後に、第5領域と第6領域のうちの前記一方のトレンチの底面に露出する領域を形成し、前記一方のトレンチの底面に露出する前記領域を形成した後に、前記一方のトレンチ内に絶縁層を形成し、前記絶縁層を形成した後に、第1外周トレンチと第2外周トレンチのうちのいずれか他方のトレンチを形成し、他方のトレンチを形成した後に、第5領域と第6領域のうちの他方のトレンチの底面に露出する領域を形成し、他方のトレンチの底面に露出する前記領域を形成した後に、前記他方のトレンチ内に絶縁層を形成する。このように、一方のトレンチ内に絶縁層を形成した後に他方のトレンチを形成することで、これらのトレンチに挟まれた半導体層(2つのトレンチを隔てる隔壁)にクラック等が生じることを防止することができる。
(特徴8)第6領域を形成する工程を、第5領域を形成する工程よりも先に実施し、第6領域を形成する工程において、第2外周トレンチの底面に第2導電型不純物を注入した後に半導体基板をアニールし、第5領域を形成する工程において、第1外周トレンチの底面に第2導電型不純物を注入した後に半導体基板をアニールする。この方法では、第6領域が第5領域よりもより多くアニールされるので、第6領域の界面のカーブを緩やかにすることができる。
(特徴9)第6領域を形成する工程におけるアニールの温度が、第5領域を形成する工程におけるアニールの温度よりも高い。この方法によれば、第6領域の界面のカーブをより緩やかにすることができる。
(特徴10)第5領域を形成する工程では、第1外周トレンチの底面に第1種の第2導電型不純物を注入し、第6領域を形成する工程では、第2外周トレンチの底面に、第1種の第2導電型不純物よりも半導体基板中における拡散係数が大きい第2種の第2導電型不純物を注入する。この方法によれば、第6領域の界面のカーブを緩やかにすることができる。
(特徴11)
半導体基板が、SiCにより構成されており、第5領域を形成する工程では、第1外周トレンチの底面にカーボンとボロンを注入し、第6領域を形成する工程では、第2外周トレンチの底面にボロンを注入する。この方法によれば、第6領域の界面のカーブをより緩やかにすることができる。
(特徴12)ゲートトレンチを、第1外周トレンチと同時に形成する。
【実施例1】
【0010】
図1に示す半導体装置10は、SiCからなる半導体基板12を有している。半導体基板12は、セル領域20と外周領域50を有している。セル領域20には、MOSFETが形成されている。外周領域50は、セル領域20と半導体基板12の端面12aとの間の領域である。
【0011】
図2に示すように、半導体基板12の表面には、表面電極14と絶縁層16が形成されている。絶縁層16は、外周領域50内の半導体基板12の表面を覆っている。表面電極14は、セル領域20内において半導体基板12と接している。言い換えると、表面電極14が半導体基板12と接しているコンタクト領域がセル領域20であり、コンタクト領域よりも外周側(端面12a側)の領域が外周領域50である。半導体基板12の裏面には、裏面電極18が形成されている。裏面電極18は、半導体基板12の裏面の略全体を覆っている。
【0012】
セル領域20内には、ソース領域22、ボディ領域23、ドリフト領域28、ドレイン領域30、p型フローティング領域32、ゲートトレンチ34が形成されている。
【0013】
ソース領域22(請求項の第1領域の一例)は、高濃度にn型不純物を含むn型領域である。ソース領域22は、半導体基板12の上面に露出する範囲に形成されている。ソース領域22は、表面電極14に接しており、表面電極14に対してオーミック接続されている。
【0014】
ボディ領域23(請求項の第2領域の一例)は、ボディコンタクト領域24と低濃度領域26を有している。ボディコンタクト領域24は、高濃度にp型不純物を含むp型領域である。ボディコンタクト領域24は、ソース領域22が形成されていない位置において半導体基板12の上面に露出するように形成されている。ボディコンタクト領域24は、表面電極14に接しており、表面電極14に対してオーミック接続されている。低濃度領域26は、低濃度にp型不純物を含むp型領域である。低濃度領域26のp型不純物濃度は、ボディコンタクト領域24のp型不純物濃度よりも低い。低濃度領域26は、ソース領域22及びボディコンタクト領域24の下側に形成されており、これらの領域に接している。
【0015】
ドリフト領域28(請求項の第3領域の一例)は、低濃度にn型不純物を含むn型領域である。ドリフト領域28のn型不純物濃度は、ソース領域22のn型不純物濃度よりも低い。ドリフト領域28は、ボディ領域23の下側に形成されている。ドリフト領域28は、ボディ領域23に接しており、ボディ領域23によってソース領域22から分離されている。
【0016】
ドレイン領域30は、高濃度にn型不純物を含むn型領域である。ドレイン領域30のn型不純物濃度は、ドリフト領域28のn型不純物濃度よりも高い。ドレイン領域30は、ドリフト領域28の下側に形成されている。ドレイン領域30は、ドリフト領域28に接しており、ドリフト領域28によってボディ領域23から分離されている。ドレイン領域30は、半導体基板12の下面に露出する範囲に形成されている。ドレイン領域30は、裏面電極18に対してオーミック接続されている。
【0017】
図1、2に示すように、セル領域20内の半導体基板12の上面には、複数のゲートトレンチ34が形成されている。
図1に示すように、各ゲートトレンチ34は、半導体基板12の表面において、互いに平行に直線状に伸びている。
図2に示すように、各ゲートトレンチ34は、ソース領域22とボディ領域23を貫通し、ドリフト領域28に達するように形成されている。各ゲートトレンチ34内には、ボトム絶縁層34aと、ゲート絶縁膜34bと、ゲート電極34cが形成されている。ボトム絶縁層34aは、ゲートトレンチ34の底部に形成された厚い絶縁層である。ボトム絶縁層34aの上側のゲートトレンチ34の側面は、ゲート絶縁膜34bによって覆われている。ボトム絶縁層34aの上側のゲートトレンチ34内には、ゲート電極34cが形成されている。ゲート電極34cは、ゲート絶縁膜34bを介して、ソース領域22、ボディ領域23及びドリフト領域28と対向している。ゲート電極34cは、ゲート絶縁膜34b及びボトム絶縁層34aによって、半導体基板12から絶縁されている。ゲート電極34cの上面は、絶縁層34dによって覆われている。絶縁層34dによって、ゲート電極34cは表面電極14から絶縁されている。
【0018】
p型フローティング領域32(請求項の第4領域の一例)は、半導体基板12内であって、各ゲートトレンチ34の底面に露出する範囲(すなわち、当該底面に接する範囲)に形成されている。各p型フローティング領域32の周囲は、ドリフト領域28に囲まれている。各p型フローティング領域32は、ドリフト領域28によって、互いに分離されている。また、各p型フローティング領域32は、ドリフト領域28によってボディ領域23から分離されている。
【0019】
外周領域50内の半導体基板12の表面に露出する範囲には、p型の表面領域51が形成されている。表面領域51は、ボディ領域23と略同じ深さまで広がっている。表面領域51の上面全体は絶縁層16に覆われている。したがって、表面領域51は、表面電極14とは接していない。上述したドリフト領域28及びドレイン領域30は、外周領域50まで広がっている。ドリフト領域28とドレイン領域30は、半導体基板12の端面12aまで広がっている。ドリフト領域28は、表面領域51に対して下側から接している。
【0020】
外周領域50内の半導体基板12の上面には、複数の外周トレンチ54(すなわち、54a及び54b)が形成されている。各外周トレンチ54は、表面領域51を貫通して、ドリフト領域28に達するように形成されている。
図1に示すように、各外周トレンチ54は、半導体基板12を上側から見たときに、セル領域20の周囲を一巡する環状に形成されている。
図2に示すように、表面領域51は、最も内周側の外周トレンチ54によってボディ領域23(すなわち、ソース領域22及び表面電極14と接しているp型領域)から分離されている。また、各表面領域51は、各外周トレンチ54によって互いに分離されている。言い換えると、最も内周側の外周トレンチ54の内側のp型領域がボディ領域23であり、最も内周側の外周トレンチ54より外周側のp型領域が表面領域51である。したがって、外周トレンチ54は、ボディ領域23の外側に形成されている。各外周トレンチ54内には、絶縁層53が形成されている。
【0021】
外周トレンチ54は、第1外周トレンチ54aと第2外周トレンチ54bを有する。第1外周トレンチ54aの深さは、ゲートトレンチ34の深さと略等しい。第2外周トレンチ54bは、第1外周トレンチ54aよりも深い。最も内周側の外周トレンチ54は、第1外周トレンチ54aである。内周側から外周側に向かって、第1外周トレンチ54aと第2外周トレンチ54bが交互に配置されている。
【0022】
半導体基板12内であって、各外周トレンチ54の底面に露出する範囲(すなわち、当該底面に接する範囲)には、p型の底面領域56(すなわち、56a及び56b)が形成されている。底面領域56は、外周トレンチ54の底面全体を覆うように、外周トレンチ54に沿って形成されている。各底面領域56の周囲は、外周領域50内のドリフト領域28(請求項の第7領域の一例)に囲まれている。各底面領域56は、外周領域50内のドリフト領域28によって、互いに分離されている。
【0023】
底面領域56は、第1外周トレンチ54aの底面に露出する第1底面領域56a(請求項の第5領域の一例)と、第2外周トレンチ54bの底面に露出する第2底面領域56b(請求項の第6領域の一例)を有する。第1底面領域56aは、第2底面領域56bよりも浅い位置に形成されている。すなわち、第1底面領域56aの下端55aは、第2底面領域56bの上端55bよりも上側に位置する。したがって、第1底面領域56aの下端55aと第2底面領域56bの上端55bの間には、半導体基板12の深さ方向に間隔D1が形成されている。第1底面領域56aは、半導体基板12の上面を平面視したときに(すなわち、半導体基板12の深さ方向に沿って見たときに)、隣の第2底面領域56bと部分的に重なるように配置されている。
【0024】
第1底面領域56aには、p型不純物としてAl(アルミニウム)が含有されている。第2底面領域56bには、p型不純物としてB(ボロン)が含有されている。
【0025】
第2底面領域56bの厚みDbは、第1底面領域56aの厚みDaよりも大きい。また、第2底面領域56bの幅Wb(内周側から外周側に向かう方向の幅)は、第1底面領域56aの幅Waよりも大きい。このため、第2底面領域56bの界面(ドリフト領域28との界面)のカーブが、第1底面領域56aの界面(ドリフト領域28との界面)のカーブよりも緩い。すなわち、第2底面領域56bの界面の曲率が、第1底面領域56aの界面の曲率よりも小さい。
【0026】
次に、半導体装置10の動作について説明する。半導体装置10を動作させる際には、裏面電極18と表面電極14の間に裏面電極18がプラスとなる電圧が印加される。さらに、ゲート電極34cに対してゲートオン電圧が印加されることで、セル領域20内のMOSFETがオンする。すなわち、ゲート電極34cに対向している位置のボディ領域23にチャネルが形成され、表面電極14から、ソース領域22、チャネル、ドリフト領域28、ドレイン領域30を経由して、裏面電極18に向かって電子が流れる。
【0027】
ゲート電極34cへのゲートオン電圧の印加を停止すると、チャネルが消失し、MOSFETがオフする。MOSFETがオフすると、ボディ領域23とドリフト領域28の境界部のpn接合からドリフト領域28内に空乏層が広がる。空乏層がセル領域20内のp型フローティング領域32に到達すると、p型フローティング領域32からもドリフト領域28内に空乏層が広がる。したがって、2つのp型フローティング領域32の間に位置するドリフト領域28は、両側のp型フローティング領域32から広がる空乏層によって空乏化される。このように、セル領域20内に空乏層が伸展することで、セル領域20内における高い耐圧が実現される。
【0028】
また、上述したpn接合から伸びる空乏層は、最もセル領域20側に位置する第1外周トレンチ54aの下側の第1底面領域56aに到達する。すると、第1底面領域56aから、その周囲のドリフト領域28内に空乏層が広がる。第1底面領域56aとその隣(外周側の隣)の第2底面領域56bの間の間隔が狭いので、第1底面領域56aから伸びる空乏層は隣の第2底面領域56bに到達する。すると、その第2底面領域56bからその周囲のドリフト領域28内に空乏層が広がる。第2外周トレンチ54bとその隣(外周側の隣)の第1底面領域56aの間の間隔が狭いので、第2底面領域56bから伸びる空乏層は隣の第1底面領域56aに到達する。このように、第1底面領域56aと第2底面領域56bを経由して、空乏層が外周側に伸展する。このようにして、最も内周側の底面領域56から最も外周側の底面領域56まで空乏層が伸びる。このように、外周領域50内のドリフト領域28内に空乏層が広く伸展する。底面領域56同士は、ドリフト領域28によって互いに分離されている。したがって、各底面領域56の間において電位差が生じる。したがって、外周領域50内において、内周側から外周側に向かって徐々に電位が変化ように電位が分布する。このように、外周領域50内に空乏層が伸展するとともに、外周領域50内に緩やかに変化する電位分布が形成されることで、外周領域50における電界集中が抑制される。したがって、半導体装置10は耐圧が高い。
【0029】
また、第2底面領域56bは、第1底面領域56aよりも下側に突出している。このため、外周領域50に空乏層が広がっている状態では、第2底面領域56bの周囲で電界が集中し易い。しかしながら、半導体装置10では、第2底面領域56bの厚みDbが厚く、これによって、第2底面領域56bの界面のカーブが緩くなっている。このように第2底面領域56bの界面のカーブが緩くなっていることで、第2底面領域56b近傍での電界集中が抑制される。これによって、半導体装置10の耐圧がより向上されている。
【0030】
次に、半導体装置10の製造方法について説明する。実施例1の製造方法では、まず、
図3に示すように、エピタキシャル成長、イオン注入等によって、半導体基板12にソース領域22、ボディ領域23及び表面領域51を形成する。
【0031】
次に、
図4に示すように、半導体基板12の表面に開口を有するマスク60(例えば酸化膜)を形成し、異方性エッチングによって開口内の半導体基板12をエッチングする。これによって、第2外周トレンチ54bを形成する。
【0032】
次に、B(ボロン:請求項の第2種の第2導電型不純物の一例)を第2外周トレンチ54bの底面に注入し、その後、半導体基板12をアニール(第1アニール)する。これによって、注入されたBを活性化させるとともに拡散させる。これによって、
図5に示すように、第2底面領域56bを形成する。
【0033】
次に、第2外周トレンチ54b内に絶縁体を成長させることで、第2外周トレンチ54b内に絶縁層53を形成する。
【0034】
次に、
図6に示すように、半導体基板12の表面に開口を有するマスク62(例えば酸化膜)を形成し、異方性エッチングによって開口内の半導体基板12をエッチングする。これによって、第1外周トレンチ54aとゲートトレンチ34を形成する。第1外周トレンチ54aとゲートトレンチ34は、第2外周トレンチ54bよりも浅く形成する。また、第1外周トレンチ54aは、第1外周トレンチ54aと第2外周トレンチ54bが交互に配置されるように、第2外周トレンチ54bの隣に形成する。
【0035】
次に、Al(アルミニウム:請求項の第1種の第2導電型不純物の一例)を第1外周トレンチ54aの底面とゲートトレンチ34の底面に注入し、その後、半導体基板12をアニール(第2アニール)する。なお、第2アニールは、第1アニールよりも低温で実施する。これによって、注入されたAlを活性化させるとともに拡散させる。これによって、
図7に示すように、第1底面領域56aとp型フローティング領域32を形成する。
【0036】
次に、第1外周トレンチ54aとゲートトレンチ34の内部に絶縁体を成長させる。これによって、第1外周トレンチ54a内に絶縁層53を形成する。次に、ゲートトレンチ34内の絶縁体を部分的に除去し、その後、ゲートトレンチ34内にゲート絶縁膜34bとゲート電極34cを形成する。
【0037】
次に、半導体基板12の上面に、絶縁層34d、絶縁層16及び表面電極14を形成することで、半導体装置10の上面側の構造が完成する。次に、半導体基板12の下面側の構造(すなわち、ドレイン領域30及び裏面電極18)を形成する。これによって、
図1、2の半導体装置10が完成する。
【0038】
上述した半導体装置10の製造工程においては、半導体基板12の上面に沿う方向(すなわち、X方向及びY方向)において、第1外周トレンチ54aと第2外周トレンチ54bの相対位置にずれが生じやすい。すなわち、第1外周トレンチ54aと第2外周トレンチ54bの位置のX方向及びY方向における誤差が大きい。特に、上記の実施例では、第1外周トレンチ54aと第2外周トレンチ54bを別工程で形成するため、この誤差はより大きい。第1底面領域56aのX方向及びY方向の位置は第1外周トレンチ54aの位置によって変化し、第2底面領域56bのX方向及びY方向の位置は第2外周トレンチ54bの位置によって変化する。このため、X方向及びY方向において、第1底面領域56aと第2底面領域56bの相対位置にずれが生じやすい。しかしながら、この半導体装置10では、半導体基板12の厚み方向(すなわち、Z方向)において、第1底面領域56aと第2底面領域56bの位置が異なる。より詳細には、第1底面領域56aと第2底面領域56bの間に、間隔D1が形成されている。このため、第1底面領域56aと第2底面領域56bの相対位置がX方向またはY方向に大きくずれたとしても、第1底面領域56aと第2底面領域56bが繋がることがない。例えば、
図8に示すように、製造誤差によって第2底面領域56bが第1底面領域56a側にシフトしたとしても、第1底面領域56aは第2底面領域56bと繋がらない。このように、半導体装置10の構造によれば、製造誤差によって第1底面領域56aが第2底面領域56bと繋がることを防止することができる。
【0039】
また、第1底面領域56aのZ方向の位置は、第1外周トレンチ54aの深さと第1底面領域56aに対する不純物の注入範囲及び拡散範囲によって変化する。また、第2底面領域56bのZ方向の位置は、第2外周トレンチ54bの深さと第2底面領域56bに対する不純物の注入範囲及び拡散範囲によって変化する。各トレンチの深さと不純物の注入範囲及び拡散範囲は、正確に制御することができる。このため、第1底面領域56a及び第2底面領域56bのZ方向の位置は、これらのX方向及びY方向の位置に比べて正確に制御することができる。したがって、上記の製造方法によれば、第1底面領域56aと第2底面領域56bのZ方向の間隔D1を正確に制御することができる。このため、間隔D1を短くすることが可能である。このため、上記の製造方法によれば、外周領域50の耐圧を向上させることができる。
【0040】
また、上記の製造方法では、第1底面領域56aのp型不純物としてAlを注入し、第2底面領域56bのp型不純物としてBを注入する。半導体基板12(すなわち、SiC)の中におけるBの拡散係数は、Alの拡散係数よりも大きい。したがって、第2底面領域56bを第1底面領域56aよりも大きくすることができる。
【0041】
また、上記の製造方法では、第1アニールを、第2アニールよりも高温で実施する。このため、第1アニールにおいてBの拡散距離がより大きくなる。これによっても、第2底面領域56bが第1底面領域56aよりも大きく形成されるようになっている。
【0042】
また、上記の製造方法では、第2底面領域56bを第1底面領域56aよりも先に形成する。このため、第2底面領域56bは、第1アニールだけでなく第2アニールでも加熱される。第2アニールでは、第2底面領域56b中のBがさらに拡散するため、第2底面領域56bが拡大する。これによっても、第2底面領域56bが第1底面領域56aよりも大きく形成されるようになっている。
【0043】
以上のように第2底面領域56bが第1底面領域56aよりも大きくなるため、第2底面領域56bの厚みDbが第1底面領域56aの厚みDaよりも大きくなる。その結果、第2底面領域56bの界面のカーブが第1底面領域56aの界面のカーブよりも緩やかになる。このように第2底面領域56bが形成されるため、上述したようにMOSFETのオフ時に第2底面領域56bの近傍における電界集中を抑制することができる。
【0044】
また、第1底面領域56aの周囲には電界集中が生じ難いので、第1底面領域56aの界面の曲率が大きくても、電界集中の問題は生じない。また、このように第1底面領域56aを小型化することで、半導体装置10を小型化することが可能となる。
【0045】
また、上記の製造方法では、第1外周トレンチ54aと第2外周トレンチ54bを別の工程で形成した。第1外周トレンチ54aと第2外周トレンチ54bを同時に形成すると、第1外周トレンチ54aと第2外周トレンチ54bの間の薄い隔壁(半導体層)にクラックが生じ易い。これに対し、上記のように、第2外周トレンチ54bを形成し、その後、第2外周トレンチ54bに絶縁層53を埋め込んだ後で第1外周トレンチ54aを形成すると、薄い隔壁が形成されないのでクラックを抑制することができる。なお、第1外周トレンチ54aを先に形成し、第1外周トレンチ54aに絶縁層53を埋め込んだ後で第2外周トレンチ54bを形成しても、隔壁のクラックの問題を解消することができる。
【実施例2】
【0046】
実施例2の半導体装置では、第1底面領域56aに含まれるp型不純物と第2底面領域56bに含まれるp型不純物が、共にBである。また、第1底面領域56aにおけるC(カーボン)の濃度が、第2底面領域56bにおけるCの濃度よりも高い。実施例2の半導体装置のその他の構成は、実施例1の半導体装置10と等しい。このため、実施例2の半導体装置も、実施例1の半導体装置10と同様に動作する。
【0047】
実施例2の半導体装置の製造方法について説明する。まず、実施例1と同様にして、
図6に示す構造を形成する。次に、Cを第1外周トレンチ54aの底面に注入する。これによって、第1外周トレンチ54aの底面近傍におけるCの濃度が上昇する。次に、Bを第1外周トレンチ54aの底面に注入する。すなわち、ここでは、第1外周トレンチ54aの底面にCとBをコドープする。次に、半導体基板12をアニール(第2アニール)する。これによって、半導体基板12に注入されたBを活性化させるとともに拡散させる。これによって、
図7に示すように、第1底面領域56aを形成する。なお、実施例2の製造方法でも、第1底面領域56aと同時にp型フローティング領域32を形成してもよい。その後、実施例1の方法と同様にして、実施例2の半導体装置を完成させる。
【0048】
半導体基板12(すなわち、SiC)にBとCをコドープすると、半導体基板12中におけるBの拡散係数が小さくなる。すなわち、Bが拡散し難くなる。したがって、実施例2の製造方法によれば、小さい第1底面領域56aを形成することができる。また、第2底面領域56bには、Bのみが注入されており、Cが注入されていないので、実施例2の製造方法でも、実施例1の製造方法と同様に、大きい第2底面領域56bが形成される。したがって、
図2に示すように、実施例2の製造方法でも、第2底面領域56bを第1底面領域56aより大きくすることができる。
【0049】
なお、実施例2の製造方法でも、実施例1の製造方法と同様に、第2アニールの温度を第1アニールの温度より高くしてもよい。
【0050】
なお、上述した実施例1、2では、最も内周側(ボディ領域23に近い側)の外周トレンチ54が、第1外周トレンチ54aであった。しかしながら、
図9に示すように、最も内周側の外周トレンチ54が第2外周トレンチ54b(深いトレンチ)であってもよい。また、
図2、9では、ゲートトレンチ34と最も内周側の外周トレンチ54が略同じ深さを有していた。しかしながら、最も内周側の外周トレンチ54は、ゲートトレンチ34より深くてもよいし、ゲートトレンチ34より浅くてもよい。
【0051】
また、上述した実施例では、第1外周トレンチ54aと第2外周トレンチ54bが交互に複数個形成されていた。しかしながら、一部の領域で、第1外周トレンチ54aが2つ並んで形成されていてもよいし、第2外周トレンチ54bが2つ並んで形成されていてもよい。また、外周領域50に第1外周トレンチ54aと第2外周トレンチ54bが1つずつ形成されていてもよい。すなわち、外周領域50内に、第1外周トレンチ54aの隣に第2外周トレンチ54bが形成されている構造が形成されていれば、上述した実施例の効果を得ることができる。
【0052】
また、上述した実施例では、第2底面領域56bが第1底面領域56aよりも厚かった。しかしながら、第2底面領域56b近傍での電界集中がそれほど問題とならない場合には、第2底面領域56bの厚みが第1底面領域56aの厚み以下であってもよい。
【0053】
また、上述した実施例では、半導体基板12の上面を平面視したときに第1底面領域56aと第2底面領域56bとが部分的に重なっていた。しかしながら、
図10に示すように、これらが重なっていなくてもよい。このような構成でも、X方向またはY方向の位置の誤差によって第1底面領域56aと第2底面領域56bが繋がることを防止することができる。また、第1底面領域56aと第2底面領域56bとが重なっていなくても、第1底面領域56aから第2底面領域56bに(または、第2底面領域56aから第1底面領域56bに)空乏層を伸展させることは可能である。
【0054】
また、上述した実施例では、半導体基板12がSiCにより構成されていたが、Si等の他の材質によって構成された半導体基板を使用してもよい。また、上述した実施例のp型フローティング領域32に代えて、所定の電位に接続されているp型領域が形成されていてもよい。
【0055】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。