特許第6208624号(P6208624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208624
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】超高層用エレベーターの巻上機揚重方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/00 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   B66B7/00 G
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-107094(P2014-107094)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-221712(P2015-221712A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武富 宏義
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−045348(JP,A)
【文献】 特開平07−076473(JP,A)
【文献】 特開平07−144850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00− 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高層用エレベーターに使用されるエレベーター巻上機をかご昇降路の最上階機械室に揚重する揚重方法において、
超高層用建物の最上階乗場に揚重ウィンチを設置する工程と、
前記揚重ウィンチから引き出され又は巻き取られる減速ロープを、前記かご昇降路内の側面に設置された方向転換金車を介して、揚重梁に吊り下げられた定滑車と前記エレベーター巻上機と連動して昇降する動滑車との間で巻き回して減速ローピングを形成する工程と、
前記動滑車と揚重すべき前記エレベーター巻上機とを長さ方向に分離可能な懸垂ロープで連結する工程と、
前記エレベーター巻上機を仮保持する分割可能な仮保持ロープを前記かご昇降路の頂部から垂下する工程と、
前記揚重ウィンチを駆動させて前記懸垂ロープによって前記エレベーター巻上機を中間階まで揚重する工程と、
前記中間階で前記エレベーター巻上機を前記懸垂ロープから下側の第1の仮保持ロープに吊り替える工程と、
前記第1の仮保持ロープへの吊り替えの状態で前記懸垂ロープのうち下側の第1の懸垂ロープを分離し前記第1の懸垂ロープの上側の第2の懸垂ロープに前記エレベーター巻上機を連結して前記エレベーター巻上機を吊り戻す工程と、
前記エレベーター巻上機を吊り戻した後、前記第1の仮保持ロープを取り外し、前記揚重ウィンチを駆動させて前記懸垂ロープによって前記中間階よりも上の次の中間階まで揚重する工程と、
前記次の中間階で前記エレベーター巻上機を前記第1の懸垂ロープから前記第1の仮保持ロープの上側の第2の仮保持ロープに吊り替える工程と、
前記第2の仮保持ロープへの吊り替えの状態で前記第2の懸垂ロープを分離し、前記減速ロープ側に前記エレベーター巻上機を連結して前記エレベーター巻上機を吊り戻す工程と、
前記減速ロープ側に前記エレベーター巻上機を吊り戻した後、再度前記揚重ウィンチを駆動させて前記エレベーター巻上機を前記機械室まで揚重する工程と、
を備えたことを特徴とする超高層用エレベーターの巻上機揚重方法。
【請求項2】
請求項1において、
牽引力とロープ巻き取り量の規定された前記揚重ウィンチを使用する場合、前記牽引力の不足に対して前記減速ローピングで対応し、当該減速ローピングに伴って前記ロープ巻き取り量による揚程不足に対して前記分離可能な懸垂ロープを直列接続して対応することを特徴とする超高層用エレベーターの巻上機揚重方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超高層建物において、揚重能力の小さな廉価な汎用揚重機を使用して、エレベーター巻上機のような重量物を高高位置まで揚重する揚重方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年建築物の超高層化に伴いエレベーターの超高速化・大型化が進んでおり、これに比例してエレベーターを駆動する巻上機も超大型化・超重量化してきている傾向がある。特に、国外では100階建て以上の建物が数多く建設計画されこの傾向が顕著である。
【0003】
このような超高層建築物に設置するエレベーターの巻上機は最上階の機械室に設置する必要があるため、超重量物の巻上機を如何にして最上階機械室まで揚重するかが大きな課題となっている。
【0004】
もっとも、揚重能力の大きい建築用タワークレーンを使用することが可能であれば、このタワークレーンで、巻上機を揚重できるが、特に国外ではタワークレーンの能力が低い場合や、タワークレーン設置時期に工期が合致せずにタワークレーンを使用した巻上機の揚重ができない場合が多い。
【0005】
さらに国内でも、既設ビルの超高層エレベーターの入れ替え工事などでは、タワークレーンが設置できないため、タワークレーンによる揚重は不可能であった。
【0006】
ここで、一般的なエレベーターの巻上機の揚重方法に関する従来技術としては、例えば特許文献1によれば、ウィンチからのウィンチロープを滑車を介して巻き回し、このウィンチロープを巻上機に装着した玉掛けワイヤに係合させ、ウィンチを駆動させることで、昇降路頂部の機械室へ向けて巻上機を揚重する方法が提案されている。
【0007】
また、重量物を揚重する従来技術として、例えば特許文献2によれば、揚重能力を増加させるため、一定位置に吊持される定滑車と、揚重すべき重量物と同期して昇降する動滑車とを設けて、2対1ローピングとして揚重する方法が従来から提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−165073号公報
【特許文献2】特開2003−247355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に市販されている汎用揚重機(ウィンチ)は、牽引ロープを巻き取る巻き取りドラムの大きさに限界があり、巻き取りドラムの径を大きくすれば巻き取れるロープの長さ(揚程)は大きくなるが、牽引力は減少する。この揚程と牽引力の双方を満たすためには、ウィンチ本体も大型になり重量も増してしまう。
【0010】
一般市販されている汎用ウィンチの能力は牽引力2〜5ton、ロープの巻き取り量(揚程)は200mが限度である。この能力では、1:1ローピングで5tonのエレベーター巻上機を揚程200m、又は2:1ローピングで10tonの巻上機を揚程100m(25〜30階程度の建物高さ)までしか揚重することができない。
【0011】
従って、上記の汎用ウィンチを使用した場合、上記の特許文献lの揚重方法では、10〜20階建ての中・高層用エレベーターの巻上機を揚重可能であるが、50〜100階建て又はそれ以上の超高層用エレベータでは、ウィンチ能力(揚程と牽引力)が不足し、適用することができない。
【0012】
さらに、上記の特許文献2に開示された2対1ローピングとする揚重方法でも、汎用ウインチでは揚重高さ(揚程)に対応できないという不都合が生じていた。
【0013】
本発明の目的は、上記不都合に鑑みてなされたものであり、50〜100階建て或いはそれ以上の超高層エレベーターにおいて、重量物であるエレベーター巻上機を、比較的能力の小さい汎用の揚重ウィンチを使用して高高所の建物頂部の機械室へ揚重可能とする揚重方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するため、超高層用エレベーターに使用されるエレベーター巻上機をかご昇降路の最上階機械室に揚重する揚重方法において、超高層用建物の最上階乗場に揚重ウィンチを設置する工程と、前記揚重ウィンチから引き出され又は巻き取られる減速ロープを、前記かご昇降路内の側面に設置された方向転換金車を介して、揚重梁に吊り下げられた定滑車と前記エレベーター巻上機と連動して昇降する動滑車との間で巻き回して減速ローピングを形成する工程と、前記動滑車と揚重すべき前記エレベーター巻上機とを長さ方向に分離可能な懸垂ロープで連結する工程と、前記エレベーター巻上機を仮保持する分割可能な仮保持ロープを前記かご昇降路の頂部から垂下する工程と、前記揚重ウィンチを駆動させて前記懸垂ロープによって前記エレベーター巻上機を中間階まで揚重する工程と、前記中間階で前記エレベーター巻上機を前記懸垂ロープから下側の第1の仮保持ロープに吊り替える工程と、前記第1の仮保持ロープへの吊り替えの状態で前記懸垂ロープのうち下側の第1の懸垂ロープを分離し前記第1の懸垂ロープの上側の第2の懸垂ロープに前記エレベーター巻上機を連結して前記エレベーター巻上機を吊り戻す工程と、前記エレベーター巻上機を吊り戻した後、前記第1の仮保持ロープを取り外し、前記揚重ウィンチを駆動させて前記懸垂ロープによって前記中間階よりも上の次の中間階まで揚重する工程と、前記次の中間階で前記エレベーター巻上機を前記第1の懸垂ロープから前記第1の仮保持ロープの上側の第2の仮保持ロープに吊り替える工程と、前記第2の仮保持ロープへの吊り替えの状態で前記第2の懸垂ロープを分離し、前記減速ロープ側に前記エレベーター巻上機を連結して前記エレベーター巻上機を吊り戻す工程と、前記減速ロープ側に前記エレベーター巻上機を吊り戻した後、再度前記揚重ウィンチを駆動させて前記エレベーター巻上機を前記機械室まで揚重する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高価な大型揚重ウィンチを使用せず、また建物の特別な補強も要せず、廉価で比較的小能力の汎用の揚重ウィンチによって、超高層建築物の高所までエレベーター巻上機などの超重量物を揚重することができる。
【0016】
さらに、懸垂ロープの揚重段数を増やせば500m又は800mの超超高層建物でも特殊な揚重ウィンチを使用することなく、また建物の補強をすることなく、超重量物であるエレベーター巻上機を高高所の機械室まで揚重することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る超高層用エレベーター用の巻上機揚重方法に関する概念を示す構成図である。
図2】本実施形態に係る巻上機揚重方法における重量貨物(エレベーター巻上機)の揚重方法の概要を図解する構成図である。
図3】本実施形態に係る巻上機揚重方法によってエレベーター巻上機を揚程の1/3揚重時の中間階1まで揚重する構成図である。
図4】本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第1の荷取りロープと第1の仮保持ロープとを連結する説明図である。
図5】本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第1の仮保持ロープにエレベーター巻上機の荷重を移動する説明図である。
図6】本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第1の荷取りロープにエレベーター巻上機の荷重を移動完了する説明図である。
図7】本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第1の懸垂ロープを取り外しする説明図である。
図8】本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第2の懸垂ロープと第2の荷取りロープとを連結する説明図である。
図9】本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第2の懸垂ロープにエレベーター巻上機の荷重を移動完了する説明図である。
図10】本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第1の荷取りロープを第1の仮保持ロープから取り外しする説明図である。
図11】本実施形態に係る巻上機揚重方法による中間階2までの揚程の2/3揚重時における第1の荷取りロープと第2の仮保持ロープとを連結する説明図である。
図12】本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の2/3揚重時における第2の仮保持ロープにエレベーター巻上機の荷重を移動する説明図である。
図13】本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の2/3揚重時における第2の懸垂ロープを第2の荷取りロープから取り外しする説明図である。
図14】本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の2/3揚重時における第2の荷取りロープを動滑車に直接に連結する説明図である。
図15】本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の2/3揚重時における動滑車にエレベーター巻上機の荷重を移動完了する説明図である。
図16】本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の2/3揚重時における第1の荷取りロープを第2の仮保持ロープから取り外しする説明図である。
図17】本実施形態に係る巻上機揚重方法によってエレベーター巻上機を機械室にまで揚重する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る超高層用エレベーター用の巻上機揚重方法について、巻上機の揚重の構成概念と揚重方法の概要を図1図2を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態に係る超高層用エレベーター用の巻上機揚重方法に関する概念を示す構成図であり、図2は本実施形態に係る巻上機揚重方法における重量貨物(エレベーター巻上機)の揚重方法の概要を図解する構成図である。
【0019】
図1図2において、1はエレベーターホール1階、2はエレベーターホール中間階1(下層階)、3はエレベーターホール中間階2(上層階)、4はエレベーターホール最上階(最上階)、5は楊程H、6は楊程Hの1/3、7はエレベータシャフト(昇降路又は塔内)、8はピット(昇降路底部)、9は機械室(昇降路頂部)、10は揚重梁(H形鋼又はコンクリート梁)、11はピット仮受け構台、12は揚重用巻上機(揚重ウィンチ)、13は方向転換金車、14は定滑車、15は動滑車、16は牽引(巻き上げ)ロープ、17は減速ロープ(3:1減速ロープ)、18は第1の懸垂ロープ、19は第2の懸垂ロープ、20は第1の仮保持ロープ、21は第2の仮保持ロープ、22は玉掛けロープ、23は揚重貨物(エレベーター巻上機)、24は第1の荷取りロープ、25は第2の荷取りロープ、26は引き鉤棒、をそれぞれ表す。
【0020】
重量物である揚重貨物(エレベーター巻上機)23は、エレベーターホール最上階4に設置した汎用の揚重用巻上機(揚重ウィンチ)12によって、エレベーターホール1階1からエレベーター塔内(昇降路)7を経由して建物頂部(昇降路頂部)に設けられたエレベーター機械室9まで揚重されて設置される。ここで、汎用の揚重ウィンチ12は予め最上階4の乗り場に設置しておく。さらに、揚重ウィンチ12から引き出された牽引ロープ16及び減速ロープ17を定滑車14と動滑車15との間で巻き回して減速ローピングを形成しておく。
【0021】
図1は本実施形態に係る巻上機揚重方法の概念構成を示すものであり、巻上機揚重方法の主たる基本的構成は、揚重梁10(図2を参照)に吊り下げられた定滑車14と、エレベーター巻上機23と連動して昇降する動滑車15と、定滑車14と動滑車15とに巻き回された牽引ロープ16及び減速ロープ17と、牽引ロープ16及び減速ロープ17を牽引する揚重用巻上機(揚重ウィンチ)12と、動滑車15に吊り下げられたエレベーター巻上機23と、を備えている。
【0022】
図2に示すエレベータシャフト(塔内)7の全体断面図において、本実施形態は、重量物である揚重貨物(エレベーター巻上機)23を、最上階エレベーターホール4に設置した汎用の揚重用巻上機(揚重ウィンチ)13を用いて、エレベーターホール1階1からエレベーター塔内7を経由して建物頂部(昇降路頂部)にあるエレベーター機械室9まで揚重するものである。
【0023】
揚重に際して、例えば1:1ローピングで牽引力が5ton、ロープ巻き取り量が200mの汎用の揚重ウィンチ12を用いて、15ton未満の貨物を200mの高高所の機械室9に揚重しようとする場合に、揚重ウィンチ12の牽引力が不足するため、図2に示すローピング17を滑車を使って3:1に減速(揚重力は増大)しなければ必要揚重力(15ton)が得られない。しかし、ローピング17を3:1に減速すると揚程が1/3(67m)に減少してしまい、200mの高さまで揚重出来ない。
【0024】
そこで、本実施形態では、揚重の高さを補うために、図2の動滑車15に対して、長さが揚重ウィンチ12の巻き取り量200mの1/3(67m)の第1と第2の懸垂ロープ18,19を2本直列接続し、これらの懸垂ロープ18,19の下端を貨物(エレベーター巻上機23)に接続している。
【0025】
このとき、懸垂ロープ18,19は、40φの太い(破断係数97ton、安全係数6)を使用しても良いが、1本の重量が非常に重くなり、取り扱いが非常に困難になるので同じ破断力になるような20φ程度の中太のものを複数本並列にして垂下すると作業が容易になる。
【0026】
また、揚重ウィンチ12による巻取り後の貨物(エレベーター巻上機23)吊り替えのために(中間階1である下層階2と中間階2である上層階3とでそれぞれエレベーター巻上機23を吊り替えるために(詳細は後述))、予め貨物(エレベーター巻上機23)側に第1の荷取りロープ24と第2の荷取りロープ25を取り付けておく。具体的な構成として、第1と第2の荷取りロープ24,25をエレベーター巻上機23の玉掛けロープ22に連結させておく。
【0027】
さらに、揚重ウィンチ12の稼働で牽引ロープ16及び減速ロープ17による巻取り後の貨物(エレベーター巻上機23)を下層階2と上層階3とで吊り替えるときに必要なものとして、昇降路7の頂部に位置する機械室9の天井部の揚重梁10に、1本の長さが揚程200mの1/3の67mとなる第1の仮保持ロープ20と第2の仮保持ロープ21を直列接続して分割可能に取り付けておく。ここで、第1と第2の仮保持ロープ20,21の予めの垂下作業には図示しない小型ウィンチ等を用いて行う。
【0028】
本実施形態では、汎用の揚重ウィンチ12を用いて、重量物であるエレベーター巻上機23を長大な揚程5の高高位置まで揚重する超高層用エレベーターの巻上機揚重方法を提供するものであって、動滑車15とエレベーター巻上機23とを連結する第1の懸垂ロープ18と第2の懸垂ロープ19(図2を参照)を分離可能にする工程と構成と、図2に示す中間階1(下層階2)と中間階2(上層階3)においてエレベーター巻上機23を吊り替える吊り替え工程と構成とに、主たる特徴を有するものである。本実施形態における上記特徴に関する揚重方法について順を追って以下説明する。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係る巻上機揚重方法によって、エレベーター巻上機23をエレベーターホール中間階1である下層階2まで揚重する工程について、図3図10を参照しながら以下説明する。
【0030】
ここで、図3は本実施形態に係る巻上機揚重方法によってエレベーター巻上機を揚程の1/3揚重時の中間階1まで揚重する構成図であり、図4は本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第1の荷取りロープと第1の仮保持ロープとを連結する説明図であり、図5は本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第1の仮保持ロープにエレベーター巻上機の荷重を移動する説明図である。
【0031】
図6は本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第1の荷取りロープにエレベーター巻上機の荷重を移動完了する説明図であり、図7は本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第1の懸垂ロープを取り外しする説明図であり、図8は本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第2の懸垂ロープと第2の荷取りロープとを連結する説明図である。
【0032】
図9は本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第2の懸垂ロープにエレベーター巻上機の荷重を移動完了する説明図であり、図10は本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の1/3揚重時における第1の荷取りロープを第1の仮保持ロープから取り外しする説明図である。
【0033】
まず、図2に示すように、第1と第2の仮保持ロープ20,21を揚重梁10に直列接続して吊り下げておく。さらに、動滑車15に第1と第2の懸垂ロープ18,19を直列接続して吊り下げて、第1の懸垂ロープ18の下部を玉掛けロープ22に連結した状態において、揚重ウィンチ12を駆動し、牽引ロープ16及び減速ロープ17を揚重ウィンチ12のウィンチドラムに200m全量を巻き取れば、エレベーター巻上機23はエレベーターホール中間階(下層階)1まで揚重することができる(図3の図示構造を参照)。
【0034】
エレベーターホール中間階1である下層階2までエレベーター巻上機23を揚重できたときに、エレベーターホール側から引き鉤棒26を使用して、第1の荷取りロープ24と第1の仮保持ロープ20とを手繰り寄せ、不図示のシャックルを用いて両ロープ20,24を連結する(図4の図示構造を参照)。
【0035】
ここで、シャックル(shackle)とは、U字金具と棒金具からなるロープを連結する連結金具であり、連結すべきロープの先にループを形成してこのループにU字金具を通した後にその開口部を棒金具で閉じることによって両ロープを連結するものである。
【0036】
シャックルによって第1の荷取りロープ24と第1の仮保持ロープ20とを連結した後に、揚重ウィンチ12を0.5〜1mほど巻き戻してエレベーター巻上機23を吊り下ろせば、エレベーター巻上機23の荷重は、第1の懸垂ロープ18側から第1の仮保持ロープ20側に移動して吊り替えられて仮保持された状態になる(図5図6の図示構造を参照)。
【0037】
続いて、揚重ウィンチ12を逆回転させて索引ロープ16及び減速ロープ17を巻き戻しながら第1の懸垂ロープ18を垂下させていき、この垂下していく第1の懸垂ロープ18を中間階1のエレベーターホール上で順次、巻き取って回収する(図7の図示構造を参照)。すなわち、第2の懸垂ロープ19に直列接続された第1の懸垂ロープ18を第2の懸垂ロープ19から取り外して回収する。
【0038】
そして、第1の懸垂ロープ18を回収し終わったら、引き鉤棒26で第2の荷取りロープ25と第2の懸垂ロープ19とを手繰り寄せて、両ロープ25,19を連結する(図8の図示構造を参照)。この連結状態において揚重ウィンチ12を0.5〜1m巻き上げれば、エレベーター巻上機23の荷重は、再び、第1の仮保持ロープ20側から第2の懸垂ロープ19側に移動して、第2の懸垂ロープ19側にエレベーター巻上機23が吊り戻された状態となる(図9の図示構造を参照)。
【0039】
ここで、さらに引き鉤棒26を使用して、第1の荷取りロープ24と第1の仮保持ロープ20を手繰り寄せて、両ロープ24,20を分離する(図10の図示構造を参照)。
【0040】
次に、本発明の実施形態に係る巻上機揚重方法によって、エレベーター巻上機23をエレベーターホール中間階2である上層階3まで揚重する工程について、図11図16を参照しながら以下説明する。
【0041】
ここで、図11は本実施形態に係る巻上機揚重方法による中間階2までの揚程の2/3揚重時における第1の荷取りロープと第2の仮保持ロープとを連結する説明図であり、図12は本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の2/3揚重時における第2の仮保持ロープにエレベーター巻上機の荷重を移動する説明図であり、図13は本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の2/3揚重時における第2の懸垂ロープを第2の荷取りロープから取り外しする説明図である。
【0042】
図14は本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の2/3揚重時における第2の荷取りロープを動滑車に直接に連結する説明図であり、図15は本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の2/3揚重時における動滑車にエレベーター巻上機の荷重を移動完了する説明図であり、図16は本実施形態に係る巻上機揚重方法による揚程の2/3揚重時における第1の荷取りロープを第2の仮保持ロープから取り外しする説明図である。
【0043】
図10に示す揚程の1/3揚重時における第2の懸垂ロープ19と第2の荷取りロープ15によるエレベーター巻上機23の吊り下げ状態で揚重ウィンチ12を巻き上げれば、エレベーター巻上機23は、図11の図示構造に示すように、上層階3である中間階2まで揚重される。
【0044】
中間階2まで揚重できたときに、中間階2のエレベーターホール側から引き鉤棒26を使用して、第1の荷取りロープ24と第2の仮保持ロープ21とを手繰り寄せて、上述した図4の説明と同様に、シャックルを用いて両ロープ24,21を連結する(図11の図示構造を参照)。
【0045】
両ロープ24,21の連結後、揚重ウィンチ12を0.5〜1m巻き戻し、揚重貨物であるエレベーター巻上機23を吊り下ろせば、エレベーター巻上機23の荷重は、第2の仮保持ロープ21側に移動して吊り替えられた状態になる(図12の図示構造を参照)。
【0046】
続いて、揚重ウィンチ12を逆回転させて牽引ロープ16及び減速ロープ17を巻き戻しながら第2の懸垂ロープ19を垂下させていき、この垂下していく第2の懸垂ロープ19を中間階2のエレベーターホール上で順次巻き取って回収する(図13の図示構造を参照)。すなわち、動滑車15に接続された第2の懸垂ロープ19を動滑車15から取り外して回収する。
【0047】
そして、第2の懸垂ロープ19を回収し終わったら、引き鉤棒26を使用して、第2の荷取りロープ25と動滑車15とを手繰り寄せて両者を連結する(図14の図示構造を参照)。この連結した状態で揚重ウィンチ12を0.5〜1m巻き上げれば、エレベーター巻上機23の荷重は、第2の荷取りロープ25を介して再び動滑車15側に移動して、動滑車15側にエレベーター巻上機23が吊り戻された状態となる(図15の図示構造を参照)。
【0048】
ここで、図16の図示構造に示すように、さらに引き鉤棒26を使用して、第1の荷取りロープ24と第2の仮保持ロープ21を手繰り寄せて両者を分離する。
【0049】
次に、本発明の実施形態に係る巻上機揚重方法によって、エレベーター巻上機23を建物頂部の機械室9まで揚重する工程について、図17を参照しながら以下説明する。図17は本実施形態に係る巻上機揚重方法によってエレベーター巻上機を機械室にまで揚重する説明図である。
【0050】
図16に示すように、上層階3である中間階2で吊り下げられた状態において、揚重ウィンチ12を巻き上げれば、エレベーター巻上機23は、図17の図示構造に示すように昇降路7の頂部に位置する機械室9まで揚重され、エレベーター巻上機23の揚重方法が完了する。
【0051】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る巻上機揚重方法によれば、複数に分離可能な懸垂ロープ18,19を使用して巻上機23を揚重するとともに、中間階1(下層階2)と中間階2(上層階3)とにおいて、揚重梁10に吊り下げられた分割可能な第1と第2の仮保持ロープ20,21に仮保持して、その仮保持状態で分離可能な懸垂ロープの一部である下部の懸垂ロープ18を取り外して、より上部の懸垂ロープ19にエレベーター巻上機23に連結し、再度揚重する巻上機の揚重方法としたため、比較的能力の小さい汎用の揚重ウィンチ12を使用しても、超重量物であるエレベーター巻上機23を高高所の建物頂部へ揚重可能である。
【0052】
さらに、揚重に際して、懸垂ロープの分離段数を増やせば500m又は800mの超超高層建物でも特殊能力の揚重ウィンチを使用することなく、また建築物の補強をすることなく、超重量物であるエレベーターの巻上機を高高所の機械室まで揚重することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1 エレベーターホール1階
2 エレベーターホール中間階1(下層階)
3 エレベーターホール中間階2(上層階)
4 エレベーターホール最上階(最上階)
5 楊程H
6 楊程の1/3
7 エレベータシャフト(昇降路又は塔内)
8 ピット(昇降路底部)
9 機械室(昇降路頂部)
10 揚重梁(H形鋼又はコンクリート梁)
11 ピット仮受け構台
12 揚重用巻上機(揚重ウィンチ)
13 方向転換金車
14 定滑車
15 動滑車
16 牽引(巻き上げ)ロープ
17 3:1減速ロープ
18 第1の懸垂ロープ
19 第2の懸垂ロープ
20 第1の仮保持ロープ
21 第2の仮保持ロープ
22 玉掛けロープ
23 揚重貨物(エレベーター巻上機)
24 第1の荷取りロープ
25 第2の荷取りロープ
26 引き鉤棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17