【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るオイルタンクは、
風力発電装置のタワーに支持されたナセル内に設置され、該風力発電装置が備えるオイル使用機器に使用されるオイルを収容するためのオイルタンクであって、
前記オイルを収容するための第1オイル室及び第2オイル室と、
前記第1オイル室と前記第2オイル室とを仕切る隔壁と、
当該オイルタンク内のオイルを加熱するためのオイルヒータと、
を少なくとも備え、
前記第2オイル室は、前記オイル使用機器にオイルを供給するためのオイル供給ラインに接続可能に構成され、
前記第1オイル室は、前記オイル使用機器からオイルを回収するためのオイル回収ラインに接続可能に構成され、
前記隔壁には、前記第1オイル室と前記第2オイル室との間で前記オイルが移動可能となるように、前記第1オイル室と前記第2オイル室とを連通する少なくとも二つの開口部が形成されている。
【0009】
上記(1)に記載のオイルタンクによれば、隔壁によって仕切られた第1オイル室と第2オイル室とを少なくとも備えているため、単一のオイル室で構成されたオイルタンクと比較して、オイルのスロッシングを抑制することができる。また、オイル隔壁には、第1オイル室と第2オイル室との間でオイルが移動可能となるように、第1オイル室と第2オイル室とを連通する少なくとも二つの開口部が形成されているため、オイル使用機器で使用されることにより比較的温度が高くなったオイルがオイル回収ラインから第1オイル室へ回収されても、これらの開口部を介したオイルの移動によって第1オイル室と第2オイル室のオイル温度を効果的に均一化することができる。また、オイルヒータによってオイルが加熱されても、上記少なくとも二つの開口部を介したオイルの移動によって第1オイル室と第2オイル室のオイル温度を効果的に均一化することができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の風力発電装置用オイルタンクにおいて、
前記少なくとも二つの開口部は、第1開口部及び該第1開口部の下方に設けられた第2開口部を含む。
【0011】
上記(2)に記載のオイルタンクによれば、オイルの対流によって、第1オイル室と第2オイル室のうち一方から他方へ第1開口部を通って移動したオイルが、該他方から該一方へ第2開口部を通って戻ることが可能となる。すなわち、オイルの対流を利用して第1オイル室と第2オイル室の間でオイルを循環させることが可能となり、第1オイル室と第2オイル室のオイル温度をより効果的に均一化することができる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の風力発電装置用オイルタンクにおいて、
前記オイルヒータは、第1オイル室又は前記第2オイル室に設けられ、
前記第2開口部の下端位置は、前記オイルヒータの下端位置より高い。
【0013】
オイルを加熱するためのオイルヒータが第1オイル室又は第2オイル室に設けられている場合、オイルヒータの下端位置よりも下に位置するオイルは成層化して対流しにくい。そこで、上記(3)に記載のオイルタンクでは、第2開口部の下端位置をオイルヒータの下端位置より高くしている。これにより、オイルの対流によって、第1オイル室と第2オイル室のうち一方から他方へ第1開口部を通って移動したオイルが、該他方から該一方へ第2開口部を通って戻りやすくなる。したがって、第1オイル室と第2オイル室の間のオイルの良好な循環を実現することができ、オイル温度をより効果的に均一化することができる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の風力発電装置用オイルタンクにおいて、
前記第2開口部は、前記隔壁の壁面に垂直な方向から見た時に、少なくとも一部が前記オイルヒータと重なる位置に形成されている。
【0015】
上記(4)に記載のオイルタンクによれば、オイルの対流によって、第1オイル室と第2オイル室のうち一方から他方へ第1開口部を通って移動したオイルが、該他方から該一方へ第2開口部を通って更に戻りやすくなる。したがって、第1オイル室と第2オイル室の間のオイルの良好な循環を実現することができ、オイル温度をより効果的に均一化することができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)〜(4)の何れか1項に記載の風力発電装置用オイルタンクにおいて、
前記第1開口部の上端位置は、前記オイル使用機器の運転中にとりうる前記オイルタンクの最低油面高さよりも低い。
【0017】
上記(5)に記載のオイルタンクによれば、オイルタンクの油面高さが、オイル使用機器の運転中にとりうるオイルタンクの最低油面高さであっても、第1開口部及び第2開口部の両方がオイルに浸かった状態となるため、第1オイル室と第2オイル室との上述のオイル循環をオイル使用機器の運転状態によらず維持することができる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)の何れか1項に記載の風力発電装置用オイルタンクにおいて、
前記風力発電装置は、浮体式の風力発電装置であり、
当該オイルタンクは、前記風力発電装置が備える風車ロータの回転軸の軸線に直交する水平方向を長手方向として配置され、
前記隔壁は、前記風力発電装置が備える風車ロータの回転軸の軸線方向に沿って該隔壁の壁面が延在するように配置される。
【0019】
浮体式の風力発電装置では、陸上用の風力発電装置や着床式の洋上風力発電装置とは異なり、波の影響によって風力発電装置がロール方向にも揺動する。本発明者の検討によれば、風車ロータの回転軸の軸線に直交する水平方向を長手方向としてオイルタンクが配置されている場合に、オイルタンクの内壁のうち風車ロータの回転軸の軸線に直交する内壁に、風力発電装置のロール方向の揺動に起因するスロッシングによって大きな圧力がかかることが明らかとなった。そこで、上記(6)に記載のように、隔壁を、風車ロータの回転軸の軸線方向に沿って該隔壁の壁面が延在するように配置することにより、浮体式の風力発電装置におけるロール方向の揺動に起因するスロッシングを効果的に低減することが可能となる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の何れか1項に記載の風力発電装置用オイルタンクであって、
当該オイルタンクは、以下の条件式(A)と条件式(B)の何れか一方と、条件式(C)及び条件式(D)の何れか一方とを満たすよう構成される。
ここで、gは重力加速度であり、L
1は前記隔壁の壁面に垂直な方向における前記第1オイル室の長さであり、L
2は前記隔壁の壁面に垂直な方向における前記第2オイル室の長さであり、F
maxは前記オイル使用機器の運転停止中にとりうる前記オイルタンクの最高油面高さであり、F
minは前記オイル使用機器の運転中にとりうる前記オイルタンクの最低油面高さであり、f
towerは前記風力発電装置全体の曲げモードの固有振動数(典型的には0.3〜0.7Hz)である。
【0021】
上記(7)に記載のオイルタンクによれば、オイル使用機器の運転状態によらず、オイルタンクの隔壁の壁面に垂直な方向のオイルのスロッシングの固有振動数を風力発電装置全体の曲げモードの固有振動数と異ならせることができる。これにより、オイルタンクにおける隔壁の壁面に垂直な方向のオイルのスロッシングを効果的に抑制することができる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(7)の何れか1項に記載の風力発電装置用オイルタンクにおいて、
前記風力発電装置は、浮体式の風力発電装置であり、
当該オイルタンクは、以下の条件式(E)と条件式(F)の何れか一方と、条件式(G)及び条件式(H)の何れか一方とを満たすよう構成される。
ここで、gは重力加速度であり、L
1は前記隔壁の壁面に垂直な方向における前記第1オイル室の長さであり、L
2は前記隔壁の壁面に垂直な方向における前記第2オイル室の長さであり、F
maxは前記オイル使用機器の運転停止中にとりうる前記オイルタンクの最高油面高さであり、F
minは前記オイル使用機器の運転中にとりうる前記オイルタンクの最低油面高さであり、f
waveは前記浮体に作用する有義波の周波数(典型的には0.05〜0.2Hz)である。
【0023】
上記(8)に記載のオイルタンクによれば、オイル使用機器の運転状態によらず、オイルタンクの隔壁の壁面に垂直な方向のオイルのスロッシングの固有振動数を浮体に作用する有義波の周波数と異ならせることができる。これにより、オイルタンクにおける隔壁の壁面に垂直な方向のオイルのスロッシングを効果的に抑制することができる。
なお、『有義波』とは、特定の地点(ここでは浮体の設置地点)で連続する波を所定時間観測し、観測された波の総数のうち波高が大きい方から数えて総数の1/3の個数の波の平均的な特性について言及するための用語である。例えば、有義波の周波数とは、特定の地点(浮体の設置地点)で観測された波全体のうち波高の大きい1/3の個数の波の平均的な周波数を意味する。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(8)に記載の風力発電装置用オイルタンクにおいて、
前記風力発電装置は、浮体式の風力発電装置であり、
当該オイルタンクは、以下の条件式(I)と条件式(J)の何れか一方と、条件式(K)及び条件式(L)の何れか一方とを満たすよう構成される。
ここで、gは重力加速度であり、L
1は前記隔壁の壁面に垂直な方向における前記第1オイル室の長さであり、L
2は前記隔壁の壁面に垂直な方向における前記第2オイル室の長さであり、F
maxは前記オイル使用機器の運転停止中にとりうる前記オイルタンクの最高油面高さであり、F
minは前記オイル使用機器の運転中にとりうる前記オイルタンクの最低油面高さであり、f
sは前記浮体式の風力発電装置における前記隔壁の壁面に垂直な方向の動揺の固有振動数である。
【0025】
上記(9)に記載のオイルタンクによれば、オイル使用機器の運転状態によらず、オイルタンクの隔壁の壁面に垂直な方向のオイルのスロッシングの固有振動数を、浮体式風力発電装置におけるロール方向の動揺の固有振動数(典型的には0.03〜0.05Hz)と異ならせることができる。これにより、オイルタンクにおける隔壁の壁面に垂直な方向のオイルのスロッシングを効果的に抑制することができる。
【0026】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(9)に記載の風力発電装置用オイルタンクにおいて、
当該オイルタンクは直方体状又は立方体状に構成され、
前記隔壁は前記第1オイル室及び前記第2オイル室が直方体状又は立方体状となるように配置される。
【0027】
上記(10)に記載のオイルタンクによれば、オイルタンクの隔壁の壁面に垂直な方向のオイルのスロッシングを効果的に抑制することができる。
【0028】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(10)に記載の風力発電装置用オイルタンクにおいて、
前記オイルタンクの内部の圧力が大気圧になるように、前記オイルタンクの内部が大気に連通している。
【0029】
上記(11)に記載の風力発電装置用オイルタンクによれば、オイルタンクの内部を大気に連通させることにより、オイルタンクの内圧変動を抑制することができる。
【0030】
(12)幾つかの実施形態に係る風力発電装置用オイル収容ユニットは、
上記(1)〜(11)の何れか1項に記載のオイルタンクと、前記オイルタンクから漏れたオイルを貯留可能なオイルパンとを備える。
【0031】
上記(12)に記載のオイル収容ユニットによれば、上記(1)〜(11)の何れか1項に記載のオイルタンクから万一オイルが漏れても、漏れたオイルの拡散を抑制することができる。
【0032】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)に記載のオイル収容ユニットにおいて、
前記オイルパンは、該オイルパンの内側の空間を仕切るように設けられた多孔板を更に備える。
【0033】
上記(13)に記載のオイル収容ユニットによれば、上記(1)〜(11)の何れか1項に記載のオイルタンクから万一オイルが漏れても、漏れたオイルがオイルパンに貯留され、オイルパン内でのオイルのスロッシングが抑制されるため、オイルの拡散をより効果的に抑制することができる。
【0034】
(14)幾つかの実施形態に係る風力発電装置は、
上記(1)〜(11)の何れか1項に記載のオイルタンクと、
前記オイルタンクのオイルを使用するオイル使用機器と、
少なくとも一本の風車翼を含む風車ロータと、
前記風車ロータの回転エネルギーが伝達されて駆動される発電機と、
前記オイルタンク、前記オイル使用機器及び前記発電機を収容するナセルと、
前記ナセルを支持するタワーと、
を備える。
【0035】
上記(14)に記載の風力発電装置によれば、オイルタンクにおいてスロッシング現象を抑制するとともにタンク内のオイル温度を効果的に均一化することが可能となるため、風力発電装置が備えるオイル使用機器の安定的な運転状態を実現することができる。