特許第6208636号(P6208636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208636風車用旋回輪軸受装置並びにこれを備えた風車ロータ及び風力発電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208636
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】風車用旋回輪軸受装置並びにこれを備えた風車ロータ及び風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/70 20160101AFI20170925BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20170925BHJP
   F16C 19/08 20060101ALI20170925BHJP
   F16C 35/077 20060101ALI20170925BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F03D80/70
   F03D1/06 A
   F16C19/08
   F16C35/077
   F16C33/58
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-164017(P2014-164017)
(22)【出願日】2014年8月12日
(65)【公開番号】特開2016-37953(P2016-37953A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝文
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博晃
(72)【発明者】
【氏名】岡野 靖
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和峰
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/080350(WO,A1)
【文献】 特開2010−078003(JP,A)
【文献】 実開昭55−106732(JP,U)
【文献】 実開昭59−118823(JP,U)
【文献】 特開平08−093759(JP,A)
【文献】 特開2013−137074(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01741940(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/70
F16C 35/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車翼をロータハブに対して旋回可能に取り付ける風車用旋回輪軸受装置であって、
前記ロータハブに固定された外輪と、
前記風車翼に固定された内輪と、
前記外輪と前記内輪との間に設けられた複数の転動体と、
前記外輪が前記外輪の径方向における外側へ変形しようとする際に前記外輪の外周面から伝達される力を受けるよう構成され、前記ロータハブとは別体で形成されて前記ロータハブに固定された力受け部と、
を備え、
前記力受け部には、前記外輪の径方向に沿って延在するボルト穴が形成され、
当該風車用旋回輪軸受装置は、先端が前記外輪の外周面に当接するように前記ボルト穴にねじ込まれたボルトを更に備え
前記力受け部は、
前記外輪の軸方向において前記外輪と前記ロータハブとの間に位置するように前記外輪の周方向全域に亘って設けられ、前記ロータハブのインロー嵌合部に嵌合されて前記ロータハブに固定される支持部と、
前記支持部から前記外輪の外周面に沿って前記軸方向に突出する突出部と、
を含む
風車用旋回輪軸受装置。
【請求項2】
風車翼をロータハブに対して旋回可能に取り付ける風車用旋回輪軸受装置であって、
前記ロータハブに固定された外輪と、
前記風車翼に固定された内輪と、
前記外輪と前記内輪との間に設けられた複数の転動体と、
前記外輪が前記外輪の径方向における外側へ変形しようとする際に前記外輪の外周面から伝達される力を受けるよう構成され、前記ロータハブとは別体で形成されて前記ロータハブに固定された力受け部と、
前記力受け部と前記外輪の外周面との隙間を塞ぐように形成された樹脂部と、を備え
前記力受け部は、
前記外輪の軸方向において前記外輪と前記ロータハブとの間に位置するように前記外輪の周方向全域に亘って設けられ、前記ロータハブのインロー嵌合部に嵌合されて前記ロータハブに固定される支持部と、
前記支持部から前記外輪の外周面に沿って前記軸方向に突出する突出部と、
を含む
風車用旋回輪軸受装置。
【請求項3】
少なくとも一つの風車翼と、
前記少なくとも一つの風車翼が取り付けられたロータハブと、
前記風車翼を前記ロータハブに対して旋回可能に取り付けるための風車用旋回輪軸受装置と、
を備え、
前記風車用旋回輪軸受装置は、請求項1又は2に記載の風車用旋回輪軸受装置である、風車ロータ。
【請求項4】
請求項3に記載の風車ロータと、
前記風車ロータの回転に伴って駆動される発電機と、
を備える風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は風車用旋回輪軸受装置並びにこれを備えた風車ロータ及び風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保全の観点から、再生エネルギーとしての風を利用して発電を行う風力発電装置の普及が進んでいる。風力発電装置は、一般に、ロータハブに取り付けられた風車翼が風を受けることによって、ロータハブ及びこれに連結された主軸が回転し、主軸の回転を増速機で増速して発電機に入力することで、発電機において電力が生成されるように構成されている。
【0003】
風力発電装置において、風車翼のピッチ角を風速に応じた最適なピッチ角に設定するために、風車翼をロータハブに対して旋回可能に取り付けるよう構成された旋回輪軸受装置が設けられる場合がある。この旋回輪軸受装置には、内輪と外輪との間に複数の転動体(ボールベアリングやローラ等)を配設した転がり軸受が採用されている。
【0004】
風車翼とロータハブとに旋回輪軸受装置を介在させた風力発電装置において、風車翼やナセルに風荷重が作用する結果、軸受装置にモーメント荷重を含む不均一な荷重が加わり、内輪や外輪自体が構造変形することがある。内輪又は外輪自体に構造変形が生じると、内輪及び外輪と転動体との適切な接触状態を維持できなくなって玉荷重分布(転動体の荷重分布)が不均一となるため、軸受装置の寿命が短くなる。
【0005】
近年、発電効率向上の観点から風力発電装置の大型化が進められており、これにともなって、風車翼とロータハブとの間に設けられた旋回輪軸受装置に作用する荷重が増大傾向にある。このため、上述した内輪や外輪の構造変形を抑制する技術が検討されている。
【0006】
特許文献1には、内輪と外輪の少なくとも一方の構造変形を抑制するために、内輪と外輪の少なくとも一方に軸受の軸方向に直交する側板が取り付けられた旋回輪軸受装置が開示されている。
【0007】
特許文献2には、外輪を補強するために、外輪の外周面にボルト穴を設けて変形抑制のための補強部材を外輪の外周面にボルトで取り付けた旋回輪軸受装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/129351号
【特許文献2】米国特許公開第8322928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されるように側板を用いて軸受の外輪を補強する場合、外輪の軸方向の端面に取り付けた側板の内輪側との干渉を防止する観点から、外輪の軸方向の端面に取り付けた側板と内輪との間に十分な間隙を確保する必要がある。このため、特許文献1に記載される側板を用いた補強は、内輪に適用する場合と比較して外輪に適用するのが困難である。
【0010】
一方、特許文献2に記載されるように外輪の外周面にボルト穴を設けて変形抑制のための補強部材を外輪の外周面にボルトで取り付ける場合、該補強部材が内輪と干渉する恐れは無い。しかしながら、特許文献2に記載の旋回輪軸受装置では、外輪の外周面にボルトで付加的に取り付けた補強部材の剛性のみを利用して外輪の補強を行っているため、外輪の変形を抑制する効果は限定的である。また、軸受には高い剛性が要求されるが故に軸受材料には弾性率の高い材料が使用されており、また、軸受には長寿命が要求される故に軸受材料には高硬度材料が使用されており、このため、補強部材を取り付けるためのボルト穴を外輪の外周面に設ける加工を行うと、軸受の製造コストの増大を招いてしまう。
【0011】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、風車用旋回輪軸受装置の外輪の径方向において外側へ外輪が変形することを抑制するとともに、低コスト化を実現可能な風車用旋回輪軸受装置並びにこれを備えた風車ロータ及び風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る風車用旋回輪軸受装置は、風車翼をロータハブに対して旋回可能に取り付けるための風車用旋回輪軸受装置であって、前記ロータハブに固定された外輪と、前記風車翼に固定された内輪と、前記外輪と前記内輪との間に設けられた複数の転動体と、前記外輪が前記外輪の径方向における外側へ変形しようとする際に前記外輪の外周面から伝達される力を受けるよう構成され、前記ロータハブに固定され又は前記ロータハブと一体で形成された力受け部と、を備える。
【0013】
上記(1)に記載の風車用旋回輪軸受装置によれば、外輪の径方向(以下、単に「径方向」と記載した場合は外輪の径方向を意味することとする)における外側へ外輪が変形しようとしたときに、ロータハブに固定され又はロータハブと一体で形成された力受け部が外輪の外周面から伝達される力を受けることにより、ロータハブの剛性を利用して径方向外側への外輪の変形を効果的に抑制することができる。これにより、複数の転動体に作用する荷重分布の乱れを抑制し、軸受の長寿命化を実現することができる。
ところで、軸受には高い剛性が要求されるが故に、軸受材料には一般に弾性率の高い材料が使用されている。また、軸受には長寿命が要求される故に軸受材料には高硬度材料が使用されている。このため、外輪を加工することは容易ではなく、外輪自体にボルト穴を設けて変形抑制のための補強部材をボルトで取り付けるような従来技術の場合には、外輪の製造コストが高くなりやすい。この点、上記(1)に記載の風車用旋回輪軸受装置によれば、外輪から伝達される力をロータハブに固定され又はロータハブと一体で形成された力受け部によって受けることで外輪の変形を抑制することができるため、変形抑制のための補強部材を取り付けるためのボルト穴等を外輪自体に設ける必要がない。このため、外輪に特段の加工を施すことなく外輪の変形を抑制することができ、軸受装置の低コスト化を実現することができる。
【0014】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の風車用旋回輪軸受装置において、前記力受け部は、前記外輪の外周面に対向する第1テーパ面を有し、前記第1テーパ面は、前記ロータハブに前記外輪の軸方向に沿って近づくにつれて前記外輪の外周面との間隔が小さくなるよう形成され、当該風車用旋回輪軸受装置は、前記第1テーパ面と前記外輪の外周面との間に設けられた楔部材を更に備える。
【0015】
上記(2)に記載の風車用旋回輪軸受装置によれば、楔部材によって力受け部の第1テーパ面と外輪の外周面との隙間を無くすことができるため、外輪からの径方向外側への力を確実に力受け部に伝達することができる。このため、ロータハブの剛性を利用可能な力受部による外輪の変形抑制効果を向上させることができる。
【0016】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の風車用旋回輪軸受装置において、前記軸方向に沿って延在し、前記楔部材を前記力受け部に固定するとともに前記楔部材に前記軸方向に沿って前記ロータハブに向かう押圧力を付与するためのボルトを更に備える。
【0017】
上記(3)に記載の風車用旋回輪軸受装置によれば、軸方向に沿ってロータハブに向かう押圧力をボルトによって楔部材に付与することにより、力受け部のテーパ面と外輪の外周面とに楔部材が密着した状態を維持することができる。これにより、外輪からの径方向外側への力をより確実に力受け部に伝達することができる。このため、ロータハブの剛性を利用可能な力受部による外輪の変形抑制効果を更に向上させることができる。
【0018】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の風車用旋回輪軸受装置において、前記力受け部には、前記外輪の径方向に沿って延在するボルト穴が形成され、当該風車用旋回輪軸受装置は、先端が前記外輪の外周面に当接するように前記ボルト穴にねじ込まれたボルトを更に備える。
【0019】
上記(4)に記載の風車用旋回輪軸受装置によれば、力受け部に形成されたボルト穴にねじ込まれたボルトの先端が外輪の外周面に当接しているため、外輪からの径方向外側への力を確実に力受け部に伝達することができる。このため、ロータハブの剛性を利用可能な力受部による外輪の変形抑制効果を更に向上させることができる。
【0020】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の風車用旋回輪軸受装置において、前記力受け部と前記外輪の外周面との隙間を塞ぐように形成された樹脂部を更に備える。
【0021】
上記(5)に記載の風車用旋回輪軸受装置によれば、力受け部と外輪の外周面との隙間を樹脂部が塞いでいるため、外輪からの径方向外側への力を確実に力受け部に伝達することができる。このため、ロータハブの剛性を利用可能な力受部による外輪の変形抑制効果を更に向上させることができる。
【0022】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の風車用旋回輪軸受装置において、前記力受け部は、前記外輪の外周面に沿って延在する複数のセグメントを含むリング状ユニットであり、当該風車用旋回輪軸受装置は、前記外輪を前記外輪の径方向における外側から前記リング状ユニットによって締め付けるように前記複数のセグメント同士を締結する締結部材と、前記リング状ユニットを前記ロータハブに固定するための固定部材と、を更に備える。
【0023】
上記(6)に記載の風車用旋回輪軸受装置によれば、固定部材によって力受け部としてのリング状ユニットがロータハブに固定されているため、ロータハブの剛性を利用可能なリング状ユニットによって外輪の変形を効果的に抑制することができる。また、締結部材による締め付け作用によってリング状ユニットの内周面が外輪の外周面と接触した状態が維持されるため、外輪からの径方向外側への力が確実にリング状ユニットに伝達される。これにより、ロータハブの剛性を利用可能なリング状ユニットによる外輪の変形抑制効果を向上させることができる。
【0024】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る風車ロータは、少なくとも一つの風車翼と、前記少なくとも一つの風車翼が取り付けられたロータハブと、前記風車翼を前記ロータハブに対して旋回可能に取り付けるための風車用旋回輪軸受装置と、を備え、前記風車用旋回輪軸受装置が上記(1)乃至(6)の何れか1項に記載の風車用旋回輪軸受装置である。
【0025】
上記(7)に記載の風車ロータによれば、上記(1)乃至(6)の何れか1項に記載の風車用旋回輪軸受装置によって風車翼をロータハブに取り付けているため、複数の転動体に作用する荷重分布の乱れを抑制し、軸受の長寿命化を実現することができる。これにより、軸受交換のための風車ロータの解体が必要となるリスクを低減することができる。
【0026】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電装置は、上記(7)に記載の風車ロータと、前記風車ロータの回転に伴って駆動される発電機と、を備える。
【0027】
上記(8)に記載の風力発電装置によれば、上記(7)に記載の風車ロータの回転に伴って発電機が駆動されるため、軸受交換のための風車ロータの解体が必要となるリスクを低減することができ、風力発電装置の安定的な運転を実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、風車翼をロータハブに対して旋回可能に取り付けるための風車用旋回輪軸受装置並びにこれを備えた風車ロータ及び風力発電装置において、外輪の径方向において外側へ外輪が変形することを抑制するとともに、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る風力発電装置の概略構成を示す模式図ある。
図2】本発明の一実施形態に係る旋回輪軸受装置の模式的な断面図である。
図3図2に示す旋回輪軸受装置のA−A断面の一例を示す図である。
図4図2に示す旋回輪軸受装置のA−A断面の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る旋回輪軸受装置の模式的な断面図である。
図6図5に示す旋回輪軸受装置のB−B断面の一例を示す図である。
図7図5に示す旋回輪軸受装置のB−B断面の一例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る旋回輪軸受装置の模式的な断面図である。
図9図8に示す旋回輪軸受装置のC−C断面の一例を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る旋回輪軸受装置の模式的な断面図である。
図11図10に示す旋回輪軸受装置のD−D断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」「一致」等の相対的な配置関係を表す表現は、厳密にそのような相対的配置関係を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る風力発電装置100の概略構成を示す模式図ある。
風力発電装置100は、タワー2と、タワー2に支持されたナセル4と、風車ロータ6と、ナセル4に収容され風車ロータ6の回転に伴って駆動される発電機8と、を備えている。
【0032】
風車ロータ6は、少なくとも一つの風車翼10と、風車翼10が取り付けられたロータハブ12と、風車翼10をロータハブ12に対して旋回可能に取り付けるための少なくとも一つの旋回輪軸受装置14とを備えている。
【0033】
ここで、旋回輪軸受装置14の構成例について、図2図11を用いて幾つかの実施形態を説明する。
【0034】
図2は、一実施形態に係る旋回輪軸受装置14の模式的な断面図である。図3は、図2に示す旋回輪軸受装置14のA−A断面の一例を示す図である。図4は、図2に示す旋回輪軸受装置14のA−A断面の一例を示す図である。図5は、一実施形態に係る旋回輪軸受装置14の模式的な断面図である。図6は、図5に示す旋回輪軸受装置14のB−B断面の一例を示す図である。図7は、図5に示す旋回輪軸受装置14のB−B断面の一例を示す図である。図8は、一実施形態に係る旋回輪軸受装置14の模式的な断面図である。図9は、図8に示す旋回輪軸受装置14のC−C断面の一例を示す図である。図10は、一実施形態に係る旋回輪軸受装置14の模式的な断面図である。図11は、図10に示す旋回輪軸受装置14のD−D断面の一例を示す図である。
【0035】
幾つかの実施形態では、例えば図2図5図8及び図10に示すように、旋回輪軸受装置14は、ロータハブ12に固定された外輪16と、風車翼10に固定された内輪18と、外輪16と内輪18との間に設けられた複数の転動体20と、外輪16が外輪16の径方向における外側へ変形しようとする際に外輪16の外周面16aから伝達される力を受けるよう構成され、ロータハブ12に固定された力受け部22と、を備えている。ここで、転動体20には、例えばボールやローラ等が含まれる。
【0036】
この構成によれば、外輪16の径方向(以下、単に「径方向」と記載した場合は外輪の径方向を意味することとする)における外側へ外輪16が変形しようとしたときに、ロータハブ12に固定された力受け部22が外輪16の外周面16aから伝達される力を受けることにより、ロータハブ12の剛性を利用して径方向外側への外輪16の変形を効果的に抑制することができる。これにより、複数の転動体20に作用する荷重分布の乱れを抑制し、旋回輪軸受装置14の長寿命化を実現することができる。
【0037】
ところで、軸受には高い剛性が要求されるが故に、軸受材料には一般に弾性率の高い材料が使用される。また、軸受には長寿命が要求される故に軸受材料には高硬度材料が使用されている。このため、外輪を加工することは容易ではなく、外輪自体にボルト穴を設けて変形抑制のための補強部材をボルトで取り付けるような従来技術の場合には、外輪の製造コストが高くなりやすい。この点、図2図11に示した旋回輪軸受装置14によれば、外輪16から伝達される力をロータハブ12に固定された力受け部22によって受けることで外輪16の変形を抑制することができるため、変形抑制のための補強部材を取り付けるためのボルト穴等を従来技術に記載されるように外輪自体に設ける必要がない。このため、外輪16に特段の加工を施すことなく外輪16の変形を抑制することができ、旋回輪軸受装置14の低コスト化を実現することができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、例えば図2図5図8及び図10に示すように、力受け部22は、ロータハブ12に対してインローで組み付けられていてもよい。また、力受け部22は、例えば図2図5及び図8に示すように、外輪の周方向全域に亘って設けられ外輪16を支持する支持部22bと、支持部22bから外輪16の外周面16aに沿って外輪16の軸方向に突出する突出部22cとを含んでいてもよい。この場合、旋回輪軸受装置14は、例えば図2及び図5に示すように、外輪16を支持部22b及びロータハブ12に共締めで固定するよう構成された複数のボルト34を備えていてもよい。あるいは、例えば図8に示すように、外輪16を支持部22bに固定するよう構成された複数のボルト35と、支持部22bをロータハブ12に固定するよう構成された複数のボルト37とを備えていてもよい。
【0039】
幾つかの実施形態では、突出部22cは、例えば図3図6及び図9に示すように外輪の周方向全域に亘って設けられていてもよいし、例えば図4及び図7に示すように外輪の周方向において離散的に設けられていてもよい。図4及び図7に示す例では突出部22cが外輪の周方向にそれぞれ8つ設けられている例を示したが、この数は特に限定されない。
【0040】
幾つかの実施形態では、例えば図2及び図5に示すように、支持部22bと突出部22cは別体で(別部材で)構成されており、ボルト26によって突出部22cが支持部22bに固定されていてもよい。また、他の実施形態では、例えば図8に示すように、支持部22bと突出部22cとは一体で(一つの部材で)構成されていてもよい。
【0041】
幾つかの実施形態では、例えば図2に示すように、力受け部22の突出部22cは、外輪16の外周面16aに対向する第1テーパ面22aを有し、第1テーパ面22aは、ロータハブ12に外輪16の軸方向に沿って近づくにつれて外輪16の外周面16aとの間隔が小さくなるよう形成される。この場合、例えば図2に示すように、旋回輪軸受装置14は、第1テーパ面22aと外輪16の外周面16aとの間に設けられた楔部材24を備えており、楔部材24には、第1テーパ面22aに隣接する位置に第1テーパ面22aに沿って第2テーパ面24aが形成されている。
【0042】
なお、楔部材24は、図3に示すように外輪の周方向全域に亘って設けられていてもよいし、図4に示すように、外輪の周方向において離散的に設けられていてもよい。図4に示す例では楔部材24が外輪の周方向にそれぞれ8つ設けられている例を示したが、この数は特に限定されない。
【0043】
この構成によれば、楔部材24によって力受け部22の第1テーパ面22aと外輪16の外周面16aとの隙間を無くすことができるため、外輪16からの径方向外側への力を楔部材24を介して確実に力受け部22に伝達することができる。このため、ロータハブ12の剛性を利用可能な力受け部22による外輪16の変形抑制効果を向上させることができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、例えば図2に示すように、外輪16の軸方向に沿って延在し、楔部材24を力受け部22に固定するとともに楔部材24に外輪16の軸方向に沿ってロータハブ12に向かう押圧力を付与するためのボルト26を備える。
【0045】
この構成によれば、外輪16の軸方向に沿ってロータハブ12に向かう押圧力をボルト26によって楔部材24に付与することにより、力受け部22の第1テーパ面22aと外輪16の外周面16aとに楔部材24が密着した状態を維持することができる。これにより、外輪16からの径方向外側への力を楔部材24を介してより確実に力受け部22に伝達することができる。このため、ロータハブ12の剛性を利用可能な力受け部22による外輪16の変形抑制効果を向上させることができる。
【0046】
なお、図2に示す例示的な実施形態では、突出部22cを支持部22bに固定するボルト26が楔部材24に押圧力を付与するボルトを兼ねている。これにより、旋回輪軸受装置14の構成を簡素化することができる。
【0047】
また、図2に示す例示的な実施形態では、楔部材24には、ボルト26が通る通し穴29が設けられたボルト貫通部30が外輪16の径方向における第2テーパ面24aの外側に設けられている。通し穴29は所謂バカ穴であり、通し穴29の径はボルト26の軸部の径より大きく設定されている。突出部22cとボルト貫通部30との間には、ボルト26の軸方向にギャップ32が形成されている。これにより第1テーパ面22aに沿って楔部材24の位置を微調整することができる。
【0048】
幾つかの実施形態では、例えば図5に示すように、力受け部22には、外輪16の径方向に沿って延在する少なくとも一つのボルト穴31が形成されている。この場合、例えば図5に示すように、旋回輪軸受装置14は、先端28aが外輪16の外周面16aに当接するようにボルト穴31にねじ込まれた(螺合した)少なくとも一つのボルト28を備えている。ボルト28は、図5に示すように外輪16の軸方向に複数配列されていてもよいし、図6及び図7に示すように外輪16の周方向に沿って複数配列されていてもよい。
【0049】
この構成によれば、力受け部22に形成されたボルト穴31にねじ込まれたボルト28の先端28aが外輪16の外周面16aに当接しているため、外輪16の径方向外側への外輪16からの力は、ボルト28とボルト穴31との螺合部を介して力受け部22に確実に伝達することができる。このため、ロータハブ12の剛性を利用可能な力受け部22による外輪16の変形抑制効果を向上させることができる。
【0050】
なお、図5に示す実施形態では、外輪16の外周面16aと突出部22cの外周面22d(ボルト穴31の入口)との距離L1よりも大きな首下長さL2を有する少なくとも一つのボルト28を用いている。これにより、ボルト28の先端28aを外輪16の外周面16aに確実に当接させることができ、外輪16の変形抑制効果を向上させることができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、例えば図8及び図9に示すように、旋回輪軸受装置14は、力受け部22の突出部22cの内周面22eと外輪16の外周面16aとの隙間を塞ぐように形成された樹脂部36を備えている。樹脂部36は、例えば樹脂に硬化剤を添加することにより形成されてもよい。
【0052】
この構成によれば、力受け部22と外輪16の外周面16aとの隙間を樹脂部36が塞いでいるため、外輪16からの径方向外側への力を樹脂部36を介して確実に力受け部22に伝達することができる。このため、ロータハブ12の剛性を利用可能な力受け部22による外輪16の変形抑制効果を向上させることができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、例えば図8に示すように、樹脂部36が力受け部22と外輪16の外周面16aとの隙間から抜け出さないように、樹脂部36を覆う蓋部材38を備えていてもよい。この場合、蓋部材38は、例えばボルト40で突出部22cに固定されていてもよい。
【0054】
幾つかの実施形態では、例えば図10及び図11に示すように、力受け部22は、外輪16の外周面16aに沿って延在する複数のセグメント42aを含むリング状ユニット42である。図10及び図11に示す風車用旋回輪軸受装置14は、外輪16を外輪16の径方向における外側からリング状ユニット42によって締め付けるように複数のセグメント42a同士を締結する少なくとも一つの締結部材44(図11参照)と、リング状ユニット42をロータハブ12に固定するための少なくとも一つの固定部材46と、を備えている。
【0055】
締結部材44は、例えば図10に示すように、隣接するセグメント42a同士を締結するボルト44a及びナット44bから構成されていてもよい。また、固定部材46は、例えば図10及び図11に示すようにボルトであってもよい。この場合、リング状ユニット42によって外輪16を締め付ける効果を妨げないように、セグメント42aに設けられる固定部材46の貫通穴48は、通し穴(所謂バカ穴)として形成されている。すなわち、貫通穴48の径は、固定部材46の軸部の径よりも大きく設定されている。なお、図11に示す実施形態では、外輪16はボルト50によってロータハブ12に直接固定されている。
【0056】
図10及び図11に示す構成によれば、固定部材46によって力受け部22としてのリング状ユニット42がロータハブ12に固定されているため、ロータハブ12の剛性を利用可能なリング状ユニット42によって外輪16の変形を効果的に抑制することができる。また、締結部材44による締め付け作用によってリング状ユニット42の内周面42b(図10参照)が外輪16の外周面16a(図10参照)と接触した状態が維持されるため、外輪16からの径方向外側への力が確実にリング状ユニット42に伝達される。これにより、ロータハブ12の剛性を利用可能なリング状ユニット42による外輪16の変形抑制効果を向上させることができる。
【0057】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0058】
例えば、図1図11に示した実施形態では、力受け部22がロータハブ12にインローで組み付けられる例を示したが、力受け部22は、ロータハブ12と一体で(一つの部材で)形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
2 タワー
4 ナセル
6 風車ロータ
8 発電機
10 風車翼
12 ロータハブ
14 旋回輪軸受装置
16 外輪
16a 外周面
18 内輪
20 転動体
22 力受け部
22a 第1テーパ面
22b 支持部
22c 突出部
22d 外周面
22e 内周面
24 楔部材
24a 第2テーパ面
26 ボルト
28 ボルト
28a 先端
29 通し穴
30 ボルト貫通部
31 ボルト穴
32 ギャップ
34 ボルト
35 ボルト
36 樹脂部
37 ボルト
38 蓋部材
40 ボルト
42 リング状ユニット
42a セグメント
42b 内周面
44 締結部材
44a ボルト
44b ナット
46 固定部材
48 貫通穴
50 ボルト
100 風力発電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11